JP2639502B2 - 網状管状体よりなるマトリックス補強用構造体 - Google Patents

網状管状体よりなるマトリックス補強用構造体

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【発明の詳細な説明】 a.産業上の利用分野 本発明は、高弾性率繊維よりなる粗目管状網状体より
なる立体構造体で、FRPやコンクリートなどの立体構造
物の補強体に使用される。
b.従来技術及び本発明が解決しょうとする問題点 従来プラスチックやコンクリートなどの立体構造物を
補強する手段として、ガラス繊維や炭素繊維の短繊維
を、樹脂やコンクリートなどのマトリックスに混入する
手段が一般に行われているが、短繊維なので繊維の量の
割には補強効果が小さい。そこで、近年3次元織物が注
目を集めてきた(例えば、繊維機械学会誌、昭和61年1
月号、P56〜61)。しかし、この3次元織物は、生産速
度が極端に遅く、産業資材として多量に安く使用するに
は不適である。また装置が複雑で大型の製品を製造する
には、装置費も高過ぎる。出来た製品も、糸を複雑に絡
ましてあるので糸の直線性を保てず、せっかく弾性率の
大きな繊維を使用しても、曲げ弾性率などに効果が小さ
い。
3次元織物や短繊維を、FRPなどのマトリックスに親
和性を持たせるためには、繊維表面をアンカー処理をす
る必要がある場合が多い。そのため糸の段階か、または
製品の段階でアンカー剤をコートする工程が必要であ
り、工程が複雑になるばかりでなく、製造コストも高く
なる。
c.問題点を解決するための手段 本発明は、大型の製品でも、高速で安価に製造可能
な、性能の良いマトリックスの立体補強構造体を鋭意研
究した結果、弾性率の高い繊維が粗目の網目状となって
いる管状構造体を使用することにより、実現可能である
ことを見いだした。さらに複数個組み合わせることによ
り、良い立体補強効果をもたらすことが出来た。このた
めには、この網目管状体のタテ方向に繊維が配置されて
いる構造の網目で、少なくともそのタテ方向に配置され
ている繊維の引張弾性率が2000kg/mm2以上の繊維を使用
すること、およびその網目構造体としては、網目が2mm
以上好ましくは5mm以上の網目が必要であることが実験
結果判明した。
粗目管状体の網目を構成する必要条件を以下詳しく見
て行く。まず、引張弾性率が異なる種々の繊維で網目管
状体を試作し、補強されるマトリックスとして、エポキ
シ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、コン
クリートにそれぞれの管状体の組み合わせた構造体を入
れて、立体構造物を試作し、曲げ弾性率、耐クリープテ
スト、衝撃試験等を行い、補強効果を検討した。それよ
り、繊維の弾性率が2000kg/mm2より低い通常の6ナイロ
ン、66ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン等の繊
維は、補強効果が無いか、またはあっても僅かで、経済
性を考慮すると補強の意味をなさない。これに対して、
2000kg/mm2以上の弾性率を持つ、超延伸ポリエチレン繊
維、高弾性率ポリビニルアルコール系繊維(ビニロンな
ど)、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維(ケブラー
など)等では、いずれも補強効果があった。また、スチ
ールファイバーやアモルファス金属繊維などの金属繊
維、アルミナ繊維などのセラミック繊維なども使用可能
である。これらの繊維は単独で使用されるばかりでな
く、違う種類の繊維(かならずしも高弾性率繊維でなく
とも良い)を合わせたり、混ぜて使用することも出来
る。糸の形態的な種類としては、モノフィラメント、マ
ルチフィラメント、紡積糸、フラットヤーン、ロービン
グ、紐、ロープなどが使用できる。
これらの高弾性率繊維よりなるヤーン、またはロービ
ングも管状体のタテ方向に走行している構造で、しかも
そのタテ方向の繊維が殆ど屈曲していない構造でないと
補強効果が少ないことも、実験結果判明した。但し、タ
テ方向を構成している糸全てが高弾性率繊維である必要
はない。タテ方向も厳密にタテでなくともそれなりの補
強効果はあるが、タテ方向に対して30度も40度も傾くよ
うでは効果が少ない。一般の織物や編物を管状体にした
ものは、ヤーンが屈曲してしまい、補強効果は少ない。
しがし、ヤーンやロービングを原料とした経緯直交不織
布(特公昭51−9067、特公昭53−38783)や、斜交3軸
不織布(特公昭62−54904)や多軸不織布またはフィラ
メントワインディング法等(以下糸の公差不織布と略
す)は、糸が実質的に直線的に配置されており、これら
を原料とした管状体は、いずれも良い補強効果を示す。
これらの糸の交差不織布は、タテ、ヨコまたは斜交の相
互の糸が接着剤で固定されており、この接着剤を硬いも
のにすることにより、管状体として自立性のある構造体
にすることが可能になった。また、この接着剤を適当に
選択することにより、マトリックスと親和性を増す糸に
することが出来、マトリックスの補強効果を一層高める
ことが出来る。織物や編物に原料にしたものは、管状体
に自立性を持たせることも困難であるばかりでなく、マ
トリックスに親和性のあるアンカーコート剤で処理しな
いと、補強材として使用できない場合が殆どである。但
し、織物や編物でも、管状体のタテ方向に配置される糸
が高弾性率繊維よりなり、他の糸は比較的細い糸か又は
柔らかい糸よりなり、タテに配置される糸の直線性を妨
げないようにし、織り方も、絡み織りなどで粗目の織物
となし、しかも目止剤などで硬く仕上げた場合は、本発
明の網状体して使用可能である。
網目は近接するヤーンとの距離で示し、これが2mmよ
り短いものは、マトリックスの充填に時間がかかり、実
用的でないばかりでなく、充填圧力で管状体が歪み、立
体補強構造体としての設計した構造にならない。ある程
度の粘度の高い含浸マトリックス液体の場合は、5mm以
上の網目があることが望ましい。但し、糸の交差不織布
を丸めたり折り曲げたりして管状体にした場合の接合部
や、交差不織布の一部のみが密な組織になっていて、特
定方向の補強効果を示す場合でも、管状体の全体として
は、粗目の網状体の部分が多く、マトリックスの含浸を
妨げない場合は、本発明に使用する管状体である。
コンクリートでは、入ってる砂利の大きさにもよる
が、最低でも10mm以上の網目でないと上記の弊害が生じ
た。またコンクリート補強用では、その網目を接合して
いる接着剤を、親水性基を持つ接着剤にすることによ
り、コンクリートとの親和性が増し、補強効果が増すこ
とも実験結果判明した。例えば水酸基(ポリビニルアル
コール系接着剤)、酢酸基(酢酸ビニル系接着剤)、エ
ポキシ基、カルボン酸基、スルフォン酸基等である。
これらの網目よりなる管状体の形状としては、円筒、
楕円筒、三角柱、四角柱、またはそれ以上の多角柱があ
る。また多角柱の辺の一部が湾曲したものであっても、
本発明として使用される。いずれにしても、管状体のタ
テ方向には高弾性率の繊維よりなる糸またはロービング
である必要がある。
ロービングや糸よりなる粗目網状体より、経緯直交不
織布、3軸斜交不織布や多軸交差不織布などの糸の交差
不織布を、丸めたり、折り曲げて管状体に成型したもの
も本発明の構造体となる。
本発明は、これまで述べてきた管状体を、単独で使用
するばかりでなく、複数個組み合わせて立体補強構造体
にすることにもある。
網目管状体を組み合わせる方法としては、大きく分け
て2通りある。
その一つは、この管状体を複数個平行に並列させ、こ
れを管状体のヨコ方向に弾性率の高い物体で連結し、補
強一体化する方法である。弾性率の高い物体としては、
やはり高弾性率繊維よりなる糸や粗目交差不織布、また
鉄筋や金属の板やパイプまたは高弾性率繊維よりなるロ
ープも使用される。糸や布状体では、並列している管状
体の全体を一体化するように、ヨコ方向に巻き付ける構
造にすることが出来る。巻き付ける糸や粗目布は、あら
かじめ接着剤が付いているか、または巻き付けた後で接
着固定することが望ましい。鉄筋またはロープを、粗目
の網目を通して、管状体をヨコ方向に貫通させて一体化
させる構造体になる。鉄筋、鉄板やパイプなどは、並列
管状体のヨコ方向に並べて、並列管状体と、接着剤や、
固定具、糸などで固定されている構造体になる。並列し
た管状体は、かならずしも同一平面内にある必要はな
く、円筒形など湾曲した配列していても、管状体の軸芯
方向が互いに平行で、かつこの管状体の並列配置された
形態を取り、それを高弾性率物体で連結してあれば良
い。
もう一つの管状体の組み合わせ方として、この複数個
の管状体を、斜交または直交させて組み合せる方法であ
る。これは丸太小屋や校倉造り、合掌造りなど、丸木や
角材を組み合わせた構造のように、管状体を組み合わせ
る方法である。もっと複雑な構造としては、ヨコ方向に
一定間隔で並列して多数本並べ、その上の段はそれと直
角方向に多数本一定間隔で並列して置く。これを繰り返
して、出来た立体構造体の一定間隔の隙間に、垂直方向
に管状体を入れて行くことにより、管状体の立体積層構
造体にすることも可能である。これらの管状体相互が接
する部分は、凹部を設けて、交差がより一体化しやすい
構造にすると、より補強効果のある構造体となる。組み
合わせた後は、そのままでも良いが、接着固定や、継ぎ
金具、糸などで結んで、相互に固定しても良い。
これらの管状体の組み合せの方法は、図面による説明
でも具体的に述べる。
使用した管状体の端部を固定して、張力を掛け、管状
体のタテ方向にある糸に張力を働かせて糸の持つ弾性率
をより有効に働く構造にする事は、少ない繊維量で、よ
り補強効果を出させるためにも有効な手段である。
本発明の構造体で補強されるマトリックスとしては、
エポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性
樹脂、ポリプロピレン樹脂やフッ化樹脂、液晶樹脂、ポ
リイミド樹脂などの熱可塑性樹脂、また土壌やアスファ
ルト、石膏、コンクリートなどの土木建築資材、カーボ
ンなどのセラミック、アルミニウムなどの金属などの補
強用として使用される。
d.図面による説明 本発明の構造体の例を図面により示す。
第1図(イ)は、管状体を構成している網状体の例
で、タテ糸とヨコ糸が直線的に交差し、接着剤で固定さ
れている。ヤーンによる直交積層不織布の例である。第
1図(ロ)は、タテ糸に対して斜交した糸が接着剤で固
定されている、ヤーンによる斜交3軸不織布の例であ
る。いずれにしても、タテ糸が直線的に配置されてお
り、少なくともこのタテ糸が高弾性率繊維よりなってい
ることが必要である。
第2図(イ)は、交差不織布を丸めて管状体にした例
で、不織布の接合部(胴貼部)Rは、糸密度が高いの
で、この部分を特に補強したい側面に配置することによ
り、補強効果を一層高めることが可能である。この円筒
には、必要に応じて、a、a′のような凹部が多数個設
けてあり、管状体を組み合わせる場合、この部分で交差
させることにより、一体化が良くなる。第2図(ロ)
は、四角柱の例を示した。
第3図は、管状体を並列させ、そのヨコ方向を補強体
で強化した例で、第3図(イ)は、管状体1a、1b、1c・
・・を1列に並列させ、鉄の棒状物質(途中に瘤が付い
ていることが望ましい)2a、2b、2c・・・が、ヨコ方向
に貫通して一体化し、壁状構造体としたものである。第
3図(ロ)は、円筒状に配置した管状体3a、3b、3c・・
・を、高弾性率繊維よりなるロープ4で巻き付けて一体
化したもので、柱状構造体の例である。
第4図は、管状体を直交さして組み合わせた例で、複
雑さを避けるため、その一部だけしか示していない。5
a、5b、5c・・・、6a、6b、6c・・・は、垂直に配列さ
れた管状体で、6の管状体は図示していないが、図の左
の方向まで定間隔に配置されている。7a、7b、7c・・・
と8a、8b、8c・・・は、水平方向に交差するように配置
されている。5a、5b、5c・・・・の間にも8の管状体に
平行な管状体を、6a、6b、6c・・・の間にも7の管状体
に平行な管状体を追加して挿入することも可能である。
e.効果 産業界では、簡単な構造で、大型の製品を品質(補強
効果)良く、しかもコスト安い立体補強体が求められて
いるが、本発明では、それらを可能にすることが出来
た。以下本発明の効果を具体的に述べる。
粗目の糸による管状体は、簡単な構造で、大型の製品
も容易に製造可能である。
品質は、ヤーンが実質的に直線状をなしているので、
繊維の持っている高弾性率を充分に発揮できる。また、
網状体にするときの接着剤で、マトリックスと親和性良
く、しかも接着剤の硬さにより管状体を剛直にし、作業
性を良くすることが出来た。また粗目の構造体であるの
で、マトリックスの浸透性も良い。
このような、簡単な構造の管状体を組み合わせて立体
補強体とすることに、本発明の最大の特徴があり、しか
も組合せの方法で、立体補強効果を最大に出せる方式
を、自在に設計できる構造体を可能にした。また施工現
場で立体構造体に組み上げることも可能であるので、コ
ンクリート補強のような大型構造物の場合、基本部材で
ある管状体のみを量産して、現場に運搬し、現場で設計
どうりに組立が可能である。したがって、大型の立体構
造体を運搬する必要はなく、現場施工も楽である。
したがって、製造設備も簡単で、工程も簡略、しかも
補強効果も良いので、相対的に少ない繊維量で補強効果
を発揮できるので、コストの安い構造体となる。
これに対して、従来の、一般の織物や編物又はホース
編みによる方法では、それ自体の自立性のある剛直な構
造体にするには、別工程が必要である。また糸自体のマ
トリックスに対する親和性もない。織物や編物では5mm
以上の粗目の構造体を効率よく製造することは困難であ
る。品質的にも従来の方法では、糸が屈曲しており、繊
維の弾性率を充分に発揮出来ていない。まして、これら
の管状体を組み合わせて、簡単な立体補強体にする発想
は従来にはなかった。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に使用できる網状体の例で、第2図は
本発明の管状体の例である。第3図は、管状体を並列に
並べて管状体のヨコ方向を鉄棒で一体化させた例であ
る。第4図は、管状体を縦横に組み合わせた例である。 記号の説明 a,a′は管状体に設けた凹部 Rは、糸の交差不織布を巻いた作った、管状体のラップ
部(胴貼り部) 1a、1b、1cは並列している管状体 2a、2b、2cは鉄棒 3a、3b、3cは、円形に並列されている管状体 4は、巻き付けてある高弾性繊維よりなる糸 5a、5b、5cは、管状体 6a、6b、6cは、管状体 7a、7b、7cは、管状体 8a、8b、8cは、管状体

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】2000kg/mm2以上の引張弾性率を有する糸ま
    たはロービングよりなる2mm以上の網目を持つ直交不織
    布または斜交不織布を丸めて円筒や楕円筒にするかまた
    は折り曲げて多角柱とした網状管状体をタテ方向が並列
    するように複数個配列されており、それらの網状管状体
    のヨコ方向に高弾性率物体で連結されてなるマトリック
    ス補強構造体。
  2. 【請求項2】2000kg/mm2以上の引張弾性率を有する糸ま
    たはロービングよりなる2mm以上の網目を持つ直交不織
    布または斜交不織布を丸めて円筒や楕円筒にするかまた
    は折り曲げて多角柱とした網状管状体を複数個相互に直
    交または斜交させて組み合わせてなるマトリックス補強
    構造体。
  3. 【請求項3】請求項(1)(2)において、10mm以上の
    網目を有する直交不織布または斜交不織布の糸間を親水
    性基を有する接着剤で接着されてなるコンクリート補強
    体。
  4. 【請求項4】請求項(2)(3)において、網状管状体
    を相互に組み合わせる部分に凹部を設けて、交点が一体
    化可能にした網状管状体よりなるマトリックス補強構造
    体。
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