JP2627937B2 - 二軸延伸ブロー成形壜体、その製造方法及びそれを用いた複合容器 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、ブック形状の偏平容器本体に対し斜めに口
栓部を有する壜体、及びその製造方法、並びにそれを紙
製容器に組み込んだ複合容器に関する。

〔従来の技術〕

ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる壜体は各種の
飲料用容器として広く利用されている。このような壜体
は通常本体の上端部にそれと同軸的に口部を有してい
る。ところが最近、口部が上端でなくやや傾斜した位置
に設けられた壜体が使用されるようになってきた。この
壜体は斜面を有する紙製容器内に収容され、斜面から口
部が突出するようになっている。

従来このような壜体としては、実開昭56−150763号、
実公昭62−29375号及び同62−29376号に開示されたもの
が知られている。これらの壜体はいずれも二軸延伸ブロ
ー成形された本体の上端に同軸的に口部が設けられてい
るが、本体の上部に蛇腹その他の変形可能部が形成され
ているので、成形後所定の紙製容器内に収容する際に口
部を傾斜させることができる。

〔発明が解決しようとする課題〕

しかしながら、上記従来の壜体では本体上部に設けら
れた蛇腹等の変形手段により口部が傾斜しているので、
壜体本体内に余分な凹凸が存在することになる。これら
の蛇腹部等には内容物が残留しやすく、内容物のスムー
ズな流出が妨げられる。また容器の表面積が大きくなる
ので、ガスバリヤー性等の特性が低下する。その上蛇腹
部等複雑な形状の変形部を設けることにより、壜体全体
の製造コストが上昇する。

また、ウィスキーのポケットびんの様な用途にあって
は、持運び便利な偏平、ブック形状の形態が、ファッシ
ョン性の観点からも望まれている。さらに取り扱い性の
観点から口部が傾斜したポケットびんが望まれるように
なってきた。ところが、偏平でかつ口部が傾斜している
壜体は、従来の二軸延伸ブロー成形方法では、成形が困
難であった。

すなわち、円筒形状のパリソンを軸方向に延伸する従
来の方法では、軸方向延伸ストロークが充分とれない
為、肉厚が極端に薄くなるコーナー部分ができてしまう
という欠点があり、一方では延伸配向効果が充分得られ
ず、低延伸部ができてしまうという不均一性があり、充
分な性能の容器が得られなかった。

従って本発明の目的は、延伸配向の効果を充分有す
る、偏平でかつ口部が傾斜成形されている合成樹脂製壜
体を提供することである。

本発明のもう１つの目的は上記合成樹脂製壜体の製造
方法を提供することである。

本発明のさらに１つの目的はかかる合成樹脂製壜体を
具備した複合容器を提供することである。

〔課題を解決するための手段〕

上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者はパリソン
の中心軸に口栓部付近で接する半径Ｒの円周に沿って、
前記円周と同一の曲率半径を有する延伸ロッドをパリソ
ンの口栓部に挿入し、二軸延伸ブロー成形することによ
り、口栓部が傾斜した壜体を得ることができることを発
見し、本発明を完成した。

すなわち本発明の二軸延伸ブロー成形は、角及び綾線
部分が曲面状になっている直方体状の胴部と、円筒形状
の口栓部と、前記胴部と前記口栓部とを接続し、滑らか
な曲面からなる肩部とからなり、前記口栓部の中心線が
前記胴部に対して傾斜していることを特徴とする。

またかかる二軸延伸ブロー成形壜体を製造する本発明
の方法は、口栓部及びつば状のフランジを有する有底円
筒状パリソンを作成し、前記パリソンの中心軸に前記口
栓部付近で接する曲率半径Ｒの曲線に沿う形状に曲がっ
た延伸ロッドを前記口栓部内に挿入し、延伸適性温度
で、角及び綾線部分が曲面状になっている直方体状のキ
ャビティを有するブロー成形型内において、二軸延伸ブ
ロー成形することを特徴とする。

さらに本発明の複合容器は、かかる壜体と、上部に斜
面を有する紙製容器とからなり、前記口栓部が前記紙製
容器の斜面の開口部より突出しているとともに、前記口
栓部が前記斜面開口部に接着されていることを特徴とす
る。

〔実施例〕

第１図及び第２図は本発明の一実施例による二軸延伸
ブロー成形壜体を示す。壜体１は直方体状の胴部２と、
口栓部３と、胴部２と口栓部３とを接合する肩部４とか
らなる。胴部２は偏平の直方体状であり、横幅ａに対し
て、厚さｂが十分に小さい。また各角部及び綾線はなめ
らかな曲面状になっている。口栓部３はネジ山31と、フ
ランジ部32とを有する。

本発明の壜体においては、口栓部３の中心線Ａは胴部
２の中心線Ｂに対して角度θだけ傾斜している。傾斜角
θは任意に設定できるが、デザイン上及び実用上の観点
から45〜30゜程度であるのが好ましい。

本発明においては、口栓部３の傾斜方向は胴部２の大
きな側面と平行な面内である。換言すれば小さな側面の
一方の側に口栓部３が傾斜した形状である。こうするこ
とにより壜体１をポケット等に入れるのに便利であると
ともに、内容物を注出するのにも便利である。

口栓部３が傾斜していることにより、口栓部３と胴部
２とを接合する肩部４は一方の側が大きく、他方が小さ
くなる形状を有するが、いずれの側もなめらかな曲面状
である必要がある。

このような形状とすることにより、全体的に偏平な直
方体状で口栓部が傾斜しているとともに、各部がなめら
かに連続しており、ポケット等への出し入れにおいて引
っかかることがない。

第３図は本発明の壜体を製造する装置の一例を示す。
装置は、ブロー成形型10、11と、ブロー成形型10、11を
駆動するプラテン12、13と、リップ型14と、ブローマン
ドレル15と、ブローマンドレル固定ブロック16と、延伸
ロッド17と、延伸ロッド固定ブロック18とを有する。

ブロー成形型10、11は図示の形状のパーティングライ
ン19で接合するようになっており、壜体の口栓部が傾斜
していても型から抜き取ることが容易であるとともに、
パーティング面での容器の断面積が小さくとれるために
型締め圧力が小さくてすみ、また離型の際にアンダーカ
ットを発生させず、開閉ストロークを最小にできるとい
う利点がある。成形型10、11により形成されるキャビテ
ィ20は、所望の壜体の形状に対応する輪郭を有する。

延伸ロッド17は曲率半径Ｒの曲線Ｃ上に往復動できる
ようになっており、そのため曲線Ｃに沿う形状に曲がっ
ている。それに応じてブローマンドレル15及びブローマ
ンドレル固定ブロック16には延伸ロッド17が通る曲線状
の貫通路が形成されている。また、ブローマンドレル15
内に設けられた軸受21及びブローマンドレル固定ブロッ
ク16内に設けられた軸受22により、延伸ロッド17は曲線
Ｃ方向に往復動自在に支持されている。また気密性を保
持するためにブロック16にシール23、24が設けられてい
る。

ブロック16には、ブローエア流路25が形成されてお
り、ブロー用エアはキャビティ20内に注入される。

なお延伸ロッド17は多数のエア噴出口を有するととも
に、必要に応じ加熱装置を有する。加熱装置により二軸
延伸ブロー成形後の壜体を熱処理することができる。

第４図は、第３図の装置において、パリソン26をキャ
ビティ20内にセットした状態を示す。パリソン26の口部
３は、リップ型14により固定されている。この状態で延
伸ロッド17をパリソン26内に挿入する。ここで延伸ロッ
ド17は、曲線Ｃに沿って移動するようになっており、か
つ曲線Ｃはキャビティ20の底部における点Ｐにおいてキ
ャビティ20の内壁と接するようになっている。従って、
パリソン26が二軸延伸ブロー成形により拡大していくと
ともに延伸ロッドがその中に進入して行く際に、キャビ
ティ20の側壁等によりさまたげられることがない。また
延伸ロッド17の先端部17′はキャビティ20の底部に当接
するので、都合がよい。このような構成により、パリソ
ン26はほぼ均一に二軸延伸され、所望の形状のキャビテ
ィに沿った形状に成形される。従って、胴部の肩部（例
えば4a、4b）における肉厚が極端に薄くなるようなこと
はない。

これに対して、第５図に示すように、延伸ロッドが曲
線状でないと、口栓部３の傾斜により延伸ロッド17はキ
ャビティ20の側壁と接することになり、二軸延伸ブロー
成形された壜体の側面に不均一な部分が生ずることにな
る。さらに延伸倍率が場所によって著しく異なるため
に、肉厚の不均一が著しくなる。

第６図は多数の壜体を同時に製造する装置を示す。こ
の実施例においては10個の壜体を同時に製造する。ブロ
ー成形型40は10個のキャビティ41を有する。各キャビテ
ィ41のリップ型42にパリソン43を固定し、その上からブ
ローマンドレル44とブローマンドレル固定ブロック45を
固着する。なお第３図と同様にブローマンドレル44とブ
ローマンドレル固定ブロック45の貫通孔内に各延伸ロッ
ド46が貫通するようになっている。この実施例の装置に
おいては、各延伸ロッドは横方向に延在するブロック47
により固定され、同時に往復動するようになっている。

各延伸ロッド46の同時駆動は第７図に示す装置により
行うことができる。横方向に延在するブローマンドレル
固定ブロック45にはロッド48が49において枢動自在に連
結されており、ロッド48の他端50は液圧シリンダ51のピ
ストン52と枢動自在に連結している。また液圧シリンダ
51の下端は、54にブローマンドレル固定ブロック45に枢
動自在に固定されている。なお液圧シリンダ53はブロー
マンドレル駆動用である。

第６図及び第７図に示す装置により壜体を同時成形す
る場合、まず各パリソン43を各リップ型42に固定して各
キャビティ41内に入れ、ブローマンドレル駆動シリンダ
53を駆動することにより、ブローマンドレル44を降下さ
せ、型40と接合させる。次に、駆動シリンダ51を駆動す
ることにより延伸ロッド46を各パリソン43内に挿入す
る。この状態で第３図の実施例と同様にエアを注入しな
がら延伸ロッド46を挿入し、パリソンの二軸延伸ブロー
成形をする。

第８図は本発明の複合容器を示す。複合容器は壜体１
と紙製容器60とからなり、紙製容器60は上部に斜面61を
有し、斜面61に開口部62が設けられている。壜体１を収
容した状態で紙製容器60を封じると、壜体１の口栓部３
は斜面61の開口部62から突出する。

口栓部３のフランジ部32と紙製容器60の開口部62とを
固定するには種々の手段を用いることができるが、確実
かつ簡単に固定する方法としてホットメルト接着剤を使
用し固着するのが好ましい。なお紙製容器60には必要に
応じて内外層に樹脂コーティングを施こすことができ、
またその外面に所望の文字やデザイン等を印刷すること
ができる。

なお本発明の二軸延伸ブロー成形壜体に使用する熱可
塑性樹脂としては、飽和ジカルボン酸と飽和二価アルコ
ールとからなるポリエステル樹脂が好ましい。飽和ジカ
ルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタ
ル酸、ナフタレン−1,4−又は2,6−ジカルボン酸、ジフ
ェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルジ
カルボン酸類、ジフェノキシエタンジエタンジカルボン
酸類等の芳香族ジカルボン酸類、アゼピン酸、セバチン
酸、アゼライン酸、デカン−1,10−ジカルボン酸等の脂
肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂
環族ジカルボン酸等を使用することができる。また飽和
二価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピ
レングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチ
レングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレン
グリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメ
チレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカ
メチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪
族グリコール類、シクロヘキサンジメタノール等の脂環
族グリコール、2,2−ビス（４′−β−ヒドロキシエト
キシフェニル）プロパン、その他の芳香族ジオール類等
を使用することができる。好ましいポリエステルは、テ
レフタル酸とエチレングリコールとからなるポリエチレ
ンテレフタレートである。

本発明に用いるポリエステル樹脂は、固有粘度が0.5
〜1.5、好ましくは0.55〜0.85の範囲の値を有する。ま
たこのようなポリエステルは、溶融重合で製造され、18
0〜250℃の温度下で減圧処理または不活性ガス雰囲気で
熱処理されたもの、または固相重合して低分子量重合物
であるオリゴマーやアセトアルデヒドの含有量を低減さ
せたものが好適である。

なお本発明で使用するポリエステル樹脂中には、本発
明の目的を損なわない範囲で安定剤、顔料、酸化防止
剤、熱劣化防止剤、紫外線劣化防止剤、帯電防止剤、抗
菌剤等の添加剤やその他の樹脂を適量加えることができ
る。

また、本発明の壜体が直方体を基本とする胴部に、補
強のための縦リブ、横リブ等の凹凸を有するものであっ
てもよいことは、いうまでもない。

本発明を以下の具体的実施例によりさらに詳細に説明
する。

実施例１ 第１図及び第２図に示す形状の壜体を以下の手順によ
り製造した。

まず、ポリエチレンテレフタレート樹脂（三井石油化
学工業（株）製J125）から作成したパリソンを第３図の
装置内にセットした。パリソンの口栓部の外径は22mm、
内径は17mm、胴部の肉厚は0.45mmであった。また装置の
リップ型の中心線（口栓部の中心線と一致）はキャビテ
ィの中心線（胴部の中心線と一致）と30゜の角度で交わ
るように傾斜していた。

成形型を約60℃に加熱しながら、パリソンを100〜115
℃に加熱した状態でブローマンドレルから加圧空気（25
気圧）を噴出し、パリソンの二軸延伸を行なった。パリ
ソンの縦延伸に応じて延伸ロッドを挿入していき、最終
的には延伸ロッドは、得られた壜体の底部を介してキャ
ビティの底部に当接した。

このようにして得られた壜体の胴部は全体的にほぼ均
一な肉厚を有し、特に角部4a、4bの肉厚はそれぞれ0.35
mm及び0.25mmであった。

比較例１ 第５図で示すように真直ぐな延伸ロッドを使用した以
外同一の条件で実施例１と同様にして壜体を製造した。
得られた壜体は側壁に不均一部分を有するとともに、胴
部肉厚も全体的に不均一であった。特に角部4a、4bの厚
さはそれぞれ0.43mm及び0.18mmであった。

〔発明の効果〕

以上に詳述した通り、本発明の二軸延伸ブロー成形壜
体は、胴部が偏平な直方体状であるとともに口栓部が傾
斜しており、かつ全体的になめらかな曲面で各部が連続
した形状を有する。このため、ポケット等に出し入れす
るのに便利であり、かつ内容物を注出する上で使い勝手
が良好である。

また本発明の製造方法により、曲線状の延伸ッドを用
いるので、口栓部が傾斜していても延伸ロッド先端部が
壜体底部に当接するようになる。これにより壜体各部が
ほぼ均一の倍率で二軸延伸されるので傾斜した口栓部を
有するのにもかかわらず壜体胴部の肉厚は全体的に非常
に均一なものとなる。

この結果、アルコールを高濃度で含むウィスキー等の
長期保存において、壜体胴部にクレージングを発生しな
い延伸配向を実現できる。

また偏平直方体状の壜体を包む紙製容器を用い、上部
斜面の開口部から口栓部が突出するようにするととも
に、口栓部を開口部に接着剤等で固着することにより、
持ち運びが便利で、液切れがよく、使い勝手の良好な複
合容器とすることができる。さらに紙製容器に種々の文
字、デザイン等を印刷することにより、商品価値の高い
容器とすることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例による二軸延伸ブロー成形壜
体の正面図であり、 第２図は第１図の壜体の側面図であり、 第３図は本発明の二軸延伸ブロー成形壜体を製造するた
めの装置を示す断面図であり、 第４図は本発明の方法により壜体を成形する状態を示す
断面図であり、 第５図は従来の方法により壜体を成形する状態を示す断
面図であり、 第６図は本発明の他の実施例により多数の壜体を同時に
成形する装置を示す断面図であり、 第７図は第６図のＡ−Ａ′断面図であり、 第８図は本発明の一実施例による複合容器を示す断面図
である。 １……二軸延伸ブロー成形壜体 ２……胴部 ３……口栓部 ４……肩部 10、11、40……ブロー成形型 12、13……ブロー成形型用プラテン 14、42……リップ型 15、44……ブローマンドレル 16、45……ブローマドレル固定ブロック 17、46……延伸ロッド 18、47……延伸ロッド固定ブロック 20、41……キャビティ 26、43……パリソン 60……紙製容器 61……斜面 62……開口部

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】二軸延伸ブロー成形により一体的に成形し
   た壜体において、角及び綾線部分が曲面状になっている
   直方体状の胴部と、円筒形状の口栓部と、前記胴部と前
   記口栓部とを接続する滑らかな曲面からなる肩部とから
   なり、前記口栓部の中心線が前記胴部に対して傾斜して
   いることを特徴とする壜体。
2. 【請求項２】角及び綾線部分が曲面状になっている直方
   体状の胴部と、円筒形状の口栓部と、前記胴部と前記口
   栓部とを滑らかに接続する肩部とからなり、前記口栓部
   の中心線が前記胴部に対して傾斜している壜体を製造す
   る方法において、口栓部及びつば状のフランジを有する
   有底円筒状パリソンを作成し、前記パリソンの中心軸に
   前記口栓部付近で接する曲率半径Ｒの曲線に沿う形状に
   曲がった延伸ロッドを前記口栓部内に挿入し、延伸適性
   温度で、角及び綾線部分が曲面状になっている直方体状
   のキャビティを有するブロー成形型内において、二軸延
   伸ブロー成形することを特徴とする方法。
3. 【請求項３】請求項２に記載の方法において、隣接する
   位置に多数個のブロー成形型を一列に配置し、多数個の
   延伸ロッドを用いて多数の壜体を同時に製造することを
   特徴とする方法。
4. 【請求項４】請求項１に記載の壜体と、前記壜体を収容
   するとともに上部に斜面を有する紙製容器とからなり、
   前記口栓部が前記紙製容器の斜面の開口部より突出して
   いるとともに、前記口栓部が前記斜面開口部に固定され
   ていることを特徴とする複合容器。