JP2622126B2 - 可飽和インダクタ及びその製造方法並びにその可飽和インダクタを用いたパルスレーザ励起電源装置 - Google Patents

可飽和インダクタ及びその製造方法並びにその可飽和インダクタを用いたパルスレーザ励起電源装置

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JP2622126B2
JP2622126B2 JP62255276A JP25527687A JP2622126B2 JP 2622126 B2 JP2622126 B2 JP 2622126B2 JP 62255276 A JP62255276 A JP 62255276A JP 25527687 A JP25527687 A JP 25527687A JP 2622126 B2 JP2622126 B2 JP 2622126B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は可飽和インダクタに係り、特に、昇圧トラン
スの後段に縦続的に接続される形式のものに関する。ま
た、この可飽和インダクタを用いたパルスレーザ励起電
源装置に関する。
〔従来の技術〕
パルスレーザ励起電源装置等に用いられる可飽和イン
ダクタとしては、帯状のアモルファス金属に絶縁材を重
ねて巻回したものが知られている。アモルファス金属を
使用する理由は、アモルファス金属が低鉄損、高飽和磁
束密度、高角型性(高透磁率)という特性を有し、イン
ダクタの小型化、高性能化を図ることができるからであ
る。
しかし、一般にアモルファス磁性材料は、その製造の
ための急冷時、あるいは加工時に生じる歪みにより、大
幅に磁気特性が劣化してしまうので、磁気特性を改善す
るため、結晶化温度以下で、かつ、キュリー温度近傍で
歪み取りの熱処理を施すことが必要とされている。この
熱処理には、温度と時間が関係するが、温度としては、
例えばアライドシグナル社製アモルファス磁性合金(商
品名メトグラス)では、300〜500℃の範囲であり、特
に、メトグラス2605S2型アモルファス金属(以下、単に
S2型という)では約400℃、メトグラス2605SC型アモル
ファス金属(以下、単にSC型という)では約365℃程度
の温度が必要とされている。
ところで、このような熱処理を施すと、アモルファス
金属の脆化が進み、割れやすくなるといった特性があ
る。
従って、アモルファス金属を巻きコアとして用いて可
飽和インダクタを製造する場合、アモルファス金属をあ
らかじめキュリー温度近傍で熱処理してから、改めて絶
縁材を重ねて巻回することは難しい。
このため従来は、未熱処理の帯状アモルファス金属に
絶縁材を重ねて巻回してから前記条件の熱処理を施して
製造せざるを得なかった。
この結果、熱処理の際に絶縁材にも熱が加えられるた
め、耐熱製の優れたものが必要となり、従来は耐熱性の
高いポリイミド(例えば、デュポン・ファーイースト日
本支社製、商品名「カプトン」)のシートを使用して対
処している。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかし、前記した製造方法では、熱処理における帯状
アモルファス金属とポリイミドシートの熱膨張差で生ず
る歪みにより影響されて、所期の磁気特性が十分に得ら
れないという問題点がある。特に、B−H特性における
角型性の改善が不十分で、また、飽和磁束密度△Bも所
期の値を得られず、小型、高性能の可飽和インダクタン
スが得られない。
また、前記したポリイミドは極めて高価で、これを用
いた可飽和インダクタンスのコストが高くなるという問
題もある。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、
磁気特性に優れ、また、耐熱性が低い安価な絶縁材を用
いて構成でき、コストを引き下げることができるように
した可飽和インダクタ及びその製造方法を提供し、あわ
せてこの可飽和インダクタを用いたパルスレーザ励起電
源装置を提供することを技術的課題とする。
〔問題点を解決するための手段〕
前記したように、アモルファス金属は結晶化温度以下
で、かつ、キュリー温度近傍で歪み取りの熱処理を施さ
なければ、十分な磁気特性が得られないとされている
が、実験の結果、必ずしも前記のような温度以下で熱処
理した場合でも優れた磁気特性が得られることが判明し
た。
また、比較的低温で熱処理した場合には脆化がそれほ
ど進行しないことが明らかとなった。
本発明はこのようなアモルファス金属の物理特性に着
目したものであり、可飽和インダクタを以下のような方
法で製造した。
即ち、本発明の方法は、熱処理済の所定長さを有する
厚さtのアモルファス金属を湾曲させて、この湾曲によ
り破壊される直前における湾曲したアモルファス金属の
外径をLとし、曲率半径をr〔r=(L−t)/2〕とし
た場合、次の式 ξf=t/(L−t) で表されるみかけの脆化度(ξf)が0.025以上となる
温度及び時間の範囲内で、アモルファス金属を熱処理し
た後、この熱処理済のアモルファス金属に絶縁材を重ね
て巻回して可飽和インダクタを製造する方法である。
ここで、みかけの脆化度(ξf)が0.025以上、好ま
しくは0.03以上、さらに好ましくは0.035以上である条
件下で、前記熱処理が行われるとき、アモルファス金属
において、その脆性が進行しても未だなお巻回可能な可
撓性を保持しうる範囲内に止どまることが確認された。
熱処理の具体的条件としては、例えば250℃〜450℃好
適には300℃〜350℃で2時間以内の熱処理をすることが
例示できる。
さらに好適には、アモルファス金属として、鉄,ホウ
素及びシリコンからなるアモルファス金属,又は鉄,ホ
ウ素,シリコン及び炭素からなるアモルファス金属を用
いるとともに、前記熱処理における前記温度及び時間の
範囲を、300℃〜315℃で2時間以下とするのが望まし
い。
また、前記熱処理が、磁場中で行われるとき、アモル
ファス金属の磁気特性は更に向上する。
前記アモルファス金属としては組成で例えば、Fe・B
・Si・C系、Fe・Co・B・Si系、Fe・B・Si系、Fe・B
・Si・Cr系、Fe・Ni・Mo・B系、Co・Fe・Ni・Mo・B・
Si系、Co・Fe・Ni・B・Si系のもの等が例示される。
そして、パルスレーザ励起電源装置は、昇圧トランス
T1、この昇圧トランスT1に電源を断続的に接続するため
のパルススイッチ手段SW、及び前記昇圧トランスの出力
に縦続的に接続され各々可飽和インダクタSL1・SL2・SL
3とエネルギ蓄積コンデンサC2・C3・C4とを有する複数
のパルス圧縮回路を具備し、前記可飽和インダクタは、
熱処理済の所定長さを有する厚さtのアモルファス金属
を湾曲させて、この湾曲により破壊される直前における
湾曲したアモルファス金属の外径をLとし、曲率半径を
r〔r=(L−t)/2〕とした場合、次の式 ξf=t/(L−t) で表されるみかけの脆化度(ξf)が0.025以上となる
温度及び時間の範囲内で、アモルファス金属を熱処理し
た後、この熱処理済のアモルファス金属に、絶縁材を重
ねて巻回して構成した。
また、前記パルスレーザ励起電源装置は、パルススイ
ッチ手段がサイラトロンであるもの、及び、電源がその
出力端にインピーダンス回路を備えているとともに、前
記パルススイッチ手段が可飽和インダクタであるものを
含む。
〔作用〕
本発明最大の特徴はアモルファス金属をコイル状に巻
回した状態で熱処理するのではなく、アモルファス金属
単体を、熱処理済の所定長さを有する厚さtのアモルフ
ァス金属を湾曲させて、この湾曲により破壊される直前
における湾曲したアモルファス金属の外径をLとし、曲
率半径をr〔r=(L−t)/2〕とした場合、次の式 ξf=t/(L−t) で表されるみかけの脆化度(ξf)が0.025以上となる
温度及び時間の範囲内で、アモルファス金属を熱処理し
た後、絶縁材を重ねて巻回することにある。
従って、絶縁材の選択に際して、従来のように耐熱性
を考慮しなくてもよく、合成樹脂の他、紙やゴム等も用
いることができる。合成樹脂としては、ポリエチレン、
ポリプロピレン、ポリメチルブテン、ポリメチルベンテ
ン、といったポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレ
ート、ポリブテンテレフタレート、といったポリエステ
ル、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミ
ド、ポリ塩化ビニル、ABSの他各種合成樹脂を使用でき
る。そして、具体的には可飽和インダクタに要求される
性能に応じて、誘電率、絶縁抵抗、対候性等を勘案して
選定するのがよい。また、ここで重要なことは、絶縁材
の選択の幅が広がったことで、廉価な絶縁材を使用でき
るようになったことである。
また、本発明においては、従来のようにアモルファス
金属をコイル状に巻回した状態で熱処理するものでない
ため、熱処理の際、アモルファス金属と絶縁材の熱膨張
差で生ずる歪みにより所期の磁気特性が十分に得られな
いという問題が無い。これにより、アモルファス金属の
特性として、とりわけB−H特性における角型性(透磁
率)の改善をはかることができる。
〔実施例〕
本発明の実施例を第1図ないし第8図に基づいて説明
する。
この実施例は、巻きコアたる帯状アモルファス金属
を、その脆性が進行しても未だなお巻回可能な可撓性を
保持しうる温度及び時間の範囲内で熱処理した後、この
熱処理済のアモルファス金属に絶縁材としてポリエステ
ル製薄膜を重ねて巻回するものである。
ここで問題となるのは、アモルファス金属にポリエス
テル製薄膜を重ねた状態で巻回するときにアモルファス
金属に亀裂等が生じない程度にまで熱処理することにあ
る。
みかけの脆性度は、第2図に示すように、圧縮試験機
の両腕間に所定長さの板状のアモルファス金属試料の両
端を挾持するとともに、両腕を接近させ、試料を湾曲さ
せることによって計測する。このとき試料の厚さをt、
曲率半径をr、この湾曲により破壊される直前における
湾曲したアモルファス金属の外径(両腕間の距離)をL
とすると、みかけの脆性度合(ξf)は、 ξf=t/(L−t) となる。
また、破壊時の曲率半径(r)は、 r=(L−r)/2 て示される。
以下、アモルファス金属試料を熱処理した実験結果に
つき説明する。
<実施例1> 第1図は加熱温度及び加熱時間を変えてメトグラス26
05S2(S2型)アモルファス金属の脆性(ξf)の変化を
プロットしたものであり、加熱温度を適宜変えて、10分
間熱処理し、あるいは加熱温度及び加熱時間を夫々、26
0℃2時間加熱・300℃2時間加熱・300℃14時間加熱・3
15℃2時間加熱・315℃6時間加熱、として測定した。
なお、S2型アモルファス金属の組成は、Fe78B13Si9であ
る。
この結果、260℃2時間加熱・300℃2時間加熱・300
℃14時間加熱・315℃2時間加熱・315℃6時間加熱した
ものはいずれも巻回可能な可撓性を保留していることが
確認された。
続いて、加熱温度と磁気特性との関係を実験したとこ
ろ第3図(A)〜(C)に示す結果を得た。図中縦軸は
磁束密度(ガウス)を示し、横軸は磁場(エルステッ
ド)を示す。
参考例として、S2型アモルファス金属を熱処理せず、
これに6μのポリエステルシートを介挿して800層に巻
回し、さらにDC−BH特性を測定した。実験結果を第3図
(A)に示す。この特性では、可飽和インダクタとして
用いることは可能であるが未だ不十分であり、さらに小
型化、高効率化のため性能の向上を図る必要がある。
次に、S2型アモルファス金属を315℃で2時間、20Oe
磁場中のN2雰囲気中で加熱処理した後、測定したとこ
ろ、可飽和インダクタに要求される、性能の向上した磁
気特性が得られた。実験結果を第3図(B)に示す。
前記第3図(B)に示す条件でS2型アモルファス金属
を、熱処理を行った後、このS2型アモルファス金属に6
μのポリエステルシートを介挿して幅2.54cm、内径4c
m、外径8.97cmで800層に巻回し、測定したところ優れた
磁気特性が得られた。実験結果を第3図(C)に示す。
<実施例2> メトグラス2605SC(SC型)アモルファス金属の加熱温
度及び加熱時間と磁気特性との関係を実験したところ第
3図(D)〜(G)に示す結果を得た。なお、SC型アモ
ルファス金属の組成は、Fe81B13.5Si3.5C2である。
参考例として、SC型アモルファス金属を熱処理せず、
これにポリエステルシートを介挿して800層に巻回し、
さらにDC−BH特性を測定した。実験結果を第3図(D)
に示す。この特性では、可飽和インダクタとして用いる
ことは可能であるが未だ不十分であり、さらに小型化、
高効率化のため性能の向上を図る必要がある。
次に、SC型アモルファス金属を300℃で2時間、20Oe
磁場中のN2雰囲気中で加熱処理し、DC−BH特性を測定し
たところ、可飽和インダクタに要求される、さらに性能
の向上した磁気特性が得られた。実験結果を第3図
(E)に示す。
SC型アモルファス金属を315℃で、20Oe磁場中のN2
囲気中にて2時間加熱処理し、測定したところ、前記第
3図(E)に示した磁気特性よりも更に良好な特性が得
られた。実験結果を第3図(F)に示す。
前記第3図(F)に示す条件でSC型アモルファス金属
を熱処理し、このSC型アモルファス金属に6μのポリエ
ステルシートを介挿して幅2.54cm、内径4cm、外径8.33c
mで800層に巻回したものを測定したところ、可飽和イン
ダクタに要求される充分な磁気特性が得られた。実験結
果を第3図(G)に示す。
以上、第1及び第2の実施例から、300℃ないし315℃
で2時間以下の加熱では脆化は殆ど進行しない一方、磁
気特性は相当に改善され、実用に耐えることが明らかと
なった。
第8図は、実施例による可飽和インダクタを一部切り
欠いて示す斜視図である。この可飽和インダクタは、上
述したように300℃ないし315℃で2時間以下の熱処理を
施した薄帯状のアモルファス金属1と絶縁材2である薄
帯状のポリエステルシートとを重ねるとともに、これら
をコイル状に巻回することによって構成されている。
絶縁材2は従来のものと異なり耐熱性が要求されるこ
とはないため、電気的特性と耐候性等が条件に合致すれ
ば、実施例で使用したポリエステルシートの他、あらゆ
るシート状材料を使用することができる。
第4図は、前記構成になる可飽和インダクタを用いた
高速繰り返しパルスレーザ励起電源装置の電気的構成を
示す。同図の装置は充電電源PS、充電電源PSに接続され
たSCRのような半導体スイッチ素子SW、エネルギ蓄積コ
ンデンサC1、半導体スイッチ素子SWの両端にコンデンサ
C1を介して1次コイルが接続された昇圧トランスT1、こ
の昇合トランスT1の2次コイルに縦続接続された可飽和
インダクタSL1,SL2,SL3及びコンデンサC1,C2,C3で構成
され、それにマキシマーレーザのようなレーザ負荷LDが
接続されている。
第5図は第4図の装置に使用されているパルス圧縮回
路の具体的構成を示す。パルス圧縮回路は第5図に示さ
れるように、高電圧に対する安定性と低インダクタンス
を実現するために、高電位導体板を中央に置き、これを
2枚のアース導体板3a,3bによりはさみ込む構造となっ
ている。各コンデンサC1,C2,C3は例えば夫々残留インダ
クタンスの小さいセラミックコンデンサ等を複数個並列
接続することにより構成される。
なお、昇圧トランスT1の1次コイル側に接続されるエ
ネルギ蓄積コンデンサC1としては例えばオイルコンデン
サ等が使用できる。各可飽和インダクタSL1,SL2,SL3に
はこれらに近接させて冷却ファン5a,5b,5cが夫々設けら
れている。なお、前記可飽和インダクタSL1,SL2,SL3を
液冷としてもよいことは勿論である。
前記各可飽和インダクタSL1,SL2,SL3は前記した方法
により製造されており、これらは前記した磁心を各々所
望の数だけ使用し、かつ、コイルの巻き線数を適切に選
択することにより飽和時のインダクタンスSLsatが例え
ば順次小さくなるように構成される。
以上のようにして構成された高速繰り返しパルスレー
ザ励起電源装置の動作を説明する。まず高電圧の充電電
源PSでエネルギ蓄積コンデンサC1をVcl(電圧)に充電
しておき、半導体スイッチSWのゲートを外部からトリガ
することによりこの半導体スイッチSWを導通させる。こ
れにより、コンデンサC1の電荷が昇圧トランスT1を介し
てコンデンサC2へ移乗する。
ここで、可飽和インダクタSL1はこの間未飽和状態に
あり、高インダクタンスとなるため、コンデンサC2の電
荷はほとんどコンデンサC3へ流出されることはない。一
方、コンデンサC2の電圧がVC2maxに達すると可飽和イン
ダクタSL1は飽和状態になり、急激にインダクタンスが
低下するように設計されている。これにより、コンデン
サC2に蓄積された電荷は、コンデンサC1へ戻らず、コン
デンサC2、可飽和インダクタSL1及びコンデンサC3によ
って構成される回路の時定数τ1に従ってコンデンサC3
へ移乗し、τ1時間経過後のコンデンサC3の電圧が最大
電圧VC3maxに達する。この時、時定数τ1は次式で表さ
れる。
ここで、SL1satは可飽和インダクタSL1の飽和インダ
クタンスである。上式で表される時定数τ1の時間の
間、可飽和インダクタSL2は未飽和状態にあり、コンデ
ンサC2に蓄積された電荷はコンデンサC4へ流れ込まず、
ほとんどコンデンサC3に移乗する。そして、コンデンサ
C3の電圧がVC3maxに達すると、可飽和インダクタSL2が
急激に飽和するが、ここで可飽和インダクタSL2の飽和
インダクタンスを可飽和インダクタSL1のそれより小さ
くしておくことにより、コンデンサC3、可飽和インダク
タSL2、およびコンデンサC4によって構成される回路の
時定数τ2に従ってコンデンサC3に蓄積されたエネルギ
を有効にコンデンサC4ヘ移乗させるとともに、パルス幅
を圧縮することが可能となる。この場合、時定数τ2は
次時で表される。
ここで、SL2satは可飽和インダクタSL2の飽和インダ
クタンスである。
同様に、コンデンサC3の電荷が完全にコンデンサC4に
移乗するまで可飽和インダクタSL3が未飽和状態を保
ち、エネルギの移乗がおこなわれコンデンサC4の電圧が
最大になった時点で可飽和インダクタSL3が飽和し、コ
ンデンサC4に蓄積されたエネルギが負荷LDへ流れ込む。
なお、電源装置の出力インピーダンスZoutは、 で表され、可飽和インダクタSL3の形状を考慮すること
により、その飽和インダクタンスSL3satは数10mHと小さ
くすることができるから出力インピーダンスZoutを1Ω
以下にすることが可能である。
このように、エネルギ共振移乗回路を複数個直列に接
続し、回路中のインダクタとして可飽和インダクタを使
用し、コンデンサC1,C2,C3の静電容量を同一にし、かつ
可飽和インダクタの飽和インダクタンスを次第に減少さ
せることにより、磁気パルス圧縮装置を構成することが
可能となり、エネルギを効率よく伝達させるとともに、
インピーダンスを順次低下させ、かつパルス幅の圧縮が
可能となる。さらにパルス電源の出力インピーダンスを
エキシマーレーザの低い放電インピーダンスに整合させ
ることができる。
第6図及び第7図は高速繰り返しパルスレーザ励起電
源装置の他の構成例を示す。第6図に示すものは、磁気
アシスト回路である。パルススイッチとしてサイラトロ
ン(Thyratron)SWを用いたものであり、サイラトロンS
Wの寿命を延ばす等の保護をさせるために可飽和インダ
クタSLを用いたものである。
第7図に示すものは磁気出力スイッチ(パルス・シャ
ープニングスイッチ)として可飽和インダクタSLを備え
る回路である。このインピーダンス回路Zとしては、コ
ンデンサ、又はパルス成形回路(パルス成形線路)を用
いることができる。
[発明の効果] 本発明では、熱処理済の所定長さを有する厚さtのア
モルファス金属を湾曲させて、この湾曲により破壊され
る直前における湾曲したアモルファス金属の外径をLと
し、曲率半径をr〔r=(L−t)/2〕とした場合、次
の式 ξf=t/(L−t)で表されるみかけの脆化度(ξ
f)が0.025以上となる温度及び時間の範囲内で、アモ
ルファス金属を熱処理した後、絶縁材を重ねて巻回した
ため、従来のようにアモルファス金属をコイル状に巻回
した状態で熱処理するものと異なり、熱処理の際、アモ
ルファス金属と絶縁材の熱膨張差で生ずる歪みにより所
期の磁気特性が十分に得られないという問題が無く、こ
れにより、アモルファス金属の磁気特性、とりわけB−
H特性における角型性(透磁率)の向上をはかることが
できる。
また、アモルファス金属が巻回可能な脆化度を保持し
得る温度及び時間の範囲内で熱処理しているため、絶縁
材を重ねて巻回する際に、アモルファス金属が割れる
等,破損することがなく、適正に可飽和インダクタを製
造することができる。
また、絶縁材の選択に際して、従来のように耐熱性を
考慮しなくてもよく、よって、ポリエステル等安価な絶
縁材を用いることができ、インダクタのコストを下げる
ことができる。
このため、この可飽和インダクタを用いたパルスレー
ザ励起電源装置も高性能かつ低コストとすることができ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図ないし第8図は本発明の実施例を示し、第1図は
アモルファス金属の加熱温度とみかけの脆化度合いとの
関係を示すグラフ図、第2図はみかけの脆化度合いと破
壊時の曲率半径との関係を計測するための実験装置を示
す側面図、第3図(A)〜(G)はアモルファス金属の
熱処理条件とヒステリシス曲線との関係を示すグラフ
図、第4図は可飽和インダクタを用いたパルスレーザ励
起電源装置の回路図、第5図はパルスレーザ励起電源装
置に用いたパルス圧縮回路の内部構造を示す側面図、第
6図は他のパルスレーザ励起電源装置の回路図、第7図
はその他のパルスレーザ励起電源装置の回路図、第8図
は可飽和インダクタの内部構造を示す一部切欠した斜視
図である。 1……アモルファス金属、2……絶縁材、T1……昇圧ト
ランス、SL1,SL2,SL3……可飽和インダクタ、PS……充
電電源、C1,C2,C3,C4……コンデンサ、LL……バイパス
インダクタ、LD……レーザー負荷。

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱処理済の所定長さを有する厚さtのアモ
    ルファス金属を湾曲させて、この湾曲により破壊される
    直前における湾曲したアモルファス金属の外径をLと
    し、曲率半径をr〔r=(L−t)/2〕とした場合、次
    の式 ξf=t/(L−t) で表されるみかけの脆化度(ξf)が0.025以上となる
    温度及び時間の範囲である250℃〜450℃で2時間以内の
    範囲内で、アモルファス金属を熱処理した後、この熱処
    理済のアモルファス金属に絶縁材を重ねて巻回すること
    を特徴とする可飽和インダクタの製造方法。
  2. 【請求項2】前記熱処理が、磁場中で行われることを特
    徴とする特許請求の範囲第1項記載の可飽和インダクタ
    の製造方法。
  3. 【請求項3】前記アモルファス金属が、鉄,ホウ素及び
    シリコンからなるアモルファス金属であり、前記熱処理
    における前記温度及び時間の範囲が、300℃〜315℃で且
    つ2時間以下であることを特徴とする特許請求の範囲第
    1項記載の可飽和インダクタの製造方法。
  4. 【請求項4】前記アモルファス金属が、鉄,ホウ素,シ
    リコン及び炭素からなるアモルファス金属であり、前記
    熱処理における前記温度及び時間の範囲が、300℃〜315
    ℃で且つ2時間以下であることを特徴とする特許請求の
    範囲第1項記載の可飽和インダクタの製造方法。
  5. 【請求項5】熱処理済の所定長さを有する厚さtのアモ
    ルファス金属を湾曲させて、この湾曲により破壊される
    直前における湾曲したアモルファス金属の外径をLと
    し、曲率半径をr〔r=(L−t)/2〕とした場合、次
    の式 ξf=t/(L−t) で表されるみかけの脆化度(ξf)が0.025以上となる
    温度及び時間の範囲である250℃〜450℃で2時間以内の
    範囲内で、アモルファス金属を熱処理した後、この熱処
    理済のアモルファス金属に絶縁材を重ねて巻回したこと
    を特徴とする可飽和インダクタ。
  6. 【請求項6】昇圧トランスと、この昇圧トランスに電源
    を断続的に接続するためのパルススイッチ手段と、及び
    前記昇圧トランスの出力に直列的に接続された可飽和イ
    ンダクタと、並列的に接続されたエネルギ蓄積コンデン
    サとを有する複数のパルス圧縮回路を具備し、前記可飽
    和インダクタは、熱処理済の所定長さを有する厚さtの
    アモルファス金属を湾曲させて、この湾曲により破壊さ
    れる直前における湾曲したアモルファス金属の外径をL
    とし、 曲率半径をr〔r=(L−t)/2〕とした場合、次の式 ξf=t/(L−t) で表されるみかけの脆化度(ξf)が0.025以上となる
    温度及び時間の範囲である250℃〜450℃で2時間以内の
    範囲内で、アモルファス金属を熱処理した後、この熱処
    理済のアモルファス金属に絶縁材を重ねて巻回したもの
    であることを特徴とするパルスレーザ励起電源装置。
  7. 【請求項7】電源を次段に断続的に接続するためのサイ
    ラトロンと、このサイラトロンの後段に直列的に接続さ
    れた可飽和インダクタと、並列的に接続されたエネルギ
    蓄積コンデンサとを有するパルス圧縮回路とを具備し、
    前記可飽和インダクタは、熱処理済の所定長さを有する
    厚さtのアモルファス金属を湾曲させて、この湾曲によ
    り破壊される直前における湾曲したアモルファス金属の
    外径をLとし、 曲率半径をr〔r=(L−t)/2〕とした場合、次の式 ξf=t/(L−t) で表されるみかけの脆化度(ξf)が0.025以上となる
    温度及び時間の範囲である250℃〜450℃で2時間以内の
    範囲内で、アモルファス金属を熱処理した後、この熱処
    理済のアモルファス金属に絶縁材を重ねて巻回したもの
    であることを特徴とするパルスレーザ励起電源装置。
  8. 【請求項8】電源の後段に接続されたインピーダンス回
    路と、このインピーダンス回路の後段に直列的に接続さ
    れた可飽和インダクタと、並列的に接続されたエネルギ
    蓄積コンデンサとを有するパルス圧縮回路とを具備し、
    前記可飽和インダクタは、熱処理済の所定長さを有する
    厚さtのアモルファス金属を湾曲させて、この湾曲によ
    り破壊される直前における湾曲したアモルファス金属の
    外径をLとし、 曲率半径をr〔r=(L−t)/2〕とした場合、次の式 ξf=t/(L−t) で表されるみかけの脆化度(ξf)が0.025以上となる
    温度及び時間の範囲である250℃〜450℃で2時間以内の
    範囲内で、アモルファス金属を熱処理した後、この熱処
    理済のアモルファス金属に絶縁材を重ねて巻回したもの
    であることを特徴とするパルスレーザ励起電源装置。
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