JP2621392B2 - N―(1h―テトラゾール―5―イルノ―1―フェノキシ―4h―キノリジン―4―オン―3―カルボキサミド・ナトリウム塩の結晶性ノ水和物 - Google Patents

N―(1h―テトラゾール―5―イルノ―1―フェノキシ―4h―キノリジン―4―オン―3―カルボキサミド・ナトリウム塩の結晶性ノ水和物

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] この発明は抗アレルギー剤や抗潰瘍剤としての薬理作
用を示すキノリジノン化合物の結晶性1水和物に関する
ものである。
[従来の技術] 下記構造式 で示されるN−(1H−テトラゾール−5−イル)−1−
フェノキシ−4H−キノリジン−4−オン−3−カルボキ
サミド・ナトリウム塩は本願出願人によって特開昭60−
222482号公報に開示され、それ自身公知の化合物であ
る。この化合物は優れた抗アレルギー作用および抗潰瘍
作用を有することが分かっており、内服剤として人体に
投与することが検討されている。以下この明細書では上
記化学物質をQC化合物と略称するものとする。
[発明が解決しようとする課題] 上記公開公報に記載されている製造方法によって製造
されるQC化合物は、同公報第957頁右上欄の記述に見ら
れる様に非水和物であり、さらに後記走査型電子顕微鏡
写真によって確認される様に非晶質型を示している。と
ころでこの非晶質型化合物は、融解が常に一定温度でお
こるとは限らず不安定であって、且つ嵩高いため医薬品
製剤としての適性を欠き、また耐吸湿性に欠ける点もあ
るため製剤面や保存面においても不便であるという問題
点を有していた。ところがこの発明の発明者らの研究に
よると、その処理条件や処理環境によってはQC化合物が
水和物として結晶化し、その結晶が1水和物の形態をと
る結晶型と4水和物の形態をとる結晶型があることが明
らかとなった。そして、更に研究を重ねたところ、1水
和物の方が安定性や耐吸湿性において優れていることを
見い出し、この発明を完成するに至った。
[課題を解決するための手段] 以下この発明の完成に至る過程を参照しつつQC化合物
の結晶性1水和物の安定性および耐吸湿性について説明
を行なう。
先に述べた特開昭60−222482号公報に開示しているQC
化合物の製造実施例によると、製造工程の最終段階にお
いて凍結乾燥が行なわれている。従って得られた化合物
は非晶質性であり、結晶水を有していないものと考えら
れ、元素分析の結果も無水物であることを支持してい
る。
ところで、QC化合物の物理化学的性質や薬理額的作用
を調べようとすれば(QC化合物を大量に製造する必要が
あるその方法において)精製の最終段階で水−エタノー
ル混合溶媒を用いて結晶化したものは4分子の結晶水
(理論水分量:16%)を含むものであることが分かっ
た。しかしこの結晶水は結合力が弱いので、保存条件の
適切さを欠くときは容易に脱離し、それに伴ってIRスペ
クトルや薄層クロマトグラフ(以下TLCと略称)におい
て変化を見せる程の物理化学的変化等が生じることも明
らかとなった。この様なところから、4分子の結晶水を
含む結晶型(以下A型結晶と称することもある)の他
に、より安定な結晶型が存在するのではないかとの示唆
が得られ、色々な保存条件の下でA型結晶を保存してそ
の間の変化を検討したところ、1分子の結晶水(理論水
分量:4.6%)を含む結晶型(以下B型結晶と称すること
もある)を得ることができた。尚保存条件によっては水
分子が実質上全部脱離することもあり、またこれらと反
対に吸湿して水分が増加する方向への変化も認められる
ことが分かった。即ちQC化合物は、結晶水の有無と量に
よって非晶質型、A型結晶およびB型結晶の3通りに分
類でき、また夫々に物理化学的性質上の違いがある様に
思われたので、これら相互の可逆性や安定性等について
究明すべく実験を行なった。以下実験結果を述べてこれ
らを説明する。
実験1:保存条件下における結晶水の移動 (A)乾燥大気開放下での加熱による結晶水の移動A型
結晶(水分量16.1%)を大気開放下(相対湿度0〜5
%)[以下、相対湿度をRHと略称することもある]、80
℃及び100℃で保存したところ、1日目にして前者は約
5%、後者は約1%の水分量となり、同じ環境下で2週
間保存してもその間の変化は殆んど認められず、2週間
後に加熱を中止して室温(大気開放)に戻すと速やかに
元の水分量に戻り、その時点でのIRスペクトルは元のA
型結晶構造のそれと変わらなかった。
この実験から、A型結晶はQC化合物同士によって構成
される結晶格子内の空隙に4個の水分子を包接するもの
であり、内3個は80℃において脱離され易く、残り1個
は100℃において脱離され易いものであろうとの推論が
得られる。また結晶水の出入りに際しては、結晶構造の
基本的変化は伴なわないと推察される。
(B)密閉系内での保存による結晶水の移動 A型結晶(水分量16.1%)を密閉系(初期RH約50%)
内に置き、50℃で3か月間保存した後IRスペクトルを調
べると、明らかにA型結晶のそれと異なるパターンが認
められ、B型結晶に変化したものと思われた。但し見掛
上の水分量は8.55%であり、B型結晶の理論水分量4.6
%より高く、脱離水分が結晶表面に物理的に付着した状
態にあるのではないかと思われた。そこで、引続き色々
な保存条件に分けて保存したところ、25℃×RH93%×5
日という加湿条件の下で保存したものでは水分量が5.25
%となり、IRパターンもB型のそれから変わらなかっ
た。加湿によって付着水が外れた理由については十分に
解明できていないが、少なくとも開放下に置かれたこ
と、並びに付着水と大気中湿気分の親和性によって付着
水が移動し易くなったこと等が総合的に影響した為と思
われる。
(C)加温加湿保存による結晶水の移動 A型結晶(水分量16.1%)を37℃(相対RH11%,48%,
89%)で保存したところ、RH湿度48%および89%の2つ
の条件の下では水分量の変化は殆ど認められず、またIR
上の変化も殆んど認められなかった。一方相対湿度11%
の下では2週間後に水分量が9.6%に下ったが、A型結
晶構造については変化を認めなかった。
次に60℃(相対湿度11%,44%,88%)で保存したとこ
ろ24時間以内に水分量は約5%まで下り、2週間後にお
いても水分率は約5%で安定していた。その後実験室雰
囲気(温度約25℃、相対湿度約50%)に置いたところ、
相対湿度11%保存品は水分量15.3%に戻りIRスペクトル
上も最初のA型結晶と同じパターンを示したが、他は水
分約5%のままであり、IRスペクトル上A型結晶と異な
るパターンが確認された。
上記(A)〜(C)の各実験から、A型結晶よりB型
結晶への転移には、単に3分子の結晶水を放出するだけ
でなく適当な加熱と湿分が必要であることが分かり、結
局QC化合物は非晶質型の他、4水和物のA型結晶と1水
和物のB型結晶があることが判明した。
これらの実験および後記の実施例により、A型結晶を
得るための具体的な方法としては、QC化合物製造時の最
終段階で水−エタノール混合溶媒を用いて結晶化させる
方法が挙げられる。この混合溶媒における水の配合比率
は体積比で20%以上が好ましく、より好ましくは20〜60
%であり、最も好ましいのは約40%である。
B型結晶を得る方法としては、A型結晶または非晶質
型を高温高湿下に置いてそれぞれ結晶転移または結晶化
を促す方法が挙げられ、このときの条件としては、一般
に40〜80℃,RH30%以上が好適である。
またB型結晶を得る他の方法としては、QC化合物製造
時の最終段階で行なわれる結晶化溶媒として、水−イソ
プロピルアルコール混合溶媒あるいは水−アセトン混合
溶媒等を用いる方法が挙げられる。これら2種の混合溶
媒における水の好ましい配合比率は体積比で20%以上で
あり、さらに好ましくは20〜60%であり、最も好ましい
のは約40%である。
この方法は、QC化合物をたとえば前述の様な水−エタ
ノール混合溶媒等で結晶化して一旦A型結晶とした後、
上記の結晶化溶媒を用いてB型結晶とすることもできる
が、もとよりこれらの方法に限定されるものではなく、
B型結晶を得ることができる方法であればどの様な方法
を採用してもよい。
実験2:物理化学的性質 次に上述の非晶質型、A型結晶及びB型結晶の夫々に
ついて物理化学的性質を一括して説明する。
第1図はこれらのIRスペクトルチャート、第2図は粉
末X線回折チャート、第3図は吸湿平衡グラフ、第4図
は熱分析チャート、第5図は走査型電子顕微鏡写真を夫
々示し、各図中の(A)はA型結晶、(B)はB型結
晶、(C)は非晶質型を示す。
これらを比較すれば明らかな様に、A型結晶及びB型
結晶は良好な結晶性を示しており、前者は柱状晶(外観
は結晶性粉末)、後者は板状晶(外観上も明瞭な結晶)
であるが、非晶質型はほとんど結晶性を示さず、外観は
単に黄色粉末状である。尚融点はいずれも250℃以上
(分解)であるが、A型結晶では昇温の比較的初期(40
〜150℃)から順次水分が放出されていることが分か
り、B型結晶では高温(180〜220℃付近)に至って始め
て脱水が起こっており、B型結晶の方が熱的安定性に優
れていることが推認される。吸湿平衡の実験結果から見
ると、A型結晶及び非晶質型では相対湿度に対する水分
の変動が顕著であるのに対し、B型結晶では水分変動が
少なく、優れた耐吸湿性を示すことが推定される。
実験3:保存安定性試験 非晶質型、A型結晶及びB型結晶について、保存安定
性試験を行なったので、その結果を第1表にまとめた。
まず外観においては非晶質型およびA型結晶共に30,0
00ルックス露光下においてわずかに褐色味を帯びる様な
変化を示したが、B型結晶においては全く変化を示さな
かった。
水分変動についてもB型結晶がもっとも安定してお
り、非晶質型は30,000ルックス露光下において、またA
型結晶は37℃、RH89%および30,000ルックス露光下にお
いて水分の変動が著しい。
定量試験結果によると、非晶質型およびA型結晶は露
光下の保存性に問題を有していることは明らかであり、
B型結晶の安定性に比べると極めて低いことが分かる。
IRスペクトルによる検出によれば、非晶質型を露光下
で保存したものでは分解によると思われる変化が認めら
れ、非晶質型およびA型結晶共に変化を受け易い傾向を
有することが分かる。
TLC法による変化は分解物の発生を示すものであり、
露光下保存の場合はいずれも変化を認めているが、B型
結晶の場合における変化は少ない様である。
実験4:賦形薬との混合時の安定性試験 QC化合物は内服薬として利用することが検討されてい
るので、内服用製剤とするときの一般的賦形薬に対して
どの様な安定性挙動を示すかを調べた結果を第2表に一
括して示す。
乳糖および結晶セルロースとの配合品はいずれもTLC
法によって分解産物の生成を検出しているが、定量試験
において顕著な問題が生じているのはA型結晶における
乳糖との配合品であり、非晶質型の乳糖との配合品、並
びにA型結晶の結晶性セルロースとの配合品にも定量試
験結果として若干問題のある値が見られる。これに対し
B型結晶の場合は定量試験において全く問題は認められ
なかった。
[実施例] 以下、この発明を実施例により説明する。
製造例1 N−(1H−テトラゾール−5−イル)−1−フェノキ
シ−4H−キノリジン−4−オン−3−カルボキサミド・
ナトリウム塩8.70kgを、エタノール33.9と水22.6の
混液に加えて混合昇温し、80℃で還流下に溶解する。こ
れに炭素粉末174gを加え、還流しながら更に30分間撹拌
する。次いで炭素粉末を熱時濾去し、60%水性エタノー
ル13で炭素粉末を洗浄する。濾液と洗液を合わせた後
再度加熱還流し析出している結晶を溶解し、約1℃/分
の冷却速度で10℃まで冷却する。析出した結晶を同温度
以下で1時間熟成撹拌する。沈澱物を遠心分離した後エ
タノール17.4で洗浄し、次いで乾燥して水分率14.9%
のN−(1H−テトラゾール−5−イル)−1−フェノキ
シ−4H−キノリジン−4−オン−3−カルボキサミド・
ナトリウム塩の4水和物(A型結晶)8.62kgを得る。
実施例1 N−(1H−テトラゾール−5−イル)−1−フェノキ
シ−4H−キノリジン−4−オン−3−カルボキサミド・
ナトリウム塩の4水和物(A型結晶)7.08kgを、イソプ
ロピルアルコール34と水22.7の混液に加えて混合昇
温し溶解する。これに炭素粉末を加え79〜80℃で還流し
ながら0.5時間撹拌する。炭素粉末を熱時濾去した後、6
0%水性イソプロピルアルコールで炭素粉末を洗浄す
る。濾液と洗液を合わせた後冷却し、1時間熟成撹拌を
行う。沈殿物を遠心分離してイソプロピルアルコールで
洗浄し、次いで乾燥して、水分率4.9%のN−(1H−テ
トラゾール−5−イル)−1−フェノキシ−4H−キノリ
ジン−4−オン−3−カルボキサミド・ナトリウム塩の
1水和物(B型結晶)5.62kgを得る。この結晶の物性は
下記の通りである。
(i)粉末X線回折スペクトルにおいて、 5.6゜,11.3゜,18.1゜および28.0゜付近に特有のピーク
を示す。
(ii)赤外線吸収スペクトル(ヌジョール)において、
3505,3340,3250,1656,1554,1068および859(cm-1)付近
に吸収を示す。
実施例2 N−(1H−テトラゾール−5−イル)−1−フェノキ
シ−4H−キノリジン−4−オン−3−カルボキサミド・
ナトリウム塩13.22kgを、イソプロピルアルコール63.5
と水42.3の混液に加えて80〜81℃で還流下溶解す
る。これに炭素粉末264gを加え、80℃で還流しながら30
分間撹拌する。炭素粉末を熱時濾去した後、濾液を再度
加熱して結晶を溶解し、約1℃/分の冷却速度で10℃ま
で冷却する。同温度で1時間熟成撹拌した後、結晶を遠
心分離してからイソプロピルアルコール26.4で洗浄す
る。次いで乾燥して水分率4.9%のN−(1H−テトラゾ
ール−5−イル)−1−フェノキシ−4H−キノリジン−
4−オン−3−カルボキサミド・ナトリウム塩の1・水
和物(B型結晶)11.39kgを得る。
実施例3 N−(1H−テトラゾール−5−イル)−1−フェノキ
シ−4H−キノリジン−4−オン−3−カルボキサミド・
ナトリウム塩の非晶質型205.4mgをガラス瓶に入れ、栓
をしないで塩化ナトリウム飽和水溶液を入れたデシケー
ター中(RH75%)に入れる。60℃で18時間保持し、次い
で乾燥して水分量4.9%のN−(1H−テトラゾール−5
−イル)−1−フェノキシ−4H−キノリジン−4−オン
−3−カルボキサミド・ナトリウム塩の1水和物(B型
結晶)200.8mgを得る。
実施例4 N−(1H−テトラゾール−5−イル)−1−フェノキ
シ−4H−キノリジン−4−オン−3−カルボキサミド・
ナトリウム塩の4水和物(A型結晶)498.6mgをガラス
瓶に入れ、栓をしないで塩化ナトリウム飽和水溶液を入
れたデシケーター中(RH75%)に入れる。60℃で18時間
保持し、次いで乾燥して水分量4.9%のN−(1H−テト
ラゾール−5−イル)−1−フェノキシ−4H−キノリジ
ン−4−オン−3−カルボキサミド・ナトリウム塩の1
水和物(B型結晶)446.5mgを得る。
[発明の効果] この発明のB型結晶は耐吸湿性および安定性において
著しく優れているので、取扱い性の良い極めて有用な医
薬品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図はIRスペクトルチャート、第2図は粉末X線回折
チャート、第3図は吸湿平衡グラフ、第4図は熱分析チ
ャート、第5図は結晶外観を示す走査型電子顕微鏡写真
である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】N−(1H−テトラゾール−5−イル)−1
    −フェノキシ−4H−キノリジン−4−オン−3−カルボ
    キサミド・ナトリウム塩の結晶性1水和物。
  2. 【請求項2】次の物性を有する請求項(1)記載の結晶
    性1水和物。 (i)粉末X線回折スペクトルにおいて、5.6゜,11.3
    ゜,18.1゜および28.0゜付近に特有のピークを示す。 (ii)赤外線吸収スペクトル(ヌジョール)において、
    3505,3340,3250,1656,1554,1068および859(cm-1)付近
    に吸収を示す。
JP18925088A 1987-07-28 1988-07-27 N―(1h―テトラゾール―5―イルノ―1―フェノキシ―4h―キノリジン―4―オン―3―カルボキサミド・ナトリウム塩の結晶性ノ水和物 Expired - Lifetime JP2621392B2 (ja)

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