JP2606534B2 - 低音吸音部材および音響室構造 - Google Patents

低音吸音部材および音響室構造

Info

Publication number
JP2606534B2
JP2606534B2 JP4226393A JP22639392A JP2606534B2 JP 2606534 B2 JP2606534 B2 JP 2606534B2 JP 4226393 A JP4226393 A JP 4226393A JP 22639392 A JP22639392 A JP 22639392A JP 2606534 B2 JP2606534 B2 JP 2606534B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sound absorbing
sound
low
slit
frequency
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP4226393A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH0657850A (ja
Inventor
哲 小林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Yamaha Corp
Original Assignee
Yamaha Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Yamaha Corp filed Critical Yamaha Corp
Priority to JP4226393A priority Critical patent/JP2606534B2/ja
Publication of JPH0657850A publication Critical patent/JPH0657850A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2606534B2 publication Critical patent/JP2606534B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、リスニングルーム、
音楽練習室等の音響室における音響特性の調整のための
構造に係り、特に低音残響特性等の低音特性を改善する
ための低音吸音部材および音響室構造に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、学校および公共施設等に限らず、
個人用の一般住宅においても、サウンドルーム等と称し
て、リスニングルーム、音楽練習室等の音響室を設ける
ことが多くなってきている。このような、音響室に対し
ては、室内の残響特性および室内外の遮音特性を適切に
制御調整することが必要である。通常、このような残響
特性や遮音特性の調整には、吸音、遮音等のための構造
に多くの空間を必要とする。しかしながら、限られた空
間において、吸音、遮音等のための構造に多くの空間を
使用してしまうと、実際にリスニングや音楽練習等を行
う際の有効空間となる音響室自体の内部空間が狭くなっ
てしまう。このため、できるだけ狭い空間で効果的に吸
音および遮音等を行うことが望ましい。このことは、特
に、一般住宅に音響室を設置する場合には、極めて重要
である。
【0003】吸音のために用いられる一般的な方法の例
を、図14〜図17に示す。図14〜図16の構成は、
いずれも壁面に沿って吸音材を配置し、吸音材部分と壁
面とで空気層を形成する構成である。図14の構成は、
壁Wとの間に適宜なる空間を存して吸音材としてのグラ
スウール等の多孔質材料Gを配置し、さらにその表面を
クロス等の音響透過性に富む保護材S1で覆っており、
保護材S1と壁Wとの間の多孔質材料Gを含む部分が空
気層となる。図15の構成は、壁Wとの間に適宜なる空
間を存して合板等の板材またはキャンバス等の幕材から
なる表面材S2を配置し、この表面材S2の背面に吸音
材としてのグラスウール等の多孔質材料Gを敷設してお
り、表面材S2と壁Wとの間の多孔質材料Gを含む部分
が空気層となる。
【0004】図16の構成は、壁Wとの間に適宜なる空
間を存して多数の小孔が穿設された合板等の板材からな
る有孔板S3を配置し、この有孔板S3の背面にグラス
ウール等の多孔質材料Gを敷設しており、有孔板S3と
壁Wとの間の多孔質材料Gを含む部分が空気層となる。
この場合、実質的に有孔板S3と多孔質材料Gとで吸音
材を構成する。図17の構成は、室内の周囲側壁と天井
とで形成されるコーナ部、室内の隣接する周囲側壁相互
間で形成されるコーナ部あるいは室内の周囲側壁と床と
で形成されるコーナ部等の少なくとも一部の2壁面W1
およびW2の接合部を隅切りする形で例えば合板等から
なる吸音板Aを設け、この吸音板Aの背面に岩綿、グラ
スウール等の多孔質材料Gを敷設して、これらの部分を
コーナ吸音体として利用する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、吸音
のためには、一般的に、壁面に沿って吸音材を配置し且
つ吸音材部分と壁面とで空気層を形成する図14〜図1
6のような構成、あるいは壁、天井、床等のコーナ部を
隅切りして、吸音材を配置し、コーナ吸音体として利用
する図17のような構成が用いられている。しかしなが
ら、図14〜図16のように、壁面に沿って吸音材を配
置し且つ吸音材部分と壁面とで空気層を形成する構成に
よって低音域まで吸収するには、空気層の厚さとして例
えば 300mm以上とかなりの厚さが必要となる。このた
め、図14〜図16のような構成で低音域まで吸収させ
ようとすると、実質的に部屋を囲む各壁を、吸音のため
の構成を含めて 300mm以上の厚さとすることになり、部
屋としての実用空間が著しく狭くなってしまう。
【0006】さらに、図15の構成は、基本的に、室内
の音圧を一旦表面材S2で受け、これを背後の多孔質材
料Gを含む空気層で吸収させる構成であるため、あまり
大きな吸音率を得ることはできない。図16の構成は、
特定の周波数のみを、共鳴を利用して選択的に吸音する
構成であるため、低い周波数ばかりでなく、広い範囲の
周波数に対応させることも困難であり、しかも壁の表面
が有孔板S3で覆われてしまうため、意匠的な制約が大
きい。一方、図17のように、部屋のコーナ部を隅切り
して、吸音材を配置し、コーナ吸音体として利用する構
成は、かなり大きな隅切りを行う必要があり、その上効
果の予測が容易ではないばかりか、非常に低い周波数に
対しては、効果が小さい。
【0007】この発明は、上述のような事情に鑑みてな
されたもので、狭いスペースを効果的に利用して、低音
域を有効に吸音することができ、室内の実用空間をむや
みに狭めることなく、低音特性を効果的に改善すること
の可能な低音吸音部材および音響室構造提供することを
目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明に係る低音吸音
部材は、壁面に配設されて壁面とパネル表面との間に空
気層が形成されるパネル状構造を有し、パネル側面に前
記空気層と連通するスリットが形成されたスリット部材
が設けられ、パネル内部に前記スリット部材の背後の前
記空気層の壁面に平行な方向の深さを決定する仕切部材
が設けられ、前記空気層の壁面に平行な方向の深さと前
記スリットの寸法とをパラメータとして共鳴周波数が決
定された低音吸収用レゾネータが構成されていることを
特徴としている。
【0009】この発明に係る音響室構造は、上述の低音
吸音用レゾネータを構成する低音吸音部材を、前記スリ
ット部材が室内壁面のコーナ部に面するように配すると
共に、他の壁面に吸音体を用いた中高音吸音部材を配し
てなることを特徴としている。
【0010】
【作用】この発明の低音吸音部材および音響室構造にお
いては、パネル表面と壁面との間に壁面に平行な空気層
が形成されるパネル構造を用いて、その空気層とパネル
側面に設けたスリット部材とにより低音吸音用のスリッ
ト形レゾネータが構成されている。パネル内部には、ス
リット部材の背後の空気層の壁面に平行な方向の深さを
決定する仕切部材が設けられて、このスリット部材と仕
切部材により規定される空気層の壁面に平行な方向の深
さと、スリットの寸法(具体的には、開口幅およびスリ
ット深さ)とをパラメータとして共鳴周波数が決定され
る。この場合、空気層の壁面に平行な方向の深さを大き
くすれば、共鳴周波数が低くなるという関係があるた
め、仕切部材のスリット部材からの位置を調整すること
によって低音域での吸音効果を大きくすることができ、
低音吸音の効果を大きくするために壁面に垂直な方向の
パネル厚みを大きくする必要はない。従って、狭いスペ
ースを効果的に利用して、低音域を有効に吸音すること
が可能となり、室内の実用空間をむやみに狭めることな
く、低音特性を効果的に改善することができる。
【0011】
【実施例】以下、図面を参照して、この発明の実施例を
説明する。図1は、この発明の一実施例に係る低音吸音
部材である低音吸音パネルおよびそれを設置した部屋、
すなわち音響室の壁面の一部の断面の構成を模式的に示
している。この発明に係る低音吸音パネルは、スリット
型レゾネータの原理を応用し、低音域に共鳴周波数を調
整するために必要な空気層を、この低音吸音パネルが設
置される壁面に平行な方向に設けることにより確保して
いる。
【0012】図1において、例えば低音吸音パネル11
は、壁面配設用のパネル体構造を呈する。すなわち、こ
の低音吸音パネル11は、設置される音響室壁面WAと
の間に所定の間隔を存して配置され、パネル表面を形成
する表面板12を有する。この表面板12は、例えば合
板、あるいは石膏ボード等により構成され、前記音響室
壁面WAとの間に空気層を形成する。この表面板12自
体は、この場合その材料の音響特性の選択により例えば
中低音吸音用部材として機能させることもできる。ま
た、この表面板12は、室内の低音域の音圧を、低音吸
音パネル11により構成されるスリット型レゾネータ
(詳細は後述する)に伝達する機能をもはたしているた
め、スリット型レゾネータの共鳴周波数近傍の周波数に
おいて、ある程度振動し得るように構成することが望ま
しい。
【0013】この低音吸音パネル11の左右側縁の一方
には、前記所定の間隔に対応する幅および所定の厚さを
有し、且つ長手方向に沿うスリット13aが形成された
スリット部材13が前記空気層の一側部の前記表面板1
2の縁部と音響室壁面WAとの間に配設される。低音吸
音パネル11のスリット部材13の背後には、スリット
部材13のスリット13aの音響抵抗を増加させ音響エ
ネルギを消費させるための吸音材14が配設される。こ
の吸音材14としては、例えばグラスウール、ロックウ
ール(岩綿)等の多孔質材料が用いられる。低音吸音パ
ネル11の中間部には、スリット部材13から所定の間
隔を存して、スリット部材13に例えば平行に、スリッ
ト部材13の背後の空気層の深さLを決定する仕切部材
15が設けられる。
【0014】低音吸音パネル11の上下側縁は、スリッ
ト部材13の背後の空気層をレゾネータの空気層として
機能させるため、適宜なる側縁部材により閉塞する(図
2参照)か、あるいは天井および床により閉塞する。図
2は、図1の構造の一部を簡略化して示す斜視図であ
り、低音吸音パネル11の上側縁を側縁部材16により
閉塞した場合の例を示している。低音吸音パネル11の
左右側縁の他方は、この場合、音響室の壁面WAに設置
された柱17によって閉塞されている。
【0015】このような、低音吸音パネル11は、スリ
ット部材13、仕切部材15、側縁部材16および柱1
7によって、表面板12の背後に所定の空気層を形成し
ている。なお、建築材料としての低音吸音パネル11
は、スリット部材13、吸音材14、仕切部材15およ
び必要な側縁部材16により構成することもできる。施
工に際しては、音響室壁面WAの適切な位置に所定寸法
の柱17を設け、前述の部材により予め構成した低音吸
音パネル11を、音響室壁面WAの適切な位置および柱
17に取り付けることにより設置することになる。この
場合の壁面WAから表面板12の表面までの仕上げ厚寸
法Dは、例えば50〜 100mmとすることができ、室内の実
用空間を広くとることができる。
【0016】この場合、低音吸音パネル11が設置され
る音響室壁面WAに連接する音響室壁面WBについて
も、上述と同様の表面板12′、スリット部材13′お
よび仕切部材15′等からなる低音吸音パネル11′お
よび柱17′が設けられる。この場合、低音吸音パネル
11および11′は、スリット部材13およびスリット
部材13′が、音響室壁面WAとWBとで形成されるコ
ーナに面するように配置される。低音吸音パネル11の
表面板12と低音吸音パネル11′の表面板12′との
隣接する縁部相互間には、音響透過性を有するクロス等
の保護材18を配設して、コーナ部のスリット部分にご
み、小動物等が侵入することのないように保護する。
【0017】低音吸音パネル11および11′の前記コ
ーナから遠い側の側方には、それぞれ中高音吸音用の在
来の構成を有する中高音吸音パネル19および19′が
設けられる。中高音吸音パネル19および19′は、そ
れぞれ、壁面WAおよびWBに沿ってグラスウール等の
多孔質吸音材20および20′を配置し、その表面を音
響透過性の良好なクロス等の保護材21および21′で
覆ったものである。この場合、保護材21および21′
は、枠体22および22′にそれぞれ張設されている。
【0018】この場合、低音吸音パネル11および1
1′は、スリット型レゾネータの原理を応用している。
スリット型レゾネータは、いわゆるヘルムホルツの共鳴
器を複数個並列に配置したものとして定義される。例え
ば、図3に示すように、壁面からの空気層の厚みをL、
スリット部分の厚さ(スリットの深さ)をt、各スリッ
トの開口幅をb、スリットのピッチをBとし、スリット
は実質的に無限の長さを有していると見なせるものとす
ると、スリットの開口率Pは、数1であらわされる。
【0019】
【数1】P=b/B
【0020】この場合の共鳴周波数fr(Hz)は、音速
をcとして、数2であらわされる。
【0021】
【数2】 fr=(c/2π)√[P/{L(t+δ)}] ただし、δ=(2/π)blog e {cosec (π/2)・
P}
【0022】図1の構成では、空気層の厚さLが、図示
のように壁面に平行となるように構成しており、この空
気層の厚さL、スリット13aの厚さt、およびスリッ
トの開口率Pからこのスリット型レゾネータの共鳴周波
数が決定される。この場合、室内の実用空間を狭くする
ことなく、スリット型レゾネータの原理上の空気層の厚
さLを長くとることができるので、このレゾネータによ
り低音を吸音させることができる。また、図1の低音吸
音パネル11および11′の構成では、同時に表面板1
2および12′自体で 200Hz前後の中低音を吸収させる
ことが可能である。さらに、図1に示したような中高音
吸音パネル19および19′を適宜個数設けて、中高音
を吸音させる。
【0023】すなわち、図4に示すように、適宜個数の
中高音吸音パネル19および19′を壁面に配置し、コ
ーナ部に、コーナを挟んで隣接させて低音吸音パネル1
1および11′を設ける。このような構成により、図5
に示すように、中高音吸音パネル19および19′で、
特性C1のように中高音を吸収させ、低音吸音パネル1
1および11′の表面板12および12′で、特性C2
のように中低音を吸収させ、低音吸音パネル11および
11′のスリット型レゾネータにより、特性C3のよう
に低音を吸収させることができる。一般にコーナ部は低
音の音圧が高くなるため、図1および図4のような配置
により、低音吸音パネル11および11′のスリット型
レゾネータによって、低音域を効果的に吸収させること
ができる。なお、低音吸音パネル11および11′のス
リット型レゾネータによる共鳴吸収周波数frは、例え
ば図1に示す仕切部材15および15′の位置により、
空気層の深さLを調整するなどして、調整制御すること
ができる。したがって、低音吸音パネル11および1
1′を適宜調整して設置することによって、所望の周波
数帯域を有効に吸音させることができる。
【0024】従来より用いられていた中高音吸音パネル
19のような構成のみでは、低音吸収のために室内の容
積が極端に狭くなるほどの充分なスペースをとらない限
り、充分に低音を吸収させることができなかった。この
ため、一般に図6に示すように、高音域の吸音はよいが
低音域の吸音が不十分な吸音特性となることが多く、低
音特性を適切にコントロールすることができなかった。
このため、低音域の残響時間を抑えることができず、所
望の音響特性を得ることができなかった。なお、低音域
の吸音特性に対応させて高音域の吸音特性を抑えると、
吸音率の周波数特性はほぼ平坦になるが、このようにす
ると残響特性がほとんどコントロールできず、部屋の音
響特性が極端にライブになってしまうことになる。図4
のような構成を用い、低音吸音パネル11および11′
の調整により、低音域の2種類の周波数でピークを形成
するように吸音させると、図7に示すように、広帯域で
良好な吸音特性を得ることが可能となる。
【0025】このように、低音吸音パネル11および1
1′は、スリット型レゾネータの開口率P、スリットの
厚さ(深さ)t、空気層の壁に沿う方向の厚さLの任意
の組み合わせで共鳴周波数fr、すなわち吸音周波数を
任意に設定することができるので、これらのいずれかを
適宜調整して、音響室に設置することにより、音響室音
場の音響特性を広帯域にわたって制御することが可能と
なる。しかも、低音吸音パネル11および11′の壁面
WAおよびWBに垂直な方向の厚みDは、先に述べたよ
うに50〜 100mm程度とすることができ、部屋の実用空間
を充分に広くとることができる。レゾネータ吸音そのも
のは、周知の技術であるが、上述のように構成すること
により、内装材として使い易くし、しかも先に述べた従
来の不都合を解決することができる。
【0026】なお、この発明に係る低音吸音パネルは、
例えば図8に示すように、低音吸音パネル30の表面板
31の背後に設けられる仕切部材32のスリット部材3
3からの距離すなわちレゾネータの空気層の厚さLを、
(詳細な構成は図示してはいないが、)設置現場で適宜
調整可能に構成することにより、低音吸音特性を設置現
場で調整することが可能な低音吸音パネル30とするこ
とができる。例えば、スリット部材33から仕切部材3
2までの距離をL1からL2に増加させることにより、
図9に示すように、共鳴吸音周波数frは、fr1から
fr2に下がる。
【0027】また、図10に示すように、低音吸音パネ
ル40のスリット部材41を、全体の断面がほぼ台形と
なるように構成して、スリット41aの厚さtがスリッ
トによって異なるようにすることにより、個々のスリッ
ト41a毎に共鳴周波数frが異なり、全体の共鳴周波
数特性がブロードな低音吸音パネル40とすることがで
きる。この場合、図11に示すように、厚さtが大きな
スリット部分では共鳴周波数が低く、厚さtが小さなス
リットでは共鳴周波数が高くなる。このようにして、複
数の共鳴周波数を持たせることにより、全体として複数
の共鳴周波数を複合した吸音特性を得ることが可能とな
る。さらに、仕切部材(15、32等)を傾斜させて配
置することにより、レゾネータの厚さLを部分毎に異な
らせるようにしてもよい。また、スリット部材(13,
13′等)は、左右の側縁に限らず、上下の側縁に配置
してもよく、上述と同様の低音吸音パネルを、天井に設
けるようにしてもよい。
【0028】ところで、一般の個人住宅におけるオーデ
ィオリスニングルーム等としては、約10m2 程度の部屋
が用いられることが多く、このような部屋では 100〜 1
20Hz程度の周波数帯域の音圧が高く且つ残響時間が長く
なりがちであり、このような帯域を吸音させることが望
ましい。すなわち、このような約10m2 程度の広さの部
屋では、部屋の低次モードの共鳴周波数が 100Hz前後に
あらわれるため、この 100Hz前後の周波数帯域で長い残
響を生じたり、ブーミングが発生したりする。このよう
な長い残響およびブーミング等を防止するため、この 1
00Hz前後の周波数帯域で特に有効に吸音する必要があ
る。このような部屋の低次モードの共鳴周波数は、部屋
の寸法が小さいほど高めになる。
【0029】ちなみに、図12に示すように、この発明
に係る低音吸音パネル50を部屋の四隅に配置し、さら
に図4の場合と同様に各低音吸音パネル50間の壁面に
中高音吸音用の在来の構成による吸音パネルを設けて、
音響室を構成した場合を考える。この場合、低音吸音パ
ネル50により 100〜 120Hz程度の周波数帯域の低音を
吸音させることになる。そこで、低音吸音パネル50の
各部寸法を、図13に示すように、L= 900mm、t=50
mm、b= 5mmおよびB=20mmとすると、fr= 124Hzと
なって、ほぼ所望の周波数帯域の低音を低音吸音パネル
50により吸収させることが可能となることがわかる。
【0030】上述の実施例によれば、次のような利点が
得られる。 (1) 壁面と平行な方向に空気層をとり、レゾネータを構
成するため、 100Hz以下の低い周波数まで吸音させるこ
とが可能となる。 (2) 容易に共鳴周波数の異なる複数個のレゾネータを構
成することができるため、低音域のブロードな周波数帯
域にわたる吸音特性を実現することが可能。 (3) 音響室のコーナ部にレゾネータを設置することによ
り、効率的な吸音が可能となる。なぜならば、一般に、
部屋のコーナ部は低音の音圧が大きくなるからである。 (4) 壁の仕上げ厚さを厚くする必要がないため、部屋の
実用空間(容積)を広くとることができる。 (5) スリット部が仕上げ表面に出ないような仕上げが可
能であるため、意匠デザイン上の自由度が大きい。 (6) 部屋の状況に応じて、吸音特性の最適調整を行うこ
とが可能であるため、他の仕上げ材と組み合わせて、音
場の最適設計を行うことが可能となる。
【0031】
【発明の効果】以上述べたように、この発明によれば、
壁面に配設されるパネル状構造低音吸音部材により、パ
ネル表面と壁面との間に空気層を形成するとともに、パ
ネルの周面の少なくとも一側面に前記空気層の複数個の
開口部を形成し、前記開口部を有する前記空気層により
低音吸音用レゾネータを構成して、スリット型レゾネー
タの共鳴周波数を調整するために必要な空気層を壁面と
平行に形成するようにして、狭いスペースを効果的に利
用して、低音域を有効に吸音することができ、室内の実
用空間をむやみに狭めることなく、低音特性を効果的に
改善することの可能な低音吸音部材および音響室構造提
供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に係る低音吸音部材(低音吸音パネ
ル)およびそれを設置した音響室(部屋)の一実施例の
構成を模式的に示す部分断面図である。
【図2】 図1の実施例における低音吸音部材の構成を
説明するための斜視図である。
【図3】 図1の実施例における低音吸収の原理を説明
するためのスリット型レゾネータの模式図である。
【図4】 図1の実施例の音響室の構成を説明するため
の部分断面の模式図である。
【図5】 図1の実施例の原理を説明するための周波数
に対する吸音特性を模式的に示す図である。
【図6】 図1の実施例の作用を説明するため在来の吸
音手法を用いた場合の周波数に対する吸音特性を模式的
に示す図である。
【図7】 図1の実施例の作用を説明するためこの発明
を用いた場合の周波数に対する吸音特性を模式的に示す
図である。
【図8】 この発明に係る低音吸音部材の他の実施例の
構成を模式的に示す部分断面図である。
【図9】 図8の実施例における吸音特性を模式的に説
明するための図である。
【図10】 この発明に係る低音吸音部材のその他の実
施例の構成を模式的に示す部分断面図である。
【図11】 図10の実施例における吸音特性を模式的
に説明するための図である。
【図12】 この発明を用いた具体的な音響室の設計例
を模式的に示す平面図である。
【図13】 図12の設計例における低音吸音部材のス
リット型レゾネータの各部寸法を模式的に示す図であ
る。
【図14】 従来の吸音のための構成の第1の例を示す
模式図である。
【図15】 従来の吸音のための構成の第2の例を示す
模式図である。
【図16】 従来の吸音のための構成の第3の例を示す
模式図である。
【図17】 従来の吸音のための構成の第4の例を示す
模式図である。
【符号の説明】
11,11′,30,40,50…低音吸音パネル、1
2,12′,31…表面板、13,13′,33,41
…スリット部材、13a,41a…スリット、14,1
4′,20,20′…吸音材、15,15′,32…仕
切部材、16…側縁部材、17…柱、18,21,2
1′…保護材、19,19′…中高音吸音パネル、2
2,22′…枠体。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 壁面に配設されて壁面とパネル表面との
    間に空気層が形成されるパネル状構造を有し、 パネル側面に前記空気層と連通するスリットが形成され
    たスリット部材が設けられ、 パネル内部に前記スリット部材の背後の前記空気層の壁
    面に平行な方向の深さを決定する仕切部材が設けられ、 前記空気層の壁面に平行な方向の深さと前記スリットの
    寸法とをパラメータとして共鳴周波数が決定された低音
    吸音用レゾネータが構成されている ことを特徴とする低音吸音部材。
  2. 【請求項2】 請求項1の低音吸音部材を、前記スリッ
    ト部材が室内壁面のコーナ部に面するように配すると共
    、他の壁面に吸音体を用いた中高音吸音部材を配して
    なる ことを特徴とする音響室構造。
JP4226393A 1992-08-03 1992-08-03 低音吸音部材および音響室構造 Expired - Lifetime JP2606534B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4226393A JP2606534B2 (ja) 1992-08-03 1992-08-03 低音吸音部材および音響室構造

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4226393A JP2606534B2 (ja) 1992-08-03 1992-08-03 低音吸音部材および音響室構造

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0657850A JPH0657850A (ja) 1994-03-01
JP2606534B2 true JP2606534B2 (ja) 1997-05-07

Family

ID=16844421

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP4226393A Expired - Lifetime JP2606534B2 (ja) 1992-08-03 1992-08-03 低音吸音部材および音響室構造

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2606534B2 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002356934A (ja) * 2001-06-04 2002-12-13 Univ Tokyo 板材を二重に用いた遮音構造
EP1768100A1 (de) * 2005-09-22 2007-03-28 USM Holding AG Einrichtungssystem zur Beeinflussung der Raumakustik
JP5304053B2 (ja) * 2007-06-28 2013-10-02 ヤマハ株式会社 吸音パネル
JP2010097146A (ja) * 2008-10-20 2010-04-30 Yamaha Corp 吸音構造、吸音構造群及び音響室
JP5515300B2 (ja) * 2009-01-20 2014-06-11 ヤマハ株式会社 吸音体
JP6275608B2 (ja) * 2014-09-22 2018-02-07 大和ハウス工業株式会社 吸音構造および防音室
JP6310423B2 (ja) * 2015-06-19 2018-04-11 大和ハウス工業株式会社 吸音構造
JP6420211B2 (ja) * 2015-06-19 2018-11-07 大和ハウス工業株式会社 防音室
JP6616169B2 (ja) * 2015-12-04 2019-12-04 株式会社日立製作所 内装パネルおよびこの内装パネルを備える鉄道車両

Also Published As

Publication number Publication date
JPH0657850A (ja) 1994-03-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5975238A (en) Plate resonator
RU2495500C2 (ru) Звукопоглощающая конструкция
US10900222B2 (en) Special lightweight, durable mounting system for sound foam panel and quick installation process
JP2004062074A (ja) 吸音装置
JP2009109991A (ja) 吸音構造および音響室
US20090223738A1 (en) Sound absorbing structure and vehicle component having sound absorption property
JP2606534B2 (ja) 低音吸音部材および音響室構造
WO2011021533A1 (ja) 吸音体
JPH06158751A (ja) 音響吸音体
JP2002356934A (ja) 板材を二重に用いた遮音構造
JP2002123259A (ja) 防音パネル
US10280614B2 (en) Sound absorbing structure and acoustic room
KR102133435B1 (ko) 바닥충격음 저감용 천장 및 벽체 패널과 이의 시공방법
FI110896B (fi) Ääntä aktiivisesti vaimentava rakenne
JPH0740002Y2 (ja) レゾネータ型防音パネル
JPH05333866A (ja) 吸音体
JP4311960B2 (ja) 低音響放射型内装構造及び内装パネル材
JPH07219554A (ja) 防音材
KR102470521B1 (ko) 음향처리 어셈블리 구조체
JPH08170383A (ja) 建築遮音部材
JPS595783Y2 (ja) 建造物用消音通気装置
JP6476298B2 (ja) 共鳴音吸収のための乾式壁構造物
JP3755442B2 (ja) 際根太構造体および床構造体
JP3301680B2 (ja) 吸音構造体
KR102562000B1 (ko) 건축용 흡음 적층패널

Legal Events

Date Code Title Description
S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313532

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080213

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090213

Year of fee payment: 12

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090213

Year of fee payment: 12

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100213

Year of fee payment: 13

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110213

Year of fee payment: 14

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120213

Year of fee payment: 15

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130213

Year of fee payment: 16

EXPY Cancellation because of completion of term
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130213

Year of fee payment: 16