JP2598533B2 - 光導波路の形成方法 - Google Patents

光導波路の形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、光導波路の形成方法に関し、特にイオン注
入により導波路を形成する技術に関する。
〔従来の技術〕
従来、ガラス基板中に光導波路をイオン注入で形成す
る方法は、例えばI.K.Naikが報告している(Appl.Phys.
Lett.,vol.43,No.6,519〜520)。
この方法では、溶融石英、光学ガラス、SiO2被覆珪素
などから成る基板に窒素をイオンを注入し、460℃、30
分間の熱処理を行なうことにより、0.1dB/cmという低損
失の光導波路が得られたことが報告されている。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら、上記従来のイオン注入による光導波路
の形成方法では、500℃以上の高温で熱処理すると窒素
濃度が著しく減少し、光導波路が消失してしまうという
重大な問題点があった。
〔問題点を解決するための手段〕
基板に対しその表面から、二種以上のイオンを注入
し、必要に応じて熱処理を加える。当該注入されたイオ
ンは、互いに結合して酸化物、窒化物、ハロゲン化物の
いずれかを構成する。光導波路を形成する基板の材質
は、ガラス、セラミックス、半導体、金属のいずれであ
ってもよい。
注入するイオン種は、これらが注入された後、基板中
で反応し、酸化物、窒化物、ハロゲン化物のいずれかの
化合物を形成した場合に、使用する光の波長領域で吸収
が小さく、設定したイオンの注入量で基板との屈折率差
が必要量とされることが重要である。
注入する元素の注入比は化学量論比に近付けることが
導波路内の光吸収を抑制するうえで望ましい。
また、注入されるイオン種同士の投影飛程が一致する
よう、それぞれのイオン種の加速電圧を選定することが
望ましい。イオン注入後の熱処理は本発明で必須ではな
いが、光伝送損失を抑制し注入領域の耐久性(耐湿、耐
薬品)を向上するのに有効であり実施が望ましい。
熱処理温度は、200℃以上で効果があるが、特に基板
の融点あるいはガラス転移点よりも低い温度、またはイ
オン注入領域の部分のガラス転移点温度以下で、できる
だけ高温が望ましい。また、イオン注入中に基板を加熱
することも後加熱処理と同様の効果がある。
本発明において、光導波路のパターニング方法につい
ては特に制限なく、例えばイオン注入に先立ち、基板を
金属薄膜、板状体等のマスク材で被覆し、このマスク材
には所望の光導波路パターンの開口部を設けておき、こ
の開口部を通してイオン注入を行なう方法、あるいはマ
スク材を使用せず、イオンビームを基板面上の所定導波
路パターン領域に集束させてイオン注入を行なう方法を
用いることができる。さらに、イオン注入処理を二段階
に分けて行ない、マスクや集束イオンビームによる第一
段階のイオン注入後に、基板全面に第二段階のイオン注
入を行なうようにした方法も可能である。
また本発明では、イオン注入領域を光導波路として使
用する以外に、光導波路領域のみを残して基板面にイオ
ン注入を行ない、屈折率の低い層を形成して、未注入箇
所を光導波路として用いるようにしてもよい。
〔作 用〕
本発明によれば、基板に注入された二種以上の元素
は、それらが互いに結合し、化合物を形成することによ
って熱的に安定化するよう作用する。例えば、酸化珪素
を主成分とするガラス基材中に窒素をイオン注入して
も、500℃以上の高温で熱処理すればこれら注入した窒
素の濃度が著しく低下してしまうが、基材中に珪素を注
入することで窒素が熱的に安定して存在できるサイトを
供給し、熱処理による窒素濃度の低下を防止できる。
〔実施例〕
<実施例1> 第1図(a)に示すように、まず石英ガラスから成る
基板1の表面に、イオン注入時のマスクとなるCr膜2を
成膜した。
次いで同図(b)に示すように、周知のフォトリソグ
ラフィー技術により、上記膜2に光導波路パターンの開
口部3を形成した。
次に同図(c)に示すように、このマスク被覆基板面
に珪素を100keV、1×1017/cm2のドーズ量で、さらに窒
素を50keV、1.33×1017/cm2のドーズ量でイオン注入4
した。
<実施例2> 第2図(a)に示すように、まず石英ガラスから成る
基板1の表面上の光導波路パターン領域に、ビームを集
束させたイオン注入装置を用いて珪素を、100keV、1×
1017/cm2のドーズ量の条件でイオン注入4し、その後同
図(b)に示すように、ビーム集束しない通常のイオン
注入装置で基板全面に窒素を、50keV、1.33×1017/cm2
のドーズ量の条件でイオン注入し、さらに同図(c)に
示すようにヒーター6で900℃、1時間の熱処理を加え
ることにより、珪素が注入されていない導波路外領域に
注入された窒素を除去した。
この後Cr膜2をエッチング除去し、900℃、1時間の
熱処理を行った結果、第1図(d)に示すように基板1
中に窒化珪素から成る光導波路5が得られた。
上記方法で作成した光導波路を、二次イオン質量分析
法で調べたところ、熱処理による窒素濃度の減少は認め
られず、この方法の有効性が確認できた。
この結果、基板1中には、窒化珪素層から成る所期パ
ターンの光導波路5が得られた。本実施例方法で得られ
た光導波路を二次イオン質量分析法で調べたところ、熱
処理による窒素濃度の減少は認められず、本方法の有効
性を確認できた。
<実施例3> 第1図(a)に示すように、石英ガラスまたはサファ
イアからなる基板1の表面にイオン注入時のマスクとな
るCr膜2を成膜した。次に、同図(b)に示すように、
周知のフォトリソグラフィー技術により、上記膜2に光
導波路パターンの開口部3を形成した。次に同図(c)
に示すように、このマスク被覆基板面にチタンを加速エ
ネルギー200keV、ドーズ量1×1017ions/cm2で、さらに
酸素を65keV、2×1017ions/cm2でそれぞれイオン注入
4した。この後Cr膜2をエッチング除去し、1000℃、1
時間の熱処理を行った結果、第1図(d)に示すように
基板1中に酸化チタンを含む領域からなる光導波路5が
得られた。上記方法で作成した長さ10cmの光導波路にHe
−Neレーザ光を入射し、光の伝送を確認した。また、上
記方法で作成した導波路と、酸素のみを注入した後に同
様に熱処理した試料を二次イオン質量分析法で調べたと
ころ、酸素のみを注入した試料では、酸素濃度が注入前
の濃度に低下したが、チタンと酸素を注入した試料では
熱処理による酸素濃度の減少は認められず、この方法の
有効性が確認できた。
<実施例4> 第2図(a)に示すように、石英ガラスからなる基板
1の表面上の光導波路パターン上に、ビームを集束させ
ることができるイオン注入装置を用いて、アルミニウム
を加速エネルギー150keV、ドーズ量1×1017ions/cm2
イオン注入4し、その後同図(b)に示すように、ビー
ムを集束せずに基板全面に窒素を加速エネルギー100ke
V、ドーズ量1×1017ions/cm2でそれぞれイオン注入4
した。この後、同図(c)に示すように1000℃、1時間
の熱処理を行うことにより、アルミニウムが注入されて
いない導波路以外の領域に注入された窒素を除去した。
この結果、基板1中に窒化アルミニウムを含む領域から
なる光導波路5が得られた。上記方法で作成した長さ10
cmの光導波路にHe−Neレーザ光を入射し、光の伝送を確
認した。上記方法で作成した導波路を二次イオン質量分
析法で調べたところ、熱処理による窒素濃度の減少は認
められず、この方法の有効性が確認できた。
<実施例5> 第1図(a)に示すように、石英ガラスからなる基板
1の表面にイオン注入時のマスクとなるCr膜2を成膜し
た。次に、同図(b)に示すように、周知のフォトリソ
グラフィー技術により、上記膜2に光導波路パターンの
開口部3を形成した。次に同図(c)に示すように、こ
のマスク被覆基板面にリチウムを加速エネルギー26ke
V、ドーズ量1×1017ions/cm2で、さらに塩素を150ke
V、1×1017ions/cm2でそれぞれイオン注入4した。こ
の後Cr膜2をエッチング除去し、1000℃、1時間の熱処
理を行った結果、第1図(d)に示すように基板1中に
塩化リチウムを含む領域からなる光導波路5が得られ
た。上記方法で作成した長さ10cmの光導波路にHe−Neレ
ーザ光を入射し、光の伝送を確認した。また、上記方法
で作成した導波路と、塩素のみを注入した後に同様に熱
処理した試料を二次イオン質量分析法で調べたところ、
塩素のみを注入した試料では、塩素が熱処理により脱離
したが、リチウムと塩素を注入した試料では熱処理によ
る塩素濃度の減少は認められず、この方法の有効性が確
認できた。
〔発明の効果〕
本発明により、耐熱性の高い基板上に熱的安定性に優
れた光導波路を形成することで、発光・受光素子の製造
プロセスに耐える光導波路付きオプトエレクトロニクス
用基板をつくることができる。また、光導波路の形成に
おいて、目的とする波長領域で吸収が小さく、基板との
屈折率差が大きい化合物を選択することにより(例えば
窒化珪素の屈折率は〜2.1であるが、酸化チタンのそれ
は〜2.5である)、必要とする屈折率差を得るためのイ
オン注入量を減少させることが可能であり、導波路形成
にかかるコストが低減できる。
さらに、光導波路が形成できる基板材料の種類を従来
より広げることができた。
【図面の簡単な説明】
第1図(a)〜(d)は本発明の第1の実施例を段階的
に示す断面図、第2図(a)〜(c)は本発明の第2の
実施例を示す断面図である。 1……基板、2……マスク膜、3……光導波路パター
ン、4……イオン注入、5……光導波路、6……ヒータ
ー。

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基板に対し、二種以上のイオンを注入し、
    当該注入されたイオンが互いに反応して酸化物、窒化
    物、ハロゲン化物のいずれかを構成することを特徴とす
    る光導波路の形成方法。
  2. 【請求項2】請求項第1項において、前記イオンが珪素
    及び窒素である光導波路の形成方法。
  3. 【請求項3】請求項第1項において、前記イオンがチタ
    ン及び酸素である光導波路の形成方法。
  4. 【請求項4】請求項第1項において、前記イオンがアル
    ミニウム及び窒素である光導波路の形成方法。
  5. 【請求項5】請求項第1項において、前記イオンがリチ
    ウム及び塩素である光導波路の形成方法。
  6. 【請求項6】請求項第1項において、前記イオン注入に
    先立ち、前記基板表面を所定の導波路パターンの開口を
    残してマスク材で被覆し、しかる後該開口を通して基板
    中へのイオン注入を行なうか、あるいは前記イオン注入
    処理を二段階に分けて行ない、第一段階のイオン注入後
    にマスクを除去し、第二段階のイオン注入を基板全面に
    対して行なうようにした光導波路の形成方法。
  7. 【請求項7】請求項第1項において、前記イオン注入処
    理を集束イオンビームを用いて行なうか、あるいは前記
    イオン注入処理を二段階に分けて行ない、集束イオンビ
    ームによる第一段階イオン注入後に、基板全面に第二段
    階のイオン注入を行なうようにした光導波路の形成方
    法。
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