JP2595510Y2 - 可動磁石式アクチュエータ - Google Patents

可動磁石式アクチュエータ

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JP2595510Y2
JP2595510Y2 JP1992083992U JP8399292U JP2595510Y2 JP 2595510 Y2 JP2595510 Y2 JP 2595510Y2 JP 1992083992 U JP1992083992 U JP 1992083992U JP 8399292 U JP8399292 U JP 8399292U JP 2595510 Y2 JP2595510 Y2 JP 2595510Y2
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permanent magnet
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康之 平林
貴俊 大山
尋之 宗野
重男 斉藤
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Description

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本考案は、制御機器、電子機器、
工作機械等において電気エネルギーを電磁作用により往
復運動エネルギー等に変換させる可動磁石式アクチュエ
ータに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、可動磁石式の往復運動装置として
は、図6の第1従来例の構造を持つもの、及び図7の第
2従来例の構造を持つものがある。
【0003】図6の第1従来例において、10は軸方向
に着磁した棒状の永久磁石からなる磁石可動体であり、
両端面に磁極を有している。コイル11A,11Bは、
磁石可動体10の端部外周側をそれぞれ環状に周回する
ように巻回され、隣合う部分に同極が発生するようにな
っている。なお、図示は省略してあるが、コイル11
A,11Bは通常磁石可動体10を軸方向に移動自在に
ガイドするためのガイド筒体に装着される。そして、磁
石可動体10の各端面からの磁束がそれぞれコイル11
A,11Bと鎖交している。
【0004】図7の第2従来例において、磁石可動体1
5は同極対向配置の2個の棒状永久磁石16A,16B
と、これらの永久磁石16A,16B間に固着される棒
状軟磁性体17とを固着一体化したものであり、コイル
18は磁石可動体15の中間部外周側をそれぞれ環状に
周回するように巻回されている。なお、図示は省略して
あるが、コイル18は通常磁石可動体15を軸方向に移
動自在にガイドするためのガイド筒体に装着される。そ
して、磁石可動体15の同極対向した永久磁石端面から
の磁束がコイル18と鎖交している。
【0005】ところで、第1従来例及び第2従来例にお
いて、磁石可動体10,15に発生する推力は、基本的
にはフレミングの左手の法則に基づいて与えられる推力
に準ずるものである(フレミングの左手の法則はコイル
に対して適用されるが、ここではコイルが固定のため、
磁石可動体にコイルに作用する力の反力としての推力が
発生する。)。したがって、推力に寄与するのは、磁石
可動体が有する永久磁石の磁束の垂直成分(永久磁石の
軸方向に直交する成分)である。
【0006】そこで、1個の永久磁石の場合、あるいは
2個の同極対向配置の永久磁石の場合について、磁束の
垂直成分がどのようになるのかそれぞれ解析してみた。
【0007】図8は、単独の永久磁石の長手側面に沿っ
て表面磁束密度の垂直成分を磁場解析した結果を示す。
但し、永久磁石は希土類永久磁石であって、直径2.5m
m、長さ6mmで、永久磁石表面から0.25〜0.45mm
離れた位置を計測した。
【0008】図9は、2個の永久磁石を同極対向配置と
し、かつ直接接合した場合において、2個の永久磁石の
長手側面に沿って表面磁束密度の垂直成分を磁場解析し
た結果を示す。但し、各永久磁石は希土類永久磁石であ
って、直径2.5mm、長さ3mm(2個で6mm)で、永久
磁石表面から0.25〜0.45mm離れた位置を計測し
た。
【0009】図10は、2個の永久磁石を同極対向配置
とし、かつ対向間隔を1mmとした場合において、2個の
永久磁石の長手側面に沿って表面磁束密度の垂直成分を
磁場解析した結果を示す。但し、各永久磁石は希土類永
久磁石であって、直径2.5mm、長さ3mmで、永久磁石
表面から0.25〜0.45mm離れた位置を計測した。
【0010】図11は、2個の永久磁石を同極対向配置
とし、かつ対向間隔を2mmとした場合において、2個の
永久磁石の長手側面に沿って表面磁束密度の垂直成分を
磁場解析した結果を示す。但し、各永久磁石は希土類永
久磁石であって、直径2.5mm、長さ3mmで、永久磁石
表面から0.25〜0.45mm離れた位置を計測した。
【0011】図12は、2個の永久磁石を同極対向配置
とし、かつ対向間隔を3mmとした場合において、2個の
永久磁石の長手側面に沿って表面磁束密度の垂直成分を
磁場解析した結果を示す。但し、各永久磁石は希土類永
久磁石であって、直径2.5mm、長さ3mmで、永久磁石
表面から0.25〜0.45mm離れた位置を計測した。
【0012】図13は、2個の永久磁石を同極対向配置
とし、両永久磁石間に長さ1mmの軟磁性体を配置した場
合において、2個の永久磁石の長手側面に沿って表面磁
束密度の垂直成分を磁場解析した結果を示す。但し、各
永久磁石は希土類永久磁石であって、直径2.5mm、長
さ3mmで、永久磁石表面から0.25〜0.45mm離れた
位置を計測した。
【0013】図14は、2個の永久磁石を同極対向配置
とし、両永久磁石間に長さ1mmの軟磁性体を配置し、さ
らに2個の永久磁石の外周に対向させて軟磁性体ヨーク
を配設した場合において、2個の永久磁石の長手側面に
沿って表面磁束密度の垂直成分を磁場解析した結果を示
す。但し、各永久磁石は希土類永久磁石であって、直径
2.5mm、長さ3mmで、ヨークは永久磁石を取り囲む円
筒形状で厚み0.5mm、長さ10mmで永久磁石外周から
1.25mm離間した位置となっており、表面磁束密度の
垂直成分は永久磁石表面から0.25〜0.45mm離れた
位置を計測した。
【0014】
【考案が解決しようとする課題】上述したように、磁石
可動体に発生する推力は、基本的にはフレミングの左手
の法則に基づいて与えられる推力に準ずるものであり、
コイルと鎖交する永久磁石の磁束の垂直成分(永久磁石
の軸方向に直交する成分)が多いことが望まれるが、図
6の第1従来例では、表面磁束密度の垂直成分は図8の
ようになり、図9乃至図14の2個の永久磁石を同極対
向配置とした場合に比較して垂直成分が少ないことが判
明した。このため図6の第1従来例の構成では、推力の
向上に限界がある。例えば、磁石可動体10を直径2.
5mm、長さ6mmの希土類永久磁石で構成し、2個のコイ
ル11A,11Bの隣合う部分に同極が発生するように
各コイル11A,11Bに40mAの電流を流したとき
に発生する推力F1は4.7(gf)であった。
【0015】一方、図7の第2従来例では、2個の同極
対向の永久磁石間に軟磁性体を配した磁石可動体15を
用いており、磁束密度の垂直成分は図13に示す如くな
り、同極対向の永久磁石16A,16Bの磁極から出る
磁束は1個の永久磁石の場合(図8参照)や2個の永久
磁石のみの場合(図9乃至図12参照)よりも多くなる
が、コイルが磁石可動体15の中間部を囲む1個のみで
あり、磁石可動体15の両端面の磁極による磁束は有効
に利用していない嫌いがある。このため、図7の第2従
来例の場合も推力の向上が難しかった。例えば、図7の
第2従来例において磁石可動体15として直径2.5m
m、長さ3mmの希土類永久磁石を2個用い(希土類永久
磁石の性能は第1従来例と同じとする)、かつ両者間に
長さ1mmの軟磁性体を配置したものを用い、図6の第1
従来例と同じ消費電力となるように作成したコイル18
に40mAの電流を流し、第1従来例と同じ消費電力と
したときに発生する推力F2は5.6(gf)であった。
【0016】なお、永久磁石に出力取り出し用ピンを設
けてアクチュエータを構成する場合、磁石可動体や出力
取り出し用ピンの無用のがたつき等を解消することが望
ましく、その点についての配慮も必要となる。
【0017】本考案は、上記の点に鑑み、少なくとも2
個の永久磁石を同極対向配置とした磁石可動体を用いし
かも永久磁石の磁極が発生する磁束を有効利用すること
で、推力の向上及び効率の向上を図るとともに、磁石可
動体や出力取り出し用ピンの無用のがたつきを防止して
動作の信頼性の向上を図った可動磁石式アクチュエータ
を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本考案の可動磁石式アクチュエータは、同極対向さ
れた少なくとも2個の永久磁石間に磁性体を設けかつ少
なくとも一端部の永久磁石外側端面に出力取り出し用ピ
ンを設けて磁石可動体を構成し、少なくとも3連のコイ
を筒体に装着して磁性体ヨークの内側に配置し、前記
筒体の内側に前記磁石可動体を移動自在に設け、当該磁
石可動体の外周側を周回する如く巻回された前記少なく
とも3連のコイルのうち中間位置のものは端部位置のも
のよりも幅広であって前記永久磁石の同極対向端からの
磁束と鎖交する配置であり、前記端部位置のものは前記
永久磁石の端部磁極からの磁束と鎖交する配置であり、
かつ各コイルは各永久磁石の磁極間を境にして相異なる
方向に電流が流れる如く結線されているとともに、前記
筒体側にて支持された軸受部材で前記出力取り出し用ピ
ンを摺動自在に支えた構成としている。
【0019】また、各永久磁石及び前記磁性体を非磁性
筒状ホルダ内に収納するとともに、少なくとも一端部の
永久磁石外側端面に出力取り出し用ピン付き部材を配置
し前記筒状ホルダの端部で固定することによって前記磁
石可動体を構成してもよい。
【0020】
【作用】本考案の可動磁石式アクチュエータの基本動作
原理を図4の概略構成図によって説明する。この図4
で、磁石可動体3は同極対向配置の2個の円柱状永久磁
石5A,5Bと、これらの永久磁石5A,5B間に固着
される円柱状軟磁性体6とを一体化したものであり、図
13に示したように、磁束密度の垂直成分(永久磁石の
軸方向に直交する成分)が多い構造となっている。3連
のコイル2A,2B,2Cは、磁石可動体3の外周側を
周回する如く巻回され、磁石可動体3を構成する永久磁
石5Aの左端、永久磁石5A,5Bの同極対向端、及び
永久磁石5Bの右端の磁極からの磁束とそれぞれ鎖交す
るように配置されている。これらのコイル2A,2B,
2Cは永久磁石5A,5Bの磁極間を境にして相異なる
方向に電流が流れる如く結線されている(磁極間の境は
磁極と磁極の間であれば必ずしも磁極中間位置になくと
もよい。)。なお、図示は省略してあるが、コイル2
A,2B,2Cは通常磁石可動体3を軸方向に移動自在
にガイドするためのガイド筒体に装着される。コイル2
A,2B,2Cと磁石可動体3との位置関係は、当該磁
石可動体3の全ての可動位置において、永久磁石磁極間
を境にして各コイルに流れる電流が相互に逆向きとなる
ように設定しておく。
【0021】図4における磁石可動体3の基本構造は、
図13のように2個の永久磁石を同極対向させかつ永久
磁石間に軟磁性体を配置したものである。この図13の
ときは軟磁性体位置に相当する領域Qの表面磁束密度の
垂直成分は、軟磁性体の無い図9乃至図12よりも優れ
ている(磁束密度0.3T以上のピークの幅が広くかつ
ピークが高い。)。
【0022】このように、2個の永久磁石5A,5Bを
同極対向させかつ永久磁石間に軟磁性体6を設けた磁石
可動体3は、フレミングの左手の法則に基づく推力に寄
与できる磁石可動体3の長手方向に垂直な磁束成分を大
きくでき、かつ3連のコイル2A,2B,2Cは永久磁
石の全磁極の磁束と有効に鎖交するので、3連のコイル
2A,2B,2Cに交互に逆極性の磁界を発生する向き
に電流を通電することにより、従来例では到達し得ない
大きな推力を発生することができる。各コイルの電流を
反転させれば磁石可動体3の推力の向きも反転する。交
流電流を流した場合には、一定周期で振動を繰り返すバ
イブレータとして働く。
【0023】本考案の基本となる構成である図4の場
合、例えば、磁石可動体3として直径2.5mm、長さ3m
mの希土類永久磁石を2個用い(希土類永久磁石の性能
は第1従来例と同じとする)、かつ両者間に長さ1mmの
軟磁性体を配置したものを用い、図6、図7の第1、第
2従来例と同じ消費電力となるように作成した3連のコ
イル2A,2B,2Cに40mAの電流を流し、同じ消
費電力としたときに発生する推力F3は6.7(gf)で
あった。これは、同一消費電力の第1従来例の場合の約
1.42倍の推力であり、また第2従来例の約1.2倍の
推力であり、第1及び第2従来例に比較して格段に優れ
ていることが判る。
【0024】図5の曲線(イ)は図4(ヨーク無し)の
場合の磁石可動体3の軸方向変位量と推力(gf)との
関係を示す。但し、永久磁石の寸法、特性は図13に示
したものとするとともに、磁石可動体3の中間点が中央
のコイル2Bの中間点に位置するときを変位量零とし、
各コイルの電流は40mAとした。また、同じコイル電
流条件で、図5の曲線(ロ)は図14(ヨーク有り)の
場合の磁石可動体3の軸方向変位量と推力(gf)との
関係であって変位量零の点から離れる方向に磁石可動体
が動作するときを示し、曲線(ハ)は変位量零の点に近
付く方向に動作するときを示す。ヨーク有りの場合、い
っそうの推力向上が図れる。
【0025】このように、本考案の可動磁石式アクチュ
エータは、同極対向の永久磁石の組み合わせ構造体で磁
石可動体を構成しており、永久磁石の着磁方向(軸方
向)に垂直な磁束密度成分を充分大きくできかつ永久磁
石の全ての磁極の発生する磁束を有効利用できる。ま
た、磁石可動体を取り巻くように周回した少なくとも3
連のコイルのうち中間位置のものは端部位置のものより
も幅広に構成し、前記永久磁石の磁束と各コイルに流れ
る電流との間のフレミングの左手の法則に基づく推力を
充分大きくできる。つまり、前記中間位置のコイルは幅
広であって永久磁石の同極対向側の磁束分布(端部の磁
束よりも多く、磁束の多い領域の幅も広い)を有効利用
でき、かつ端部のコイルは幅が狭い分、電流密度は高く
なり永久磁石端部側の磁束分布(磁束の多い領域の幅が
狭い)との間で効果的に推力を発生できる。さらに、磁
性体ヨークを前記少なくとも3連のコイルの外側に配す
ることでも推力向上を図ることができる。この結果、
型、小電流で大きな推力を得ることができる。
【0026】さらに、図4の基本構成では図示していな
いが、磁石可動体に出力取り出し用ピンを一体化し、該
ピンを軸受部材で摺動自在に支持することで、磁石可動
体及び出力取り出し用ピンの無用のがたつきを解消しか
つピンが軸方向に円滑に摺動できるようにして動作の安
定性を確保できる。
【0027】
【実施例】以下、本考案に係る可動磁石式アクチュエー
タの実施例を図面に従って説明する。
【0028】図1及び図2は本考案の実施例を示す。こ
れらの図において、1は軟磁性体の円筒状ヨークであ
り、該円筒状ヨーク1の内側に3連のコイル2A,2
B,2Cが配置され、磁石可動体3を移動自在に案内す
るためのガイド筒体4を構成する絶縁樹脂等の絶縁部材
で円筒状ヨーク1に固着されている。磁石可動体3は、
同極対向配置の2個の円柱状希土類永久磁石5A,5B
と、これらの永久磁石5A,5B間に固着される円柱状
軟磁性体6と、永久磁石5A,5Bの外側端面に固着さ
れる出力取り出し用ピン付き部材9とからなり、それら
の永久磁石5A,5B、軟磁性体6及び出力取り出し用
ピン付き部材9は接着剤等で相互に一体化されている。
ピン付き部材9は非磁性又は磁性のどちらでもよい。前
記3連のコイル2A,2B,2Cは永久磁石5A,5B
の磁極間を境にして相異なる方向に電流が流れる如く結
線されている。すなわち、中央のコイル2Bは軟磁性体
6及び永久磁石5A,5BのN極を含む端部を囲み、両
側のコイル2A,2Cは、永久磁石5A,5BのS極を
含む端部をそれぞれ囲むことができるようになってお
り、かつ中央のコイル2Bに流れる電流の向きと、両側
のコイル2A,2Cの電流の向きとは逆向きである(図
1の各コイルに付したN,Sを参照)。
【0029】また、前記軟磁性体の円筒状ヨーク1及び
非磁性のガイド筒体4の両端部に非磁性の側板8A,8
Bが嵌合、固着され、該側板8A,8Bの中央部に真鍮
等の金属又は高摺動性樹脂等の円筒状軸受部材20がそ
れぞれ固定支持されている。そして、各円筒状軸受部材
20の内周面にて永久磁石5A,5Bの外側端面に固着
されたピン付き部材9のピン部分9Aが摺動自在に支え
られ、該ピン部分9Aは軸受部材外側に突出している。
【0030】この実施例では、各コイル2A,2B,2
Cの外周側に軟磁性体の円筒状ヨーク1が設けられてい
るため、磁石可動体3の表面磁束密度の垂直成分は、図
14に示す如く、さらに増大する。このため、フレミン
グの左手の法則に基づく推力に寄与できる磁石可動体3
の長手方向に垂直な磁束成分を大きくでき、磁石可動体
3の周囲を環状に巻回する3連のコイル2A,2B,2
Cに交互に逆極性の磁界を発生する向きに電流を通電す
ることにより、いっそう大きな推力を発生することがで
きる。例えば、磁石可動体3として直径2.5mm、長
さ3mmの希土類永久磁石を2個用い(希土類永久磁石
の性能は第1従来例と同じとする)、かつ両者間に長さ
1mmの軟磁性体を配置したものを用い、図6、図7の
第1、第2従来例と同じ消費電力となるように作成した
3連のコイル2A,2B,2Cに40mAの電流を流
し、同じ消費電力としたときに発生する推力F4は8.
0(gf)であった。推力F4の向きは、図1の極性で
は、磁石可動体3が右方向に移動する向きであり、各コ
イルの電流を反転させれば磁石可動体3の推力の向きも
反転する。交流電流を流した場合には、一定周期で振動
を繰り返すバイブレータとして働く。また、中央のコイ
ル2Bは端部のコイル2A,2Cに比して幅広に構成さ
れており、永久磁石5A,5Bの同極対向側の磁束分布
(端部の磁束よりも多く、磁束の多い領域の幅も広い)
を有効利用するようにしている。また、端部のコイル2
A,2Cは幅が狭い分、電流密度は高くなり永久磁石5
A,5Bの端部側の磁束分布(磁束の多い領域の幅が狭
い)との間で効果的に推力を発生できる。
【0031】図5の曲線(ロ)は実施例(但し、永久磁
石及びヨークの寸法、配置及び永久磁石の特性は図14
の通り)の場合の磁石可動体3の軸方向変位量と推力
(gf)との関係であって変位量零の点から離れる方向に
磁石可動体が動作するときを示す。また、曲線(ハ)は
実施例(ヨーク有り)の場合の磁石可動体3の軸方向変
位量と推力(gf)との関係であって変位量零の点に近付
く方向に動作するときを示す。但し、磁石可動体3の中
間点が中央のコイル2Bの中間点に位置するときを変位
量零とし、各コイルの電流は40mAとした。このよう
に、磁石可動体3が変位量零の点に近付くか又は離れる
かによって推力が相違するのは、磁石可動体3の永久磁
石の磁極とヨーク1との間に磁石可動体3を変位量零点
に戻す磁気吸引力が働いているからである。
【0032】さらに、上記実施例の場合、磁石可動体3
に一体のピン付き部材9を軸受部材20で摺動自在に支
持することで、磁石可動体3を常時ガイド筒体4の内周
中心と同心状態に規制でき、磁石可動体3及びピン付き
部材9の無用のがたつきを防止できる。また、磁石可動
体3がガイド筒体4の内周面に接触しなくなるため、磁
石可動体3を軸方向に円滑に移動させることが可能であ
り、磁石可動体3やガイド筒体4の摩耗等の問題も解消
できる。
【0033】図3は実施例で用いる磁石可動体の変形例
を示す。この場合、磁石可動体3Aは、同極対向された
2個の永久磁石5A,5B間に円柱状軟磁性体6を配置
し、これらを非磁性筒状ホルダ7内に収納するととも
に、各永久磁石5A,5Bの外側端面に出力取り出し用
ピン付き部材9をそれぞれ配置し、該ピン付き部材9の
円板状部9Bを前記筒状ホルダ7の両端部で固定したも
のである。筒状ホルダ7に対する永久磁石5A,5B、
円柱状軟磁性体6及びピン付き部材9の固定は、接着剤
等で行っても良いし、筒状ホルダ7の端部をかしめて行
っても良い。
【0034】なお、前述の実施例において、前記側板8
A,8Bを軟磁性材で構成して、吸着板として機能させ
ても良い。この場合には、磁石可動体3は各コイル2
A,2B,2Cに通電していない状態では軟磁性の側板
8A,8Bのいずれかに吸着されることになる。そし
て、現在吸着している側板から磁石可動体3が離脱する
向きに各コイル2A,2B,2Cで推力を発生させれ
ば、反対側の側板方向に磁石可動体3が移動して吸着停
止する。
【0035】また、上記実施例では、2個の同極対向の
永久磁石と両永久磁石間の軟磁性体を備える磁石可動体
3を例示したが、3個以上の同極対向の永久磁石と両永
久磁石間の軟磁性体を備える構成としてもよく、これに
対応させてコイル数も4個以上とすることができる。
【0036】さらに、実施例では磁石可動体3は両側に
ピン付き部材9を具備するが、いずれか一方のみにピン
付き部材9を設けるようにしても良い。この場合、軸受
部材20も一方のみとなる(但し、軸受部材20を長め
にすることが望ましい。)。
【0037】また、実施例において、ガイド筒体4を省
略して各コイル2A,2B,2Cをヨーク1の内周側に
絶縁固定する構造を採用することも可能である。
【0038】前記実施例では、円筒状のヨーク1及びガ
イド筒体4を用いたが、角筒状等のヨーク及びガイド体
を採用することもでき、この場合も各コイルは磁石可動
体の外周を周回するように巻回すればよい。
【0039】
【考案の効果】以上説明したように、本考案の可動磁石
式アクチュエータによれば、同極対向された少なくとも
2個の永久磁石間に磁性体を設けた磁石可動体を用い、
該磁石可動体に設けられたピンを軸受部材で摺動自在に
支える構成としたので、磁石可動体の長手方向(永久磁
石の着磁方向)に垂直な磁束成分を充分大きくできる。
また、磁石可動体の周囲を取り巻くように少なくとも3
連のコイル(中間位置のものは端部位置のものよりも幅
広)を巻回して磁性体ヨーク内側に設け、磁石可動体の
各磁極が発生する磁束と有効に鎖交可能としたので、前
記垂直な磁束成分と各コイルに流れる電流との間のフレ
ミングの左手の法則に基づいて与えられる推力を充分大
きくできる。また、磁石可動体側に出力取り出し用ピン
を具備する構成であり、該ピンを前記筒体側の軸受部材
で支持することで、磁石可動体の移動を円滑化すること
ができる。このため、小型、小電流で大きな推力を持つ
信頼性の高い可動磁石式アクチュエータを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案に係る可動磁石式アクチュエータの実施
例を示す正断面図である。
【図2】同側面図である。
【図3】実施例で用いる磁石可動体の変形例を示す正断
面図である。
【図4】本考案の基本構成を示す概略構成図である。
【図5】図1及び図4の可動磁石式アクチュエータにお
ける磁石可動体の変位量と推力との関係を示すグラフで
ある。
【図6】第1従来例を示す概略構成図である。
【図7】第2従来例を示す概略構成図である。
【図8】単一の永久磁石の長手側面(永久磁石の着磁方
向に平行な面)の表面磁束密度の垂直成分(長手側面に
垂直な成分)を示すグラフである。
【図9】2個の同極対向の永久磁石を直接的に対接状態
とした場合の長手側面の表面磁束密度の垂直成分を示す
グラフである。
【図10】2個の永久磁石を1mmのエアーギャップを介
し同極対向状態とした場合の長手側面の表面磁束密度の
垂直成分を示すグラフである。
【図11】2個の永久磁石を2mmのエアーギャップを介
し同極対向状態とした場合の長手側面の表面磁束密度の
垂直成分を示すグラフである。
【図12】2個の永久磁石を3mmのエアーギャップを介
し同極対向状態とした場合の長手側面の表面磁束密度の
垂直成分を示すグラフである。
【図13】2個の永久磁石を軟磁性体を介し同極対向状
態とした場合の長手側面の表面磁束密度の垂直成分を示
すグラフである。
【図14】2個の永久磁石を軟磁性体を介し同極対向状
態とし、かつ軟磁性体ヨークを配置した場合の長手側面
の表面磁束密度の垂直成分を示すグラフである。
【符号の説明】
1 円筒状ヨーク 2A,2B,2C コイル 3,3A 磁石可動体 4 ガイド筒体 5 円柱状永久磁石 6 円柱状軟磁性体 7 筒状ホルダ 9 ピン付き部材 8A,8B 側板 20 軸受部材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 斉藤 重男 東京都中央区日本橋一丁目13番1号ティ ーディーケイ株式会社内 (56)参考文献 欧州特許出願公開457389(EP,A 1) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H02K 33/16

Claims (2)

    (57)【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】 同極対向された少なくとも2個の永久磁
    石間に磁性体を設けかつ少なくとも一端部の永久磁石外
    側端面に出力取り出し用ピンを設けて磁石可動体を構成
    し、少なくとも3連のコイルを筒体に装着して磁性体ヨ
    ークの内側に配置し、前記筒体の内側に前記磁石可動体
    を移動自在に設け、当該磁石可動体の外周側を周回する
    如く巻回された前記少なくとも3連のコイルのうち中間
    位置のものは端部位置のものよりも幅広であって前記永
    久磁石の同極対向端からの磁束と鎖交する配置であり、
    前記端部位置のものは前記永久磁石の端部磁極からの磁
    束と鎖交する配置であり、かつ各コイルは各永久磁石の
    磁極間を境にして相異なる方向に電流が流れる如く結線
    されているとともに、前記筒体側にて支持された軸受部
    材で前記出力取り出し用ピンを摺動自在に支えたことを
    特徴とする可動磁石式アクチュエータ。
  2. 【請求項2】 前記磁石可動体が、各永久磁石及び前記
    磁性体を非磁性筒状ホルダ内に収納するとともに、少な
    くとも一端部の永久磁石外側端面に出力取り出し用ピン
    付き部材を配置し前記筒状ホルダの端部で固定したもの
    である請求項1記載の可動磁石式アクチュエータ。
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