JP2586601Y2 - 車輪送りミシンの針板 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は車輪送りミシンの針板に
関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から皮革製品（例えば皮革靴）等の
厚物を縫製する際に車輪送りミシンが用いられている。

【０００３】図４はこのような車輪送りミシンの従来例
の要部の正面図、図５は車輪送りミシンの従来例の針板
の斜視図である。図において、車輪送りミシンは回転可
能且つ図示しないばねにより下方へ付勢されている上ロ
ーラ１と、歯を形成された回転可能な下ローラ２を有
し、針板３上に載置された縫製物４，５を上ローラ１と
下ローラ２の間に挟み込むようにして送る。

【０００４】上ローラ１は、縫製物４の表側に接触する
ため、縫製物４に傷が付かないような形状とされてい
る。従って、上ローラ１と縫製物４との間の摩擦力が小
さく、縫製物４を送る力は小さい。下ローラ２は、縫製
物４，５を送る力を大きくするため、外周の歯を鋭くし
ている。従って、大きな送り力を得るためには、下ロー
ラ２の歯を十分に縫製物４，５に当てることが必要とな
る。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】しかしながら、下ロー
ラ２の歯を十分に縫製物５に当てるために下ローラ２を
針板３から高く露出させると、図６（ａ）に示すように
針１２が上の縫製物４に貫通した後下の縫製物５に到達
するまでの間、上の縫製物４を図の矢印Ｅ方向へずらし
てしまう。また、図６（ｂ）に示すように針１２が下死
点から上昇し、上糸ループを形成するとき、縫製物４，
５が上方向に動くため、ループを十分に形成することが
できず、目飛びが発生することがある。

【０００６】以上の理由により、下ローラ２を針板３か
ら高く出すことができず、下ローラ２が針板３から上方
へ露出する部分は図４に示したようにそれほど多くはな
い。

【０００７】このような従来の車輪送りミシンを用いて
段部を有する縫製物４，５，６を送る様子を図７に示
す。縫製物４，５，６は上ローラ１と下ローラ２の間に
挟み込まれ、両ローラ１，２と縫製物４，５，６間の摩
擦力により送られる。

【０００８】図７（ａ）のように段部が上ローラ１に到
達するまでは上ローラ１が縫製物４と接触している部位
で、縫製物５は下ローラ２の歯に十分接触しているの
で、下ローラ２による送り力が十分得られ、縫製物４，
５を送ることができる。しかしながら（ｂ）の状態で
は、段部６が両ローラ１，２間に入り込むとき、段部６
先端が両ローラ１，２間に食い込むようになって強い抵
抗力を受け、下ローラ２の接触部分が少ないことによる
下ローラ２の送り力不足のため、ローラ１，２を段部６
が通過できなく成る場合がある。

【０００９】従って、本考案の目的は、段部でも容易に
縫製物を送ることができる車輪送りミシンの針板を提供
することにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本考案によれば、下方に付勢される回転可能な上ローラ
と、外周に歯を形成された回転可能な下ローラと、前記
下ローラの上端部を露出させるための開口部を形成され
た針板とを有し、針板上に載置される縫製物を前記上ロ
ーラ及び下ローラの間で挟持して送る車輪送りミシンの
針板において、前記下ローラの上端部が縫製物の送り方
向後方側より手前側でより多く露出するように前記送り
方向の手前側に凹部を設けたことを特徴とする車輪送り
ミシンの針板が提供される。

【００１１】

【作用】下ローラの上端部が縫製物の送り方向後方側よ
り手前側でより多く露出するように送り方向の手前側に
凹部を設けてあるので、縫製物が送られて、縫製物の段
部が上ローラに到達しても下ローラによって送り力が十
分得られ、縫製物をさらに送ることができ、上ローラに
加わっている下方への付勢力に打ち勝って上ローラを上
方に押し上げて段部を越えることができる。

【００１２】

【実施例】以下、図面に基づいて本考案の実施例を説明
する。

【００１３】図１は本考案による車輪送りミシンの針板
の一実施例の斜視図、図２は図１の正面図である。これ
らの図において、送り土台７上に設けられた針板３は開
口部８を形成され、この開口部８から回転可能な下ロー
ラ２の上端部が露出している。下ローラ２は縫製物を送
る際の摩擦力を得るためにその外周へ歯を形成されてい
る。

【００１４】針板３は下ローラ２に対して縫製物の送り
方向手前側（図において右方）に凹部９を形成されてい
る。なお、１０は釜カバー、１１は釜軸土台である。

【００１５】図３は本実施例による針板を用いた車輪送
りミシンで、縫製物４，５，６を送る様子を示す図であ
る。（ａ）は縫製物４の段部のない部分を送っている状
態を、（ｂ）は縫製物６の段部が上ローラ１の位置に達
した状態を、（ｃ）は上ローラ１が段部を越える状態を
それぞれ示す。図示したように車輪送りミシンは回転可
能な上ローラ１を有し、上ローラ１は図示しないばねに
より下方へ付勢されている。なお上ローラ１及び下ロー
ラ２の回転方向は図の矢印Ａ及び矢印Ｂの方向である。

【００１６】図３（ａ）の状態では、縫製物４，５は上
ローラ１と下ローラ２の中心線上の位置（矢印Ｃ，
Ｃ’）で挟持されて送られる。（ｂ）の状態では両ロー
ラ１，２が縫製物４，５，６を押える位置は矢印Ｄ，
Ｄ’に示したところになる。この位置の下ローラ２の歯
部は十分針板３から上方に露出しているので縫製物４，
５，６を送る力を十分得ることができる。このため、図
示しないばねにより上ローラ１に加わっている下方への
付勢力に打ち勝って（ｃ）に示すように上ローラ１を上
方に押し上げて段部を越えることができる。

【００１７】このとき、従来例に比べ、縫製物４，５，
６が上ローラ１のより下方から当たるため、（１）段部
を越えために必要な上ローラ１の上昇勾配が緩やかとな
り、段部を越えやすくなり、さらに（２）図示しないば
ねにより上ローラ１を付勢する力に対向する力がより大
きくなるので上ローラ１が段部上に乗り上がりやすくな
る。

【００１８】

【考案の効果】本考案の車輪送りミシンの針板において
は、下ローラの上端部が縫製物の送り方向後方側より手
前側でより多く露出するように送り方向の手前側に凹部
を設けてあるので、縫製物の段部が上ローラに到達して
も下ローラによって送り力が十分得られる。従って、縫
製物をさらに送って、上ローラに加わっている下方への
付勢力に打ち勝って上ローラを上方に押し上げ、段部を
越えることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案による車輪送りミシンの針板の一実施例
の斜視図である。

【図２】図１の実施例の正面図である。

【図３】本実施例の針板を用いた車輪送りミシンで、縫
製物を送る様子を示す正面図で、（ａ）は縫製物５の段
部のない部分を送っている状態を、（ｂ）は縫製物５の
段部が上ローラ１の位置に達した状態を、（ｃ）は上ロ
ーラ１が段部を越える状態をそれぞれ示す。

【図４】従来例の車輪送りミシンの要部の正面図であ
る。

【図５】従来例の車輪送りミシンの針板の斜視図であ
る。

【図６】従来例の車輪送りミシンの針板を用いて下ロー
ラを針板から高く露出させた場合に生じることがある不
都合を説明するための正面図で、（ａ）は上の縫製物を
ずらしてしまう例、（ｂ）は縫製物が上方向に動いてし
まう例を示す。

【図７】従来例の車輪送りミシンの針板を用いて縫製物
を送る状態を示す図で、（ａ）は縫製物の段部が上ロー
ラの位置に到達する直前の状態、（ｂ）は縫製物の段部
が上ローラ位置に到達した直後の状態を示す。

【符号の説明】

１ 上ローラ ２ 下ローラ ３ 針板 ４，５ 縫製物 ８ 開口部 ９ 凹部 (141 - )

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】下方に付勢される回転可能な上ローラと、
   外周に歯を形成された回転可能な下ローラと、前記下ロ
   ーラの上端部を露出させるための開口部を形成された針
   板とを有し、少なくとも下ローラに回転力を付与して針
   板上に載置される縫製物を前記上ローラ及び下ローラの
   間で挟持して送る車輪送りミシンの針板において、前記
   下ローラの上端部が縫製物の送り方向後方側より手前側
   でより多く露出するように前記送り方向の手前側に凹部
   を設けたことを特徴とする車輪送りミシンの針板。