JP2584697B2 - IgG精製用組換え型プロテインA - Google Patents

IgG精製用組換え型プロテインA

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JP2584697B2 JP3235687A JP23568791A JP2584697B2 JP 2584697 B2 JP2584697 B2 JP 2584697B2 JP 3235687 A JP3235687 A JP 3235687A JP 23568791 A JP23568791 A JP 23568791A JP 2584697 B2 JP2584697 B2 JP 2584697B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、IgG精製用組換え型
プロテインAに関するものであって、このプロテインA
は、天然型プロテインAに比して格段に免疫グロブリン
G(IgG)精製能がすぐれており、バイオテクノロジ
ー関連の各種分野において広範に利用することができ
る。
【0002】
【従来の技術】プロテインAは、黄色ブドウ球菌(St
aphylococcus aureus)の細胞壁に
存在する蛋白質で、通常、Cowan I株の培養液か
ら単離されることは既に知られている(福井三郎ほか監
修「バイオテクノロジー事典」(株)シーエムシー、
p.958(1986−10−9))。本発明のよう
に、プロテインAのIgG結合ドメインの1つに着目
し、遺伝子操作によってそれを複数個連結させた例とし
ては、Nilssonら(ProteinEngine
ering 1,107−113,1987)による人
工的な変異体であるドメインZをくり返したものと、S
aitoら(Protein Engineering
2,481−487,1989)によるドメインBを
くり返したものがすでに知られているが、ある特定のI
gG結合ドメインの特にくり返し数に着目してそれらの
IgG結合能を詳細に比較した例はない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】蛋白質工学、生化学、
遺伝子工学、医学、農学、バイオアッセイその他のバイ
オテクノロジー関連の技術分野において、IgGは非常
に重要な役割を果すことから、IgGを効率的に分離精
製するシステムの開発が従来よりこれらの技術分野にお
いて強く要望されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような問
題点を解決する目的でなされたものであって、各方面か
ら検討の結果、特に遺伝子工学の手法に着目して、更に
研究を行った結果、プロテインAのIgG結合ドメイン
の内ドメインAとBの部分を一単位とし、PCR法(プ
ライマー利用遺伝子増幅法)によりこれらの遺伝子を自
由に増幅することに成功し、その結果、これらを複数個
つなげた蛋白質を自由に製造することにはじめて成功し
た。
【0005】しかも全く予期せざることに、このように
して得られた連結蛋白質(以下、連結蛋白質ということ
もある)は、天然型のプロテインAに比してIgGとの
特異的結合能においてすぐれていることを発見し、これ
らの新知見を基礎として更に研究の結果、本発明の完成
に至ったものである。
【0006】本発明に係る連結蛋白質は、後記するとこ
ろからも明らかなように遺伝子組換え技術によって所望
する分子量のものを正確且つ自由に作製することがで
き、しかも画期的なことに、IgGに特異的に結合する
能力に卓越している。したがって本発明に係る連結蛋白
質(プロテインA)によれば、IgG含有試料中のIg
Gのみを選択的に結合することができるので、IgGの
精製、分離に利用することができ、あるいは逆にIgG
含有試料からIgGのみを選択的に除去するのに利用す
ることも可能である。しかも、本連結蛋白質はIgGに
対する結合能に優れ、溶離液を作用させれば容易にIg
Gを溶離することがでる。
【0007】本発明に係る連結蛋白質を用いてIgGを
精製するには、不均一系、均一系のいずれの系も利用す
ることができ、いずれの場合においても常法が適宜使用
される。
【0008】例えば不均一系を利用する場合には、常法
にしたがって容器、器壁や担体に本発明に係る組換え型
プロテインAを固定し、これにIgG含有試料を接触さ
せればよく、バッチ式、連続式のいずれの方式も利用す
ることができる。固定化法としては、微生物や酵素を固
定化する方法が適宜利用され、例えば共有結合法、イオ
ン結合法、物理的吸着法といった各種の担体結合法が好
適に利用される。また、担体ないし器壁材料としては、
利用する結合法に最適なものを選択すればよく、例え
ば、合成樹脂、多糖類等合成又は天然の有機物;ガラ
ス、金属、多孔質粘土等無機物;血球、細胞、微生物菌
体等生物系物質等が広範に適宜選択使用される。
【0009】このようにして本発明に係る組換え型プロ
テインAを固定した担体は、例えばこれをカラムに充填
した後、IgG含有試料をこれにアプライしてIgGの
みを選択的に固定化担体に結合させ、しかる後に溶離液
を流下させるとIgGが溶離して、連続的に精製IgG
を得ることができる。そして更に精製度を高めるために
は、この操作をくり返したり、必要あれば新たに調製し
た該プロテインA固定化担体充填カラムで改めて処理し
てもよい。バッチ式で精製する場合も同様にIgGを担
体に結合せしめた後、これを固液分離し、次いでIgG
を溶離すればよい。
【0010】以下、本発明を実施例について更に詳しく
説明する。
【0011】
【実施例1】
【0012】〔(1)プラスミドpTRP−PROT−
ABI〜VIの構築〕 最も分子量の小さい基本蛋白質として、プロテインAの
ABドメインを用いることを計画し、その遺伝子を市販
のプロテインA融合蛋白質発現ベクターpRIT2Tを
鋳型としてPCR法で合成した(図2)。その際、遺伝
子の両端に制限酵素AccIの認識配列を導入し、この
遺伝子が一定方向に連結されるようにした。AccIの
認識配列はnon−palindromicであり、両
末端にそのよう配列を持つDNA断片は一定方向にし
か連結されない特徴がある。この様な制限酵素としては
他に、AfLIII、AvaI、BanI、BanI
I、HgiAIなどがある。ABドメインの遺伝子の合
成法は図2に示したPCR法に限定されるものでなく、
数十塩基からなるオリゴヌクレオチドに分割してDNA
合成機により合成し、それらをT4DNAリガーゼによ
って順に連結していくことによっても得られる。この場
合は大腸菌で効率よく発現させる目的で、大腸菌の至適
コドンを用いた遺伝子の塩基配列を用いることは当業者
によって一般的に行われている。
【0013】発現ベクターとしては、trpプロモータ
と、クローニング部位としてAccIサイトを持ち、大
腸菌で高発現させるために、N末端アミノ酸のMetの
次のアミノ酸をLysとし、そのコドンをAAAとし
て、いわゆるATGベクター(pTRPACC)を作製
した。この発現べクターに上記プロテインAのABドメ
インの遺伝子を基本単位として、それらが1個から6個
連結されたものを挿入した。PCR反応は、pRIT2
TをHincIIで切断したものを鋳型とし、センスプ
ライマーとして、5’−GGTAGACGCTGATA
ACAATTTCAACAAA−3’(図3、PROT
S)を、アンチセンスプライマーとして、5’−GGT
CTACTTTTGGTGCTTGAGCATCATT
TA−3’(図3、PPOTAS)を用い、Taqポリ
メラーゼ(2.5単位)を用いて、94℃、1分、50
℃、1分、72℃、5分を30サイクル行って、目的の
ABドメインの遺伝子を増幅した。発現べクターも同様
のPCR反応を利用して、クローニング部位を導入し
た。この場合に用いたセンスプライマー(ACCS)及
びアンチセンスプライマー(ACCAS)は、図3に示
すとおりである。
【0014】ライゲーション反応は、T4DNAリガー
ゼ(350単位)を用いて、14℃、16時間行った。
この反応生成物を用いて、大腸菌JM109(recA
l,endAl,gyrA96,thi,hsdR1
7,supE44,relAl,λ−,Δ(lac−p
roAB),[F’,traD36,proAB,la
cIq,lacZΔM15])の形質転換を行った後、
受容菌を寒天0.7%およびアンピシリンを1ml当た
り100μg含む寒天培地(組成:1リットル当たりト
リプトン10g、イーストエキス5g、食塩10g、p
H7.4)と混合した後、寒天1.5%およびアンピシ
リンを1ml当たり100μg含むL寒天培地のプレー
ト上に重層して37℃にて一昼夜培養を行い、アルカリ
ーSDS法によりプラスミドDNAを分離し、アガロー
スゲル電気泳動を行って、目的のDNA断片が挿入され
たクローンを選択した。また、得られたプラスミドDN
AをAccIで部分消化することにより、何単位のプロ
テインAのABドメインの遺伝子が挿入されているかを
調べ、1個から6個連結されたものをそれぞれ、pTR
P−PROT−ABIからpTRP−PROT−ABV
Iと名付けた。
【0015】
【(2)形質転換大腸菌JM109/pTRP−PRO
T−ABI〜VIの培養】プラスミドpTRP−PRO
T−ABI〜VIで形質転換した大腸菌JM109をア
ンピシリンを1ml当たり100μg含むLB培地中、
37℃で24時間培養した。このようにして得た菌体は
−20℃で凍結保存した。
【0016】
【(3)菌の粉砕と各マーカー蛋白質の精製】凍結して
あった菌体を室温で融解した後、菌体の3倍量の0.1
mM EDTA、0.15M NaClを含む50mM
燐酸緩衝液(pH7.5)に懸濁し、ダイノミルにより
菌を破砕した。これに1/50容量の10% Lubr
olPXを加え、0℃で15分間撹拌した後、15,0
00rpmで20分間4℃で遠心し、その遠心上清に硫
安を加えて30%飽和にし、さらにその遠心上清に硫安
を加えて60%飽和にして遠心し、30−60%飽和硫
安沈澱画分を得た。これを少量の緩衝液A(0.1mM
EDTAを含む50mM燐酸緩衝液、pH7.5)に
溶解し、セファデックスG−25カラムで脱塩後、緩衝
液Aで平衡化したDEAE−セファロースカラムにアプ
ライした。目的蛋白質はこの条件でDEAE−セファロ
ースに吸着する。緩衝液Aでカラムを十分洗浄後、0−
1M NaClの直線濃度勾配で溶出した。目的蛋白質
は、HRP結合ヤギ抗ウサギIgG抗体を用いたELI
SAにより検出した。目的蛋白質画分を0.15M N
aCl、0.05% Tween20を含む50mMト
リス塩酸緩衝液、pH7.4で平衡化したIgGセファ
ロースカラムにアプライし、同緩衝液で十分カラムを洗
浄後、0.5M酢酸アンモニウム緩衝液(pH3.4)
で溶出した。溶出画分を80%飽和硫安で沈澱させ、少
量の緩衝液Aで溶解後、0.2M NaClを含む0.
1M燐酸緩衝液、pH7.0で平衡化されたTSKge
l G3000SWカラムによる高速分子篩クロマトグ
ラフィにかけた。このようにして得られた画分はSDS
−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で単一バンドを示し
た。下記の表1に各連結蛋白質におけるABドメインの
連結数とその分子量についてまとめた。ABドメイン1
個は116アミノ酸からなり、その分子量は1320
5.24である。各連結蛋白質のN末端にはMetLy
sValAspの4アミノ酸がついており、C末端には
ThrGlyArgArgPheThrThrSerの
8アミノ酸がついている。また各ABドメインはVal
Aspの2アミノ酸で連結されている。
【0017】
【表1】
【0018】
【(4)固定化担体の作製】担体(臭化シアン活性化セ
ファロース4B:ファルマシア社製)0.3gをカラム
中にて1mM HCl中で15分間膨潤しゲル化させ
た。次いで1mM HClを用いてこれを洗浄した(乾
燥ゲル1gあたり200ml)。更に、カップリングバ
ッファー(0.1M NaHCO3(pH8.3)−
0.5M NaCl)で、これを洗浄した(乾燥ゲル1
gあたり5ml)。一方、カップリングバッファーにリ
ガンド蛋白質(前項で作製した組換え型プロテインA:
ABドメインのくり返し数1〜6(すなわち、PROT
AB16);なお対照として、天然型プロテインA(市
販品)を溶解しておき、これを上記ゲルに、ゲル1m
l:バッファー2mlの割合で懸濁し、これを4℃で一
昼夜振動混合した。次いでブロッキング試薬(0.2M
グリシン(pH8.0))を加え、室温に2時間保持し
た後、カラムを、カップリングバッファー、0.1M
酢酸バッファー(pH4)−0.5M NaCl、次い
でカップリングバッファーの順序で洗浄して、各種組換
え型プロテインAを固定化した担体を充填したカラムを
それぞれ作製した。なお、いずれのプロテインAも担体
への結合率は良く、例えばPROT−AB4の担体への
結合率は約95%であった。
【0019】
【(5)IgGの分離精製】ウサギの血清2mlにバッ
ファーA(0.1M Na−Pi(pH7.0))4m
lを加えて希釈した後、濾過、滅菌処理し、これを前項
で調製した各カラムにそれぞれ添加した。次いでバッフ
ァーAを各カラムに10mlずつ流した後、溶離液とし
てバッファーB(0.3M KCl−HCl(pH2.
3))を流して溶離処理を行い、1mlずつ分画操作し
てそれぞれA280及びELISA法によるA492の
吸光度で蛋白質及びIgG量を測定した。その結果、カ
ラム1mlに吸着して溶離してきたIgG量11.1m
gのIgGを得た。なお、PROT−AB4のアフィニ
ティクロマトグラフィの結果を図4に示したが、これか
らも明らかなように、フラクションナンバー20前後に
おいて、精製IgGが溶離されていることがわかる。
【0020】各組換え型プロテインA及び市販の天然型
プロテインAについて、IgGの結合容量の測定結果を
図5に示す。この結果から明らかなように、組換え型プ
ロテインAはIgG結合ドメインの連結数の増加に伴っ
てIgG結合容量が増し、例えばPROT−AB4は対
照の約35%も結合容量が高く、精製純度が非常に高く
なることが実証された。また、PROT−AB4 セフ
ァロースカラムによって精製されたウサギIgGを4μ
gの割合でSDS−PAGEにアプライし、得られたパ
ターンを図6に示した。図中1は分子量マーカー、2は
ウサギの抗ヒトCRP血清(8μg)、3は精製IgG
(4μg)を示すが、図6から明らかなように、目的と
するIgGが集中して分離されたこと、つまりきわめて
高度に精製されたことが、これによってもはっきりと実
証された。なお本実施例におけるELISA法では、1
次抗体は用いず、2次抗体としてHRP結合ヤギ抗ウサ
ギIgG抗体を用いて行った。
【0021】
【実施例2】実施例1と同様にして、プロテインAのD
ドメインを用いて各種の連結蛋白質を調製した。その結
果を下記の表2に示す。表2は、Dドメインを単位とし
た場合の連結数と各連結蛋白質の分子量についてまとめ
たものである。
【0022】
【表2】
【0023】これらの各組換え型プロテインAも、AB
ドメインに係る実施例1の場合と同様に、すぐれたIg
G精製能を有していた。
【0024】上記結果から明らかなように、本発明によ
れば各種分子量を有する濃縮蛋白質を目的に応じて自由
に調製することができる。またプロテインAのIgG結
合ドメインには上記したA、B、Dのほか、E、Cがあ
るので(これのアミノ酸配列は図1に示した)、上記し
たと同様の手法によって、E、Cのドメインについて
も、目的とする連結蛋白質を同種又は異種のドメインの
間で自由に調製することができ、IgGを高度に精製す
ることができる。
【0025】
【発明の効果】本発明は、遺伝子工学の手法を利用する
ことによってIgG精製能にすぐれたプロテインAを製
造するものであって、各ドメインを選択、結合すること
によって目的とする正確な分子量を有する連結蛋白質を
自由に工業的に製造することができ、これらは、いずれ
も、天然型のプロテインAに比して卓越したIgG分離
精製能を示すものである。
【0026】したがって本発明によれば、バイオテクノ
ロジーの各分野において重要な役割を果しているIgG
を効率よく分離精製することができ、精製された高純度
のIgGを効率的に製造することができる。また、本発
明によれば、試料からIgGのみを選択的に分離除去す
ることができるし、更にまた本発明は、試料中のIgG
の正確且つ簡便なバイオアッセイにも利用することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プロテインAの5つのIgG結合ドメイン
(E、D、A、B、C)のアミノ酸配列を比較した図で
あり、図中、5種の間で完全に一致しない部分につい
て、共通でないアミノ酸にアンダーラインを示した。
【図2】本発明に係る発現プラスミドの構築図である。
【図3】PCR法でプロテインAのABドメインの遺伝
子を増幅するための2種のプライマー(PROTS、P
ROTAS)および、発現ベクターに開始コドンとAc
cIサイトを導入するための2種のプライマー(ACC
S,ACCAS)の塩基配列である。
【図4】PROT−AB4 セファロース カラム上に
おけるウサギ抗ヒトCRP抗体のアフィニティクロマト
グラムである(○:蛋白質、△:IgG)。
【図5】6種の組換え型プロテインAによるウサギ抗血
清由来IgGの結合容量を示したグラフである。
【図6】PROT−AB4 セファロース カラムによ
って精製されたウサギIgGのSDS−PAGE パタ
ーンである(1:分子量マーカー、2:ウサギ抗血清、
3:精製IgG)。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 プロテインAのIgG結合ドメインAB
    を単位とし、このABドメインを4個連結してなること
    を特徴とするIgG精製用組換え型プロテインA。
JP3235687A 1991-07-25 1991-08-23 IgG精製用組換え型プロテインA Expired - Lifetime JP2584697B2 (ja)

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DE69230061T DE69230061T2 (de) 1991-07-25 1992-07-23 Künstliches immunoglobulin-bindendes protein
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