JP2579227Y2 - 熱転写記録が可能な装飾紙 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、例えば押圧模様等によ
る粗面が表現されている装飾紙に関し、バーコード等の
各種の情報を熱転写によって記録することのできる装飾
紙を提供する。

【０００２】

【従来の技術】染色した着色繊維の１種または数種を混
抄した着色紙、凝集した繊維層を抄き合わせた装飾紙、
パルプ繊維と綿やビニロン繊維等を抄き合わせた装飾
紙、竹簀を張ったシリンダーを利用した円網抄紙機によ
り、竹簀の目を強調して凹凸を付けた装飾紙、エンボス
凹凸模様を付けた装飾紙等は、多彩な色や柄を有する装
飾効果の高い高級感を有する厚紙として知られており、
例えば、出版物の装幀用として具体的には、書籍の表
紙、カバー、帯封などとして、あるいは、封筒、パンフ
レット、カタログ、ラベル、値札、荷札等として多用さ
れている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】これらの装飾紙には、
その用途に応じて各種の記録が付されるが、装飾紙はそ
の表面の平滑度が低く、熱転写リボンとの密接が十分で
ないため、熱転写による正確な記録を形成し得ない。

【０００４】特に、値札や荷札としての紙には、熱転写
によってバーコードが記録されるのが普通であるが、装
飾紙にはバーコードの細線が正確に印字されなく、バー
コード読み取り器での読み取りに誤読が発生する。この
ため、装飾紙を値札や荷札として使用する場合には、装
飾紙をブランド名等を記入する用紙として使用し、バー
コードは別の表面が平滑な紙に印字し、２枚の札を１組
にして使用しているのが実情である。

【０００５】これに対して本考案は、装飾紙自体の本来
の高級な外観を損ねることがなく、しかも、バーコード
等の各種の情報を熱転写によって記録することのできる
装飾紙を提供することを目的とする。

【０００６】また、本考案は、仮にバーコード印字が正
確になされていても、地色とバーコード印字とのコント
ラストがなく、通常のバーコード読み取り器の波長域で
はバーコードの読み取りができない地色の装飾紙、すな
わち、黒色、ブルー、濃緑等の濃色の地色の装飾紙に対
しても、バーコードの読み取りが可能な装飾紙を提供す
ることを目的としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本考案は、表面が粗面とされている装飾紙からなる
基材の少なくとも片面に、ポリオレフィン系樹脂の透明
な押出し樹脂層が積層されている熱転写記録が可能な装
飾紙とするものである。

【０００８】また、本考案は、ポリオレフィン系樹脂に
よる押出し樹脂層の表面がマット調に形成されている熱
転写記録が可能な装飾紙とするものである。

【０００９】さらに、本考案は、表面が粗面とされてい
る装飾紙からなる基材の片面に、ポリオレフィン系樹脂
の白色不透明な押出し樹脂層が積層されている熱転写記
録が可能な装飾紙とするものである。

【００１０】本考案では、基材として表面が粗面を呈す
る通常の装飾紙を用いている。

【００１１】基材として利用する装飾紙は、坪量３０〜
４００ｇ／ｍ² の厚手の高級化粧紙であり、例えば、染
色した着色繊維の１種または数種を混抄した色紙、渋皮
を混抄した紙、凝集した繊維層を抄き合わせた装飾紙、
パルプ繊維と綿やビニロン繊維等を抄き合わせた装飾
紙、円網抄紙機のシリンダーに竹簀を張ることによって
竹簀の目を強調して凹凸を付けた装飾紙、エンボス凹凸
模様を付けた装飾紙等である。具体的には、ＯＫサン
ド、ＯＫミューズカイゼル、ＯＫミューズパール、ＯＫ
ミューズエディ、ＯＫミューズエルスター、ＯＫゴール
デンリバー（以上安倍川製紙 (株) 製）、レザック、つ
むぎ、ろうけつ（以上特種製紙 (株) 製）、きぬもみ、
アルテス、サンピーチ、ビルカラー（以上日清紡 (株)
製）等を使用し得る。

【００１２】なお、基材として利用する表面が粗面を呈
する装飾紙の地色は、ポリオレフィン系樹脂の透明な押
出し樹脂層を形成する場合には、白、イエロー、ベージ
ュ、グレイ、ピンク等の淡色のものが望ましく、また、
白色不透明な押出し樹脂層を形成する場合は、例えば黒
色、ロイヤルブルー、濃赤色等の濃色が好ましいが特に
限定されるものではない。

【００１３】表面が粗面とされている装飾紙からなる基
材に押出し積層されるポリオレフィン系樹脂は、例え
ば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エ
チレン−ビニルアルコール共重合体等であり、これらの
単体または混合樹脂が利用される。

【００１４】なお、混合樹脂の好ましい例は、ポリエチ
レン１００重量部とエチレン−ビニルアルコール共重合
体３〜１４重量部とによる混合樹脂である。

【００１５】ポリオレフィン系樹脂による押出し樹脂層
の厚さは、表面が粗面とされている装飾紙からなる基材
の凹凸面が、この押出し樹脂層によって十分に平滑にな
るように、５〜３０μ程度の厚さに形成される。

【００１６】また、ポリオレフィン系樹脂による押出し
樹脂層中には、酸化チタン、炭酸カルシウム、クレイ、
酸化亜鉛、水酸化アルミニウム等の白色ピグメントを含
有させることができる。

【００１７】表面が粗面とされている装飾紙からなる基
材の地色が、白、イエロー、ベージュ、グレイ、ピン
ク、空色等の淡色の場合には、該押出し樹脂層の存在に
よって基材をなす装飾紙が隠蔽されることのない程度
に、酸化チタン、炭酸カルシウム、クレイ、酸化亜鉛、
水酸化アルミニウム等の白色ピグメントをポリオレフィ
ン１００重量部に対して３０重量部以下で含有させるこ
とが好ましい。

【００１８】表面が粗面とされている装飾紙からなる基
材の地色が、黒、ブルー、濃緑、濃紺、赤紫等の濃色の
場合には、透明に近いポリオレフィン系樹脂による押出
し樹脂層を形成しても、該ポリオレフィン系樹脂による
押出し樹脂層面に形成される感熱転写によるバーコード
印字は、赤外〜近赤外光で検知するバーコード読み取り
器での読み取りが不可能である。このため、ポリオレフ
ィン系樹脂による白色の押出し樹脂層を形成することが
望ましい。かかるポリオレフィン系樹脂による白色の押
出し樹脂層は、ポリオレフィン系樹脂１００重量部に対
して５〜１５０重量部程度の白色ピグメントを含有させ
ることによって得られる。特に、屈折率が大で隠蔽性の
高い酸化チタンを白色ピグメントとして利用することが
望ましい。

【００１９】表面が粗面を呈する装飾紙からなる基材に
対するポリオレフィン系樹脂による押出し樹脂層は、ポ
リオレフィン系樹脂またはポリオレフィン系樹脂と白色
ピグメントとの混合物をポリオレフィン系樹脂の融点以
上１８０〜３００℃程度に加熱し、これを押出しダイス
から前述の基材面に溶融押出しした後、ニップロールと
冷却ロールとの間で、基材とポリオレフィン系樹脂によ
る押出し樹脂層とを密接し、積層させることによって形
成される。

【００２０】ニップロールと冷却ロールとの間で、基材
とポリオレフィン系樹脂による押出し樹脂層とを密接さ
せて両者を積層する際に、ポリオレフィン系樹脂による
押出し樹脂層面に接する冷却ロールとして鏡面仕上げロ
ールを利用することにより、光沢のある押出し樹脂層が
形成される。

【００２１】また、この冷却ロールとして、砂目立てし
たロールを利用することにより、マット調の押出し樹脂
層が形成される。なお、マット調の押出し樹脂層とする
ことにより、表面が粗面とされている装飾紙からなる基
材の風合いを保持し得る。

【００２２】表面が粗面とされている装飾紙からなる基
材にポリオレフィン系樹脂による押出し樹脂層を積層す
る際には、押出し樹脂層が積層される基材面を予めコロ
ナ放電処理し、さらに、基材に積層したポリオレフィン
系樹脂による押出し樹脂層の表面をコロナ放電処理する
ことにより、基材とポリオレフィン系樹脂による押出し
樹脂層との間の密着性を高めると共に、ポリオレフィン
系樹脂による押出し樹脂層の表面の印刷適性を高めるこ
とができる。

【００２３】

【作用】本考案は、表面が粗面とされている装飾紙から
なる基材の少なくとも片面に、ポリオレフィン系樹脂に
よる透明な押出し樹脂層が積層されているか、あるい
は、表面が粗面とされている装飾紙からなる基材の片面
に、ポリオレフィン系樹脂の白色不透明な押出し樹脂層
が積層されているものであり、装飾紙の表面の粗面がポ
リオレフィン系樹脂による押出し樹脂層によって平滑に
されているため、熱転写記録の際の熱転写リボンと装飾
紙の表面との密接性が良好で、印字抜けのない熱転写記
録が行なえる。

【００２４】特に、熱転写記録によってバーコードのよ
うな細線が正確に印字されるため、バーコードを表面が
平滑な別の紙に印字して組み合わせるというような煩わ
しさが無い。

【００２５】また、請求項１の考案の装飾紙において
は、ポリオレフィン系樹脂による透明な押出し樹脂層が
形成されているため、該押出し樹脂層の存在によって、
表面が粗面とされている装飾紙からなる基材の多彩な色
や柄が押出し樹脂層によって損なわれることがない。

【００２６】また、請求項３の考案の装飾紙において
は、ポリオレフィン系樹脂層の押出し樹脂層中に白色ピ
グメントを含有させ、ポリオレフィン系樹脂の白色の押
出し樹脂層を形成するものであることにより、バーコー
ド読み取り器でのバーコードの読み取りが不可能な装飾
紙、すなわち、地色が黒、ブルー、濃緑、濃紺、赤紫等
の濃色の場合の装飾紙においても、バーコード読み取り
器でのバーコードの読み取りが可能になる。

【００２７】さらに本考案の装飾紙は、押出し樹脂層が
ポリオレフィン系樹脂で形成されているため、該装飾紙
に熱転写記録を付す際には、熱転写リボンのインキの主
成分であるワックスと性質の類似しているポリオレフィ
ン系樹脂層がインキ受容層となることから、熱転写記録
のインキとの密着性が良好であり、押出し樹脂層面に付
された熱転写記録を擦ったりしても印字が消えることが
なく、品質の高い熱転写記録が得られる。

【００２８】

【実施例】以下、本考案の熱転写記録が可能な装飾紙の
具体的な構成を、製造実施例に基づいて説明する。

【００２９】実施例１ ［図１］において、ゴールデンリバー「安倍川製紙
(株) 製：ベージュ色」による装飾紙からなる基材２の
裏面に、押出しラミネーター機を利用して、ＬＤＰＥを
２３０℃に加熱してダイスから押出し積層し、鏡面ロー
ルを利用して冷却することにより、厚さ１５μのポリオ
レフィン系樹脂による押出し樹脂層３を形成し、本考案
の１実施例品である熱転写記録が可能な装飾紙１を得
た。

【００３０】実施例２ ゴールデンリバー「安倍川製紙 (株) 製：ベージュ色」
による装飾紙からなる基材の裏面に、押出しラミネータ
ー機を利用して、ＬＤＰＥを２３０℃に加熱してダイス
から押出し積層し、砂目立てをしたロールを利用して冷
却することにより、厚さ１５μのポリオレフィン系樹脂
による押出し樹脂層を形成し、本考案の１実施例品であ
る熱転写記録が可能な装飾紙を得た。なお、本実施例品
における押出し樹脂層は、その表面がマット調に形成さ
れている。

【００３１】実施例３ 地色が黒色の装飾紙からなる基材の裏面に、押出しラミ
ネーター機を利用して、ＬＤＰＥ１００重量部に対して
酸化チタン２０重量部を含有する混合物を２３０℃に加
熱してダイスから押出し積層し、鏡面ロールを利用して
冷却することにより、厚さ１５μのポリオレフィン系樹
脂による押出し樹脂層を形成し、本考案の１実施例品で
ある熱転写記録が可能な装飾紙を得た。

【００３２】［実験］ 実施例１〜実施例３で得られた各装飾紙及び実施例１〜
２で基材として利用したゴールデンリバー「安倍川製紙
(株) 製：ベージュ色」による装飾紙（ブランク）のそ
れぞれに、熱転写プリンター「オカベマーキング製：Ｍ
９６００」によりバーコードを印字した。なお、実施例
１〜実施例３で得られた各装飾紙にはポリオレフィン系
樹脂による押出し樹脂層面に印字し、また、ブランクに
は装飾紙の表面に印字した。

【００３３】続いて、前述の各装飾紙に付されているバ
ーコード印字の正確さを、バーコード検証器「東洋イン
キ製造 (株) 」による読み取り率を測定することによっ
て判断した。

【００３４】バーコード検証器「東洋インキ製造 (株)
」による読み取り率を、肉眼による官能評価と共に
［表１］に示す。

【００３５】

【表１】

【００３６】

【考案の効果】本考案は、表面が粗面とされている装飾
紙からなる基材に、ポリオレフィン系樹脂による押出し
樹脂層が積層されている熱転写記録が可能な装飾紙から
なるものである。

【００３７】したがって、本考案の装飾紙によれば、装
飾紙の表面の粗面がポリオレフィン系樹脂による押出し
樹脂層によって平滑にされているため、熱転写記録の際
の熱転写リボンと装飾紙の表面との密接性が良好で、印
字抜けのない熱転写記録が行なえることから、バーコー
ドを表面が平滑な別の紙に印字して組み合わせるという
ような煩わしさが無く、その利用価値に優れた効果を奏
する。

【００３８】また、請求項１の考案の装飾紙において
は、ポリオレフィン系樹脂に透明な押出し樹脂層が形成
されているため、表面が粗面とされている装飾紙からな
る基材の多彩な色や柄が押出し樹脂層によって損なわれ
ることがない。

【００３９】また、請求項３の考案の装飾紙は、ポリオ
レフィン系樹脂による押出し樹脂中に白色ピグメントを
含有させ、白色のポリオレフィン系樹脂の押出し樹脂層
を形成するものであるから、従来はバーコードの読み取
りが不可能だった黒、ブルー、濃緑、濃紺、赤紫等の濃
色の地色の装飾紙の場合も、バーコードの読み取りが可
能な装飾紙になる。

【００４０】さらにまた、本考案の装飾紙は、押出し樹
脂層がポリオレフィン系樹脂層で形成されているため、
該装飾紙に熱転写記録を付す際には、熱転写リボンのイ
ンキの主成分であるワックスと性質の類似しているポリ
オレフィン系樹脂層がインキ受容層となることから、熱
転写記録のインキとの密着性が良好であり、押出し樹脂
層面に付された熱転写記録を擦ったりしても印字が消え
ることがなく、品質の高い熱転写記録が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例を示す拡大断面図である。

【符号の説明】

１…熱転写記録が可能な装飾紙 ２…表面が粗面とされている装飾紙からなる基材 ３…ポリオレフィン系樹脂による押出し樹脂層

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 喜多 利成 東京都中央区日本橋小伝馬町２−３ 王 子化工株式会社内 (72)考案者 橋本 英昭 東京都中央区日本橋小伝馬町２−３ 王 子化工株式会社内 (56)参考文献 特開 平１−263081（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−366690（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−64791（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−137892（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) B41M 5/40

Claims (3)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 表面が粗面とされている装飾紙からなる
   基材の少なくとも片面に、ポリオレフィン系樹脂の透明
   な押出し樹脂層が積層されていることを特徴とする熱転
   写記録が可能な装飾紙。
2. 【請求項２】 ポリオレフィン系樹脂の押出し樹脂層の
   表面がマット調に形成されていることを特徴とする請求
   項１記載の熱転写記録が可能な装飾紙。
3. 【請求項３】 表面が粗面とされている装飾紙からなる
   基材の片面に、ポリオレフィン系樹脂の白色不透明な押
   出し樹脂層が積層されていることを特徴とする熱転写記
   録が可能な装飾紙。