JP2576500Y2 - 加工機における案内面の保護装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【考案の属する技術分野】本考案は、旋盤、形削盤、フ
ライス盤、等の機械工作機、木材加工機等の各種の加工
機における案内面を切削屑やごみ等から保護するための
装置の構造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】旋盤、形削盤、フライス盤、数値制御旋
盤、マシニングセンタ等の切削工作機械、木材加工機
等、各種の加工機において、例えばその機械のベッドの
水平な案内面に載置されて往復移動するテーブル、コラ
ム、サドル等の移動台には工具や切削（工作）される側
のワークが取り付いているので、切り屑やごみ等が案内
面に付着すると、当該案内面と移動台との隙間に嵌まり
込んで案内面を傷つける等の不都合が生じる。そこで、
この種の加工機では、従来から、ベッドの水平案内面に
載置されて往復移動する移動台に、その移動方向に沿っ
て屈曲自在なカバー体の一端を取付けし、このカバー体
の中途部で前記案内面を上から覆うようにベッド上に延
設し、カバー体の他端（自由端）をベッドの端部から垂
らすようにしていた。

【０００３】このように構成すると、移動台がベッドの
端部から離れる方向に移動（後退）するとき、当該移動
台にてカバー体を引張り、反対に移動台がベッドの端部
に近づくように移動（前進）するときには、カバー体を
移動台で押しやるから、このカバー体の下面にて常時案
内面を覆って保護することができる。しかし、カバー体
の下面は案内面に常時接当しているので、このカバー体
で案内面を傷つけ、または案内面等のベッドの箇所で擦
られてカバー体が摩耗するおそれがある。特に、移動台
がベッドの端部に近づくように前進するときには、当該
移動台でカバー体を押しやるから、カバー体が案内面と
摺動接触摩擦により摩耗し易いし、カバー体の屈曲部に
無理な力が作用するから、耐久性に劣るという問題があ
った。

【０００４】この不都合を解消する手段として、実開昭
６２−１１３９３４７号公報では、カバー体としての変
形容易なゴムまたは金属板等からなる無端調帯の一端
は、リニアガイドの上案内面に沿って移動可能な移動部
材の前端に連結させ、当該無端調帯の中途部を、前記リ
ニアガイドの前後端を挟む部位に配置したローラに巻回
し、さらに無端調帯の他端を前記移動部材の後端に連結
したものが開示されている。なお、無端調帯の幅方向の
左右両側端縁は、左右両側の防塵ケースの内面に形成さ
れた案内溝に沿うように嵌め入れられている。

【０００５】また、実開昭６０−１４９７３７号公報で
は、可撓性の防塵カバーの一端を、リニアガイドの上案
内面に沿って移動可能なスライダの前端に引張りバネを
介して連結させ、防塵カバーの他端を巻取り円筒に固着
する一方、該巻取り円筒と一体的に回転する支軸に取付
くプーリと、リニアガイドの後端側に配置した後プーリ
とにベルトを巻掛けし、該ベルトの一箇所を前記スライ
ダに固定して、スライダの前進・後退に応じて巻取り円
筒を正回転・逆回転させて防塵カバーを弛み発生させず
に巻取りまたは巻き戻す構成が開示されている。

【０００６】さらに、実開平１−１１４３３号公報で
は、軸支持台（リニアガイド）に沿って移動可能な可動
部材の前端と後端とに各々一端が固定され、且つ他端が
リニアガイドの前後端部に配置されたドラムに巻装され
たシートベルト（防塵カバー）と、両端部が各々前記ド
ラムに前記シートベルトの巻回方向とは逆方向に巻装さ
れ、且つ軸支持台の下面に沿って、両ドラム間に張設さ
れた適度の弾性を有するワイヤとを具備し、可動部の移
動により、シートベルトをドラムに対して緊張状態で繰
出し巻取り自在に構成されたものが開示されている。

【０００７】

【考案が解決しようとする課題】しかしながら、前記実
開昭６２−１１３９３４７号公報に開示のものでは、無
端調帯の幅方向の左右両側端縁は、左右両側の防塵ケー
スの内面に形成された案内溝に沿うように嵌め入れられ
ているから、無端調帯の前後移動に伴い、当該無端調帯
の上面に載った切削屑や塵が前記固定的な案内溝との間
に詰まる可能性があった。

【０００８】そして、実開昭６０−１４９７３７号公報
や実開平１−１１４３３号公報に記載のものでは、前記
いずれの防塵カバーでも、その幅方向の少なくとも左右
両側端は何らの支えがないから、防塵カバーを幅方向に
弛まないように緊張させて、ローラに巻回する必要があ
り、防塵カバーにかなり大きな張力を付与しなければな
らず、そうすると可撓性を有する防塵カバーに無理な力
が常時作用して当該防塵カバーが劣化し易くなるという
問題が発生する。もし上述のようにな大きい張力を防塵
カバーに付与しないと、防塵カバーの下面がリニアガイ
ドの上案内面に摺接するという問題があった。

【０００９】本考案は、これら問題を解決した保護装置
を提供することを目的とするものである。

【００１０】

【課題を解決するための手段】この目的を達成するた
め、本考案は、加工機における略水平状の案内面に沿っ
て往復移動する移動台に、前記案内面の上面を覆うため
の屈曲自在なカバー体の一端を取付けする一方、前記案
内面の側方には、移動台の往復移動方向に沿って適宜隔
てて配置する前後一対の回転支持手段を、前記カバー体
の幅方向の少なくとも左右両端部近傍に設け、該各回転
支持手段には、カバー体の下面を前記案内面より上位置
で支持する線状体を巻回し、前記移動台が最も前進した
位置より前方には前記案内面の前端縁より下方に、上面
開放状の収納凹所を形成し、前記カバー体の他端を自由
端となし、該自由端側を前記収納凹所に臨ませるように
構成したものである。

【００１１】

【考案の実施の形態】次に、本考案を加工機の一例とし
ての工作機（マシニングセンター）に適用した実施形態
について説明すると、符号１は基台、符号２は基台１の
後部上面にて図１の紙面と直角方向（Ｘ軸方向）に往復
移動自在なキャリッジ、符号３はキャリッジ２上にて紙
面と平行な水平方向（Ｙ軸方向）に前後往復移動自在な
コラム、符号４はコラム３上にて紙面と平行な垂直方向
（Ｚ軸方向）に上下往復移動自在な主軸ヘッドを各々示
す。

【００１２】キャリッジ２は基台１の後部１ａ上面にて
Ｘ軸方向に延びるガイドレール５，５に摺動自在に搭載
され、Ｘ軸モータ６により送り駆動され、キャリッジ２
上面には、Ｙ軸方向に延びる左右一対の案内レール７，
７を設け、該一対の案内レール７，７上面の案内面（摺
動面）に移動台の一例としてのコラム３が搭載され、こ
のコラム３が往復移動可能なようにＹ軸モータ８及び作
動軸（図示せず）を介して駆動される。

【００１３】コラム３の前面には、Ｚ軸方向（縦方向）
に延びるガイドレール９を設け、該ガイドレール９に沿
って上下移動自在な主軸ヘッド４がＺ軸モータ１０にて
上下往復駆動する。主軸ヘッド４下端に下向きに延びる
主軸１１は主軸ヘッド４に搭載した主軸モータ１２によ
り回転駆動され、また、主軸ヘッド４にはＡＴＣモータ
１３にて駆動されるＡＴＣ装置（工具交換装置）１４が
搭載されている。

【００１４】前記基台１の前部１ｂ上面に移動可能に搭
載されたワーク用テーブル１５の上面には、前記主軸１
１に取りつく工具（図示せず）にて工作されるべきワー
ク１６を載置固定する。符号１７は基台１の前部１ｂと
後部１ａとの間でＸ軸方向に延びる上面開放状の収納凹
所である。前記コラム３の前方側で露出する左右一対の
案内レール７，７の案内面（摺動面）を上側から保護す
るための屈曲自在なカバー体１８は、断面中空状等の多
数の骨格部材１９と、隣接する骨格部材１９を屈曲自在
に連接（連結）する合成樹脂材等の連結シート２０とか
らなる。骨格部材１９の一つの実施例は、図２に示すよ
うに薄い鋼板またはアルミ薄板製で断面中空の矩形状に
形成する。カバー体１８は、その一端をブラケット２１
を介してコラム３の前面にボルト等にて着脱自在に取付
けてある。該カバー体１８は、その長さ（Ｙ軸方向）寸
法をコラム３の移動距離よりも長くし、カバー体１８の
他端が前記収納凹所１７に垂れ下がるように形成され
る。また、カバー体１８の幅寸法は少なくとも前記左右
一対の案内レール７，７の間隔より広幅に形成されてい
る。

【００１５】符号２２は、キャリッジ２の少なくとも左
右両側方に設けた前後一対のプーリ２３，２４から成る
回転支持手段で、両プーリ２３，２４の上端はキャリッ
ジ２における案内レール７の上面より高い位置となるよ
うに各々軸２５に回転自在に枢支する。また、前方位置
のプーリ２３の前端はキャリッジ２の前端縁より前方に
突出するように配設する前記両プーリ２３，２４の軸間
距離は、コラム３の前後方向の移動距離より長くなるよ
うに配設する。そして、前記一対のプーリ２３，２４に
対して該回転支持手段２２は、線状体の一つの実施例で
ある断面円形のガイドワイヤ２６を巻回する。前記ガイ
ド体１８はこのガイドワイヤ２６の上に載置される。符
号２７は、巻回したガイドワイヤ２６の両端に連結した
弛み防止用のテンションばねである。

【００１６】この構成によれば、図２及び図３で示すよ
うに、カバー体１８の下面は前述のように前後一対のプ
ーリ２３，２４に巻回されたガイドワイヤ２６に載置さ
れて、キャリッジ２における案内レール７、７の上面よ
り上方に位置して接触しない。従って、後述のようにカ
バー体１８が往復移動するとき、案内レール７の案内面
と摺動接触しないので、案内レール７及びカバー体１８
の両者は摩擦による摩耗や損傷を受けることがない。

【００１７】そして、コラム３がＹ方向、キャリッジ２
における前位置のプーリ２３から遠ざかるように、後退
すると、カバー体１８を引っ張る。そして、プーリ２
３，２４は回転自在であるから、前記ガイドワイヤ２６
は載置されたカバー体と共に移動できることになる。反
対に、コラム３が前方向（Ｙ′方向）に移動するとき
は、当該コラム３の前端でカバー体１８を、プーリ２３
方向に押し出すことになるが、このカバー体１８と共に
ガイドワイヤ２６も前方向に移動するので、カバー体１
８の長手方向の中途部が浮き上がる等の現象を生じさせ
ることなく、当該カバー体１８は略平坦な状態でプーリ
２３方向に移動できる。この場合、カバー体１８の他端
がプーリ２３の外周箇所で下向きに自由に垂れ下がり、
収納凹所１７内に収まるので、カバー体１８の途中が弛
むこともない。また、コラム３の移動速度が早い場合に
も、その移動速度に追従して、カバー体１８は円滑に移
動できることになる。従ってカバー体１８の屈曲自在な
部分に無理な力が作用することがなく、その屈曲自在な
部分の寿命も長くなり、カバー体１８の耐久性を向上さ
せることができる。

【００１８】なお、前記実施例のガイドワイヤ２６に代
えて、無端ベルト（Ｖベルト、またはタイミングベル
ト）をプーリ２３，２４に巻回しても良く、この場合、
ベルトの弛み防止用にテンションプーリを使用しても良
い。また、これらに代えてチエンをプーリに巻回するこ
とも可能である。さらに、ガイド体１８の幅方向中途部
の下面を支持するように、当該箇所の下面側に前記と同
様の構成の回転支持手段及びそれに巻回する線状体を設
けても良い（図３の一点鎖線参照）。

【００１９】

【考案の作用および効果】以上詳述したことから明らか
なように、本考案によれば、案内面を保護するためのカ
バー体の案内支持手段として、回転支持手段と、これに
巻回する線状体とを用いることにより、カバー体の往復
移動時に、前記案内面に接触させることなく、線状体の
移動と共にカバー体を移動可能とし、しかも、前記移動
台が最も前進した位置より前方には前記案内面の前端縁
より下方に、上面開放状の収納凹所を形成し、前記カバ
ー体の他端を自由端となし、該自由端側を前記収納凹所
に臨ませるように構成したものである。

【００２０】従って、カバー体の他端側（自由端側）の
重力にて線状体に載置されたカバー体は常に緊張状態と
なるが、カバー体の他端が自由端であることと相俟って
その緊張力は従来の技術のように、カバー体の中途部が
不自然に引っ張られて皺が発生しない状態の元でローラ
等に巻き込むための引張り力の如く大きくする必要がな
い。

【００２１】それ故、移動台の高速往復時にも、それに
伴って移動するカバー体は、軽快に動く線状体に支持さ
れた状態で移動できるから、従来のようにカバー体に不
必要な張力を与えることがなく、カバー体に無理な力が
作用しない状態のもとで、カバー体の移動時に案内面と
摺動摩擦することもない。このように、本考案によれ
ば、線状体とカバー体とは互いに拘束されない状態で、
単に線状体の表面にカバー体が載置されているだけであ
るから、加工機の案内面を保護するカバー体に不必要な
外力を与えることなく移動台の高速送りが可能となり、
また、カバー体の耐久性が向上し、コストを低減できる
効果を奏するのである。

【図面の簡単な説明】

【図１】加工機の側面図である。

【図２】要部拡大側面図である。

【図３】図２の III−III 矢視一部切欠き正面図であ
る。

【符号の説明】

１ 基台 ２ キャリッジ ３ コラム ５，５ ガイドレール ７，７ 案内レール １７ 収納凹所 １８ カバー体 １９ 骨格部材 ２０ 連結シート ２１ ブラケット ２２ 回転支持手段 ２３，２４ プーリ ２６ ガイドワイヤ ２７ テンションばね

フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭49−71571（ＪＰ，Ａ) 実開 昭62−113947（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭60−149737（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭63−127853（ＪＰ，Ｕ) 実公 平１−11433（ＪＰ，Ｙ２) 実公 昭45−17679（ＪＰ，Ｙ１) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) B23Q 11/08

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 加工機における略水平状の案内面に沿っ
   て往復移動する移動台に、前記案内面の上面を覆うため
   の屈曲自在なカバー体の一端を取付けする一方、前記案
   内面の側方には、移動台の往復移動方向に沿って適宜隔
   てて配置する前後一対の回転支持手段を、前記カバー体
   の幅方向の少なくとも左右両端部近傍に設け、該各回転
   支持手段には、カバー体の下面を前記案内面より上位置
   で支持する線状体を巻回し、前記移動台が最も前進した
   位置より前方には前記案内面の前端縁より下方に、上面
   開放状の収納凹所を形成し、前記カバー体の他端を自由
   端となし、該自由端側を前記収納凹所に臨ませるように
   構成したことを特徴とする加工機における案内面の保護
   装置。