JP2574497B2 - 耐照射特性および耐ナトリウム腐食特性に優れたFe―Ni基オーステナイト合金および合金成分設定方法 - Google Patents
耐照射特性および耐ナトリウム腐食特性に優れたFe―Ni基オーステナイト合金および合金成分設定方法Info
- Publication number
- JP2574497B2 JP2574497B2 JP2025622A JP2562290A JP2574497B2 JP 2574497 B2 JP2574497 B2 JP 2574497B2 JP 2025622 A JP2025622 A JP 2025622A JP 2562290 A JP2562290 A JP 2562290A JP 2574497 B2 JP2574497 B2 JP 2574497B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- alloy
- irradiation
- resistance
- based austenitic
- corrosion resistance
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02E—REDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
- Y02E30/00—Energy generation of nuclear origin
- Y02E30/30—Nuclear fission reactors
Landscapes
- Monitoring And Testing Of Nuclear Reactors (AREA)
- Heat Treatment Of Steel (AREA)
Description
【発明の詳細な説明】
本発明は、耐高速中性子照射特性(例えば、照射によ
る脆化、照射による材料の膨れ等)や、耐ナトリウム腐
食特性に優れたFe−Ni基オーステナイト合金およびこの
合金を製造する場合の合金元素の成分設定方法、さらに
詳しくは合金の耐照射特性および耐ナトリウム腐食特性
の評価を行うための指数として平均結合次数▲▼と
平均d電子軌道準位▲▼を採用した合金成分設定方
法に関する。 本発明のFe−Ni基オーステナイト合金は、原子炉、特
に高速増殖炉の炉心環境で長期間使用される炉心構成要
素(例えば燃料被覆管やラッパ管からなる燃料集合体、
制御棒、反射体等)や機器構造物(例えば、機器容器部
材、冷却系配管部材)などに好ましく利用できる。
る脆化、照射による材料の膨れ等)や、耐ナトリウム腐
食特性に優れたFe−Ni基オーステナイト合金およびこの
合金を製造する場合の合金元素の成分設定方法、さらに
詳しくは合金の耐照射特性および耐ナトリウム腐食特性
の評価を行うための指数として平均結合次数▲▼と
平均d電子軌道準位▲▼を採用した合金成分設定方
法に関する。 本発明のFe−Ni基オーステナイト合金は、原子炉、特
に高速増殖炉の炉心環境で長期間使用される炉心構成要
素(例えば燃料被覆管やラッパ管からなる燃料集合体、
制御棒、反射体等)や機器構造物(例えば、機器容器部
材、冷却系配管部材)などに好ましく利用できる。
従来より炉心構成部材としては、SUS304やSUS316など
のオーステナイトステンレス鋼が用いられてきたが、耐
スエリング性や照射クリープ特性など高速中性子に対す
る耐久性に限界があり、燃料の長寿命化を達成するには
適していないことが明らかになっている。 またこれまでのFe−Cr−Ni系合金の照射試験結果で
は、ボイドスエリングに対してNiの組成依存性が認めら
れ、例えば15Cr合金では、45%Niでスエリング量が最低
となることが報告されている。しかしながら、この系の
実用合金(例えばNimonic PE16やInconel 706など)は
いずれも中性子照射による金属間化合物の粒界異常析出
に伴う延性や靭性の低下、即ち照射脆化が起こり実用上
問題となっている。また、Nimonic PE16合金などでは、
400℃前後の中低温側での中性子照射により、耐スエリ
ング抵抗性が316系ステンレス鋼より劣る場合があるこ
とも報告されている。従来高速増殖炉炉心材料の開発に
は、一般に広く使用実績のある公金をベースにした試作
合金の中性子照射下での評価を繰り返すことによって、
微量成分の改良、最適化を行う方法が採られてきた。
のオーステナイトステンレス鋼が用いられてきたが、耐
スエリング性や照射クリープ特性など高速中性子に対す
る耐久性に限界があり、燃料の長寿命化を達成するには
適していないことが明らかになっている。 またこれまでのFe−Cr−Ni系合金の照射試験結果で
は、ボイドスエリングに対してNiの組成依存性が認めら
れ、例えば15Cr合金では、45%Niでスエリング量が最低
となることが報告されている。しかしながら、この系の
実用合金(例えばNimonic PE16やInconel 706など)は
いずれも中性子照射による金属間化合物の粒界異常析出
に伴う延性や靭性の低下、即ち照射脆化が起こり実用上
問題となっている。また、Nimonic PE16合金などでは、
400℃前後の中低温側での中性子照射により、耐スエリ
ング抵抗性が316系ステンレス鋼より劣る場合があるこ
とも報告されている。従来高速増殖炉炉心材料の開発に
は、一般に広く使用実績のある公金をベースにした試作
合金の中性子照射下での評価を繰り返すことによって、
微量成分の改良、最適化を行う方法が採られてきた。
しかしながら、従来の試行錯誤的手法によれば、耐中
性子照射特性および耐ナトリウム腐食特性に対して優れ
た成分の合金の開発には多大の費用と時間を要し極めて
非能率であり、特に使用実績のない新しい多元系の合金
について従来の手法で開発を実施するのは極めて困難で
ある。さらにこの試行錯誤的手法による場合は、その評
価も不正確であるため、開発の効率や材料の信頼性の向
上を図る点で大きな問題となっている。 本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされ
たもので、予め相安定性指標図を求め、これに基づいて
中性子照射下での相安定性を予測し、限定された範囲内
での合金についてのみ実験することにより、耐照射特性
および耐ナトリウム腐食特性に優れたFe−Ni基合金が開
発でき、研究開発投資を軽減できる耐照射特性および耐
ナトリウム腐食特性に優れたFe−Ni基合金の合金成分設
定方法及びこの方法によって得られた高性能材料を提供
することを目的としている。
性子照射特性および耐ナトリウム腐食特性に対して優れ
た成分の合金の開発には多大の費用と時間を要し極めて
非能率であり、特に使用実績のない新しい多元系の合金
について従来の手法で開発を実施するのは極めて困難で
ある。さらにこの試行錯誤的手法による場合は、その評
価も不正確であるため、開発の効率や材料の信頼性の向
上を図る点で大きな問題となっている。 本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされ
たもので、予め相安定性指標図を求め、これに基づいて
中性子照射下での相安定性を予測し、限定された範囲内
での合金についてのみ実験することにより、耐照射特性
および耐ナトリウム腐食特性に優れたFe−Ni基合金が開
発でき、研究開発投資を軽減できる耐照射特性および耐
ナトリウム腐食特性に優れたFe−Ni基合金の合金成分設
定方法及びこの方法によって得られた高性能材料を提供
することを目的としている。
本発明者等は上記問題点を解決すべく種々の研究を行
い、母金属と合金元素との間の結合力の大きさを表す結
合次数(以下Boと表す)と合金元素のd軌道電子準位
(以下Mdと表す)を用いることにより、Fe−Ni基合金の
耐照射特性および耐ナトリウム腐食特性を評価し得ると
の知見を得た。 本発明による耐照射特性に優れたFe−Ni基オーステナ
イト合金の合金成分設定方法は上記知見に基づいてなさ
れたものであって、Ni母金属と合金元素iとの間の結合
次数(Bo)i、合金元素iのd軌道電子準位(Md)i及
び当i元素の原子分率xより次式 ▲▼=Σxi(Bo)i ▲▼=Σxi(Md)i を定義し、これに従って合金の平均結合次数Boおよび平
均d軌道電子準位Mdを求める。そしてこの平均結合次数
Bo及び該平均d軌道電子準位Mdが各合金元素を含むFe−
Ni基オーステナイト合金について ▲▼−▲▼≧0.038 0.845≦▲▼≦0.892 となるように各合金元素の種類及び添加量を定めること
を特徴とするものである。 ここで上記平均パラメータの差即ち(▲▼−▲
▼)が0.038未満の場合は、上述の耐スエリング性が
得られない。また▲▼が0.892より大きい場合は、
使用中に延性および靭性の面で有害となる金属間化合物
が析出し、合金の脆化を引き起こす。一方、▲▼が
0.845より小さい場合はナトリウム腐食量が増大し、し
かも照射後の材料の残留放射能が高くなるといった問題
が生ずる。 なお、上記合金元素iの結合次数(Bo)iとd軌道電
子準位(Md)iは分子軌道法(Discrete−Variational
(DV)−Xαクラスター法)によって求めることができ
る。このDV−Xαクラスター法は、数個〜数十個からな
る原子の集合体(クラスター)模型を用いて行う分子軌
道計算法である。 第1図は、本発明者が上記計算に用いた面心立方格
子、MNi18クラスター模型を示す。但し、図中●は合金
元素M、○はNiである。 第1図において、格子定数から原子間距離を設定し、
クラスター(分子)の電子構造をSlaterの提案したXα
ポテンシャルを用いて、セルフコンシステントに解く。
但し、通常の方法とは異なり永年方程式を解くとき、空
間にランダムに選んだサンプル点でハミルトニアンと重
なり積分の行列要素を計算し、電子のエネルギー個有値
と固有関数を求める。このクラスター法は、バンド計算
法とは異なり、局所電子状態を調べるのに適している。
第1図のクラスター模型を用いて合金元素のまわりの電
子状態を調べることにより、合金効果を表すパラメー
タ、即ち純Niの母金属と合金元素Mとの間の結合次数Bo
を求めることができる。この結合次数BoはNi母金属と合
金元素Mのそれぞれの原子軌道の重なり積分を、第1図
のクラスター内の合金元素Mのまわりのすべての母金属
Ni原子に対して計算して求める。ここで多元系の場合
は、上述の式から合金元素Mのうちそれぞれの合金元素
iの結合次数(Bo)iに対して、その元素iの原子分率
xiを掛けたものを全元素について足し合わせることによ
って、平均結合次数▲▼を求める。なお、母金属の
中の合金元素Mのd軌道電子準位についても同様の方法
で求めることができる。 上記のようにして求めた状態パラメータを用いて限定
した範囲内で検討した結果、耐照射特性および耐ナトリ
ウム腐食特性に優れた本発明のFe−Ni基オーステナイト
合金を開発するに至った。即ち、本発明によるFe−Ni基
合金の第1の実施態様は、重量%でC:0.2%以下、Si:0.
5%以下、Mn:1.0%以下、Cr:13〜18%、Ni:30〜50%、M
o+W=2.0〜6.0%、Mo/(Mo+W)=0.4〜0.6、残部が
Fe及び不可避不純物からなるものである。さらに第2の
実施態様は、前記第1の実施態様のFe−Ni基オーステナ
イト合金において、重量%でNb:0.10〜0.30%、N:0.20
%以下を必要に応じて加えたものである。さらに第3の
実施態様は、前記第1の実施態様のFe−Ni基オーステナ
イト合金において、Crの一部を、重量%で1.0〜7.0%の
Reで置換したものである。 以下、本発明のFe−Ni基オーステナイト合金の成分お
よびその限定理由について述べる。 Cは、オーステナイト安定化元素であり、Crと結合
し、炭化物を形成してクリープ破断強度を改善する。し
かし0.2%を超えると炭化物が粗大化しやすくなって、
かえって強度低下をもたらす。また、加工性、溶接性を
損なう。従って、C量は0.2%以下とする。 Siは、脱酸剤として添加されるが、0.5%を超えると
照射中に有害な金属間化合物が析出しやすくなり、脆化
をもたらす。従って、Siは0.5%以下とする。 Mnは、熱間加工性を改善し、組織の安定化に有効であ
るが、1.0%を超えると硬化相を形成し、靭性、加工性
を損なうので、1.0%以下とする。 Crは、耐ナトリウム腐食性、脱炭抵抗性を向上させる
ために不可欠な成分であり、そのためには13%以上が必
要である。しかし、18%を超えると、組織を不安定に
し、有害な金属間化合物が、析出しやすくなる。従っ
て、Cr量は13%〜18%の範囲とする。 Niは、オーステナイト安定化元素であるとともに、耐
スエリング性を向上させる上で重要な元素であり、その
ためには最低30%必要である。しかし50%を超えると、
照射による残留放射能が著しく高くなり、廃棄物の保管
及び再処理上問題となる。また、耐ナトリウム腐食特性
も低下するので、上限を50%とする。従って、Ni量は30
%〜50%とする。 MoとWは、合金中に固溶し高温強度を向上させる重要
な元素であり、総量で2.0%以上添加する必要がある。M
oとW量を多くすれば、固溶強化作用によりクリープ破
断強度が向上するが、(Mo+W)量が6.0%を超えると
合金の中性子吸収断面積が大きくなり、増殖性の障害と
なるので、(Mo+W)量は2.0〜6.0%とする。特に高い
強度を得るには、Mo/(Mo+W)が0.4〜0.6の比率にな
る組合せが良い。 Nbは、Nと窒化物を形成し、母合金中に微細に析出す
ることによって、クリープ破断強度を向上させる働きが
あり、そのためには最低0.10%必要である。また、合金
に冷間加工を施した場合は、窒化物の存在により転位の
運動が抑制され、高い転位密度が長時間使用後も保たれ
る。中性子照射によって生じる原子空孔の消滅場所は転
位が主であり、窒化物の存在によって転位密度が高く保
たれていれば、原子空孔の消滅が効果的に行われること
になるので、原子空孔の集合によるボイド形成の確率が
小さくなり、スエリング量の低減にもつながる。但し、
過剰なNbは組織の不安定化を招くので、上限を0.30%と
する。従って、Nb量は0.10〜0.30%とする。 Nは、前述のようにNb窒化物を形成する元素である
が、過剰に添加すると未固溶窒化物量が多くなるので、
上限を0.20%とする。 Reは、Cr同様耐食性を向上させる作用を有しており、
しかもCrよりも少量の添加で効果を発揮し、そのために
は最低1.0%必要である。しかし、添加量が7.0%を超え
ると組織を不安定にするので、上限を7.0%とする。従
って、Reの添加量は1.0〜7.0%とする。
い、母金属と合金元素との間の結合力の大きさを表す結
合次数(以下Boと表す)と合金元素のd軌道電子準位
(以下Mdと表す)を用いることにより、Fe−Ni基合金の
耐照射特性および耐ナトリウム腐食特性を評価し得ると
の知見を得た。 本発明による耐照射特性に優れたFe−Ni基オーステナ
イト合金の合金成分設定方法は上記知見に基づいてなさ
れたものであって、Ni母金属と合金元素iとの間の結合
次数(Bo)i、合金元素iのd軌道電子準位(Md)i及
び当i元素の原子分率xより次式 ▲▼=Σxi(Bo)i ▲▼=Σxi(Md)i を定義し、これに従って合金の平均結合次数Boおよび平
均d軌道電子準位Mdを求める。そしてこの平均結合次数
Bo及び該平均d軌道電子準位Mdが各合金元素を含むFe−
Ni基オーステナイト合金について ▲▼−▲▼≧0.038 0.845≦▲▼≦0.892 となるように各合金元素の種類及び添加量を定めること
を特徴とするものである。 ここで上記平均パラメータの差即ち(▲▼−▲
▼)が0.038未満の場合は、上述の耐スエリング性が
得られない。また▲▼が0.892より大きい場合は、
使用中に延性および靭性の面で有害となる金属間化合物
が析出し、合金の脆化を引き起こす。一方、▲▼が
0.845より小さい場合はナトリウム腐食量が増大し、し
かも照射後の材料の残留放射能が高くなるといった問題
が生ずる。 なお、上記合金元素iの結合次数(Bo)iとd軌道電
子準位(Md)iは分子軌道法(Discrete−Variational
(DV)−Xαクラスター法)によって求めることができ
る。このDV−Xαクラスター法は、数個〜数十個からな
る原子の集合体(クラスター)模型を用いて行う分子軌
道計算法である。 第1図は、本発明者が上記計算に用いた面心立方格
子、MNi18クラスター模型を示す。但し、図中●は合金
元素M、○はNiである。 第1図において、格子定数から原子間距離を設定し、
クラスター(分子)の電子構造をSlaterの提案したXα
ポテンシャルを用いて、セルフコンシステントに解く。
但し、通常の方法とは異なり永年方程式を解くとき、空
間にランダムに選んだサンプル点でハミルトニアンと重
なり積分の行列要素を計算し、電子のエネルギー個有値
と固有関数を求める。このクラスター法は、バンド計算
法とは異なり、局所電子状態を調べるのに適している。
第1図のクラスター模型を用いて合金元素のまわりの電
子状態を調べることにより、合金効果を表すパラメー
タ、即ち純Niの母金属と合金元素Mとの間の結合次数Bo
を求めることができる。この結合次数BoはNi母金属と合
金元素Mのそれぞれの原子軌道の重なり積分を、第1図
のクラスター内の合金元素Mのまわりのすべての母金属
Ni原子に対して計算して求める。ここで多元系の場合
は、上述の式から合金元素Mのうちそれぞれの合金元素
iの結合次数(Bo)iに対して、その元素iの原子分率
xiを掛けたものを全元素について足し合わせることによ
って、平均結合次数▲▼を求める。なお、母金属の
中の合金元素Mのd軌道電子準位についても同様の方法
で求めることができる。 上記のようにして求めた状態パラメータを用いて限定
した範囲内で検討した結果、耐照射特性および耐ナトリ
ウム腐食特性に優れた本発明のFe−Ni基オーステナイト
合金を開発するに至った。即ち、本発明によるFe−Ni基
合金の第1の実施態様は、重量%でC:0.2%以下、Si:0.
5%以下、Mn:1.0%以下、Cr:13〜18%、Ni:30〜50%、M
o+W=2.0〜6.0%、Mo/(Mo+W)=0.4〜0.6、残部が
Fe及び不可避不純物からなるものである。さらに第2の
実施態様は、前記第1の実施態様のFe−Ni基オーステナ
イト合金において、重量%でNb:0.10〜0.30%、N:0.20
%以下を必要に応じて加えたものである。さらに第3の
実施態様は、前記第1の実施態様のFe−Ni基オーステナ
イト合金において、Crの一部を、重量%で1.0〜7.0%の
Reで置換したものである。 以下、本発明のFe−Ni基オーステナイト合金の成分お
よびその限定理由について述べる。 Cは、オーステナイト安定化元素であり、Crと結合
し、炭化物を形成してクリープ破断強度を改善する。し
かし0.2%を超えると炭化物が粗大化しやすくなって、
かえって強度低下をもたらす。また、加工性、溶接性を
損なう。従って、C量は0.2%以下とする。 Siは、脱酸剤として添加されるが、0.5%を超えると
照射中に有害な金属間化合物が析出しやすくなり、脆化
をもたらす。従って、Siは0.5%以下とする。 Mnは、熱間加工性を改善し、組織の安定化に有効であ
るが、1.0%を超えると硬化相を形成し、靭性、加工性
を損なうので、1.0%以下とする。 Crは、耐ナトリウム腐食性、脱炭抵抗性を向上させる
ために不可欠な成分であり、そのためには13%以上が必
要である。しかし、18%を超えると、組織を不安定に
し、有害な金属間化合物が、析出しやすくなる。従っ
て、Cr量は13%〜18%の範囲とする。 Niは、オーステナイト安定化元素であるとともに、耐
スエリング性を向上させる上で重要な元素であり、その
ためには最低30%必要である。しかし50%を超えると、
照射による残留放射能が著しく高くなり、廃棄物の保管
及び再処理上問題となる。また、耐ナトリウム腐食特性
も低下するので、上限を50%とする。従って、Ni量は30
%〜50%とする。 MoとWは、合金中に固溶し高温強度を向上させる重要
な元素であり、総量で2.0%以上添加する必要がある。M
oとW量を多くすれば、固溶強化作用によりクリープ破
断強度が向上するが、(Mo+W)量が6.0%を超えると
合金の中性子吸収断面積が大きくなり、増殖性の障害と
なるので、(Mo+W)量は2.0〜6.0%とする。特に高い
強度を得るには、Mo/(Mo+W)が0.4〜0.6の比率にな
る組合せが良い。 Nbは、Nと窒化物を形成し、母合金中に微細に析出す
ることによって、クリープ破断強度を向上させる働きが
あり、そのためには最低0.10%必要である。また、合金
に冷間加工を施した場合は、窒化物の存在により転位の
運動が抑制され、高い転位密度が長時間使用後も保たれ
る。中性子照射によって生じる原子空孔の消滅場所は転
位が主であり、窒化物の存在によって転位密度が高く保
たれていれば、原子空孔の消滅が効果的に行われること
になるので、原子空孔の集合によるボイド形成の確率が
小さくなり、スエリング量の低減にもつながる。但し、
過剰なNbは組織の不安定化を招くので、上限を0.30%と
する。従って、Nb量は0.10〜0.30%とする。 Nは、前述のようにNb窒化物を形成する元素である
が、過剰に添加すると未固溶窒化物量が多くなるので、
上限を0.20%とする。 Reは、Cr同様耐食性を向上させる作用を有しており、
しかもCrよりも少量の添加で効果を発揮し、そのために
は最低1.0%必要である。しかし、添加量が7.0%を超え
ると組織を不安定にするので、上限を7.0%とする。従
って、Reの添加量は1.0〜7.0%とする。
以下に本発明について実施例を挙げて説明する。 実施例1 本実施例は、オーステナイト合金における平均結合次
数▲▼および平均d電子軌道準位▲▼の最適範
囲を見出すために行った。 まず第1図のクラスター模型を用い、(Fe−15Cr−30
Ni)を母合金とし、各種の合金元素を加えたとき、合金
の▲▼,▲▼が指標図のどの位置に変化するか
を第2図に示す。例えば、(Fe−15Cr−30Ni)ベース合
金にMoを加えると、▲▼,▲▼は、図示のベー
ス合金の位置から添加量が増すほど右上方に変化し、一
方Cuを加えると左下方に変化する。このように各合金元
素がもつ固有の合金ベクトルを組合せることによって目
標とする成分範囲を見出すことができる。 従来材の照射データを基にNiイオン照射による体積増
加量を相安定性指標図上に表すと、照射量160dpa,650℃
では第2図に示すように▲▼−▲▼=0.038で
示される線を境に、この線より左上ではスエリング量が
5%以上となり、右下では5%未満となる。また照射下
での組織安定性の面では、機械的特性上有害となるσ相
の析出は、650℃では▲▼=0.892を境にこれより左
で析出が起こる。このようにして、相安定性指標図を利
用することによって優れた特性の合金を合理的に求める
ことができる。 実施例2 第1表に供試材の化学成分を示す。 第1表で、合金No.1〜4は本発明合金I(本発明合金
の第1の実施態様に該当)、合金No.5,6は本発明合金II
(本発明合金の第2の実施態様に該当)、合金No.7,8は
本発明合金III(本発明合金の第3の実施態様に該
当)、合金No.9〜12は比較合金(従来合金)に相当す
る。No.9は、SUS316ステンレス鋼、No.10はNimonic PE1
6合金、No.11はInconel 706合金、No.12はHastelloy X
合金である。それぞれ真空溶解により20kg鋳塊を溶製
し、圧延により2mm厚の板材を製造した。その後1040〜1
050℃,1時間の溶体化処理を施し、No.10及びNo.11合金
については更に650℃、24時間の時効処理を施して供試
材とした。 第2表にNiイオン照射試験後の体積増加量を比較して
示す。照射温度650℃、照射量160dpaまで照射した時
の、体積増加率は本発明鋼では0.4%以下であるのに対
して、鋼種No.9〜12の比較鋼では、体積増加率が1%を
超えており耐スエリング性が劣っている。 第3表に、高速増殖炉の使用条件における流動ナトリ
ウム環境下で実施した中性子照射前後での650℃引張特
性の変化を比較して示す。鋼種No.9,10,11,12で伸びの
低下が見られており、燃料被覆管には適さない。一方、
本発明鋼では照射前後で引張特性に大きな劣化は見られ
ず、照射による材料の性能低下は起こっていないと判断
される。
数▲▼および平均d電子軌道準位▲▼の最適範
囲を見出すために行った。 まず第1図のクラスター模型を用い、(Fe−15Cr−30
Ni)を母合金とし、各種の合金元素を加えたとき、合金
の▲▼,▲▼が指標図のどの位置に変化するか
を第2図に示す。例えば、(Fe−15Cr−30Ni)ベース合
金にMoを加えると、▲▼,▲▼は、図示のベー
ス合金の位置から添加量が増すほど右上方に変化し、一
方Cuを加えると左下方に変化する。このように各合金元
素がもつ固有の合金ベクトルを組合せることによって目
標とする成分範囲を見出すことができる。 従来材の照射データを基にNiイオン照射による体積増
加量を相安定性指標図上に表すと、照射量160dpa,650℃
では第2図に示すように▲▼−▲▼=0.038で
示される線を境に、この線より左上ではスエリング量が
5%以上となり、右下では5%未満となる。また照射下
での組織安定性の面では、機械的特性上有害となるσ相
の析出は、650℃では▲▼=0.892を境にこれより左
で析出が起こる。このようにして、相安定性指標図を利
用することによって優れた特性の合金を合理的に求める
ことができる。 実施例2 第1表に供試材の化学成分を示す。 第1表で、合金No.1〜4は本発明合金I(本発明合金
の第1の実施態様に該当)、合金No.5,6は本発明合金II
(本発明合金の第2の実施態様に該当)、合金No.7,8は
本発明合金III(本発明合金の第3の実施態様に該
当)、合金No.9〜12は比較合金(従来合金)に相当す
る。No.9は、SUS316ステンレス鋼、No.10はNimonic PE1
6合金、No.11はInconel 706合金、No.12はHastelloy X
合金である。それぞれ真空溶解により20kg鋳塊を溶製
し、圧延により2mm厚の板材を製造した。その後1040〜1
050℃,1時間の溶体化処理を施し、No.10及びNo.11合金
については更に650℃、24時間の時効処理を施して供試
材とした。 第2表にNiイオン照射試験後の体積増加量を比較して
示す。照射温度650℃、照射量160dpaまで照射した時
の、体積増加率は本発明鋼では0.4%以下であるのに対
して、鋼種No.9〜12の比較鋼では、体積増加率が1%を
超えており耐スエリング性が劣っている。 第3表に、高速増殖炉の使用条件における流動ナトリ
ウム環境下で実施した中性子照射前後での650℃引張特
性の変化を比較して示す。鋼種No.9,10,11,12で伸びの
低下が見られており、燃料被覆管には適さない。一方、
本発明鋼では照射前後で引張特性に大きな劣化は見られ
ず、照射による材料の性能低下は起こっていないと判断
される。
以上に説明したように、本発明によれば耐中性子照射
特性および耐ナトリウム腐食特性に優れたFe−Ni基オー
ステナイト合金が得られることから、高速増殖炉炉心部
材、特に燃料被覆管のような650℃程度の高温で、しか
も高い圧力下で使用される構造部材の長寿命化が達成で
きる。 また、本発明の合金成分設定方法によれば、合理的に
性能の優れたFe−Ni基オーステナイト合金の合金設計が
可能となる。
特性および耐ナトリウム腐食特性に優れたFe−Ni基オー
ステナイト合金が得られることから、高速増殖炉炉心部
材、特に燃料被覆管のような650℃程度の高温で、しか
も高い圧力下で使用される構造部材の長寿命化が達成で
きる。 また、本発明の合金成分設定方法によれば、合理的に
性能の優れたFe−Ni基オーステナイト合金の合金設計が
可能となる。
第1図はfcc構造のMNi18クラスター模型の斜視図、第2
図はオーステナイト合金のスエリング特性に関する相安
定指標図である。
図はオーステナイト合金のスエリング特性に関する相安
定指標図である。
フロントページの続き (72)発明者 野村 茂雄 茨城県東茨城郡大洗町成田町4002番地 動力炉・核燃料開発事業団大洗工学セン ター内 (72)発明者 奥田 隆成 茨城県東茨城郡大洗町成田町4002番地 動力炉・核燃料開発事業団大洗工学セン ター内 (56)参考文献 日本金属学会会報27[3](1988)森 永正彦、湯川夏生、足立裕彦P.165− 172
Claims (4)
- 【請求項1】重量%でC:0.2%以下、Si:0.5%以下、Mn:
1.0%以下、Cr:13〜18%、Ni:30〜50%、Mo+W=2.0〜
6.0%、Mo/(Mo+W)=0.4〜0.6、残部がFe及び不可避
不純物からなることを特徴とする耐照射特性および耐ナ
トリウム腐食特性に優れたFe−Ni基オーステナイト合
金。 - 【請求項2】重量%でNb:0.10〜0.30%、N:0.20%以下
を必要に応じてさらに加えたことを特徴とする請求項1
記載のFe−Ni基オーステナイト合金。 - 【請求項3】Crの一部を、重量%で1.0〜7.0%のReで置
換したことを特徴とする請求項1記載のFe−Ni基オース
テナイト合金。 - 【請求項4】Ni母金属と合金元素iとの間の結合次数
(Bo)i、合金元素iのd軌道電子準位(Md)i及び当
i元素の原子分率xiより次式 ▲▼=Σxi(Bo)i ▲▼=Σxi(Md)i を定義し、これに従って合金の平均結合次数▲▼及
び平均d軌道電子準位▲▼を求めるとともに、該平
均結合次数▲▼及び該平均d軌道電子準位▲▼
が各合金元素を含むFe−Ni基オーステナイト合金につい
て ▲▼−▲▼≧0.038 0.845≦▲▼≦0.892 となるように各合金元素の種類及び添加量を定めること
を特徴とする耐照射特性および耐ナトリウム腐食特性に
優れたFe−Ni基オーステナイト合金の合金成分設定方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2025622A JP2574497B2 (ja) | 1990-02-05 | 1990-02-05 | 耐照射特性および耐ナトリウム腐食特性に優れたFe―Ni基オーステナイト合金および合金成分設定方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2025622A JP2574497B2 (ja) | 1990-02-05 | 1990-02-05 | 耐照射特性および耐ナトリウム腐食特性に優れたFe―Ni基オーステナイト合金および合金成分設定方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH03229840A JPH03229840A (ja) | 1991-10-11 |
JP2574497B2 true JP2574497B2 (ja) | 1997-01-22 |
Family
ID=12170977
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2025622A Expired - Fee Related JP2574497B2 (ja) | 1990-02-05 | 1990-02-05 | 耐照射特性および耐ナトリウム腐食特性に優れたFe―Ni基オーステナイト合金および合金成分設定方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2574497B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2012074026A1 (ja) | 2010-11-30 | 2012-06-07 | 株式会社神戸製鋼所 | 析出強化型Ni基耐熱合金およびその製造方法 |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US5753177A (en) * | 1994-03-10 | 1998-05-19 | Doryokuro Kakunenryo Kaihatsu Jigyodan | High-Ni austenitic stainless steel having excellent high-temperature strength |
Family Cites Families (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS5540105A (en) * | 1978-09-08 | 1980-03-21 | Toyota Motor Corp | Roller conveyor |
-
1990
- 1990-02-05 JP JP2025622A patent/JP2574497B2/ja not_active Expired - Fee Related
Non-Patent Citations (1)
Title |
---|
日本金属学会会報27[3](1988)森永正彦、湯川夏生、足立裕彦P.165−172 |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2012074026A1 (ja) | 2010-11-30 | 2012-06-07 | 株式会社神戸製鋼所 | 析出強化型Ni基耐熱合金およびその製造方法 |
US9238857B2 (en) | 2010-11-30 | 2016-01-19 | Kobe Steel, Ltd. | Precipitation-strengthened Ni-based heat-resistant alloy and method for producing the same |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH03229840A (ja) | 1991-10-11 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3518515B2 (ja) | 低・中Cr系耐熱鋼 | |
EP0545753B1 (en) | Duplex stainless steel having improved strength and corrosion resistance | |
US9238857B2 (en) | Precipitation-strengthened Ni-based heat-resistant alloy and method for producing the same | |
US20090321405A1 (en) | Ni-Co-Cr High Strength and Corrosion Resistant Welding Product and Method of Preparation | |
JP3905034B2 (ja) | ディーゼルエンジンバルブ用の低コスト、耐蝕および耐熱合金 | |
JPS6013061B2 (ja) | 高強度フエライト合金 | |
JPH01275740A (ja) | オーステナイト系ステンレス鋼合金 | |
US4572738A (en) | Maraging superalloys and heat treatment processes | |
JP2574497B2 (ja) | 耐照射特性および耐ナトリウム腐食特性に優れたFe―Ni基オーステナイト合金および合金成分設定方法 | |
JPS619560A (ja) | マンガン−鉄系及びマンガン−クロム−鉄系のオ−ステナイト構造の合金 | |
EP0121630A2 (en) | Improved austenitic stainless steel alloys for high temperature applications | |
JP3166586B2 (ja) | 超耐熱Mo基合金およびその製造方法 | |
US3576622A (en) | Nickel-base alloy | |
Ray et al. | Microcrystalline iron-base alloys made using a rapid solidification technology | |
US20230002861A1 (en) | Nickel-chromium-iron-aluminum alloy having good processability, creep resistance and corrosion resistance, and use thereof | |
JP3127759B2 (ja) | 再結晶組織を有する酸化物分散強化型フェライト鋼とその製造方法 | |
JPH09111413A (ja) | 靭性に優れた核融合炉用耐熱鋼及びその製造方法 | |
JPS59211553A (ja) | 靭性及び高温強度の優れた高Cr鋼 | |
Iwao et al. | Mechanical properties of vanadium-base binary alloys | |
US4530727A (en) | Method for fabricating wrought components for high-temperature gas-cooled reactors and product | |
RU2803159C1 (ru) | НЕЙТРОННО-ПОГЛОЩАЮЩИЙ СПЛАВ НА ОСНОВЕ Ni | |
JPH0892700A (ja) | γ’,γ”相析出強化型高Ni鋼 | |
JPH0425342B2 (ja) | ||
Grobner et al. | Delta ferritic heat-resistant chromium-molybdenum steels with improved rupture strength | |
JPH07100842B2 (ja) | 耐応力腐食割れ性に優れた原子炉炉心部材 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313115 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20071024 Year of fee payment: 11 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081024 Year of fee payment: 12 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |