JP2558300B2 - 離型材 - Google Patents

離型材

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、石膏模型上に塗布することにより、石膏模
型よりレジン硬化物の離型を容易にすることを目的とす
る離型材に関する。
歯科治療において、治療を要する患部の印象を採り、
その印象より石膏を用いて患部の形状を再現した模型を
作成したのち、模型上にて重合可能な歯科用レジンに患
者が正常な機能を回復するために必要な形態を付与した
のち、その歯科用レジンを重合せしめて得られる硬化物
を患部に歯科用接着剤を用いて接着することにより治療
を行なうことがある。本発明はかかる治療法において用
いられる離型材に関する。
[従来の技術] 従来、石膏模型とレジンとの離型のための離型材とし
ては、パラフインやステアリン酸誘導体等のワツクス状
の物、あるいは、アルギン酸ナトリウム塩水溶液などが
使用されていたが、その他にもポリ(メタ)アクリル酸
およびその塩の水溶液(特開昭49−94587)、シリコン
ゴムを用いるもの(特開昭61−134305)などが提案され
ていた。
しかしながら、従来用いられてきたワツクス状の離型
材は、その粘稠度が高すぎて石膏模型上の離型材層が厚
くなりすぎたり、塗り過ぎても修正が困難であるため塗
りむらが生じ易いなどという問題点があり、この離型材
を塗布した石膏型を用いて成形したレジン硬化物の形状
再現性に問題があつた。また、このような離型材を塗布
した型の上で硬化させたレジン表面には必ず離型材が付
着しているが、このレジンを歯科用接着剤で患部に接着
する場合にはこの離型材は「汚れ」として作用するもの
である。こういう点からはレジン表面にワツクスが付着
してくるということは、次の接着という工程に致命的な
障害を及ぼすために好ましくない。
また、アルギン酸塩系の離型材に関しては、分離性能
が不充分である点と、離型材の粘度が高すぎて塗りむら
を発性し易い点、さらに、離型材の保存条件が悪いと変
質するという問題点があつた。また、ポリ(メタ)アク
リル酸系の離型材は、歯科用レジンとのなじみが良すぎ
て、分離性能が悪く、シリコン系の離型材には、レジン
硬化物表面に付着した微量のシリコーンが次の工程であ
る接着の阻害をするという致命的な問題点があつた。
[発明が解決しようとする問題点] 本発明の目的は、前記の問題点を解決することにあ
る。すなわち、本発明の目的は、石膏模型より歯科用レ
ジン硬化物を分離する時に、分離を容易にし、かつ、離
型材の粘稠度を使用し適した性状に設定することによ
り、塗りむら等のトラブルが少なくなり、塗り過ぎても
修正が容易で、さらに、レジン表面に付着した離型材を
水洗により容易に洗浄除去することの可能な離型材を提
供することにある。
[問題点を解決するための手段] 上記の本発明の目的は、歯科用レジンとのなじみが悪
く、水とのなじみの良い離型材であつて、これを石膏模
型上に塗布すると、そこに湿つた無機物粉末を主成分と
する弱い薄膜の形成が可能な離型材により達成される。
石膏とは数十ミクロン程度の長さの硫酸カルシウム水
和塩の針状結晶がランダムに積み重なつたような構造を
しており、本質的に粗い表面をもつ多孔質の材料であ
る。このような材料で作成した模型の上に重合性レジン
の流動性のあるペーストを盛りつけて重合させると、石
膏表面の微細な隙間にペーストが侵入した後重合するこ
とによるインターロツキング作用が生じ、石膏型よりレ
ジンをとり出す妨げとなる。従つて、この石膏表面上の
細孔を離型材を用いて埋めてしまえば石膏型とレジンと
の離型が良好になるものと考えられるが、ただ単に細孔
のみを埋めるだけでは不充分であり、離型材の効果を充
分に発揮せしめるためには、石膏表面に薄い膜を生じる
程度に離型材を用いる必要がある。さらに、離型材によ
る薄い膜に関して言及すれば、膜の強度が弱い方が好ま
しい。何故ならば、薄膜とレジンとは密着しているた
め、薄膜とレジンの間に若干の接着力が発生し、このこ
とが問題となつて離型しにくくなるケースがあるからで
ある。従つて、この離型材による薄膜の強度が弱けれ
ば、接着力による離型のしにくさが薄膜の破壊によつて
緩和されることとなり、離型が容易となる。また、離型
材の薄膜は、例えば水で湿つた状態にあるような状態で
使用することにより、レジンと離型材の薄膜とのなじみ
が悪い方が、薄膜とレジンとの間の接着力が発揮されに
くくなり好都合である。このように、離型材は、レジン
とのなじみを悪くするために水を主成分とする物が好適
であるが、臨床上は、石膏模型に石膏硬化剤と称する有
機化合物を含浸させることにより、石膏の強度の増強を
図ることが広く行なわれており、この石膏硬化剤を含浸
させた石膏模型上に塗布しても、離型材がハジかれず、
均一に塗布することができるような工夫が必要である。
このような離型材は、水に対して離溶性または不溶性
の微細な無機物粉末を水に分散させ、さらに水溶性のア
ルコール化合物を配合することによって得られる。すな
わち、石膏は多孔性の材料であるため、スラリーを石膏
に塗布すると、毛管現象により水が石膏内部に吸収さ
れ、石膏表面に無機物粉末等が濾過されてケーキとして
残り、これが薄い膜を形成するのである。また、このス
ラリーが水を必須成分とするものであることは、レジン
とのなじみを悪くするために必要であり、水溶性アルコ
ール化合物には、離型材の粘度を使用に適した粘度に調
節する目的と、石膏硬化剤を塗布した石膏面に対する濡
れを良くする目的とがある。
本発明において必須成分として使用される無機物粉末
としては、二酸化ケイ素、アルミナ、酸化チタン、酸化
ジルコニウム、酸化鉄等のような金属化物や、水酸化ア
ルミニウム、水酸化鉄等の金属水酸化物、炭酸カルシウ
ム、炭酸マグネシウム等の金属の炭酸塩、ケイ酸アルミ
ニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、モン
モリロナイト、ベントナイト等の粘土鉱物等多くのもの
が使用可能ではあるが、水に対する安定性、使用性の良
さ、価格、色調の良さ等の点から、二酸化ケイ素、ケイ
酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム
等が好適である。また、これら粉末の粒子径に関して、
離型剤の性能という面から見れば10ミクロン以下の粒度
の粒子ならば離型材の薄膜を大きくし過ぎない。それ以
上に粒径の大きな粒子は分散媒体中に於ける沈降速度が
速く、スラリーの安定性が悪いという欠点を有する。従
つて本発明で使用する無機物粉末は、その平均粒径が5
μm以下であり、最大粒子径も10μmを越えないものが
好ましい。特に、いわゆるチクソトロパントと呼ばれる
微粒子を配合することにより、該無機物粉末の沈降を防
いだ状態で保存し、離型材を使用する前に離型材の容器
を振ることによりチクソトロピー性を解除して用いるこ
とが好ましい。また、離型材の膜厚を厚くし過ぎないた
めに、スラリー濃度は離型材に対し10重量%以下に設定
することが好ましい。
また、本発明に於いては、水溶性のアルコール化合物
を用いる必要がある。このような化合物としてはメタノ
ール、エタノール、プロパノール、ブタノールのような
1価のアルコール化合物、(ポリ)エチレングレコー
ル、(ポリ)プロピレングリコール、1,4−ブタンジオ
ール等のような2価のアルコール化合物、グリセリンの
ような3価のアルコール化合物等が使用できるが、なか
でもメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノー
ル等の炭素数1〜4のアルキル基に水酸基が結合したア
ルコール、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロ
ピレングリコール、グリセリン等が好ましい。これらの
アルコール化合物は単独でまたは2種以上混合されて離
型材重量に対し10〜80%の範囲で用いられる。また本発
明の組成物には所望により着色剤、香料等を添加するこ
とができる。
以上のようにして、硬化レジン−石膏間の離型材を調
整することができるが、このものの使用法は筆を用いて
石膏模型上に塗布して用いることもできるし、あるい
は、ノズルのついた容器より離型材を目的とする個所に
適量滴下してからエアーブローを行うことにより薄く広
げることもできる。また、離型材を過剰に塗り過ぎて、
離型材の膜厚が大きくなり過ぎたと判断された時には、
水で湿した筆で離型材層を軽くこすることにより過剰分
を容易に除去することができる。さらに、この離型材を
用いた場合には、この離型材と接して重合したレジン表
面に付着した離型材は、流水により水洗することにより
除去可能であり、レジンの清掃が非常に容易である。
[発明の効果] 前述のように、本発明にかかる離型材は、塗布むらの
修正が容易であり、石膏型とレジンとの離型も非常に容
易であるのみならず、レジン表面に付着する離型材の除
去も容易であるという特徴を有している。そのため、離
型作業の能率向上とレジン硬化物の形状再現性に優れる
という効果を有するのみならず、硬化物表面の清掃が容
易であるので、硬化物を接着剤で患部に接着する作業の
確実性が増すという効果を有する。
[実施例] 実施例1〜11および比較例1〜5 表1に記載の組成の離型材を調製した。また、これら
の離型材の評価方法には以下の方法を採用した。まず
(株)ニツシン製教育用インレー窩洞模型T1−oc,1
(A)(2級窩洞)をオリジナル型とし、このオリジナ
ルよりシリコン印象剤を用いて印象を採得した。さら
に、この印象型に超硬石膏を流し込み、硬化させること
によつて得られた石膏製のインレー窩洞模型を作製し、
これを1日以上風乾したもの(以下これを石膏模型と称
する)を作製した。次に、石膏模型の窩洞及びその周辺
に筆を用いて離型材を塗布し、さらにエアーブローを行
なうことにより、過剰の離型材を吹き飛ばした。次に、
この窩洞に光重合型のコンポジツトレジン(クラレ社製
クリアフイルフオトポステリア)を充填し、充填され
たペーストの中央部に直径1mmの針金を植立した後に光
を照射してい(40秒)、レジンを硬化させた。離型材の
性能の比較は、この針金を引っ張ることにより、硬化し
たレジンを石膏模型により離型するために要する力をイ
ンストロン万能試験機を用い、クロスヘツドスピード2m
m/minの条件にて測定することにより行なつた。
比較例7〜11 比較例のため、現在市販されている離型材について実
施例1の方法を用いて評価を行なつた。結果を表2に示
した。
各社製品の性能を比較した結果、この方法に於ては離
型に要する力が2.5kg以下であれば「効果有り」,1kg以
下であれば「良好」と判断できる。
実施例12〜13および比較例12 石膏硬化剤を塗布した石膏面に対する離型材の塗り易
さを評価するため、井上アタツチメント社製石膏硬化剤
「モデラツク」を塗布した石膏面に表3に記載の離型材
を塗布し、塗布し易さ(はじかれるか否か)を評価し
た。結果を表3に示した。
このように石膏硬化剤を石膏模型を強化した場合に
は、離型材にアルコール化合物を配合することは必要で
ある。
実施例14および比較例13 本発明の離型材が、それに接触して重合したレジンに
対する接着剤の効果を阻害しないことを確認するため以
下の試験を行つた。新しく作製した石膏製の平板に実施
例2で作製した離型材を塗布し、その上に内径10mm、深
さ6mmの円筒型金型を置いて、その中に光重合歯科用コ
ンポジツトレジン「クリアフイルフオトポステリア」を
充填し、光を照射することにより重合させ、直径10mm、
厚み6mmの円板を作成した。この円板の離型材に接した
側の面を流水下に洗浄し、エアーブローすることにより
乾燥させた後、直径5mmの穴をあけたサージカルテープ
を貼ることにより接着面積を規定したサンプルを10個作
製した。歯科用接着剤「パナビアEX」を使用説明書に従
つて練和したペーストを上記サンプルの接着面に塗布
し、その上にSUS−304製の直径7mmの丸棒を垂直に立て
て接着した。接着強度をインストロン万能試験機を用い
て2mm/minのクロスヘツドスピードにて引っ張ることに
より測定したところ、10の測定値の平均値として164.7k
g/cm2という値を得た。比較のためガラスに圧接して重
合させたフオトポステリアの円板に対するパナビアEXの
接着力を測定したところ、10サンプルの測定を平均値と
して162.8kg/cm2であつた。このように、この離型材を
使用しても、重合性レジンを硬化させた後水洗すれば次
工程である歯科用接着剤による接着を阻害することはな
い。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】水に対して難溶性又は不溶性である無機物
    粉末、水溶性アルコール化合物および水からなる離型
    材。
  2. 【請求項2】該無機物粉末が二酸化ケイ素、ケイ酸アル
    ミニウム、ケイ酸マグネシウムまたは炭酸カルシウムで
    ある特許請求の範囲第1項記載の離型材。
  3. 【請求項3】該水溶性アルコール化合物が、炭素数1〜
    4のアルキル基に水酸基が結合した1価のアルコールで
    ある特許請求の範囲第1項記載の離型材。
  4. 【請求項4】該水溶性アルコール化合物が(ポリ)エチ
    レングリコール、(ポリ)プロピレングリコールまたは
    グリセリンである特許請求の範囲第1項の離型材。
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JP5559904B1 (ja) * 2013-04-16 2014-07-23 株式会社デントロケミカル 歯科用アルジネート印象材用硬化剤ペースト

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