JP2557841B2 - 磁心体 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、磁心をケースに収納した磁心体に関する。

（従来の技術） 従来、磁性合金薄体を巻回または打抜き後積層してな
る磁心は、場合により熱処理し、その後、絶縁および外
部からの衝撃に対する保護のためにケースに収納した磁
心体としている。

この場合、従来は、磁心とケースとの間には磁心の防
錆および固定のためにシリコンコンパウンドなどの緩衝
材を充電していた。

磁性合金薄体をチョークコイル用コアとして用いる場
合においても、同様に磁性合金薄体を巻回または打抜き
後積層してなる磁心は、場合により熱処理し、その後、
樹脂の含浸硬化処理により薄体を固着してギャップ形成
切断を行い、このギャップ部に絶縁紙を挿入した後、前
記と同様に得られた磁心とケースとの間にシリコンコン
パウンドなどの緩衝材を充填してケースに収納した磁心
体としている。

しかし、このようにして得られたチョークコイル用コ
アをスイッチング電源用部品として用いた場合、実動時
のスイッチング周波数、または負荷の変動周波数が可聴
周波数の領域、例えば100Hz〜20kHzにおいて耳障りな騒
音を発生するという現象が生じることがあった。特に、
磁心材料として10kG以上の飽和磁束密度を有する非晶質
磁性合金を用いた場合は、他の材料、例えばケイ素鋼板
あるいはフェライトを用いた場合に比べて音の発生が大
きかった。この騒音は、使用時に不快な音源となると共
に、隣接する部品に振動などの悪影響を及ぼす恐れがあ
った。

（発明が解決しようとする課題） 従来の磁心をケースに収納した磁心体は、実働時に耳
障りな騒音を発生し、使用時に不快な音源となると共
に、隣接する部品に振動などの悪影響を及ばす恐れがあ
った。

本発明は、実働時に音の発生が少ない磁心体を提供す
ることを目的とする。

（課題を解決するための手段と作用） 本発明者らは、上記目的を達成するために磁心とケー
スとの間の関係に着目し研究を重ねた結果、磁心は印加
磁場の変化に対して敏感に反応する磁歪により振動し、
この磁歪による振動が充填物を介してケースに伝わり音
が発生することを見出した。本発明者らは、この知見に
基づき磁心とケースとの間に空間部を設け、空間部に充
填物が無い場合に音を発生しにくくなるという現象を新
たに見出し、本発明に至った。また、本発明は、高飽和
磁束密度を有する磁性合金薄体よりなる磁心をケースに
収納した磁心体に対して特に有効であることを見出し
た。

すなわち、本発明の磁心体は、磁性合金薄体を巻回ま
たは積層してなる磁心をケースに収納した磁心体におい
て、前記磁心と前記ケースは、前記磁心の底面で前記ケ
ースと１箇所以上接着固定されかつ前記接着部以外の前
記磁心の底面と前記ケースの間には空間部を有すると共
に、前記磁心の底面以外の全面と前記ケースとの間には
接着固定されていない空間部を有することを特徴とす
る。

磁心とケースとの間に空間部を有することにより実動
中のケース中の磁心の振動、およびそれに伴なう音は空
間部を介して減衰され、かつケースに直接伝わりにくく
なる。したがって、ケースは振動を起こさず音も発生し
にくくなる。

磁心とケースとの固定は、磁心の底面でケースと少な
くとも１箇所以上固定、好ましくは１〜６箇所、さらに
好ましくは３箇所固定して行う。固定箇所は少ないほど
磁心からの振動がケースに直接伝わりにくい。また、外
部からの衝撃に対する強度を有するためには、複数箇所
固定することが好ましい。接着剤は、実動時の磁心の発
熱に耐えるものを使用する。この際、磁心の底面の接着
部以外の前記磁心の底面と前記ケースとの間には空間部
を有している。

そして、上記ケースと空間部を設けて接着される磁心
の底面以外の全面、すなわち磁心の上面，外周面および
内周面とケースとの間には接着固定されていない空間部
を有している。

また、磁心をケースに固定後、ケースを密閉すること
により、音が空間部を介して外部に漏れるのを有効に防
ぐことができる。

本発明の磁心体は、非晶質磁性合金薄体，ケイ素鋼板
など各種磁性合金薄体を用いた磁心をケースに収納した
磁心体に対して用いられるが、音は磁歪と比例関係にあ
る飽和磁束密度の高いものに対して顕著に発生するた
め、特に10kG以上の飽和磁束密度を有し、磁歪の大きな
非晶質磁性合金薄体を磁心として用いた磁心体に対して
有効である。

（実施例） 本発明の磁心体の一実施例として、スイッチング電源
用チョークコイル用コアの場合を説明する。

鉄系非晶質磁性合金薄体（幅10mm,厚さ25μｍ）を巻
回し、外径26mm,内径16mm,高さ10mmの磁心を得た。この
磁心を約400℃で１時間の熱処理を施し、真空含浸法に
よりエポキシ樹脂を含浸後、硬化処理を行った。次に、
この磁心に幅0.6mmのギャップ形成切断を施し、ギャッ
プ部に絶縁紙を挿入した。

この磁心を、外径27mm,内径15mm,高さ11mmのケースに
収納した。この際、磁心のケースへの接着固定は、磁心
の底面の４箇所を接着剤により磁心の底面とケースとの
間に空間部を形成するように行った。なお、磁心の上
面，外周面および内周面とケースとの間には空間部を有
している。

次に、このケースを接着剤により密閉して本発明の磁
心体であるチョークコイル用コアとした。

このチョークコイル用コアをスイッチング電源に組込
み実動した。

この結果、負荷が１〜10kHzの範囲においては約40dB
以下であり実用上問題のないものであった。

また、比較として磁心とケースとの間にシリコンコン
パウンドを充電した磁心体を用いた場合では、負荷が１
〜10kHzの範囲においては70〜80dBと本発明に比べ大き
いものであった。

本発明は、ケイ素鋼板など他の各種磁性合金薄体を用
いた磁心を使用した磁心体に対しても、音の発生を抑え
る効果をもたらす。

（発明の効果） 本発明により、従来の磁心体に対し、音の発生の小さ
い磁心体を得ることができる。

フロントページの続き (72)発明者 村田 真一 横浜市磯子区新杉田町８ 株式会社東芝 横浜金属工場内 (56)参考文献 実願 昭55−106938号（実開 昭57− 31827号）の願書に添付した明細書及び 図面の内容を撮影したマイクロフィルム （ＪＰ，Ｕ) 実願 昭51−41006号（実開 昭52− 133960号）の願書に添付した明細書及び 図面の内容を撮影したマイクロフィルム （ＪＰ，Ｕ) 実願 昭55−7238号（実開 昭56− 110627号）の願書に添付した明細書及び 図面の内容を撮影したマイクロフィルム （ＪＰ，Ｕ)

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】磁性合金薄体を巻回または積層してなる磁
   心をケースに収納した磁心体において、前記磁心と前記
   ケースは、前記磁心の底面で前記ケースと１箇所以上接
   着固定されかつ前記接着部以外の前記磁心の底面と前記
   ケースの間には空間部を有すると共に、前記磁心の底面
   以外の全面と前記ケースとの間には接着固定されていな
   い空間部を有することを特徴とする磁心体。
2. 【請求項２】ケースは密閉されてなる特許請求の範囲第
   １項記載の磁心体。
3. 【請求項３】磁性合金薄体は10kG以上の飽和磁束密度を
   有する非晶質磁性合金薄体である特許請求の範囲第１項
   記載の磁心体。