JP2556890B2 - ディーゼル機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この発明はディーゼル機関の燃料噴射制御装置に関す
る。

（従来の技術） ディーゼル機関の燃料噴射装置として、燃料噴射時期
や燃料噴射量等を電子制御するようにした分配型の燃料
噴射ポンプがある（例えば実開昭61−192534号公報参
照）。

これを第７図により説明すると、１はポンプハウジン
グ、２と３は駆動軸４により駆動される低圧側フィード
ポンプと高圧側プランジャポンプで、図示しない燃料入
口からフィードポンプ２により吸引された燃料はハウジ
ング１内のフィードポンプ室５に供給され、フィードポ
ンプ室５に開口する吸込通路６を介してプランジャポン
プ３に送られる。

プランジャポンプ３のプランジャ７は、先端に機関の
シリンダと同数の吸込溝８が形成されると共に、他端に
同じく同数のカム山をもつフェイスカム９が形成され、
フェイスカム９は駆動軸４と共に回転しながらローラリ
ング10に配設されたローラ11乗り越えて所定のカムリフ
トだけ往復運動する。

したがって、プランジャ７は回転しながら往復運動す
ることになり、この回転往復運動に伴い吸込溝８からプ
ランジャ室12に吸引された燃料が、プランジャ室12に通
じる図示しない各気筒毎の分配ポートからデリバリバル
ブを通って燃料室に臨む噴射ノズルへと圧送される。

そして、燃料の噴射時期や噴射量を制御するために、
フィールドポンプ室５とプランジャ室12とを連通する燃
料戻し通路13を形成し、この燃料戻し通路13の途中に高
速応動型の電磁弁14を介装している。

この電磁弁14は、開弁時にプランジャ室12を開放する
もので、駆動パルスにより機関の運転条件に応じてプラ
ンジャポンプ３の吐出行程で所定の時間閉じられる。

プランジャ７の圧送行程中に電磁弁14を閉じることで
燃料の噴射が開始され、電磁弁14を開くことで噴射が終
了し、したがって電磁弁14の閉弁時期により燃料の噴射
開始時期が、またその閉弁期間に応じて噴射量が制御さ
れるのである。

（発明が解決しようとする問題点） しかしながら、このようなディーゼル機関の燃料噴射
制御装置では、電磁弁14により燃料の圧送開始と停止の
両方の機能を持たせているので、万が一電磁弁14に閉弁
状態を維持するような誤信号が入力されると、アクセル
を全閉にしてもプランジャ機構が吐出可能な最大の噴射
量で燃料が供給されてしまうなど、制御系異常時に出力
制御ができなくなる可能性があった。

本発明はこのような問題を解決することを目的として
いる。

（問題点を解決するための手段） この発明は、機関回転に同期して回転しながら往復運
動するプランジャと、このプランジャの作動により燃料
を低圧フィードポンプ室から吸入して各気筒に分配する
プランジャ室を備え、このプランジャ室と低圧フィード
ポンプ室を連通すべくプランジャを貫通してその周面に
開口するスピルポートを形成し、プランジャ圧縮行程の
途中でこのスピルポートを閉ざして噴射開始時期を制御
するコントロールスリーブをプランジャに摺動自由に嵌
合し、このコントロールスリーブを、アクセル開度に応
じた燃料噴射量となるように、アクセル開度が小である
ほどスピルポートが遅く閉じる特性でアクセルに連動さ
せ、かつポンプハウジングに形成した低圧フィードポン
プ室とプランジャ室を連通する燃料戻し通路に電磁弁を
介装し、この電磁弁の開弁により燃料噴射終了時期を制
御して運転状態に応じた最適燃料噴射量が得られるよう
にした。

（作用） 電磁弁が閉ざされた状態でプランジャの圧縮行程途中
でコントロールスリーブがスピルポートを閉じるとプラ
ンジャ室の圧力が上昇して燃料の噴射が開始される。そ
の後の圧縮行程終了までの間に電磁弁が開かれると高圧
のプランジャ室が低圧のフィードポンプ室に開放される
ので燃料の噴射が終了する。このようなアクセル開度に
応じたコントロールスリーブの作動と共に各種運転条件
に応じた電磁弁の作動により燃料噴射量及び噴射時期の
きめ細かい制御が可能になる。

万が一制御回路の異常等により電磁弁が閉弁保持した
り開弁時期が乱れたりするようなことがあっても、基本
的な燃料噴射量はアクセル開度が小であるほど噴射開始
時期が遅れて燃料噴射量が減少するようにアクセルに連
動して決められているので、燃料噴射量が最適制御点か
らいくらかずれることはあっても、運転が不能になるよ
うなことはなく、おおむねアクセル開度に応じた噴射特
性により運転を継続することが可能である。

（実施例） 以下添付図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
なお、前記従来例と同一構成部分には同一符号を付す。

第１図に示すように、プランジャポンプ３のプランジ
ャ７は、先端に機関のシリンダと同数の吸込溝８が形成
されると共に、他端に同じく同数のカム山をもつフェイ
スカム９が形成され、フェイスカム９は駆動軸と共に回
転しながらローラリング10に配設されたローラ11を乗り
越えて所定のカムリフトだけ往復運動する。プランジャ
７は回転しながら往復運動することにより、フィードポ
ンプ室５から吸込通路６と吸込溝８を介してプランジャ
室12に吸引された燃料が、プランジャ室12に通じる各気
筒毎の分配ポート31からデリバリバルブ32を通って燃料
室に臨む噴射ノズルへと圧送される。

プランジャ８の周面にはプランジャ室12と低圧フィー
ドポンプ室５を連通するスピルポート22が開口し、この
スピルポート22を開閉するコントロールスリーブ21を摺
動自在に嵌装する。プランジャ７がプランジャ室12の圧
縮側にストロークするときに、スピルポート22がコント
ロールスリープ21により閉塞されることによりプランジ
ャ室12の圧力が立ち上がり、コントロールスリーブ21の
位置によって燃料の噴射開始時期が変化する。

第２図にも示すように、コントロールスリーブ21はテ
ンションレバー26、スプリング27、コントロールレバー
28等を介してアクセルに連動する。

第３図に示すように、燃料噴射時期はフィードポンプ
３の吐出圧に応じて作動するタイマーピストン35がロー
ラリング10を回転させることによっても進角制御され
る。タイマーピストン35の両端には高圧室36と低圧室37
がそれぞれ画成され、各油室36,37に導かれる油圧を調
節してタイマーピストン35をスプリング39に抗して駆動
するタミングコントロールバルブ38が設けられる。

テンションレバー26に連動してコントロールスリーブ
21のストローク位置を検出する位置センサ34が設けら
れ、タミングコントロールバルブ38を制御対象とする装
置は、この位置センサ34の検出信号を信号処理するコン
トロールユニットと、駆動回路とから構成され、コント
ロールスリーブ21の作動と協動してタイマーピストン35
を駆動して燃料噴射開始時期を微調整するようになって
いる。

フィードポンプ室５とプランジャ室12とを連通する燃
料戻し通路13を形成し、この燃料戻し通路13の途中に高
速応動型の電磁弁14を介装する。

この電磁弁14は、開弁時にプランジャ室12を開放する
もので、駆動パルスにより機関の運転条件に応じてプラ
ンジャポンプ３の吐出行程で所定の期間だけ閉じられ
る。

プランジャ７の圧送行程中に電磁弁14を開くことで噴
射が終了し、したがって電磁弁14の閉弁時期により燃料
の噴射開始時期が、またその閉弁期間に応じて噴射量が
制御されるのである。

電磁弁14を制御対象とする装置は、機関の回転数など
運転パラメータを検出するセンサと、検出信号を信号処
理するコントロールユニットと、駆動回路とから構成さ
れる。

このように構成してあり、次に作用について説明す
る。

第４図に示すように、プランジャ７の圧縮行程中にコ
ントロールスリーブ21がスピルポート22を閉じるとによ
り、プランジャ室12に圧力が立ち上がって燃料の噴射が
開始され、電磁弁14を開くことで噴射が終了する。

燃料の増量は主としてコントロールスリーブ21がスピ
ルポート22を閉じる時期によって行われるが、エンジン
回転数など運転条件の変化に対応した最適な噴射量制御
はこのコントロールスリーブ21の移動のみでは不十分で
あるため、電磁弁14の開弁時期のコントロールによりき
め細かい制御が行われる。

また、コントロールスリーブ21の移動によって燃料の
噴射開始時期が変化するが、位置センサ34によりコント
ロールスリーブ21の位置を検出して、タイミングコント
ロールバルブ38およびタイマーピストン34により最適な
タイミングに修正する。

万一制御回路の誤信号により電磁弁14の作動が乱れた
場合も、コントロールスリーブ21はアクセルと連動して
スライドし、アクセル開度が減少するのにしたがって図
中右方向に移動してプランジャ７がストロークする際に
スピルポート22を閉じる時期を遅らし、供給可能な燃料
噴射量を制限するので、フェィルセーフ機能を確保でき
る。

次に、第５図に示す他の実施例について説明すると、
プランジャ室12に連通する燃料戻し通路13の途中にメイ
ンバルブ41を介装し、メインバルブ41の背後に形成され
る背圧室43と、この背圧室43に連通する燃料戻し通路13
が形成され、燃料戻し通路13の途中にパイロット電磁弁
42を設ける。

プランジャ７の圧縮行程ではメインバルブ41に形成さ
れたオリフィス45を介してプランジャ室12と背圧室43は
等圧に保たれ、パイロット電磁弁42が開弁することによ
り背圧室43の圧力が逃がされると、メインバルブ41がス
プリング46に抗して開弁し、燃料の噴射が停止するよう
になっている。

この場合、パイロット電磁弁42の小型化がはかれ、少
ない電力消費量でプランジャ室12に生じる高圧を保持で
きる。

また、第６図に示すように、コントロールスリーブ21
にボールジョイント48を介して所定のモーメントアーム
をもって連結されるシャフト49を回転自在に設け、この
シャフト49の一端にアクセルに連動するコントロールレ
バー50を連結して、アクセル開度が増大するのに伴って
シャフト49が回転してコントロールスリーブ21を図中左
方向にスライドさせて燃料噴射開始時期を早めるように
なっている。

シャフト49の途中には回転位置センサ50を設けて、コ
ントロールスリーブ21のスライド位置を検出する。

（発明の効果） 以上のように本発明は、アクセル開度が小であるほど
プランジャのスピルポートが閉ざされるタイミングつま
り噴射開始時期が遅くなるようにコントロールスリーブ
をアクセルに連動させることにより、基本的な燃料噴射
量をアクセル開度に応じて決定するように図ると共に、
噴射終了時期を電磁弁を介して微調整することにより運
転状態に応じた適切な燃料噴射制御を行えるようにし
た。

したがって、本発明によれば、電磁分の制御系に異常
を生じたとしても過剰量の燃料が供給されてしまうよう
なことがなく、加えてこのようなフェイルセイフ機能が
得られるのみならずアクセル開度に応じた運転を継続す
ることが可能である。また、本発明は電磁弁は噴射終了
時期を微調整するのみであり、全噴射量を電磁弁のみで
制御する従来のものに比較して制御すべき燃料流量の幅
が狭いので、その設計や制御が用意になるという利点も
ある。

【図面の簡単な説明】

第１図，第２図，第３図はそれぞれ本発明の一実施例を
示す断面図、第４図は作用を説明するための線図であ
る。第５図，第６図はそれぞれ他の実施例を示す断面図
である。第７図は従来例を示す断面図である。 １……ポンプハウジング、５……フィードポンプ室、７
……プランジャ、９……フェイスカム、11……ローラ、
12……プランジャ室、13……燃料戻し通路、14……電磁
弁、21……コントロールスリーブ、22……スピルポー
ト。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】機関回転に同期して回転しながら往復運動
   するプランジャと、このプランジャの作動により燃料を
   低圧フィードポンプ室から吸入して各気筒に分配するプ
   ランジャ室を備え、このプランジャ室と低圧フィードポ
   ンプ室を連通すべくプランジャを貫通してその周面に開
   口するスピルポートを形成し、プランジャ圧縮行程の途
   中でこのスピルポートを閉ざして噴射開始時期を制御す
   るコントロールスリーブをプランジャに摺動自由に嵌合
   し、このコントロールスリーブを、アクセル開度に応じ
   た燃料噴射量となるように、アクセル開度が減少するほ
   どスピルポートが遅れて閉じる特性でアクセルに連動さ
   せ、かつポンプハウジングに形成した低圧フィードポン
   プ室とプランジャ室を連通する燃料戻し通路に電磁弁を
   介装し、この電磁弁の開弁により燃料噴射終了時期を制
   御して運転状態に応じた最適燃料噴射量が得られるよう
   にしたことを特徴とするディーゼル機関の燃料噴射制御
   装置。