JP2554094Y2 - ドラムブレーキの一体型バッキングプレート - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この考案は、自動車等の制動に使
用されるドラムブレーキのバッキングプレートに関す
る。

【０００２】

【従来の技術】ドラムブレーキは、自動車のブレーキと
して広く使用されている。このブレーキは、車輪に結合
されて車輪と共に回転するドラムの内周面にブレーキシ
ューのライニングを押付け、両者の間で発生する摩擦力
によりドラムを制動することにより車輪を制動する装置
であって、図４、図５に例示するように構成される。図
４は部品を取付けたバッキングプレートの正面図、図５
は図４のＡ矢印方向から見たアンカの側面図である。

【０００３】図４において、１は鋼板製のバッキングプ
レート、２はバッキングプレートの折立縁１ａを周端面
の溝で挟んでバッキングプレート１に重ねたドラム、３
は車軸を通す軸孔、４はバッキングプレート１を車体に
固定するためのボルト挿通孔、５はホイルシリンダ６の
基部を嵌合固定するための孔、７はホールドダウン装置
８によりバッキングプレートにゆるく取付けられたブレ
ーキシューで、一方の端部７ａをアンカ９に係合させ、
他方の端部７ｂをホイルシリンダのピストンロッド６ａ
に係合させている。アンカ９は鋲９ａによりバッキング
プレートに固定される。１０、１１はブレーキシューの
復帰ばね、１２は駐車ブレーキレバーで、一端を一方の
ブレーキシュー７に軸１３で枢着され、他端にケーブル
ガイド１４で案内されたケーブル（図示せず）を結合さ
れる。１５はケーブルを通す孔、１６はドラム内に塵埃
や水が進入するのを阻止するためバッキングプレートに
溶接したダストシールドである。制動時にブレーキシュ
ー７の端部７ａは、バッキングプレート１から離れる方
向に浮上る傾向があるので、アンカ９は、図５に見るよ
うに、アンカ片９ｂにこれより大きいリテーナ板９ｃを
重ね鋲９ａで結合して構成し、端部７ａの浮上りを阻止
している。

【０００４】このように、バッキングプレートには多数
の部品が取付けられ、これら部品の配置を適切にするた
めに凹凸が形成されるから、製造工程が煩雑になる。

【０００５】また、鋼板は厚さが一様に造られるもので
あるから、強度を必要とする部分のみを厚くすることは
できず、従って強度を要しない部分も同じ厚さになるか
ら、バッキングプレートの重さが大きくなるのを避けら
れない。

【０００６】上記の欠点を避けると共に軽量化を図るた
め、本考案者らの１人は、アルミニウム合金、又はセラ
ミック粒子や繊維で強化したり炭化珪素（SiC ）を加え
たアルミニウム基複合材（この明細書では、これらの材
料を単にアルミニウム材という）を使用して、必要部分
のみを厚く、不要部分を薄くして加圧鋳造方法（溶湯鍛
造法又はダイカスト法）により製造する一体型バッキン
グプレート及び必要に応じてこれの摩耗又は損潰し易い
部分に鉄片を埋込んだバッキングプレートを発明し、特
許出願（特願平３−１０８１０１号）を行なった。

【０００７】図６、図７はアルミニウム材の加圧鋳造方
法による、ケーブルガイドを同体に形成し他の部品を取
り外した上記出願に係る発明のバッキングプレートを示
し、図６は正面図、図７は図６のＢ−Ｂ断面図である。

【０００８】上記のように形成される先発明の一体型バ
ッキングプレートは、アンカ９、ケーブルガイド１４の
ような部品をバッキングプレートの加圧鋳造時に同体に
形成することができるが、ホイルシリンダは後からボル
トでバッキングプレートに取付けるようにしている。

【０００９】

【考案が解決しようとする課題】上記のようにホイルシ
リンダを後から取付ける理由は、バッキングプレート
は、熱処理を施すと歪み、曲りを生じるので熱処理をし
ない方が好ましいこと、ホイルシリンダは硬さ、耐摩耗
性、加工精度等の点から、熱処理が必要であること、ホ
イルシリンダをバッキングプレートと同時に鋳造すると
内部欠陥が発生し易いこと、また金型の構造上、ホイル
シリンダ内径部の型抜きが難しいこと、等の課題がある
ためである。この考案は、このような課題を解決しよう
としたものである。

【００１０】

【課題を解決する為の手段】この考案は、前記のアルミ
ニウム材や、鋳鉄、ステンレス鋼、銅、銅合金、マグネ
シウム合金、マグネシウム複合材のような、必要な強度
を持ち、耐摩耗性、耐食性、潤滑性のよい材料でパイプ
形のシリンダ部と、これに圧油を通じさせるインレット
部とより成るホイルシリンダを形成し、これをバッキン
グプレート本体の加圧鋳造時にバッキングプレート材料
により鋳包んで所定位置に定位させ、ドラムブレーキ用
一体型バッキングプレートを造るものである。

【００１１】

【作用】ホイルシリンダは単体で造られるから、適当な
材料を使用して最適条件の熱処理、仕上げ加工を行なっ
て造ることができる。これをバッキングプレート本体の
加圧鋳造時に鋳包めば、熱処理をしたホイルシリンダと
熱処理しないバッキングプレートとを組合せて一体型バ
ッキングプレートを造ることができる。

【００１２】

【実施例】図１〜図３は本考案の実施例を略示し、図１
は一体型バッキングプレートの正面図、図２は図１のＣ
−Ｃ断面図、図３はシリンダ部の斜視図である。図４〜
図７の従来例と同等部分は同符号で示して、次にこれを
説明する。

【００１３】ホイルシリンダ６は、図１〜図３に見るよ
うに、パイプ状のシリンダ部１７とこれに圧油を通じさ
せるインレット部１８とを形成したものである。このホ
イルシリンダ６は、単独に造られるから、最適の材料を
使用して造られ、熱処理され、シリンダ部１７の内径の
仕上げ加工を良好に行なわれる。

【００１４】ホイルシリンダ６は、インレット部１８が
バッキングプレート本体１９の背面に突出するように鋳
型中に保持され、この状態でバッキングプレート本体を
アルミニウム材で加圧鋳造する。

【００１５】こうしてホイルシリンダ６を鋳包んで一体
鋳造されたバッキングプレートにおいて、ホイルシリン
ダ６は熱処理されて硬さ、耐摩耗性がよく、精度の良い
加工を施されており、バッキングプレート本体１９は熱
処理しない状態で造られるから、歪みが少なく、耐久性
のよい一体型バッキングプレートが得られる。ホイルシ
リンダ６、バッキングプレート本体１９にはそれぞれ別
個の最適材料を使用することができる。なお、バッキン
グプレート本体１９の材質は、実施例においてはアルミ
ニウム材としたが、振動減衰性を考慮して、マグネシウ
ムまたはマグネシウム合金、亜鉛または亜鉛合金を使用
してもよい。

【００１６】

【考案の効果】(1) ホイルシリンダは、適当な材質の材
料を熱処理し、仕上げ加工を施して強度、剛性、耐食
性、潤滑性、寸法精度のよい単体として造ることができ
る。

【００１７】(2) このホイルシリンダを鋳包むバッキン
グプレート本体もアルミニウム等の軽金属または軽合金
もしくはその複合材等の適当な材料を使用して熱処理せ
ず、強度、剛性が高く、歪みを生じないで寸法精度よく
造ることができる。

【００１８】(3) ホイルシリンダ、バッキングプレート
本体共に内部欠陥のない高品質の製品が得られる。

【００１９】(4) ホイルシリンダの製作やバッキングプ
レート本体の加圧鋳造が容易で、短時間で一体型バッキ
ングプレートが得られ、コスト低減ができる。

【００２０】(5) 別個に造ったホイルシリンダをボルト
でバッキングプレート本体に取付ける従来構造に比べ
て、組付け工数が低減でき、組立て精度も高い。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一体型バッキングプレートの実施例の
要部のみを略示する正面図。

【図２】図１のＣ−Ｃ断面図。

【図３】ホイルシリンダの斜視図。

【図４】ドラムブレーキの従来例を示すドラムを除いた
正面図。

【図５】図４のＡ矢視図。

【図６】先考案の一体型バッキングプレートの正面図。

【図７】図６のＢ−Ｂ断面図。

【符号の説明】 １ バッキングプレート １ａ 折立縁 ２ ドラム ３ 軸孔 ４ ボルト挿通孔 ５ 孔 ６ ホイルシリンダ ６ａ ピストンロッド ７ ブレーキシュー ７ａ 端部 ７ｂ 端部 ８ ホールドダウン装置 ９ アンカ ９ａ 鋲 ９ｂ アンカ片 ９ｃ リテーナ板 １０ 復帰ばね １１ 復帰ばね １２ 駐車ブレーキレバー １３ 軸 １４ ケーブルガイド １５ 孔 １６ ダストシールド １７ シリンダ部 １８ インレット部 １９ バッキングプレート本体

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 バッキングプレート本体（１９）をアル
   ミニウム等の軽金属または軽合金もしくはその複合材で
   加圧鋳造し必要部分を厚くして造り、シリンダ部（１
   ７）とインレット部（１８）とより成るホイルシリンダ
   （６）をバッキングプレート本体（１９）で一体に鋳包
   んだことを特徴とするドラムブレーキの一体型バッキン
   グプレート。