JP2546866B2 - 斜板式油圧装置 - Google Patents

斜板式油圧装置

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JP2546866B2 JP62332442A JP33244287A JP2546866B2 JP 2546866 B2 JP2546866 B2 JP 2546866B2 JP 62332442 A JP62332442 A JP 62332442A JP 33244287 A JP33244287 A JP 33244287A JP 2546866 B2 JP2546866 B2 JP 2546866B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、油圧ポンプや油圧モータ等に適用される斜
板式油圧装置に関するものである。
[従来の技術] 従来における斜板式油圧装置として、例えば、特開昭
62-4963号公報においてその一構造例が示されている。
この公報に示されている斜板式油圧装置は、シリンダ
と、このシリンダの中心線まわりに間隔をおいて配設さ
れ、かつ、シリンダにその中心線と平行な軸線に沿って
摺動可能に嵌装された複数のプランジャと、これらのプ
ランジャの外端部に当接させられるとともに前記シリン
ダの中心線との交点を中心に揺動可能に配設された斜板
とを備え、前記斜板の揺動により前記複数のプランジャ
をシリンダに対し往復動させて作動油の吐出および吸入
を行うようにしたものであり、前記各プランジャはその
外端部が球面状に形成されているとともに、前記斜板に
は、ほぼ球面形状を有する凹部が前記各プランジャに対
応して形成されており、この凹部内に各プランジャの外
端部が係合させられることにより、各プランジャと斜板
との相対的な位置関係が設定されるようになっている。
[発明が解決しようとする問題点] ところで斜板式油圧装置においては、斜板を介してプ
ランジャの外端部に加えられる外力が、プランジャの摺
動方向の成分のみならず、この摺動方向と交差する方向
(直交方向)への成分(以下側圧と称す)をも有してお
り、この側圧によりプランジャがシリンダ内面の一側面
に押し付けられ、また、プランジャがシリンダの外部に
突出している状態にあっては、プランジャに倒れ方向の
モーメントが与えられ、この結果、プランジャの摺動抵
抗が大きくなることが想定される。
そして、前述の従来の斜板式油圧装置においては、プ
ランジャの外端部を、斜板に形成されている凹部内に係
合させた構成としているために、プランジャのシリンダ
外部への突出量が大きく、これによって、プランジャに
与えられる倒れ方向へのモーメントが大きくなり、プラ
ンジャの摺動抵抗増大の原因になることが考えられる。
特に、吸入行程の終期(吐出行程の初期)に位置する
プランジャは、その突出量が最大となるために、倒れ等
への対処を十分に考慮する必要がある。
また、斜板のプランジャとの当接部分には、荷重が最
も大きく作用するが、前述の斜板式油圧装置において
は、斜板にプランジャ係合用の凹部を形成してあること
から、この当接部分の剛性を確保するために、斜板の厚
みを大きくする必要がある。
しかしながら、斜板の厚みを大きくすると、その分、
斜板に続いて設けられる他の構成部材が、斜板の厚さ方
向にずらされて、装置の大型化の原因となる。あるい
は、装置の外形寸法に制限がある場合においては、前記
他の構成部材の形状や材質等が制限されて、設計変更の
自由度が狭められてしまう。
[問題点を解決するための手段] 本発明は、前述の従来技術において残されている改善
点を有効に解消し得る斜板式油圧装置を提供することを
目的とし、この目的を達成するために、本発明では、シ
リンダと、このシリンダの中心線まわりに間隔をおいて
配設され、かつ、シリンダにその中心線と平行な軸線に
沿って摺動可能に嵌装された複数のプランジャと、前記
シリンダの中心線と直交する軸線方向に傾斜して配置さ
れるとともに前記プランジャの外端部に直接当接させら
れる斜板とを備え、前記斜板の傾斜により前記複数のプ
ランジャを往復動させて作動油の吐出および吸入を行う
ようにした斜板式油圧装置において、前記斜板と前記各
プランジャとの当接部にて、プランジャ側に球面状の凹
部を形成すると共に、斜板側に球面状の凸部をそれぞれ
形成し、かつ斜板が最も傾いた時に斜板の最外側がプラ
ンジャ最外側よりも内側となることを特徴とする。
[作用] 本発明に係わる斜板式油圧装置は、前述した構成とす
ることにより、斜板とプランジャとの当接位置をプラン
ジャ側へずらし、その分プランジャの長さを短くしてシ
リンダからの突出量を少なくするとともに、他の構成部
材の位置を変更することなく斜板のプランジャとの当接
部分の厚みを厚くして斜板の剛性を高めるものである。
[実施例] 以下、本発明の一実施例を図面に基づき説明する。
この実施例は、自動二輪車に装備されるパワーユニッ
トの構成体である静油圧式無段変速機に適用したもので
ある。
第1図および第2図において、符号1は自動二輪車を
示し、車体フレーム2と、この車体フレーム2の前部に
設けられたヘッドパイプ2aに回動自在に装着されたフロ
ントフォーク3と、このフロントフォーク3の上端部に
装着されたステアリングハンドル4と、フロントフォー
ク3の下端部に回転自在に装着された前輪5と、車体フ
レーム2の下部後方に上下に揺動自在に装着されたリア
フォーク6と、このリアフォーク6の揺動側の端部に回
転自在に装着された後輪7と、リアフォーク6の揺動中
心部と車体フレーム2との間に介装されたクッションユ
ニット8と、車体フレーム2の中央部に装着され、エン
ジンEと静油圧式無段変速機(以下、無段変速機と略
す)TとからなるパワーユニットUと、前記エンジンE
に連設されたエアークリナー9と、車体フレーム2の上
部に前方から後方へ向けて順次配設された燃料タンク10
およびシート11と、車体フレーム2の両側部に装着され
たステップ12および後輪用ブレーキペダル13と、前記ス
テアリングハンドル4の一端部に装着されたクラッチレ
バー14と、他端部に装着されたアクセルグリップ15およ
び前輪用ブレーキレバー16とを備えている。
前記パワーユニットUを構成するエンジンEおよび無
段変速機Tは、前者のクランク軸17と後者の出力軸18と
が平行となるように配設されているとともに、無段変速
機Tは、前記クランク軸17が収納されたクランクケース
19をケーシングとして収納されている。
また、前記クランク軸17は無段変速機Tにチェーン式
1次減速装置20を介して動力を伝達し、無段変速機T
は、その出力軸18により2次減速装置21を介して前記後
輪7を駆動するようになっている。
前記無段変速機Tは、第3図および第4図に示すよう
に、定容量型の斜板式油圧ポンプPおよび可変容量型の
斜板式油圧モータMとによって構成され、これらの油圧
ポンプPおよび油圧モータMが本実施例の油圧装置Hと
なされている。
前記油圧ポンプPは、1次減速装置20の出力スプロケ
ット22がリベット23により結着される入力筒軸24と、こ
の入力筒軸24の内周壁にボールベアリング25を介して相
対回転自在に嵌合されるポンプシリンダ26と、このポン
プシリンダ26に、その回転軸線まわりに間隔をおきかつ
回転軸線に平行となるように形成された奇数のシリンダ
孔27のそれぞれに摺動可能に嵌合させられる多数のポン
ププランジャ28と、これらポンププランジャ28の外端に
前面を当接させるポンプ斜板29と、このポンプ斜板29
を、ポンプシリンダ26の軸線と直交する仮想トラニオン
軸線01を中心にしてポンプシリンダ26の軸線に対し一定
角度傾斜させた状態に保持すべくこのポンプ斜板29の背
面をアンギュラコンタクトベアリング30を介して支承す
るポンプ斜板ホルダ31とから構成される。このポンプ斜
板ホルダ31も前記リベット23によって入力筒軸24に結着
される。
前記アンギュラコンタクトベアリング30は、ポンプ斜
板ホルダ31と協働してポンプ斜板29に調心作用を与える
ように構成される。
一方、前記ポンプ斜板29のポンププランジャ28との当
接部分には、ポンププランジャ28側へ向かって突出する
凸部29aが各ポンププランジャ28に対応して形成されて
おり、また、各ポンププランジャ28の外端部(ポンプ斜
板29との当接部)には、前記ポンプ斜板29の凸部29aが
転動可能に係合させられる凹部28aが形成されている。
これによって、ポンプ斜板29がポンプシリンダ26と同期
回転させられる。
そして、これらの凹部28aおよび凸部29aはほぼ球面状
に形成され、前者の曲率半径が後者のそれよりも大きく
設定されている。
しかして、前記ポンプ斜板29は、入力筒軸24の回転時
に、ポンププランジャ28に往復動を与えて吸入及び吐出
工程を繰返させることができる。
ポンププランジャ28のポンプ斜板29に対する追従性を
良くするために、ポンププランジャ28をポンプシリンダ
26から突出する方向へ付勢するコイルばねをシリンダ孔
27内に収納するようにしてもよい。
一方、油圧モータMは、ポンプシリンダ26と同軸上で
その左方に配置されるモータシリンダ32と、このモータ
シリンダ32に、その回転軸線まわりに間隔をおきかつ回
転軸線に平行となるように形成された奇数のシリンダ孔
33のそれぞれに摺動可能に嵌合させられる多数のモータ
プランジャ34と、これらモータプランジャ34の外端前面
を当接させるモータ斜板35と、このモータ斜板35の背面
をアンギュラコンタクトベアリング36を介して支承する
モータ斜板ホルダ37と、このモータ斜板ホルダ37の背面
を支承するモータ斜板アンカ38とから構成される。
一方、前記モータ斜板35の、モータプランジャ34との
当接部分には、モータプランジャ34側へ向かって突出す
る凸部35aが形成され、モータプランジャ34の外端部
(モータ斜板35との当接部)には、前記モータ斜板35の
凸部35aが転動可能に係合させられる凹部34aが形成され
ている。これによってモータ斜板35がモータシリンダ32
と同期回転させられる。
そして、前記凹部34aおよび凸部35aは球面状に形成さ
れており、凹部34aの曲率半径の方が凸部35aのそれより
も大きく形成されている。
また、互いに当接するモータ斜板ホルダ37およびモー
タ斜板アンカ38の対向面は、モータシリンダ32の軸線と
トラニオン軸線02との交点を中心とする球面に形成され
る。
また、モータ斜板ホルダ37は、第4図に示すように、
モータシリンダ32の回転軸線と直交するトラニオン軸線
02上に配置される、一対の半円筒状トラニオン軸37aを
両端に一体に備え、これらはモータ斜板アンカ38の両端
部に形成された一対の半円筒状凹部38aにそれぞれ回転
可能に係合される。
このトラニオン軸37aおよび凹部38aは、これらの係合
により、モータ斜板ホルダ37の、トラニオン軸線02以外
の軸線周りの回転を阻止し得るものであれば、半円筒状
以外の形状のものでもよく、例えば半円錘状にしてもよ
い。
そして、前記アンギュラコンタクトベアリング36はモ
ータ斜板ホルダ37と協働してモータ斜板35に調心作用を
与えるように構成される。
前記モータ斜板アンカ38は、その右端に連なる筒状の
シリンダホルダ39とともにケーシングC(19)の左側壁
に固着される。また、このシリンダホルダ39はボールベ
アリング40を介してモータシリンダ32の外周面を回転自
在に支承する。
前記モータ斜板35は、モータシリンダ32の軸線に対し
直角となる直立位置と、ある角度で傾倒する最大傾斜位
置との間をモータ斜板ホルダ37の回動によって移動する
ようになっており、その傾斜状態では、モータシリンダ
32の回転に伴いモータプランジャ34に往復動を与えて膨
張及び収縮行程を繰返させることができる。
ここで、モータプランジャ34のモータ斜板35に対する
追従性を良くするために、モータプランジャ34をモータ
シリンダ32から突出する方向に付勢するコイルばねをシ
リンダ孔33に収納するようにしてもよい。
前記ポンプシリンダ26およびモータシリンダ32は軸方
向に突き合わされて、その突き合わせ面においてビーム
溶接により一体に結合されてシリンダブロックBを構成
している。
ここで、前記ポンプシリンダ26とモータシリンダ32と
の接合方法について、第5図を参照して説明すれば以下
のとおりである。
この接合のために、前記ポンプシリンダ26の内周面に
は略円錐状の当接面26aが形成され、また、モータシリ
ンダ32の内周部には、前記ポンプシリンダ26の当接面26
aに全周に亙って当接させられる外周面を有する嵌合凸
部41が形成されている。さらに、両シリンダ26・32の外
周部には、相互に当接させられる外方フランジ42・43が
設けられている。
このように形成された両シリンダ26・32を所定の圧力
の下に相互に突き合わせて、それぞれの突き合わせ面、
嵌合凸部41の外周面と当接面26a、および、両フランジ4
2・43を隙間なく接触させておき、第5図中に矢印
(イ)および(ロ)で示すように、両フランジ42・43の
突き合わせ部分と嵌合凸部41と当接面26aとの突き合わ
せ部分に電子ビームを照射して全周に亙って溶融させる
ことにより、両シリンダ26・32を強固に一体化する。
このような接合に際し、溶接部分が両シリンダ26・32
の基部から外方あるいは内方に突出した部分に位置させ
られていることから、その基部に対する溶接の影響が抑
制され、また、溶接後においてはその突き合わせ面が内
外周において気密に閉塞されて、両シリンダ26・32間が
密封状態に保持される。
一方、前述したように溶接部分が基部の外方に位置さ
せられることにより、基部に形成されている弁孔65・66
間の距離を短くすることも可能となる。
また、両シリンダ26・32の接合方法としては、前述し
た例の外に、第12図や第13図に示す方法も挙げられる。
第12図に示す方法は、両シリンダ26・32の内周側にお
ける溶接を省略するようにしたもので、モータシリンダ
32に形成された嵌合凸部41の外周面およびポンプシリン
ダ26の当接面26aを、各シリンダ26・32の回転軸線と平
行な面としておき、前記嵌合凸部41をポンプシリンダ26
の内周面に圧入嵌合させることにより、その嵌合圧によ
って両シリンダ26・32の位置決めを行い、かつ、この嵌
合長さLを適宜設定することにより、シリンダブロック
Bに作用する曲げや捩り等の外力を支持するようにして
いる。
このような構成とすることにより、弁孔65・66等、そ
れ自体や相互間の寸法(例えば第12図中にL1で示す孔間
距離)精度が厳しく要求されている部分の近傍における
溶接を省略して、溶接歪み等に起因した変形の発生を極
力少なくすることが期待できる。
また、第13図に示す結合方法は、第12図において示し
た嵌合凸部41と当接面26aとの圧入嵌合部を、シリンダ
ブロックBの回転軸線と平行となるように設定するとと
もに、この回転軸線寄りに設定し、これによって、ビー
ム溶接において必要条件とされているところの、溶接部
の突き合わせ面間の隙間を無くすこと、また、両シリン
ダ26・32の相対的な位置合わせ機能とが同時に行える。
このように構成されたシリンダブロックBの中心部に
は前記出力軸18が貫通させられている。
そして、この出力軸18とシリンダブロックBは、第3
図および第4図に示すように、それぞれに形成されたス
プライン18a・32aどうしの嵌合により出力軸18まわりの
相対回転が拘束されており、また、出力軸18のスプライ
ン18aの途中に形成された段部18bに、前記シリンダブロ
ックBのスプライン32aの内方側の端部が当接すること
により、出力軸18の長さ方向における両者の位置決めが
行われるようになっている。
この出力軸18の右端部(第3図および第4図の右側)
はポンプ斜板29およびポンプ斜板ホルダ31をも貫通して
いて、ポンプ斜板ホルダ31の背面を支承するとともにポ
ンプ斜板ホルダ31の中心部を貫通した状態で設けられた
支持筒44がニードルベアリング45を介して被嵌されてお
り、さらに、この支持筒44の背面をスラストローラベア
リング46を介して支承する剛性の大なるフランジ47を一
体に備えている。
一方、出力軸18の左端部(第3図および第4図の左
側)はモータ斜板35、モータ斜板ホルダ37およびモータ
斜板アンカ38を貫通するように延びており、この左端部
外周には、スプライン18cを介して一体回転可能にかつ
二つ割コッタ48にて係止された支持筒49が取り付けら
れ、この支持筒49のモータ斜板アンカ38側の端部外周に
は、ニードルベアリング50を介して、リテーナ51が被嵌
されており、このリテーナ51は前記モータ斜板アンカ38
の背面に当接させられているとともに、出力軸18の長さ
方向において、スラストローラベアリング52を介して前
記支持筒49へ支承されている。したがって、前記出力軸
18はモータ斜板アンカ38を回転自在に支承している。
さらに、支持筒49とシリンダブロックBとの間には、
スペーサ53と、前記スプライン18aを介して出力軸18へ
装着された係止リング54が順次介装されており、これら
のスペーサ53および係止リング54が前記支持筒49によっ
て押圧されることにより、前記シリンダブロックBが出
力軸18に形成されている段部18bへ係合させられるよう
になっている。
前記二つ割コッタ48は、前記出力軸18の端部にスプラ
イン18cを介して取り付けられて前記2次減速装置21を
構成する入力スプロケット55を係止する係止板55aが被
嵌されることにより、その離脱が阻止され、この入力ス
プロケット55は、出力軸18の端部に軸方向から螺着され
たボルト56によって離脱が阻止されている。
このようにして、出力スプロケット22から二つ割コッ
タ48までの変速機Tの全構成部材は、出力軸18上に1個
の組立体として組付けられるので、変速機Tのケーシン
グCへの着脱を容易に行うことができる。
変速機TのケーシングCへの組付時、ポンプ斜板ホル
ダ31はボールベアリング57を介してケーシングCの右側
壁に支承され、モータ斜板アンカ38はケーシングCの左
側壁にボルト58により固着される。そして、ケーシング
Cの右側壁には、そこに開口する整備孔59を閉塞するキ
ャップ60がボルト61で固着され、またケーシングCの左
側壁には、支持筒49の外周面に密接するオイルシール62
が嵌着される。
さらに、油圧モータMにおいては、モータプランジャ
34およびモータ斜板35相互のトルク伝達を特に確実にす
べく、モータ斜板35とモータシリンダ32との間に前記係
止リング54が介装されている。
この係止リング54は、第6A図および第6B図に詳述する
ように、その外周部に前記モータ斜板35の各凸部35a間
に位置し得るような隆起部54aが形成されて、この隆起
部54aによりモータプランジャ34とモータ斜板35との出
力軸18まわりの位置ずれが阻止され、この結果、前述の
ようにトルク伝達が確実に行われる。
なお、このような構造は油圧ポンプP側にも採用して
もよい。
第3図および第4図に示すように、シリンダブロック
Bには、ポンプシリンダ26のシリンダ孔27群とモータシ
リンダ32のシリンダ孔33群との間において、出力軸18を
中心にして同心に並ぶ環状の内側油路63および外側油路
64と、両油路63・64間の環状隔壁および外側油路64の外
周壁を放射状に貫通する、前記シリンダ孔27・33とそれ
ぞれ同数の第1弁孔65および第2弁孔66と、各弁孔65・
66を前記外側油路64へ連通させる連絡油路67・68と、相
隣るシリンダ孔27および第1弁孔65を相互に連通するポ
ンプボートaと、相隣るシリンダ孔33および第2弁孔66
を相互に連通する多数のモータポートbとが設けられ
る。
前記内側油路63は、シリンダブロックBの内周面に環
状溝として形成され、その開放面は出力軸18の外周面に
より閉じられる。また、前記外側油路64は、前記ポンプ
シリンダ26およびモータシリンダ32の合わせ面のそれぞ
れに環状溝を形成しておき、両シリンダ26・32を結合す
ることによりシリンダブロックB内に設けられる。
また、前記連絡油路67・68、ポンプポートa、およ
び、モータポートbは、前記第1および第2の弁孔65・
66を全周に亙って取り囲むようにして形成されている。
これは、後述する分配弁69・70の外周面に均一な作動油
圧を作用させて、各分配弁69・70の作動を容易なものと
するための処置である。
そして、前記外側油路64、両弁孔65・66、および、連
絡油路67・68は、ポンプシリンダ26およびモータシリン
ダ32に対する後加工によって形成され、かつ、これら両
シリンダ26・32を洗浄したのちに結合することにより形
成されるから、これらの加工時に発生する切削くず等が
内部に残存するようなことはなく、したがって、第1お
よび第2の分配弁69・70の円滑な摺動が長期に亙って保
持される。
前記第1弁孔65には、第11A図および第11B図に示すよ
うなスプール型の第1分配弁69が、また前記第2弁孔66
には同じくスプール型の第2分配弁70がそれぞれ摺動可
能に嵌合されている。そして、第1分配弁69の外端には
それを囲む第1偏心輪71が、また第2分配弁70の外端に
はそれらを囲む第2偏心輪72(本実施例においては前記
シリンダホルダ39の一端部に一体に形成されている)が
それぞれボールベアリング73・74を介して係合され、そ
れらの係合を強制するために、第1分配弁69の外端部は
第1偏心輪71と同心関係の第1強制輪75により相互に連
結され、また第2分配弁70外端部は第2偏心輪72と同心
関係の第2強制輪76により相互に連結される。
前記第1偏心輪71は、入力筒軸24の外周にボルト77を
介して固着され、第7図に示すように仮想トラニオン軸
線01に沿って出力軸18の中心から所定距離ε偏心した
位置に保持される。
このような構成により、入力筒軸24とポンプシリンダ
26間に相対回転が生じると、各第1分配弁69は、第1偏
心輪71により第1弁孔65において偏心量εの2倍の距
離をストロークとしてポンプシリンダ26の半径方向内方
位置および外方位置間を往復動される。そして、第7図
に示すように、油圧ポンプPの吐出領域Dでは、第1分
配弁69は前記内方位置側を移動して、対応するポンプポ
ートaを外側油路64に連通するとともに内側油路63と不
通にし、吐出行程中のポンププランジャ28によりシリン
ダ孔27から外側油路64へ作動油が圧送され、また吸入領
域Sでは、第1分配弁69は前記外方位置側を移動して、
対応するポンプポートaを内側油路63に連通するととも
に外側油路64と不通にし、吸入行程中のポンププランジ
ャ28により内側油路63からシリンダ孔27に作動油が吸入
される。
一方、モータシリンダ32が回転すると、各第2分配弁
70は、第2偏心輪72により、第8図に示すように、第2
弁孔66において偏心量εの2倍の距離をストロークと
してモータシリンダ32の半径方向内方位置および外方位
置間を往復動される。そして油圧モータMの膨張領域EX
では、第2分配弁70は前記内方位置側を移動して、対応
するモータポートbを外側油路64に連通するとともに内
側油路63を不通にし、外側油路64から膨張行程中のモー
タプランジャ34のシリンダ孔33に高圧の作動油が供給さ
れ、また収縮領域Shでは、第2分配弁70は前記外方位置
側を移動して、対応するモータポートbを内側油路63に
連通するとともに外側油路64と不通にし、収縮行程中の
モータプランジャ34のシリンダ孔33から内側油路63へ作
動油が排出される。
そして、ポンププランジャ28は、吐出領域Dを通過す
る間、シリンダ孔27から外側油路64に作動油を圧送し、
また吸入領域Sを通過する間、内側油路63からシリンダ
孔27に作動油を吸入する。また、外側油路64に送られた
高圧の作動油は、油圧モータMの膨張領域EXに存するモ
ータプランジャ34のシリンダ孔33に供給される一方、収
縮領域Shに存するモータプランジャ34によりそのシリン
ダ孔33から内側油路63へ作動油が排出される。
この間に、ポンプシリンダ26が吐出行程のポンププラ
ンジャ28を介してポンプ斜板29から受ける反動トルク
と、モータシリンダ32が膨張行程のモータプランジャ34
を介してモータ斜板36から受ける反動トルクとの和によ
って、シリンダブロックBは回転され、その回転トルク
は出力軸18から2次減速装置21へ伝達される。
この場合、入力筒軸24に対する出力軸18の変速比は次
式によって与えられる。
したがって、油圧モータMの容量を零からある値に変
えれば、変速比を1からある必要な値まで変えることが
できる。しかも、その油圧モータMの容量はモータプラ
ンジャ34のスロトークによって決定されるので、モータ
斜板35の直立位置からある傾斜位置まで傾動させること
により、変速比が1からある値まで無段階に制御され
る。
変速機Tの作動中、ポンプ斜板29はポンププランジャ
28群から、また、モータ斜板35はモータプランジャ34群
からそれぞれ反対方向のスラスト荷重を受けるが、ポン
プ斜板29が受けるスラスト荷重はアンギュラコンタクト
ベアリング30、ポンプ斜板ホルダ31、スラストローラベ
アリング46およびフランジ47を介して出力軸18に支承さ
れ、またモータ斜板35が受けるスラスト荷重はアンギュ
ラコンタクトベアリング36、モータ斜板ホルダ37、モー
タ斜板アンカ38、スラストローラベアリング52、支持筒
49およびコッタ48を介して出力軸18に支承される。した
がって、上記スラスト荷重は、出力軸18に引張応力を生
じさせるだけで、この軸18を支持するケーシングCには
全く作用しない。
この場合、モータ斜板ホルダ37は、前面でモータ斜板
35をアンギュラコンタクトベアリング36を介して支承す
るとともに、背面をモータ斜板アンカ38に支承されるの
で、モータプランジャ34群からモータ斜板35を介してス
ラスト荷重を受けても撓みを生じることがない。しか
も、モータ斜板ホルダ37およびモータ斜板アンカ38は、
モータシリンダ32の軸線とトラニオン軸線02との交点を
中心とする球面を対向させているので、これら球面の相
互作用によりモータ斜板ホルダ37は調心機能を発揮す
る。その結果、モータ斜板ホルダ37は、トラニオン軸線
02周りに円滑に回動し得て、モータ斜板35の傾斜角度を
容易に制御することができる。その際、モータ斜板ホル
ダ37のトラニオン軸37aとモータ斜板アンカ38の凹部38a
との係合により、モータ斜板ホルダ37の、トラニオン軸
線02以外の軸線周りの回転は阻止される。また、凹状球
面を持つモータ斜板アンカ38は、中心部から周縁に向っ
て肉厚となり、高い剛性を有するので、モータ斜板ホル
ダ37およびスラストローラベアリング52からの大なる負
荷に充分耐えることができる。
さらに、係止リング54の作用により、高負荷時でも、
モータプランジャ34とモータ斜板35との相対回転が阻止
されてモータ斜板35が確実に回転駆動させられる。
更にまた、油圧ポンプPおよび油圧モータMにおい
て、各斜板29・35は、対応するプランジャ2834の凹部28
a・34aと各斜板29・35の凸部29a・35aとの係合およびア
ンギュラコンタクトベアリング30・36により、前後から
調心作用を受けるため、如何なる傾斜状態でも定位置を
保ってシリンダブロックBと的確に同期回転をすること
ができる。
第3図、第4図および第9図に示すように、前期シリ
ンダブロックBには、クラッチ機構Kが設けられてい
る。
このクラッチ機構Kは、前記シリンダブロックBに前
記外側油路64を貫通するように、シリンダブロックBの
回転軸線に沿って形成されたクラッチ孔80と、このクラ
ッチ孔80内に嵌合固着されてクラッチ孔80の中間部にお
いて前記外側油路64へ連通させられかつ両端が開放され
た管状のバルブシート81と、このバルブシート81内に摺
動可能に嵌合されて、バルブシート81の両端部を開閉す
るクラッチ弁82と、このクラッチ弁82の一端部に、その
長さ方向において係合させられる係合片83aを備えると
ともに、前記シリンダブロックBの外周にその長さ方向
に沿って摺動可能に嵌合された作動リング83と、この作
動リング83の外周部に全周に亙って形成された環状溝83
bに、ほぼ半周に亙って係合させられる作動板84と、前
記モータ斜板アンカ38とシリンダホルダ39とによって支
持されるとともに、前記作動板84をシリンダブロックB
の回転軸線に沿って貫通させられことにより、この作動
板84をシリンダブロックBの周方向にほぼ90度離間した
位置において摺動可能に支持する一対のガイドピン85
と、前記作動板84とモータ斜板アンカ38との間に介装さ
れ、作動板84を第3図および第4図に実線で示すクラッ
チオンの位置に付勢するリターンスプリング86と、第4
図に示すように、作動板84を同図に鎖線で示すクラッチ
オフの位置へ移動操作する押圧機構87とを備えている。
前記クラッチ孔80、バルブシート81、クラッチ弁82
は、本実施例においては、第9図に示すように、シリン
ダブロックBの周方向に等間隔をおいた3箇所に設けら
れている。
また、前記押圧機構87は、前記シリンダホルダ39にボ
ールベアリング88を介して支持されるとともに、ケーシ
ングCを貫通してその外部に突出させられた操作ロッド
89と、シリンダホルダ39にボールベアリング90を介して
支持されるとともに、前記操作ロッド89に一体回転可能
に取り付けられた駆動カム91と、この駆動カム91に操作
ロッド89の長さ方向から摺動可能に当接させられるとと
もに、前記作動板84に一体に取り付けられた従動カム92
とによって構成されている。
そして、前記操作ロッド89はその外部に突出させられ
た側の端部が、前記クラッチレバー14へワイヤ等により
接続されており、このクラッチレバー14によって回転操
作されることにより、前記駆動カム91を回転させて、前
記従動カム92を操作板84とともに操作ロッド89から離間
する方向へ移動させ、これによって、作動リング83およ
び各クラッチ弁82をクラッチオフの位置に移動させるよ
うになっている。
このようにクラッチ弁82がクラッチオフの位置に移動
させられると、バルブシート81の両端部が開放されると
ともに、前記外側油路64がシリンダブロックBの外部へ
連通させられて、外側油路64の作動油が外部に排出され
る。
したがって、油圧モータMには高圧の作動油が供給さ
れなくなり、油圧ポンプPと油圧モータM間の動力伝達
は遮断され、クラッチオフ状態が得られる。
第3図において、前記トラニオン軸には、モータ斜板
35の角度を制御するための変速制御装置Vが連結され
る。
この変速制御装置Vは、パルスモータ、直流モータ等
のような正逆転可能の電動モータ(図示略)と、この電
動モータに連結される減速歯車群100と、この減速歯車
群100に連結されるボールナット機構101を備える。ボー
ルナット機構101は、ねじ軸102と、このねじ軸102に循
環ボール103を介して螺合するナット104とから構成され
ており、ねじ軸102は、減速歯車群100の出力歯車に連結
されるとともに、両端部をボールベアリング105・106を
介してケーシングCに回転自在に支承されている。ナッ
ト104は一側に連結腕107を有し、この連結腕107とモー
タ斜板ホルダ37の一側に前記トラニオン軸線02と平行に
装着された連結ピン108との係合により、ナット104とモ
ータ斜板ホルダ37とが相互に連結される。そして、この
ような連結により、ナット104は、ねじ軸102周りの回転
が阻止されている。
しかして、電動モータを正転させることによりねじ軸
102を正転させれば、ナット104が第3図における左側へ
移動し、連結腕107および連結ピン108を介してモータ斜
板ホルダ37をトラニオン軸線02周りに回動し、モータ斜
板35を起立させることができ、これと反対に電動モータ
を逆転させれば、ナット104が右動してモータ斜板35を
傾倒させることができる。
第3図および第4図において、出力軸18の中心部には
中心油路110が穿設され、その一端は前記ボルト56によ
り閉塞され、他端は入口として開放され、その入口に対
向するオイルフィルタ111が前記キャップ60に装着され
る。
中心油路110の入口は、ケーシングCに形成された油
路112を介して、ケーシングC底部の油溜113に連通され
ており、前記油路112の途中には、前記ポンプ斜板ホル
ダ31に固着された歯車114により駆動されるオイルポン
プ115が介装される。したがって、エンジンEの回転中
は常にオイルポンプ115により油溜113の油を中心油路11
0へ供給し続けることになる。
第10図に示すように、この中心油路110の中央部には
両端を開放した弁筒116が嵌装され、この弁筒116には、
出力軸18にその直径線上で圧入される固定ピン117が貫
通されており、この固定ピン117により弁筒116が出力軸
18に固定される。固定ピン117は、前記内側油路63に両
端が開放された中空部118、および、この中空部118を弁
筒118内に連通する複数個の連通孔119を有する。
したがって、中心油路110および内側油路63間は弁筒1
16および固定ピン117を介して連通される。
弁筒116の外面には、中心油路110の上流側および下流
側を連通する面取部120が形成されている。
また弁筒116内には、内側油路63から中心油路110への
油の逆流を阻止するための一対の第1逆止弁121が固定
ピン117を挟んで対称的に配設され、各逆止弁121は弁ば
ね122により常に閉弁方向に付勢される。
また、出力軸18およびシリンダブロックBには、弁筒
116より上流側の中心油路110と前記外側油路64とを結ぶ
一連の補給油路123が設けられ、この補給油路123の途中
には、外側油路64から中心油路110への油の逆流を阻止
する第2逆止弁124が介装され、この逆止弁124は弁ばね
125により常に閉弁方向へ付勢される。
さらに出力軸18には、中心油路110から変速機Tの各
部に潤滑油を供給するための半径方向のオリフィス孔12
6が適所に穿設される。
しかして、油圧ポンプPから油圧モータMを油圧駆動
する通常の負荷運転中に、両者間の油圧閉回路からの漏
油により、低圧側の内側油路63の圧力が中心油路110の
圧力よりも低下すると、第1逆止弁121が開いて中心油
路110から内側油路63に作動油が補給される。一方、こ
のとき、高圧側の外側油路64の作動油は第2逆止弁124
により中心油路110への流出を阻止される。
また、逆負荷運転時、すなわちエンジンブレーキ時に
は、油圧モータMがポンプ作用を行い、油圧ポンプPが
モータ作用を行うようになり、したがって外側油路64が
低圧に、内側油路63が高圧に変わるので、漏油により外
側油路64の圧力が中心油路110の圧力より低下すれば、
第2逆止弁124が開いて中心油路110から外側油路64へ作
動油が補給され、内側油路63から中心油路110への作動
油の流出は、前記両第1逆止弁121・121により阻止され
る。
また、中心油路110の油は、オリフィス孔126により流
量を制限されつつ変速機Tの各部に供給されるので、そ
の供給により中心油路110の圧力が過度に低下すること
はなく、したがって中心油路110から内側油路63および
外側油路64への作動油の補給に支承を来たすことはな
い。
シリンダブロックBには、第7図および第10図に示す
ように、外側油路64の油圧の過大上昇を防止する調圧弁
130が設けられる。
この調圧弁130は弁筒131、弁体132および弁ばね133か
らなっている。
弁筒131は、内外側油路63・64間の隔壁および外側油
路64の周壁に、それらを半径方向に貫通するよう圧入さ
れる。この弁筒131は、外側油路64に開口する横孔134
と、この横孔134および外側油路64間を連通する縦方向
の弁孔135と、この弁孔135より若干大径で横孔134から
弁孔135と反対方向へ延びる案内孔136と、この案内孔13
6に連なる大径のばね室137とを有する。
前記弁体132は、前記横孔134に臨むとともに弁孔135
に摺合する弁部132aと、案内孔136に摺合する弁杆部132
bと、案内孔136およびばね室137間の段部に当接し得る
フランジ状のストッパ部132cとを有し、そのストッパ部
132cは、ばね室137に収納された弁ばね133により前記段
部との当接位置に通常保持される。ばね室137は、弁体1
32の作動を妨げないように内側油路63と連通される。
しかして、弁部132aおよび弁杆部132b間の段差面には
外側油路64の油圧が加わり、弁体132に開弁力を与える
が、外側油路64の油圧が規定値以下にある通常の運転状
態では、前記開弁力よりも、弁体132を閉弁方向に付勢
する弁ばね133の力の方が大きいので、弁体132は閉弁状
態、即ち弁孔135を閉じた状態に保持される。外側油路6
4の油圧が規定値を上回ると、前記開弁力が弁ばね133の
力よりも増大するので、弁体132は弁ばね133を圧縮しつ
つ摺動して開弁し、即ち弁孔135を開き、外側油路64の
過大油圧を弁孔135を通してシリンダブロックB外へ放
出する。そして、外側油路64の油圧が規定値に戻ると、
弁ばね133の力で弁体132は再び閉弁状態に復帰する。し
たがって、車両の急発進、急加速時でも、外側油路64の
油圧の過大上昇が抑制される。
シリンダブロックBには、更に、内側油路63の油圧の
過大上昇を防止すべく、内側油路63および中心油路110
間を連通する絞り孔138が設けられる。したがって、急
激なエンジンブレーキ時でも、内側油路63の油圧が過度
に上昇することを迎えることができる。
第3図において、出力軸18と一体のフランジ47は、外
周に多数の歯139が刻設されて電動モータに兼用され、
その外周に対向するピックアップコイル140がケーシン
グCに螺着される。ピックアップコイル140は、出力軸1
8の回転に応じてパスルを発生し、これが電流または電
圧に変換されて図示しないスピードメータに車速として
表示されるか、または、車速信号として変速制御信号等
に用いられる。
このような構成を有する本実施例の斜板式油圧装置H
は、ポンプ斜板29やモータ斜板35に、ポンププランジャ
28やモータプランジャ34へ向かう凸部29aや凸部35aを形
成し、これらの凸部29a・35aが係合させられる凹部28a
・38aを各プランジャ28・34の端部に形成した構成とし
たから、特に、荷重の集中する各斜板29・35の各プラン
ジャ28・34との接触部分において肉厚が厚く、これによ
って各斜板29・35の剛性が十分に確保される。しかも、
斜板29・35の肉厚を厚くした分が、プランジャ28・34側
の凹部28a・38aによって相殺され、装置の出力軸18方向
への寸法拡大が抑制される。
あるいは、斜板29・35の剛性が向上させられることに
より、これらの斜板29・35およびその周辺の寸法設定の
自由度が大きくなり、これに伴い、斜板29・35まわりに
配設される構成部材、例えば、各斜板29・35の背面を支
承するアンギュラコンタクトベアリング30・36の寸法設
定や種類の選択の範囲が大幅に拡大される。
また、各斜板29・35とプランジャ28・34との当接位置
が、シリンダブロックB側へ移動させられることとな
り、これによって、各プランジャ28・34のシリンダブロ
ックBからの突出量が小さく、この結果、各斜板29・35
からプランジャ28・34に側圧が作用しても、この側圧に
起因した倒れ方向のモーメントが小さく抑えられ、各プ
ランジャ28・34の摺動抵抗の軽減が図られる。
また、各斜板29・35のプランジャ28・34との当接部分
の剛性の向上が図れるから、全体として見た場合、斜板
29・35の他の部分の剛性を低く抑えることが可能とな
る。そして、本実施例においては、斜板29・35の内径を
拡大することにより、出力軸18との干渉を避けて、これ
ら斜板29・35の傾動範囲の拡大が図られる。これによっ
て、各プランジャ28・34のストローク量を大きくして油
圧装置Hの特性変更が可能となり、特に、変速比を大き
くとれる。
さらに、各斜板29・35の傾動角度を一定とした場合に
おいては、各斜板29・35の最大傾斜位置における、これ
らの斜板29・35と出力軸18との間隔を大きくして、この
出力軸18の大径化が可能となり、前述した無段変速機T
においては、伝達トルクの増加が期待できる。
加えて、第3図から明らかなように、斜板29・35が最
も傾いた時に斜板29・35の最外側がプランジャ28・34の
最外側よりも内側となるため、径方向にも小型化するこ
とができ、よりコンパクトで軽量な装置を得ることがで
きる。
なお、前記実施例において示した各構成部材の諸形状
や寸法等は一例であって、設計要求あるいは装置の使用
態様の変化等に応じ種々変更可能である。
例えば、前記実施例においては、ポンプシリンダ26と
モータシリンダ32とをその外周部において溶接するに際
し、それぞれに円形のフランジ42・43を一体に形成して
おき、これら両フランジ42・43を全周に亙って溶接する
ようにしているが、これに代えて、ポンプシリンダ26お
よびモータシリンダ32の外周部を、第14図に示すよう
に、連絡油路67(68)やクラッチ孔80を避けた位置にお
いてくぼむような波形形状としておき、この形状に沿っ
て溶接を行うようにしてもよい。
このような接合により、各シリンダ26・32の一部を切
り欠いてその軽量化が図られ、かつ、溶接線が長くなっ
て溶接強度の向上が図られる。
そして、前述したような波形形状の外周部をビーム溶
接するには、溶接部分と溶接機との距離を常時一定に保
持して、溶接部分への照射エネルギを均一にすることが
必要である。
その一装置例を以下に示す。
第15図に示すように、支持構造物200に回転可能に支
持された取付軸201と、この取付軸201に一体に装着さ
れ、前記各シリンダ26・32の外周形状と同一の外周形状
有するカム板202と、取付軸201の一端部に装着された駆
動ギヤ203と、取付軸201の他端部に螺着された押圧部材
204および固定ナット205と、前記取付軸201の他端部に
おいてその軸線上で嵌合させられる心だし用のスピンド
ル206とからなる把持装置207に、前記カム板202の外周
面と摺接するカムフォロア208と、このカムフォロア208
をカム板202へ向けて付勢するプリング209とを備えた倣
い装置210を連設し、前記カム板202と押圧部材204との
間にシリンダブロックBをカム板202とを位置合わせし
た状態で挟持させるとともに、前記倣い装置210に溶接
機211を装着する。
これにより前記取付軸201を回転駆動するとともに溶
接機211から電子ビームをシリンダブロックBに向けて
照射することによって、前述した波形形状の外周面と溶
接機211との間隔が、倣い装置210によって一定に保持さ
れ、均一な溶接が可能となる。
さらに、前記実施例においては、シリンダブロックB
を回転軸方向に2分割した例について示したが、これに
代えて、第16図に示すように、3分割としてもよい。
この場合においても、内側油路63、外側油路64、各弁
孔64・65、ポンプポートa、モータポートb、および、
連絡油路67・68のそれぞれが、殆ど端面加工によって仕
上げられ、洗浄処理の後において3部材を溶接すること
により、切削くず等の残留しないシリンダブロックBが
得られる。
[発明の効果] 以上のように本発明に係わる斜板式油圧装置は、シリ
ンダと、このシリンダの中心線まわりに間隔をおいて配
設され、かつ、シリンダにその中心線と平行な軸線に沿
って摺動可能に嵌装された複数のプランジャと、前記シ
リンダの中心線と直交する軸線方向に傾斜して配置され
るとともに前記プランジャの外端部に直接当接させられ
る斜板とを備え、前記斜板の傾斜により前記複数のプラ
ンジャを往復動させて作動油の吐出および吸入を行うよ
うにした斜板式油圧装置において、前記斜板と前記各プ
ランジャとの当接部にて、プランジャ側に球面状の凹部
を形成すると共に、斜板側に球面状の凸部をそれぞれ形
成し、かつ斜板が最も傾いた時に斜板の最外側がプラン
ジャ最外側よりも内側となることを特徴とするもので、
プランジャのシリンダからの突出量を少なくしてその倒
れを抑制することにより、プランジャの摺動抵抗を軽減
することができる。
また、斜板側に球面状の凸部を形成することによっ
て、斜板の厚みを確保してその剛性を高め、或いは剛性
を一定とした場合には装置のコンパクト化を図ることが
できる。
さらに、斜板が最も傾いた時に斜板の最外側がプラン
ジャ最外側よりも内側となるように構成したので、径方
向にも小型化することができ、よりコンパクトで軽量な
装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
図面は本発明の一実施例を示すもので、第1図一実施例
が適用された静油圧式無段変速機を備えた自動二輪車の
平面図、第2図は第1図に示す自動二輪車の側面図、第
3図は静油圧式無段変速機の縦断平面図、第4図は縦断
側面図、第5図はシリンダブロックの縦断側面図、第6A
図は係止リングの正面図、第6B図は係止リングの縦断側
面図、第7図は第4図のVII-VII線断面図、第8図は第
4図のVIII-VIII線断面図、第9図は第4図のIX-IX線断
面図、第10図はシリンダブロックの中心部を示す拡大
図、第11A図は分配弁の拡大側面図、第11B図は第11A図
のXI-XI線断面図、第12図・第13図はそれぞれポンプシ
リンダとモータシリンダとの結合方法を説明するための
第5図と同様の図、第14図はポンプシリンダおよびモー
タシリンダの外形形状の変形例を示す正面図、第15図は
第14図に示す形状のポンプシリンダとモータシリンダと
の溶接装置を説明するための平面図、第16図はシリンダ
ブロックの他の変形例を示す要部の縦断平面図である。 M……油圧モータ(油圧装置)、P……油圧ポンプ(油
圧装置)、O1……トラニオン軸線、O2……トラニオン軸
線、26……ポンプシリンダ、27……シリンダ孔、28……
ポンププランジャ、28a……凹部、29……ポンプ斜板、2
9a……凸部、32……モータシリンダ、33……シリンダ
孔、34……モータプランジャ、34a……凹部、35……モ
ータ斜板、35a……凸部。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭53−53002(JP,A) 特開 昭62−48971(JP,A) 特公 昭51−14284(JP,B2)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】シリンダと、このシリンダの中心線まわり
    に間隔をおいて配設され、かつ、シリンダにその中心線
    と平行な軸線に沿って摺動可能に嵌装された複数のプラ
    ンジャと、前記シリンダの中心線と直交する軸線方向に
    傾斜して配置されるとともに前記プランジャの外端部に
    直接当接させられる斜板とを備え、前記斜板の傾斜によ
    り前記複数のプランジャを往復動させて作動油の吐出お
    よび吸入を行うようにした斜板式油圧装置において、前
    記斜板と前記各プランジャとの当接部にて、プランジャ
    側に球面状の凹部を形成すると共に、斜板側に球面状の
    凸部をそれぞれ形成し、かつ斜板が最も傾いた時に斜板
    の最外側がプランジャ最外側よりも内側となることを特
    徴とする斜板式油圧装置。
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