JP2546601B2 - 細長中空成形品の回転成形方法及びその装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は熱可塑性合成樹脂（以下
ＴＰＥと記す）又はプラスチック・アロイ（以下ＰＡと
記す）の液体又は粉末を用いて細長中空成形品を得るた
めの回転成形方法及びその装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、自動車のスポイラー、マネキン人
形の脚等の細長中空成形品を製造するために、ＴＰＥ又
はＰＡの液体又は粉末を用いて回転成形する、いわゆる
回転成形方法が広く実施されていた。

【０００３】この回転成形方法は、ＴＰＥの液体又は粉
末の所定量を金型内に充填し、金型を密閉し、金型を矩
形の金型枠体に装着して加熱炉内に搬入し、所定温度下
で所定時間、金型枠体をそのＸ軸（縦辺中央部）及びＹ
軸（横辺中央部）を中心としてそれぞれ回転させる方法
である。

【０００４】この回転成形方法を実施するための装置と
しては、金型を装着する金型枠体をＹ軸で回転自在に支
持するとともに、金型枠体をＸ軸で回転自在に支持する
内枠体を設け、Ｘ軸とＹ軸とを同時にそれぞれ所定の回
転をさせるようにしたものであった。この回転成形装置
は熱風を供給する加熱室または炉内に設置される。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の成形方法は、金型がＸ軸とＹ軸を中心として回転
（自転）するだけであるから、細長中空成形品におい
て、金型内のＴＰＥ又はＰＡの液体又は粉末の流動が緩
慢且つ変動的で、均一な肉厚の成形品を得ることが困難
であった。

【０００６】また、スポイラーの如く偏平な形状のもの
に至っては、金型内部の寸法が著しく異なるため、凝結
時間が異なり、その補助的操作として、内部に冷風を吹
き込んで冷却をしており、これとてもＴＰＥ又はＰＡの
液体又は粉末の性質により、条件の設定等が難しく、満
足な成形品を成形することは困難であった。

【０００７】かかる事情に鑑み、本発明は、金型内の樹
脂の流動軌跡が密で、しかも金型自体の回転力による樹
脂の遠心力を増加させる回転成形方法及びその装置を提
供する。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明に係る細長中空成
形品の回転成形方法は、熱可塑性合成樹脂又はプラスチ
ック・アロイの液体又は粉末の所定量を、金型内に充填
した後、金型を密閉して、加熱炉に搬入し、所定温度下
で所定時間、前記金型をＹ軸を中心として回転させると
ともに、Ｙ軸と平行するＹ′軸を中心として回転させ、
かつ、Ｘ軸を中心として回転又は揺動させることを特徴
とする。

【０００９】本発明に係る細長中空成形品の回転成形装
置は、回転駆動装置に連動するシャフトをコ字型の枠体
の中央部に連結し、該シャフトに嵌合するスリーブに歯
車を軸着し、該歯車と連動する歯車列を前記枠体に回転
自在に設け、前記枠体の左右両端部に軸支され前記歯車
列の一方を介して回転自在な内枠体を設け、該内枠体に
金型枠体を回転自在に軸支するとともに、該金型枠体を
前記歯車列の他方を介して回転自在にしたことを特徴と
する。

【００１０】

【作用】金型枠体はＸ軸とＹ軸を中心として自転しなが
ら公転をする。すなわち、Ｙ軸を中心とする金型枠体の
回転（自転）と、Ｘ軸を中心とする金型の回転又は揺動
（自転）と、さらに、Ｙ軸と平行するＹ′軸を中心とす
る金型の回転（公転）とを夫々所定時間与え、金型内の
樹脂の流動軌跡を密にし、しかも金型自体の回転力によ
る樹脂の遠心力を増加して成形する。

【００１１】

【実施例】以下本発明について詳述すると、例えば、 樹脂名：ポリプロピレン系複合材（ＰＡ粉末） 粘 度：３０〜５０メッシュ 比 重：０．９〜０．９８ 成形温度：４００〜４２０℃（加熱炉内雰囲気にて） これを成形するには金型内にこの材料の必要量を充填
し、金型を密閉して加熱炉に搬入し、加熱炉内で前記金
型を装着した金型枠体を、Ｙ軸を中心として自転させる
とともに、Ｙ′軸を中心として所定の円軌道を公転せし
め、かつ、Ｘ軸を中心として自転させるものである。

【００１２】金型はニッケル電鋳、アルミを主成分とす
るもの等、各種の金型を使用することができる。加熱炉
としては強制熱風循環加熱炉が好ましい。

【００１３】成形中においては、ＴＰＥ又はＰＡの液体
又は粉末材料が、金型の形状によって、金型内面のすべ
てにできるだけ均一に分布されることが望ましく、それ
には所定の温度、加熱時間に加え、材料に合った所定の
回転及び揺動をさせなければならない。なぜならば、金
型の回転及び揺動により材料の流れが著しく悪くなり高
品質の成形品が得られないからである。

【００１４】そこで、金型を回転させたり、所定の角度
範囲内で往復回転（揺動）させたりする装置について
は、図１から図３に示す回転揺動装置１が好適である。

【００１５】図１から図３に基づき回転揺動装置１につ
いて説明すると、２個の金型枠体２と、金型枠体２，２
を回転自在に支持する左右の内枠体３と、内枠体３，３
を回転自在に支持する外枠体４とからなり、金型枠体２
にはそれぞれ図示しない金型が装着されている。

【００１６】外枠体４はコ字型の枠体であって、中心部
にＸ軸であるシャフト５が固着され、そのシャフト５を
中心として全体が回転又は揺動できる。シャフト５はス
リーブ６の中を貫通し、駆動装置７の出力鎖車８とチェ
−ン９を介して連動する入力鎖車５ａを有して正逆回転
又は揺動ができるようになっている。

【００１７】スリーブ６は適宜の支持台３４に軸受３５
を介して回転自在に軸支されている。このスリーブ６に
入力鎖車６ａを軸着し、この入力鎖車６ａとチェーン９
ａにて連動可能に結ぶ出力鎖車８ａを有する駆動装置７
ａを別途に構成し、スリーブ６を単独で回転できる。し
かし、スリーブ６は回転させることなく、回転不能に支
持台３４に固定してもよい。

【００１８】スリーブ６には歯車１０を軸着してあり、
この歯車１０に噛合して連動回転可能な複数の歯車１
１，１２，１３，１４がそれぞれ回転自在に外枠体４の
半部に軸支され、他の半部には歯車１０に噛合する歯車
１５，歯車１５に噛合する歯車１６，歯車１６と同軸の
減速歯車１７，減速歯車１７と噛合する減速歯車１８，
減速歯車１８と同軸の歯車１９及び歯車１９と噛合する
歯車２０が連動回転可能に軸支されている。

【００１９】歯車１４，２０にはそれぞれ連動軸２１，
２２を固着し、連動軸２１，２２を外枠体４にそれぞれ
回転自在に支持し、それらの端部に傘歯車２３，２４が
軸着されている。傘歯車２３に噛合する傘歯車２５が一
方の内枠体３の中央部に固定される。また傘歯車２４に
噛合する傘歯車２６が他方の内枠体３の中央部に回転自
在に軸支される。

【００２０】内枠体３，３は、外枠体４の両端部に設け
た軸受２７，２７を介して回転自在に軸支されたＹ′軸
であるシャフト２８に固着されている。さらに、前記傘
歯車２６と一体に歯車２９を形成し、その歯車２９と噛
合する歯車３０，３１が内枠体３にＹ軸であるシャフト
３２，３３を介して回転自在に軸支されている。シャフ
ト３２，３３には金型枠体２がそれぞれ固定されてい
る。

【００２１】次に上記実施例の作用につき説明すると、
回転駆動装置７の出力鎖車８とチェ−ン９を介してシャ
フト５を正逆回転又は所定角度範囲内の往復回転をさせ
ると、外枠体４がシャフト５を中心として回転し、金型
枠体２，２はＸ軸を中心として回転（自転）する（図２
及び図３の矢示イ参照）。

【００２２】一方、スリーブ６を固定し又は駆動装置７
ａにて所望に回転させることにより、歯車１０を介して
歯車１１，１２，１３，１４が連動回転し、連動軸２１
が回転し、傘歯車２３，２５を介して内枠体３，３がシ
ャフト２８を中心として回転し、金型枠体２，２はＹ′
軸を中心として回転（公転）する（図２及び図３の矢示
ハ参照）。したがって、金型枠体２，２は図２及び図３
に示す円ホ内を回転する。

【００２３】さらに、歯車１０の回転に連動して歯車１
５，１６，１７，１８，１９，２０が回転し連動軸２２
が連動軸２１に対し所定の減速比で回転することによ
り、傘歯車２４，２６を介して歯車２９，３０，３１が
それぞれ回転し、金型枠体２，２はシャフト３２，３３
を中心として回転し、Ｙ軸を中心として回転（自転）す
る（図２及び図３の矢示ロ，ニ参照）。

【００２４】この成形に際し、加熱炉は予め、成形のた
めの所定温度、所定時間を夫々温調計及びタイマに設定
しておく。また、加熱炉に搬入された回転揺動装置１の
外枠体４，内枠体３，金型枠体２の夫々の回転及び揺動
数は成形材料の成形に最も適したものを予め設定してお
く。シャフト５の回転数、すなわち金型枠体２，２の回
転数は、歯車１７，１８を交換することにより、成形材
料による適正回転が得られる。

【００２５】上述の成形により、成形材料は金型内で図
４に示されている軌跡を描いて揺動し、従って、厚さの
均一な細長中空成形品を得ることができる。なお、図中
Ａは金型の長さを表す。

【００２６】上述の回転揺動装置１を使用して下記条件
で細長中空成形品を成形した結果、高品質のものを得る
ことができた。

【００２７】成形材料：ポリプロピレン系複合材（Ｐ
Ａ） 粉末粘度：７０〜５０メッシュ 比 重：０.９ 成形温度：４２０℃（熱風循環式加熱炉雰囲気温度に
て） 金 型：ニッケル、電鋳製厚さ３ｍｍ（平均値） 外枠体４の回転数：３.５回／分 内枠体３の回転数：５.８回／分 金型枠体２の回転数：９.７回／分 加熱時間：１５分 冷却方法：冷風吹き付け，冷水噴霧 冷却時間：２０分 成形品厚：２ｍｍ

【００２８】

【発明の効果】以上説明した本発明によれば、金型枠体
にＸ軸とＹ軸を中心とする二つの自転をさせるととも
に、Ｙ軸と平行なＹ′軸を中心とする公転をさせること
により、金型枠体に装着された金型内における樹脂の流
動軌跡が密となり、しかも、金型自体の回転力による樹
脂の遠心力を増加させるから、均等厚さの高品質の細長
中空成形品を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例を示す回転揺動装置の平面図。

【図２】回転揺動装置の右側面図。

【図３】回転揺動装置の左側面図。

【図４】成形材料の成形中における流動態様を示す模式
図。

【符号の説明】

１…回転揺動装置 ２…金型枠体 ３…内枠体 ４…外枠体 ５…シャフト ６…スリーブ ７…回転駆動装置 １０，１１〜１４，１５〜２０…歯車 ２１，２２…連動軸 ２３，２４，２５，２６…傘歯車 ３２，３３…シャフト

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 熱可塑性合成樹脂又はプラスチック・ア
   ロイの液体又は粉末の所定量を、金型内に充填した後、
   金型を密閉して、加熱炉に搬入し、所定温度下で所定時
   間、前記金型をＹ軸を中心として回転させるとともに、
   Ｙ軸と平行するＹ′軸を中心として回転させ、かつ、Ｘ
   軸を中心として回転又は揺動させることを特徴とする細
   長中空成形品の回転成形方法。
2. 【請求項２】 回転駆動装置に連動するシャフトをコ字
   型の枠体の中央部に連結し、該シャフトに嵌合するスリ
   ーブに歯車を軸着し、該歯車と連動する歯車列を前記枠
   体に回転自在に設け、前記枠体の左右両端部に軸支され
   前記歯車列の一方を介して回転自在な内枠体を設け、該
   内枠体に金型枠体を回転自在に軸支するとともに、該金
   型枠体を前記歯車列の他方を介して回転自在にしたこと
   を特徴とする細長中空成形品の回転成形装置。