JP2544239B2 - 血管拡張剤 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は血管拡張剤、養毛・育毛剤及び入浴剤、更に
詳細にはオトギリソウの抽出物を有効成分として含有す
る血管拡張剤、養毛・育毛剤及び入浴剤に関する。

〔従来の技術〕

従来、凍傷などの皮膚疾患や脱毛症などの毛髪の疾患
は当該部位の血行不良が発症原因あるいは増悪因子とし
て考えられており、これらの疾患の予防及び治療には様
々な血管拡張剤が用いられている。

〔発明が解決しようとする課題〕

しかしながら、従来の血管拡張剤の多くは、生体に投
与された場合に発疹、頻脈等の副作用があり、安全性の
面で問題があった。

したがって、副作用が無く、安全に使用できる血管拡
張剤の開発が望まれていた。

一方、古くからオトギリソウは、漢方医学においては
止血、収斂及び含嗽を目的として全草を煎用する内服薬
としての使用がなされており、また民間医学においては
その鮮葉及び茎の搾汁を創傷、打撲傷または痔などに塗
布する外用薬としての使用がなされている。

しかし、オトギリソウ又はその抽出物が血管拡張作用
及び養毛・育毛作用を育することはまったく知られてい
なかった。

〔課題を解決するための手段〕

斯かる実情において本発明者らは上記問題を解決すべ
く鋭意研究を行なった結果、オトギリソウの抽出物は高
い血管拡張作用及び養毛・育毛作用を有し、これを含有
させれば副作用が少なく、優れた血管拡張剤、養毛・育
毛剤及び入浴剤が得られることを見出し、本発明を完成
した。

すなわち、本発明はオトギリソウの抽出物を有効成分
として含有する血管拡張剤、養毛・育毛剤及び入浴剤を
提供するものである。

本発明の血管拡張剤、養毛・育毛剤及び入浴剤の有効
成分であるオトギリソウの抽出物は、例えば原料となる
オトギリソウの全草、あるいは葉、茎、根、果実、種
子、花のうちいずれか１ケ所又は２ケ所以上（以下「原
体」と略称する）を乾燥後又は乾燥せずに粉砕した後、
常温もしくは加温下で溶剤により抽出するか、あるいは
ソックスレー抽出器等の抽出器を用いて抽出することに
より得られる。

ここで用いられる溶剤としては水または有機溶媒が挙
げられるが、特に有機溶媒を用いることが好ましい。こ
れの有機溶媒の具体例としては、グレセリン、ポリエチ
レングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコ
ール類；これら多価アルコール類と水との混合液（好ま
しくは５〜30％水溶液）；アニオン界面活性剤水溶液、
ノニオン界面活性剤水溶液、両性界面活性剤水溶液；メ
タノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類；
これらアルコール類と水との混合液（10〜90％、好まし
くは20〜80％水溶液）；ヘキサン、ベンゼン、トルエ
ン、キシレン、石油エーテル等の炭化水素類；クロロホ
ルム、ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン等のハロ
ゲン化炭化水素類；ジエチルエーテル、テトラヒドロフ
ラン等のエーテル類；酢酸エチル、イソプロピルミリス
テート等のエステル類；流動パラフィン、ダイズ油、ゴ
マ油等の各種鉱物油、動物油、植物油、及びこれらの混
合物などが挙げられ、就中ヘキサン、アセトン、石油エ
ーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、クロ
ロホルム、ベンゼン等の溶媒が好ましい。

原体からの好ましい抽出方法の具体例としては、原
体を粉砕した後炭化水素類又は含水低級アルコール等の
溶媒で抽出し、溶媒を留去する方法；で得た抽出物
を、脱色等のため活性炭、ポリアミド樹脂、HP−20等の
ポリスチレン樹脂及びポリエチレンメタクリレート樹脂
から選ばれる一種又は二種以上で処理する方法；原体
を粉砕した後無水または含水の低級アルコール等の溶媒
で抽出し、次いで抽出物を含水低級アルコールと炭化水
素類等を用いる液−液抽出に付し、更に活性成分の移行
した炭化水素類相から溶媒を留去する方法；原体を粉
砕した後無水または含水の低級アルコール等の溶媒で抽
出し、次いで抽出物を酢酸エチル等の水と混和しない溶
媒と水を用いる液−液抽出に付し、更に有機相または水
相から溶媒を留去する方法；前記で得た水相をブタ
ノールと水を用いる液−液抽出に付し、更にブタノール
相から溶媒に留去する方法；前記又はにおいて、
液−液抽出を行う前又は行った後に、抽出液を活性炭、
ポリアミド樹脂、HP−20等のポリスチレン樹脂及びポリ
エチレンメタクリレート樹脂から選ばれる一種又は二種
以上で処理する方法；原体を粉砕した後適当な溶媒で
抽出し、次いで抽出相を、活性炭、ポリアミド樹脂、HP
−20等のポリスチレン樹脂及びポリエチレンメタクリレ
ート樹脂から選ばれる一種又は二種以上で処理して、活
性成分を吸着させ、次いでメタノール、エタノール、ア
セトン、又はこれらと水の混合液で活性成分を抽出し、
溶媒を留去する方法などが挙げられ、用途により、適宜
選択して用いることができる。なお、養毛・育毛の目的
には前記のの水相、のブタノール相及びで得られ
たものが好ましい。

これらの抽出物はそのままで本発明血管拡張剤、養毛
・育毛剤及び入浴剤の有効成分として用いることもでき
るが、当該抽出物を更に、適当な分離手段、例えばゲル
濾過法やシリカゲルカラムクロマト法あるいは逆相又は
順相の高速液体クロマト法により活性の高い画分を分画
してから用いることもできる。

本発明の血管拡張剤又は養毛・育毛剤は目的により全
身的又は局所的に、経口又は非経口で投与することがで
きる。

本発明の血管拡張剤又は養毛・育毛剤を経口薬として
用いる場合は、抽出物をそのままで投与することもでき
るが、通常経口製剤にて使用されている種々の剤形とす
ることによりさらに効果を高めることができる。これら
の剤形としては、錠剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、
カプセル剤等の固形製剤；乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シ
ロップ剤、エリキシル剤等の液剤；スプレー剤等の吸入
剤などが挙げられる。

本発明の血管拡張剤又は養毛・育毛剤が固形製剤の場
合には有効成分以外に、更に乳糖、マンニトール、ブド
ウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロー
ス、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アル
ミン酸マグネシウム等の不活性な希釈剤；ステアリン酸
マグネシウム等の潤滑剤；繊維素グルコン酸カルシウム
等の崩壊剤などを含有させることができる。また、錠剤
又は丸剤の場合は必要により白糖、ゼラチン、ヒドロキ
シプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセル
ロース、フタレート等の胃溶性あるいは腸溶性のフィル
ムを１層又は２層以上被覆することができる。更に、液
状製剤の場合には有効成分以外に、上述の不活性な希釈
剤；湿潤剤、懸濁剤等の補助剤；甘味剤、風味剤、芳香
剤、防腐剤などを含有させることができる。

また、本発明の血管拡張剤又は養毛・育毛剤を非経口
薬として用いる場合の代表的製剤としては、注射剤が挙
げられる。この場合、オトギリソウの抽出物を注射用蒸
留水、生理食塩水など水性媒体；プロピレングリコー
ル、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油；
エタノール等のアルコール類、ポリソルベート80などの
非水性媒体に溶解又は乳濁させれば注射剤が得られる。
本発明の血管拡張剤又は養毛・育毛剤が注射剤の場合に
は有効成分以外に、更に防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散
剤等の補助剤を含有させることもできる。また、注射剤
に要求される無菌化手段としては、バクテリア保留フィ
ルターを通過させる濾過方法、殺菌剤を配合する方法、
照射滅菌法等が挙げられる。これらの注射剤は初めから
注射剤の剤型としておくこともできるが、有効成分であ
るオトギリソウの抽出物を適当な方法により無菌の固体
組成物としておき、使用直前に無菌水又は無菌の注射用
溶媒に溶解して使用することも可能である。

また、非経口薬として用いる場合のその他の製剤とし
ては、外用液剤；軟膏、ローション、トニック、スプレ
ー、懸濁剤、乳剤等の塗布剤；坐剤、ペッサリーなどが
挙げられる。なお、養毛・育毛剤の剤型としては、特に
外用液剤、ローション、トニック、スプレー、軟膏が好
ましい。

また、錠剤、粉末剤、顆粒剤等の製剤とし、入浴剤と
して用いれば、本発明有効成分の血管拡張作用により、
優れた入浴効果が得られる。

これらの製剤には前記の有効成分以外に、更に蒸留
水；エタノール等の低級アルコール類；セタノール等の
高級アルコール類；ポリエチレングリコール、プロピレ
ングリコール等の多価アルコール類；ヒドロキシプロピ
ルセルロース等のセルロース類；動物性油脂；植物性油
脂、合成油脂；ワセリン、ロウ、シリコン、界面活性
剤；酸化亜鉛等の希釈剤；湿潤剤、懸濁剤、芳香剤、防
腐剤等の補助剤などを配合することができる。

本発明の血管拡張剤又は養毛・育毛剤の投与量は年
齢、体重、性別、症状、治療効果、投与方法、処理時間
などの種々の要因によって異なるが、有効成分であるオ
トギリソウの抽出物の量として、経口投与の場合は通常
大人１人当たり１回に1mg〜1g、特に20mg〜200mgの範囲
を１日１回〜数回に分けて投与することが好ましい。ま
た、非経口投与の場合は通常大人１人あたり１回に100
μｇ〜200mg、特に1mg〜10mgの範囲を１日１回〜数回に
分けて投与することが好ましい。更に、凍傷や凍そうの
治療・予防の場合には、オトギリソウの抽出物0.01〜10
％を外用基剤に混和したものを１日１回〜数回に分けて
塗布してもよい。また脱毛予防、養毛・育毛のために
は、オトギリソウの抽出物0.001〜10％外用基剤に混和
したものを１日１回〜数回に分けて塗布または噴霧して
もよい。

〔実施例〕

以下に参考例及び実施例を挙げて、本発明を更に説明
する。

参考例１ オトギリソウの全草500g（乾燥重量）を粉砕した後、
70％メタノール水溶液２を加え、50℃に加温して１週
間振盪した後、抽出液を濾過し、得られた濾液を試料１
とした。

参考例２ オトギリソウの全草500g（乾燥重量）を粉砕した後、
エタノール２を加え、室温にて１週間浸漬抽出した。
溶媒を留去し、残留物に90％メタノール水溶液0.5を
加えた後、ヘキサン0.4で３回（計1.2）液−液分配
した。ヘキサン層から溶媒を留去して得たヘキサン画分
を試料２とした。

参考例３ 参考例２で得た90％メタノール水溶液の溶媒を留去
し、残留物35.8gを得た。続いてこの残留物に水200mlを
加えた後酢酸エチル200mlで３回液−液分配を行い酢酸
エチル移行部を除去した後、ｎ−ブタノール150mlで３
回液−液分配を行った。ブタノール層から溶媒を留去し
て得たブタノール画分を5.4gを得、これを試料３とし
た。

参考例４ 参考例１で得た試料１の溶媒を留去して残留物45.3g
を得た。このうちの20.0gを50％エタノール水100mlに溶
したのち活性炭4.0gを加え、室温にて５時間攪拌したの
ち濾過を行い溶媒を留去し、残留物17.0gjを得た。続い
てこの残留物に水50mlを加え、合成吸着体ダイヤイオン
HP−20 250mlを水によって調製したカラムに通し、未吸
着部13.3gとメタノールによって溶出した吸着部2.9gを
得た。未吸着部を試料４、吸着部を試料５とした。

参考例５ 参考例１で得た試料１の溶媒を留去して残留物45.3g
を得た。このうちの20.0gを50％エタノール水100mlに溶
したのち活性炭4.0gを加え、室温にて５時間攪拌したの
ち濾過し残留物16.7gを得た。続いてこの残留物に水50m
lを加えイオン交換樹脂アンバーライトIRA−400 200ml
を水によって調製したカラムに通し、未吸着部12.5gを
得た。これを試料６とした。

実施例１ 血管拡張活性 （試験方法） 体重150〜200gのSD系雄性ラットをチオペンタールナ
トリウムにて麻酔し、開胸手術を行ない素早く正中大動
脈を取り出した。更にピンセット等による余分な結合組
織などを除いた後、１〜2mm長に切断した。この血管断
片を材料として等張性トランスジューサーを用いたマグ
ヌス法により、試験動物の血管拡張活性を測定した。す
なわち、血管断片を常法に従って生理的栄養液（PPS、
ヘペス緩衝液、pH7.4）中、酸素ガス通気下でしばらく
安定させた後、塩化カリウムの添加によって生じる血管
収縮反応に対する試料液の抑制効果を血管拡張活性とし
て測定した。

（結果） 高カリウム濃度（80mM）による脱分極性の最大血管収
縮に対する参考例２で調製した試料２の50％抑制活性作
用濃度（ID₅₀値）は、11.5μg/mlであった。

実施例２ 家兎耳介皮膚血流試験 （試験方法） 家兎耳介透明窓を用いた生体顕微鏡的皮膚微小循環観
察法（Asano M.et al,Bulletin of Institute of Publi
c Health 12,34,1963）により、参考例２で得られた試
料２の末梢血管拡張作用を調べた。

すなわち、浅野らの方法（Jounal of Bthnopharmacol
ogy,20,107,1987）に従って、耳介にアクリル製のチャ
ンバーを取り付けた体重約3kgの日本白色系雄性家兎を
１群６羽用い、アクリル製チャンバー周囲の皮膚上に、
参考例２で調製した試料２の５％エタノール溶液1.0ml
（試験液）を15分毎に３回塗布し、投与前後のチャンバ
ー内の細動脈血管径の変化を測定比較し、試験液の血管
拡張作用とした。

尚、試験開始前の細動脈の血管径を予め測定し、試験
液塗布２、４及び８時間後に同部位の血管径の測定を行
ない、６羽の増加率の平均から末梢血管拡張作用を比較
した。

（結果） 試験結果を下記第１表に示す。

以上の結果より、本発明血管拡張剤の有効成分である
オトギリソウの抽出物は極めて強い血管拡張作用を示し
た。特に試験液塗布４時間後よりそれまでの規則正しい
血管運動に乱れを生じながら血行促進効果を認め始め、
８時間後においてもその効果を維持していた。

実施例３ 養毛・育毛活性 （試験方法） 生後49日齢のC3H/HeNCrjマウス１群20匹の背部を電気
バリカンおよび電気シェーバーを用い、皮膚を傷つけな
いようシェービングし、翌日より参考例３で得られた試
料３の１％又は５％溶液（α−モノイソステアリルグリ
セリルエーテルを基剤とする溶液）をシェービング部位
に１日１回、塗布した。毛再生の測定は、シェービング
部位の写真を撮影した後、画像解析装置を用いてシェー
ビング部位および毛再生部位の面積を測定し、再生毛率
を測定した。

（結果） 試験結果を第１図に示す。以上の結果より、試料３塗
布群では、１％溶液、５％溶液とも塗布開始19日目から
コントロール群と比較して有意に毛再生を促進する作用
を認めた。

実施例４ 急性毒性試験 参考例１で得られた試料１をマウスに10g/kgを経口投
与しても死亡例は認められなかった。従って、本発明血
管拡張剤及び養毛・育毛剤の有効成分であるオトギリソ
ウの抽出物は極めて安全性の高いものである。

実施例５ 入浴剤 重曹42％、炭酸ナトリウム15％、コハク酸40％、オト
ギリソウ抽出物（参考例１）1.8％、デキストリン0.8
％、香料0.4％を混合して、１錠50gの入浴剤を作製し
た。

この入浴剤を150の浴湯に溶かして用いたところ、
入浴後の温感が強く、あたたまり感が高かった。

〔作 用〕

オトギリソウ抽出物中に含有される血管拡張作用及び
養毛・育毛作用を示す活性成分の同定は未だ成されてい
ないが、その活性成分は本発明における抽出操作によっ
て濃縮され、優れた血管拡張作用及び養毛・育毛作用を
示すものである。

〔発明の効果〕

本発明の血管拡張剤は優れた血管拡張作用を示しかつ
安全性も高いものであり、高血圧症、狭心症、心筋梗
塞、うっ血性心不全、凍傷、凍そう、冷え症、脱毛症等
の血液循環障害に起因する疾患の治療及び予防に有効な
ものである。

また、本発明によれば優れた養毛・育毛剤並びに入浴
剤も提供される。

【図面の簡単な説明】

第１図は試料３の１％溶液及び５％溶液の毛再生促進作
用を示す図面である。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 堀田 光行 栃木県河内郡上三川町上蒲生2166 (56)参考文献 特開 昭63−166815（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−236322（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−172907（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−240009（ＪＰ，Ａ)

Claims (7)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】オトギリソウの抽出物を有効成分として含
   有する血管拡張剤。
2. 【請求項２】抽出物がオトギリソウの葉、茎、根、果
   実、種子、花のうちいずれか１ケ所又は２ケ所以上から
   の抽出物である請求項１記載の血管拡張剤。
3. 【請求項３】抽出物が有機溶媒による抽出物である請求
   項１記載の血管拡張剤。
4. 【請求項４】オトギリソウの抽出物を有効成分として含
   有する養毛・育毛剤。
5. 【請求項５】抽出物がオトギリソウの葉、茎、根、果
   実、種子、花のうちいずれか１ケ所又は２ケ所以上から
   の抽出物である請求項４記載の養毛・育毛剤。
6. 【請求項６】抽出物が有機溶媒による抽出物である請求
   項４記載の養毛・育毛剤。
7. 【請求項７】オトギリソウの抽出物を有効成分として含
   有する入浴剤。