JP2538691B2 - プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法 - Google Patents

プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、半導体装置の製造などでマイクロ波プラ
ズマを利用してドライエッチングあるいはCVD(Chemica
l Vapor Deposition)による薄膜形成などの表面処理を
行うプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法に関し、
特にRFバイアス電圧を処理基板に印加して表面処理を行
うプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法に関する。
〔従来の技術〕
半導体装置を製造するために、基板にエッチングある
いは薄膜形成を行うプラズマ処理装置において、エッチ
ングの際には、エッチングの異方性,基板表面へのダメ
ージ,エッチングの加工速度を、また薄膜形成の際に
は、原子間の結合状態等の膜の組成,透水性等の膜質,
膜に与えられるストレス,段差被覆性(ステップカバレ
ージ)を、それぞれ任意に制御することが要求される。
しかしながら、これらの各条件を同時に満足する性能を
有する装置を実現することは容易ではない。近年、これ
らの条件を満たす可能性を有する装置の一つとして、EC
R(Electron Cycrotron Resonance)プラズマを用いた
マイクロ波プラズマ処理装置が注目されている。ECRプ
ラズマとは、磁場とマイクロ波との共鳴効果を用いて電
子を加速し、この電子の運動エネルギーを用いてガスを
電離してプラズマを発生させる原理に基づくものであ
る。マイクロ波に励振された電子は磁力線の周りを円運
動し、その際、遠心力とローレンツ力とがバランスする
条件を、ECR条件と呼んでいる。遠心力をmrω2,ローレ
ンツ力を−qrωBで表わすと、これらがバランスする条
件は、ω/B=q/mである。ここでωはマイクロ波の角周
波数、Bは磁束密度、q/mは電子の比電荷である。マイ
クロ波周波数は工業的に認められている2.45GHzが一般
に用いられ、その場合の共鳴磁束密度は875ガウスであ
る。
ECR型のプラズマエッチング,CVD装置においては、プ
ラズマの高密度化をはかり、効率のよいエッチングもし
くは薄膜形成を行うためには、プラズマを発生させるた
めにプラズマ生成室に導入するマイクロ波を、ピーク電
力の大きいパルス状にして加える必要がある。さらに、
エッチングにおいて、異方性の高い加工を行うためには
被加工基板とプラズマとの間にRFバイアス電圧を印加す
ることが行われる。なおRFとはRadio Frequencyのこと
であり、この分野では高周波とも呼ばれ、ほぼ50KHzな
いし数十MHzの範囲の周波数である。また薄膜形成にお
いてもエッチングの場合と同様にRFバイアス電圧を印加
することにより、基板表面の溝,穴などを緻密な膜で均
一に埋めることができ、また基板表面に段差がある場合
にも段差をなくし平坦な表面にすることが可能となる。
その理由は、プラズマが発生しているとき、基板表面
(もしくは基板表面に形成された薄膜の表面)には、プ
ラズマ中に存在する電子とイオンとの移動度の相違によ
り、いわゆる浮動電位が発生するが、RFバイアス電圧を
印加すると、この浮動電位の大きさを制御することがで
き、従って基板表面,薄膜表面に向かうイオンのエネル
ギーを制御できることにある。また、RFバイアス電圧を
印加した場合、基板に対して垂直方向の電界だけでなく
横方向にも電界が生じ、これが膜形成に効果的に作用す
ること、また電界の集中により基板表面のとがった部分
が削れ易くなることも、理由の一つとして考えられてい
る。
上記のようなECRプラズマエッチング,CVD装置とし
て、例えば第9図に示すものが知られている。この装置
の構成および動作の概要を以下に説明する。まず、プラ
ズマ生成室3,処理室9を図示しない排気手段により真空
排気しておき、ガス供給手段4から例えぱN2ガスをプラ
ズマ生成室3に流したところへ、マイクロ波発生器17で
発生したパルス状のマイクロ波を、その伝達手段である
導波管1を介してプラズマ生成室3へ導入する。前記導
波管1とプラズマ生成室3との間には、大気圧下にある
導波管1側と真空排気されたプラズマ生成室3とを気密
に隔離するための真空窓2を設けてある。プラズマ生成
室3の下部には中心に大口径の開口7を有する金属板が
取り付けられており、この金属板とプラズマ生成室3と
で半開放のマイクロ波共振器を構成している。この共振
器の外部には励磁用ソレノイド6が配置され、共振器内
にECR条件を満たす磁場を生じせしめて、共振器内にプ
ラズマを発生する。このプラズマが磁力線が形成する移
送路13に沿って処理室9内に押し出され、基板台10に向
う空間内にガス供給手段12から例えばモノシランガス
(SiH4)を供給して、このガスを前記プラズマにより活
性化すると、活性種が、RF発生器20によりRFバイアス電
圧を印加された被加工試料である基板11と反応して基板
表面に薄膜が形成される。なお基板11にRFバイアス電圧
を印加するための配線は接地電位のシールドで覆われて
おり、基板11の周面は接地電位のシールドで囲まれてい
る。
なおガス供給手段4からN2ガスの代りにエッチング用
ガスを供給することにより、この装置は基板のエッチン
グ加工用にも使用可能となる。
従来のこの種のECRプラズマエッチング,CVD装置にお
ける問題点は次のとおりである。すなわち、プラズマが
発生するのはマイクロ波がプラズマ生成室に導入されて
いる時のみである。従ってマイクロ波のパルス周期のう
ちマイクロ波が発生していない時はプラズマも発生しな
い。RFバイアス電圧を印加する際、プラズマが発生して
いる時はプラズマが負荷となるのでインピーダンスの整
合がとれ、基板上に適切な電圧を印加することが可能で
ある。しかしながらマイクロ波が発生しておらずプラズ
マも発生していない時は、RF発生器20からみて無負荷状
態となり、整合もとれない。一方プラズマが発生してい
る時に整合がとれるようにRFバイアス電圧を調整してお
くとプラズマの発生していない時は必然的に不整合とな
り、基板上に高電圧が印加される。この高電圧は約1KV
になる場合もあり、基板表面で放電が起き、基板表面に
クレーターが生じ破損する問題があった(第1の問題
点)。
また、プラズマ発生中には、前述のように基板表面に
は浮動電位が発生するが、この浮動電位はRFバイアス電
圧により制御されると共に、RFバイアス電圧が印加され
ている場合はプラズマのインピーダンス(供給されるマ
イクロ波の電力によりほぼ定まる)にも依存する。従っ
て、あるマイクロ波電力の下で、プラズマ中のイオンに
よる基板表面処理を行うにあたって、最適な浮動電位の
値(時間的平均値。プラズマ中のイオンは高周波である
RFには追従し難いので、RFバイアスが印加されている場
合は、浮動電位の時間的平均値が問題となる。)を得よ
うとすると、RFバイアス電圧の値(ピーク値)が、一義
的にある値に定められてしまう。一方、各種の処理にお
いて、このRFバイアス電圧によって制御される浮動電位
の最適値(平均値)と、その値をもたらすためのRFバイ
アス電圧自身の最適値(ピーク値)とは、一致しない場
合がある。即ち、RFバイアス電圧のピーク値を、最適な
平均値としての浮動電位を生じる値とすると、RFバイア
ス電圧のピーク値自身は不適切な値となる場合がある。
その結果、エッチングあるいはCVDを行う際の処理条件
を、所望の各種加工特性を同時に満足するものとするこ
とが困難で、処理の結果を制御し難いという問題があっ
た(第2の問題点)。例えば、薄膜形成において、膜質
に対しては、RFバイアス電圧のピーク値が最適値であっ
ても、膜に加わるストレスが大きくなり過ぎる場合があ
り、またエッチングにおいても同様に、異方性を向上さ
せるために最適なRFバイアス電圧のピーク値であって
も、プラズマ中のイオンのスパッタによる基板表面への
ダメージが大きくなるという場合がある。
そこで、前記第1の問題点および第2の問題点のう
ち、第1の問題点を解決するECRプラズマエッチング,CV
D装置として、第10図に示す構成の装置を同じ出願人よ
り特願昭63-275786に提案している。この装置の構成お
よび動作の概要を以下に説明する。
なお第9図と同一の部材には同一の符号を付し、その
説明を省略する。
第10図に示す装置においては、基板11へのRFバイアス
電圧の印加は、同期パルス発生回路22により、マイクロ
波のパルスと同期して行われ、マイクロ波のパルス周期
のうち、マイクロ波が発生していない時間区間ではRFバ
イアス電圧は基板に印加されない。
よってこの装置によれば、前記の第9図の装置におけ
る問題,即ち、基板上に継続的に高電圧が印加され、基
板表面で放電が起き、基板表面にクレータが生じ破損す
るという第1の問題点を解決することができる。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、第10図のECRプラズマエッチング,CVD
装置によっては、前記した第9図の装置における第2の
問題点を解決できない。この第2の問題点につき、さら
に詳細に説明する。
前述のように、プラズマが発生するのはマイクロ波が
プラズマ生成室に導入されている時のみであるので、マ
イクロ波のパルス周期のうち、プラズマが発生している
時のみRFバイアス電圧を印加して、プラズマを負荷とす
るインピーダンス整合をとり、基板に適切な電圧を印加
する。しかし、第10図の装置では、このときのRFバイア
ス電圧印加の時間幅はマイクロ波パルスの時間幅と同一
でかつ大きさも一定としており、所望の膜質を得るため
に例えば基板に印加するRFバイアス電圧を大きくしよう
とすると、マイクロ波パルスと同一の時間幅RF発生器か
ら高い電圧を出力しなければならない。しかしながら、
前述したように、RFバイアス電圧によって制御される浮
動電位の平均値としての最適値と、その値を生じせしめ
るためのRFバイアス電圧自身の最適のピーク値とは一致
しない場合がある。そのため、第10図に示す装置のよう
に、単にマイクロ波パルスと同一時間幅一定の大きさの
RFバイアス電圧を発生する構成では、所定の浮動電位を
生じるためには最適でもそれ目身最適値以上の大きさの
ピーク値を有するRFバイアス電圧を、必要以上に長時間
印加せねばならなくなり、その結果所望の各種加工特性
を同時に満足することができない。その具体的な一例
を、以下に説明する。
基板上に薄膜を形成する場合、例えば基板表面の段差
部におけるステップカバレージを改善するためには、印
加するRFバイアス電圧を大きくし、基板上に生じる浮動
電位の大きさをあるしきい値以上とし、イオンによるス
パッタ効果によって段差部側壁に薄膜を堆積させる必要
がある。しかしながら、RFバイアス電圧によって制御さ
れ、イオンに対してスパッタ現象を促す浮動電位の値
は、前述のように時間的な平均値であって、これに対し
実際に基板上に現れる電圧は、比較的大きな振幅(ピー
ク)を有する。このため、マイクロ波パルスと同一の時
間幅一定の大きさで印加されるRFバイアス電圧のピーク
値を、スパッタ効果を生じるために十分な浮動電位の値
(平均値)を生じるように大きな値とすると、プラズマ
と基板表面との間に存在するいわゆるシース内では、電
子,イオンの加速,減速がその時間幅中連続して繰り返
され、膜質や膜に加わるストレスの大きさが変化する。
従って、必要以上の長時間、大きな振幅のRFバイアス電
圧を印加すると、膜質,膜に加わるストレスが適切なも
のにならない場合が生じる。特に、窒化シリコンの薄膜
を形成する場合には、膜のストレスが過大になりやす
い。
この発明の第1の目的は、加工される基板表面に生じ
る浮動電位の平均値を所望の値に幅広く制御することが
でき、薄膜形成においては膜の組成,膜質,膜に加わる
ストレスを任意に制御可能で、またエッチングにおいて
は異方性,膜に対するダメージ,加工速度を任意に制御
可能なプラズマ処理装置を提供することにある。
この発明の第2の目的は、薄膜形成もしくはエッチン
グにおいて上記各特性を制御可能なプラズマ処理方法を
提供することにあり、特に薄膜形成において、膜の組
成,膜質,膜に加わるストレスを適切なものにした上
で、かつ良好なステップカバレージを実現可能とするに
好適な、プラズマ処理方法を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記第1の目的を達成するために、この発明によれ
ば、パルス状のマイクロ波発生手段であるマイクロ波発
生器と、該マイクロ波の伝達手段である導波管と、該導
波管と結合されて前記マイクロ波が導入されるととも
に、ガス供給手段を介して供給されたガスを前記マイク
ロ波との共鳴効果によりプラズマ化して活性な原子,分
子またはイオンを生ぜしめるための磁力線を発生する励
磁用ソレノイドを備え、かつ軸線が該ソレノイドが生じ
る磁力線束の中心軸と一致する開口を前記マイクロ波を
伝達する導波管と対向する側に有するプラズマ生成室
と、該プラズマ生成室と前記開口を介して結合され該開
口から前記磁力線に沿って流出する前記活性な原子,分
子またはイオンにより表面にエッチングが施されまたは
薄膜形成される基板が配される処理室と、該基板にRFバ
イアス電圧を印加するためのRF発生手段であるRF発生器
と、前記プラズマ生成室と前記処理室との排気を行う真
空排気系とを備えたプラズマ処理装置において、該プラ
ズマ処理装置にさらに、前記RFバイアス電圧に加えてDC
バイアス電圧を印加するためのDC発生手段と、前記パル
ス状のマイクロ波と前記RFバイアス電圧ならびに前記DC
バイアス電圧の発生時期を同期させるための同期手段
と、前記RFバイアス電圧と前記DCバイアス電圧とを干渉
なく基板に印加するための混合手段とを備えしめるもの
とする。
また、上記第2の目的を達成するために、この発明に
よれば、直流磁界が生じている真空容器内にパルス状の
マイクロ波を導入して前記直流磁界と前記マイクロ波と
の共鳴効果により前記真空容器内に導入されたガスをプ
ラズマ化し、該プラズマを前記直流磁界に沿って移送し
つつ、該移送路に配されRFバイアス電圧が印加される基
板にエッチングを施しあるいは薄膜を形成するプラズマ
処理方法において、前記パルス状のマイクロ波に同期し
て前記基板に前記RFバイアス電圧を印加するとともに、
前記マイクロ波のパルス幅内で前記RFバイアス電圧の大
きさを予め設定された時間変化に従って変化させつつ表
面処理を行うものとする。
〔作用〕
基板に対し、RFバイアス電圧とDCバイアス電圧とを同
時に印加することにより、処理条件を所望の条件に一致
させることができるばかりでなく、処理条件の幅を広げ
ることも可能になる。すなわち、基板はバイアス電圧を
印加された場合、基板上の電荷の総量が零になるような
電位を示す。そこで、まず、基板にRFバイアス電圧のみ
を印加した場合、基板に到達する正電荷粒子と負電荷粒
子との移動度の差により基板上に電荷が蓄積されようと
しても、基板の振動電位波形の中心がこの蓄積を零とす
るように移動する。この中心電位,即ち浮動電位はRFバ
イアス電圧の大きさにより異なり、またRFバイアス電圧
が印加されているのでプラズマのインピーダンスにも依
存する。このようにして浮動電位が決まる基板に対し、
さらにDCバイアス電圧を印加すると、このDCバイアス電
圧がかかった状態で蓄積電荷が零となるように基板電位
がさらに移動する。従って、DCバイアス電圧,RFバイア
ス電圧それぞれの大きさを独立に変えることにより浮動
電位の値を幅広く制御可能となり、その結果、成膜ある
いはエッチング時の処理条件を拡げることができる。
即ち、RFバイアス電圧によって浮動電位を制御した場
合、基板の処理に携わるイオンが感じる浮動電位は時間
的平均値であるが、基板表面には、例えば大きな振幅
(ピーク)を有するRFバイアス電圧が印加されている。
各種の加工特性に対し、前述したように、RFバイアス電
圧の最適値(ピーク値)とRFバイアス電圧の印加による
浮動電位の最適値(平均値)とは一致しない場合がある
ので、この大きなピークを有するRFバイアス電圧のため
に、膜質等が悪影響を受ける場合がある。しかし、DCバ
イアス電圧をも同時に印加すれば、DCバイアス電圧独自
の作用により、上記浮動電位の平均値をRFバイアス電圧
とは独立してシフトすることができる。よって、RFバイ
アス電圧としてピークの小さな値のものを印加するだけ
で、大きなピークを有するRFバイアス電圧を印加した場
合と同等な浮動電位(平均値)を生じせしめることがで
きる。また逆に、大きなピーク値を有するRFバイアス電
圧を印加したいときに、浮動電位の値(平均値)を小さ
くすることもできる。従って、浮動電位の平均値とRFバ
イアス電圧のピーク値との両方を、同時に、最適値とす
ることができる。
さらに、パルス状マイクロ波との同期をRFバイアス電
圧のみとし、DCバイアス電圧を連続して基板に印加した
場合には、プラズマが発生していないとき、RFバイアス
電圧を印加した場合と同様、基板電位が移動し、DCバイ
アス電圧の大きさによって基板表面の破損もありうる。
このため、基板に印加するDCバイアス電圧の大きさが制
限され、処理条件の幅が小さくなるという問題が生じる
が、本発明においては、RFバイアス電圧とDCバイアス電
圧とを共にパルス状のマイクロ波と同期して印加し、プ
ラズマ生成室内にプラズマが存在していないときにはRF
バイアス電圧もDCバイアス電圧も基板には印加されない
ので、基板表面が破損することがない。
次に、基板に印加するRFバイアス電圧をパルス状のマ
イクロ波に同期して発生させるとともに、マイクロ波の
パルス幅内でRFバイアス電圧の大きさを予め設定された
時間変化に従って変化させつつ表面処理を行う表面処理
方法とすることにより、基板上の放電を防止しつつ処理
条件の幅を広げることができる。すなわち、成膜などの
ときに、十分な浮動電位(平均値)を得るためにピーク
の大きいRFバイアス電圧を供給したくとも、RFバイアス
電圧印加可能な条件では十分な浮動電位が得られず、求
める膜質が得られない場合がでてくる。このようなと
き、マイクロ波のパルス幅よりもピーク値の時間幅が短
いRFバイアス電圧を印加すると、平均電力を大きくする
ことなくピーク値の高いRFバイアス電圧を印加すること
ができ、例えばサブミクロン幅の溝の側面への緻密な膜
形成を妨げている,溝の入口を塞ぐように溝入口の面に
堆積している薄膜物質を構内へスパッタし、RF発生器か
らの平均電力を増大させることなく膜質を向上させるこ
とができる。
即ち、前述したように、溝内の側面,即ち段差部側壁
にも薄膜をステップカバレージを良好に堆積させるため
には、印加するRFバイアス電圧をピークの大きなものと
し、浮動電位の時間的平均値を大きくして、イオンによ
るスパッタ効果を増大せしめる必要がある。しかし、ス
パッタ効果は、あるしきい値以上の加速電圧(この場合
では浮動電位が加速電圧に相当する)で加速されたイオ
ンでなければ生じない。このしきい値電圧はスパッタさ
れる物質によっても異なるが、数十V程度である。この
スパッタ効果が十分に期待できる大きさのRFバイアス電
圧を連続して基板に印加した場合には、膜に加わるスト
レスが問題となってくる場合がある。しかしながら、上
記のように、RFバイアス平均電力を低く抑え、短時間の
みその短時間の浮動電位の時間的平均値が大きくなるよ
うに、RFバイアス電圧のピーク値を大きくすれば、スト
レスの問題を生じることなく、十分なスパッタ効果を実
現することができる。
このようにして、この発明の方法によれば、基板表面
を破損することなく、またRF電力平均値を増大させるこ
となく膜質を自由に制御することができ、処理条件の最
適化が容易に可能となる。
〔実施例〕
本発明に基づいて構成されるプラズマ処理装置である
ECR型プラズマエッチング,CVD装置の一実施例を第1図
に示す。ここで従来の構成例である第10図と同一の部材
には同一の部番を付して説明を省略する。図において、
パルス状のマイクロ波とRFバイアス電圧ならびにDCバイ
アス電圧の発生時期を同期させるための同期手段40は、
同期パルス発生回路22とパルス信号伝達手段31とから成
っている。第2図に同期パルス発生回路22のブロック図
を示す。発振回路221で100Hz程度の周波数で交流を発生
させ、これをパルス化回路222で矩形波にする。この矩
形波を、電流増幅機能を有しオペアンプやICからなる出
力バッファ223を通してパルス信号伝達手段31によりマ
イクロ波発生器17に伝達してマイクロ波を発生させると
ともにこの矩形波をRFバイアス変調回路23およびDCバイ
アス変調回路33に入力し、これら変調回路22,33の出力
により所望の波形,ここでは大きさを有するRFバイアス
電圧およびDCバイアス電圧をそれぞれRF発生器20および
DC発生器32から前記マイクロ波と同時に出力させる。RF
バイアス変調回路23とDCバイアス変調回路33とはいずれ
も第3図に示す回路構成を有し、前記矩形波をトリガ回
路27に入力することによりバイアス変調回路が起動さ
れ、設定回路28にあらかじめ設定されたデータを変調回
路29から電気信号として出力回路30を介してそれぞれ後
段のRF発生器20およびDC発生器32に入力し、RF発生器2
0,DC発生器32からそれぞれ所望波形,ここでは所望の大
きさのバイアス電圧を前記マイクロ波と同時に発生させ
てRF・DCバイアス混合回路41に入力する。
RF・DCバイアス混合回路41は例えば第4図(a)に示
すような,入力側の端子41aがDC発生器32の出力端子に
接続され出力側の端子41bがこの回路の入力端子41cを介
してRF発生器20の出力端子に接続されるインダクタンス
L1、あるいはインダクタンスL1の代わりに、例えば同図
(b)に示すように、RF波の周波数と共振する,インダ
クタンスL2とコンデンサC2とからなる並列共振回路とし
て構成され、DCバイアス電圧とRFバイアス電圧とを干渉
なく基板に導く役目を果たしている。
上記の構成を採用した結果、本実施例のプラズマ処理
装置におていは、RFバイアス電圧とDCバイアス電圧とを
独立に制御可能となり、RFバイアス電圧のピーク値とは
独立に浮動電位の平均値を制御することができる。
次に第5図に本発明のプラズマ処理方法を可能にする
マイクロ波プラズマ処理装置構成の一実施例を示す。第
5図において第10図と同一の部材には同一符号を付して
説明を省略する。
基板11へのRFバイアス電圧の印加を、パルス状マイク
ロ波と同期させるための同期パルス発生回路22は、第2
図と同様の構成を有しており、矩形波を出力バッファ22
3を通してマイクロ波発生器17とRFバイアス変調回路23
とに伝達し、RFバイアス変調回路23からは大きさが予め
設定された時間変化に従って変化する電圧を出力してRF
発生器20に入力し、RF発生器20から、入力された時間変
化に従って大きさが変化する,変調されたRF電圧を出力
させる。RFバイアス変調回路23は、第6図のブロック図
に示すように、トリガ回路27と、変調信号発生回路28a
と、変調回路29と、出力回路30とからなり、前記同期パ
ルス発生回路22から出力された矩形波をトリガ回路27に
入力することにより変調信号発生回路28aがマイクロ波
パルスと同期して起動され、大きさが予め設定された時
間変化に従って変化する信号電圧が変調回路29に入力さ
れ、変調回路29で成形された波形が電流増幅機能を持つ
出力回路30を介してRF発生器20に入力され、RF発生器20
から前記マイクロ波のパルスと同期して大きさが予め設
定された時間変化に従って変化するRF電圧が出力され
る。なお、第6図に示したRFバイアス変調回路は、第3
図に示したものとは多少異なっており、変調信号発生回
路28aの機能により、RF電圧の波形をより複雑なものに
することができる。
第7図および第8図にRF発生器20からマイクロ波パル
スと同期して出力されるRF電力の時間変化の例を示す。
第7図は、効率のよいエッチングあるいは薄膜形成の
ための,ピーク電力の大きいパルス状マイクロ波と同期
して、マイクロ波パルス1周期中のマイクロ波の発生し
ている時間区間、所定の成膜レートに必要なRF電力のベ
ース部分P0が短時間ピーク電力P1に変化する電力をRF発
生器20(第5図)から出力して基板表面に薄膜を形成す
る場合を示す。波高値の高いピーク電力P1(スパッタ効
果を生じうる値)が出力されると、基板11には高いRFバ
イアス電圧が印加され、よってピーク電力P1ガ出力され
ている時間内においては基板上の浮動電位も大となる。
これにより、基板表面に段差すなわち凹凸があり、例え
ば凸部の面で横方向に張り出して堆積した薄膜物質が、
プラズマ中に合まれるイオンもしくはイオンに促されて
加速された活性種によりスパッタされ、つづく凹部およ
び側壁部への成膜が凸部の堆積物質に妨げられることな
く行われ、RF発生器20から出力される平均電力を増大さ
せることなく凹凸部および側壁部の全面に膜厚が均一で
ステップカバレージが良好な薄膜を形成することができ
る。即ち、スパッタ効果が十分に期待できる浮動電位を
生じせしめるRFバイアス電圧を、連続して基板に印加し
た場合に、膜に加わるストレスの問題が特に顕著だった
窒化シリコン膜(絶縁膜の一つであり、パッシベーショ
ン膜などとして用いられる)の形成も、本発明の方法を
採用した結果、容易に可能となる。また、基板11へのRF
バイアス電圧の印加は、マイクロ波が発生している時間
区間内で行われるから、RF発生器側とプラズマ側とのイ
ンピーダンス不整合に基づく高電圧が基板表面に現れる
ことはなく、基板表面の放電も発生しないため基板表面
の破損が生じることもない。
第8図は、マイクロ波パルス1周期中マイクロ波が発
生している時間幅内で発生させるRF電力が傾斜して立上
がり、時間とともに緩やかに減衰する時間変化とした場
合を示す。このような時間変化とすることにより、第5
図には特に図示じていないが、基板台10とRF発生器20と
の間に介在するDCカット用のコンデンサによる時間変化
のだれ等に起因するRFバイアス電圧の不均一性を防ぎ、
ばらつきのない成膜条件で成膜することができる。
〔発明の効果〕
以上に述べたように、本発明によれば、ECR型プラズ
マエッチング,CVD装置の構成を、RFバイアス電圧に加え
てDCバイアス電圧を印加するためのDC発生手段と、パル
ス状のマイクロ波とRFバイアス電圧ならびにDCバイアス
の発生時期を同期させるための同期手段と、RFバイアス
電圧とDCバイアス電圧とを干渉なく基板に印加するため
の混合手段とを備えた構成とし、基板に対し、RFバイア
ス電圧とDCバイアス電圧とをパルス状マイクロ波と同期
して印加するようにしたので、RFバイアス電圧,DCバイ
アス電圧共に、マイクロ波がプラズマ生成室に導入され
ていてプラズマが発生しているときにのみ基板に印加さ
れ、基板表面の破損が防止されるとともに、RFバイアス
電圧とDCバイアス電圧とのそれぞれの大きさを独立に調
整することにより基板に生じる浮動電位を任意に制御す
ることができ、基板に薄膜を形成し、あるいはエッチン
グを施すときの処理条件を幅広く変えることが可能にな
り、最適条件での基板処理が可能となる効果が得られ
る。よって薄膜形成においては、膜の組成,膜質,膜に
加わるストレス等を、同時に所望の特性に制御できる。
またエッチングにおいては、異方性,膜に加わるダメー
ジ,加工速度を、同時に任意に制御できる。
また、本発明によれば、直流磁界が生じている真空容
器内にパルス状のマイクロ波を導入して直流磁界とマイ
クロ波との共鳴効果により真空容器内に導入されたガス
をプラズマ化し、このプラズマを直流磁界に沿って移送
しつつ、移送路に配されRFバイアス電圧が印加される基
板にエッチングを施しあるいは薄膜を形成するプラズマ
処理を、パルス状のマイクロ波に同期して基板にRFバイ
アス電圧を印加するとともに、マイクロ波のパルス幅内
でRFバイアス電圧の大きさを予め設定された時間変化に
従って変化させつつ表面処理を行うプラズマ処理方法と
したので、基板表面に継続的に高電圧が印加されること
がなくなり、最適なRFバイアス電圧を基板に印加してエ
ッチングあるいは薄膜形成を行うことが可能となり、ま
た、RF発生器から出力される平均電力を増大させること
なく、目的とする膜質形成に対応した時間変化のRFバイ
アス電圧を基板に印加して膜質制御を幅広く行うことの
できる表面処理が可能となる。
よって本発明のプラズマ処理方法によれば、膜質や膜
に加わるストレスを所望の特性を確保した上で、スパッ
タ効果によって、良好なステップカバレージを有する薄
膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例になるDC発生器,同期手段等
を備えたプラズマ処理装置の構成図、第2図は同期手段
を構成する同期プラズマ発生回路の構成を示すブロック
図、第3図はRFバイアス変調回路,DCバイアス変調回路
の回路構成を示すブロック図、第4図はRF・DCバイアス
混合回路の構成例を示す回路図、第5図は本発明のプラ
ズマ処理方法を可能にするマイクロ波プラズマ処理装置
構成の一実施例を示す装置構成図、第6図は第5図にお
けるRFバイアス変調回路の回路構成を示すブロック回路
図、第7図および第8図はそれぞれパルス状マイクロ波
と同期してRF発生器から出力されるRF電力の時間変化を
例示する線図、第9図は従来のRFバイアス電圧印加型プ
ラズマ処理装置の構成図、第10図は本願出願人が先に提
案しているマイクロ波プラズマ処理装置の装置構成図で
ある。 1:導波管(マイクロ波伝達手段)、3:プラズマ生成室、
6:励磁用ソレノイド、9:処理室、11:基板、13:移送路、
17:マイクロ波発生器(マイクロ波発生手段)、20:RF発
生器(RF発生手段)、22:同期パルス発生回路、23:RFバ
イアス変調回路、32:DC発生器(DC発生手段)、33:DCバ
イアス変調回路、41:RF・DCバイアス混合回路(混合手
段)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−129375(JP,A) 特開 平1−149965(JP,A) 特開 平1−298165(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】パルス状のマイクロ波発生手段と、該マイ
    クロ波の伝達手段と、該マイクロ波伝達手段と結合され
    て前記マイクロ波が導入されるとともに、ガス供給手段
    を介して供給されたガスを前記マイクロ波との共鳴効果
    によりブラズマ化して活性な原子,分子またはイオンを
    生ぜしめるための磁力線を発生する励磁用ソレノイドを
    備え、かつ軸線が該ソレノイドが生じる磁力線束の中心
    軸と一致する開口を前記マイクロ波伝達手段と対向する
    側に有するプラズマ生成室と、該プラズマ生成室と前記
    開口を介して結合され該開口から前記磁力線に浴って流
    出する前記活性な原子,分子またはイオンにより表面に
    エッチングが施されまたは薄膜が形成される基板が配さ
    れる処理室と、該基板にRFバイアス電圧を印加するため
    のRF発生手段と、前記プラズマ生成室と前記処理室との
    排気を行う真空排気手段とを備えたプラズマ処理装置に
    おいて、前記RFバイアス電圧に加えてDCバイアス電圧を
    印加するためのDC発生手段と、前記パルス状のマイクロ
    波と前記RFバイアス電圧ならびに前記DCバイアス電圧の
    発生時期を同期させるための同期手段と、前記RFバイア
    ス電圧と前記DCバイアス電圧とを干渉なく前記基板に印
    加するための混合手段とを備えることを特徴とするプラ
    ズマ処理装置。
  2. 【請求項2】直流磁界が生じている真空容器内にパルス
    状のマイクロ波を導入して前記直流磁界と前記マイクロ
    波との共鳴効果により前記真空容器内に導入されたガス
    をプラズマ化し、該プラズマを前記直流磁界に沿って移
    送しつつ、該移送路に配されRFバイアス電圧が印加され
    る基板にエッチングを施しあるいは薄膜を形成するプラ
    ズマ処理方法において、前記パルス状のマイクロ波に同
    期して前記基板に前記RFバイアス電圧を印加するととも
    に、前記マイクロ波のパルス幅内で前記RFバイアス電圧
    の大きさを予め設定された時間変化に従って変化させつ
    つ表面処理を行うことを特徴とするプラズマ処理方法。
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