JP2537729Y2 - 糸条巻取用ボビン - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、紙製の円筒状の本体に
糸条の端部を係止するスリットを形成した糸条巻取用ボ
ビン、特にその巻取り作業を複数回行なうものに関す
る。

【０００２】

【従来の技術】従来、糸条（例えばタイヤ補強コード）
が生産される場合、その糸条は所定の大きさの糸条巻取
用ボビンに巻取られ製品となり、ユーザに納入されてい
る。この種の糸条巻取用ボビンは、紙製の円筒状の本体
の一端部に周方向に延在するスリットを形成したものと
なっており、この糸条巻取用ボビンを回転させた状態で
前記スリットに糸条をくい込ませ、糸条の端部をスリッ
ト内に係止した後、その糸条をトラバースすることで糸
条巻取用ボビンの所定の巻取り領域に糸条が巻取られる
ようになっている。

【０００３】また、スリットの一部に略Ｖ字形断面の案
内溝部を形成し、スリットへの糸条の導入及びくい込み
の成功率を高める工夫をしたものが知られている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来の糸条巻取用ボビンにあっては、紙製の円筒状
の本体のスリットに糸条をくい込ませて糸条の端部を糸
条巻取用ボビンに係止するため、糸条巻取用ボビンを繰
り返し使用する場合、例えば５〜10回使用すると、スリ
ットが部分的（案内溝の谷部から比較的新しいボビンに
対し糸条がくい込むスリットの所定深さまで）に拡幅し
たり滑り易くなったりして、案内溝によりスリット内に
案内される糸条がスリットに引っ掛かり難くなり、糸条
の端部をスリットに係止する糸掛け作業の成功率が著し
く低下していた。このため、糸条巻取用ボビンの耐用寿
命が短くなり、コスト高を招いていた。

【０００５】そこで本考案は、スリットへの糸の引っ掛
かりを確実にすることにより、繰り返しの使用に対して
も糸掛け作業を確実に行なうことのできる糸条巻取用ボ
ビンを提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記目的達成のため、本
願考案は、紙製の円筒状の本体の外周面部に、糸条を案
内する略Ｖ字形断面の案内溝と、該案内溝の谷部および
前記外周面に開口し案内溝から導入された糸条を係止す
る周方向スリットと、を形成した糸条巻取用ボビンにお
いて、前記案内溝のうち少なくともその谷部の糸条巻取
り方向後方側を覆うように剥ぎ取り可能な両面接着シー
トを設けたことを特徴とするものである。

【０００７】

【作用】本考案では、案内溝のうち少なくともその谷部
の糸条巻取り方向後方側を覆うように剥ぎ取り可能な両
面接着シートが設けられるから、糸条が案内溝内に導入
されると、その糸条が両面接着シートに付着するととも
に巻取りの張力によって両面接着シートを周方向スリッ
ト内に押し込むことになり、糸条の周方向スリットへの
引っ掛かりがきわめて強くなる。したがって、繰り返し
使用した糸条巻取用ボビンであっても、糸掛けの成功率
が著しく向上する。また、再使用時には、必要に応じ両
面接着シートを剥ぎ取って交換するだけで、高い糸掛け
成功率が確保されるから、糸条巻取用ボビンの耐用寿命
が長くなり、生産コストの低減が可能になる。

【０００８】

【実施例】以下、本考案の実施例を図面に基づいて具体
的に説明する。図１、図２は本考案に係る糸条巻取用ボ
ビンの一実施例を示す図である。まず、構成を説明す
る。図１において、10は所定の紙素材から円筒状に形成
された比較的硬質の紙製の円筒状の本体（以下、単に本
体ともいう）であり、本体10の一端側の外周面部10ａに
は案内溝11および周方向スリット12が形成されている。
この本体10は、従来の糸条巻取用ボビンを巻取り作業に
使用したもの（例えば製品としてユーザに複数回納入さ
れたリサイクル品）あるいは未使用のもので、案内溝11
および周方向スリット12を形成した糸掛け領域Ａと、巻
取り領域Ｂと、糸掛け領域Ａおよび巻取り領域Ｂの間に
設けられたピッグテール形成領域Ｃとを有する。そし
て、糸条１は、糸掛け領域Ａで周方向スリット12に先端
部を食い込ませて係止され、ピッグテール形成領域Ｃで
数巻きのピッグテールが形成された後、図示しないトラ
バースガイドの移動と円筒状の本体10の回転に伴って巻
取り領域Ｂに巻取られる。

【０００９】図２に示すように、案内溝11は糸条１の先
端部を案内する略Ｖ字形断面の溝で、本体10の円周方向
所定領域に形成されている。周方向スリット12は本体10
の外周面10ａおよび案内溝11の谷部11ａに開口するよう
に案内溝11より鋭い略Ｖ字形断面で谷部11ａよりも深く
形成されており、案内溝11から導入された糸条１を更に
内部にくい込ませることで糸条１を係止するようになっ
ている。なお、本体10として既に巻取りに使用されたこ
とのある糸条巻取用ボビンを用いる場合、周方向スリッ
ト12の開口側の溝幅は部分的に略Ｖ字形から糸条１のく
い込んだ形に変形し、そのくい込み部のスリット内壁面
は糸条が滑り易いものとなっている。

【００１０】一方、円筒状の本体10の糸掛け領域Ａに
は、両面接着シート21が貼り付けられている。この両面
接着シート21は、通常市販されている両面接着テープを
案内溝11の溝長さに対応する適宜長さに切断したもの
で、案内溝11のうち少なくとも谷部11ａの糸条巻取り方
向（図１の矢印Ｒ方向）の後方側を覆うように接着され
ている。この両面接着シート21は、片方の面で案内溝11
に切着され、他方の面が案内溝11に沿う略Ｖ字形の溝を
形成するようにしておくのが好ましいが、図１に示すよ
うに案内溝11の糸条巻取り方後方側を覆う接着されてい
るだけでもよい。

【００１１】このように構成された本実施例では、案内
溝11の谷部11ａち少なくとも糸条巻取り方向の後方側が
両面接着シート21に覆われているから、本体10の回転状
態で巻取るべき糸条１が案内溝11内に導入されると、そ
の糸条１はその巻取りの張力によって両面接着シート21
の他方の面に付着するとともに、両面接着シート21を案
内溝11の谷部11ａおよび周方向スリット12内に押し込み
ながら周方向スリット12内に入り込むことになる。した
がって、糸条１が巻取り開始時に瞬時に周方向スリット
12内に引っ掛かり、その引っ掛かりはきわめて強力なも
のとなるから、本体10が繰り返し使用した糸条巻取用ボ
ビンであっても糸掛けの成功率は著しく向上する。な
お、この巻取り開始後、両面接着シート21は片方の接着
面で案内溝11に接着され、他方の接着面で案内溝11に沿
う略Ｖ字形断面の溝を形成していることになる。

【００１２】糸掛け領域Ａへの糸掛け後は、周方向スリ
ット12に入り込んだ糸条１の後続部分がピッグテール形
成領域Ｃ上に数巻き分のピッグテールが形成され、次い
で、図示しないトラバースガイドの移動と本体10の回転
に伴って巻取り領域Ｂに巻取られる。そして、糸条１の
巻取り長さが所定長さに達すると、例えば所謂バンチ巻
きがされ、巻取りが終了する。

【００１３】このような巻取りを行なった糸条１および
糸条巻取用ボビンは製品としてユーザに納入され、糸条
巻取用ボビンは再度巻取りに使用される。その再使用時
には、必要に応じ（例えば再度使用する度に）両面接着
シート21を新しいものと交換するだけで、常に高い糸掛
け成功率が確保できる。したがって、本実施例の糸条巻
取用ボビンは、スリット寿命によって耐用寿命を左右さ
れず、従来の５〜10回に対し少なくとも数十回の使用に
も十分耐え得る長寿命のものとなり、その結果、生産コ
ストが低減される。

【００１４】

【考案の効果】本考案によれば、巻取り糸条を両面接着
シートに付着させ、その両面接着シートを糸条と共に周
方向スリット内に入り込ませるようにしているので、糸
条のスリットへの引っ掛かりを強くして糸掛けの成功率
を著しく向上させることができ、繰り返しの使用に対し
ても糸掛け作業を確実に行なうことのできる糸条巻取用
ボビンを提供することができる。また、必要に応じ両面
接着シートを交換するだけで、糸条巻取用ボビンの耐用
寿命を長くし、コスト低減を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係る糸条巻取用ボビンの一実施例を示
すその正面図である。

【図２】その案内溝および周方向スリットの拡大断面図
である。

【符号の説明】

10 円筒状の本体 10ａ 外周面部 11 案内溝 11ａ 谷部 12 周方向スリット 21 両面接着シート

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】紙製の円筒状の本体(10)の外周面部(10ａ)
   に、糸条(１)を案内する略Ｖ字形断面の案内溝(11)と、
   該案内溝(11)の谷部(11ａ)および前記外周面(10ａ)に開
   口し案内溝(11)から導入された糸条(１)を係止する周方
   向スリット(12)と、を形成した糸条巻取用ボビンにおい
   て、 前記案内溝(11)のうち少なくともその谷部(11ａ)の糸条
   巻取り方向後方側を覆うように剥ぎ取り可能な両面接着
   シート(21)を設けたことを特徴とする糸条巻取用ボビ
   ン。