JP2535547B2 - 第▲viii▼因子抵抗性血友病a治療剤およびその製法 - Google Patents

第▲viii▼因子抵抗性血友病a治療剤およびその製法

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Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、第VIII因子による通常の治療には応答しな
い血友病A患者を治療するための剤、およびその製造方
法に関する。
第VIII因子濃縮物で治療される血友病A患者の約1/4
までが、いわゆるインヒビター血友病を呈する。これら
に特徴的なことは、凝血活性を潜在的に有する第VIII因
子分子のサブユニツト(F VIII:C)に対する非沈殿性の
同種抗体が患者の血中を循環していることである。血友
病患者の血漿中に極めて高水準、すなわち100〜数千U/m
lに達することもある力価で存在するこれらの抗体は、
第VIII因子を合成しないかまたは合成しても不十分な量
でしかない患者において置換のために注入されると対応
するF VIIIの活性を中和してしまう。阻害性抗体の量は
しばしば第VIII因子を大量に投与してさえ治療が成功し
ない程に高くなる。
抗体が発現している血友病A患者にしばしば生じる重
症出血の治療には多くの対策が試みられてはいるが、こ
れらの対策は部分的に成功しているにすぎない。これら
の対策には、第II、VII、IXおよびX因子を含むプロス
ロンビン複合体濃縮物(PCC)の注入が含まれる。救急
状態にあつては、異タンパク投与の危険を冒して、動物
血漿(主として牛または豚血漿)からの第VIII因子が用
いられてさえいる。最近では、活性化凝固因子(activa
ted coagulation factors)も用いられ一定の成功をお
さめている。このタイプの剤は、それに含まれる活性化
凝固酵素の作用が調節しにくいため、血栓症の危険を排
除できない。
不溶化された第VIII因子への免疫吸着原理を用いて患
者血漿からこれらの抗体を除去しようという試みもなさ
れている。更に血漿搬出法も抗体の除去に用いられる。
最後に、F VIII:Cに対する抗体形成を治療的に阻止する
試みもなされている。
最近では、F VIIIと燐脂質との複合体もインヒビター
血友病の治療に考慮されている(J.Lab.Clin.Med.101,3
4−43,1983)。このアプローチは、F VIIIが燐脂質と結
合し、そしてこれらの結合部位がまさに血友病患者の同
種抗体が標的としているものであるという認識に基づい
ている。このことと符号して、F VIII燐脂質複合体は、
同種−および自己−抗体タイプのインヒビターによる攻
撃から守られる。相当する複合体、および活性化酵素
も、FEIBA(第VIII因子インヒビター・バイパス活性)
の活性主成分として示唆されている(Thrombosis Resea
rch 21,181−186,1981)。
F VIII−燐脂質複合体の効果については十分な実験的
基礎がある。すなわち、例えば、J.Lab.Clin.Med.101,3
4−43(1983)においては、このタイプの複合体をイン
ヒビター血漿にF IXaと共に添加した場合、カルシウム
イオンが添加されるや否やそれによつてトロンビン形
成、従つて凝血も開始されることが実験的に示されてい
る。この治療概念は有望のようにみえるが、それでもな
お、活性化因子をその産生過程で調節はできても困難で
あり、その上にそれらの生体内効果を評価できないとい
う欠点がある。
これらの方法には、すべて欠点があるのである。
それ故、本発明の目的は、第VIII因子抵抗性血友病治
療剤を提供することにある。
本発明は、第VIII因子、抗トロンビンIII、燐脂質お
よびカルシウムイオンの混合物を水性溶液として1〜45
℃、好ましくは37℃の温度に少くとも1分間保ち、第IX
因子を添加し、そしてその溶液をこの溶液の試料のイン
ヒビター・プラズマへの添加が15〜30秒の部分的トロン
ボプラスチン時間(PTT)を与えるまで1〜45℃、好ま
しくは20℃の温度に保ち、適切な場合にはポリオールを
添加し、そして適切な場合にはアミノ酸、そして適切な
場合にはその溶液を乾燥することにより得られる、第VI
II因子による治療に抵抗性の血友病Aの治療剤に関す
る。
本発明はまた、この剤の製造方法にも関する。
前述の諸因子と燐脂質およびCaイオンとの相互作用を
介してインキユベーシヨン中に活性複合体が生じるが、
これはF VIIIに対する同種抗体の存在下にあつても内生
凝固径路を活性化できる。このための前提条件は、前記
諸因子が活性混合物中に、特定の割合で、好ましくは、
4UのF VIIIに対し0.5〜2UのF IXおよび0.5〜1UのAT III
の割合で、少くとも25μgの燐質および0.75ミリモル/l
に相当する濃度のCaCl2と共に存在することである。
本発明の方法により、アミド分解またはタンパク分解
活性をもたず(このことはKabi社から入手したクロモゲ
ン性基質S−2238およびS−2222を用いた試験により認
められる)、しかもフイブリノゲンをフイブリンに変え
ない剤が得られることは驚くべきことであつた。それ
故、この剤は、活性化酵素を全く含有し得ない。このこ
とは、それが活性混合物中でAT IIIの存在下に形成され
ること、および後者によりその作用が悪影響を受けない
ことと符号する(このことはインヒビターにより病理的
に増大した部分的トロンボプラスチン時間(PTT)が減
少することから明らかである)。
この方法により製造される剤は、4℃で数日間安定で
ある。このことは驚くべきことである。何故ならば、第
X因子またはプロトロンビンのアクチベータの形で生体
内形成されるような活性複合体は不安定であることが知
られているからである。
この方法により得られる剤が、水性溶液として凍結さ
れそして再び解凍されまたは凍結乾燥された場合に失効
するということも驚くべきことであつた。しかしなが
ら、この剤は解凍後好ましくは30〜37℃に加熱するとそ
の活性を取り戻す。その再活性化は図に示された活性化
に相当するものである。凍結または凍結乾燥による失活
に鑑み、炭水化物、好ましくは、二糖類のスクロースを
添加することにより失活を防止できるということは驚く
べきことであつた。
最後に、本発明による剤のインヒビター中和活性がSe
pharose CL 6Bで分離後排出ピークに現れることも驚く
べきことであつた。活性を含む画分は添加されたすべて
の燐脂質を含んでいることも見出された。免疫ブロツテ
イング法を(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によ
り分離後)用いることにより、これらの画分中に、AT I
II、F IX、F VIIIの誘導体、および100kDの分子量を有
しかつ添加された因子濃縮物には全く存在しなかつた成
分を検出することができた。これらの知見は、本発明に
よる剤が、AT IIIによる保護下に燐脂質およびCaイオン
と共に形成される修飾F VIIIおよびF IXの複合体である
ことを示唆している。
以下の実施例は、本発明を例示するものである。
以下の実施例において、本発明による剤の製造および
特徴付けに用いられる材料: 第VIII因子:F VIII調製物を含む、すべて商業的に入手
し得る第VIII因子濃縮物(バイオテクノロージーにより
得られるものであつてもよい)、特に低温殺菌製品;好
ましくはBehringwerke AG社(ドイツ連邦共和国、Marbu
rg)の Haemate Pと称される第VIII因子濃縮物50IU/ml
を、0.06モル/lのNaClおよび1%グリシンを含有する酢
酸ナトリウム緩衝液(0.02モル/l、pH7.0)に対して透
析したもの; 第XI因子:前記酢酸ナトリウム緩衝液によりヘパリンお
よびクエン酸イオンを含まない第IX因子濃縮物HS Behri
ngwerke(120IU/ml F IX); 燐脂質溶液:血液不含に洗浄し乾燥した胎盤からのテト
ラヒドロフラン抽出物250mgを50mlの蒸留水に乳化し、
過により滅菌しそして0℃の氷浴で20分間50,000Hzで
音波処理し、次いで100,000×gで4℃で1時間遠心分
離したもの。透明上清を用いた。それは次の燐脂質の混
合物を含有した:ホスフアチジルエタノールアミン(P
E)、ホスフアチジルセリン(PS)、ホスフアチジルコ
リン(PC)、ホスフアチジルイノシトール(PI)、スフ
インゴミエリン(Sph)およびリソホスホグリセリド類
(L); 0.1モル/lの水性塩化カルシウム溶液; 抗トロンビンIII溶液: Kybernin HS 500(Behringwer
ke AG)。1パツクは500U(ヘパリン補助因子として測
定)を10mlの蒸留水中に溶存含有。
スクロース:特級品(extra pure)(ドイツ連邦共和国
Darmstadt,Merck社製); 緩衝液: a)20ミリモル/l酢酸ナトリウム、20ミリモル/l NaC
l、pH7.5(伝導率3.8mS/cm、25℃) b)50ミリモル/lイミダゾール、20ミリモル/l NaCl、p
H7.5(伝導率3.7mS/cm、25℃) 実施例1 1.本発明による剤の製造 1.4mlの第VIII因子濃縮物を14.5mlの緩衝液aで希釈
し、そして175μlの抗トロンビンIII溶液、80μlの燐
脂質溶液、120μlの塩化カルシウム溶液および0.32gの
スクロースを添加し、そしてその混合物を37℃に30分間
維持した。次に70μlの第IX因子溶液をピペツトで採取
添加した。その混合物を20℃に3時間維持し、そして規
定された時間間隔(図参照)をおいて、アリクオートを
採取し「インヒビター・プラズマ」すなわち、第VIII因
子に対する抗体を含む血漿における部分的トロンボプラ
スチン時間(PTT)の測定により試験した。燐脂質また
は塩化カルシウムを含まない混合物を対照例として用い
た。試験手順としては、37℃で、0.1mlの前述の如く製
造された混合物、0.1mlのPTT試薬例えば Pathromtinそ
して6分後に0.1mlの0.025モル/l塩化カルシウム溶液を
0.1mlの80Bu/ml(Bu=ベセスダ(Bethesda)単位)のイ
ンヒビター・プラズマに添加した。
図はその結果を含んでいる: × 本発明による剤; + この剤からカルシウムイオンを除いたもの; ○ この剤から燐脂質を除いたもの。
2.F VIII:Cのインヒビターを含有する血友病A血漿を用
いた本発明による剤の特徴付け1.で製造した剤を各種力
価の抗体を有するインヒビター・プラズマで試験した。
その結果を次表に示す。
これらの結果は、80〜640Bu/mlに相当する抗体力価を
有するインヒビター・プラズマの病理的に増大したPTT
が本発明による剤によつて正常化することを示してい
る。このタイプの剤を添加しないと、80Buのインヒビタ
ー・プラズマも640Buのものも約120秒のPTTを与え、ま
たこれらは第VIII因子を添加しても短縮されなかつた。
従つて、第1表の実験結果は(第VIII因子とは対照的
に)本発明による剤がインヒビターにより捕獲、中和さ
れないことをはつきりと示している。従つてこの剤は、
例えば同種抗体タイプの第VIII因子のインヒビターをも
つ血友病患者の治療に極めて適している。
本発明による剤の効果はクエン酸塩加ヒト全血を用い
たトロンボエラストグラフイ(TEG)によつて実証する
こともできる。
クエン酸塩加全血(230μl)をインヒビター・プラ
ズマ(20μl、1,400Bu/ml含有)と混合しておいたとこ
ろ、予期されたとおりトロンボエラストグラムのrおよ
びk時間は増加した。その増加したrおよびk値は、実
施例1よりの本発明による剤(10μl)の添加により正
常化した。
3.クエン酸塩加血漿における本発明による剤の安定性 クエン酸塩加ヒト血漿における本発明による剤の安定
性を試験するために、それを1+1または1+7の割合
でクエン酸塩加ヒト血漿とインキユベートした。規定さ
れた時間に、0.2mlのアリクオートを混合物から取り、
0.1mlのPTT試薬とインキユベートし、そして37℃で6分
後に0.1mlの0.025モル/l CaCl2溶液を添加した。規定さ
れたインキユベーシヨン時間後に得られたPTTを次の第
2表に記録する。
これらの結果から、本発明による剤がクエン酸塩加血
漿中で少くとも1時間、そして更に1 1/2時間後でもな
お有効であることが明らかである。緩衝剤を用いた対照
例に比べてPTTが減少していることは、本発明による剤
がクエン酸塩加血漿に対して強力な凝血促進効果を有し
ていることを示している。クエン酸塩加血漿とのインキ
ユベーシヨン中でさえ失効することがないことから、こ
の効果を凝血酵素に連関させることはできない。これ
は、クエン酸塩加血漿はすべての凝血酵素を中和する抗
トロンビンIIIを含んでいるからである。
実施例2 本発明による剤を製造するために、80mlのF VIII濃縮
物を920mlの緩衝液bと混合した。これによつて得られ
る4U/mlを含有する1000mlのF VIII溶液に次の物質を混
合した:50U/mlを含有する10.1mlのAT III濃縮物、5mlの
0.5%強度(g/100ml)燐脂質、7.6mlの0.1モル/l CaCl2
溶液および20gのスクロース。
この混合物を37℃で30分間インキユベート後、4.2ml
のF IX濃縮物(120UのF IX/ml)を添加し、そしてその
混合物を20℃で3時間インキユベートした。この時間中
に、それを用いて測定されたインヒビター・プラズマに
おけるPTTは25秒に低下していた。その溶液を過によ
り滅菌し、10mlずつパツクしそして凍結乾燥した。この
凍結乾燥物をもとの容量に溶解し、そして4ml/kg体重に
相当する量をウサギに静注した。それら動物に与えたプ
ラセボは前記溶液と同様に調製されるが塩化カルシウム
は含まない溶液とした。2つの動物群(各3匹のウサギ
より成る)から5、10、15および30分後に採血し、そし
てそれより得られる血漿中のPTTを、血友病A患者から
のインヒビター・プラズマを1回は添加せずに、他方で
は添加して測定した。それらの結果を表にしたが、それ
らの結果から、プラセボを与えたウサギのPTTは5分後
にやつとわずかに減少したにすぎないが、本発明による
剤を注射した動物のPTTは更に一段と減少したことがわ
かる(第3a表)。
後者の動物群の血漿はまた、インヒビターの添加によ
り人為的に増加させたPTTを減少させた(第3b表)。
このことは、本発明による剤が動物中で活性な形で循
環することを実証している。
本発明による剤がSepharose CL 6Bでの分離に付した
ところすべてのインヒビター中和活性は排除容量(excl
usion volume)中に見出された。燐脂質も同じ画分中に
確認され、同様に、F VIII、F IXおよび抗トロンビンII
Iに対する抗血清を用いた免疫ブロツテイング法を用い
て試料を分析したところ以下の成分が確認された:von W
illebrand因子のほかに、70〜75kDの分子量を有するタ
ブレツトとしてのF VIII:Cの修飾されたL鎖、F IX、抗
トロンビンIII、および100kDの分子量を有する成分。
【図面の簡単な説明】
図は、本発明による剤の効果を示す試験例の結果を示す
ものである。

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】第VIII因子、抗トロンビンIII、燐脂質お
    よびカルシウムイオンの混合物を水性溶液として1〜45
    ℃の温度に少くとも1分間保ち、第IX因子を添加し、そ
    してその溶液を、この溶液の試料のインヒビター・プラ
    ズマへの添加が15〜30秒の部分的トロンボプラスチン時
    間(PTT)を与えるまで1〜45℃の温度に保ち、適切な
    場合にはポリオールを添加し、そして適切な場合にはア
    ミノ酸を添加し、そして適切な場合にはその溶液を乾燥
    することにより得られる、第VIII因子による治療に抵抗
    性の血友病Aの治療剤。
  2. 【請求項2】混合物が4Uの第VIII因子あたり0.5〜2Uの
    第IX因子、0.5〜1Uの抗トロンビンIII、少くとも25μg
    の燐脂質および0.6〜0.9ミリモル/lのカルシウムイオン
    を含む特許請求の範囲第1項記載の剤。
  3. 【請求項3】ポリオールを含有する特許請求の範囲第1
    項記載の剤。
  4. 【請求項4】アミノ酸を含有する特許請求の範囲第1項
    記載の剤。
  5. 【請求項5】乾燥形態にある特許請求の範囲第1項記載
    の剤。
  6. 【請求項6】次の諸特徴、すなわち 強力な凝血促進作用を有するが活性化凝血酵素は含まな
    い(FIIaおよびXaに対するクロモゲン性基質を用いた試
    験により示される); クエン酸塩加ヒト血漿中で安定である; 正常クエン酸塩加ヒト血漿のPTTおよびF VIII:Cのイン
    ヒビターを含有する血漿のPTTを減少させる; F IXに対する抗体によって効果が損われない; Sepharose CL 6Bでのゲル濾過において活性は排除容量
    に移行し、そして阻止活性を有する画分は燐脂質、von
    Willebrand抗原、F VIII:Cの修飾されたL鎖(分子量75
    〜75,000kD)、F IX、100kDの分子量を有する成分およ
    び抗トロンビンIIIを含有する; という特徴を有する特許請求の範囲第1項記載の治療
    剤。
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