JP2533283Y2 - 加圧液化ガスボンベ用時限式噴出装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は加圧液化ガスボンベ用時
限式噴出装置、更に詳しくは、ボンベの吐出口より底部
にわたって設けられた導管を通してボンベ内に液化ガス
を圧入し、最後に気体を圧入して吐出口を閉鎖した加圧
液化ガスボンベに使用する時限式噴出装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】本考案が対象にする液化ガスは、常温で
加圧下に液状を呈するガスであれば特に制限されない
が、特に有毒ガスに対して有効である。以下臭化メチル
を例にして説明する。

【０００３】臭化メチルは常温で気体の有毒ガスであ
り、ボンベ又は金属缶に圧入して販売されている。これ
らは穀物、木材、土壌等の燻蒸に広く利用されており、
大規模な燻蒸においてはボンベ入りのものが使用されて
いる。

【０００４】このボンベは、その吐出口より底部にわた
って設けられた導管を通して臭化メチルが圧入され、最
後に約１０kg／cm² 圧の空気が圧入されている。従っ
て、この導管内及びボンベ内上部には圧縮空気が存在し
ている。

【０００５】燻蒸作業においては、被燻蒸物を収納した
密閉空間内にボンベを搬入し、そこでボンベのバルブを
開放することになるが、作業者の安全確保のために、吐
出口に時限膜を装着した後バルブを開放することが提案
されている（特公昭４１−１７６１０号公報）。ここで
時限膜とは臭化メチルによって軟化又は溶解する材料で
作ったフイルム状物であって、これを装着してからバル
ブを開放すると、臭化メチルは直ちに噴出することな
く、時限膜を軟化又は溶解し、破壊してから噴出し始め
ることが期待され、その間に作業者は密閉空間から退避
できると考えられた。しかしながら、実際にはバルブを
開放しても、最初に時限膜に接触するものは、導管内に
充填されている圧縮空気であるために、時限膜は破壊さ
れないことが多かった。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】本考案者は、バルブを
開放すると、臭化メチルは直ちに噴出することなく、所
定時間後に時限膜を確実に破壊して噴出し始める時限式
噴出装置を提供することを目的として鋭意検討した結
果、本考案を完成したものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本考案は、吐出口に液体
を導く導管をその内部に備えた加圧液化ガスボンベの吐
出口に装着する噴出装置であって、先端に開口部を設け
た中空の突出部材及び該突出部材の内部に、ボンベに充
填された液体によって軟化又は溶解する材料からなり且
つ圧空により移動して該開口部を閉塞する移動可能な中
空の時限部材を内蔵させてなる加圧液化ガスボンベ用時
限式噴出装置に係るものである。

【０００８】以下、本考案を図によって説明する。図１
は臭化メチルを充填したボンベの断面図であり、図中１
はボンベ本体、２は導管、３は吐出口、４はバルブ、５
は液化臭化メチル、６は圧縮空気である。図２（Ａ）及
び（Ｂ）はボンベの吐出口３に装着する本考案の時限噴
出装置の一例を示す断面図及び平面図であり、図中７は
袋ナット、８は中空の突出部材、９は突出部材８の先端
に設けた開口部、１０は突出部材８の内部に、圧空によ
り移動可能に内蔵された中空の時限部材、１１はパッキ
ンである。図３は時限部材１０の拡大斜視図であり、図
中１２は時限部材１０の表面に設けた空気抜きのための
微小な溝である。

【０００９】ボンベの吐出口３に、本考案の時限噴出装
置を袋ナット７を用いて装着した後バルブ４を開放する
と、導管２内の圧縮空気は、ボンベ吐出口３を通って時
限噴出装置内に到達し、時限部材１０を移動させて開口
部９を閉塞する。この状態で導管２内の圧縮空気は、開
口部９より徐々に漏洩し、やがて液化臭化メチルは時限
噴出装置内に到達する。液化臭化メチルが時限噴出装置
内に到達すると、時限部材１０が軟化されるためか、完
全に閉塞し、液化臭化メチルは漏洩することなく時限噴
出装置内に充満し、時限部材１０を軟化溶解し始め、や
がて時限部材１０が破壊されると、臭化メチルはそこか
ら激しく噴出するに至る。

【００１０】時限部材１０の形状は、圧空によって移動
して開口部９を閉塞する形状であれば、特に制限され
ず、突出部材８の内部の形状及び開口部９の形状によっ
て、例えば中空の円台状、円錘状、円筒状又はこれらを
組合せた形状をとることができる。特に図２に示したよ
うに中空の円台状になし、その先端の厚さを他の部分よ
りも薄くし、この部分を時限膜として作用させると、液
化ガスの噴出方向が常に一定するので好ましい。

【００１１】また、図３に示したように、時限部材１０
の表面に微小な溝１２を設けて、ボンベのバルブ４を解
放して時限部材１０が開口部９を閉塞した際に、先ずボ
ンベ中の導管２内の圧縮空気を放出し得るようにする
と、この溝１２の数や形状を調節することにより、バル
ブ４を開放してから液化臭化メチルが時限噴出装置内に
到達するまでの時間を容易に調整し、所望の時間にほぼ
一定にすることができるので好ましい。この微小な溝１
２の形状は任意にすることができるが、溝の深さは通常
０．１〜１mm程度でよく、溝の数は通常２〜８個、好ま
しくは３〜５個である。

【００１２】ボンベ内の液化ガスが時限噴出装置内に到
達してから噴出するまでの時間は、液化ガスの種類及び
時限部材１０を形成する材料の種類が定まれば、時限部
材の厚さによって変化する。通常、時限部材の壁の厚さ
は、ボンベのバルブを解放してからボンベ内の液化ガス
が噴出するまでの時間が、５〜２０分程度になるように
選択する。液化ガスが臭化メチルで、時限部材がポリカ
ーボネートの場合、時限部材の壁の厚さは通常０．２〜
２mmの範囲で選択される。

【００１３】時限部材１０の材料は、ボンベに充填され
る液化ガスによって軟化又は溶解するものであり、液化
ガスが臭化メチルの場合はポリカーボネート樹脂、アク
リル樹脂、スチロール樹脂等が好ましく、シアン化水素
の場合はアクリル樹脂、クロルピクリンの場合はスチロ
ール樹脂等が好ましい。

【００１４】突出部材８の材料は、特に制限されず、任
意の材料が使用されるが、時限部材１０と同一の材料を
使用すると、ボンベのバルブを開放し、ボンベ内の液化
臭化メチルが時限噴出装置内に到達したときに、時限部
材１０と共に突出部材８の内面も軟化されるためか、液
化ガスの漏洩を充分に防止できるので好ましい。また突
出部材８に透明な材料を使用すれば、時限部材１０の移
動状態や液化ガスの移動状態が確認できるので好まし
い。

【００１５】

【考案の効果】本考案の時限式噴出装置は、極めて簡単
な構造で、製造が容易であり、またボンベへの装着も容
易で且つボンベのバルブを開放してから液化ガスが噴出
するまでの時間が一定するため作業者は安全に作業でき
る等優れた効果を奏するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】臭化メチルを充填したボンベの断面図。

【図２】（Ａ）及び（Ｂ）はボンベの吐出口に装着する
本考案の時限噴出装置の一例を示す断面図及び平面図。

【図３】時限部材１０の斜視図。

【符号の説明】 １ ボンベ本体 ２ 導管 ３ 吐出口 ４ バルブ ５ 液化臭化メチル ６ 圧縮空気 ７ 袋ナット ８ 突出部材 ９ 開口部 １０ 時限部材 １１ パッキン １２ 微小な溝

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 吐出口に液体を導く導管をその内部に備
   えた加圧液化ガスボンベの吐出口に装着する噴出装置で
   あって、先端に開口部を設けた中空の突出部材及び該突
   出部材の内部に、ボンベに充填された液体によって軟化
   又は溶解する材料からなり且つ圧空により移動して該開
   口部を閉塞する移動可能な中空の時限部材を内蔵させて
   なる加圧液化ガスボンベ用時限式噴出装置。
2. 【請求項２】 時限部材が、その表面に少なくとも一個
   の微小な溝を有する時限部材である実用新案登録請求の
   範囲請求項１記載の加圧液化ガスボンベ用時限式噴出装
   置。