JP2533029B2 - 人工芝生製運動競技場 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、芝目内に細かい粒径
の充填物を多数充填した人工芝生製運動競技場に関し、
特に詳しく言うと、長期間の使用でもボールの転がりに
変化が生じたり、走行中の競技者のスパイクがロックす
ることがないように改良した人工芝生製運動競技場に関
する。

【０００２】

【従来の技術】テニス、野球、サッカー、ホッケー等の
球技スポーツ用全天候型競技場や、グランド、公園、広
場等において、その表層材として基布にナイロンやポリ
プロピレン等の合成樹脂製のヤーンを密に植設した人工
芝生（以下、砂無し人工芝生と称する）や、ヤーンの間
隔を多少広めにしてその芝目内に砂等の充填物を入れた
人工芝生（以下、砂入り人工芝生と称する）が広く使用
されている。

【０００３】砂無し人工芝生は、基布に長さが６〜１４
ｍｍのヤーンを密に植設したもので、長期間使用して
も、緩衝特性を損なわず、ボールの転がり性能が経時変
化するようなこともなく、競技者が転倒しても擦傷がで
きることはないなどの利点がある反面、滑り易く、かつ
スライディングをした場合に表面ヤーンとの摩擦により
火傷をすることがある。また、金属スパイク靴を使用す
る野球競技のような場合には、人工芝生を傷めるため金
属スパイク靴の使用を制限せざるを得ないという欠点が
ある。さらに、ヤーンと基布のみのため競技者の着地時
の緩衝性が硬く、長時間にわたりプレーした場合、疲労
を感じる。これを改良するために、基布の下面にゴムチ
ップやウレタン樹脂チップで構成された緩衝層を配置す
ることも提案されているが、競技者の着地点のみが変形
する局部変形であり、疲労感の全面的な改良にはなって
いないのが現状である。

【０００４】一方、砂入り人工芝生は砂無し人工芝生よ
りは人工芝生の植設を粗にし、粒径の細かい砂や硅砂な
どの充填物をその層厚が１３〜３０ｍｍになるように充
填し、人工芝生はその葉先を充填層の表面から１〜５ｍ
ｍ突出させている。そのため、雨や散水などの水分は充
填層に吸引され、ヤーンの水切れは砂無し人工芝生より
格段に良く、ヤーンの目付量も少なくて済む利点があ
る。また、砂無し人工芝生は自重が軽いため基盤に接着
等で固定しているが、砂入り人工芝生は充填物が２０〜
３０ｋｇ／平方ｍあるため、基盤上に置敷き施工が可能
になり、施工コストを低くできる利点もある。さらに、
充填剤層もある程度露呈しているので、スライディング
の際のヤーンによる火傷を防止でき、競技者が着地した
時充填層が板状に変化して面的な緩衝効果を奏するの
で、砂無し人工芝生より緩衝特性に優れている。このよ
うな理由から、砂入り人工芝生の運動競技場が広く普及
しつつある。

【０００５】この砂入り人工芝生の場合、ヤーンは基布
上に略直立して一定の方向に芝目が形成されるように植
設されているため、砂が移動し易く、長期間の使用で砂
が偏在することがあり、度々ブラッシング等で砂を掻き
均す必要が出てくる。この欠点を改良するため、例えば
特開平１−１３１６２８号や実開平２−１１６５０７号
等において、ヤーンを公知の圧縮賦形加工や熱ギヤ賦形
加工を用いて捲縮させて使用することが提案されてい
る。捲縮ヤーンは多方向にカールするので、一定の方向
に芝目ができるようなことはなく、またカール部分で砂
をホールドするため、砂の移動が少なく、砂の硬化も低
減できる等、直立型の人工芝生に比べて砂の保守が簡単
になる利点を有している。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、砂入り
人工芝生は、スライディングした際に表面に露呈してい
る充填物により擦傷が生じ易い欠点があり、さらに経時
変化により充填層が硬化して緩衝特性が劣化したり、硬
化した充填層で金属スパイクが捕捉され、ロックするこ
とがある。また、テニスのようなバウンドするボールを
扱う球技ではそれ程影響はないが、サッカー、ホッケー
あるいはラグビーのように転がるボールを扱う球技の場
合、経時変化で充填層が硬化した時にはボールの転がり
が早くなり、タックル等で競技者に擦り傷ができ易いと
いう欠点も指摘され、たとえ捲縮ヤーンを使用したとし
ても、このような球技には不適当であるとされていた。

【０００７】そこでこの発明の目的は、砂無し人工芝生
の特徴を備えるとともに、砂入り人工芝生の上述したよ
うな欠点を改良し、サッカー等の球技にも最適な人工芝
生製運動競技場を提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、この発明は、基布上に人工芝生を植設し、前記人工
芝生の芝目内に粒径の小さい砂や合成樹脂で構成された
充填物を充填した人工芝生製運動競技場において、前記
人工芝生は捲縮もしくは強撚加工された合成樹脂製のパ
イルヤーンで構成されているとともに、前記パイルヤー
ンの前記充填物層中に埋没されている部分の捲縮もしく
は強撚の度合いは、前記充填物層上に突出されている部
分の捲縮もしくは強撚の度合いよりも弱くされているこ
とを特徴としている。

【０００９】

【作用】すなわち、上記構成によれば、充填物層中に埋
没される部分の単位長さ当たりの表面積が充填物層上に
突出する部分の単位長さ当たりの表面積よりも小さくな
っているので、充填物層内に位置するパイルヤーン間は
粗になり、充填物を均一にかつ高密度に充填することが
できる。

【００１０】これに対して、人工芝生の葉先である充填
層上に突出（露呈）するヤーンはその表面積が高いの
で、充填物層の上面は葉先で覆われる形になり、例えば
競技者がスライディングしても充填物による擦り傷の発
生を防止することができ、また、ボールも葉先上を転動
するので、ホッケー競技等におけるボールの転がりの経
時変化が小さく、砂入り人工芝生では不適当とされてい
たホッケーやサッカー等の球技も行なうことができる。

【００１１】なお、この明細書において、捲縮ヤーンお
よび強撚ヤーンの単位長さ当たりの表面積とは、そのヤ
ーンを延ばすことなく撚りがかけられたままの状態での
表面積を言い、例えば単位長さを２．５４ｃｍとした場
合、その長さ範囲内で捲縮（強撚）数の多いほどその表
面積が大きくなることを意味している。

【００１２】さらに、充填物層から露呈するヤーンがク
ッション層となり、その分だけスパイクが充填層内に入
り込む量が小さくなり、スパイクのロックを防止するこ
とができる。また、ヤーン自体に捲縮や強撚による弾性
があるため、充填物が揺すられ、長期間の使用でも硬化
し難く、充填物のホールド効果により砂均し等の作業頻
度も少なくすることができる。

【００１３】

【実施例】以下、この発明を図面に示す実施例について
説明する。各実施例を通して実質的に同じ構成要素には
同一参照番号を付けて、重複する説明は省略する。

【００１４】まず、図１に示す第１実施例について説明
すると、この人工芝生３は上面が実質的に平滑に形成さ
れた基盤１上に緩衝材２を介して敷設されている。この
場合、基盤１は栗石や砕石等を敷き詰めた透水構造であ
っても、コンクリートやアスファルト等の非透水構造で
あってもよい。また、緩衝材２はゴムチップやウレタン
あるいはポリエチレン等の発泡体を施工現場で打設した
り、平板状の成形品を敷詰めることで基盤１上に敷設さ
れる。

【００１５】この例において、人工芝生３はナイロン、
ポリアミド、アクリル、塩化ビニリデンあるいはポリプ
ロピレン等の合成樹脂から作られた扁平な直毛状のスプ
リットヤーンやモノフィラメントヤーンを従来から実施
されているスタフィング法、エアジェット法、圧縮や熱
ギヤあるいはニットデニット等による賦形法等により捲
縮加工した捲縮ヤーン４を裏打ち基布５にタフティング
等により従来の砂入り人工芝生と同様な間隔をおいて多
数植設することにより構成されている。なお、各捲縮ヤ
ーン４は、裏打ち基布５から少なくとも１２ｍｍ以上突
出するに十分な長さに設定されている。

【００１６】この人工芝生３の芝目内には、細かい粒径
の砂、硅砂、高分子材料の弾性粒状物あるいはこれらの
混合物で構成された充填物６が目砂として充填されてい
る。この充填物６を充填するに際しては、例えば特公昭
６３−５３３２４号公報に見られるような回転ブラシ付
砂撒布装置を使用し、その回転ブラシで捲縮ヤーン４の
捲縮部分を直立させるようにしながら充填物６を充填し
ていく。

【００１７】これにより、捲縮ヤーン４は延ばされた形
になり、この状態で充填物６を充填すると、この部分の
捲縮ヤーン４は充填物６により拘束されて延ばされた状
態を保持する。一方、充填層７上に位置して露出する捲
縮ヤーン４は充填物６による拘束がないので、経時的に
捲縮強度は復元して元の状態に戻ることになる。したが
って、充填層７内の捲縮ヤーン４の単位長さ当たりの表
面積は、充填層７上に位置して露出し捲縮状態が復元し
た部分の捲縮ヤーン４の単位長さ当たりの表面積よりも
少なくなる。

【００１８】充填層７の層厚は少なくとも裏打ち基布５
の上面から６ｍｍ以上有し、かつ各捲縮ヤーン４は充填
層７の上面からその端までが６ｍｍ以上となるように設
定されることが好ましい。

【００１９】これにより、人工芝生３の捲縮ヤーン４の
目付量は従来の砂入り人工芝生と同様に少なくでき、ま
た充填層７内に埋没される捲縮ヤーン４は充填物６によ
って延ばされるので、捲縮状態で充填層７内に位置させ
るよりは短くてすみ、捲縮ヤーン４の使用量を軽減させ
ることができる。また、充填層７内に位置する捲縮ヤー
ン４の量が少ないため、充填物６を均一にかつ高密度に
充填することができることにもなる。

【００２０】充填層７の層厚を少なくとも６ｍｍにする
ことにより、充填物が硅砂の場合、その目砂重量が約８
ｋｇ／平方ｍになり、基盤１に人工芝生３を置敷き施工
で敷設できる重さを呈するので、施工コストを低減させ
ることができる。また、充填層７による面的荷重特性が
生じ、下層の緩衝材２との相乗効果により競技者が着地
した際の着地感を良好にすることができる。さらに、充
填物６は高密度に充填できるので、排水性も向上し、屋
外の運動競技場にも使用できる。

【００２１】一方、人工芝生３の葉先部分の捲縮ヤーン
４は、捲縮状態で高密度に充填層７の上面から６ｍｍ以
上突出しているので、緩衝性および耐へたり性を向上さ
せることができる。また、充填物層７の表面は葉先で覆
われる形となるため、例えば競技者がスライディングし
ても充填物による擦り傷の発生を防止することができ
る。さらには、捲縮ヤーン４自体の弾性により砂が揺す
られ、長期間の使用でも硬化し難く、充填物６のホール
ド効果により砂均し等の作業頻度も少なくすることがで
きる。

【００２２】また、ボールも充填層７の上面を覆ってい
る葉先上を転動するので、ホッケー競技等におけるボー
ルの転がりの経時変化が小さく、砂入り人工芝生では不
適当とされていたホッケーやサッカー等の球技も行なう
ことができる。しかも、充填物層７から突出する捲縮ヤ
ーン４がクッション層として作用するため、その分だけ
スパイクが充填層７内に入り込む量が小さくなり、スパ
イクがロックし難くなる。

【００２３】上述の実施例では、パイルヤーンに捲縮加
工を施したいわゆる捲縮ヤーンを用いているが、これに
代えて強撚加工された強撚ヤーンを使用してもよい。こ
の場合、裏打ち基布５に強撚ヤーンを植設した後、その
強撚状態のままで充填物６を所定の厚さに充填し、充填
物層７上に露呈する強撚ヤーンに回転ブラシを良くあて
て強撚状態のパイル束をバラケさせて撚糸強度を減少さ
せるとよい。これにより、充填物層７内のヤーンは互い
に密接した状態にあり全体的に見た場合その単位長さ当
たりの表面積は小さいが、充填物層７上に露呈するヤー
ンはバラケているので、その単位長さ当たりの表面積は
強撚状態の部分よりは大きくすることができる。

【００２４】図２に示す第２実施例は、ヤーンを構成す
る上述したナイロン、ポリアミド、アクリル、塩化ビニ
リデンあるいはポリプロピレン等の合成樹脂は加える熱
量によってその捲縮度が調整できる点に着目してなされ
たもので、その潜在捲縮性を利用して充填物層７内に埋
没される部分の単位長さ当たりの表面積を充填物層７上
に露呈する部分の単位長さ当たりの表面積より小さくし
たものである。

【００２５】すなわち、潜在捲縮性を有する合成樹脂製
の扁平な直毛状のスプリットヤーンやモノフィラメント
ヤーンのヤーン１１を裏打ち基布５にタフティング等に
より従来の砂入り人工芝生と同様な間隔をおいて多数植
設した後、充填物６を所定の厚さに充填する。そして、
充填物層７上に突出しているヤーン１１上を、内部に適
当な加熱手段を有し、その熱でローラ表面が加熱された
加熱ローラ１２を転動させる。これにより、充填物層７
上に突出しているヤーン１１はさらに捲縮してその捲縮
強度（捲縮度合い）は充填物層７内のヤーン１１より強
くなり、その結果充填物層７上に突出しているヤーン１
１の単位長さ当たりの表面積を充填物層７内のヤーン１
１より大きくすることができる。

【００２６】この実施例においても、充填物層７の厚さ
を６ｍｍ以上に設定し、充填物層７上に突出するヤーン
１１の長さも６ｍｍ以上に設定する。なお、裏打ち基布
５に植設するヤーン１１の長さは、加熱ローラ１２によ
り捲縮して縮む分を見越して長めに設定しておくことは
勿論である。

【００２７】

【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、人工芝生を捲縮もしくは強撚加工された合成樹脂製
のパイルヤーンから構成するとともに、そのパイルヤー
ンの充填物層中に埋没されている部分の捲縮もしくは強
撚の度合い（単位長さ当たりの表面積）を、充填物層上
に突出されている部分の捲縮もしくは強撚の度合い（単
位長さ当たりの表面積）よりも弱くしたことにより、充
填物を均一にかつ高密度に充填することができる。

【００２８】また、充填物層の上面は単位長さ当たりの
表面積の大なる葉先で覆われる形になるため、例えば競
技者がスライディングしても充填物による擦り傷の発生
を防止することができ、ボールもその葉先上を転動する
ので、ホッケー競技等におけるボールの転がりの経時変
化が小さく、砂入り人工芝生では不適当とされていたホ
ッケーやサッカー等の球技も行なうことができる。さら
には、充填物層から露呈するヤーンがクッション層とな
り、その分だけスパイクが充填層内に入り込む量が小さ
くなり、スパイクがロックし難い、などの効果が奏され
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の第１実施例の一部を示す縦断面図で
ある。

【図２】この発明の第２実施例を概略的に示す縦断面図
である。

【符号の説明】

１ 基盤 ２ 緩衝材 ３ 人工芝生 ４，１１ ヤーン ５ 裏打ち基布 ６ 充填物 ７ 充填物層

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平２−279804（ＪＰ，Ａ) 特開 昭58−7005（ＪＰ，Ａ) 実開 平２−116507（ＪＰ，Ｕ)

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 基布上に人工芝生を植設し、前記人工芝
   生の芝目内に粒径の小さい砂や合成樹脂で構成された充
   填物を充填した人工芝生製運動競技場において、前記人
   工芝生は捲縮もしくは強撚加工された合成樹脂製のパイ
   ルヤーンで構成されているとともに、前記パイルヤーン
   の前記充填物層中に埋没されている部分の捲縮もしくは
   強撚の度合いは、前記充填物層上に突出されている部分
   の捲縮もしくは強撚の度合いよりも弱くされていること
   を特徴とする人工芝生製運動競技場。