JP2532873B2 - パ−キングブレ−キ付流体式リタ−ダのブレ−キドラム兼用クラッチ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はバスやトラック等に用いられる流体式リター
ダとパーキングブレーキを一体化し装置のコンパクト化
及び省スペースを図ったものである。

〔従来の技術〕

通常自動車の制動装置としては使用目的から常用ブレ
ーキ，パーキングブレーキ及び減速装置の３種類があ
る。このうち常用ブレーキは足踏式ブレーキであり、各
車輪を制動し、車輌の減速及び停止に使用し、パーキン
グブレーキは手動ブレーキであり後輪の常用ブレーキと
同一装置を別の伝達機構により作動させるタイプとトラ
ンスミッション又はプロペラシャフトに取り付けて駐車
専用に使用するセンターブレーキとがあり、常用ブレー
キの故障時の予備又は緊急時の停車用ブレーキにも兼用
できるものである。

このようなパーキングブレーキは一般にデュオサーボ
形のドラムブレーキが用いられ、これは車軸と一体に回
転するブレーキドラムの内側に半月状部材にライニング
を張り付けた２個のリーディングシューをリンクで結合
し、パーキングレバーによりシューを内部拡張式にブレ
ーキドラムに押し付けて車軸の回転を止めるものであ
る。

また減速装置は大型トラックやバスに用い長坂路を下
る場合、常用ブレーキだけではブレーキの摩擦部分での
発熱のためブレーキ性能が低下する恐れがあるために使
用するもので排気ブレーキ，液体式リターダ，電磁式リ
ターダ等がある。このうち流体式リターダ（以下単にリ
ターダと記す）は回転数の増加に伴ない吸収する馬力が
急激に増大するという減速装置としては好ましい特性を
示すものでトランスミッションや後輪の駆動装置に組み
込まれることが多い。

上記リターダの本体は第６図に示すように車軸（28）
を中心として放射状に固定され、車軸（28）と一体に回
転する複数のロータ羽根（６）と該羽根（６）を囲んだ
羽根室ケースにより車軸（28）の回りにドーナッツ状に
円筒形の羽根室（３）を設け、該羽根室（３）内にロー
タ羽根（６）に対設して羽根室ケースに固定したステー
タ羽根（５）を形成し、リターダを作動させる場合は羽
根室（３）内のロータ羽根（６）とステータ羽根（５）
の対設する部位に冷却油（Ｂ）を供給し、回転するロー
タ羽根（６）のエネルギーを熱として循環する冷却油
（Ｂ）に伝え減速させるものである。

〔発明が解決しようとする問題点〕

このように従来は流体式リターダとパーキングブレー
キは同じ制動装置でありながら全く別々の装置として取
り付けられておりスペース的に不利であるため、これら
を一体に形成することにより省スペースを図ることが望
まれていた。さらに流体式リターダの作動の制御は従来
羽根室内に供給する冷却油の流量、即ち油面レベルにて
行なっているが、油面のレベル制御装置は非常に高価で
あるため簡便な方法が求められていた。

〔問題点を解決するための手段〕

本発明はこれに鑑み種々検討の結果、上記問題点を一
挙に解決するパーキングブレーキ付流体式リターダのブ
レーキドラム兼用クラッチを開発したもので、トランス
ミッションケースから突出したドライブシャフト又はプ
ロペラシャフトの周囲にトランスミッションケース又は
その他の固定部材と一体にドーナッツ状に円筒形の流体
式リターダの羽根室を液密閉式に設け、該羽根室内の一
方の側板にドライブシャフト又はプロペラシャフトを中
心に放射状にステータ羽根を形成し、該ステータ羽根と
対向しドライブシャフト又はプロペラシャフトの周囲に
回動自在なロータ羽根を設け、該ロータ羽根の自己ポン
プ作用または別置ポンプにより羽根室内に一端より冷却
油を供給し他端より排出させ、上記ロータ羽根と一体で
リターダの側板とドライブシャフト又はプロペラシャフ
トの間を羽根室の外部に延設し、該シャフトに対して直
角に立ち上げたドーナッツ状円板のクラッチプレートを
設け、ドライブシャフト又はプロペラシャフトと一体に
回転し、該シャフトと直交する円板を上記クラッチプレ
ート面の反リターダ側に対設し、該クラッチプレートの
外周よりも大きい外周を有するクラッチカバー部とし、
さらに上記円板の外縁部を上記シャフトの軸方向のリタ
ーダ側に延設してブレーキドラム部とし、該ブレーキド
ラム部の内側面に断面Ｌ字型で半月形のブレーキシュー
を２個対設させ、上記固定部材に取り付けたパーキング
ブレーキ用カムレバーを操作することによりブレーキシ
ューを内部拡張式にブレーキドラム部の内側面に押圧さ
せてブレーキ力を発生させ、また上記固定部材にドライ
ブシャフト又はプロペラシャフトの軸方向に移動するク
ラッチピストンを設け、該ピストンの作用端にクラッチ
ベアリングを介してクラッチプレート面のリターダ側に
対設するドーナッツ状円板のプレッシャプレートを連結
し、該プレッシャプレートはその外縁部の複数部分から
ドライブシャフト又はプロペラシャフトの軸方向の反リ
ターダ側に延設しクラッチプレートの外縁部の外側を跨
ぐ爪を形成し、該爪を円板状のクラッチカバー部に穿設
した複数の貫通穴に挿入することによって該クラッチカ
バー部と係合するためドライブシャフト又はプロペラシ
ャフトと一体に回転し、さらに上記の爪を巻くようにコ
イル状のクラッチリターンスプリングを該爪に設けるこ
とにより、クラッチを切るときにプレッシャプレートが
速やかにクラッチプレートから離れることを特徴とする
ものである。

〔作用〕

流体式リターダのロータ羽根と一体でリターダの側板
とドライブシャフト又はプロペラシャフト（以下単にド
ライブシャフトと記す）の間を羽根室の外部に延設し、
該シャフトに対して直角に立ち上げたドーナッツ状円板
のクラッチプレートを設け、該クラッチプレートのリタ
ーダ側にプレッシャプレートを、反リターダ側にドライ
ブシャフトと一体に回転する円板状のクラッチカバー部
を対設させたのは、クラッチピストンを作動させクラッ
チベアリングを介して連結するプレッシャプレートをク
ラッチプレートに押圧し、クラッチプレートをクラッチ
カバー部とプレッシャプレートで挟持することにより、
該クラッチプレートと一体であるロータ羽根がドライブ
シャフトと一体に回転し、リターダが作動するからであ
り、油面レベル制御を使用しなくとも機械的なクラッチ
機構により安価にリターダの制御ができる。

また円形のクラッチカバー部の外縁部をドライブシャ
フトの軸方向のリターダ側に延設してブレーキドラム部
としたのはリターダを制御するクラッチの構成部材とし
てのクラッチカバー部とパーキングブレーキの構成部材
としてのブレーキの摺動面であるブレーキドラム部とを
一体に形成することにより、リターダとパーキングブレ
ーキとを一体にすることができ省スペース化が実現でき
るからである。

さらに上記ブレーキドラム部の内側面に端面Ｌ字型で
半月形のブレーキシューを２個対設するのは断面Ｌ字型
にすることによりシューの部分と、それを支持補強する
ウェブをプレス成型により容易に一体に形成でき、従来
の溶接構造と比べてコストダウンが図れるからであり、
加えて上記のブレーキドラム兼用クラッチカバーを使用
することによりコンパクト化した装置において該クラッ
チカバーの内側を有効に利用できるからである。

またドーナッツ状円板のプレッシャプレートの外縁部
の複数部分からクラッチプレートの外縁部の外側を跨ぐ
爪を延設して円板状クラッチカバー部に穿設した複数の
穴に挿入するのはプレッシャプレートをドライブシャフ
トと一体に回転させるためであり、かつプレッシャプレ
ートをドライブシャフトの軸方向に自由に移動させるた
めであり、これによりクラッチを入れるときはクラッチ
ピストンを作動させればよく、クラッチを切るときは爪
に巻き付けた構成のコイルスプリングによりプレッシャ
プレートは速やかにクラッチプレートから離れることに
なる。さらにこのような爪はプレッシャプレートと一体
に成型でき上記のクラッチリターンスプリングの取り付
け、取りはずしが容易である。

〔実施例〕

本発明を一実施例にもとづき詳細に説明する。

第１図に示すようにトランスミッションケース（１）
と一体でドライブシャフト（２）の周囲にドーナッツ状
かつ円筒形のリターダ羽根室（３）を設け、該羽根室
（３）の反トランスミッションケース（２）側の側板
（４）の羽根室（３）内にドライブシャフト（２）の回
転中心軸（Ａ）を中心に放射状にリターダのステータ羽
根（５）を複数枚形成し、該ステータ羽根（５）に対向
しドライブシャフト（２）の周囲に回動自在なロータ羽
根（６）を上記中心軸（Ａ）から放射状に複数枚設け、
羽根室（３）の一端に冷却油の供給口（７）と他端に冷
却油の排出口（８）を形成する。

また一端部にロータ羽根（６）を固定し上記側板
（４）とドライブシャフト（２）の間を反トランスミッ
ションケース（１）側へ延設してなる回転円筒体（９）
の側板（４）外部の他端部にドーナッツ状円板のクラッ
チプレート（10）を上記中心軸（Ａ）に対して直角に立
ち上げ、該クラッチプレート（10）の反リターダ側にド
ライブシャフト（２）と一体に回転する一方の円形端面
が開口しているドラム状のブレーキドラム兼用クラッチ
カバー（11）の閉塞した他方の円形端面を円板状のクラ
ッチカバー部（11a）として対設させ、さらに該クラッ
チカバー（11）の円筒面のブレーキドラム部（11b）は
リターダ側に延設されており、その内側面には断面Ｌ字
型で半月形のブレーキシュー（12）のランニング（12
a）面が対向するように該シュー（12）のウェブ（12b）
を上記リターダ羽根室（３）の側板（４）に取り付けて
あるパーキングブレーキ用カムレバー（13）に係合させ
る。

また上記側板（４）にはドライブシャフト（２）の中
心軸（Ａ）方向へ移動するクラッチピストン（14）を取
り付け、該ピストン（14）の作用端にドーナッツ状のク
ラッチベアリング（15）を介してドーナッツ状円板のプ
レッシャプレート（16）を固定し、該プレッシャプレー
ト（16）はさらにクラッチプレート（10）のリターダ側
と対設させる。

上記プレッシャプレート（16）は第２図（イ）（ロ）
に示すようにドーナッツ状円板の外周を４等分した一の
外縁部から円板に直角に爪（17）を形成し、第３図
（イ）（ロ）に示すようにブレーキドラム兼用クラッチ
カバー（11）のブレーキドラム部（11b）と爪（17）が
向い合うように組んだときに爪（17）がクラッカバー部
（11a）を貫通し、ドライブシャフト（２）の中心軸
（Ａ）方向にスムーズに移動できるような貫通穴（18）
をクラッチカバー部（11a）に４ヶ所穿設し、第１図の
ようにそれぞれの爪（17）にコイルスプリングを巻き付
けクラッチピストン（14）を切ったときにクラッチプレ
ート（10）とプレッシャプレート（16）とが離れるよう
な強さのクラッチリターンスプリング（19）とする。な
お第１図において（20）はリターダ羽根室（３）を液密
閉にするためのシール兼用摺動材、（21）はベアリング
を示し、第３図において（22）は取付用穴を示す。

以上のような構成のパーキングブレーキ付流体式リタ
ーダのドライブシャフト（２）を回転し、リターダ羽根
室（３）内に供給口（７）より冷却油を供給し、排出口
（８）より排出し一定量を第４図に示すようにエンジン
（23）の冷却回路中のラジエータローワータンク（24）
を利用するか別置のオイルクーラーを利用するかにより
冷却し、循環させておきクラッチピストン（14）をON-O
FFさせることによるクラッチのON-OFFで容易に流体式リ
ターダ（25）の運転−停止が可能であった。なお図中
（26）はトランスミッション、（27）はファン、（Ｂ）
は冷却油の流れを示す。

またブレーキシュー（12）は第５図に示すように断面
Ｌ字型で半月形をなし、ライニング（12a）を固定した
円筒板（12c）、これを支持するウェブ（12b）とさらに
これらの屈曲部の３ヶ所に強度向上のため切欠き部（12
d）を一体にプレス成型した構造であるため、ブレーキ
ドラム兼用クラッチカバー（11）のドラム形状の内側の
スペースを有効に利用できる形状を有しており、さらに
製作コストも低減する。

〔発明の効果〕

このように本発明によれば流体式リターダとパーキン
グブレーキを一体の構造にすることができ軽量，コンパ
クト化が図れ省スペースやコスト低減を実現できる等工
業上顕著な効果を奏するものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例を示す側断面図、第２図
（イ）（ロ）はプレッシャプレートを示すもので（イ）
は平面図、（ロ）は（イ）のＸ−Ｘ′線断面図、第３図
（イ）（ロ）はブレーキドラム兼用クラッチカバーを示
すもので（イ）は平面図、（ロ）は（イ）のＹ−Ｙ′線
断面図、第４図は冷却回路を示す説明図、第５図はブレ
ーキシューを示すもので（イ）は平面図、（ロ）は
（イ）のＺ−Ｚ′線断面図、第６図は流体式リターダの
従来例を示す側断面図である。 １……トランスミッションケース ２……ドライブシャフト ３……リターダ羽根室 ４……側板 ５……ステータ羽根 ６……ロータ羽根 ７……供給口 ８……排出口 ９……回転円筒体 10……クラッチプレート 11……ブレーキドラム兼用クラッチカバー 11a……クラッチカバー部 11b……ブレーキドラム部 12……ブレーキシュー 12a……ライニング 12b……ウェブ 12c……円筒板 12d……切欠き部 13……パーキングブレーキ用カムレバー 14……クラッチピストン 15……クラッチベアリング 16……プレッシャプレート 17……爪 18……貫通穴 19……クラッチリターンスプリング 20……シール兼用摺動材 21……ベアリング 22……取付穴 23……エンジン 24……ラジエーターローワータンク 25……流体式リターダ 26……トランスミッション 27……ファン 28……車軸 Ａ……回転中心軸 Ｂ……冷却油

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】トランスミッションケースから突出したド
   ライブシャフト又はプロペラシャフトの周囲にトランス
   ミッションケース又はその他の固定部材と一体にドーナ
   ッツ状に円筒形の流体式リターダの羽根室を液密閉式に
   設け、該羽根室内の一方の側板にドライブシャフト又は
   プロペラシャフトを中心に放射状にステータ羽根を形成
   し、該ステータ羽根と対向しドライブシャフト又はプロ
   ペラシャフトの周囲に回動自在なロータ羽根を設け、該
   ロータ羽根の自己ポンプ作用または別置ポンプにより羽
   根室内に一端より冷却油を供給し他端より排出させ、上
   記ロータ羽根と一体でリターダの側板とドライブシャフ
   ト又はプロペラシャフトの間を羽根室の外部に延設し、
   該シャフトに対して直角に立ち上げたドーナッツ状円板
   のクラッチプレートを設け、ドライブシャフト又はプロ
   ペラシャフトと一体に回転し、該シャフトと直交する円
   板を上記クラッチプレート面の反リターダ側に対設し、
   該クラッチプレートの外周よりも大きい外周を有するク
   ラッチカバー部とし、さらに上記円板の外縁部を上記シ
   ャフトの軸方向のリターダ側に延設してブレーキドラム
   部とし、該ブレーキドラム部の内側面に断面Ｌ字型で半
   月形のブレーキシューを２個対設させ、上記固定部材に
   取り付けたパーキングブレーキ用カムレバーを操作する
   ことによりブレーキシューを内部拡張式にブレーキドラ
   ム部の内側面に押圧させてブレーキ力を発生させ、また
   上記固定部材にドライブシャフト又はプロペラシャフト
   の軸方向に移動するクラッチピストンを設け、該ピスト
   ンの作用端にクラッチベアリングを介してクラッチプレ
   ート面のリターダ側に対設するドーナッツ状円板のプレ
   ッシャプレートを連結し、該プレッシャプレートはその
   外縁部の複数部分からドライブシャフト又はプロペラシ
   ャフトの軸方向の反リターダ側に延設しクラッチプレー
   トの外縁部の外側を跨ぐ爪を形成し、該爪を円板状のク
   ラッチカバー部に穿設した複数の貫通穴に挿入すること
   によって該クラッチカバー部と係合するためドライブシ
   ャフト又はプロペラシャフトと一体に回転し、さらに上
   記の爪を巻くようにコイル状のクラッチリターンスプリ
   ングを該爪に設けることにより、クラッチを切るときに
   プレッシャプレートが速やかにクラッチプレートから離
   れることを特徴とするパーキングブレーキ付流体式リタ
   ーダのブレーキドラム兼用クラッチ。