JP2528981B2 - 染料熱転写画像受容シ―ト - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、熱転写された染料画像を受容する染料熱転
写画像受容シートに関するものである。更に詳しく述べ
るならば、本発明は熱転写カラープリンターにおいて、
昇華性染料などの画像形成用染料を受容し、高解像度の
中間調画像を高忠実にプリントすることのできる染料熱
転写画像受容シートに関するものである。

〔従来の技術・発明が解決しようとする課題〕

最近、鮮明なカラー画像をプリントすることの可能な
昇華染料転写方式のプリンターが注目されている。

昇華染料熱転写方式のプリンターは、基材フィルムと
昇華染料層とからなるインクシートに、昇華染料染着性
樹脂を主成分とする画像受容層を有する画像受容シート
を、その染着性表面が染料層に接するように重ね合わ
せ、電気信号に応じてサーマルヘッドから供給される熱
により、画像受容層上にイエロー、シアン、マゼンタの
昇華染料を、必要部分、所要濃度だけ多色重ね印写し
て、各色ドットに無数の色相と連続した濃度を再現し、
均一な画像を得ることができるものである。

また、熱溶融転写方式のプリンターにおいても、特殊
なインクシートを用いる事により、インクシート上のイ
ンク層から、サーマルヘッドの段階的な加熱に応じて所
定量のインクを画像受容層上に転写し、それによって濃
度階調のフルカラー画像を画像受容層上にプリントする
ことが可能になっている。

これらのプリンター用の画像受容シート、すなわち記
録シートの基材として、セルロースパルプを主成分とし
て含む紙、好ましくはこれを平滑化処理したものを用い
ることが知られている。しかし、画像受容シート上に連
続階調で良好な印画を得るためには、木材パルプを主成
分として含む紙をシート状支持体としたものは、たとえ
その平滑度を向上させたものであっても、画像の均一性
が不十分である。

特に、サーマルヘッドの印加エネルギーによった、イ
ンクの転写量を制御する昇華染料転写方式などのプリン
ターにおいては、画像受容層の画像形成材料受理能の均
一性が画像の再現性に重大な影響を与えている。このた
め、ベタ部の濃度ムラ、ドットの不安定な転写などを解
消し、良好な中間調画像を得ることは困難であった。

これらの問題点を解消するために、無機顔料とポリオ
レフィン、例えばポリプロピレンを主成分として含む多
層構造のフィルムを１ないし２軸延伸して得られる合成
紙を、シート状支持体として用い、その上に画像受容層
を設けることが提案されている。

染料昇華転写プリンター用画像受容シートの場合、上
記合成紙からなるシート状支持体上に、ポリエステルな
どの染料染着性樹脂を主成分として含む画像受容層が被
覆される。このような画像受容シートは、厚さが均一
で、柔軟性があり、更に、合成紙特有のボイド構造の為
か、セルロースパルプからなる紙に比べて熱伝導度が小
さく、感度が高いなどの利点があり、このため均一で濃
度の高い画像を形成することができる。

しかし、ポリプロピレンを主成分とする前記多層構造
フィルムを基材として用いた画像受容シートにサーマル
ヘッドを用いて画像を記録すると、多層構造フィルムに
付与されていた延伸応力が熱によって緩和され、熱収縮
し、その結果画像受容シートにカールやシワを発生し、
プリンター内のシートの走行にトラブルを起こし、又プ
リントの商品価値を著しく低下させる等の欠点がある。
特に昇華染料転写方式のプリンターは、転写に要する熱
量が大きいため、前記熱収縮の傾向が顕著であった。

そこで、上記の熱変形性の高い合成紙を用いることな
く、画像の不均一性などの欠点を解消するために、セル
ロースパルプからなる紙をシート状支持体として用い、
これに有機高分子バリア層を設け、基材とする方法が特
開昭62−21590号に開示されている。また、銀塩写真に
従来から用いられている、セルロースパルプを主成分と
した紙からなる支持体の両面に熱可塑性樹脂、特にポリ
エチレンを主成分とする被覆層を形成して、いわゆるレ
ジンコート紙（RC紙）とし、これを基材として用いるこ
とも、上記と実質的に同一の試みである。このような支
持体には延伸応力は殆ど残留していないので、これを加
熱しても熱収縮によるカールやシワを発生することはな
い。

しかし、通常銀塩写真に用いられるレジンコート紙
は、一般に湿式の現象処理への適性や、感光性乳剤の塗
工適性などを考慮して設計されたものであって、サーマ
ルヘッドを用いて熱転写を施す昇華性染料熱転写プリン
ター用の画像受容シート用シート状支持体とし開発され
たものではなく、従って、この用途に用いるにはいくつ
かの欠点がある。

特に画像受容シートは、多くの場合カットシートとし
て用いられるので、その剛度がプリンター内における走
行性の重要なファクターである。

また、印画時に付与される熱エネルギーに対応して、
忠実に画像を再現するためには、画像受容層と、サーマ
ルヘッドと画像受容層表面との密着性が均一な画像を形
成するための重要なファクターである。

このため、単に、上質紙の両面にポリエチレンをラミ
ネートしただけのシート状支持体を用いると、剛度が不
足の場合には、そのためプリンター走行中にジャム、重
送などを生じ、また剛度が過大の場合には、ミスフィー
ド、ジャムなどの走行性のトラブルを発生させている。
また、剛度が過大になるとサーマルヘッドと画像受容層
表面との密着性が不足し、その結果、画像の不均一性を
生じていた。

従って、上記の欠点を解消した染料熱転写画像受容シ
ートの開発が強く要望されていた。

〔課題を解決するための手段・作用〕

本発明者らは、上記の問題点を解決するために、レジ
ンコート紙を基材とした染料熱転写画像受容シートの構
成と、上記の問題点との関係をシステム的に検討した結
果、画像受容シートを、特定の条件を満たした積層体と
することにより、画像を忠実に受容し、かつ安定した走
行性を実現し得ることを見出し、従来の難点を解決する
ことに成功した。

本発明の染料熱転写画像受容シートは、セルロースパ
ルプを主成分として含み、かつ120g/m²〜160g/m²の坪量
と、120μｍ〜160μｍの厚さとを有するシート状支持体
と、その１面上に形成され、熱可塑性樹脂を主成分とし
て含み、かつ15μｍ〜40μｍの厚さを有する下部被覆層
と、前記下部被覆層上に形成され、熱転写画像形成染料
を受容し、これを染着する重合体を含み、かつ２μｍ〜
15μｍの厚さを有する画像受容層と、前記シート状支持
体の反対面上に形成され、熱可塑性樹脂を主成分として
含み、かつ10μｍ〜30μｍの厚さを有する反対面被覆層
とを有する積層体からなることを特徴とするものであ
る。

第１図に示された本発明の染料熱転写画像受容シート
の一実施態様において、シート状支持体（紙）１の一面
上に、熱可塑性樹脂下部被覆層２が形成されており、シ
ート状支持体１の反対面の上に熱可塑性樹脂反対面被覆
層４が形成され、下部被覆層２の上に熱転写染料染着性
重合体を含む画像受容層３が形成されている。

本発明の画像受容シートにおいて、その下部被覆層お
よび反対面被覆層に用いられる熱可塑性樹脂は、ポリオ
レフィン系樹脂から選ばれることが好ましくは、高密度
ポリエチレンを用いることが特に好ましい。その他のポ
リエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテ
ン、並びにこれらの共重合体、または混合物を用いるこ
ともできる。

本発明の画像受容シートに用いられるシート状支持体
は、セルロースパルプを主成分として含むものであっ
て、その表面平滑度、および下部被覆層の表面平滑度
は、直接画質を決定するものではないが、これらの上に
形成される画像受容層の表面平滑性、および表面特性を
向上させる為に、これらの表面平滑度を一定の範囲の水
準に制御することが好ましい。

本発明によって、耐熱性に優れた木材パイプを主原料
とする紙をシート状支持体として含む画像受容シートが
得られる。セルロースパルプを主原料とするシート状支
持体は、原料パルプの種類、パルプの処理法、添加薬品
の種類、抄造条件、後処理条件等により、その地合いを
改善し、かつ、表面と反対面との表面平滑度を一定の水
準にコントロールすることができ、それによって、転写
画像の均一性を改善することが可能となる。

シート状支持体の坪量は120g/m²以上、160g/m²以下の
範囲にコントロールし、また厚さを120μｍ以上、160μ
ｍ以下の範囲にコントロールすることにより、柔軟で、
かつ、プリンターになじみのよい画像受容シートが得ら
れ、結果として、サーマルヘッド、インクシート、およ
び画像受容シートの間の密着性が向上し、画像染着効率
が向上し、かつ転写画像の均一性が改善される。

シート状支持体の坪量および厚さが、上記範囲外にな
ると、過度に剛直又は柔軟になり、プリンターとのなじ
みが不良となり、その結果、サーマルヘッド、およびイ
ンクシートと、画像受容シートとの密着性が不良になっ
たり、プリンター内走行性が不良になったりして、画像
の均一性や画像受容感度が低下する。

シート状支持体の１面上に、ポリオレフィン系樹脂な
どから選ばれた熱可塑性樹脂を主成分として、下部被覆
層を形成し、更にその上に、ポリエステル樹脂層などの
染料受容性樹脂を主成分として画像受容層を形成する。

熱可塑性樹脂を主成分として含む、下部被覆層は、15
μｍ以上、40μｍ以下の厚さを有し、また、画像受容層
は、熱転写画像形成染料を受容染着するものであって、
２μｍ以上、15μｍ以下の厚さを有している。前述のよ
うに、下部被覆層表面を平滑にすることによって、画像
受容層の表面平滑度を向上させることができ、それによ
って、画像受容層に受容される画像の画質を向上させる
ことが可能となる。

また、シート状支持体、下部被覆層および画像受容層
の厚さを上記範囲内にコントロールすることにより、各
層間の接着性も良好となる。

熱可塑性樹脂を主成分とする下部被覆層の厚さが15μ
ｍ未満になると、得られるシート状支持体と下部被覆層
との接着性が不良となる。また、この厚さが40μｍを越
えると、シート全体の厚さが過大となるため、剛度が過
大となり、画像受容層表面のサーマルヘッドへのなじみ
が悪化して、画質低下の恐れがあり、また、走行性も低
下する。

熱転写画像形成染料を受容し、染着する画像受容層の
厚さが２μｍ未満になると、画像の均質性、および十分
な濃度が得られない。また、この厚さが15μｍを越える
と、効果が飽和し、画像受容シート全体の厚さが過大に
なり、また、熱転写の際に、熱融着を発生する恐れが大
きくなる。

熱可塑性樹脂を主成分として含む反対面被覆層の厚さ
は10μｍ以上、30μｍ以下であって、この規定された厚
さは、画像受容シートの画像受容層側へのカールをコン
トロールするために必要である。この厚さが10μｍ未満
では、望ましくないカールが発生する恐れが大きく、30
μｍを越えると、効果が飽和し、シート全体の厚さが過
大となる。

シート全体の厚さ、および剛度等は熱転写画像受容シ
ートとしての用途によって、すなわちカラープリント、
コンピューターグラフィックス、ラベル、カードなどの
用途により適宜に選択されるが、現在のプリンターに
は、シート全体の厚さとして150〜240μｍであることが
好適であり、このようにすると、プリントの風合、およ
び触感も適当なものとなる。

本発明において、シート状支持体として用いられる紙
の種類には、格別の限定はないが、一般には上質紙が用
いられる。紙の平坦性、および表面特性は紙の地合に左
右されるから、紙に最も必要な条件は地合の良さであ
る。又、表面性を損なうような剛直な長繊維や、チリを
含まないことが好ましい。

下部被覆層および反対面被覆層に用いられる熱可塑性
樹脂、好ましくはポリオレフィン系樹脂は、白色顔料を
含んでも良い。白色顔料としては、二酸化チタン、硫化
亜鉛、酸化亜鉛、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、
硫酸バリウム、クレー、焼成クレー、タルク、カオリ
ン、炭酸カルシウム、シリカ、珪酸カルシウムなどのよ
うな、従来ポリオレフィン系樹脂に配合、練り込み用と
して知られているものから自由に選択することができ
る。

白色顔料の種類やグレードを適宜に選択することによ
って、溶融押し出しラミネーターで得られる下部被覆層
の表面平坦度を或る程度コントロールすることが可能で
ある。

熱可塑性樹脂、例えばポリオレフィン系樹脂、および
白色顔料による下部被覆層および反対面被覆層は、溶融
押し出しラミネーターにより形成されるが、得られる被
覆層の表面平坦度やシート状支持体との接着性が良好な
ものであることが好ましい。

一般に、下部および反対面被覆層中の白色顔料含有率
は、20重量％以下であることが好ましい。これが20％よ
り多くなると、ラミネートされたポリオレフィン樹脂層
の強度が不足して膜割れを起こしたり、シート状支持体
と樹脂層との接着性が不足し剥離しやすくなったりす
る。

一般に、溶融押し出しラミネーターで形成された下部
および反対面被覆層の表面は、高平坦性であり、これが
白色顔料を含む場合は高白色度を有している。このよう
な被覆層は、当然画像受容層表面を高平坦性化し、従っ
て優れた高精細、高感度、高階調の画像を形成するため
に有効である。

シート状支持体の反対面（裏面）にも熱可塑性樹脂の
被覆層を設けることにより、画像受容シートのカール発
生を防止することが可能となり、更に、すぐれた耐水性
および耐候性を付与できる。

又、反対面被覆層の表面を、マット化すると、印字、
筆記が容易となり便利である。マット化は、例えばポリ
オレフィン系樹脂を、シート状支持体状に押し出しラミ
ネートするときに、予め所望のパターンにマット化され
た表面を有する冷却ロールを、ラミネートされた樹脂層
の表面に圧着することにより冷却ロールのマット化面を
反対面被覆層の表面にエンボスすることができる。

〔実施例〕

本発明を下記実施例により更に説明する。

実施例１ 坪量150g/m²、厚さ148μｍ、表面（フェルト面）の平
滑度430秒の上質紙をシート状支持体として用いた。

シート状支持体の表面の上に、10重量％の二酸化チタ
ンを含むポリエチレン樹脂層を35μｍの厚さで溶融押出
しラミネートし、得られた下部被覆層表面にコロナ放電
処理を施した。この下部被覆層上に、下記組成を有する
塗料−１を、厚さ８μｍになるようにドクターブレード
法で塗工、乾燥して画像受容層を形成した。

塗料−１ 成分 重量 飽和ポリエステル樹脂 100部 （商標：バイロン200、東洋紡（株）製） シリコーン樹脂 ５部 （商標:SH−3746、トーレシリコーン（株）製） トルエン 500部 メチルエチルケトン 100部 シート状支持体の裏面上にポリエチレン樹脂を25μｍ
の厚さに溶融押出しラミネートし反対面被覆層を形成し
た。

得られた染料熱転写画像受容シートに下記の性能テス
トを行った。

性能テスト 染料熱転写画像受容シートに対して、厚さ６μｍのポ
リエステルフィルムの上に昇華性染料をバインダーと共
に含色材層を設けたイエロー、マゼンタ、シアン３色の
それぞれのインクシートを用いて、市販の熱転写プリン
ターのサーマルヘッドで段階的に加熱して、画像受容層
に熱転写させ、各色の中間調の単色及び色重ねの画像を
プリントし、得られた画像の鮮明度、および欠陥、並び
にシートの熱によるカール発生を目視で観察した。

テスト結果を第１表に示す。

実施例２ 実施例１と同じ操作を行った。但し、下部被覆層の厚
さを25μｍとし、反対面被覆層の厚さを18μｍとした。

テスト結果を第１表に示す。

実施例３ 実施例１と同じ操作を行った。但し、下部被覆層の厚
さを20μｍとし、反対面被覆層の厚さを15μｍとした。

テスト結果を第１表に示す。

比較例１ 実施例１と同じ操作を行った。但し、坪量189g/m²、
厚さ180μｍ、表面（フェルト面）の平滑度210秒の上質
紙をシート状支持体として用いた。

テスト結果を第１表に示す。

比較例２ 実施例１と同じ操作を行った。但し、下部被覆層の厚
さを50μｍとし、反対面被覆層の厚さを40μｍとした。

テスト結果を第１表に示す。

比較例３ 実施例１と同じ操作を行った。但し、下部被覆層の厚
さを10μｍとし、反対面被覆層の厚さを10μｍとした。

テスト結果を第１表に示す。

比較例４ 実施例１と同じ操作を行った。但し、シート状支持体
として、ポリオレフィン合成紙（商標：ユポFPG150、王
子油化合成紙（株）製）を用いた。

テスト結果を第１表に示す。

〔発明の効果〕 本発明の染料熱転写画像受容シートは、画像の階調
性、低濃度および高濃度の均一性、並びに画像の抜け防
止性などにおいて優秀なものであり、加熱プリントによ
るカールの発生が少なく、画像の鮮かさ、および自然感
のいずれにおいても優秀なものであって、従来法の欠点
を解消し、高品質の染料熱転写プリントを可能ならしめ
るものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明の染料熱転写画像受容シートの一実施
態様の構成を示す断面説明図である。 １……シート状支持体（パルプを主成分とする紙）、 ２……下部被覆層、 ３……画像受容層、 ５……反対面被覆層。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】セルロースパルプを主成分として含み、か
   つ120g/m²〜160g/m²の坪量と、120μｍ〜160μｍの厚さ
   とを有するシート状支持体と、その１面上に形成され、
   熱可塑性樹脂を主成分として含み、かつ15μｍ〜40μｍ
   の厚さを有する下部被覆層と、前記下部被覆層上に形成
   され、熱転写画像形成染料を受容し、これを染着する重
   合体を含み、かつ、２μｍ〜15μｍの厚さを有する画像
   受容層と、前記シート状支持体の反対面上に形成され、
   熱可塑性樹脂を主成分として含み、かつ10μｍ〜30μｍ
   の厚さを有する反対面被覆層とを有する積層体からなる
   染料熱転写画像受容シート。