JP2526734B2 - 金属電解採取方法に用いる不溶性アノ―ドボックス - Google Patents

金属電解採取方法に用いる不溶性アノ―ドボックス

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JP2526734B2
JP2526734B2 JP3334456A JP33445691A JP2526734B2 JP 2526734 B2 JP2526734 B2 JP 2526734B2 JP 3334456 A JP3334456 A JP 3334456A JP 33445691 A JP33445691 A JP 33445691A JP 2526734 B2 JP2526734 B2 JP 2526734B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、陽極からガスを発生す
る金属電解採取法において、ガスが不溶性アノードボッ
クス外に逆拡散することなく完全に防止し得る金属電解
採取方法に用いる不溶性アノードボックスに関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】従来から、たとえばニッケルを採取する
方法として、Niを主成分とするニッケルマット
を粉砕した後、塩化物溶液にリパルプして塩素ガスを吹
込み、ニッケルを含む金属を浸出し、その浸出液から
銅、コバルト、鉄などを化学的処理によって除去した
後、得られた塩化ニッケル水溶液から、不溶性アノード
を用いる電解法によってカソードのニッケル板上にニッ
ケルを電着採取する方法が行なわれている。
【0003】このような金属塩化物水溶液からの電解採
取方法においては、不溶性アノードにおいて塩素ガスが
発生するので、これを、不溶性アノードの周囲を囲むよ
うにして設けた不溶性アノードボックス内で捕集して電
解槽外へ排出する機構が必要となるものである。このよ
うな場合に用いられる不溶性アノードボックスとして
は、従来、たとえば、図3及び図4に示す構成のものが
知られている。
【0004】すなわち、図3に断面図として示すもの
は、特開昭51−77502号公報に開示されているも
のであって、公報記載から、電解槽10中に、陰極12
(図示せず)を間に挾んで一定間隔に陽極11が設けら
れている。しかして、本願発明にいう不溶性アノードボ
ックスは、陽極11と、陽極11の金属塩化物保持電解
質13中へ浸漬された部分を覆う隔膜21と、陽極11
の上部を包むフード22とを備え、フード22には、電
解槽10中の金属塩化物保持電解質13液面よりも上部
に、陽極11で発生する塩素などのガスと、陽極11を
包囲する封入電解質24を吸引排出する出口ダクト25
が設けられていることがわかる。
【0005】又、図4に、切欠斜視図で示すものでは、
アノードボックス8は、上面にアノードボックス8の内
部に突出しないガス排出管9を設けて発生ガスなどをこ
のガス排出管9から排出し、アノードボックス8内の陽
極液は、アノードボックス8の底部を貫通して設けた排
液管10から排出するように構成されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図3に
示すものでは、陽極を包囲する封入電解液24の液面が
電解槽10の金属塩化物保持電解質13の液面より高く
なるため、陽極11で発生した塩素ガスなどが、いわゆ
るアノードボックスの外へ逆拡散することを完全には防
止できないという問題がある。又、このような構造のア
ノードボックスで出口ダクト25を電解槽10液面より
低い位置に設けることは、多数の出口ダクト25を電解
槽10壁を貫通して設けねばならず、実際の施工におい
てはほとんど不可能に近いという問題もあるものであ
る。
【0007】又、図4に示すものでは、排液管10の上
端開口の高さを適正に定めればアノードボックス内の陽
極液の液面を外の液面より低く保つことが可能である。
しかしながら、排出管10は、適正な排出量を確保する
ためと、垂直性を保つための強度との両面から管径をあ
る程度以上小さくできないために、アノードボックスの
厚さが大きくなり、ひいては、カソードとアノードとの
極間距離が大きくなり、電解そのものの効率性を高くで
きないという問題がある。
【0008】不溶性アノードボックスを用いる電解採取
法において、不溶性アノードボックス内で発生したガス
が不溶性アノードボックスの外へ逆拡散することを防止
することは、とくに、ガスが塩素のような場合には、作
業環境を良好に保つために重要である。又、不溶性アノ
ードボックス内で酸素が発生するような電解の場合に
は、アノード側で発生した酸素がカソード側へ漏洩する
ことによりカソードで水素が発生し、電着効率を低下さ
せることになるので、やはり陽極で発生するガスの逆拡
散防止は重要である。しかしながら、前述のように、逆
拡散を防止しつつ、かつ、効率的な電解を行なう適当な
方法がないという問題がある。
【0009】本発明は、ガスを発生する金属塩水溶液か
ら金属を電解採取する方法において、不溶性アノードボ
ックスから外へガスの逆拡散がおこることを完全に防止
するとともに、効率的な電解が可能な電解採取方法に用
いる不溶性アノードボックスを提供することを目的とす
るものである。
【0010】
【問題を解決するための手段】本発明者等は、前記問題
を解決し、前記目的を達成するために研究を重ね、特定
通水度のろ布で不溶性アノードを包み、特定形状の排出
管を設けた不溶性アノードボックスとし、これを使用し
て特定条件で電解することによって目的を達し得ること
を見出して本発明を完成するに至った。すなわち、本発
明は、不溶性アノードと、不溶性アノードの上部を包む
カバー部と、不溶性アノードの電解液中浸漬部を覆うろ
布とを備えた不溶性アノードボックスにおいて、ろ布は
通水度0.03〜0.11/m/sec(静水圧20
0mmHO時の値)であり、前記カバー部には先端を
斜めに切落した形状を有する排出管をカバー部上からカ
バー部内に突出して設けた金属電解採取に用いる不溶性
アノードボックスを特徴とするものである。
【0011】本発明者等は、図5に示すような横型電解
槽を用いて通水試験を行なうことによって、ろ布の種
類、陽極液と電解槽液との液面高差、不溶性アノードボ
ックス内気相圧を変えて陽極液から電解液への塩化ナト
リウムの逆拡散を調査した。すなわち、図5に示す横型
電解槽において、塩化ビニル製の電解槽11中に、不溶
性アノードボックス1を立設したものであり、不溶性ア
ノードボックス1の外側にイオン交換水を供給し、塩化
ナトリウム水溶液をキャピラリー15からろ布8を通し
て不溶性アノードボックス1内に供給した。イオン交換
水溶液は、ろ布8を通して不溶性アノードボックス1内
に入り、排出管5を通して気体とともに吸引排出される
ほか一部は、電解槽11の排液部16からもオーバーフ
ローして排出される。なお、不溶性アノードボックス1
内には、下部から空気を供給することによって、不溶性
アノードボックス1のカバー部4内の気相部の条件を形
成した。なお、ろ布8としては、通水度2.0l/m
/sec(静水圧200mmHO時の値)のテトロン
ろ布(A) 及び、通水度0.05l/m/sec(静水
圧200mmHO時の値)のテトロンろ布(B) とを用
いた。
【0012】試験結果を下記する表1に示すが、ろ布と
しては、通水度0.05l/m/secのテトロンろ
布(B) の方が電解槽液中への塩化ナトリウムの逆拡散が
少なくなっており、液面差は、陽極液に対して電解槽液
が低くなると逆拡散が増大することが認められた。結
局、実験番号No.3にみられるように、テトロンろ布
(B) を用い、カバー部気相圧−5mmHO以下、陽極
液面が電解液面より5〜20mm程度低い条件でもっと
も塩化ナトリウムの逆拡散を効率的に防止し得ることが
認められた。
【0013】
【表1】
【0014】したがって、本発明方法においては、前記
条件を適正範囲とするものである。なお、ろ布の通水度
0.03〜0.1l/m/secの範囲としたのは、
この範囲内であれば、液面差(5〜20mm)、カバー
部気相圧(−5mmHO以下)を前記範囲に保って、
電解槽液が不溶性アノードボックス内に入って陽極液と
して排出する量と、そのままオーバーフローする量との
比率を通水度0.05l/m/secのろ布を用いた
場合とあまり変らず制御できる実操業上の範囲であるか
らである。
【0015】
【作用】本発明不溶性アノードボックスを用いて金属電
解採取方法を実施した場合、陽極からガスを発生する金
属電解採取であっても、前記諸条件の範囲内において施
行することによって不溶性アノードボックスから電解槽
液側にガスが逆拡散することを完全に防止することがで
きる。又、排出管が陽極液中にまでのびていず、管径も
細くし得るので、同様な目的に使用されている従来の不
溶性アノードボックスよりも厚さを小さくすることがで
き、アノードとカソードとの間の極間距離を小さくし得
て効率的な電解採取を行なうことができるものである。
【0016】
【実施例】次に、本発明の実施例を添付の図面に基づい
て述べる。
【0017】図1は、本発明不溶性アノードボックスの
一実施例を示す切欠斜視図であり、図2は、図1に示す
本発明不溶性アノードボックスを装備した電解槽の一実
施例を示す切欠斜視図である。
【0018】図1に示すように、1は、不溶性アノード
ボックスであって、次のように構成されている。すなわ
ち、2は、不溶性アノードであって、たとえばチタニウ
ムのような材料で作られていて、上部においてアノード
ビーム3に連結されている。4は、カバー部であって、
不溶性アノード2の上部を包むように形成されている。
5は、排出管であって、カバー部4の上部から内部へカ
バー部4の一方の角部に突設されており、その先端がガ
スと陽極液とを同時に吸引できるように斜めに切落され
た形状に形成され、陽極液中に浸漬しないようにされて
いる。6は、枠であって、カバー部4に連接され、不溶
性アノード2の周縁部を囲んで形成されている。7は、
補強機であって、不溶性アノード2の表面に、たとえば
井桁状に形成されて枠6に連設されている。8は、ろ布
であって、通水度0.03〜0.1l/m/sec
(静水圧200mmHO時の値)のたとえばテトロン
ろ布であって、不溶性アノード2、枠6、補強機7を外
側から覆う袋状をなし、上部は、たとえば、カバー部4
の外側に形成された溝部9に、ろ布8の外側からオーリ
ング10を嵌め込むことによって固定されている。
【0019】次に、本発明不溶性アノードボックスを装
備した電解槽例を示す図2において、11は、電解槽で
あり、12は、ブスバーであって、電解槽11の長手方
向両側上部に沿って配設されており、電源に連結されて
いる。1は、不溶性アノードボックスであり、図1と同
様に構成されており、連結されているアノードビーム3
をブスバー12上に載置することによって保持され通電
されるようになっている。13は、カソードであって、
ニッケルのような金属板で作られ、連結されているカソ
ードビーム14をブスバー12上に載置することによっ
て保持され、通電されるようになっている。なお、5
は、不溶性アノードボックス1に設けられている排出管
である。又、給液は、一箇所から一括給液してもよい
し、複数箇所に分割して行なってもよい。 実施例1 7枚のニッケルカソードと、図1のように構成された8
枚の本発明不溶性アノードボックスとを、それぞれの中
心間の極間距離を55mmとして配設した図2のように
構成された容積1.5mのパイロットプラント電解槽
を使用して、組成が、Ni:60g/l、Na:5g/
l、SO:8g/l、Cl:70〜80g/l、p
H:1.15、溶解Clはなし、比重1.13、温度
55℃のような電解液を給液速度0.25m/h、槽
電圧3.05V、槽電流2.5KA、陰極電流密度22
3A/m、陽極液の液面を電解槽液面より20mm低
くし、不溶性アノードボックス内の気相圧を−5〜−1
0mmHOに制御するという条件で電解処理を行なっ
た。
【0020】その結果は、電流効率は94.5%であ
り、液面差は20mmに保持され、不溶性アノードボッ
クス内の気相圧は−5〜−10mmHOに制御されて
おり、排出管から排出された陽極液は、0.20m
h、pH1.32、温度60℃、Ni53g/l、溶解
Cl<1mg/lであった。
【0021】さらに、電解槽全体をビニールシートで覆
い、換気ファンで吸引して雰囲気中のClを検知管に
より測定したが、Clは検知されなかった。 実施例2 38枚のニッケルカソードと、39枚の図1と同様に構
成した本発明不溶性アノードボックスを極間距離55m
mに装備した容積7mの実操業規模の電解槽を使用し
て、実施例1と同様な電解液を1.4m/hで給液
し、槽電圧3.10V、槽電圧14KAとした以外は、
実施例1と同様条件で電解処理を行なった。
【0022】その結果は、電流効率は94・5%であ
り、液面差は20mmに保持され、不溶性アノードボッ
クス内の気相圧は−5〜−10mmHOに制御されて
おり、排出管から排出された陽極液は0.12m
h、pH1.34、温度60℃、Ni53g/l、溶解
Cl<1mg/lであった。なお、実施例1と同様に
して逆拡散Clを測定したがClは検出されなかっ
た。
【0023】
【発明の効果】本発明は、特定通気度のろ布を使用し、
特定の排出管を設けた不溶性アノードボックスであり、
これを装備した電解槽において特定条件で電解処理をす
るものであるから、陽極からガスを発生する金属電解採
取であっても、ガスが不溶性アノードボックス外に逆拡
散することを完全に防止し得、又、アノードとカソード
との極間距離を小さくし得て、効率的な電解採取を行な
い得るものであって、顕著な効果が認められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の不溶性アノードボックスの一実施例を
示す切欠斜視図である。
【図2】図1に示す本発明アノードボックスを装備した
電解槽の一実施例を示す切欠斜視図である。
【図3】従来の不溶性アノードボックス例を示す断面図
である。
【図4】従来の不溶性アノードボックスの別の例を示す
切欠斜視図である。
【図5】本発明の諸条件決定に用いた電解槽の切欠斜視
図である。
【符号の説明】
1 不溶性アノードボックス 2 不溶性アノード 4 カバー部 5 排出管 8 ろ布 11 電解槽

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 不溶性アノードと、不溶性アノードの上
    部を包むカバー部と、不溶性アノードの電解液中浸漬部
    を覆うろ布とを備えた不溶性アノードボックスにおい
    て、ろ布は通水度0.03〜0.11/m/sec
    (静水圧200mmHO時の値)であり、前記カバー
    部には先端を斜めに切落した形状を有する排出管をカバ
    ー部上からカバー部内に突出して設けたことを特徴とす
    る金属電解採取に用いる不溶性アノードボックス。
JP3334456A 1991-11-22 1991-11-22 金属電解採取方法に用いる不溶性アノ―ドボックス Expired - Lifetime JP2526734B2 (ja)

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