JP2521971B2 - 2,3,6−ナフタレントリカルボン酸の製造方法 - Google Patents

2,3,6−ナフタレントリカルボン酸の製造方法

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JP2521971B2
JP2521971B2 JP62202909A JP20290987A JP2521971B2 JP 2521971 B2 JP2521971 B2 JP 2521971B2 JP 62202909 A JP62202909 A JP 62202909A JP 20290987 A JP20290987 A JP 20290987A JP 2521971 B2 JP2521971 B2 JP 2521971B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) この発明は、高機能性樹脂原料などとして有用な2,3,
6−ナフタレントリカルボン酸(以下、「2,3,6−NTCA」
という)の新規な製造方法に関する。
(従来の技術) 2,3,6−NTCAの製造方法に関する文献は非常に少ない
が、例えば、Bull.Chem.Soc.Jpn.,45巻,519頁(1972)
に、2,3−ジメチルナフタレンを無水塩化アルミニウム
の存在下にアシル化して粗収率37%でβ−[2−(6,7
−ジメチルナフトイル)]プロピオン酸を合成し、これ
を二クロム酸ナトリウムを用いて酸化することにより2,
3,6−NTCAを粗収率29%で得る方法が発表されている。
しかし、この方法では、出発原料として、入手の困難
は2,3−ジメチル(またはジアルキル)ナフタレンを使
用すること、アシル化反応時に目的とするβ−プロピオ
ン酸が低い選択率でしか得られないため、最終製品であ
る2,3,6−NTCAが必然的に高価になるという欠点があ
る。
一方、2,6−または2,7−ジアルキルナフタレンのアシ
ル化により2,6−ジアルキル−7−アシルナフタレンま
たは2,7−ジアルキル−6−アシルナフタレンを合成
し、これを酸化して2,3,6−NTCAを製造する方法も考え
られる。しかし、2,6−ジアルキルナフタレンをアシル
化しても、2,6−ジアルキル−3−アシルナフタレンの
収率は4.8%に過ぎず〔J.Chem.Soc.,(C),1971,p.258
6〕、また2,7−ジアルキナフタレンのアシル化では2,7
−ジアルキル−3−アシルナフタレンの収率は最大42.5
%でしかない〔J.Chem.Soc.,Perkin I,1972,p.1442〕。
したがって、これらを酸化しても、2,3,6−NTCAの収率
はかなり低くならざるを得ない。これは、アシル化反応
における7位または6位への選択性が低く、ナフタレン
核の他の位置への配向性の方がより強いからであると考
えられる。
(発明が解決しようとする問題点) このように、2,3,6−NTCAの工業的な製造方法はまだ
確立されておらず、選択率および収率がいずれも高い工
業的に実施可能な2,3,6−NTCAの新規製造方法の出現が
望まれている。この発明は、この技術的課題を解決する
ことを目的とする。
(問題点を解決するための手段) 本発明者らは、高選択率および高収率で2,3,6−NTCA
を生成する方法を見出すべく検討した結果、2,6−ジア
ルキルテトラリンまたは2,7−ジアルキルテトラリンを
アシル化すると、極めて高い選択率で2,6−ジアルキル
−7−アシルテトラリンまたは2,7−ジアルキル−6−
アシルテトラリンが生成し、これを脱水素するとほとん
ど定量的に相当するナフタレン化合物に転化し、さらに
このナフタレン化合物の液相酸化により、目的とする2,
3,6−NTCAが容易に得られることを見出し、極めて有利
な2,3,6−NTCAの製造方法としてこの発明を完成させ
た。
すなわち、この発明は、2,6−および/または2,7−ジ
アルキルテトラリンをフリーデル・クラフッ触媒の存在
下アシル化し、アシル化生成物を次いで接触脱水素した
のち液相酸化することを特徴とする、2,3,6−NTCAの製
造方法である。
この方法の主要な反応経路を、次式に示す。
(ただし、R,R′:アルキル基、 R″:Hまたはアルキル基) 原料として使用する2,6−ジアルキルテトラリンおよ
びまたは2,7−ジアルキルテトラリンは、石油系または
コールタール系のジメチルナフタレン留分を水素添加し
てテトラリン核を形成することにより得ることができ
る。この場合、単品である必要はなく、2,6−体と2,7−
体との混合物でよいから、相当するナフタレン系または
テトラリン系の他の異性体との分離がそれだけ容易とな
る。しかしながら、石油系もしくはコールタール系のジ
メチルナフタレン成分は量的に少なく、また2,6−体お
よび2,7−体のみを分離することも技術的に厄介であ
る。
この発明で使用するジアルキルテトラリン原料の別の
供給法として、2−アルキルテトラリンをフリーデル・
クラフツ反応を利用してアシル化したのち、導入された
アシル基のみを選択的に水素添加すれば、極めて高い収
率で2,6−および2,7−ジアルキルテトラリンを製造する
ことができる。この場合、2−アルキルテトラリンをフ
リーデル・クラフツ触媒の存在下でアシル化すると、テ
トラリン核の6位と7位に選択的にアシル基が導入され
るので、このアシル基を水素添加すれば、2,6−ジアル
キルテトラリンと2,7−ジアルキルテトラリンとの混合
物が得られるから、この混合物をそのままこの発明の方
法の出発原料として使用できる。
この方法で使用する2−アルキルテトラリンのアルキ
ル基は、取得および酸化の容易性を考慮すれば、メチル
基もしくはイソプロピル基が望ましい。2−メチルテト
ラリンおよび2−イソプロピルテトラリンなどの2−ア
ルキルテトラリンは、それぞれ2−メチルナフタレンお
よび2−イソプロピルナフタレン等の対応する2−アル
キルナフタレンを水素添加することによって得られる。
しかし、この水素添加において、6−メチルテトラリン
および6−イソプロピルテトラリンなどの6−アルキル
テトラリンが異性体として副生してくるので、蒸留によ
って2−アルキルテトラリンを単離したのち、残った6
−アルキルテトラリンを脱水素して出発の2−アルキル
ナフタレンに戻し、これを再び水素添加すれば、高収率
で2−アルキルテトラリンを得ることができる。
2−アルキルテトラリンの別の合成法として、テトラ
リンをアシル化したのち、アシル基のみを選択的に水素
添加することにより、2−アルキルテトラリンをほとん
ど定量的な収率で製造することができる。このようにし
て得られた2−アルキルテトラリンは、精製することな
く次工程の原料として使用することができる。
この発明で原料として使用する2,6−および/または
2,7−ジアルキルテトラリンのさらに別の合成法は、2
−アルキルナフタレンのアシル化と水素添加による方法
である。すなわち、2−アルキルナフタレンをフリーデ
ル・クラフツ反応によりアシル化し、必要により得られ
たアシル化生成物から2−アルキル−6−アシルナフタ
レンおよび2−アルキル−7−アシルナフタレンを分離
し、次いでアシル基およびナフタレン核の両方を水素添
加することにより、2,6−および/または2,7−ジアルキ
ルテトラリンを得ることができる。必要ならば、水素添
加後に、所望の異性体を分離する。この方法において、
2−アルキルナフタレンのアシル化を、弗化水素/三弗
化硼素系のフリーデル・クラフツ触媒を使用し、アシル
化剤としてハロゲン化アセチル(特に弗化アセチル)ま
たは一酸化炭素を使用して実施すると、アシル化の配向
性により6位ないし7位が選択的にアシル化される結果
となり、触媒や溶媒の除去後に得られた生成物を精製す
ることなく直ちに水素添加することができ、それにより
この発明で原料として使用できる2,6−ジアルキルテト
ラリンと2,7−ジアルキルテトラリンとの混合物が得ら
れる。
2,6−および2,7−ジアルキルテトラリンはナフタレン
へのアルキレンの付加反応を利用してナフタレンから合
成することもできる。この場合、β位付加への選択性の
高さからプロピレン付加が好適であり、生成するジイソ
プロピルナフタレン中のイソプロピル基は、2,6−体と
2,7−体を主体とするから、これを蒸留または冷却等に
より分離したのち、ナフタレン核を水素添加してテトラ
リン核にすれば、この発明の原料として使用することが
できる。
以上に説明した原料の合成経路において利用されるア
シル化は、弗化水素、三弗化硼素、三塩化アルミニウ
ム、三塩化鉄などのフリーデル・クラフツ触媒の存在下
において、アシル化剤として一酸化炭素を用いたホルミ
ル化、あるいはハロゲン化アセチルを用いたアセチル化
により行うことが望ましい。アシル基の選択的水素添加
は、アルコール等の溶媒の存在下もしくは不存在下に、
コバルト、マンガン、モリブデン、ニッケル、鉄、パラ
ジウム、白金、ルテニウム等の触媒を使用して、加圧な
いし常圧の水素雰囲気下で行うことができる。
ナフタレン核からテトラリン核への水素添加は、通
常、水添触媒の存在下、水素加圧下、100〜400℃で実施
できる。
なお、最近エンジニアリングプラスチックの製造原料
として注目されている2,6−ナフタレンジカルボン酸の
合成に、2,6−ジアルキルナフタレンや2−アルキル−
6−アシルナフタレンが利用されるようになっている
が、このような2,6−置換体は対応する2,7−置換体と分
離が困難で、2,6−置換体の精製時には分離しきれなか
った2,6−置換体と2,7−置換体との混合物が必然的に副
生してくる。この発明の方法では、2,6−ジアルキルテ
トラリンと2,7−ジアルキルテトラリンの混合物を原料
として使用できるので、このような副生する異性体混合
物を有効に利用して、付加価値の高い製品に転化するこ
とができる。
この発明の方法の第一工程は、上記方法で得た2,6−
ジアルキルテトラリンおよび/または2,7−ジアルキル
テトラリンのフリーデル・クラフツ反応によるアシル化
である。この反応により芳香環上の非置換β位(すなわ
ち、7位および/または6位)が選択的にアシル化さ
れ、2,6−ジアルキル−7−アシルテトラリンおよび/
または2,7−ジアルキル−6−アシルテトラリンが生成
する。
フリーデル・クラフツ触媒は、弗化水素、三弗化硼
素、塩化アルミニウム、塩化鉄などの従来公知の任意の
ものが使用できるが、塩化アルミニウム、三弗化硼素及
び弗化水素のうちの1種または2種以上を使用すること
が、選択率および収率の点から推奨される。特に、触媒
として三弗化硼素と弗化水素の混合物を用いると、触媒
を再利用できる上、β位アシル化の選択率が他の触媒に
比較してより良好となる利点がある。
アシル化剤としては、一酸化炭素、酸ハロゲン化物、
酸無水物、カルボン酸、カルボン酸エステル等の公知の
アシル化剤を用いることができる。一酸化炭素を用いる
場合、触媒としては弗化水素/三弗化硼素系を用いるの
が望ましく、導入される置換基がホルミル(−CHO)基
の形となるから、後段で酸化し易い利点がある。ただ
し、熱的、化学的にやや不安定である。酸ハロゲン化物
としては、ハロゲン化アセチル、特に塩化アセチルもし
くは弗化アセチルが好適で、熱安定性と易酸化性の点お
よび価格面でも有利である。アシル化剤の使用量は、原
料のジアルキルテトラリンとほぼ当モル量以下が好まし
い。若干の過剰使用は許容されるが、アシル化剤があま
り過剰になるとジアシル化生成物が副生するので好まし
くない。
アシル化反応は一般に溶媒中で実施される。反応溶媒
は、弗化水素のように触媒自体を溶媒とすることもでき
る。使用触媒が塩化アルミニウム単独の場合には、ニト
ロ化炭化水素(例、ニトロベンゼン、ニトロエタン等)
またはハロゲン化炭化水素(例、塩化メチレン、塩化エ
チレン、クロロホルム、四塩化炭素等)のような極性の
中性溶媒が好適であり、高い選択率を確保することがで
きる。これらの溶媒を単独で、あるいは他の溶媒と混合
して用いることができる。
反応温度は、使用する溶媒の凝固点により下限が決定
され、一般的には−50〜+150℃程度で反応が進行す
る。反応速度、選択率および収率を考慮すると、通常は
−20〜+50℃の範囲内の反応温度が好ましい。アシル化
反応は一般に常圧で行われるが、一酸化炭素をアシル化
剤として使用する場合には3〜50kg/G程度の一酸化炭素
圧下で反応を行う。
この発明の方法の第二工程は脱水素工程、すなわちテ
トラリン核の接触脱水素によるナフタレン核の生成であ
る。この脱水素により対応するナフタレン誘導体、すな
わち2,6−ジアルキル−7−アシルナフタレンおよび/
または2,7−ジアルキル−6−アシルナフタレンが生成
する。テトラリン核の接触脱水素は、常法により遷移金
属酸化物系または貴金属系触媒を使用し、150〜400℃の
反応温度において、溶媒の存在下または不存在下に行う
ことができる。反応温度は使用する触媒によってほぼ決
定され、白金、パラジウム等の貴金属触媒を使用する場
合には150〜200℃の比較的低温で脱水素を行うことが望
ましい。反応時間は一般に数時間を要する。
テトラリン核の脱水素に伴って、遊離した水素による
アシル基の水素添加(すなわち、アルキル化あるいはヒ
ドロキシアルキル化)が並行して起こることがある。こ
の場合には、ナフタレン核の6位または7位にアシル基
を有する誘導体とアルキル基あるいはヒドロキシアルキ
ル基を有する誘導体とが混合状態で得られるが、いずれ
も次工程の酸化によって2,3,6−NTCAとなるので不都合
は生じない。但し、アシル基が安定であれば、一般にア
シル基の方が相当するアルキル基よりも易酸化性である
から、アシル基の水素添加反応を抑制しながら脱水素反
応を進行させてもよい。これは、例えば、窒素ガスなど
の不活性ガスを反応系に流通させるか、減圧条件を採用
して、遊離した水素ガスを除去しながら脱水素反応を実
施することで達成される。また、アシル基が不安定であ
る場合や、後段での精製に有利である場合は、脱水素の
前、後、または脱水素と同時にアシル基の水素添加を行
なうこともできる。
この脱水素反応により、95%以上の実質的に定量的な
収率でテトラリン核からナフタレン核に脱水素されるの
で、反応生成物は、触媒を除去した後、そのまま最終工
程の酸化反応に供することができる。
脱水素反応生成物の酸化は、公知の自動酸化や薬品酸
化などの液相酸化法により好都合に実施でき、ナフタレ
ン核のアルキルおよびアシル置換基がカルボキシル基に
酸化されてこの発明の方法の目的生成物である2,3,6−N
TCA、あるいは反応条件によっては(例、無水酢酸溶媒
中における高温での自動酸化の場合)その無水物が得ら
れる。反応条件も当業者であれば適宜選択することがで
きるが、以下に簡単に酸化工程について説明する。
自動酸化の場合には、テレフタル酸や2,6−ナフタレ
ンジカルボン酸の合成に用いられている方法を適用する
ことができる。すなわち、酢酸等の溶媒中において、コ
バルトもしくはマンガンの有機酸塩と臭素の混合物等の
触媒の存在下で空気酸化させる。反応温度は120〜280℃
であり、一般に数十気圧までの空気圧下に反応を実施す
る。
薬品酸化は、酸化剤として二クロム酸塩、過マンガン
酸塩、硝酸等を使用して実施することができる。反応溶
媒としては、水、酢酸等が使用でき、反応温度は常温〜
300℃程度である。
酸化工程で生成した2,3,6−NTCAもしくはその無水物
の精製は、従来の液相酸化による芳香族ジカルボン酸の
製造で適用されているのと同様の方法で実施できる。例
えば、水素添加、酸化、酸析、メチルエステル化後の晶
析などの精製方法が利用できる。なお、必要であれば、
アシル化および脱水素工程で得られた中間生成物も公知
の適当な方法により精製しうることは言うまでもない。
また、生成した2,3,6−NTCAからその無水物への変
換、またはその逆は、常法により脱水もしくは水和によ
り実施できる。
(実施例) 次に実施例により本発明の方法を例示する。
実施例1 (A)塩化アセチル314g(4モル)と無水塩化アルミニ
ウム533g(4モル)とを塩化エチレン2500gに溶解し、
得られた溶液を、2,6−ジメチルテトラリン640g(4モ
ル)を塩化エチレン4000gに溶解した溶液に、撹拌下に2
0℃の温度で20分間かけて滴下した。滴下終了後、反応
混合物を20℃で1時間反応させた。反応終了後、水2000
gを反応液に添加して塩化アルミニウムを抽出除去した
のち、残留する有機層から塩化エチレンを留去すると、
反応生成物として808gの固体が得られた。この固体をガ
スクロマトグラフィーで分析したところ、収率95%、選
択率96%で目的とする2,6−ジメチル−7−アセチルテ
トラリンが生成していることが判明した。
上記と同様の操作で得た反応生成物1500gを撹拌下に4
0℃に冷却し、析出した結晶を遠心濾過器で回収した。
母液は系に戻しながら液を10℃まで徐々に冷却して遠心
濾過器による析出結晶の濾別を続けた。こうして回収さ
れた結晶を少量のアルコールで洗浄し、洗液はアルコー
ルを留去したのち系に戻す操作を繰り返し、純度99%の
2,6−ジメチル−7−アセチルテトラリン1200gを得た。
回収率は83%であった。
(B)上記の(A)で得た純度99%の2,6−ジメチル−
7−アセチルテトラリン202gと、脱水素触媒として炭素
担持パラジウム触媒(Pd含有量10重量%)2gとを、容量
500mlの電磁撹拌式オートクレーブに仕込み、常圧下、
窒素気流中、260℃で5時間脱水素反応させた。反応終
了後、冷却した反応混合物から触媒を濾去し、2,6−ジ
メチル−7−アセチルナフタレン65%と2,6−ジメチル
−7−エチルナフタレン33%とを含有する脱水素生成物
191gを得た。その収率は99%であった。
(C)上の(B)で得た脱水素生成物9.6g(0.05モ
ル)、二クロム酸ナトリウム・二水塩63g(0.21モ
ル)、および水150mlを、容量500mlのオートクレーブに
仕込み、撹拌下、250℃で20時間酸化反応させた。反応
終了後、析出した酸化クロムを濾別し、熱水で洗浄し
た。この洗液を母液と一緒にして塩酸で酸析し、純度97
%の白色粉末状の2,3,6−NTCA109gを得た。その収率は8
1%であった。
実施例2 (A)無水塩化アルミニウム160g(1.2モル)と塩化ア
セチル86.4g(1.1モル)とを塩化エチレン500gに溶解し
た。その溶液を、2−メチルテトラリン146g(1.0モ
ル)を塩化エチレン1000gに溶解した溶液に、30℃で30
分間かけて滴下し、混合物を30℃で1時間反応せしめ
た。反応終了後、反応液に水を添加し、塩化アルミニウ
ムを水溶液として抽出除去し、塩化エチレン層を20%水
酸化ナトリウム水溶液および水で順に洗浄した。次いで
塩化エチレンを留去し、2−メチル−6−アセチルテト
ラリンと2−メチル−7−アセチルテトラリンを主体と
する生成物184gを得た。生成物をガスクロマトグラフィ
ーを用いて分析したころ、2−メチル−6−アセチルテ
トラリンと2−メチル−7−アセチルテトラリンの合計
濃度は98%で、収率は96%であった。
(B)上記(A)の操作を2回繰り返して得た2−メチ
ル−6−アセチルテトラリンとの2−メチル−7−アセ
チルテトラリンを主体とする反応生成物200gを、エチル
アルコール2500mlと共に、容量5の電磁撹拌式オート
クレーブに仕込み、炭素担持パラジウム触媒(Pd10%)
2gを添加し、水素圧50kg/cm2、反応温度100℃で5時間
反応させて、アセチル基を水素添加した。反応終了後触
媒を濾別し、さらにエチルアルコールを蒸留により除去
した。生成物中の2−メチル−6−エチルテトラリンと
2−メチル−7−エチルテトラリンの合計濃度は96%
で、収率は98%であった。
このようにして得た2−メチル−6−エチルテトラリ
ンと2−メチル−7−エチルテトラリンを主体とする反
応混合物150gを、理論段数5段の蒸留塔を用い、100mmH
gの減圧下に粗蒸留し、主留分として2−メチル−6−
エチルテトラリンと2−メチル−7−エチルテトラリン
混合物(合計濃度99%)120gを得た。なお、未回収の中
間留分は、次回の蒸留に回すことでほとんどロスなく回
収できる。
(C)上記(B)で得た2−メチル−6−エチルテトラ
リンと2−メチル−7−エチルテトラリンの混合物104g
(0.6モル)とを、塩化エチレン600gに溶解し、この溶
液に、無水塩化アルミニウム80g(0.6モル)と塩化アセ
チル47g(0.6モル)を塩化エチレン350gに溶解した溶液
を、30℃で30分間かけて滴下し、その温度で1時間反応
させた。反応終了後、水を添加して塩化アルミニウムを
水溶液として除去したのち、塩化エチレン層を10%水酸
化ナトリウム水溶液と水で洗浄した。塩化エチレンを蒸
留により除去すると、純度94%の2,6,7−ジアルキルモ
ノアセチルテトラリン異性体混合物130gが得られた。
(D)上で得た2,6,7−ジアルキルモノアセチルテトラ
リン混合物80gと炭素担持パラジウム触媒(Pd量10%)
0.5gを、容量500mlの電磁撹拌式オートクレーブに仕込
み、250mmHg(絶対圧)の圧力下、260℃で5時間脱水素
反応せしめた。反応終了後冷却したのち触媒を濾別し、
2,3,6−ジアルキルモノアセチルナフタレン60%と2,3,6
−トリアルキルナフタレン30%とを含有する反応生成物
72gを得た。その収率は98%であった。
(E)この反応生成物11.5g(0.05モル)に、二クロム
酸ナトリウム・二水塩60g(0.2モル)と水150gとを添加
し、撹拌下、275℃で18時間酸化反応せしめた。反応終
了後、析出した酸化クロムを濾別して熱水で洗浄し、洗
液を母液と混合してから塩酸で酸析し、純度98%の白色
粉末状の2,3,6−NTCA11.5gを得た。その収率は87%であ
った。
実施例3 容量1000mlのステンレス鋼製オートクレーブに2,6−
ジメチルテトラリン160g(1モル)と弗化アセチル50g
(0.8モル)とを仕込み、弗化水素160g(8モル)を添
加し、撹拌下、冷却しながら三弗化硼素57g(0.82モ
ル)を10℃で20分間で供給した。その後20℃に昇温して
1時間反応させた。反応終了後、反応混合物を氷水中に
取り出し、トルエンで抽出したのち、トルエン層を5%
水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、次いでトルエン2,6
−ジメチルテトラリンを減圧下に留去し、純度98.5%の
2,6−ジメチル−7−アセチルテトラリン留分120gを得
た。その反応収率は2,6−ジメチルテトラリンに基いて7
9%、弗化アセチルに基けば99%であった。また、蒸留
収率は74%であった。中間留分は次回の蒸留に廻すこと
でロスなく回収できる。
こうして得た2,6−ジメチル−7−アセチルテトラリ
ンは、さらに蒸留などにより精製することなく、そのま
ま次工程、例えば実施例の工程(B)以降に使用でき
る。
(発明の効果) このように、この発明の方法によれば、容易に入手あ
るいは製造可能な原料から、非常に高い選択率および収
率で、樹脂材料として有用な2,3,6−NTCAを製造するこ
とができる。それにより、これまで製造方法の確立して
いなかった2,3,6−NTCAの工業的製造が可能となり、2,
3,6−NTCAをモノマー成分として利用した高機能性樹脂
の開発が進展しよう。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07D 307/92 C07D 307/92 // C07B 61/00 300 C07B 61/00 300

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】2,6−および/または2,7−ジアルキルテト
    ラリンを、三弗化硼素、弗化水素および無水塩化アルミ
    ニウムから選ばれた1種もしくは2種以上のフリーデル
    ・クラフツ触媒の存在下、弗化水素、ニトロ化炭化水素
    およびハロゲン化炭化水素から選ばれた溶媒中で、一酸
    化炭素、酸ハロゲン化物、酸無水物、カルボン酸および
    カルボン酸エステルから選ばれたアシル化剤と−50〜+
    150℃で反応させることにより2,6−ジアルキル−7−ア
    シルテトラリンおよび/もしくは2,7−ジアルキル−6
    −アシルテトラリンを生成させ、この生成物を貴金属触
    媒の存在下で脱水素したのち液相酸化することを特徴と
    する、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸またはその無
    水物の製造方法。
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