JP2520377Y2 - 穴あけ中ぐり加工装置 - Google Patents

穴あけ中ぐり加工装置

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JP2520377Y2 JP1989078835U JP7883589U JP2520377Y2 JP 2520377 Y2 JP2520377 Y2 JP 2520377Y2 JP 1989078835 U JP1989078835 U JP 1989078835U JP 7883589 U JP7883589 U JP 7883589U JP 2520377 Y2 JP2520377 Y2 JP 2520377Y2
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Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は回転軸と共に回転して穴加工を行う刃具の刃
先位置を回転軸の半径方向において変更可能な穴加工装
置とその装置に好適な加工工具に関するものであり、特
に穴あけと中ぐり加工とを能率よく行い得る穴あけ中ぐ
り加工装置および穴あけ中ぐり加工工具に関するもので
ある。
従来の技術 回転軸と共に回転して穴加工を行う刃具の刃先位置を
回転軸の半径方向において変更可能な穴加工装置は、例
えば、実公昭第51−41260号によって知られている。こ
の穴加工装置は、(a)軸心まわりに回転する回転軸
と、(b)その回転軸の先端部に取り付けられて回転軸
と共に回転する刃具と、(c)前記回転軸と被加工物と
を軸方向に相対的に送る送り装置と、(d)回転軸に設
けられ、刃具を回転軸に対して半径方向に移動させて刃
先位置を変更する刃先位置変更装置と、(e)送り装置
および刃先位置変更装置に接続されてそれら送り装置お
よび刃先位置変更装置を制御する制御装置とを含むよう
に構成されている。
この装置においては、回転軸が回転させられるととも
に、送り装置が正方向に駆動されて回転軸と被加工物と
が軸方向に相対的に送られ、回転軸の先端部に保持され
た刃具により被加工物の穴の中ぐり加工が行われ、その
後、刃先位置変更装置により刃先位置が変更され、送り
装置が逆方向に駆動されて回転軸と被加工物とが逆方向
に送られ、再び中ぐり加工が行われる。正方向の送り時
にも逆方向の送り時にも中ぐり加工が行われるのであ
り、能率よく穴加工を行うことができる。
考案が解決しようとする課題 しかし、この穴加工装置によっては、中ぐり加工を能
率よく行うことはできても、穴あけと中ぐり加工とを能
率よく行うことはできない。ドリルは被加工物の穴のな
いところに穴を形成することができるが、寸法精度の高
い穴を形成することが困難であり、寸法精度の高い穴を
形成するためには、ドリルによる穴あけと中ぐり加工工
具による中ぐり加工とを別個に行うことが必要なのであ
る。
本考案は、以上の事情を背景として、正方向の送り時
には穴あけを行い、逆方向の送り時には中ぐり加工を行
い得、寸法精度の高い穴を能率よく形成し得る穴あけ中
ぐり加工装置と、その穴あけ中ぐり加工装置に好適な穴
あけ中ぐり加工工具を得ることを課題としてなされたも
のである。
課題を解決するための手段 この課題を解決するために、本願考案に係る穴あけ中
ぐり加工装置は、軸心まわりに回転する回転軸と、
その回転軸の先端部に取り付けられ、回転軸と共に回転
して被加工物に穴あけを行う少なくとも2個の刃具であ
って、穴の底面内周部を切削する底面内周部切削用刃具
と底面最外周部を切削する底面最外周部切削用刃具とを
含み、かつ、底面内周部切削用刃具の切刃の最も外周側
の部分が底面最外周部切削用刃具の切刃の前記穴の底面
を切削する部分より回転軸の後端側に位置するものと、
回転軸と被加工物とを軸方向に相対的に送る送り装置
と、回転軸に設けられ、前記少なくとも2個の刃具の
うちの少なくとも底面内周部切削用刃具を回転軸に対し
て半径方向に移動させることにより、底面最外周部切削
用刃具の切刃の最も外周側の部分が描く円軌跡の直径が
底面内周部切削用刃具の切刃の最も外周側の部分が描く
円軌跡の直径より大きい穴あけ状態と、底面内周部切削
用刃具の切刃の最も外周側の部分が描く円軌跡の直径が
底面最外周部切削用刃具の切刃の最も外周側の部分が描
く円軌跡の直径より大きい中ぐり加工状態とに変更する
刃先位置変更装置と、送り装置および刃先位置変更装
置に接続された制御装置であって、刃先位置変更装置に
底面最外周部切削用刃具と底面内周部切削用刃具とを前
記穴あけ状態とするとともに送り装置に回転軸と被加工
物とを相対的に切削送りで正方向に送らせて穴あけを行
わせた後、刃先位置変更装置に底面最外周部切削用刃具
と底面内周部切削用刃具とを前記中ぐり加工状態とさせ
るとともに送り装置に回転軸と被加工物とを相対的に逆
方向に切削送りで送らせて中ぐり加工を行わせる制御装
置とを含むものとされる。
また、穴あけ中ぐり加工工具は、軸心まわりに回転す
る工具本体と、その工具本体の先端部に取り付けられ、
工具本体と共に回転して被加工物に穴あけを行う少なく
とも2個の刃具とを含むものとされ、かつ、それら少な
くとも2個の刃具が、穴の底面内周部を切削する底面内
周部切削用刃具と底面最外周部を切削する底面最外周部
切削用刃具とを含み、それら底面内周部切削用刃具と底
面最外周部切削用刃具とが工具本体に、底面内周部切削
用刃具の切刃の最も外周側の部分が底面最外周部切削用
刃具の切刃の前記穴の底面を切削する部分より工具本体
の後端側に位置し、かつ、工具本体の外周面よりさらに
外周側へ突出するとともに、工具本体の回転中心の変更
により、底面最外周部切削用刃具の切刃の最も外周側の
部分が描く円軌跡の直径が底面内周部切削用刃具の切刃
の最も外周側の部分が描く円軌跡の直径より大きい穴あ
け状態と、底面内周部切削用刃具の切刃の最も外周側の
部分が描く円軌跡の直径が底面最外周部切削用刃具の切
刃の最も外周側の部分が描く円軌跡の直径より大きい中
ぐり加工状態とをとり得る相対位置で固定される。
作用および効果 本考案に係る穴あけ中ぐり加工装置においては、底面
最外周部切削用刃具と底面内周部切削用刃具とが刃先位
置変更装置により穴あけ状態とされている状態で、回転
軸と被加工物とが送り装置により相対的に切削送りで正
方向に送られて穴あけが行われた後、刃先位置変更装置
により底面最外周部切削用刃具と底面内周部切削用刃具
とが中ぐり加工状態とされ、かつ、回転軸と被加工物と
が相対的に逆方向に切削送りで送られて中ぐり加工が行
われる。そして、そのために、本考案に係る穴あけ中ぐ
り加工工具が好適である。
したがって、本考案によれば、回転軸と被加工物との
一往復の相対送りによって穴あけと中ぐり加工との両方
が行われ、寸法精度の高い穴を能率よく形成することが
できる。
さらに、本考案に係る穴あけ中ぐり加工装置において
は、穴あけが底面内周部切削用刃具と底面最外周部切削
用刃具との共同により行われる。穴の底面が内周部と外
周部とで互いに異なる刃具により切削されるのであり、
この際、底面内周部切削用刃具の切刃の最も外周側の部
分が底面最外周部切削用刃具の切刃の前記穴の底面を切
削する部分より回転軸の後端側に位置するため、すなわ
ち、正方向の送り時に軸方向において後退した状態にあ
るため、切削には関与しない。
そして、中ぐり加工時には、この切削に関与しなかっ
た部分、すなわち、底面内周部切削用刃具の切刃の最も
外周側の部分によって中ぐり加工が行われる。中ぐり加
工状態では、刃先位置変更装置により、底面内周部切削
用刃具の切刃の最も外周側の部分が描く円軌跡の直径が
底面最外周部切削用刃具の切刃の最も外周側の部分が描
く円軌跡の直径より大きくされるため、中ぐり加工は底
面内周部切削用刃具の切刃の最も外周側の部分により行
われるのであるが、この部分は上記のように穴あけ時に
は切削に関与しなかった部分であり、中ぐり加工に専用
されることとなる。
刃先位置変更装置を、中ぐり加工状態では、少なくと
も底面最外周部切削用刃具を回転軸に対して半径方向に
移動させることにより、底面最外周部切削用刃具の切刃
の最も外周側の部分が描く円軌跡の直径が、同じ部分が
穴あけ状態で描く円軌跡の直径より大きくなるようにす
るものとすることによっても、逆方向送り時に中ぐり加
工が行われるようにすることが可能なのであるが、この
場合には、底面最外周部切削用刃具の切刃の最も外周側
の部分が必然的に穴あけ時にも中ぐり加工時にも切削に
関与することとなる。しかも、この部分は穴あけ時に最
も切削速度の大きい部分であって摩耗し易いため、この
部分をさらに中ぐり加工にも使用すれば一層摩耗が促進
されて、寸法精度や面あらさが急速に悪くなってしま
う。それに対して、本願考案に係る穴あけ中ぐり加工装
置においては、底面内周部切削用刃具の切刃の最も外周
側の部分は、上記のように、穴あけ時には切削に関与せ
ず、中ぐり加工に専用されるため、摩耗が少なくて済
み、加工された穴の寸法精度や面あらさが急速に悪くな
ることを回避でき、刃具の交換頻度が低下し、結局、寸
法精度の高い穴を能率よく形成することが可能となる。
しかも、底面内周部切削用刃具は、穴あけと中ぐり加
工との両方に兼用とされているため、回転軸に取り付け
る必要のある刃具の個数が少なくて済む利点がある。穴
あけを行う刃具とは別に専用の刃具を回転軸に取り付け
て中ぐり加工を行うことも可能であるが、その場合に
は、回転軸に中ぐり加工専用の刃具を1個余分に取り付
けることが必要となる。刃具を1個余分に取り付けれ
ば、穴あけ中ぐり加工工具の構造が複雑になってコスト
が高くなることを避け得ない。また、刃具は一般に、製
造,取付け等の都合上、一定以下の大きさにすることが
困難であるため、刃具を1個余分に取り付ければ穴あけ
中ぐり加工工具が大形化するとを避け得ない。中ぐり加
工専用の刃具を、軸方向に関して穴あけ用刃具と同じ位
置に取り付ける場合には、穴あけ中ぐり加工工具の直径
が大きくなって、小径の穴加工の要求に応じられなくな
る。また、中ぐり加工専用の刃具を、軸方向に関して穴
あけ用刃具と異なる位置に取り付ける場合には、穴あけ
中ぐり加工工具が長くなることを避け得ず、穴あけと中
ぐり加工とのために必要な工具の送り量が大きくなっ
て、加工能率が低下する。周辺の状況によって軸方向の
送り可能範囲が制限され、穴あけと中ぐり加工との両方
を実施できなくなる場合もある。本考案に従って、底面
内周部切削用刃具を穴あけと中ぐり加工との両方に兼用
とすれば、これらの不都合を回避することができるので
ある。
実施例 以下、本考案の一実施例である穴あけ中ぐり加工装置
および穴あけ中ぐり加工工具を図面に基づいて詳細に説
明する。
第1図において、10は穴あけ中ぐり加工装置の主軸で
ある。主軸10はベアリング12,シール14等を介してハウ
ジング16に回転可能に保持されている。主軸10のハウジ
ング16から突出した後端部にはVプーリ18が相対回転不
能に取り付けられている。ハウジング16は第2図に示す
ようにスライド20上に載置されており、スライド20の後
部には複数本のボルト22によって高さ調節可能にプレー
ト24が取り付けられるとともに、そのプレート24上にモ
ータ26が載置されている。モータ26の出力軸にはVプー
リ28が固定されており、Vプーリ18とVプーリ28とにV
ベルト30が巻き掛けられることにより、モータ26によっ
て主軸10が回転させられるようになっている。
主軸10は軸方向に延びる中心穴32を備えており、ロッ
ド34が軸方向に移動可能に嵌合されている。ロッド34は
ピン36によって2つの軸部材が連結されたものである。
中心穴32の先端部は大径とされており、ここにアダプタ
38の嵌合突部40が嵌合されている。アダプタ38は主軸10
の端面42にボルトにより固定され、また、円筒状のケー
シング44がアダプタ38の端面46にボルトにより固定され
ており、アダプタ38およびケーシング44が主軸10と共に
一体的な回転軸45を構成している。ロッド34の先端部は
主軸10(回転軸45)の軸心に対して一定量偏心させられ
た雄ねじ部48とされており、アダプタ38を軸方向に貫通
する段付の貫通穴50を通ってケーシング44内に嵌入させ
られている。雄ねじ部48は4条ねじ等の多条ねじとされ
ており、ねじ山のリード角が大きく設定されている。ま
た、ロッド34の雄ねじ部48の基端部近傍には面取り52が
4箇所に施され、貫通穴50の角穴部53に嵌合されてロッ
ド34とアダプタ38との相対回転が防止されている。
雄ねじ部48は、ケーシング44内において、偏心回転部
材54の貫通穴56のアダプタ38側の内周面に形成された雌
ねじ部58に螺合されている。偏心回転部材54はケーシン
グ44にベアリング60,62を介して雄ねじ部48の軸心まわ
りに回転可能に保持されている。すなわち、偏心回転部
材54の軸心は主軸10の軸心に対して前記雄ねじ部48の偏
心量と同量だけ偏心させられているのであり、雄ねじ部
48の前進・後退によって偏心回転部材54が偏心した軸心
のまわりに正・逆両方向に回転させられる。
また、偏心回転部材54には、本考案の一実施例である
穴あけ中ぐり加工工具が固定されている。穴あけ中ぐり
加工工具は、工具本体としてのチップホルダ68と、その
先端部に取り付けられた刃具たるチップ64,66とを含ん
でいる。偏心回転部材54の貫通穴56の雌ねじ部58とは反
対側の端部には頭部が花弁形を成す係合部材70の軸部が
嵌合されており、チップホルダ68には、係合部材70の頭
部と一定の相対位相では軸方向に嵌合・離脱可能である
が、他の位相では嵌合・離脱不能である形状の係合穴72
が形成されている。したがって、この係合穴72に係合部
材70を係合させ、偏心回転部材54に設けられた図示しな
い引込機構によって係合部材70を偏心回転部材54内へ引
き込むことにより、チップホルダ68を偏心回転部材54に
固定し得るのであり、その状態ではチップホルダ68が偏
心回転部材54と一体的に回転する。
第3図および第4図に拡大して示すように、チップ6
4,66はチップホルダ68のホルダ本体74から突出した小径
のチップ保持部76の先端部に取り付けられている。チッ
プ保持部76の外周面には軸方向に延びる切屑排出溝78,8
0が形成されている。チップ64,66は各すくい面がほぼチ
ップホルダ68の軸心lを含む一平面上に位置する状態で
取り付けられている。
前記Vプーリ18の後端にはケーシング100が固定され
るとともに、ケーシング100には更に別のケーシング102
が固定されている。ロッド34の後端部の外周面には、直
径方向に隔たった4箇所に面取り104が施され、ケーシ
ング102に形成された矩形の貫通穴106に相対回転不能に
嵌合されることによって、ロッド34の主軸10に対する回
転が防止されている。ケーシング102はハウジング16か
ら後方に延び出させられたアーム108に固定のケーシン
グ110と相対回転可能に嵌合されている。
ロッド34には後端面から軸方向穴112が形成されてお
り、ここにねじ軸114の前端部が嵌入させられている。
ねじ軸114は、その後方に配設されているモータ116の出
力軸118に連結されている。一方、ケーシング110には軸
方向に延びる貫通穴120が形成されており、貫通穴120の
内部には移動部材122が摺動可能に嵌合されている。移
動部材122は軸方向穴124を備え、その後端部にはねじ軸
114と螺合されたナット126が固定されるとともに、前端
部においてベアリング128,130を介してロッド34を回転
可能かつ軸方向に移動不能に保持している。
したがって、モータ116によりねじ軸114が回転させら
れれば、ナット126および移動部材122が貫通穴120内を
移動し、それに伴ってロッド34が軸方向に移動させられ
る。ロッド34が前進させられれば、偏心回転部材54が回
転させられ、それに伴ってチップホルダ68も回転し、チ
ップ64が主軸10(回転軸45)の外周側、すなわち半径方
向外側に移動させられ、偏心回転部材54が180度回転さ
せられたときに最も外周側に位置する。また、チップ66
は逆に最も内周側、すなわち主軸10の軸心に最も近い状
態となる。この180度の回転の最初と最後においては、
チップ64,66の先端が主軸10の軸心と偏心回転部材54の
軸心とを含む一平面上に位置するようにされているので
あり、この回転に伴うチップ64,66の先端の主軸10の半
径方向における移動量は、上記両軸心の偏心量の2倍で
ある。逆ロッド34が後退させられれば、偏心回転部材54
およびチップホルダ68が逆回転させられ、チップ64が内
周側、チップ66が外周側へ移動させられる。すなわち、
本実施例においては、ねじ軸114,モータ116,移動部材12
2,ナット126,ロッド34等がチップ64,66を主軸10に対し
て半径方向に移動させてその刃先位置を変更する刃先位
置変更装置を構成しているのである。
第2図において、ハウジング16が載置されたスライド
20は、ガイドレール140上を移動可能とされている。ガ
イドレール140は、基台142上に設けられた案内台144上
に主軸10の軸心に平行な方向に配設されている。スライ
ド20の下側に、ブラケット146によって取り付けられた
ナット148には、モータ150によって回転駆動される送り
ねじ152が螺合されており、スライド20が送りねじ152の
回転によって案内台142上を移動させられることによ
り、ハウジング16が主軸10の軸方向に送られるようにな
っている。すなわち、スライド20,ガイドレール140,ナ
ット148,モータ150,送りねじ152等によって、チップ64,
66を主軸10,ハウジング16等と共に主軸10の軸方向に送
る送り装置が構成されているのである。
モータ116および150は、第5図に示す制御装置160に
よって制御される。制御装置160は、CPU162,RAM164およ
びROM166を備えており、エンコーダ168,170,モータ116
を駆動するための駆動回路172およびモータ150を駆動す
るための駆動回路174が接続されている。制御装置160
は、それぞれエンコーダ168,170により検出されるモー
タ116,150の回転量が目標回転量と等しくなるように、
駆動回路172,174を介してモータ116,モータ150を制御す
る。
以上のように構成された穴あけ中ぐり加工装置によっ
て被加工物の穴あけおよび中ぐり加工を行う場合には、
制御装置160のRAM164に被加工物に施すべき穴あけおよ
び中ぐり加工に関するデータを入力することにより、モ
ータ116,150が制御されて所定の量ずつ回転し、チップ6
4,66が主軸10の軸方向および半径方向に移動させられて
切削を行う。このとき、送り装置によりチップ64,66が
主軸10と共に前進、すなわち正方向に送られる際には、
刃先位置変更装置により偏心回転部材54が一定量回転さ
せられ、第6図に示すように、一点鎖線で示す主軸10の
軸心(すなわち回転中心線)に対してチップ64がチップ
ホルダ68の軸心lと同じ側に、また、チップ66が反対側
に位置する状態とされ、主軸10の回転に伴ってチップ64
の先端が描く円軌跡の直径がチップ66のそれより大きく
される。すなわち、チップ66の最も外周側の切刃eは、
チップ64の最も外周側の切刃aより半径方向においても
軸方向においても引っ込んだ位置にあるため、切削には
関与しない。チップ64の切刃のうちaおよびcで示す部
分と、チップ66の切刃のうちbおよびdで示す部分とに
より被加工物の穴あけが行われるのである。
一方、チップ64,66が前進端に達した後、送り装置に
より後退、すなわち逆方向に送られる際には、第7図に
示すように、主軸10の軸心に対してチップ66がチップホ
ルダ68の軸心lと同じ側に、また、チップ64が反対側に
位置する状態とされる。これにより、チップ66の切刃f
がチップ64の切刃aよりも外周側に位置させられ、前進
時に切刃aが描いた円軌跡の直径Aと後退時に切刃fの
描く円軌跡の直径Fとの関係がA<Fとなり、切刃fに
よって、前進時にチップ64,66によりあけられた穴の中
ぐり加工が行われる。
すなわち、本実施例においては、主軸10の1回の往復
移動により穴あけおよびその穴の中ぐり加工が行われる
のである。しかも、チップ66の切刃の穴あけ時と中ぐり
加工時に使用される部分が異なるため、中ぐり加工に使
用される部分が穴あけにも使用される場合に比較して摩
耗量が少なくて済み、中ぐり加工精度の維持が容易とな
る利点が得られる。
以上の説明から明らかなように、本実施例において
は、チップ64が底面最外周部切削用刃具を構成し、チッ
プ66が底面内周部切削用刃具を構成しているのである。
また、チップ66の切刃fが底面内周部切削用刃具の切刃
の最も外周側の部分を構成しているのである。
なお、上記実施例においては、刃先位置変更装置が主
軸10に設けられていたが、工作機械の主軸に取外し可能
に回転軸を取り付け、その回転軸に刃先位置変更装置を
設けることも可能である。
また、送り装置により主軸が被加工物に向かって送ら
れるようになっていたが、被加工物を主軸に対して送る
ことにより加工を行うようにしてもよい。
その他、当業者の知識に基づいて種々の変形,改良を
施した態様で、本考案を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本考案の一実施例である穴あけ中ぐり加工装置
の主要部を示す正面断面図であり、第2図は上記装置の
全体を示す正面図(一部断面)である。第3図は上記装
置の穴あけ中ぐり加工工具を示す一部正面断面図であ
り、第4図は第3図の側面図である。第5図は上記装置
の電気制御部を示すブロック図であり、第6図および第
7図は上記装置の穴あけ中ぐり加工工具の刃具の切刃を
拡大して示す正面図である。 20:スライド、34:ロッド、45:回転軸、48:雄ねじ部、5
8:雌ねじ部、64,66:チップ、68:チップホルダ、114:ね
じ軸、116:モータ、122:移動部材、126:ナット、140:ガ
イドレール、148:ナット、150:モータ、152:送りねじ、
160:制御装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 大沢 裕二 愛知県豊田市吉原町平子26番地 富士精 工株式会社内 (72)考案者 龍 明臣 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)考案者 松下 豊 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)考案者 片寄 正敏 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)考案者 勝又 徳昭 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (56)参考文献 実開 昭62−53921(JP,U) 実公 昭60−1928(JP,Y2) 実公 昭51−41260(JP,Y2)

Claims (2)

    (57)【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】軸心まわりに回転する回転軸と、 その回転軸の先端部に取り付けられ、回転軸と共に回転
    して被加工物に穴あけを行う少なくとも2個の刃具であ
    って、穴の底面内周部を切削する底面内周部切削用刃具
    と底面最外周部を切削する底面最外周部切削用刃具とを
    含み、かつ、底面内周部切削用刃具の切刃の最も外周側
    の部分が底面最外周部切削用刃具の切刃の前記穴の底面
    を切削する部分より前記回転軸の後端側に位置するもの
    と、 前記回転軸と被加工物とを軸方向に相対的に送る送り装
    置と、 前記回転軸に設けられ、前記少なくとも2個の刃具のう
    ちの少なくとも前記底面内周部切削用刃具を回転軸に対
    して半径方向に移動させることにより、前記底面最外周
    部切削用刃具の切刃の最も外周側の部分が描く円軌跡の
    直径が底面内周部切削用刃具の切刃の最も外周側の部分
    が描く円軌跡の直径より大きい穴あけ状態と、底面内周
    部切削用刃具の切刃の最も外周側の部分が描く円軌跡の
    直径が底面最外周部切削用刃具の切刃の最も外周側の部
    分が描く円軌跡の直径より大きい中ぐり加工状態とに変
    更する刃先位置変更装置と、 前記送り装置および前記刃先位置変更装置に接続された
    制御装置であって、刃先位置変更装置に前記底面最外周
    部切削用刃具と前記底面内周部切削用刃具とを前記穴あ
    け状態とするとともに送り装置に前記回転軸と被加工物
    とを相対的に切削送りで正方向に送らせて穴あけを行わ
    せた後、刃先位置変更装置に底面最外周部切削用刃具と
    底面内周部切削用刃具とを前記中ぐり加工状態とさせる
    とともに送り装置に回転軸と被加工物とを相対的に逆方
    向に切削送りで送らせて中ぐり加工を行わせる制御装置
    と を含むことを特徴とする穴あけ中ぐり加工装置。
  2. 【請求項2】軸心まわりに回転する工具本体と、その工
    具本体の先端部に取り付けられ、工具本体と共に回転し
    て被加工物に穴あけを行う少なくとも2個の刃具とを含
    む穴あけ中ぐり加工工具であって、 前記少なくとも2個の刃具が、穴の底面内周部を切削す
    る底面内周部切削用刃具と底面最外周部を切削する底面
    最外周部切削用刃具とを含み、それら底面内周部切削用
    刃具と底面最外周部切削用刃具とが前記工具本体に、底
    面内周部切削用刃具の切刃の最も外周側の部分が底面最
    外周部切削用刃具の切刃の前記穴の底面を切削する部分
    より工具本体の後端側に位置し、かつ、工具本体の外周
    面よりさらに外周側へ突出するとともに、工具本体の回
    転中心の変更により、底面最外周部切削用刃具の切刃の
    最も外周側の部分が描く円軌跡の直径が底面内周部切削
    用刃具の切刃の最も外周側の部分が描く円軌跡の直径よ
    り大きい穴あけ状態と、底面内周部切削用刃具の切刃の
    最も外周側の部分が描く円軌跡の直径が底面最外周部切
    削用刃具の切刃の最も外周側の部分が描く円軌跡の直径
    より大きい中ぐり加工状態とをとり得る相対位置で固定
    されていることを特徴とする穴あけ中ぐり加工工具。
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