JP2516817B2 - 分極反転層を有するLiTaO▲下3▼基板及びこれを用いたデバイス - Google Patents

分極反転層を有するLiTaO▲下3▼基板及びこれを用いたデバイス

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は所定の厚さの分極反転層を一主表面に形成す
ることによって該主表面を伝搬するSHタイプ弾性表面波
についての温度特性,伝搬減衰特性を向上せしめたLiTa
O3基板及びこれを利用したデバイスに関する。
(従来技術) 従来から本願発明者等はLiTaO3,LiNbO3基板表面に対
し熱処理を施すことにより或はプロトン交換を行った後
熱処理を行うことにより基板表面に分極反転層を形成す
る方法及び斯る分極反転層を有する圧電基板の特性,工
業上の利用法について研究した結果を開示して来た(特
願昭61−197905,同61−205506,同61−205508及び同62−
160792参照)。
一方,通常のLiTaO335度回転Y板に於いては,結晶の
X軸方向に伝搬するSHタイプ弾性表面波の遅延時間温度
係数TCDは基板表面が自由表面の場合には45ppm/℃で良
好とはいえないが短絡表面〔例えばインタディジタル・
トランスジューサ(IDT)電極の如き導電物質を密に付
着した表面〕の場合にはTCDは32ppm/℃と若干良好とな
る為,上記の基板はSAW共振子等に利用されている。
上述した如き短絡表面を有するLiTaO3回転Y板のSHタ
イプ弾性表面波に対する温度特性が自由表面の場合のそ
れに比して向上する理由を検討するに,SHタイプ弾性表
面波に対する圧電基板の実効弾性定数Cは,基板表面を
短絡した場合には電束密度Dが一定の場合のX軸方向伝
搬の速い横波に対応する弾性定数CDよりも電界強度Eが
一定の場合のそれCEに近い値となる為であると考えられ
るが,CEの温度係数の方がCDのそれよりも小さいという
性質があるので,表面を短絡した圧電基板のSHタイプ表
面波に対する温度特性は自由表面のそれより良好になる
解釈されている。
ところで前述した分極反転層を有するLiTaO3基板はそ
の極性が反転する反転分域境界で一種の電界短絡効果を
有すると考えられるから,斯る分極反転層を有するLiTa
O3基板の温度特性は通常のそれに比し良好な温度特性を
有する可能性がある。
(発明の目的) 本発明は上述した如き従来本願発明者が研究を続けて
きた分極反転層を有するLiTaO3基板に於ける温度特性改
善の可能性を追求しその条件を見出し,それを弾性表面
波デバイスに利用せんとするものである。
(発明の概要) 数値解析の結果,回転角30度乃至40度のLiTaO3回転Y
板についてkh(kは励起する波長λなるSHタイプ弾性表
面波の波数,即ち2π/λ,hは分極反転層の厚さ)が1.
0乃至6.0の範囲が良好な温度特性を有し更にこの範囲で
波動エネルギの伝搬減衰を極めて小さくなし得ることが
判明すると共に,これは電気機械結合係数もある程度大
きな値を示す領域であることが明らかとなったので,斯
る条件の基板を各種表面波デバイスに利用せんとするも
のである。
(実施例) 以下本発明をその理論解析による最適条件導出の過程
説明と上記最適条件の下での基板を用いたデバイスの実
施例とに基づいて詳細に説明する。
〔I〕 温度特性の解析 本発明の主題たる分極反転層を有するLiTaO3基板を伝
搬するSHタイプ弾性表面波(Leaky板)に対する温度特
性及び伝搬減衰特性の解析について説明する。
(a) LiTaO3の基板温度25℃に於ける材料定数(弾性
定数,圧電定数,誘電率,線膨張係数)及びその温度係
数の値としてはスミス(Smith)等の示したそれを用い
る。
(b) 温度による材料定数Xの変化は3次以上の項は
無視して, anはn次の温度係数,△Tは25℃からの温度変化 ……
(1) で与える。
(c) 弾性表面波についての遅延時間温度係数TCD
は, TCD=∂τ/τ∂T=∂l/l∂T−∂υ/υ∂T =η−TCV τは遅延時間,lは伝搬方向の長さ,υは波の位相速度,
ηは線膨張係数,TCVは位相速度の温度係数 ……(2) (d) 伝搬方向(X軸方向)のηは η=∂l/l∂T=αx=1.61×10-6 ……(3) (LiTaO3のX軸方向の線膨張係数) (f) TCV=△υ/υ25△T ……(4) (g) ここで25℃を中心とする2つの温度T1℃とT2
での位相速度をυT1T2とすると,TCDは上記(2),
(3)式及び(4)式より TCD=1.61×10-6 −(1/υ25){(υT2−υT1)/(T2−T1)} ……
(5) と表わすことができるから,これよりTCDを求めること
ができる。
次に前記(5)式に於けるυの値を数値解析によっ
て求める方法について説明する。
(h) 第3図を勘案して運動方程式と電荷方程式は以
下の如く表わされる。
(i) さて第3図に於いて回転Y板上をx1方向に伝搬
する弾性表面波を与える方程式(6)の一般解は領域A
に於いて以下の如く表わすことができる。
一方B領域(分極反転層内)に於いては表面からX2
向に減衰する波と,境界から−X2方向に減衰する波があ
るので一般解は以下の如く表わされる。
但し(7),(8)式に於いてυは伝搬する波の位相
速度,kは波数2π/λ,δkは伝搬方向の減衰定数,α
kは深さ方向(X2方向)の減衰定数である。又,βin,
β′in,β″inはαに対応して求まる値であり,An,A′
n,A″は未定々数である。
(j) 基板表面(X2=−h)と分極反転の境界X2=0
に於ける機械的,電気的境界条件は, 変位 X2=0 X2=h 変位 UAi=UBi − 応力 (F2j=(F2j (F2j=0 電位 φ=φ φ=0 (短絡表面の場合) 電束密度 (D2=(D2 (D2=(D2 (自由表面の場合) と与えらえる。
但し,応力F2j=C′2jkl∂Uk/∂Xl+e′k2j∂φ/
∂Xk 電束密度D2=e′2kl∂Uk/∂Xl−ε′2k∂φ/∂Xk である。 ……(9) (k) そこで(9)式に(7)式及び(8)式を代入
すると次の12元同次連立方程式が得られる。
方程式(10)が解を有する為には係数行列の行列式|M
|が0でなければならないのでこれを満足するようなυ
とδを解けばよいが,近似的には|M|が最小となるυ及
びδを求めることによって解が得られる。
斯くすることによって温度T1,T2及び25℃に於ける位
相速度υを求めれば前記(5)式により遅延時間温度係
数TCDが求められるが,波動の位相速度υは又分極反転
層の厚さhと伝搬定数kとの積khの関数でもあるからTC
Dもkhの関数,即ちTCD=f(kh)として数値解析により
求めることができる。同時に波動の伝搬減衰もkhの関数
として求め得ることは云うまでもない。
〔II〕 数値解析の結果 (a) 上述した如き手法を用いて数値解析を行い分極
反転層を有するLiTaO3基板に於ける反転層の厚さと遅延
時間係数TCDとの関係を調べたところ第1図に示す如き
結果を得た。これは35゜回転Y板についての結果である
が,回転角θが30度乃至40度の間ではTCDのkh依存性は
殆んど変化がなく,第1図と実質的に同様であることも
確認された。
即ち,LiTaO3の30゜乃至40゜回転Y板表面に厚さhの
分極反転層を形成しkhの値を1.0乃至6.0の間の適当な値
に選ぶことにより,従来一般の分極反転層を設けないLi
TaO3基板のTDCが表面短絡の場合32ppm/℃程度であった
ものが最小14ppm/℃程度まで大幅に向上することが理解
されよう。
(b) 又,第2図(a)及び(b)は伝搬する表面波
のバルク波放射に基づく伝搬減衰のkh依存性を調べた結
果を示す図であって,圧電デバイスとしての利用価値が
ある短絡表面についてkhが1.0乃至6.0の間に伝搬減衰が
実質上零,即ち完全な表面波となる領域の存在すること
が判る。
(c) 一方,本願発明者等は既に分極反転層を有する
LiTaO3基板を伝搬するSHタイプ弾性表面波についての電
気機械結合係数K2のkh依存性について解析しており,K2
はkhが0.7付近で零となり,khが増大するとK2も再び増大
することを見い出している。
この結果を併せ勘案するにkhの値を1.0乃至6.0の間の
適当な値に選べばK2,TCD及び伝搬減衰のいずれをも同時
に満足することが可能であろう。
〔III〕 圧電デバイスへの応用 以上〔I〕,〔II〕の結果を勘案するに回転カット角
θが33度乃至35度のLiTaO3基板表面にkhが1.5乃至3.5の
適当な深さに分極反転層を形成すれば,従来VTR用共振
子等に用いられていたXカット112度Y方向伝搬のLiTaO
3基板を用いたものより温度特性,電気機械結合係数共
に良好な小型の共振子を得ることができる。
因みにカット角35度回転YのLiTaO3基板の電気機械結
合係数K2が最高の値を示すkh値は本願発明者による従前
の解析によれば概ね3でありその際のK2値は4%程度で
あってkh値1.0乃至6.0の範囲ではK2が著しく劣化するわ
けでもないことに注目されたい。
又,本発明に係るLiTaO3基板はその温度特性及びK2
値を勘案するに中帯域幅の共振子及びフィルタへの応用
が最適であろう。
更に,温度特性にやゝ不満はあるものの遅延線に用い
てもよい。この場合には波の送受用IDTの間の伝搬路表
面には全面メタライズ膜を施こすのがよい。
(発明の効果) 本発明は以上説明した如き条件をLiTaO3基板に付与す
ることによってその温度特性を従来のそれよりも大幅に
向上せしめたものであるから,LiTaO3を利用した表面波
共振器或はフィルタ等のデバイスの温度特性を改善する
上で著しい効果がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係るLiTaO3基板に於ける温度特性と分
極反転層の深さとの関係を示す図,第2図(a)及び
(b)は夫々励起した波動の伝搬減衰と分極反転層の深
さとの関係を示す図であり,前者は自由表面について,
後者は短絡表面についての図,第3図は本発明をなすに
至った理論解析の基礎となるLiTaO3基板の諸パラメータ
を示す図である。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一主表面に分極反転層を形成したカット角
    30度乃至40度LiTaO3基板回転Y板に於いて,前記分極反
    転層の深さをh,前記分極反転層表面を伝搬するSHタイプ
    弾性表面波の波数をk(=2π/λ,λは波長)とした
    場合,khの値が1.0乃至6.0となるよう前記hの値を選ぶ
    ことによって電気機械結合係数を大なる値に保ちつつ遅
    延時間温度係数及び励起した波動の伝搬減衰を小ならし
    めたことを特徴とする分極反転層を有するLiTaO3基板。
  2. 【請求項2】請求項(1)記載のLiTaO3基板に於いて,
    その分極反転層表面にインタディジタル・トランスジュ
    ーサ(IDT)電極を形成することによってSHタイプ弾性
    表面波の励起或は受信を行うようにしたことを特徴とす
    る分極反転層を有するLiTaO3基板を用いたデバイス。
  3. 【請求項3】SHタイプ弾性表面波の伝搬路であって,IDT
    電極前後の基板表面部分を全面メタライズすることによ
    って該部に於ける遅延時間温度係数を一層小なわしめた
    ことを特徴とする請求項(2)記載の分極反転層を有す
    るLiTaO3基板を用いたデバイス。
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