JP2515505B2 - 光記録媒体の製造方法 - Google Patents

光記録媒体の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は光記録媒体の製造方法に関し、詳しくは平状
円形基板上に記録層、下引き層、保護層等の薄膜を1μ
m以下の膜厚でかつ均一な薄膜に形成させる塗布方法に
関する。
[従来の技術] 従来、光記録媒体として、既に様々な構成のものが提
案されており、その製造方法も多種多様である。例え
ば、Te−TeO2,TeC,Te−Se,Sb−Se/Bi−Te等の無機系薄
膜は、真空蒸着、スパッタリング等により記録層を形成
するが、この場合、製造装置は高価で、また、製造条件
の設定が困難である等の欠点がある。
これに対し、塗布により製造される光記録媒体は製造
が容易であるばかりでなく、装置、コスト面で安価であ
る等の多くの利点を有している。特に染料・顔料および
樹脂などの有機物質からなる薄膜を形成するのに有利で
ある。
一般に光記録媒体の記録層、下引き層、保護層等の薄
膜の厚みは約1μm以下であることが多い。このような
薄膜を形成する塗布方法として、従来はスピナー塗布
法、浸漬塗布法などがよく用いられている。スピナー塗
布法は円形基板の中心部分に塗布液を滴下し、基板を高
速に回転させることにより薄膜を形成する方法である。
しかしながら、この塗布法の場合、薄膜を形成する塗
布液量よりも、基板以外へ除去される塗布液量のほうが
多く、塗布液のムダを生じる。また、回転塗布のため、
基板の内周部より外周部の方が膜厚が厚くなる傾向にあ
り、特に厚みが1μm以下の薄膜の場合、膜厚の傾きが
より顕著となり、均一な薄膜を得にくい。また、基板上
にゴミや異物等が付着していると、その部分から外周部
にかけて放射線状のすじムラが生じる。さらに、通常、
光の案内溝として同心円状、らせん状の凹凸を設けた円
形基板が用いられるが、スピナー塗布法では凹部と凸部
での膜厚ムラを生じやすい。
また、浸漬塗布法は、平状円形基板を薄膜形成用塗布
液中に浸漬し、引き上げて塗布するものであるため、実
際に塗布される量よりもはるかに多量の塗布液を必要と
し、また同じ塗布液を繰り返し使用するために塗布液の
ポットライフが長くなければならない。
従って、浸漬塗布法による場合は、多量の塗布液の組
成を常時一定に保つために大規模な設備が必要である。
また、さらに浸漬塗布法により厚さが極めて均一でかつ
ダレのない薄膜を形成するためには、引き上げ速度をで
きるだけゆっくりとしなければならないので作業能率が
非常に低い欠点がある。
前記のようにスピナー塗布法および浸漬塗布法は、厚
みの不均一、ムラ等が生じやすく、そのためC/N値(キ
ャリア/ノイズ比)の変動、エラーレートの増大等の光
記録媒体の特性を損われる原因となっていた。
[発明が解決しようとする問題点] 本発明の目的は、従来の光記録媒体の記録層、下引き
層、保護層等の厚みが約1μm以下の薄膜を形成する製
造方法の欠点を克服し、均一でかつ所要の膜厚を得る薄
膜を容易に、かつ連続的に形成できる製造方法を提供す
ることによる。
また、本発明の別の目的は、前述の光記録媒体の特性
を改良した製造方法を提供することにある。
[問題点を解決するための手段] 即ち、本発明は、基板上に厚さ1μm以下の記録層薄
膜を具備し、更に厚さ1μm以下の保護層及び厚さ1μ
m以下の下引き層の少なくとも一方の薄膜を有していて
もよい光記録媒体の製造方法において、該薄膜の少なく
とも1つを下記の(a),(b)及び(c)の各工程を
有する方法を用いて形成することを特徴とする光記録媒
体の製造方法である。
(a)沸点が70℃以上の有機溶媒を含有する、粘度(20
℃)が1cps以上の薄膜形成用塗布液を用意する工程、 (b)表面が円筒状又はワイヤー状のローラの形態から
なる塗布部材に該塗布液を保持させる工程、及び (c)該塗布部材を、該塗布部材に保持された塗布液を
介して該基板若しくは該基板上に形成された薄膜に接触
させると共に塗布部材を該基板に対して相対的に移動さ
せて該基板上に該塗布液を転写することにより前記1μ
m以下の膜厚を有する薄膜を形成する工程。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係わる光記録媒体の製造方法は、表面が円筒
状、ワイヤー状等のローラの形態からなる塗布部材を有
し、前記塗布部材上に薄膜形成塗布液を保持させ、これ
を平状円形基板と接触させることにより、記録層、保護
層、下引き層の薄膜を形成することを特徴とするもので
ある。
さらに、前記薄膜の膜厚が1μm以下でまた均一な薄
膜を形成するために、薄膜形成用塗布液に含有する有機
溶媒の沸点が70℃以上、また、薄膜形成用塗布液の粘度
(20℃)が1.0cps以上のものを使用するのが好ましい。
次に、本発明を図面に基づいて説明する。
第1図は本発明の光記録媒体の製造方法の代表的な1
実施態様を示す説明図である。同第1図において、円筒
状ローラ2とローラ3を上下に配置し、その間を搬送用
ローラ4により駆動する搬送用ベルト5上に固定した平
状円形基板1を円筒状ローラ2と近接した状態に配置す
る。薄膜形成用塗布液(以下、塗布液と記す)7を供給
ローラ6,6′を介して円筒状ローラ2上に保持させる。
円筒状ローラ2は、金属、ゴムまたは樹脂等の材料から
なり、均一な平滑性を有するものであるか、または、ワ
イヤー状に一定のすき間を有するものであればよい。円
筒状ローラ2と供給ローラ6′とは一定のすき間のある
状態で矢示の如く接触回転させることにより円筒状ロー
ラ2上に塗布液7を一定量供給し、そして該塗布液7
は、平状円形基板1に所定のすき間を介して配置されて
いる円筒状ローラ2から平状円形基板面へ転写されて平
状円形基板上に均一かつ平滑な厚みで薄膜を形成するこ
とができる。
この場合、特に塗布に用いられる塗布液は、少なくと
も有機溶媒を含有しており、この有機溶媒の沸点が70℃
以上、好ましくは70℃〜160℃であることにより、1μ
m以下の所要塗布膜厚、および均一な塗布薄膜を形成す
ることができ、また環境による粘度変動を少なくするこ
とができ、常に同一条件で薄膜を形成することができ
る。有機溶媒の沸点が70℃未満では、波状の厚みムラが
生じ、また、有機溶媒が蒸発して、塗布液の固型分が変
動し、連続工程において、薄膜の厚み変動を生じる結果
となる。
前記の沸点が70℃以上の有機溶媒として、例えばエタ
ノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブ
タノール、等のアルコール類、またはメチルエチルケト
ン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケト
ン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼ
ン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族
類、1,2−ジクロルエタン、四塩化炭素等のハロゲン化
類等を挙げることができる。
また、塗布液の粘度(20℃)が1.0cps以上、好ましく
は1.0〜50cpsにすることにより、塗布液7を供給ローラ
6,6′、円筒状ローラ2へ均一な厚さで供給でき、また
ローラからの液ダレを防止することができる。
また、塗布液7を円筒状ローラ2から平状円形基板1
上に塗布した時、均一な厚みで塗布することができ、さ
らに平状円形基板1の端部も液ダマリや液ダレがなく、
均一な厚みが得られる。前述の粘度(20℃)を1.0cps以
上にするためには、塗布液に含まれる樹脂、染顔料およ
び有機溶剤などの組成を適当に調整することにより行な
われる。また供給ローラ6と供給ローラ6′の間のすき
間、円筒状ローラ2と供給ローラ6′及び円筒状ローラ
2と平状円形基板1との間のすき間は、塗布液の沸点、
粘度そして形成する薄膜の厚さによって変化させること
が好ましく、具体的には例えば、塗布液として沸点が70
℃以上の有機溶媒を含み、且つその粘度(20℃)が1cps
以上のものを用いる場合、上記のそれぞれのすき間を5
μm程度とすることによって厚さ1μm若しくはそれ以
下の均一な薄膜を安定して形成することができる。
8は、塗布液の円筒状ローラ2に残る塗布液をクリー
ニングするクリーニングローラである。
前記のような塗布方法により形成される記録層、保護
層、下引き層等の薄膜材料としては、前記の有機溶剤に
溶解または分散される樹脂、染顔料等の材料であれば特
に限定することなく広範囲のものを使用することができ
る。特に記録層の場合、染料を前記有機溶媒中に溶解ま
たは分散させることにより、1μm以下の所要の厚み
で、均一な薄膜を得ることができる。
[作用] 本発明は表面が円筒状又はワイヤー状のローラの形態
からなる塗布部材に塗布液を保持させ、該塗布部材上の
塗布液を平状円形基板上に接触させて直接付与するため
に、用いられる塗布液の量は少なくて済み、塗布液の組
成の保守、管理が容易であり、また薄膜の製造効率が高
く、連続作業が可能となる。したがって、生産性、コス
トの点で有利である。
また、塗布液を基板上に直接付与するため、所定の厚
さの均一な薄膜が再現性よく容易に形成でき、また異物
やダレ等により影響を完全に防ぐことができる。また、
特に同心円状、らせん状の凹凸部を有する平状円形基板
上にも、塗布液を直接付与することができ、それ等の基
板においても均一な膜厚の薄膜を容易に得ることができ
る。
[実施例] 以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例1 光記録媒体において、第1図に示す方法により基板上
に記録層を形成する塗布方法について述べる。
下記で示す構造式[I]の化合物3重量部を有機溶剤
としてメチルエチルケトン(沸点:79.6℃)/シクロヘ
キサノン(沸点:155.7℃)=1/1 100重量部に溶解させ
塗布液を調整した。この塗布液の粘度は1.5cpsに調整し
た。
第1図において、塗布液7を供給ローラ6,6′から円
筒状ローラ2に矢印の方向に回転させながら供給した。
前記各ローラ間のすき間は5μmに調整した。
円筒状ローラ2とローラ3の間を搬送用ローラ4によ
り駆動する搬送用ベルト上に、フォトポリマー法により
らせん状の凹凸部を形成した平状円形基板1を固定し、
矢印方向に移動した。この基板1と円筒状ローラ2との
すき間を5μmに調整した。円筒状ローラ2から平状円
形基板1上に塗布液を供給し記録層を形成し、その後自
然乾燥させてから60℃で20分間加熱乾燥した。
この形成された記録層を調べてみると、凹部、凸部共
に600ű50Åの均一な厚みが得られ、また顕微鏡観察
においても、ブツやムラのない薄膜である事を確認し
た。
比較例1 実施例1において、有機溶剤をアセトン(沸点:56.2
℃)にかえた以外は、実施例1と全く同様の塗布方法で
光記録媒体を作製した。
この溶液の粘度(20℃)は、0.8cpsであった。
この形成された記録層を調べてみると、凹部が約300
ű150Å、凸部が500ű200Åと不均一な厚みであっ
た。また顕微鏡観察においても、スジムラ、細かいブツ
が観察され、平滑な薄膜が得られなかった。
実施例1および比較例1で作製した光記録媒体を900r
pmで回転し、直径1.4μmに集光した1mWの半導体レーザ
を照射し、その反射光をフォトダイオードで検出して、
媒体ノイズを測定したところ、実施例1の光記録媒体
は、比較例1の光記録媒体よりもノイズが21dBの少なか
った。
また、これらの光記録媒体に直径1.4μmに集光した8
mWの半導体レーザ光を周波数1MHzで照射して記録を行な
い顕微鏡観察したところ、比較例1の光記録媒体は、記
録部分のピットの形状が不均一で、部分的に記録できて
いなかった。それに対して、実施例1の光記録媒体は均
一でかつ一様のピットが形成され、記録層の厚みが均一
な薄膜であることから、光記録媒体として充分実用でき
ることを確認した。
実施例2 第2図に示す方法で、各塗布方法は実施例1と同様の
塗布方法を用いて、下引き層、記録層および保護層の連
続塗布を行なった。
但し、供給ローラ6,6′および円筒ローラ2間のすき
間、円筒状ローラ2と平状円形基板1とのすき間は、そ
れぞれ下引き層塗布部(1)5μm、記録層塗布部
(2)5μm、保護層塗布部(3)50μmとした。
下引き層塗布部(1)、記録層塗布部(2)、保護層
塗布部(3)に、それぞれの塗布液を補給し、実施例1
と同様の方法で、第2図に示すように順次積層して光記
録媒体を連続的に作製した。
下引き層用塗布液7′は、ニトロセルロース溶液(ダ
イセル化学工業(株)製;オーハーレスラッカー:ニト
ロセルロース25重量部のメチルエチルケトン溶液)5重
量部をメチルエチルケトン溶液45重量部に混合し調整し
た。この塗布液の粘度は2.1cpsである。
記録層用塗布液7″は、下記に示す構造式[II]の化
合物5重量部をイソプロピルアルコール(沸点:82.3
℃)/ジアセトンアルコール(沸点:167.9℃)=1/1 1
00重量部に溶解し調整した。この塗布液の粘度は、4.3c
psである。
保護層用塗布液7は、ポリカーボネート樹脂(パン
ライト:帝人(株)製)10重量部をモノクロルベンゼン
(沸点:131.5℃)90重量部で溶解し、調整した。この塗
布液の粘度は23.0cpsである。
この形成された各層の厚さを調べてみると表1のとお
りであった。
また、均一な薄膜であることを確認した。
また、顕微鏡観察においても、ブツ、ムラのない薄膜
であり、光記録媒体として十分実用できるものであっ
た。
[発明の効果] 以上説明した様に本発明の光記録媒体の製造方法によ
れば、記録層、保護層、下引き層等の膜厚約1μm以下
の均一な薄膜を工程管理が容易で、連続的に生産性良く
提供することができる。
また、得られた光記録媒体はノイズが少なく優れた光
学的特性を有し極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の光記録媒体の製造方法の1実施態様を
示す説明図および第2図は他の実施態様である連続塗布
方法を示す説明図である。 1…平状円形基板、2…円筒状ローラ 3…ローラ、4…搬送用ローラ 5…搬送用ベルト、6,6′…供給ローラ 7,7′,7″,7…薄膜形成用塗布液 8…クリーニングローラ 9…乾燥炉

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基板上に厚さ1μm以下の記録層薄膜を具
    備し、更に厚さ1μm以下の保護層及び厚さ1μm以下
    の下引き層の少なくとも一方の薄膜を有していてもよい
    光記録媒体の製造方法において、該薄膜の少なくとも1
    つを下記の(a),(b)及び(c)の各工程を有する
    方法を用いて形成することを特徴とする光記録媒体の製
    造方法。 (a)沸点が70℃以上の有機溶媒を含有する、粘度(20
    ℃)が1cps以上の薄膜形成用塗布液を用意する工程、 (b)表面が円筒状又はワイヤー状のローラの形態から
    なる塗布部材に該塗布液を保持させる工程、及び (c)該塗布部材を、該塗布部材に保持された塗布液を
    介して該基板若しくは該基板上に形成された薄膜に接触
    させると共に塗布部材を該基板に対して相対的に移動さ
    せて該基板上に該塗布液を転写することにより前記1μ
    m以下の膜厚を有する薄膜を形成する工程。
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