JP2513942B2 - 固定化生体触媒を用いる反応装置 - Google Patents

固定化生体触媒を用いる反応装置

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JP2513942B2
JP2513942B2 JP3102838A JP10283891A JP2513942B2 JP 2513942 B2 JP2513942 B2 JP 2513942B2 JP 3102838 A JP3102838 A JP 3102838A JP 10283891 A JP10283891 A JP 10283891A JP 2513942 B2 JP2513942 B2 JP 2513942B2
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孝夫 森
正勝 古井
陽三 中本
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Tanabe Seiyaku Co Ltd
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Tanabe Seiyaku Co Ltd
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  • Separation Using Semi-Permeable Membranes (AREA)
  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)
  • Immobilizing And Processing Of Enzymes And Microorganisms (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は酵素、微生物菌体などの
生体触媒に基質を反応させて種々の有用物質を製造する
方法において、反応を効率よく実施するための装置に関
するものである。さらに詳しくは、本発明は機能を失い
やすいエステラーゼ、リパーゼまたはこれらを含む微生
物培養液から選ばれる生体触媒含有ホローファイバー型
限外ろ過膜を使用する固定化生体触媒反応において、膜
活性を低下させることなく、高濃度の基質から高濃度の
生成物を蓄積させる反応方法のための装置に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】酵素、微生物菌体などの生体触媒は高い
基質特異性を有するため、常温常圧などの緩和な条件下
で効率よく触媒反応が進むことから、近年種々の有用物
質の生産に利用されており、たとえば、生体触媒を用い
る反応を均一相で行なったのち、反応液から限外ろ過膜
で生体触媒を回収する方法が考案されていた(特開平2-
42992 号)。しかしながらこれら生体触媒は容易に失活
するため、反応液から分離し、かつ変性させずに回収し
再利用することはきわめて困難であり、経済的に問題が
あった。さらに、生体触媒はたんぱく質でできているた
め、熱、酸、アルカリおよび有機溶媒中では不安定であ
り、そのまま溶媒に添加して用いるばあいは、通常水系
の溶媒中で用いられるのみであり、応用範囲が限られて
いた。
【0003】近年、これら生体触媒に関する問題を解決
すべく、生体触媒を適当な担体に吸着させたり適当な担
体で包括させることにより不溶性の状態とし、反応液か
らの分離が容易で、かつ安定化された固定化生体触媒が
開発された。
【0004】物質生産プロセスにこのような固定化生体
触媒を用いるばあい、生体触媒が安定化されているため
反復利用が可能となり、反応液を触媒から分離するのが
容易であるため澄明な反応液がえられ、反応後の後処理
が容易になった。そして、生体触媒の固定化が触媒自身
の安定性を向上させるという点に着目し、最近有用物質
生産のための反応を有機溶媒系で操作することも頻繁に
試みられるようになっている。
【0005】これらの固定化生体触媒を利用した方法の
なかで、近年、酵素を反応器内で保持でき、しかも油相
と水相を用いて反応を進めるばあいにも、液々分離のた
めの遠心分離機などを付設する必要のない方法が注目さ
れている。すなわち、精密ろ過膜(MF膜)や限外ろ過膜
(UF膜)などの製膜および膜応用技術の発展と関連し
て、生体触媒をこれらの膜と組合わせて使用し、生体触
媒反応を行なわせる方法であり、油脂の加水分解反応な
どに適用する方法が開発されている(バイオサイエンス
とインダストリー、第47巻、17頁(1989))。膜を用いる
これらの方法においては、生体触媒は膜に吸着させるな
どして用い、たとえば、生体触媒含有限外ろ過膜を使用
する方法が特表昭63-501612 号、特表平2-502875号およ
び国際公開公報W090/04643 号明細書に開示されてい
る。これらの方法は酵素の再利用、副生成物の除去など
の点においてすぐれたものである。
【0006】しかしながら、これら膜を用いる方法で
は、膜の内部および表面に生成物などの結晶が析出する
と、円滑な反応がいちじるしく阻害されるという問題が
ある。したがって、反応は通常溶液の状態で行なわれる
ため、従来の方法では蓄積できる生成物の濃度に限界が
あり、一般には反応温度におけるそれ自身の飽和溶解度
が蓄積できる上限濃度となる。もしも、高濃度の生成物
をえるために反応系を生成物の飽和溶解度以上で操作し
ようとすれば、反応液中に結晶が析出し、前述したよう
に膜機能の低下をきたすことになる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らはかかる実
情に鑑み、生体触媒の活性を維持し、生体触媒反応の応
用範囲を広げるために生体触媒を限外ろ過膜に固定化し
ながらも、生成物などの結晶化により機能を失い易い膜
の機能を保って反応を効率よく実施して、高濃度の目的
物をえるための装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明はエステラーゼ、
リパーゼまたはこれらを含む微生物培養液から選ばれる
生体触媒含有ホローファイバー型限外ろ過膜を用いて基
質と前記生体触媒とを反応させ有用物質を製造する装置
であって、前記生体触媒含有ホローファイバー型限外ろ
過膜を併有する反応槽からなる反応部と、ろ過機能を併
有する温度調節可能な晶析槽からなる反応液から生成物
を析出させろ過するための晶析部と、反応液を反応槽か
ら晶析槽に送るための流路と、晶析槽からろ液を反応槽
に送るための流路とからなることを特徴とする生体触媒
反応用の装置に関する。
【0009】本発明の装置では基質をホローファイバー
型限外ろ過膜に固定化したエステラーゼ、リパーゼまた
はこれらを含む微生物培養液から選ばれる生体触媒と接
触させることにより反応を進め、生成物の析出温度に設
定した晶析槽で生成物に富む反応液から生成物を結晶化
させ、ろ過により結晶を分離したのち、未反応の基質を
含有する母液に基質を添加して基質濃度を上げたうえ
で、反応させる操作をくり返し行ない、その一方で、反
応により副生した不純物をホローファイバー型限外ろ過
膜を通して除去しながら反応を続けることにより、高濃
度に仕込んだ基質を高濃度の生成物に転換させる。
【0010】本発明で使用するホローファイバー型限外
ろ過膜は有機溶媒に対する耐性があり、かつ、エステラ
ーゼ、リパーゼまたはこれらを含む微生物培養液から選
ばれる生体触媒および基質や生成物を透過させず、低分
子量の分解物や不純物などのみを透過させる適当な孔径
の細孔膜であり、さらに単位容積当りの表面積(比表面
積)が大きく、前記生体触媒を高濃度に吸着でき、安定
化できるものであればいずれのものでもよいが、膜の比
表面積が0.1 〜 100cm2 /cm3 であり、好ましくは10〜
50cm2 /cm3 であるものが好適である。具体的にはポリ
スルホン、ポリアクリロニトリルなどの各種合成高分子
膜などがあげられるが、たとえば、反応が後述のエポキ
シ体の不斉加水分解などのばあいには、米国セプラコー
ル社の親水性ポリアクリロニトリル膜が好適である。
【0011】晶析槽は熱交換機能、ろ過機能を有するも
のであればいかなる型式のものであってもよく、撹拌機
能を併有していてもよい。ろ過器としては、生成物の結
晶を通過させずにろ液がえられる細孔を有するろ材で、
有機溶媒に対する耐性のすぐれた素材であればいかなる
ものであってもよく、たとえばガラスフィルター、焼結
合金フィルターなどが好ましい。またろ過器の形状はと
くに制限はなく、平板、円筒、ヒダ状など必要なろ過面
積に合わせて適当に選べばよい。
【0012】本発明の装置に用いる生体触媒としては、
ホローファイバー型限外ろ過膜に固定化できるものであ
れば、リパーゼ、エステラーゼまたはこれらを含む微生
物培養液から選ばれる触媒(以下、生体触媒と称す)の
いずれも使用できるが、とりわけリパーゼ、エステラー
ゼを用いるのが好ましい。また、市販されている粗酵
素、精製酵素を適宜使用しうるが、微生物培養液を用い
るばあいには、培養工程での夾雑物を除くため、精製、
濃縮したものを用いるとよい。これら生体触媒は、一般
には適当な緩衝液で希釈したのち、限外ろ過することに
より、物理的にあるいは適当な化学結合を使って化学的
に膜内および膜表面に固定化することができる。
【0013】基質は目的生成物に対応するものを選び、
溶液状態で生体触媒含有ホローファイバー型限外ろ過膜
と接触させる。基質としては生体触媒の活性を阻害せ
ず、目的物はホローファイバー型限外ろ過膜を通過して
除去されることがなく、一方、副生物のみがホローファ
イバー型限外ろ過膜を通過して除去されるものであれ
ば、いかなるものであっても使用することが可能であ
り、たとえば、3-(4-メトキシフェニル)または3-(4-
メチルフェニル)グリシッド酸エステルのラセミ体を好
適に使用することができる。基質を晶析後の母液に添加
する方法に制限はなく、晶析槽に一括して添加してもよ
く、基質阻害のある反応や基質自身が不安定なばあいに
は、反応の進行に応じて分割して添加してもよい。
【0014】本発明の基質を溶解する溶媒は、ホローフ
ァイバー型限外ろ過膜の材質を溶解せず、生体触媒の活
性を阻害せず、水と混和しない有機溶媒であればよく、
基質の種類により、溶解度、安定性などを考慮して、適
宜選択することができるが、たとえば、酢酸エチル、酢
酸ブチルなどのエステル系溶媒、アミルアルコールなど
のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジメチルエー
テル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル系溶媒、
メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、ベンゼ
ン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、四塩化
炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロメタ
ンなどのハロゲン化炭化水素、ヘプタンなどの脂肪族炭
化水素をいずれも好適に使用することができる。
【0015】一方、副生物をホローファイバー型限外ろ
過膜を通して除去するために用いる溶媒としては、これ
ら有機溶媒と混和せず、生体触媒を固定化したホローフ
ァイバー型限外ろ過膜に悪影響を及ぼさないもののうち
から、副生物の溶解度の高いものを適宜選択することが
できるが、とりわけ、水、生体触媒の適性pHに調整した
緩衝液などを好適に使用することができ、これらに副生
物の除去を促進する薬物を混入してもよい。また、副生
物としてアルデヒド化合物が生じるばあいには、亜硫酸
ナトリウム、亜硫酸カリウムなどの亜硫酸イオン供与体
を添加し、アルデヒド化合物による生体触媒の失活を防
ぐのが好ましい。
【0016】本発明の装置では、基質溶液を生体触媒含
ホローファイバー型限外ろ過膜に接触させ、膜を通し
て副生物を除去しながら、生成物に富む反応液を晶析槽
に導き、該槽内で生成物を析出させて分離したのち、反
応母液すなわち未反応基質を含有するろ液に基質を添加
して、基質溶液として循環させる。
【0017】この際の操作温度はホローファイバー型
外ろ過膜に固定化した生体触媒の活性を保持するために
通常0〜60℃であればよいが、とりわけ10〜40℃程度が
好適である。
【0018】また、晶析槽の温度は、反応温度における
生成物の飽和溶解度よりも低い溶解度を与える値に設定
する必要があり、溶解度が温度とともに上昇するばあい
には晶析槽は主反応槽よりも低い温度に設定し、逆のば
あいは高い温度に設定すればよい。
【0019】かかる本発明の装置は、酸化、還元、加水
分解、転移、異性化などの一般的な生体触媒を用いる反
適用することができるが、加水分解を用いるラセミ
体基質の光学分割にとりわけ好適に適用することができ
る。
【0020】また、本発明の装置は、生体触媒含有ホロ
ーファイバー型限外ろ過膜でえられる反応液を反応槽に
導き、反応槽から生成物に富む反応液の一部を抜き出
し、温度調節可能な晶析槽へ導いて生成物を晶析させ、
ろ過した後、母液に基質を添加して反応槽に戻すこと
らなることもできる。
【0021】反応槽は外部拡散抵抗が除去できる機能を
有しておればどのような形式のものでもよく、適当な撹
拌機付の撹拌槽やポンプを併置する塔形式のものを用い
ることができる。かかる反応槽を設けることにより、生
成物の晶析に時間を要するばあいにも基質濃度が均一な
基質溶液を容易に短時間でえることができるため、生体
触媒含有ホローファイバー型限外ろ過膜に高濃度の基質
溶液を高流速で連続的に供給し、生体触媒反応の効率を
高めることができる。また、生体触媒反応の反応時間を
短縮することもできるため、経時的な生体触媒の失活お
よび基質の化学的な分解を抑えて生産性を上げることも
できる。
【0022】晶析槽と反応槽の間の循環は、連続的ある
いは断続的に行えばよいが、反応槽から抜き出した反応
液を流入させた晶析槽全体の温度を適切な温度に調節
し、生成物を晶析させるため、晶析槽内でのショートパ
スを避ける必要があり、断続的に循環させるのが好まし
い。また、このばあいの流速はとくに制限されないが、
効率よく生体触媒による反応を進行させるために、生体
触媒含有ホローファイバー型限外ろ過膜に接触させる基
質の濃度が低下しないように、反応槽の基質濃度が高く
保てるような流速で晶析槽から基質を添加した母液を反
応槽に循環させるのがよい。
【0023】なお、本発明の装置製造するに際して
は、必要であれば、ホローファイバー型限外ろ過膜を通
して除去された副生物を回収するために、反応槽以外に
副生物を蓄積する副反応槽を備えていてもよい。
【0024】つぎに本発明装置の一実施態様を図面に
したがって説明する。
【0025】図1は本発明の反応装置の概略ブロック図
である。反応部はホローファイバー型限外ろ過膜1と、
流路がそのホローファイバー型限外ろ過膜の外側(シェ
ル側)に連結される反応槽2と、ホローファイバー型限
外ろ過膜の内側(ルーメン側)に連結される副反応槽3
とから構成されており、それぞれの反応槽とホローファ
イバー型限外ろ過膜間には反応混合物循環用のポンプ4
および5が設置されている。
【0026】また、ホローファイバー型限外ろ過膜シェ
ル側の出口には生体触媒が膜から脱離するのを抑制する
目的で系内を一定の加圧状態に保持する保圧弁6が設置
されている。
【0027】晶析部は晶析槽7からなり、晶析槽7内に
はろ過板8が併置され、反応槽2との間にはろ液循環ポ
ンプ9が介装されている。また、反応部と晶析部は反応
槽2から反応混合物が流出する流路10とろ液流路11で連
結されており、反応槽2、3および晶析槽には撹拌機1
2、13および14がそれぞれ設置されている。
【0028】本発明装置を用いて反応を行なうには、ま
ず反応槽2に生体触媒を含有する水溶液を充填し、ポン
プ4を使って該溶液を循環させながらシェル側からルー
メン側に向けての限外ろ過を行ない、生体触媒を膜の細
孔および表面に固定化する。この際、生体触媒の洗浄が
必要なばあいは蒸留水または適当な緩衝液で同様の操作
を行ない洗浄する。さらに、基質が水に不安定なばあい
には反応前にシェル側の水滴を除去しておく必要から、
基質を溶解する溶媒で同様の操作を行ない、水分のみを
ルーメン側に除去するのが好ましい。
【0029】つぎに晶析槽7に基質を溶液状態またはけ
ん濁状態で仕込み、撹拌機14で撹拌しながら所望の温度
に調整する。このとき反応槽2に反応溶媒を、また反応
で分解した副生物を膜を通して除去するために反応槽3
に水、緩衝液、あるいは副生物の膜透過を促進する薬液
を充填しそれぞれ目的の温度に設定する。温度が一定に
なったことを確認したのち、ポンプ4および5を作動さ
せ循環を開始する。同時にろ液循環ポンプ9を作動さ
せ、ろ液流路11を通して基質を反応槽2に送り込む。し
たがって、基質はポンプ4によりさらに生体触媒含有ろ
過膜に接触せしめられることになり反応が開始する一
方、反応槽2からの生成物に富む流出液は流路10を通し
て晶析槽に戻される。晶析槽は生成物の溶解度が反応温
度での飽和溶解度よりも低い値を与えるように温度設定
してあるために、晶析槽に戻された反応混合物は過飽和
になった生成物を析出し、未飽和状態にある基質のみを
溶解する。このため、晶析槽では生成物がろ取され、ろ
液は未反応の基質を含有する母液として流路11を通り再
び反応槽2に戻される。
【0030】また、ポンプ5により循環される副反応槽
3では、水、緩衝液あるいは不純物の膜透過性を促進す
る薬液が、生体触媒含有ホローファイバー型限外ろ過膜
と接して副生した不純物を効果的に蓄積し、必要に応じ
てこの副生物を回収することができる。この操作を基質
が消耗するまで続けると、最終的に晶析槽には高濃度の
生成物のみを含有する懸濁液がえられる。
【0031】つぎに本発明の装置をその使用例をあげて
具体的に説明する。
【0032】
【実施例】実施例1 リパーゼOF-360を用いるラセミ型3-(4-メトキシフェニ
ル)グリシッド酸メチルエステルからの光学活性3-(4-
メトキシフェニル)グリシッド酸メチルエステルの生産 (1) 反応装置 以下の容量のものを図1にしたがって連結した装置を用
いた。
【0033】ホローファイバー型限外ろ過 膜(1) :ホローファイバー
型(米国セプラコール社製、MBR-500 システム;有効膜
面積0.75m2 比表面積30cm2/cm3 、ファイバー径0.2
/0.3mm φ、分画分子量50,000;材質ポリアクリロニト
リル) 反応槽I(2) :実効容積0.25リットル 反応槽II(3) :実効容積12.7リットル 晶析槽(7) :実効容積 1.255リットル ろ過器:直径10cmのガラスフィルター (2) 生体触媒 リパーゼOF-360(名糖産業、キャンディダシリンドラシ
ア(Candida cylindracea) 由来) (3) 操作 リパーゼOF-360 10gを0.2 Mリン酸緩衝液(pH7.0 ;
1リットル)に室温下けん濁溶解し、遠心機によって不
溶物と上清に分離した。上清1リットルを温度20℃に設
定した反応槽2に充填し、ポンプ4を使ってシェル側か
らルーメン側へ液を透過させた。つぎに蒸留水1リット
ルで同様の操作を行ない膜を洗浄した。さらにトルエン
を用いて同様の操作を行ないシェル側に残存する水滴を
完全にルーメン側へ排出させ固定化を終了した。晶析槽
7にトルエン0.8 リットル、ラセミ型3-(4-メトキシフ
ェニル)グリシッド酸メチルエステル(以下ラセミ体と
称す)487.5 g(2.34mol) を充填し、撹拌下、温度10℃
に保持した。このとき反応槽3には反応の分解物を膜を
通して効果的に除く目的で、2%亜硫酸水素ナトリウム
溶液を12.7リットル充填し、撹拌下20℃に保持した。
【0034】反応槽I、IIおよび晶析槽の温度が設定値
に達していることを確認したのち、ポンプ4、5、9の
順に作動させ、反応を開始した。この際、膜のシェル側
がルーメン側よりも0.3kg /cm2 の陽圧になるように、
保圧弁6を設定した。
【0035】また、ろ液循環ポンプ9は15リットル/時
間の流速で2分作動、1分停止の断続運転とした。反応
中、分解物の蓄積によって反応槽3のpHが若干変動する
ため、10Nの硫酸および水酸化ナトリウムを添加してpH
8.5 に保持した。反応開始43時間後、ポンプ循環をやめ
反応を停止させたところ、トルエン相に光学活性3-(4-
メトキシフェニル)グリシッド酸メチルエステル((2R
、3S) 体、以下levo体と称す)が215.9 g、その対象
体((2S 、3R)体、以下d体と称す)が17.6g残存し、
このうち94gが晶析槽に結晶として回収された。この結
晶の光学純度は99.8%であった。
【0036】比較例1(実施例1の対照実験) (1) 反応装置 反応槽2の代わりに実効容積0.95リットルの槽を用い、
晶析槽を使用しなかった以外はすべて実施例1と同様の
装置を用いた。
【0037】(2) 生体触媒 実施例1で使用したものと同等品を使用した。
【0038】(3) 操作 実施例1と同様の条件で生体触媒を固定化したのち、反
応槽2にラセミ体239.6 g、トルエン0.94リットルを充
填し、副反応槽3には、2%亜硫酸水素ナトリウム溶液
(6.2リットル;pH8.5)を充填し、シェルおよびルーメン
側の循環によって完全な溶液状態での反応を開始した。
23時間後反応を停止したところ、トルエン相にlevo体が
97g、d体が6g残存した。
【0039】実施例1および比較例1の成績をまとめる
と表1の結果となった。
【0040】
【表1】
【0041】上表より明らかなように、本発明の方法で
は従来の方法の約2倍濃度のlevo体が蓄積でき、生産性
も向上した。
【0042】実施例2 (a) セラチアマルセッセンスのエステラーゼを用いるラ
セミ型3-(4-メトキシフェニル)グリシッド酸メチルエ
ステルからの光学活性3-(4-メトキシフェニル)グリシ
ッド酸メチルエステルの生産 (1) 反応装置 実施例1の装置を用いた。
【0043】(2) 生体触媒 セラチアマルセッセンス(Serratia marcescens)Sr41(FE
RM Bp-487)のエステラーゼはつぎの手順で調製した。ま
ず、ミースト(アサヒビール株式会社製)S2%、リン
酸1カリウム0.2 %、硫酸アンモニウム0.2 %、硫酸マ
グネシウム0.05%、硫酸第1鉄0.001 %、カラリン(三
洋化成工業株式会社製)0.2 %、スパン(Span)85(日本
油脂株式会社製) 1.5%、パインデックス(#3、松谷
化学株式会社製)1%の培地(pH7.3 〜7.5 )18リット
ルにセラチアマルセッセンスを植菌し、25〜26℃で29時
間好気的に培養した。培養中、栄養源としてL-プロリン
を最終濃度1.5 %の条件で連続的に添加した。培養液は
精密ろ過膜によって菌体を除去し、さらにUF膜によって
約1/10液量まで濃縮して濃縮酵素標品をえた。
【0044】(3) 操作 上記濃縮酵素標品30ml(エステラーゼ活性0.122 ×106
U )を蒸留水で1リットルに希釈し、実施例1に記載の
方法でホローファイバー型限外ろ過膜に固定化した。晶
析槽にラセミ体 635.7 g、トルエン0.8 リットルを充
填し、同時に副反応槽3には2%亜硫酸水素ナトリウム
溶液(pH8.5;16.7リットル)を充填して反応を開始し
た。22時間後反応を停止したところ、トルエン相にlevo
体291.8 g、d体8.9 gが残存し、このうち208 gが晶
析槽に結晶として回収でき、結晶の光学純度は100 %で
あった。
【0045】(b) ラセミ体の分割添加による生産 実施例2(a) と同様の手段で調製した反応装置を用い、
ラセミ体の総仕込量2836.2gの条件で反応させた。最
初、晶析槽にラセミ体635.7 g、トルエン0.8リットル
を、反応槽3には2%亜硫酸水素ナトリウム溶液(pH8.
5;16.7リットル)を充填し、22時間反応させたのち、
晶析槽の結晶を全量抜き出し、母液に新たにラセミ体78
2.4 gを添加した。同時に反応槽2の分解物を含んだ溶
液は廃棄し、新たに2%亜硫酸水素ナトリウム溶液21リ
ットル(pH8.5) を充填して26.5時間反応させた。さらに
ラセミ体635.7 g、2%亜硫酸水素ナトリウム溶液21リ
ットルで25.5時間、ラセミ体782.4 g、2%亜硫酸水素
ナトリウム21リットルで40.5時間同様の操作を行ない、
延べ114.5 時間で反応を終了した。このとき、回収した
結晶は1381.6gで、光学純度は80.1%であった。また、
最終母液には、levo体が134.8 g、d体が97.9g残存し
た。
【0046】比較例2(実施例2の対照実験) 比較例1と同様の装置にセラチアマルセッセンス濃縮酵
素標品15.8ml(エステラーゼ活性0.064 ×106 U)を固
定化し、ラセミ体239.6 g、トルエン0.94リットルを反
応槽2に2%亜硫酸水素ナトリウム溶液(6.2リットル;p
H8.5) を反応槽3に充填して反応を開始した。16時間後
反応を停止したところ、トルエン相にlevo体101.8 g、
d体11.2gが残存した。
【0047】実施例2および比較例2の成績をまとめる
と表2の結果となった。
【0048】
【表2】
【0049】上表より明らかなように、本発明の方法で
は、分割添加によりみかけの値で、従来の方法の約9.8
倍の濃度のlevo体が蓄積できた。
【0050】実施例3 セラチアマルセッセンスのエステラーゼを用いるラセミ
型3-(4-メトキシフェニル)グリシッド酸メチルエステ
ルからの光学活性3-(4-メトキシフェニル)グリシッド
酸メチルエステルの生産(反復実験) (1) 反応装置 実施例1の装置を用いた。
【0051】(2) 生体触媒 実施例2で使用したものと同等品を使用した。
【0052】(3) 操作 実施例2と同様の方法で濃縮酵素標品26ml(エステラー
ゼ活性0.106 ×106 U)を膜に固定化した。晶析槽にラ
セミ体733.5 g、トルエン0.8 リットルを充填、副反応
槽3には2%亜硫酸水素ナトリウム溶液19.2リットルを
準備し、反応を開始した。このとき、ろ液循環ポンプは
18リットル/時間の流速で2分作動、2分停止の断続運
転を行なった。22.5時間後反応を停止し、晶析槽の結晶
を抜き出すとともに、母液に1回目と同量のラセミ体を
仕込み、また副反応槽3には新規に2%亜硫酸水素ナト
リウム(21 リットル;pH8.5)を準備し、反応を開始し
た。27時間後反応を停止し、結晶を回収するとともに、
母液は廃棄した。1回目の反応と同量のトルエンおよび
ラセミ体を用い、2回に1度母液を廃棄する方法で延べ
6回の反応を操作した。
【0053】反応の成績をまとめると表3の結果となっ
た。
【0054】
【表3】
【0055】上表に示すように、反復回数の増加ととも
に酵素活性が低下し、操作時間が延長したが、高純度の
levo体が好収率で取得できた。
【0056】
【発明の効果】本発明の簡単な装置と操作により、生体
触媒含有ホローファイバー型限外ろ過膜の内部および表
面における生成物の結晶析出を生じさせず生体触媒の活
性を長時間保った状態で、生成物を高濃度で効率的に製
造し、蓄積させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置の一実施例を示す概略ブロック図
である。
【符号の説明】
1 ホローファイバー型生体触媒含有限外ろ過膜 2 主反応槽 3 副反応槽 4、5 反応混合物循環ポンプ 6 保圧弁 7 晶析槽 8 ろ過板 9 ろ液循環ポンプ 10 反応混合物流出流路 11 ろ液流路 12、13、14 撹拌機

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エステラーゼ、リパーゼまたはこれらを
    含む微生物培養液から選ばれる生体触媒含有ホローファ
    イバー型限外ろ過膜を用いて基質と生体触媒とを反応
    させ有用物質を製造する装置であって、生体触媒含有
    ホローファイバー型限外ろ過膜を併有する反応槽からな
    る反応部と、ろ過機能を併有する温度調節可能な晶析槽
    からなる反応液から生成物を析出させろ過するための晶
    析部と、反応液を反応槽から晶析槽に送るための流路
    と、晶析槽からろ液を反応槽に送るための流路とからな
    ることを特徴とする生体触媒反応用の装置。
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