JP2513294B2 - 可変減衰機構を有する可変剛性構造物用能動型制震システム - Google Patents

可変減衰機構を有する可変剛性構造物用能動型制震システム

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は構造物の架構内に架構本体と可変剛性要素、
または架構内に設けた可変剛性要素どうしを連結する可
変減衰装置を設け、地震や風などの振動外力あるいは外
乱に対し、コンピューターにより構造物の振動に応じた
制御を行い、構造物の応答量を低減させる能動型制震シ
ステムに関するものである。
〔従来の技術〕
出願人は構造物の柱梁架構内に、ブレースや壁などの
形で可変剛性要素を組み込み、可変剛性要素自体の剛
性、あるいは架構本体と可変剛性要素との連結状態を可
変とし、地震や風などの振動外力に対し、振動外力の特
性をコンピューターにより解析して、非共振となるよう
構造物の剛性を変化させて構造物の安全を図る能動的制
震システムおよび可変剛性構造を種々提案している(例
えば特開昭62-268479号、特開昭63-114770号、特開昭63
-114771号など)。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところで、従来の能動的制震システムは、主として地
震動などの卓越周期と、構造物の固有振動数(通常、1
次の固有振動数が問題となる場合が多い)との関係に着
目し、卓越周期に対し、構造物の固有振動数を能動的に
ずらすことにより、共振減少を避け、応答量の低減を図
っている。
しかし、特に地震動などの場合、非定常振動であるこ
とから、例えば卓越周期がはっきりしない場合や卓越周
期が複数ある場合など、必ずしも最適な制御とならない
場合も考えられる。
本発明では架構本体と可変剛性要素との間に介在させ
る連結装置の減衰係数を可変とし、構造物の共振性と減
衰性を複合的に評価し、制御することにより、構造物の
応答量を低減し、構造物の安全性を確保するとともに、
快適な居住空間を実現することを目的としている。
〔課題を解決するための手段〕
本発明では従来の能動的制震装置が主として非共振性
に着目していたのに対し、架構本体と可変剛性要素との
間または可変剛性要素内に特定の2種類の減衰係数c1
c2を設定した連結装置を介在させ、この連結装置による
連結状態を変化させることにより、非共振性と減衰性を
複合的に判断して構造物の振動制御を行うようにしてい
る。
このような2種類の減衰係数c1、c2について可変な連
結装置としては、例えばシリンダーがブレースなどの可
変剛性要素側に連結され、該シリンダー内で往復動する
両ロッド形式のピストンロッドが架構本体側に連結され
る連結装置(以下、ロックシリンダーと呼ぶ)が考えら
れる。このロックシリンダーには、第3図に示すように
ピストン12aの両側の油圧室13を連結する油路14に開閉
弁15が設けられ、この開閉弁15の開閉により、フリー側
の第1の状態とロック側の第2の状態の、いずれかの状
態への制御が行われる。そして、この油路14にオリフィ
ス16を設け、その大きさを設計することにより、第1の
状態における第1の減衰係数c1が実現される。また、第
2の減衰係数c2については、前記開閉弁15に対するバイ
パスとしての第2の油路17を設け、この第2の油路17に
もオリフィス18を設け、その大きさを設計することによ
り、第2の状態における第2の減衰係数c2が実現され
る。シリンダー11が架構本体側に連結され、ピストンロ
ッド12が可変剛性要素側に連結される場合も同様であ
る。
この油圧を利用したロックシリンダー10において、架
構本体に対する減衰力はシリンダー11とピストンロッド
12の相対速度の2乗に比例する抵抗力として与えられ、
この場合の架構特性は第4図および第5図に示すように
なり、図中実線が大振幅時、破線が小振幅時である。す
なわち、ロックシリンダーを用いた架構は、振動の大き
さ(例えば、振幅)により、違った特性を示す。第4図
および第5図のグラフは2種類の振動レベル(層間の振
幅±0.5cmと±3.0cm)における架構特性を示しており、
架構の減衰定数hが最大となるロックシリンダーの減衰
係数cの値(大きい振動レベルにおいて減衰定数hが最
大となる減衰係数c01、小さい振動レベルにおいて減衰
定数hが最大となる減衰係数c02)で、架構の固有周期
も変化する。なお、本願の明細書、図面で述べている振
動レベル、振幅は、構造物あるいは架構本体の振動レベ
ル、振幅である。
仮に、制御する上限の振動レベルにおける減衰係数が
上述のc01であり、制御する下限の振動レベルにおける
減衰係数が上述のc02であるとし、その範囲においては
必ず周期変化も可能とする場合には、第4図から明らか
なように、前述の第1の減衰係数c1および第2の減衰係
数c2をそれぞれ、 c1<c01、c2>c02 ……(1) となるように設定すればよく、また第5図から明らかな
ように、それぞれc01、c02から大きく外れない値が好ま
しい。
表−1は設定した2種類の減衰係数c1、c2に対する架
構の減衰定数hと架構の1次固有周期の例を示したもの
である。
ただし、c1とc2の選定は制御しようとする振動レベル
の範囲によって変わり、また周期変化を可能とする範囲
を限定してもよい場合には、必ずしも上記(1)の範囲
に限定されない。
なお、2種類の減衰係数を与える連結装置は上述のロ
ックシリンダーに限定されず、少なくとも2種類の減衰
係数が設定でき、相対速度の2乗に比例するような減衰
力を与えるものであればよい。
本発明の能動的制震システムは、上述のように2種類
の減衰係数c1、c2を設定し、架構本体と可変剛性要素と
の間または可変剛性要素内に介在させた可変減衰の連結
装置と、周波数特性分析手段、応答量計測手段、減衰係
数選択手段および制御指令発生手段とから構成される。
構造物に入力される振動外力は構造物内あるいは外部
のセンサーなどにより感知され、コンピュータープログ
ラム内の周波数特性分析手段により、卓越周期その他の
周波数特性が解析される。一方、構造物あるいは架構本
体の実際の応答量が応答量計測手段としての加速度計、
速度計あるいは変位計などのセンサーにより感知され、
これら周波数特性と応答量について、コンピュータプロ
グラム内の減衰係数選択手段により、非共振性と架構本
体の減衰性を評価し、複合的に検討することにより、前
記2種類の減衰係数c1、c2のいずれか構造物の応答を低
減させる減衰係数が選択される。すなわち、卓越周期が
はっきりせず、非共振化できない場合や、地震動などの
周期成分の分布により、非共振化よりも減衰の制御によ
る効果が大きい場合を、得られた周波数特性および応答
量に基づいてコンピューターで判断し、減衰係数を選択
することができる。これは、具体的には、減衰係数選択
手段において、周波数特性分析手段により得られた振動
外力の周波数特性と、応答量計測手段により得られた応
答量から判断される架構本体の振動レベルを基に、前記
2種類の減衰係数c1、c2に応じた構造物の応答値を求
め、いずれか構造物の応答を低減させる方を選択すると
いった形で実現される。なお、架構本体または構造物の
固有周期は減衰係数を選ぶことにより、振動レベルに応
じ、短い周期と長い周期のいずれかになる。したがっ
て、非共振化のための固有周期の選択も、そのときの振
動レベルに応じて、減衰係数を選択することにより行わ
れる。選択された減衰係数は制御指令発生手段より、制
御指令を前述の連結装置に与えることにより実現され
る。
〔実施例〕
次に、実施例として制御システムの具体例について説
明する。
第1図は本発明の能動的制震システムの構成の概要を
示したもので、柱3と梁4からなる架構本体2と、各層
の架構本体2内に組み込んだ可変剛性要素としての逆V
型ブレース5との間に連結装置1(例えば前述のロック
シリンダー)を介在させている。入力地震動および構造
物の応答(振幅、速度、加速度)をそれぞれ入力センサ
ー6および応答センサー7でセンシングし、地震動特性
(卓越周期)と応答状態に応じた連結装置1の減衰係数
をコンピューター8で求め、制御指令を出す。第2図は
そのときのフローを示したものである。
制御はより具体的には以下のように行われる。
制御をする振動レベルを設定する。例えば、層間変
形量で±0.5cm〜±3.0cm、速度で1〜25kine(cm/sec)
など。
設定した振動レベルの上限、下限における架構特性
を把握する。例えば、連結装置の減衰係数による架構本
体の周期、減衰定数の変化など。
設定した振動レベルにおいて確実に周期が変化させ
ることができ、しかもできる限り大きな減衰効果を架構
に付加できる連結装置の減衰係数c1、c2を選定し、制御
指令により、どちらかを選択できるものとする。
構造物の応答を見て、減衰性を評価し(フィードバ
ック制御)、地震動の特性(卓越周期)を見て、非共振
性を評価(フィードフォワード制御)することにより、
複合制御が可能となる。
常時、微少振動(風、小地震)時には、小振動レベ
ルで最も大きな減衰効果を生む減衰係数c2とする。
表−2は制御例として、第6図(a)〜(g)に対応
する地震動特性のときの制御の様子をまとめたものであ
る。なお、第6図(a)〜(g)の横軸は周期T、縦軸
は応答値Sの大きさを表し、第6図(a)〜(g)中、
実線は地震応答スペクトル、一点鎖線は減衰係数c1を選
択したときの応答値、破線は減衰係数c2を選択したとき
の応答値、黒丸は減衰係数c1、c2のうちいずれか選択さ
れた減衰係数での応答値、白丸は選択されなかった他方
の減衰係数での応答値を示す。
第7図〜第14図は本発明における可変減衰機構を有す
る連結装置の構造物架構に対する適用位置の例を示した
ものである。
第7図の例では架構本体2としての柱梁架構と、可変
剛性要素としての逆V型ブレース5の間に連結装置1を
介在させている。
第8図の例は架構本体2としての柱梁架構と、上下の
梁4より立設したまたは垂下させたフレーム21どうしの
間に連結装置1を介在させて、可変剛性要素としてのモ
ーメント抵抗フレームを構成した場合である。
第9図の例では架構本体2としての柱梁架構と、可変
剛性要素としてのRC耐震壁22との間に連結装置1を介在
させている。
第10図の例は、免震構造物の基部に積層ゴムなどの免震
ゴム23と併用して連結装置1を設けた場合の例であり、
連結装置1が免震構造におけるダンパーの役割を果たし
ている。この場合の可変剛性要素は構造物の基礎と考え
ることができる。
第11図の例では架構本体2としての柱梁架構内に設け
たX型ブレース24を可変剛性要素としており、X型の中
央に連結装置1を横向き(横型)に介在させてある。
第12図の例は第11図の例と同様X型ブレース25に適用
した例であり、第11図の例が連結装置1を横向きに設け
た横型だったのに対し、本例では連結装置を縦向きに設
け、縦型としている。
第13図の例は第9図の例と同様、架構本体2としての
柱梁架構と、可変剛性要素としてのRC耐震壁26との間に
連結装置1を介在させたものであるが、連結装置1を出
入口などの開口部27の上方に設けた点に特徴を有してい
る。
第14図の例は、大架構におけるX型ブレース28の中央
に連結装置1を介在させたもので、中間の大梁29とブレ
ース28は分離されている。
〔発明の効果〕
本発明の能動型制震システムでは、地震動などの外乱
に対し、非共振性だけでなく、構造物の減衰性も考慮し
て制御を行うため、非共振による振動低減効果が少ない
場合にも、構造物の応答をより合理的に制御することが
できる。
すなわち、可変剛性要素と連結装置の連結状態に応じ
た2種類の固有周期と、連結装置の2種類の減衰係数
を、構造物の構造に応じて設計することにより、入力さ
れる外乱と構造物の応答に対し、構造物の共振性と減衰
性を複合的に評価、制御し、構造物の応答量を低減し、
安全性を確保するとともに、快適な居住空間を実現する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の能動的制震システムの構成の概要図、
第2図は本発明のシステムによる制御のフローチャー
ト、第3図は本発明の能動的制震システムに使用される
可変減衰機構を有するロックシリンダーの概念図、第4
図および第5図は本発明のシステムにおける架構の特性
を説明するためのグラフ、第6図(a)〜第6図(g)
は制御例における地震動特性および2種類の減衰係数に
おける応答量との関係を示すグラフ、第7図〜第14図は
本発明における可変減衰機構を有する連結装置の構造物
架構に対する適用位置の例を示す概要図である。 1……連結装置、2……架構本体、3……柱、4……
梁、5……ブレース、6……入力センサー、7……応答
センサー、8……制御用コンピューター、10……ロック
シリンダー、11……ピストン、12……ピストンロッド、
13……油圧室、14……油路、15……開閉弁、16……オリ
フィス、17……第2の油路、18……オリフィス、

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】架構本体と可変剛性要素との間、または架
    構本体内に設けた可変剛性要素内に介在し、第1の減衰
    係数c1を与える第1の状態と、前記第1の減衰係数c1
    り大きい第2の減衰係数c2を与える第2の状態との2段
    階に可変な連結装置と、 構造物に入力される振動外力の周波数特性を分析する周
    波数特性分析手段と、 構造物への振動外力の入力による架構本体の応答量を計
    測する応答量計測手段と、 前記周波数特性分析手段により得られた振動外力の周波
    数特性と、前記応答量計測手段により得られた応答量か
    ら判断される架構本体の振動レベルを基に、前記2種類
    の減衰係数c1、c2に応じた構造物の応答値を求め、いず
    れか構造物の応答を低減させる方を選択する減衰係数選
    択手段と、 前記連結装置を前記第1の状態と第2の状態のうち、前
    記減衰係数選択手段により選択された減衰係数に対応す
    る状態に制御する制御指令発生手段とからなる可変減衰
    機構を有する可変剛性構造物用能動型制震システム。
  2. 【請求項2】前記連結装置により制御すべき架構本体の
    上限の振動レベルと下限の振動レベルを設定し、前記第
    1の減衰係数c1および第2の減衰係数c2を c1<c01 c2<c02 ここで、 c01は制御する上限の振動レベルについて、架構の1次
    固有周期が長い周期T1から短い周期T2に変化する過程に
    ある減衰係数 c02は制御する下限の振動レベルについて、架構の1次
    固有周期が長い周期T1から短い周期T2に変化する過程に
    ある減衰係数 となるよう設定してある請求項1記載の可変減衰機構を
    有する可変剛性構造物用能動型制震システム。
  3. 【請求項3】前記連結装置は架構本体または可変剛性要
    素の一方に連結されるシリンダーと、架構本体または可
    変剛性要素の他方に連結され、前記シリンダー内で往復
    動する両ロッド形式のピストンロッドと、ピストンの両
    側の油圧室を連結する油路と、該油路に設けた開閉弁と
    からなり、さらに前記開閉弁に対するバイパスとしての
    第2の油路が設けられ、前記油路および前記第2の油路
    はそれぞれオリフィスを有し、これらのオリフィスによ
    り、前記第1の状態として前記開閉弁を開状態としたと
    きの減衰係数c1と、前記第2の状態として前記開閉弁を
    閉状態としたときの減衰係数c2を与えている請求項1ま
    たは2記載の可変減衰機構を有する可変剛性構造物用能
    動型制震システム。
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