JP2511586B2 - 眼科用医薬組成物 - Google Patents

眼科用医薬組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、眼圧降下のための点
眼用組成物、さらに詳しくは、効果が向上し副作用が低
下した上記組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この発明で成分(イ)として用いる化合物
である、13,14−ジヒドロ−15−ケト−プロスタ
グランジンF類は、合成によって得られるプロスタグラ
ンジン類似体である。プロスタグランジン類(以後プロ
スタグランジンはPGとして示す)はひとおよび他の哺
乳類の組織または器官に含有され、広範囲の生理学的活
性を示す有機カルボン酸の1群である。天然に存在する
PG類は一般的な構造特性として、プロスタン酸骨格を
有する。
【化1】 一方幾つかの合成類似体は修飾された骨格を持ってい
る。天然PG類は5員環の構造特性によって、PGA
類、PGB類、PGC類、PGD類、PGE類、PGF
類、PGG類、PGH類、PGI類およびPGJ類に分
類され、さらに鎖部分が、不飽和および酸化の存在およ
び不存在によっても 下付1...13,14−不飽和−15−OH 下付2...5,6−および13,14−ジ不飽和−15
−OH 下付3...5,6−、13,14−および17,18−
トリ不飽和−15−OH として、分類される。
【0003】さらに、PGF類は9位の水酸基の配置に
よってα(水酸基がアルファー配置である)およびβ(水
酸基がベータ配置である)に分類される。上記成分(イ)
の化合物が眼圧降下作用を有することは、特開平2−1
08号、特開平2−96528号公報等により公知であ
る。特開昭63−313728号公報はPG類とアドレ
ナリン遮断薬との併用を記載しているが、アドレナリン
遮断薬は交感神経作動薬(アドレナリン作動薬)がアドレ
ナリン受容体に結合して作用を現わすのを阻害する薬物
である。それ故、この記載は、交感神経作動薬とこの発
明の成分(イ)との併用を示すものではなく、ましてやそ
の併用により効果の向上または副作用の低下がもたらさ
れることを教えるものでもない。
【0004】
【発明の構成】この発明者らは、この発明の成分(イ)と
種々の物質との併用によって効果が改善される可能性に
ついて検討した結果、驚くべきことに、エピネフリンの
ような交感神経作動薬によって、成分(イ)の効果が向上
し副作用が低下することを見出し、この発明を完成した
のである。すなわち、この発明は、 (イ)13,14−ジヒドロ−15−ケト−PGF類、ま
たはそれらの塩類、またはそれらのエステル、および (ロ)エピネフリンまたは生体内でエピネフリンを生成す
るそのプロドラッグを含有してなる、眼科用医薬組成物
を提供するものである。この発明の成分(イ)において、
13,14−ジヒドロ−15−ケト−PGF類(以下、こ
の発明の成分(イ)の酸と略記)は、天然のPGF類にお
いて、13−14位の2重結合の代りに単結合を有し、
15位のヒドロキシ基の変わりにケト基を有した化合物
およびその誘導体である。この発明の成分(イ)の酸の命
名に際しては式(A)に示したプロスタン酸の番号を用い
る。
【0005】前記式(A)はC−20の基本骨格のもので
ある。この発明の成分(イ)の酸では炭素数がこれよりも
増加しているが、番号は同様につける。即ち、基本骨格
を構成する炭素の番号はカルボン酸を1とし5員環に向
って順に2〜7までをα鎖上の炭素に、8〜12までを
5員環の炭素に、13〜20までをω鎖上に付している
が、炭素数がα鎖上で減少する場合、2位から順次番号
を抹消し、α鎖上で増加する場合2位にカルボキシル基
(1位)に代わる置換基がついたものとして命名する。同
様に、炭素数がω鎖上で減少する場合、20位から炭素
の番号を順次減じ、ω鎖上で増加する場合、21番目以
後の炭素原子は置換基として命名する。また、立体配置
に関しては、特にことわりのないかぎり、上記基本骨格
の有する立体配置に従うものとする。従って、ω鎖に1
0個の炭素原子を有する15−ケト−PG化合物を15
−ケト−20−エチル−PG類と命名する。
【0006】上記式は最も典型的な配位である特定配置
を示すが、この明細書において、特にことわらない限り
化合物は 上記の配置を有するものとする。PGD類、
PGE類またはPGF類とは、一般にプロスタン酸の9
位および/または11位に水酸基を持つ化合物を指す
が、この発明の15−ケト−プロスタグランジン化合物
は9位および/または11位に他の基を有する化合物類
まで拡張して包含する。上記化合物類は9−デヒドロキ
シ−9−置換あるいは11−デヒドロキシ−11−置換
化合物類と称する。前述のように、この明細書では、こ
の発明の成分(イ)の酸の命名はプロスタン酸骨格に基づ
いて行う。これをIUPACに基づいて命名すると、例
えば13,14−ジヒドロ−15−ケト−20−エチル
PGE2は(Z)−7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキ
シ−2−(3−オキソ−1−デシル)−5−オキソ−シク
ロペンチル]−ヘプタ−5−エン酸である。13,14−
ジヒドロ−15−ケト−20−エチル−PGF2αイソ
プロピルエステルは(Z)−7−[(1R,2R,3R,5S)
−3,5−ジヒドロキシ−2−(3−オキソ−1−デシ
ル)シクロペンチル]−ヘプタ−5−エン酸であり、1
3,14−ジヒドロ−15−ケト−20−メチル−PG
2αメチルエステルは(Z)−7−[(1R,2R,3R,5
S)−3,5−ジヒドロキシ−2−(3−オキソ−1−ノ
ニル)−シクロペンチル]−ヘプタ−5−エン酸である。
この発明の成分(イ)の酸は、13−14位が飽和し、1
5位に水酸基の代わりにオキソ基を有する限り、あらゆ
るPGF類の誘導体であり得、これらは2重結合(PG
タイプ1化合物類)をもたないか、5位と6位の間に1
つの2重結合(PGタイプ2化合物)、または5位と6位
および17位と18位の間に2つの2重結合(PGタイ
プ3化合物)を有し得る。また、13−14位は、飽和
または不飽和のものを包含するが、飽和のものが好まし
い。
【0007】この発明に用い得る代表的な化合物の例
は、13,14−ジヒドロ−15−ケト−PGF1、1
3,14−ジヒドロ−15−ケト−PGF2、13,14
−ジヒドロ−15−ケト−PGF3等およびそれらの置
換体または誘導体である。
【0008】置換体または誘導体の例は、上記化合物に
おいて、2−3位の炭素結合として2重結合または5−
6位の炭素結合として3重結合を有する化合物、3位、
5位、6位、16位、17位、19位および/または2
0位の炭素に置換基を有する化合物、9位および/また
は11位のヒドロキシ基の代りに低級アルキル基または
ヒドロキシ(低級)アルキル基を有する化合物等である。
この発明において3位、17位および/または19位の
炭素原子に結合し得る置換基としては、例えば炭素数1
〜4のアルキル基があげられ、特にメチル基、エチル基
があげられる。16位の炭素原子に結合し得る置換基と
しては、例えばメチル基、エチル基などの低級アルキル
基、ヒドロキシ基、塩素、ふっ素などのハロゲン原子、
トリフルオロメチルフェノキシ等のアリールオキシ基が
あげられる。17位の炭素原子の置換基としては、塩
素、ふっ素等のハロゲンが挙げられる。20位の炭素原
子に結合し得る置換基としては、C1-6の低級アルキル
基、C1-4アルコキシのような低級アルコキシ基、C1-4
アルコキシ−C1-4アルキルのような低級アルコキシア
ルキルを含む。5位の炭素原子の置換基としては、塩
素、ふっ素などのハロゲンを含む。6位の炭素原子の置
換基としては、カルボニル基を形成するオキソ基を含
む。9位および/または11位の炭素原子にヒドロキシ
基、低級アルキルまたは低級(ヒドロキシ)アルキル置換
基を有する場合のこれらの基の立体配置はα,βまたは
それらの混合物であってもかまわない。特に好ましい化
合物は、20位の炭素に低級アルキル基を有する化合物
であり、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピ
ル、ブチル、ヘキシル等を含むが、炭素数2−4のもの
が好ましく、エチルが最も好ましい。
【0009】好ましいこの発明の成分(イ)は式(I)
【化2】 [式中、AはCOOH、その塩類またはエステル、R1
非置換またはハロ、オキソまたはアリールで置換され
た、二価の飽和または不飽和、低〜中級脂肪族炭化水素
残基、R2は非置換またはオキソ、ヒドロキシ、ハロ、
低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低
級)アルキル、アリールまたはアリールオキシで置換さ
れた、飽和または不飽和で直鎖部分の炭素原子数が5以
上の中級脂肪族炭化水素残基]を有する。上式中、R1
よびR2における「不飽和]の語は、主鎖または側鎖の炭
素原子間の結合として、少なくとも1つまたはそれ以上
の2重結合および/または3重結合を孤立、分離または
連続して含むことを意味する。通常の命名法に従って、
連続する2つの位置間の不飽和は若い方の位置番号を表
示することにより示し、連続しない2つの位置間の不飽
和は両方の位置番号を表示して示す。好ましい不飽和
は、2位の2重結合および5位の2重結合または3重結
合である。
【0010】「低〜中級脂肪族炭化水素」または「中級脂
肪族炭化水素」の語は、炭素数1〜14または5〜14
の直鎖または分枝鎖[ただし、側鎖は炭素数1〜3のも
のが好ましい]を有する炭化水素を意味し、好ましくは
1の場合炭素数2〜8の炭化水素であり、R2の場合炭
素数6〜9の炭化水素である。「ハロゲン」の語は、ふっ
素、塩素、臭素およびよう素を包含する。「低級」の語
は、特にことわりのない限り炭素原子数1〜6を有する
基を包含するものである。「低級アルキル」の語は、炭素
原子数1〜6の直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素基を包
含し、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピ
ル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチルおよび
ヘキシルを含む。「低級アルコキシ」の語は、低級アルキ
ルが上述と同意義である低級アルキル−O−フェニルを
意味する。「ヒドロキシ(低級)アルキル」の語は、少なく
とも1つのヒドロキシ基で置換された上記のようなアル
キルを意味し、例えばヒドロキシメチル、1−ヒドロキ
シエチル、2−ヒドロキシエチルおよび1−メチル−1
−ヒドロキシエチルである。「低級アルカノイルオキシ」
の語は、式RCO−O−(ここで、RCO−は上記のよ
うな低級アルキルが酸化されて生じるアシル、例えばア
セチル)で示される基を意味する。「シクロ低級アルキ
ル」の語は、上記のような低級アルキル基が閉環して生
ずる基を意味する。
【0011】「アリール」の語は、置換されていてもよい
芳香性炭素環または複素環基(好ましくは単環性の基)を
包含し、例えばフェニル、トリル、キシリルおよびチエ
ニルを含む。置換基としては、ハロゲン、ハロゲン置換
低級アルキル基(ここで、ハロゲン原子および低級アル
キル基は前記の意味)が含まれる。「アリールオキシ」の
語は、式ArO−(ここで、Arは上記のようなアリール
基)で示される基を意味する。Aで示されるカルボキシ
ル基の塩類としては、医薬上許容される塩が適当であ
る。適当な「医薬上許容される塩」としては、慣用される
非毒性塩を含み、無機塩基との塩、例えばアルカリ金属
塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩
(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩、
有機塩基との塩、例えばアミン塩(例えばメチルアミ
ン、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベン
ジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エ
タノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノ
ールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン
塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、リジン塩、
プロカイン塩、カフェイン塩等)、塩基性アミノ酸塩(例
えばアルギニン塩、リジン塩等)テトラアルキルアンモ
ニウム塩等があげられる。これらの塩類は、例えば対応
する酸および塩基から常套の中和反応によってまたは塩
交換によって製造し得る。
【0012】エステルとしては、メチルエステル、エチ
ルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステ
ル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチル
エステル、ペンチルエステル、1−シクロプロピルエチ
ルエステル等の低級アルキルエステル、ビニルエステ
ル、アリルエステル等の低級アルケニルエステル、エチ
ニルエステル、プロピニルエステル等の低級アルキニル
エステル、ヒドロキシエチルエステルのようなヒドロキ
シ(低級)アルキルエステル、メトキシメチルエステル、
1−メトキシエチルエステル等の低級アルコキシ(低級)
アルキルエステルのような脂肪族エステルおよび例えば
フェニルエステル、トリルエステル、t−ブチルフェニ
ルエステル、サリチルエステル、3,4−ジメトキシフ
ェニルエステル、ベンズアミドフェニルエステル等の所
望により置換されたアリールエステル、ベンジルエステ
ル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル等のア
リール(低級)アルキルエステルがあげられる。これらの
エステルは、例えば対応する酸およびアルコールから常
套のエステル化反応によってまたはエステル交換によっ
て製造し得る。好ましいA基の例は、−COOH、−C
OOCH3、−COOCH2CH3、−COOCH(CH3)
である。上記式(I)中、環、αおよび/またはω鎖の配
置は、天然のプロスタグランジン類の配置と同様かまた
は異なっていてもよい。しかしながら、この発明は、天
然の配置を有する化合物および非天然の配置を有する化
合物の混合物も包含する。
【0013】この発明の典型的な化合物類の例は、1
3,14−ジヒドロ−15−ケト−20−低級アルキル
PGF類および△2−誘導体、3R,S−メチル誘導体、
6−ケト誘導体、5R,S−フルオロ誘導体、5,5−ジ
フルオロ誘導体、16R,S−メチル誘導体、16,16
−ジメチル誘導体、16R,S−フルオロ誘導体、16,
16−ジフルオロ誘導体、17S−メチル誘導体、17
R,S−フルオロ誘導体、17,17−ジフルオロ誘導
体、および19−メチル誘導体である。この発明の成分
(イ)の13,14−ジヒドロ−15−ケト−PGF類に
おいて、11位のヒドロキシと15位のケト間のヘミア
セタール形成により、ケト−ヘミアセタール平衡を生ず
る場合がある。このような互変異性体が存在する場合、
両異性体の存在比率は他の部分の構造または置換基の種
類により変動し、場合によっては一方の異性体が圧倒的
に存在することもあるが、この発明においてはこれら両
者を含むものとし、このような異性体の存在の有無にか
かわりなくケト型の構造式または命名法によって化合物
を表わすことがあるが、これは便宜上のものであってヘ
ミアセタール型の化合物を排除しようとするものではな
い。この発明においては、個々の互変異性体、その混合
物または光学異性体、その混合物、ラセミ体、その他の
立体異性体等の異性体も、同じ目的に使用することが可
能である。この発明の成分(イ)のあるものは、特開平2
−108号に記載の方法によって製造し得る。また一般
に、これらの化合物は、上記と同様の方法または環部分
に関する既知合成法を加味した方法によって製造し得
る。
【0014】13,14−ジヒドロ−15−ケト体の製
造法としては、市販の(−)コーリーラクトンを出発原料
とし、これをコリンズ酸化してアルデヒドを得、これに
ジメチル(2−オキソアルキル)ホスホネートアニオンを
反応させて、α,β−不飽和ケトンを得、これを還元し
てケトンを得、該ケトンのカルボニル基をジオールと反
応させてケタールとして保護し、次いで脱 p−フェニル
ベンゾイル化によってアルコールを得、この新たに生じ
た水酸基をジヒドロピランで保護し、テトラヒドロピラ
ニルエーテルとする。これによって、ω鎖が13,14
−ジヒドロ−15−ケトアルキル基であるPG類の前駆
体を得る。上記テトラピラニルエーテルを原料として
【化3】 である6−ケト−PG1類はテトラヒドロピラニルエー
テルをジイソブチルアルミニウムヒドリドなどを用いて
還元しラクトールを得、これに(4−カルボキシブチル)
トリフェニルホスホニウムブロミドから得たイリドを反
応させ、次いでエステル化した後、5−6位の二重結合
と9位の水酸基とをNBSまたはヨウ素を用いて環化し
て、ハロゲン化物を得、これをDBU等を用いて脱ハロ
ゲン化して、6−ケト体を得、ジョーンズ酸化後、保護
基を外すことによって得ることができる。
【0015】さらに、
【化4】 であるPG2類は、上記テトラヒドロピラニルエーテル
を還元してラクトールを得、これに(4−カルボキシブ
チル)トリフェニルホスホニウムブロミドから得たイリ
ドを反応させてカルボン酸を得、次いでエステル化した
後、ジョーンズ酸化し、次いで保護基を外すことにより
得ることができる。上記テトラヒドロピラニルエーテル
を原料として、
【化5】 であるPG1類を得るには、
【化6】 であるPG2類と同様にし、得られた化合物の5−6位
の二重結合を接触還元し、次いで、保護基を外すことに
より得ることができる。5、6および7位の炭化水素鎖
【化7】 である5,6−デヒドロ−PG2類の合成は、下に示すよ
うなモノアルキル銅錯体あるいはジアルキル銅錯体
【化8】 を4R−t−ブチルジメチルシリルオキシ−2−シクロ
ペンテン−1−オンに1,4−付加して生じる銅エノレ
ートを6−カルボアルコキシ−1−ヨード−2−ヘキシ
ンあるいはこれの誘導体で捕捉することにより合成し得
る。
【0016】11位の水酸基の代りにメチル基を有する
PG類の製造法としては、11−トシレート体の9位の
水酸基をジョーンズ酸化して得られるPGAタイプ化合
物に、ジメチル銅錯体を作用させることにより、11−
デヒドロキシ−11−メチル−PGEタイプが得られ
る。あるいはp−フェニルベンゾイル基を脱離後に得ら
れるアルコールをトシレートとし、これをDBU処理し
て得られる不飽和ラクトンをラクトールとし、ウイティ
ヒ反応を用いてα−鎖を導入後、得られるアルコール
(9位)を酸化してPGAタイプとし、これへジメチル
銅錯体を作用させることにより11−デヒドロキシ−1
1−メチル−PGEタイプが得られる。これを例えば水
素化ホウ素ナトリウムで還元することにより11−デヒ
ドロキシ−11−メチル−PGFタイプが合成しうる。
11位の水酸基の代わりにヒドロキシメチル基を有する
PG類は、上記で得られたPGAタイプに対してベンゾ
フェノンを増感剤として用い、メタノールを光付加する
ことにより11−デヒドロキシ−11−ヒドロキシメチ
ル−PGEタイプが合成できる。これを例えば水素化ホ
ウ素ナトリウムで還元することにより11−デヒドロキ
シ−11−ヒドロキシメチル−PGFタイプを合成しう
る。16−フルオロ−PG類は、α,β−不飽和ケトン
を得る際にジメチル(3−フルオロ−2−オキソアルキ
ル)ホスホネートアニオンを用いればよく、19−メチ
ル−PG類はジメチル(6−メチル−2−オキソアルキ
ル)ホスホネートアニオンを用いればよい。本発明にお
いて合成法は、これに限定されるものではなく、保護方
法、酸化還元法等は適宜適当な手段を採用すればよい。
【0017】この発明で成分(ロ)として用いるエピネフ
リンは、従来から緑内障治療薬として使用されているも
のであり、アドレナリン受容体を刺激する薬剤である交
感神経作動薬としても知られているカテコールアミンの
1種である。成分(ロ)としてはさらに、生体内でエピネ
フリンを生成するエピネフリンのプロドラッグも好まし
い。プロドラッグとしては、ジピバリルエステルのよう
な生体内で容易に脱離し得る活性アシル基をもったエピ
ネフリンのエステル体であるジピバレフリンが挙げられ
る。この発明の成分(イ)は、眼圧低下作用を有し、天然
形のPG類が示す一過性の眼圧上昇作用を示さないの
で、この発明の組成物は、眼圧の低下が望まれる種々の
疾患および症状、例えば緑内障、高眼圧症およびその他
の眼圧上昇による疾患の処置に使用される。ここにいう
処置には、疾患の予防、治療、症状の軽減、悪化防止、
悪化の緩和等のあらゆる管理を含む。また、この発明の
組成物は、成分(ロ)を含むことにより相乗作用が現わ
れ、成分(イ)の目的とする効果が向上し、したがって用
量を減少させることができ、または副作用が低下すると
いう利点を有する。この発明における成分(イ)と(ロ)の
配合割合は、特に限定されないが、通常1:0.5〜1:
200の範囲内にあり、1:1〜1:100が好ましく、
1:2〜1:50が特に好ましい。この発明の組成物中の
成分(イ)の配合量は、患者の状態、病気の重さ、治療目
的、医師の判断および組成物の投与総量により異なる
が、通常0.005〜2重量%の範囲内にあり、0.01
〜1重量%が好ましい。この発明の組成物中の成分(ロ)
の配合量は、例えば成分(イ)の濃度により異なるが、通
常0.005〜20重量%の範囲内にあり、0.01〜1
0重量%が好ましい。
【0018】この発明の組成物は、成分(イ)および(ロ)
以外に、点眼剤に慣用される種々の成分、例えば担体お
よび補助剤を含むことができる。この発明の組成物は、
溶液、乳液または懸濁液のような液体、またはゲル、眼
軟膏のような半固体の形をとることができる。水性の溶
液剤、懸濁剤用希釈剤としては蒸留水、生理食塩水が含
まれる。非水性の溶液剤、懸濁剤用希釈剤としては、植
物油、流動パラフィン、鉱物油、プロピレングリコー
ル、p−オクチルドデカノール等がある。また涙液と等
張にすることを目的として塩化ナトリウム、ほう酸、ク
エン酸ナトリウム等の等張化剤、pHを例えば5.0〜
8.0程度に一定に保持することを目的としてほう酸緩
衝液、りん酸緩衝液等の緩衝剤を加えることができる。
さらに、亜硫酸ナトリウム、プロピレングリコール等の
安定剤、エデト酸ナトリウム等のキレート剤、グリセリ
ン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポ
リマー等の増粘剤、メチルパラベン、プロピルパラベン
等の防腐剤を含んでいてもよい。これらは例えば細菌保
留フィルターを通す濾過、加熱滅菌等によって無菌化さ
れる。眼軟膏は、ワセリン、ゼレン50、プラスチベー
ス、マクロゴール等を基剤とし、親水性を高めることを
目的として界面活性剤を加えることができる。また、カ
ルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カルボ
キシビニルポリマーなどのゼリー剤等を含んでいてもよ
い。さらに、この発明の組成物は、細菌感染の防止また
は治療のために、クロラムフェニコール、ペニシリン等
の抗生物質を含むことができる。
【0019】この発明はまた、処置すべき対象にこの発
明の組成物の眼圧低下有効量を投与することからなる、
高眼圧・緑内障処置法を可能にするものである。以下、
製造例および試験例により、この発明の構成と効果を具
体的に説明する。
【0020】製造例 13,14−ジヒドロ−15−ケト−20−エチル−P
GA2イソプロピルエステル、13,14−ジヒドロ−1
5−ケト−20−エチル−PGE2イソプロピルエステ
ルおよび13,14−ジヒドロ−15−ケト−20−エ
チル−PGF2αイソプロピルエステルの合成(合成チャ
ートI参照): (1) 1S−2−オキサ−3−オキソ−6R−(3−オ
キソ−1−トランス−デセニル)−7R−(4−フェニル
ベンゾイルオキシ)−シス−ビシクロ[3.3.0]オク
タン(3)の合成:市販の(−)−コーリーラクトン(1)(7
g)をジクロルメタン中コリンズ酸化し、アルデヒド
(2)を得た。これをジメチル(2−オキソノニル)ホスホ
ネート(4.97g)アニオンと反応させ、1S−2−オ
キサ−3−オキソ−6R−(3,3−エチレンジオキシ−
1−トランス−デセニル)−7R−(4−フェニルベンゾ
イルオキシ)−シス−ビシクロ[3.3.0]オクタン(3)
を得た。 (2) 1S−2−オキサ−3−オキソ−6R−(3−オ
キソデシル)−7R−(4−フェニルベンゾイルオキシ)
−シス−ビシクロ[3.3.0]オクタン(4)の合成: 不飽和ケトン(3)(7.80g)を酢酸エチル(170m
l)中、5%Pd/炭素および水素を用いて還元した。常
法処理により得られた生成物(4)を次の反応に用いた。
【0021】(3) 1S−2−オキサ−3−オキソ−6
R−(3,3−エチレンジオキシ−デシル)−7R−(4−
フェニルベンゾイルオキシ)−シス−ビシクロ[3.3.
0]オクタン(5)の合成:飽和ケトン(4)を乾燥ベンゼン
(150ml)中、エチレングリコールおよびp−トルエ
ンスルホン酸(触媒量)を用いてケタール(5)とした。 (4) 1S−2−オキサ−3−オキソ−6R−(3,3−
エチレンジオキシ−デシル)−7R−ヒドロキシ−シス
−ビシクロ[3.3.0]オクタン(6)の合成:ケタール
(5)を無水メタノール(150ml)に溶解し、炭酸カリ
ウム(2.73g)を加え、室温で終夜撹拌した。酢酸を
加え中和した後、減圧濃縮した。得られた粗生成物を酢
酸エチルで抽出し、希重曹水、食塩水で洗浄後、乾燥し
た。常法処理により得られた粗生成物をクロマトグラフ
ィーし、アルコール(6)を得た。収量: 3.31g。 (5) ラクトール(7)の合成:アルコール(6)(0.80
g)を−78℃で乾燥トルエン(8ml)中、DIBAL
−Hで還元し、ラクトール(7)を得た。(6) 13,1
4−ジヒドロ−15,15−エチレンジオキシ−20−
エチル−PGF2α(8)の合成:(4−カルボキシブチル)
トリフェニルホスホニウムブロミド(3.65g)から
調整したイリドにラクトール(7)のDMSO溶液を加
え、終夜撹拌し、カルボン酸(8)を得た。 (7) 13,14−ジヒドロ−15,15−エチレンジオ
キシ−20−エチル−PGF2αイソプロピルエステル
(9)の合成:カルボン酸(8)をアセトニトリル中、DB
Uおよびヨウ化イソプロピルを用いて、13,14−ジ
ヒドロ−15,15−エチレンジオキシ−20−エチル
−PGF2αイソプロピルエステル(9)を得た。収量:
0.71g。
【0022】(8) 13,14−ジヒドロ−15−ケト
−20−エチル−PGF2αイソプロピルエステル(1
0)の合成:13,14−ジヒドロ−15,15−エチレン
ジオキシ−20−エチル−PGF2αイソプロピルエス
テル(9)(0.71g)を酢酸/THF/水(3/1/1)
に40℃に3時間保った。減圧濃縮して得られた粗生成
物をクロマトグラフィーし、13,14−ジヒドロ−1
5−ケト−20−エチル−PGF2αイソプロピルエス
テル(10)を得た。収量: 0.554g。 (9) 13,14−ジヒドロ−15−ケト−20−エチ
ル−PGA2イソプロピルエステル(12)の合成:13,
14−ジヒドロ−15−ケト−20−エチル−PGF2
αイソプロピルエステル(10)(0.125g)および塩
化p−トルエンスルホニル(0.112g)のピリジン溶液
(5ml)を0℃に2日間保った。常法処理によりトシレ
ート(11)を得た。トシレート(11)をアセトン(8m
l)中、−25℃でジョーンズ酸化した。常法処理後に
得られた粗生成物をクロマトグラフィーし、13,14
−ジヒドロ−15−ケト−20−エチル−PGA2 イソ
プロピルエステル(2)を得た。収量:0.060g。 (10) 13,14−ジヒドロ−15,15−エチレンジオ
キシ−20−エチル−11−t−ブチルジメチルシロキ
シ−PGF2αイソプロピルエステル(13)の合成:1
3,14−ジヒドロ−15,15−エチレンジオキシ−2
0−エチル−PGF2αイソプロピルエステル(9)(3.
051g)をN,N−ジメチルホルムアミド(25ml)に
溶解し、塩化t−ブチルジメチルシリル(1.088g)、
イミダゾール(0.49g)を加え、室温で終夜撹拌し
た。反応液を減圧濃縮し、得られた粗生成物をクロマト
グラフィーし、13,14−ジヒドロ−15,15−エチ
レンジオキシ−20−エチル−11−t−ブチルジメチ
ルシロキシ−PGF2αイソプロピルエステル(13)を
得た。収量: 2.641g。
【0023】(11) 13,14−ジヒドロ−15,15−
エチレンジオキシ−20−エチル−11−t−ブチルジ
メチルシロキシ−PGE2 イソプロピルエステル(14)
の合成:13,14−ジヒドロ−15,15−エチレンジ
オキシ−20−エチル−11−t−ブチルジメチルシロ
キシ−PGF2α イソプロピルエステル(13)(0.17
1g)を常法に従い、塩化メチレン中、室温でコリンズ
酸化(20当量)した。50分後、反応液に硫酸水素ナ
トリウム(1.15g)を加え濾過した。濾液を濃縮し、
得られた粗生成物をクロマトグラフィー(ヘキサン/酢
酸エチル10:1)した。13,14−ジヒドロ−15,1
5−エチレンジオキシ−20−エチル−11−t−ブチ
ルジメチルシロキシ−PGE2 イソプロピルエステル
(14)が得られた。収量: 0.153g(89%)。 (12) 13,14−ジヒドロ−15−ケト−20−エチ
ル−PGE2 イソプロピルエステル(15)の合成:13,
14−ジヒドロ−15,15−エチレンジオキシ−20
−エチル−11−t−ブチルジメチルシロキシ−PGE
2 イソプロピルエステル(14)(0.089g)をアセト
ニトリルに溶解し、0℃でフッ化水素酸の46%水溶液
(1ml)を加え、室温で40分撹拌した。反応液を常法
に従い処理して、得られた粗生成物をクロマトグラフィ
ーし、13,14−ジヒドロ−15−ケト−20−エチ
ル−PGE2 イソプロピルエステルを得た。収量: 0.
063g(97%)。1HNMR: δ0.86(3H,t,J=
5Hz)、2.20(6H,d,J=6.5Hz)、1.05〜2.
96(29H,m)、4.01(1H,m)、4.95(1H,hept,
J=6.5Hz)、5.34(2H,m)。Mass(EI): m/z
422(M+)、404(M+−H2O)、345(M+−H2
−i−C37O)。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【0024】試験例1 日本白色種雄性うさぎ(体重2.5−3.5kg、1群
6匹)を固定し、0.4%塩酸オキシブプロカインで点
眼麻酔した。うさぎを固定してから0.5−1時間後の
眼圧を0時間の値とし、下記の処方例を各々50μl点
眼して経時的に眼圧を測定した。なお、眼圧測定には、
空圧圧平電子眼圧計(アルコン社製)を用いた。各処方例
における5時間後の眼圧下降値(平均)を以下に示す。
【0025】 処方例1 エピネフリン 0.1g 滅菌精製水 適量 全量を100mlとする。 処方例2 (Z)−7−[(1R,2R,3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−2−{3−オキソデ シル}シクロペンチル]−ヘプタ−5−エン酸イソプロピル(13,14−ジヒドロ −15−ケト−20−エチルPGF2αイソプロピルエステル、以下化合物Aと 略記) 0.01g 滅菌精製水 適量 全量を100mlとする。 処方例3 エピネフリン 0.1g 化合物A 0.01g 滅菌精製水 適量 全量を100mlとする。
【0026】 上記の結果から、この発明の成分(イ)と(ロ)の併用に
より相乗作用が得られることがわかった。

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (イ)13,14−ジヒドロ−15−ケト
    −プロスタグランジンF類、またはそれらの塩類、また
    はそれらのエステル、および (ロ)エピネフリンまたは生体内でエピネフリンを生成す
    るそのプロドラッグを含有してなる、眼科用医薬組成
    物。
  2. 【請求項2】 成分(イ)が、13,14−ジヒドロ−1
    5−ケト−20−低級アルキルプロスタグランジンF
    類、またはそれらの塩類、またはそれらのエステルであ
    る、請求項1記載の組成物。
  3. 【請求項3】 成分(イ)が、13,14−ジヒドロ−1
    5−ケト−20−エチルプロスタグランジンF類、また
    はそれらの塩類、またはそれらのエステルである、請求
    項1記載の組成物。
  4. 【請求項4】 成分(イ)が、13,14−ジヒドロ−1
    5−ケト−20−低級アルキルプロスタグランジンF2
    α類、またはその塩類、またはその低級アルキルエステ
    ルである、請求項1記載の組成物。
  5. 【請求項5】 成分(イ)が、13,14−ジヒドロ−1
    5−ケト−20−エチルプロスタグランジンF2α類、
    またはその塩類、またはその低級アルキルエステルであ
    る、請求項1記載の組成物。
  6. 【請求項6】 成分(ロ)が、エピネフリンまたはジピバ
    レフリンである、請求項1記載の組成物。
  7. 【請求項7】 成分(ロ)が、エピネフリンである、請求
    項1記載の組成物。
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