JP2510398Y2 - ラビリンスシ―ル装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は、蒸気タービンやコンプレッサなどの高圧回
転機械において、回転軸に沿って位置している高圧室と
低圧室との間を、回転軸とケーシングとを非接触としな
がらシールするためのラビリンスシール装置に関する。

従来の技術 第４図は、例えば蒸気タービンに設けられた従来のラ
ビリンスシール装置を示したものである。

この図で１は蒸気タービンの回転軸であり、２はその
ケーシングである。そして、回転軸１を取り囲んだシー
ルリング３がケーシング２に取付けられており、シール
リング３の内周面に回転軸１に向けてシールフィン４が
形成されている。なお、シールリング３を挟んで回転軸
１の右側が高圧室Ａ、左側が低圧室Ｂとなっている。

このような従来のラビリンスシール装置では、回転軸
１とシールフィン４とのクリアランスを可能な限り小さ
くすることによって、シール性能を向上させて、高圧室
Ａから低圧室Ｂへ流体が直接流出するのを防止してい
る。

考案が解決しようとする課題 ところで、上記のような従来のラビリンスシール装置
には、蒸気タービンの運転時に回転軸１が半径方向に振
動するため、ケーシング２に固定されたシールリング３
のシールフィン４が、回転軸１に接触して磨耗し、回転
軸１とシールリング３との半径方向隙間が大きくなり、
シール性能を低下させるという問題があった。

シールフィン４が回転軸１に接触しないようにすれ
ば、シールフィン４の磨耗が防止できるが、そのために
はシールフィン４と回転軸１との隙間を、回転軸１の振
動の振れ幅より大きくしなければならず、これではシー
ル部から流出する高圧流体の漏洩量が増すこととなり、
高いシール性能を発揮できなくなるという問題を生じる
ものであった。

この漏洩量を抑えるためには、シールフィン４の枚数
を多くすることが有効ではあるが、そうすると、シール
部の軸方向の長さが長くなってしまうという問題につな
がるものであった。

本考案は、これらの問題を解決することを目的として
なされたものである。

課題を解決するための手段 この考案は、回転軸に沿った高圧室と低圧室との間
を、この回転軸を取り囲むように設けられた複数のフィ
ンを有するシールリングによってシールするラビリンス
シール装置において、シールリングを保持するケーシン
グにシールリングの外周に沿って相対向するように設け
た複数の電磁石と、シールリングに回転軸へ向けて相対
向するように設けられ、シールリングと回転軸との半径
方向隙間を計測するための複数の変位計と、この変位計
からの信号によって電磁石へ流す電流を制御してシール
リングと回転軸との半径方向隙間を所定量に保持させる
ようにする制御装置とから成るものである。

作用 上記の手段によれば、変位計で計測された相対向する
シールリングと回転軸との半径方向の隙間の量に応じ
て、半径方向の隙間を等しくするように電磁石を駆動し
てシールリングを吸引させるので、回転軸の挙動に対し
てシールリングを同心状態に保持させることができる。

実施例 以下本考案に係るラビリンスシール装置の一実施例
を、第１図ないし第３図を参照して詳細に説明する。

第１図は、本考案に係るラビリンスシール装置の一実
施例の部分的な断面図であり、第２図は第１図の軸方向
に沿う断面図である。

これらの図において、回転軸１、ケーシング２、シー
ルリング３、シールフィン４、高圧室Ａ、低圧室Ｂは第
４図と同様なので同一符号を付して示してあり、その部
分の説明は省略する。

ケーシング２には回転軸１を囲むように周状に溝11が
形成されていて、その中に円周方向に沿って、複数の電
磁石12が相対向するように配置され、スペーサ13を介し
てケーシング２に取付けられている。14は電磁石12のコ
イルである。そしてシールリング３が電磁石12と回転軸
１との間に位置するように、ケーシング２に設けたバネ
15で、軸方向の低圧室Ｂ側に押し付けるようにして取付
けられている。

16はシールリング３に回転軸１の表面へ向けて取付け
られた変位計であり、円周方向に沿って、相対向するよ
うに複数個が配置されている。この変位計16は、シール
リング３と回転軸１との半径方向の隙間を計測し、その
結果を電磁石12のコイル14に流す電流に変えて、半径方
向の隙間を制御するためのものである。

この半径方向の隙間の制御は、次のような考えのもと
でおこなわれている。

すなわち、シールリング３に作用する力は、シールリ
ング３の内周および外周に作用する流体圧力の差による
力と、シールリング３の自重および電磁石12による吸引
力とで決まる。ここで、電磁石12による吸引力はコイル
14を流れる電流の二乗に比例し、回転軸１とシールリン
グ３との半径方向の隙間の二乗に反比例する。そのため
シールリング３は、これらの力の釣り合う隙間で保持さ
れることになる。

そこで次に、シールリング３と回転軸１との半径方向
の隙間を制御するための制御装置の一例について、第３
図に示した制御装置の系統図を参照して説明する。な
お、第３図において第１図、第２図と同一部分には同一
符号を付してある。

さて、相対向するように配置された変位計16からの信
号は、増幅器21によって増幅した後信号処理器22に導か
れ、ここで相対向する部分の変位値の差を求め、更にこ
れらの信号と各変位計16に対応する電磁石12の基準位置
を示す基準信号発生器23からの信号とを、それぞれの信
号処理器24に導いて、補正量を決定する。

従って、信号処理器24からは変位を補正するのに必要
な電磁石12のコイル14に流すべき電流値に関する信号
が、増幅器25に与えられ、その信号に応じた電流が増幅
器25を介して電磁石12のコイル14に供給される。

回転軸１の挙動は、シールリング３に取付けた変位計
16で計測されるが、例えば、第３図の左側の変位計16で
計測したシールリング３と回転軸１との半径方向の隙間
が、右側の変位計16で計測したものよりも狭かったとす
れば、左側の電磁石12のコイル14に強い電流を流して、
シールリング３を電磁石12側へ吸い寄せて回転軸１から
引き離すようにし、一方、右側の電磁石12のコイル14に
流す電流は弱くして、シールリング３を電磁石12側へ吸
い寄せる力を弱めて回転軸１に近づくようにする。

このようにして、シールリング３と回転軸１との半径
方向の隙間を均一にさせる。なお、回路要素の図示は省
略したが、第３図の上下方向についても同様であり、両
方向の電磁石12のコイル14に流すべき電流値を制御する
ことによって、シールリング３に作用する力を釣り合わ
せて、回転軸１とシールリング３とを同心状態に保持す
ることができる。

考案の効果 以上詳述したように本考案によれば、回転軸とシール
リングのシールフィンとの接触を防止するとともに、回
転軸とシールリングとの隙間を小さくすることができる
ので、高圧室から低圧室への流体の漏洩量を低減して回
転機の効率を向上させることができる。また、回転軸と
シールリングのシールフィンとの隙間を小さくできるの
で、従来より少ない枚数のシールフィンで同程度の漏洩
量とすることができ、この場合には、シールリングの軸
方向の長さを短縮することが可能である等実用上の効果
の大きなラビリンスシール装置が提供できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係るラビリンスシール装置の一実施例
の部分的な断面図、第２図は第１図の軸方向に沿う断面
図、第３図は本考案のラビリンスシール装置に使用され
る制御装置の一例を示した系統図、第４図は従来のラビ
リンスシール装置を示した断面図である。 １……回転軸、２……ケーシング、３……シールリン
グ、４……シールフィン、12……電磁石、14……コイ
ル、16……変位計、21,25……増幅器、22,24……信号処
理器、23……基準信号発生器。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】回転軸に沿った高圧室と低圧室との間を、
   この回転軸を取り囲むように設けられた複数のフィンを
   有するシールリングによってシールするラビリンスシー
   ル装置において、前記シールリングを保持するケーシン
   グに前記シールリングの外周に沿って相対向するように
   設けた複数の電磁石と、前記シールリングに前記回転軸
   へ向けて相対向するように設けられ、前記シールリング
   と前記回転軸との半径方向隙間を計測するための複数の
   変位計と、この変位計からの信号によって前記電磁石へ
   流す電流を制御して前記シールリングと前記回転軸との
   半径方向隙間を所定量に保持させるようにする制御装置
   とから成るラビリンスシール装置。