JP2510181B2 - ウイルス感染の予防および治療用組成物 - Google Patents

ウイルス感染の予防および治療用組成物

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Description

【発明の詳細な説明】 発明の背量 本発明は、ウイルス、特に、レトロウイルスに感染し
ている動物、あるいは、ウイルス感染の危険性のある動
物の治療に関するものである。さらに詳しくは、本発明
は、哺乳類の細胞内にウイルス感染に対する耐性状態を
誘導すること、および、レトロウイルスに感染した人間
を治療することに関するものである。
特に、本発明は、免疫不全に至るレトロウイルス感
染、さらに詳しくは、後天性免疫不全症候群(AIDS)の
原因と考えられている感染症の治療に関するものであ
る。
AIDSは伝播性細胞性免疫欠損症であつて、日和見感染
並びに悪性であることを特徴とし、とりわけ、ニユーモ
システイス・カルニ(Pneumocystis carnii)性肺炎や
カポジ肉腫のようなまれな疾患に罹病する他の原因が認
められない患者におけるそれらの発現を特徴としている
(1〜3)。AIDSは、OKT4+Tリンパ球サブセツトの欠
損によると思われる深在性リンパ球減少症、全身性皮膚
アネルギー、並びにマイトジエン、抗原、および同種免
疫細胞に対する増殖性応答の顕著な減少として現われる
(4)。体液性免疫は比較的影響を受けないので、AIDS
患者におけるB−リンパ腫の高い発現率に起因すると考
えることができる異常に亢進されたB−細胞の増殖性応
答を原因とすることの証明が多数ある(5,6)。完全に
進行した症候群に加えて、関連疾患、即ち全身性慢性リ
ンパ腺症を特徴とするAIDS−関連コンプレツクス(AR
C)の流行がみられる。この症候群は疫学的性質および
免疫異常の多くを共有しており、AIDSの臨床上の所見よ
りも先に現われることが多い。
最近得られた事実は、リンパ細胞栄養性レトロウイル
スがAIDSおよびAIDS近縁コンプレツクスの主な病因物質
であることを示唆していた。リンパ腺症関連ウイルス
(LAV)は、最初、リンパ腺症とAIDSにかかつている患
者、並びにAIDS患者とその無症状性の子孫であつて、い
ずれもB型血友病である患者から単離された(7−
9)。ヒトT−リンパ細胞栄養性ウイルスタイプIII(H
TLV−III)と命名されている同様のウイルスも、AIDSお
よびARC患者の多数の血液試料中から、それを許容性の
T細胞系統H9と一緒に同時培養することにより単離され
た(10,11)。LAV、HTLV−III、並びに最近AIDS患者か
ら単離された近縁のレトロウイルス(12.13)は、幾つ
かの重要な特徴において共通している。インビボおよび
インビトロにおいて、ウイルスの複製はOKT4+T−リン
パ球集団中で行われ、それには損傷を受けた細胞の増殖
を伴ない、細胞変性作用の様相を呈す(8,10,14)。こ
のウイルスはMg2+依存性逆転酵素を含有しており、D型
レトロウイルスと同様の密度の高い円筒状の中心核形態
を示し(8,13,15)、事実上、全てのAIDS患者およびARC
患者の血清中に見い出される抗体により認識される(8,
13,16−21)。今日では、HTLV−IIIとLAVは同一ウイル
スの株であると考えられており、ヒト免疫不全症ウイル
ス(human immunodeficiency virus、HIV)と命名され
ている。
AIDSまたはARCに罹患した患者の免疫機能は著しく損
傷を受けている。しかしながら、HIVによつて誘発され
る異常の正確な性質についての研究は持続的に行われて
いる。特に興味深いのは、HIV感染が、その様な患者の
免疫細胞によるリンホカインの生産に及ぼす影響、並び
に、外部から投与されたリンホカインに対するその応答
性である。
Tリンパ球のガンマ(γ)インターフエロン(IFN)
を含むマクロフアージ活性化産物分泌能力を試験された
16名のAIDS患者の内、14名は活性なリンホカインを生成
することができず、13〜14名はγインターフエロンを全
く分泌し得なかつた。さらに、AIDS患者から得たマクロ
フアージをインビトロでγインターフエロンと一緒にイ
ンキユベートすると抗微生物活性が高められることは、
インビボにおいて、外部から投与されたγインターフエ
ロンに対して、その様な細胞が応答している可能性が高
いことを示している(22,24)。
また、AIDS患者のリンパ球は、Tリンパ球の増殖と分
化に関与しておりγインターフエロンの生産を刺激する
リンホカインであるインターロイキン−2の生産能力も
損なわれていることが報告された(23)。
最後に、γインターフエロンは、水泡性口内炎ウイル
ス(VSV)感染細胞に対して直接的な抗ウイルス作用を
示すと共に、VSV感染細胞に対するサイトキン(cytokin
e)の作用を強化することが分つていた(25)。このサ
イトキンは、この報告の著者らにより、本明細書中で腫
瘍壊死因子−αと称しているポリペプチドであると暫定
的に同定された。エイフエルら(Eifel)の「セル・イ
ムン(Cell.Immun.)」47:197〜203(1979)をも参照さ
れたい。従つて、AIDS患者に対する免疫補強療法(immu
nosupplementation therapy)は有望な機会を与えるよ
うであり、患者に対する臨床研究が開始されている。
AIDS患者に対するインビボでのリンホカイン治療は、
その期待にも拘らず、失望させるものであつた。インビ
トロ実験で得られた結果と対照的に、組換えγインター
フエロンの長期的な静脈内治療は、単球の呼吸性バース
ト機能をむしろ阻害するようであり、また、AIDS患者に
インターロイキン−2またはγインターフエロンを種々
の用量で静脈内投与することにより、インビボにおける
リンホカイン療法はAIDS患者の治療に有意な価値を有す
るものでないという結論が得られた(27)。実際、本発
明がなされた時までは、AIDS治療における免疫刺激また
は免疫再構築の試みは、リンホカインによる細胞の賦活
化がウイルスを拡散させ、T4細胞を消耗させることによ
り、疾病の進行を早めると考えられることから、事実
上、「危険」であるという学説が普及していた(28)。
1986年6月に、ヤマモトら(Yamamoto)(29)は、ヒト
αおよびβ(γでなく)インターフエロンがインビトロ
においてHIV株の複製を抑制するが、これらのインター
フエロンに対する暴露を止めると、感染細胞におけるウ
イルス生産が促進されていることが開示された。この中
では、AIDSに対する免疫治療が生産対抗性であることが
示唆されている。
最後に、T細胞の内生リンフオトキシン遺伝子のウイ
ルス誘発生トランス活性化(transactivation)によつ
てHIV感染T細胞がリンフオトキシンを産生し、これに
より自己毒性量のリンフオトキシンの分泌につながるこ
とが示唆されていた(35)。
インターフエロンは、ワクシニアウイルス、風疹ウイ
ルス、単純疱疹ウイルス、水痘−帯状疱疹ウイルス、ニ
ワトリ天然痘ウイルス、サイトメガロウイルス、アデノ
ウイルス、エボラウイルス、狂犬病ウイルスおよびB型
肝炎ウイルス等のウイルスによる慢性、急性感染症およ
び/または実験的な感染症の予防および治療に用いら
れ、様々な効果が得られている。サイトメガロウイルス
による慢性感染症に対するインターフエロン治療は、CM
V感染の防止に対して必要である量よりもはるかに多量
を用いても困難であることが分つており、これらの投与
量は好中球減少症や体重増加の抑制等の望ましくない副
作用をもたらすこともある。従つて、がんこな、あるい
は慢性のウイルス感染症の患者には、副作用がなく、よ
り有効なインターフエロン製剤を投与することが望まし
いといえる。
また、インターフエロンは、かぜ(一次的なライノウ
イルス感染症)の予防または治療能力についても広範囲
に試験されている。大多数の研究において、1日当り、
用量0.8×106〜42.8×106単位の経鼻投与が採用されて
いる〔フインターら(Finter)、1985、「インターフエ
ロン」Vol.4、pp.186〜187〕。しかしながら、初期の研
究者によつて報告された特異活性と今日用いられている
国際標準との関係は不明瞭であることを理解しておくべ
きであり、用いられた投与量は、国際単位で表わすと、
それより多かつたり、少なかつたりするかもしれない。
経鼻投与においては一般にエアーゾルが用いられるが、
浸漬した外科用綿散糸を用いて与えるとより有効である
と報告されている。一般に、一日の用量を分割し、1日
当り1〜3回投与される。組換えインターフエロンを用
いて、約1×106単位/用量(0.1ml/鼻腔)投与すると
予防し得るが、この用量の1/10または1/100では、効果
が認められないことが経験的に示されている(フインタ
ーら、前掲、p.188)。しかしながら、投与量約1×106
単位では、インターフエロン投与に煩わしい軽度の鼻腔
刺激を伴ない、さらに多くの用量では、著しい刺激があ
つた〔フインターら、同上)。
インターフエロンはまた、単純疱疹ウイルス性結膜炎
の治療に点眼薬の形で投与された、種々のウイルス感染
の治療のために、注射剤または注入剤として、静脈内ま
たは腹腔内投与される。通常、点眼剤はインターフエロ
ンを1×106単位/ml以上含有する〔含有量60,000単位/m
lの製剤ではなんら臨床上の利益が得られなかつたとの
報告がある:サンドマツシヤーら(Sandmacher)、1976
「ジエイ・インフエクト・デイス(J.Infect.Dis.)」1
33:A160〜A164〕。静注投与量も一般に患者当り1×106
単位以上であるが、初期の研究者達は当時入手可能であ
つたインターフエロン粗製剤を用いざるを得なかつたの
で、必然的に低投与量であつた。これらの研究の成果か
ら、インターフエロンは、それらがウイルス感染症の予
防における程、確立されたウイルス感染症の治療に有効
ではないと、一般的に考えられている。インターフエロ
ンを低用量で用いることができる様、能動的な感染に対
する活性が増強されていることが示されていると共に、
高い予防効果を示すインターフエロン製剤が必要とされ
ている。
腫瘍壊死因子〔ペニカら(Pennica)、20/27 Dec.198
4、「ネイチヤー(Nature)」312:724〕およびリンホト
キシン〔グレイら(Gray)、20/27 Dec.1984「ネイチヤ
ー」312:721〕は、活性化されたマクロフアージおよび
リンパ細胞によつて産生されるタンパク質であり、本明
細書に於いては、それぞれ「TNF」または「TNF−α」)
および「LT」(または「TNF−β」)と呼ぶ。これらは
いずれもインビトロおよびインビボにおいて腫瘍細胞に
対して直接的に細胞毒性があり、また、この点に関して
インターフエロンと相乗作用を示す〔リーら(Lee)198
4「ジエイ・イムン(J.Immun.)」133:1083〕。しかし
ながら、TNFおよびLTは、いずれも、そのままでは直接
的な抗ウイルス性防御活性を持つていないことがわかつ
ている。TNF−αは重篤な感染症のがん患者における瘠
痩および悪液質に関与していることが示唆され(34)、
TNF−αに対する受動免疫はエンドトキシンの致死的な
影響からマウスを保護することが報告されている(3
0)。TNF−αの抗腫瘍作用はインターフエロン類によつ
て相乗的に増強され、TNF−βの抗腫瘍作用は、インタ
ーフエロンガンマによつて同様に増強されることが知ら
れている。しかしながら、TNF−αとTNF−βの混合物の
抗腫瘍作用は、インターフエロンアルフアとインターフ
エロンベーターの抗ウイルス作用と同様に、相加的なも
のであるにすぎない。
本発明は、インターフエロンの副作用を増強させるこ
となく、インターフエロンの抗ウイルス作用を増強する
ことを目的とするものである。
また、本発明は、インターフエロンの抗ウイルス特異
性を高めることを目的とするものである。
また、本発明は、DNAウイルスによる感染をも含め
て、個人のウイルス感染の予防にインターフエロンを用
いることを目的とするものである。
本発明は、レトロウイルス、とりわけ、HIVの如きリ
ンパ細胞栄養性ウイルスに感染した人々を首尾良く治療
するために免疫療法を採用することを目的とするもので
ある。
さらにまた本発明は、活性なレトロウイルス感染の危
険にさらされている人々、例えば、潜伏期のレトロウイ
ルスを保有している人々を治療することを目的とするも
のである。
また、本発明は、レトロウイルス感染に対する免疫治
療的予防法を提供することを目的とするものである。
これらの、またはその他の本発明の目的は、明細書全
体を考察することにより明らかとなるであろう。
要約 本発明の目的は、既にウイルスに感染している。ある
いは感染のおそれのある哺乳類に、抗ウイルス有効量の
TNFまたはLT、あるいは(a)インターフエロンおよび
(b)TNFまたはLTを投与することにより達成された。T
NFまたはLT単独投与による抗ウイルス性保護活性が知ら
れていないにもかかわらず、TNFまたはLTは、インター
フエロンの抗ウイルス活性を相乗的に増大させる。一般
に、そして予想外にも、インターフエロン組成物中にTN
FまたはLTを含ませることにより、インターフエロンの
活性が約2〜100倍以上にも増大する。最も大きい効果
は、γインターフエロンの場合に認められる。
本発明は、抗ウイルスまたは抗腫瘍のいずれの用途に
おいても治療上の使用には不十分であると考えられてい
た量のインターフエロンを含有する、インターフエロン
組成物を提供するものである。これらのインターフエロ
ンの用量は約500,000国際単位以下、一般に25,000単位
以下である。このインターフエロンの投与量はLTまたは
TNFを、それらがLTまたはTNF毒性を表わすには不十分で
あるが、インターフエロンの抗ウイルス活性を増強する
には十分な量、組成物中に含有させることにより有効な
ものとなる。
意外なことに、本発明者は、腫瘍壊死因子のみ、ある
いは、好ましくは、インターフエロンと一緒に、その治
療有効量を投与すると、レトロウイルス感染のおそれの
ある患者を保護し、レトロウイルスに感染した細胞を死
滅させることを見出した。γ−インターフエロン単独で
はレトロウイルス感染に対する防御作用を殆んど、また
は全く示さず、また、γ−インターフエロンはレトロウ
イルス感染細胞に対する著しい細胞毒ではなく、また、
TNF単独では、高濃度においてわずかに活性であるにす
ぎないが、これらの2種類の物質を組み合わせると劇的
に強力となる。この現象は、レトロウイルス感染患者の
免疫系は異常をきたしているにもかかわらず、インビボ
において認められる。この成果は、その様な患者におけ
るTNF欠損は知られていなかつたことから、特に驚異的
な事柄であつた。
図面の簡単な記述 第1図および第2図は、インターフエロン−γをLTま
たはTNFと併用した場合にインターフエロン−γの抗ウ
イルス活性が劇的に増加することを示している。
第3図は、種々の濃度のTNFおよびインターフエロン
−γによる細胞培養のウイルス感染からの保護を示して
いる。
第4a図および第4b図はTNFまたはLTによるインターフ
エロン−α、βまたはγの抗ウイルス活性の増強状態を
示している。
第5a図〜5d図は、インターフエロン−γのウイルス複
製阻害がTNFまたはLTによつて増強されることを示して
いる。
第6図は、TNF−αおよびIFN−γにより前処理された
HIV−感染HuT28細胞におけるHIV mRNAが、前処理されて
いない対照細胞でのHIV mRNAと比較して、劇的に減少し
ていることを示すノーザン・ゲルを示すものである。
第7図はTNF−αおよび/またはIFN−γと併用した場
合のカタラーゼの抗ウイルス性防御作用を示している。
詳しい記述 本発明の方法および組成物は、アデノウイルス、疱疹
ウイルス、パポーバウイルス(シミアンウイルス40、乳
頭腫ウイルスおよびポリオーマウイルスを含む)、小ポ
ツクスウイルスやワクシニアウイルス等のポツクスウイ
ルス、アルボウイルス、アレノウイルス、コロナウイル
ス、ミクソウイルス(ニユー・キヤツスル病ウイルス、
おたふくかぜウイルス、はしかウイルス、呼吸性シンク
テイアル(synctial)ウイルス)、ライノウイルス、パ
ラミクソウイルス(例えばインフルエンザウイルスA、
BまたはC)、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ト
ガウイルス(togavirus)、レトロウイルス(HTLV−
I、IIおよびIIIを含む)、レオウイルスおよびロータ
ウイルス等を含む全ゆるDNAウイルス、一本鎖RNAウイル
スまたは二本鎖RNAウイルスによる活動性感染あるいは
潜伏感染の予防または治療に有用である。その他の具体
的なウイルスには、ルベラウイルス、単純疱疹ウイル
ス、水痘−帯状疱疹ウイルス、ニワトリのポツクスウイ
ルス、サイトメガロウイルス、エボラウイルス、狂犬病
ウイルスおよびB型肝炎ウイルス等が挙げられる。
レトロウイルスは一本鎖または二本鎖RNAを含有する
ウイルスと定義されている。これらのウイルスは、許容
宿主の細胞代謝を利用して複製し、このウイルスのRNA
遺伝物質を逆転写する。その様にして生産された大量の
DNAはHIVタンパク質やRNAに翻訳され、子孫ビリオンが
形成される。その様なウイルスには例えば「スロー(遅
発性)」または遅延型ウイルスと呼称されるウイルスや
HTLV−IやHTLV−II等のT−細胞白血症ウイルスが含ま
れるが、最も好ましい例は、AIDSに関連したHIV株(以
前はHTLV−IIIとして知られていた)である。
インターフエロンはよく知られている。それらは、天
然ではβインターフエロンおよびγインターフエロン、
並びに約20の様々なインターフエロン−αサブタイプか
らなる。本発明の目的と最も関連性の深いそれらの性質
は、それらがインビトロおよびインビボで、細胞をウイ
ルス感染から保護し得るという点である。本発明の方法
また組成物に用いられるインターフエロンは、一般に、
インターフエロン−α、βまたはγであり、その内、イ
ンターフエロン−γが好ましい。組換え細胞培養により
生産されたインターフエロン、天然から単離されたイン
ターフエロン、あるいは、安定な非形質転換セルライン
により生産されたインターフエロンは、インターフエロ
ンのアミノ酸配列変異体またはグリコシル化変異体(非
グリコシル化形のものを含む)と同様、それらが抗ウイ
ルス活性を示す限り、本発明に用いる上で満足すべきも
のである。インターフエロン−γは種特異的であること
が分つているので、インターフエロン−γは治療を意図
している動物と同じ動物種のものである必要がある。好
ましいインターフエロンはヒトのインターフエロン−γ
である。インターフエロンは実質上均質であり、約1×
106国際単位/ml以上の比活性を有していることが望まし
いであろう。
TNFおよびLTには、組換え細胞培養または非形質転換
細胞培養の生産物が包含され、それらには、アミノ酸配
列変異体や(LTの場合)グリコシル化変異体(非グリコ
シル化変異体LTを含む)も含まれる。TNFまたはLTのい
ずれかのみ、またはそれらの混合物も適する。TNFおよ
びLTは、そのインターフエロンとの相剰能力においては
種特異的でないので、ある1つの種由来のTNFまたはLT
は、他の種の治療に有用である。本発明では、ヒトの成
熟TNFまたはヒトの非グリコシル化成熟LTを用いるのが
好ましい。
TNF−αまたはTNF−βは、単独でまたは最も効果的な
臨床上の応答が表われることが経験上決定された相互の
割合の混合物として用いられる。TNFは種特異的でない
ので、本発明においては、ブタまたはウシ等の他の動物
種に由来するTNFも用い得る。好ましいTNFは組換え微生
物細胞培養から得られた成熟ヒトTNF−αである。通
常、TNFは、感受性L−929ネズミ細胞に対して約1×10
6単位/mg以上で細胞溶解作用を示す(ここに、1単位と
は、前記の特許出願に記載の如く定義されているもので
ある。この様な記載は本明細書の一部を構成する)。
本明細書中に示す組成物は、従来からインターフエロ
ン、TNFまたはLTの治療用の投与に用いられていた薬学
上許容し得るビヒクル(担体)類、例えば生理食塩水ま
たは5%デキストロースを、通常の安定剤および/また
はヒト血清アルブミンまたはマンニトール等の賦形剤と
一緒に含有している。これら組成物は、凍結乾燥され
て、あるいは、滅菌水溶液として提供される。
通常の技術者ならば、治療用組成物中のインターフエ
ロンα、βまたはγとTNF−αまたはTNF−βの割合、イ
ンターフエロンとTNFとの正味の割合、およびインター
フエロンとTNFの濃度、並びにKg当りの投与量を決定す
るにあたり、各種の変動因子を考慮するであろう。治療
上の変動因子には、処置すべき動物種、投与経路、およ
び患者の臨床状態(治療開始時期に於けるレトロウイル
ス感染の段階および程度および/または付随的な微生物
感染の状態および程度を含む)などが含まれる。インタ
ーフエロンの初期用量レベルとしては、約1〜50μg/m2
が適当である。耐薬量は約25μg/m2を越えることはない
であろう。
ウイルス感染に対する抵抗性を与え、ウイルス感染細
胞を殺すのに有用な、TNFまたはLTと併用して投与され
るインターフエロンの用量は、これまで最小有効量と考
えられてきた量の約50%〜0.1%の範囲が適当である。
これらの用量は約500,000国際単位/70Kg(患者の体重)
にまで増加することができるが、通常、約100,000単位/
70Kgよりは少ない。インターフエロンとTNFまたはLTと
の相対的な重量比は、通常、約1000:1〜1:1であり、約1
00:1であることが好ましい。治療用組成物は一般に、イ
ンターフエロン約1×103〜1×105 IU/mlとTNFまたはL
T1ng〜5μg/mlとを含有する水溶液である。これらを、
制御または治療すべきウイルス感染に応じて、経鼻的、
腹腔内、または静脈内投与する。経鼻投与量は一般に約
25,000国際単位(容量0.1ml中)以下であり、静脈内投
与量は約500,000単位以下、通常、100,000単位以下であ
る。
インターフエロンを、TNFまたはLTと併用した場合の
相剰的な抗ウイルス防御作用はあらゆる哺乳類に広範囲
に適用できる。以下の表1に示したセルラインを24ウエ
ル組織培養プレートに蒔き、TNFまたはLTとインターフ
エロンとを加えてプレインキユベートした。全てのセル
ラインが、EMC、VSVおよびHSV−2に対する感染(多重
感染度はそれぞれ、1、1および100)から、少なくと
もある程度保護された(細胞変性効果により決定)。
従つて、本発明の方法は、人間、牛、豚、鳥類および
馬を含む哺乳類をウイルス感染から保護するのに有用で
ある。患者は腫瘍または悪性物を有していることがわか
つているものであつてもよく、そうでなくてもよい。
本発明方法は、動物密度の高い農業用動物の間で起こ
り得る伝染力の高いウイルス感染、主として、鶏におけ
るニユーキヤツスル病や牛におけるシツピング熱を予防
する上で、特に有用である。ワクチンとは異なり、本発
明の組成物は、ワクチンを無効ならしめるような、ウイ
ルス集団中に起こり得る突然変異に拘らず、あらゆるウ
イルスに対して有効であり、流行の開始の最初の微候の
時点で投与して迅速な防御効果を得、そのことにより動
物の全集団にワクチン接種する必要がなくなる。
本発明方法はまた、気道感染の予防にも有用である。
例えば、家族の一員がかぜを引いている様な、危険にさ
らされている人々を感染から保護するために、インター
フエロンと、TNFまたはLTが投与されるであろう。動物
または人間におけるウイルス感染に対して最や好都合な
投与経路は、鼻腔内に噴霧または外科用綿撒糸(ガー
ゼ)で投与する経気道投与である。この治療には、従来
用いられていたインターフエロンの一部のみを用いるこ
とと、治療用処方中にTNFまたはLTを含有せしめること
を除き、既知の組成物と既知の方法が用いられる。所望
により経鼻製剤には胆汁酸塩または非イオン性のポリオ
キシエチレン・エーテル類等の透過促進剤を加える。こ
の様な製剤は、指示量のインターフエロン、およびTNF
またはLT、マンニトール等の安定化剤、あるいは賦形
剤、並びにpH7.4のりん酸バツフアー中1重量%の促進
剤を含有することになるであろう。その他の鼻腔内投与
に基づく適当な製剤は、米国特許4,476,116、欧州特許1
27,535A、欧州特許122,036A、欧州特許111,841Aおよび
欧州特許128,831Aに記載されている。
所定量のTNFおよびインターフエロンは、それらを一
緒に、あるいは別々に投与する。後者の場合、まずイン
ターフエロンを投与し、24時間以内にTNFを投与する必
要がある。患者の臨床応答に応じてTNFとインターフエ
ロンとを複数サイクルで投与することも本発明の範囲に
含まれる。この治療の方法は、T細胞の活性化を導く外
来感染または外部から投与されたT細胞マイトジエンの
いずれかにより、潜伏感染細胞が感染の活動期に移るの
を、攻撃する上で有用といえる。
TNFとインターフエロンとによる治療は、ウイルス感
染細胞を溶解し、結果的に感染性のウイルスを放出させ
るかもしれないので、治療期間中、以後のウイルス感染
性を中和し得る物質を投与することが好都合である。こ
のことは幾通りかの方法で行うことができる。治療期間
中、好ましくはTNFの投与と同時に、モノクローナルま
たはポリクローナル抗レトロウイルス抗体の如き抗体を
投与すると良い。別法として、免疫能力のある患者にレ
トロウイルスのワクチン接種を行い、中和抗体を能動的
に導くこともできる。この目的に用いられる適当なワク
チンには、HIV gp120エンベロープポリペプチドが含ま
れる。このワクチンがHIV中和抗体を誘導し、次いで、
この中和抗体を上記の受動免疫法に用い得ることが開示
されている。放出されたウイルスの潜在的な感染力を抑
制する他の物質、例えば、通常、問題のレトロウイルス
によつて認識される細胞表面レセプター(HIVの場合、
ヘルパーT細胞上に存在しているOKT4 +細胞表面マーカ
ー)と結合し、標的細胞表面へのウイルスの付着を競合
的に阻害するgp120envあるいはそのフラグメントをTNF
と一緒に投与してもよい。
TNFおよび/またはインターフエロンの相剰的な抗ウ
イルスおよび抗腫瘍活性は、治療処法および/または組
成物中に、治療有効量の酸素の遊離ラジカル捕捉剤(酸
素保護酵素やペルオキシダーゼ様活性物質(peroxidati
vely active substance)を含む)を含有させることに
よりさらに強化される。その様な物質にはカタラーゼ、
超酸化物デムターゼ、ペルオキシダーゼ、またはクロル
ペルオキシダーゼが含まれるが、それらはTNFおよびイ
ンターフエロンの活性を著しく高める。現在、その様な
酵素類がどの様な機構で本発明のTNFおよびインターフ
エロンを増強するのかは不明であるが、これらはそれぞ
れ、H2O2を水と酸素に分触する反応、即ち式: H2O2+HO−R−OH→2H2O+O=R=O で示される反応を触媒することが分つている。カタラー
ゼは市販品から広範囲に入手可能であり、赤血球細胞の
如きヒトの組織から得られる。ペルオキシダーゼは通
常、西洋ワサビから得られる。ペルオキシダーゼ様活性
物質のTNFおよびインターフエロンに対する割合は約100
0:1:0.1〜100:50:25とすることができるが、用量および
割合は、当業者既知の種々の変動要因の内、患者の臨床
所見および投与経路に応じて調節する必要がある。
TNFおよびインターフエロンは静脈内、鼻腔内、筋肉
内投与等の、同一の投与経路で、あるいは別々の投与経
路で投与することができる。いずれか一方の、または両
方の成分を、欧州特許第17,2007A号に記載の如きポリラ
クチドまたはポリヒドロキシブチレート植え込み剤、あ
るいはリポソーム等を用いた持続的放出組成物を介して
投与するか、連続注入法で投与することもできる。今日
では、TNFとインターフエロンとを、上記の用量で静脈
内注入することが好ましい。
大量投与を行つた場合の併用治療に基づく副作用を回
避するために、TNFおよびインターフエロンを、これま
で養子免疫療法と称されていた体外治療法に用いてもよ
い。これらの治療法では、患者の末梢血液中の単核細胞
またはリンパ細胞を、体外血漿搬出法サイクル中で血液
から分離し、インターロイキン−2またはインターフエ
ロンで処理した後、患者の体内に再注入する。この方法
によれば、悪性物に対する患者の免疫応答は極めて刺激
される。レトロウイルス感染の治療のためには、末梢性
単核および/またはリンパ細胞をTNFまたはTNFとインタ
ーフエロンの存在下でインキユベートする外は同じ一般
手法を用いる。TNFまたはこの混合治療剤を用いてウイ
ルス感染細胞を殺す。体外細胞は、リンパ細胞マイトジ
エン(例えばフイトヘマグルチニン)および/またはイ
ンターロイキン−2の如きキラー細胞活性化剤と一緒に
インキユベートしてもよい。次いで、細胞を洗浄し、最
初に細胞が得られた患者に再注入するために注入溶媒に
再懸濁する。再注入の後、既に記述した如く、TNFおよ
びインターフエロンを投与することができる。TNFまた
はTNFとインターフエロンの至適用量、および患者のリ
ンパ細胞の体外治療において好適な条件は、常法により
患者のウイルス力価を測定すること、並びに患者の臨床
所見の改善度を評価することによつて定められる。
本発明の治療に適した人々は、レトロウイルス感染に
さらされるおそれのある人、または、その様な感染に事
実上さらされたことを示す徴候を有する人である。危険
性を有する人々には、同性愛者、静注薬物の使用者、お
よびHIV抗体に関するスクリーニングをなされていない
血液を用いた輸血、あるいは該血液から調製された他の
生産物を投与された人々等の危険性の高い人々も含まれ
る。レトロウイルスにさらされたことの徴候には、血清
の抗HIV抗体への変換、HIVに関する血清アツセイの陽性
反応、AIDS関連コンプレツクス(ARC)または明らかなA
IDS症状等が含まれる。AIDS患者はカポジ肉腫等の悪性
腫瘍、ニユーモシステイス・カルニ(Pneumocystis car
inii)感染や口腔カンジダ症の如き外来性微生物感染、
神経損傷、あるいは悪液質(瘠痩)に基づいて診断され
ることもあり、されないこともある。
本発明は、以下の実施例を参照することにより一層完
璧に理解されるであろう。インターフエロンは組換え細
菌細胞培養の生産物であつて、比活性約108単位/mgまで
精製されたものであつた。TNFとLTもまた組換え物であ
つて、その比活性は約5×107単位/mgであつた。
実施例1 LTまたはTNFによるヒトインターフエロン−
γの抗ウイルス活性の増強 連続2倍希釈試料と共にインキユベートする4時間前
に、A549細胞を96ウエルの底の平らなトレイ〔フアルコ
ン・プラスチツクス(Falcon Plastics)〕に2×104/
ウエルとなるように蒔いた。第1図に示した濃度のイン
ターフエロン希釈物を試料とした。その他の点では、こ
の試料中には、熱で不活化した牛胎児血清(FCS)を5
%補充したダルベツコ(Dulbecco)の改良イーグル(Ea
gle)培地(DME)中に入れた0.1μg/mlのTNFまたはLT、
グルタミン(2mM)、ペニシリン(100U/ml)およびスト
レプトマイシン(100μg/ml)を含有させた。対照試料
は、a)インターフエロン、TNFまたはLTを含まない、
b)TNFのみを含む、あるいはc)LTのみを含むもので
ある。37℃で18時間インキユベートした後、感染の多重
度(multiplicity of infection「MOI」、感染ウイルス
/細胞比)1として、培養上清を、2%牛胎児血清(イ
ンターフエロン、TNFまたはLT不含)およびEMCウイルス
を含む新鮮なDME培地で置き換えた。生存細胞をクリス
タル・バイオレツトで染色し、マイクロエリザ・オート
リーダー〔MR580、ダイナテク(Dynatech)〕を用いて
力価を定量すると共に肉眼で確認することにより細胞毒
性作用(CPE)を求めた。CPE抗ウイルス力価は細胞毒性
の50%阻害を認めた希釈率の逆数で表わし、ヒトインタ
ーフエロン−γの国際基準試料(No.Gg23−901−530)
に対して標定したものである。
第1図から明らかな如く、これらのインターフエロン
−γ濃度におけるインターフエロン−γの抗ウイルス活
性はLTおよびTNFの存在によつて相剰的に高められてい
る。インターフエロン−γの抗ウイルス力価は、濃度1n
g/ml以上において大きく増加した(データーは示さ
ず)。しかしながら、LTまたはTNFは、インターフエロ
ン−γが低濃度であり、殆んど効果のない濃度で存在し
ている場合に標的細胞を保護する上で非常に有用であつ
た。
実施例2 ヒトLTまたはTNFによるウシインターフエロ
ン−γの抗ウイルス活性の増強作用 TNFおよびLTの濃度が0.1μg/mlでなく1μg/mlであ
り、インターフエロンがウシ由来であり、標的細胞がウ
シMDBKであつて、ウイルスがVSVであることを除いて実
施例1の方法を繰り返して行つた。CPEアツセイの結果
を第2図に示す。この場合にも、TNFまたはLTの存在に
より保護が激増された。このデーターはまた、保護作用
において、TNFまたはLTの供給源の種は重要でなく、そ
れらは、ヒト以外の他の哺乳類にも適用し得ることをも
示している。
実施例3 A549細胞のVSV感染からの保護 被検ウイルスがVSVであり、ヒト組換えインターフエ
ロン−γとTNFとをそれぞれ連続10倍希釈および2倍希
釈すること、並びにTNF1μg/mlおよびインターフエロン
−γ10μg/mlから出発することを除き、実施例1の方法
を繰り返して行つた。結果を、クリスタル・バイオレツ
トで染色した細胞培養平板で示す(第3図)。インター
フエロン−γは濃度域0.0001〜10μgにおいて細胞保護
作用効果を示さず、これはTNF濃度が1μg/mlから1ng/m
lに減少する場合も同様であつた。ウイルス感染および
ウイルス非感染対照は図示した如く、予想通りの結果を
与えた。しかしながら、TNFとインターフエロン−とを
組合わせると、各々約1μg/ml〜1ng/mlおよび10μg/ml
〜0.1ng/ml濃度範囲においても細胞はVSV感染から保護
された。
実施例4 TNFまたはLTのインターフエロン−αおよび
βの保護作用増強効果 VSV/A549と同様、EMC/A549を用いて実施例1の方法を
行つた。インターフエロンの濃度は、インターフエロン
−αに関して10ng/ml、インターフエロン−βに関して1
0ng/mlであつた。第4a図に示す如く、インターフエロン
−α、および程度は低いがインターフエロン−βは、ヒ
トTNFまたはLTと相剰的な抗ウイルス作用を示した。同
様の結果が、MD BK/VSVおよびウシインターフエロン−
αおよびγを用いて得られた(第4b図)。
実施例5 ウイルス複製の相剰的阻害作用 A549細胞を24ウエルの組織培養プレート〔コスター
(Costar)〕に蒔いて24時間おいた後、種々の濃度のヒ
トLT、TNFまたはインターフエロン−γで18時間処理
し、培地を除去してから、EMC、VSV、アデノウイルス−
2(Ad−2)および単純疱疹−2(HSV−2)ウイルス
でチヤレンジした。EMC、VSV、Ad−2およびHSV−2の
感染の多重度はそれぞれ1、1、100および100であつ
た。TNF、LTおよびインターフエロン−γの濃度域は0.1
ng/ml〜10μg/mlであつた。2時間の吸着期間の後、上
清を吸引除去して未吸着ウイルスを除き、37℃の5%FC
S含有培地中で細胞をインキユベートした。24時間後、
培養物(培地と一緒になつた細胞)を2回、凍結−解凍
することにより細胞を溶解し、次いで、400xgで10分間
遠心し、ラゲル−ジスマンら(Rager−Zisman)「プロ
シーデイングス・オブ・ザ・ソサエテイ・フオー・エク
スペリメンタル・メデイソン(Proc.Soc.Exp.Med.)」1
42:1174−1179(1973)の記載したプラークアツセイに
よりウイルスの収量を求めた。リゼイトの連続希釈液
を、全面生長したA549細胞に加え、37℃で2時間インキ
ユベートした。上清を吸引して除去した後、5%FCSと
0.7%アガロースとを含んだ培地を細胞に重層した。24
〜48時間後、プラークをホルムアルデヒドで固定し、ク
リスタル・バイオレツトで染色して観察した。プラーク
形成単位/ml(PFU/ml)で表されるウイルスの収率を求
め、結果を第5a〜5d図に示した。これらの図は、抗ウイ
ルス活性の相剰的増強作用、特にインターフエロン−γ
濃度の低い場合における同作用を示すものである。
実施例6 ウイルス感染細胞の相剰的死滅作用 MOI10においてVSVを用い、インターフエロン、TNFま
たはLTと一緒にプレインキユベーシヨンすることなく実
施例1の方法を行つた。VSVを細胞と一緒に37℃で4時
間インキユベートした後、感染細胞からウイルスを流し
去つた。次いで、VSVに感染した、あるいは感染してい
ない細胞を、0.1μg/mlのインターフエロン単独で、あ
るいは表2に示すような組み合わせによつて処理した。
37℃において12および18時間処理した後、トリパン・ブ
ルーまたはヨウ化プロピジウムで染色して細胞の生存力
を調べた。結果を下記の表2に示す。
表2から、ウイルス感染細胞は、インターフエロン−
γと、TNFまたはLTを併用すると相剰効果的に死滅する
ことが分る。前の実施例で得られた結果と考え合わせ
て、これは、TNFまたはLTと、インターフエロンとの混
合物が、非感染細胞を保護し、ウイルス感染細胞を
殺すという2つの機構によりウイルス感染に対抗する作
用を有することを示唆している。
実施例7 HIV感染の予防 OKT4 +陽性のヒトT−細胞白血病セルラインH9、HuT78
およびU937をRPMI−1640培地中に懸濁し、37℃で培養し
た。培養物を遠心して培地から細胞を分け、得られた細
胞を別のRPMI−1640中に1×106/mlの密度になるよう再
懸濁した。この再懸濁培養物に充分量のTNF−αおよび
γインターフエロンを加え、0.1μg/ml TNF−αおよび
0.1μg/ml γインターフエロンとした。TNF−αとγイ
ンターフエロンとの併用は非感染HuT78およびH9細胞に
は無毒であつた。次いで、培養物を37℃で24時間インキ
ユベートした後、HIV 1×106cpm単位/mlを加えた。この
cpm単位は逆転写酵素活性に基づいて決定された(31):
1単位が1個のビリオンの逆転写酵素活性を表わすよう
に調整された。さらに3日間、37℃でインキユベートし
た後、HIVのp24(コア)タンパク質に対するネズミのモ
ノクローナル抗体と、標識したヤギの抗−マウスイムノ
グロブリン(32)を用い、間接的な免疫螢光法によつて
ウイルス抗原に関して細胞をスクリーニングした。繰り
返して行つた実験の結果をHIVコアタンパク質を含有す
る細胞の割合(%)として、以下に示す。
これらの結果は、TNFとインターフエロンとの併用治
療が、さもなくば感染し易いT細胞をHIV感染から防御
する上で極めて有用であることを示している。
実施例8 HIV感染細胞の処理 RPMI−1640培地中、1×105/mlのH9およびRPMI−1788
リンパ芽球細胞を1μg/mlのポリブレンの存在下、HIV
1×103cpm/mlに暴露し、HIV感染細胞の割合を高めた。
これらの細胞を約30日間培養し、その間、3〜5日ごと
に培地を置換し、細胞を1週間に略1回継代培養した。
1×106/mlの細胞を含む培養物に充分量のTNF−αとγ
−インターフエロンとを実質上、同時に加え、以下の表
4に示す濃度にした。これらの濃度においては、TNF−
αとγインターフエロンの混合物が非感染のH9およびRP
MI−1788細胞に対して細胞毒性を表わすことはない。培
養物を37℃で3日間インキユベートした後、トリパン・
ブルー染色によつて生存細胞の割合(%)を測定した。
繰り返して行つた実験の結果を表4に示す(ND=測定せ
ず)。
これらの結果から、TNFとインターフエロンとの併用
が濃度依存性の相剰的なウイルス感染細胞死滅化作用を
示し、より低い程度であるがTNF−α単独でも死滅化を
示すことが分る。これと、TNFまたは混合物の非感染細
胞に対する防御作用を一緒にすれば、TNF療法または併
用療法のレトロウイルス感染症の治療における価値が示
されることになる。
実施例9 TNF療法および併用療法によるHIVの複製の減
少 実施例7に記載の如く、HuT78細胞を0.1μg/mlづつの
TNF−αおよびγインターフエロンで処理した後、HIVに
感染させた。37℃で2日間インキユベートした後、以下
の如くにしてHIV感染細胞から総RNAを抽出した。得られ
た細胞をPBSで洗浄し、0.5%NP−40とVRC(BRL)17μl
とを含んだTSMバツフアー(10mMトリスpH7.5、0.15M Na
Cl、2mM MgCl2)0.35mlに、0℃で再懸濁した。3−5
分後、溶解した細胞から核を遠心分離した。mRNAを含有
している上清を1%SDS含有TSEバツフアー(10mMトリス
pH7.5、0.15M NaCl、5mM EDTA)0.35mlに加え、フエノ
ール:クロロホルム:イソアミルアルコール(24:24:
1)0.7mlで3回抽出した。フエノールを、水と0.1%8
−OH−キノリンで平衡化した。EtOHと酢酸ナトリウムに
よつて水層からRNAを析出させた。オリゴ(dT)セルロ
ース電気泳動によりポリ(A)RNAを調製した(36)。
文献記載の方法に従い、RNA1μg/レーンを用いてノーザ
ンハイブリダイゼーシヨンを行つた(37)。結果を第6
図に示す。この図から、TNF−αで前処理することによ
り宿主細胞内でのHIV RNAの出現が抑制されるが、TNFと
インターフエロンとを一緒に用いると、出現するRNA
は、はるかに少なくなることが分る。これらの結果は、
第三図に示した感染に関するデーターと一致するもので
ある。TNFおよびインターフエロンによる処理の有無に
関係なく、アクチン(構造タンパク質)のmRNAには変化
が認められず、このことは、TNF−αおよびインターフ
エロンの作用が一般的な細胞の増殖でなく、ウイルスを
標的としていることを示すものである。
実施例10 AIDSおよびARC患者の治療方法(プロトコー
ル) HIV抗体に関して血清学的に陽性の男性であつて、そ
の血液がインビトロにおいて、証明可能なHIV力価に関
して細胞培養陽性である患者を用いた。これらの患者は
一般に、症状的にAIDSまたはARCと一致しており、HIV抗
体について血清転換を来している。
治療対象群を、以下の処置因子に基づいてさらに群分
けした。
1.同時的または連続的なTNFおよびインターフエロン治
療。
2.静脈内または筋肉内注入法。静脈内注入の場合は、一
回投与(ボーラス)あるいは連続注入法(1、2、5、
10日間)。
3.数時間にわたる投与計画であつて、TNF1μg/m2、およ
びインターフエロン1μg/m2から出発し、各試薬を、耐
薬性に応じて5、10、25、50・・・μg/m2と増加する。
4.TNFとインターフエロンの割合を1:100〜100:1とす
る。
5.治療を繰り返す周期を1〜5とし、1、2、5または
10日間の中間的な治療中止を行う。
6.インターフエロンのタイプの選択と割合を、αとβ、
1:10−10:1、βとγ、1:10−10:1、γ、αまたはβの
み、1:1:1〜10:1:1〜1:5:5の如くにする。
適当な開始計画は、ARC患者をTNF−α、γインターフ
エロンおよびαインターフエロンで併用治療することか
らなるであろう。この組合わせのものを、静脈内注入ポ
ンプであつて、TNF−αを1〜10μg/m2/24時間、γイン
ターフエロンを1−10μg/m2/24時間、そしてαインタ
ーフエロンを1−10μg/m2/24時間の投与量で与える様
調整されたポンプを用い、連続注入して投与した。患者
の耐薬量に従つて投与量を増加させてもよい。この注入
は一週間続行された。患者は、次の1週間を休み、再び
繰り返し注入を受けた。発熱、悪寒等の副作用は、通常
の方法もしくは投与量を減ずることで処置された。上記
のものと併用する抗ウイルス剤として抗HIV抗体またはg
p120envを用いる場合、これらの抗体またはenvポリペプ
チドは、この併用治療で放出されたビリオンを封鎖させ
得る様な計算量で存在させる。これは、抗体のビリオン
に対する親和性、その中和力価、並びに患者のウイルス
力価に依存するであろう。適当用量の決定は、日常の取
扱い者の技術範囲のことであろう。
治療期間中および治療終了後の患者の臨床所見および
ウイルス感染力価を監視する。治療の結果、実施例7−
9におけるインビトロ研究の結果と一致して、統計的に
有意差のある割合の患者のウイルス力価および免疫能が
改善された。
実施例11 カタラーゼによつて高められたインターフエ
ロン−γおよび/またはTNF−αの抗ウイルス活性 被検試料と一緒にインキユベートする24時間前に、96
−ウエルの底の平らなトレー(フアルコン・プラスチツ
クス)に、A549細胞を2×104・ウエルの割合で蒔い
た。被検試料は第7図に示した通りである(「CAT」は
カタラーゼを意味する)。その他の点では、この試料中
には、5%熱不活化牛胎児血清(FCS)、グルタミン(2
mM)、ペニシリン(100U/ml)、およびストレプトマイ
シン(100μg/ml)を補充したダルベツコの改良イーグ
ル(DME)培地が含まれている。37℃で18時間インキユ
ベーシヨンした後、インターフエロン、TNFおよびカタ
ラーゼを含まず、2%の牛胎児血清と感染の多重度
(「MOI」、感染性ウイルス/細胞比)1のEMCウイルス
を含んだ調製したばかりのDME培地によつて、培養上清
を置換した。生存可能な細胞をクリスタル・バイオレツ
トで染色することにより細胞毒性作用(CPE)を決定
し、マイクロエリザ・オートリーダー(MR580、ダイナ
テク)を用いて力価を定量的に監視し、さらに肉眼によ
つて確認した。CPE抗ウイルス力価は、細胞毒性を50%
阻害することが認められた希釈率の逆数で表わされ、こ
れをヒトインターフエロン−γの国際基準試料(No.Gg2
3−901−530)を用いて検定した。
第7図に示す様に、カタラーゼはインターフエロン−
γおよびTNF−αの抗−ウイルス作用を劇的かつ相剰的
に増強した。この効果はEMCウイルスに特異的なもので
はない。この効果は様々な許容細胞やウイルスにおいて
認められた。
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【図面の簡単な説明】 第1図および第2図は、インターフエロン−γの抗ウイ
ルス作用に対するLTまたはTNFの相剰作用を表わすグラ
フである。第3図は、種々の濃度のTNFおよびインター
フエロンによる細胞培養のウイルス感染からの保護作用
を示す細胞培養プレートの写真の模写図である。第4aお
よび第4b図はインターフエロン−α、βまたはγの抗ウ
イルス作用に及ぼすTNFまたはLTの増強効果を示すグラ
フである。第5a−5d図はインターフエロン−γのウイル
ス複製阻害作用に及ぼすTNFまたはLTの増強効果を示す
グラフである。第6図は、TNF−αおよびIFN−γで前処
理したHuT78細胞と対照細胞とをHIV感染させた場合の、
HuT78細胞におけるHIVmRNAの著しい減少を示すノーザン
ゲルの写真の模写図である。第7図はTNF−αおよび/
またはIFN−γとカタラーゼとを併用した場合の、抗ウ
イルス防御効果を示すグラフである。

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】抗ウイルス治療有効量である100,000国際
    単位以下のインターフェロンとLT及び/又はTNFを含有
    してなる抗ウイルス組成物。
  2. 【請求項2】エアゾールである第1項記載の組成物。
  3. 【請求項3】LTまたはTNFの量がインターフェロンの10
    重量%以下である第1項記載の組成物。
  4. 【請求項4】インターフェロンがインターフェロン−γ
    である第1項記載の組成物。
  5. 【請求項5】LT及びTNFを含んでいる第1項記載の組成
    物。
  6. 【請求項6】酸素−遊離ラジカル捕捉性物質をさらに含
    む第1項記載の組成物。
  7. 【請求項7】該捕捉性物質がペルオキシダーゼ様活性を
    有する酵素である第6項記載の組成物。
  8. 【請求項8】該酵素がヒト赤血球カタラーゼである第7
    項記載の組成物。
  9. 【請求項9】さらに(a)レトロウイルスの複製または
    (b)細胞表面受容体へのレトロウイルスの結合を阻害
    し得る物質をも含んでいる第1項記載の組成物。
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