JP2506657Y2 - ガス遮断器 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、昇圧室を備えたアーク回転形のガス遮断器
に関するものである。

［従来の技術］ アーク回転方式と自己膨張（オートエキスパンショ
ン）方式とを併用して遮断性能の向上を図ることを意図
したガス遮断器が提案されている。

第５図及び第６図は先に提案されたこの種のガス遮断
器の遮断部を示したもので、第５図は遮断状態を示し、
第６図は第５図のVIII-VIII線に沿った断面を示してい
る。

第５図において１は絶縁筒で、この絶縁筒の一端の開
口部を気密に閉じるように導電板２が取付けられてい
る。導電板２の絶縁筒内に位置する面には周方向に間隔
をあけて設けられた導電性の支持リブ３を介して環状導
体４が接続されている。環状導体４には円筒状の固定コ
ンタクト５が接続され、該固定コンタクト５の先端には
接点部5aが設けられている。固定コンタクト５を同心的
に囲むようにアーク駆動コイル６が設けられ、このコイ
ルの一端は環状導体４に接続されている。アーク駆動コ
イル６の他端には環状のアーク回転電極７が接続されて
いる。

絶縁筒１の底部1aの中央には、アーク回転電極７と中
心軸線を共有する絶縁ノズル部８が設けられている。

９は管状に形成された可動コンタクトで、この可動コ
ンタクトは、ノズル８を通して固定コンタクト５に内側
から接触する投入位置と、固定コンタクト５から離れて
ノズル８から離脱する遮断位置との間を直線変位し得る
ようになっている。

この例では、絶縁筒１と導電板２とにより昇圧室10が
構成され、昇圧室10と固定コンタクト５とアーク駆動コ
イル６とアーク回転電極７と可動コンタクト９とにより
遮断部が構成されている。この遮断部はSF₆ガスを封入
した遮断器容器内に収納されている。

上記のガス遮断器が投入状態にあるときには、導電板
２につながる図示しない外部端子−導電板２−支持リブ
３−環状導体４−固定コンタクト５−可動コンタクト９
−可動コンタクト９につながる図示しない外部端子の経
路で主回路電流が流れる。可動コンタクト９が図におい
て下方に駆動されて該可動コンタクトが固定コンタクト
５から離れると、両コンタクト間にアークＡが生じる。
このアークがアーク回転電極７に接触するとアーク駆動
コイル６にアーク電流が流れ、該コイルから発生した磁
束がアークＡに鎖交する。これによりアークに回転力が
与えられ、アークは第８図に矢印ａで示したようにアー
ク回転電極７に沿って高速で回転する。このアークの回
転によりアークに相対的にガスが吹付けられ、アークが
冷却される。

上記のガス遮断器においては、昇圧室10内に、アーク
近傍Ｒ→アーク駆動コイルの外側の空間Ｓ→環状導体４
と導電板１との間の空間Ｔ→アーク駆動コイル６の内側
の空間Ｕ→アーク近傍Ｒの経路でガスを流すガス流路ｐ
が構成されている。

アークＡが回転すると、その近傍のガスも高速回転し
て第６図の矢印ｇのように遠心力により径方向の外側に
押し出される。可動コンタクト９がノズル８に嵌合して
いて、昇圧室10内が実質的に密閉されているときには、
アークの回転により外側に押し出されたガスが上記ガス
流路ｐを環流してアークに吹付けられる。アークの発生
によりイオン化したガスはガス流路ｐに沿って移動する
間にアーク駆動コイル６によりアークから遮蔽された空
間の新鮮なガスと充分に混合攪拌されて再結合し、消弧
性能が回復する。したがって上記のようにガス流路ｐを
構成しておくと、ガスの環流により消弧性能が回復した
ガスをアークに吹きつけることができ、消弧性能を向上
させることができる。

上記の遮断器において、可動コンタクト９がノズル８
に嵌合している間は昇圧室10が実質的に密閉された状態
にあるため、該昇圧室内のガスはアークの強大なエネル
ギーにより自己膨張し、該昇圧室内のガス圧が急速に上
昇させられる。

可動コンタクト９がノズル８から離脱すると、昇圧室
10がノズル８を通して開放されるため、昇圧室10からノ
ズル８を通して外部に流出するガス流が生じる。ノズル
８が開放された際には、上記ガス流路ｐを通して可動コ
ンタクトの内側をノズル８側に流れてきたガスがそのま
まノズル８から流出するため、ノズル８から流出するガ
スの流路を充分に高くすることができる。したがって可
動コンタクト９がノズル８から離脱した瞬間に、新鮮な
ガスとの混合により消弧性能が回復した大量のガスを一
気にアークＡに吹付けることができ、電流零点でアーク
を消滅させることができる。

［考案が解決しようとする課題］ 上記のガス遮断器において遮断性能の向上を図るため
には、昇圧室が密閉されている期間にガス流路ｐを環流
するガスをできるだけ強くアークに吹付けるようにする
ことが望ましい。このガスの吹付けの強さを強くするた
めには、ガス流路ｐを通して流れるガスの量を多くする
必要があり、そのためにはアーク回転電極７の外周側の
ガス空間からアーク駆動コイル６の外周側のガス空間に
流れ込むガスの量をできるだけ多くすることが必要であ
る。

ところが第５図のガス遮断器では、アーク回転電極７
の外周側のガス空間からアーク駆動コイル６の外周側の
ガス空間に流れ込むガスの量が、アーク回転電極の外周
側のガス空間におけるガス圧V1とアーク駆動コイル６の
外周側のガス空間におけるガス圧V2との差により決まっ
ていたため、ガス流路ｐを通して流すことができるガス
の量に限界が生じ、遮断性能の向上に限界があることが
明らかになった。

本考案の目的は、既提案のものより更に遮断性能の向
上を図ったアーク回転方式、自己膨張方式併用形のガス
遮断器を提供することにある。

［課題を解決するための手段］ 本考案は、円筒状を呈する固定コンタクトと、該固定
コンタクトを同心的に囲むように設けられて一端が該固
定コンタクトに電気的に接続されたアーク駆動コイル
と、固定コンタクトと同軸的に設けられてアーク駆動コ
イルの他端に電気的に接続された環状のアーク回転電極
と、固定コンタクトとアーク駆動コイルとアーク回転電
極とを囲むように設けられてアーク回転電極に対向する
位置にノズルを有する昇圧室と、ノズルを通して固定コ
ンタクトに接触する投入位置とノズルから離脱する遮断
位置との間を変位し得るように設けられた可動コンタク
トを備えたガス遮断器に係わるもので、昇圧室内にはア
ーク回転電極の近傍のガス空間からアーク駆動コイルの
外周側のガス空間及びアーク駆動コイルの他端側のガス
空間と固定コンタクトの内側のガス空間とを経てアーク
回転電極近傍のガス空間に戻るガス流路が形成されてい
るものとする。

本考案においては、アーク回転電極に沿ったアークの
回転によりアーク回転電極の径方向の外側に移動させら
れたガスをアーク駆動コイルの軸線方向に方向転換させ
てアーク駆動コイルの外周側のガス空間に向わせる複数
のガス案内板をアーク回転電極の周囲に周方向に等間隔
をあけて配置し、該複数のガス案内板を昇圧室の内周面
に固定した。

上記ガス案内板は、アーク駆動コイルの外周側に移動
させられたガスの一部をアーク駆動コイルと反対側にも
向わせるように形成されていても良い。

［作用］ 上記のように構成すると、アーク回転電極に沿ったア
ークの高速回転によりアーク回転電極の径方向の外側に
移動させられた高速のガス流がアーク回転板によりアー
ク駆動コイルの軸線方向に方向転換させられて、アーク
回転電極の外周側の空間からアーク駆動コイルの外周側
の空間に流れ込むため、昇圧室内に形成されているガス
流路を流れるガスの量を多くすることができる。従って
ガス流路を環流してきた大量のガスをアークに強く吹付
けることができ、ガスの吹き付けによるアークの冷却効
果を高めることができる。

また上記のようにアークの高速回転により生じた高速
のガス流をガス案内板により軸方向の流れに変換するこ
とにより、ガス流路を通して大量のガスを流すようにす
ると、ガス流の慣性により、電流の零点付近でもアーク
に吹き付けられるガスの量を多くすることができるた
め、アークに吹き付けによるアークの冷却効果を高める
ことができることと相俟って、消弧性能を従来より大幅
に向上させることができる。

［実施例］ 以下添付図面を参照して本考案の実施例を説明する。

第１図は本考案の実施例のガス遮断器の遮断部の要部
を示したもので、同図において第５図の各部と同等の部
分にはそれぞれ同一の符号を付してあり、第１図におい
て１は絶縁筒、２は導電板であり、絶縁筒１の底部には
ノズル８が設けられている。絶縁筒１及び導電板２によ
り昇圧室10が構成されている。

導電板２の内面には良導電性の材料からなる支持リブ
３を介して環状導体４が接続され、該環状導体４に円筒
状の固定コンタクト５が接続されている。固定コンタク
ト５を同心的に囲むようにアーク駆動コイル６が設けら
れ、このコイルの一端は環状導体４に接続されている。
アーク駆動コイル６の他端は固定コンタクトと同軸的に
配置された環状のアーク回転電極７に接続されている。

９は棒状に形成された可動コンタクトで、この可動コ
ンタクトはノズル８を通して固定コンタクト５に内側か
ら接触する投入位置と、固定コンタクト５から離れてノ
ズル８から離脱する遮断位置との間を直線変位し得るよ
うになっている。第１図は可動コンタクトが投入位置と
遮断位置との間に位置している状態（ノズルから離脱し
ていない状態）を示している。

絶縁筒１の内周面には、アーク回転電極７に沿ったア
ークＡの回転によりアーク回転電極７の径方向の外側に
移動させられたガスをアーク駆動コイル６の軸線方向に
方向転換させてアーク駆動コイルの外周側のガス空間に
向わせるガス案内板11が固定されている。このガス案内
板11はアーク回転電極７の周囲に、周方向に等間隔をあ
けた状態で複数個設けられている。

上記の遮断部はSF₆ガス封入した遮断器容器内に収納
され、可動コンタクト８は図示しない絶縁操作棒を介し
て操作器に連結されている。

この実施例では、アーク近傍Ｒ→アーク駆動コイル６
の外側の空間Ｓ→環状導体４と導電板４との間の空間Ｔ
→アーク駆動コイル６の内側の空間Ｕ→アーク近傍のガ
ス流路ｐが構成されている。

上記のガス遮断器を投入する際には、可動コンタクト
９が固定コンタクト５側に移動させられる。このとき可
動コンタクト９はノズル８を貫通して昇圧室10内に入
り、第１図に鎖線で示したようにアーク回転電極７の内
側を通して固定コンタクト５に内側から接触する。この
状態では導電板７−支持リブ３−環状導体４−固定コン
タクト５−可動コンタクト９の経路で主回路電流が流れ
る。

遮断器を開く際には、可動コンタクト９が図において
下方に駆動される。可動コンタクト９が下方に駆動され
て固定コンタクト５から離れると、両コンタクト間にア
ークＡが生じる。このアークがアーク回転電極７に接触
するとアーク駆動コイル６にアーク電流が流れ、該コイ
ルから発生した磁束がアークＡに鎖交する。これにより
アークに回転力が与えられ、アークはアーク回転電極７
に沿って高速で回転する。アークの高速回転により、そ
の近傍のガスも高速回転して遠心力により径方向の外側
に押し出され、径方向の外側に向かう強力なガス流が生
じる。このガスは案内板11によりアーク駆動コイルの外
側の空間Ｓ側に指向されるため、該空間Ｓに大量のガス
が流れ込む。空間Ｓに流れ込んだガスはガス流路ｐを環
流してアークＡに吹付けられる。ガス流路ｐはアーク駆
動コイル６及び固定コンタクト５によりアークから遮蔽
された領域を多く含み、該領域にはイオン化していない
新鮮なガスが存在する。アークによりイオン化されたガ
スはガス流路ｐを環流する間に新鮮なガスと混合攪拌さ
れて消弧性能を回復する。

本考案においては、上記案内板11を設けたことにより
ガス流路ｐを流れるガスの量を多くすることができるた
め、ガスの環流によるアークＡに対する新鮮なガスの吹
付けを強くすることができ、アークの冷却を効果的に行
わせることができる。またガス流路ｐを流れるガス流
は、ガスの慣性力により接続するため、可動コンタクト
９がノズル８に嵌合している状態で電流が零点を迎えた
場合に、電流の零点付近でアークに吹き付けられるガス
の量を増加させることができ、アークの冷却効果が高ま
ることと相俟って消弧性能を向上させることができる。

可動コンタクト９がノズル８に嵌合していて、昇圧室
10が密閉されている状態にある間にアークＡの強大なエ
ネルギーにより昇圧室内のガスが膨張し、該昇圧室内の
ガス圧が上昇する。

可動コンタクト９がノズル８から離脱すると、昇圧室
10がノズル８を通して開放されるため、昇圧室10からノ
ズル８を通して外部に流出する高速のガス流が生じる。
ノズル８が開放された際には、上記ガス流路ｐを通して
ノズル８側に流れてきたガスがそのままノズル８から流
出するため、ノズル８から流出するガスの流速を充分に
高くすることができる。したがって可動コンタクト９が
ノズル８から離脱した瞬間に、新鮮なガスとの混合によ
り消弧性能が回復した大量のガスを一気にアークＡに吹
付けることができ、電流零点で確実にアークを消滅させ
ることができる。

第３図及び第４図は本考案の他の実施例を示したもの
で、この実施例では、絶縁筒１の内周に、アークの回転
により径方向の外側に押し出されたガスの一部をアーク
駆動コイルと反対側に指向させる案内面12aとアークの
回転により外側に押し出されたガスの他の部分をアーク
駆動コイル６側に指向させる案内面12bとを有するガス
案内板12が固定されている。このガス案内板12も絶縁筒
１の周方向に沿って複数個間隔をあけて設けるのが好ま
しい。

上記のようなガス案内板12を設けると、第３図に示し
たように、ガス流路ｐを通して環流するガスの流れを生
じさせることができると同時に、アーク駆動コイル４よ
り下方（ノズル側）の空間で昇圧室内を環流するガス流
ｑを生じさせることができるため、アーク近傍のガスの
置換を効果的に行わせて消弧性能を向上させることがで
きる。

上記の各実施例において、可動コンタクト９を昇圧室
10内に進入させる際に昇圧室10内の圧力が上昇して投入
操作を円滑に行うことができなくなるのを防ぐため、昇
圧室10内のガス空間を外部に連通させるガス通路を昇圧
室10の壁部または可動コンタクトの内側等に設けておく
か、または可動コンタクト９とノズル８との嵌合を比較
的緩くしておくのが好ましい。アークのエネルギーは強
大で、アーク発生時の昇圧室内のガスの膨張は短時間で
急激に行われるため、このようなガス通路を設けておい
ても昇圧室10内の圧力上昇は支障なく行われる。

［考案の効果］ 以上のように、本考案によれば、アーク回転電極に沿
ったアークの回転によりアーク回転電極の径方向の外側
に移動させられたガスをアーク駆動コイルの軸線方向に
方向転換させてアーク駆動コイルの外周側のガス空間を
向わせるガス案内板を昇圧室内に設けたので、アーク回
転電極の外周側の空間からアーク駆動コイルの外周側の
空間に流れ込むガスの量を多くすることができ、昇圧室
内に形成されているガス流路を流れるガスの量を多くす
ることができる。従ってアークに新鮮なガスを強く吹付
けることができ、遮断性能の向上を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の実施例の遮断部の要部を示す縦断面
図、第２図は同実施例で用いる絶縁筒の一部を切り欠い
て示した斜視図、第３図は本考案の他の実施例の遮断部
の要部を示す縦断面図、第４図は同実施例で用いる絶縁
筒の一部を切り欠いて示した斜視図、第５図は従来の遮
断器の遮断部の要部を示す縦断面図、第６図は第５図の
VIII-VIII線断面図である。 １……絶縁筒、２……導電板、３……支持リブ、４……
環状導体、５……固定コンタクト、６……アーク駆動コ
イル、７……アーク回転電極、８……絶縁ノズル、９…
…可動コンタクト、10……昇圧室、11,12……ガス案内
板。

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】円筒状を呈する固定コンタクトと、前記固
   定コンタクトを同心的に囲むように設けられて一端が該
   固定コンタクトに電気的に接続されたアーク駆動コイル
   と、前記固定コンタクトと同軸的に設けられて前記アー
   ク駆動コイルの他端に電気的に接続された環状のアーク
   回転電極と、前記固定コンタクトとアーク駆動コイルと
   アーク回転電極とを囲むように設けられて前記アーク回
   転電極に対向する位置にノズルを有する昇圧室と、前記
   ノズルを通して前記固定コンタクトに接触する投入位置
   と前記ノズルから離脱する遮断位置との間を変位し得る
   ように設けられた可動コンタクトを備え、前記昇圧室内
   には前記アーク回転電極の近傍のガス空間から前記アー
   ク駆動コイルの外周側のガス空間及び該アーク駆動コイ
   ルの他端側のガス空間と前記固定コンタクトの内側のガ
   ス空間とを経て前記アーク回転電極近傍のガス空間に戻
   るガス流路が形成されているガス遮断器において、 前記アーク回転電極に沿ったアークの回転により前記ア
   ーク回転電極の径方向の外側に移動させられたガスを前
   記アーク駆動コイルの軸線方向に方向転換させて前記ア
   ーク駆動コイルの外周側のガス空間に向わせる複数のガ
   ス案内板を前記アーク回転板の周囲に周方向に等間隔を
   あけて配置し、該複数のガス案内板を前記昇圧室の内周
   面に固定したことを特徴とするガス遮断器。
2. 【請求項２】前記ガス案内板は前記アーク駆動コイルの
   外周側に移動させられたガスの一部を前記アーク駆動コ
   イルと反対側にも向わせるように形成されている請求項
   １に記載のガス遮断器。