JP2506517Y2 - 膨張性自封式緩衝材シ―ト - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の技術分野〕 本考案は、膨張性自封式緩衝材シートに関するもの
で、より具体的には空気を吹き込むと膨張できる個々の
エアバック多数を連続して有し、膨らんだ個々のエアバ
ックは自ら封鎖される自封式弁を内蔵している、緩衝
材、保定材、包被材等として使用し得るシートに関する
ものである。

〔従来の技術とその問題点〕

従来、空気を予め封入してある緩衝材として、エアキ
ャップと呼ばれるものが知られている。これは、２層の
フィルムの一方に多数の気泡を形成してフィルム同志を
密着させたものであるが、このエアキャップは始めから
厚さ又は体積がほゞ一定に決まっているため使用上種々
の問題や制約がある。

このため本出願人は、エアキャップを越えるものとし
て、始めは薄いシート状であるが、使用に際して空気を
吹き込めば所要の個所が必要な厚さに膨張し、且つ自ら
閉鎖弁を形成する自封式緩衝材を開発した（実開昭62−
93066号「可変膨張自封式緩衝材」）。この自封式緩衝
材は、従前の空気封入済み緩衝材に比して使用前の体積
が小さいこと、吹き込みにより膨張させられる各気嚢部
分が周囲からの圧力等の条件に応じて独立可変な膨らみ
方をすること、等々の点で従来例を見ない優れたもので
ある。

しかし、この緩衝材は、比較的複雑な構造であって多
量の資材を必要とするということに加え、元来が広い面
積を有する緩衝又は保定材として意図されたものである
ので、用途が比較的限定され、線状又は帯状の用途には
向かないという問題がある。また、上記緩衝材は実際に
製造する際に種々の問題があり、例えば製造工程が非常
に煩雑であるとか、手作業を必要とするので量産に不向
きであるとかの制約が認められた。

〔考案が解決しようとする課題〕

本考案は上記の点に鑑み、限定されない比較的広い用
途をもち、最小限の資材で製作することができる膨張性
自封式緩衝材シートを提供することを課題としてなされ
たものである。

具体的に本考案は、製作が容易で実際上量産に好適な
多目的用の膨張性自封式緩衝材シートを提供することを
目的とする。

〔課題を解決するための手段〕

上記目的を達成するため、本考案は、帯状の熱融着性
フィルム２枚を重ねてその縦縁をヒートシールし、別に
これより細い熱融着性フィルム細条２枚の一方に所定間
隔でスリットを形成し且つ細条フィルムの内面に非融着
性塗膜を適用したもの２枚重ねて縦縁でヒートシールし
て形成した空気吹き込み用チューブを、前記の帯状フィ
ルムの中へ挿入し、チューブのスリットと重ならない帯
状フィルム上の位置に横断的にヒートシールをして、個
々に仕切られたエアバッグの中を自封式弁を備えた吹き
込みチューブが貫通している、膨張性自封式緩衝材シー
トを構成するようにしたものである。

本考案によれば、エアバッグ及び吹き込みチューブを
それぞれ２枚の熱融着性フィルムの張り合わせで製作
し、チューブの内面に非融着性塗膜を施してエアバッグ
と一緒に横断ヒートシールするようにしたから、帯状素
材及び細条素材から簡単な操作を経て一挙に多数連結し
たエアバッグを有する緩衝材シートを得ることができ、
その製作はきわめて実際的であると共に、量産に最適で
ある。

〔実施例〕

図面を参照して本考案のいくつかの実施例について説
明する。まず、第１図を参照すると、本考案の膨張性自
封式緩衝材シートは、基本的に、連続して形成された膨
張可能な多数の個々のエアバッグ21と、各エアバッグを
貫通して共通した空気吹き込み通路を形成する、常時は
扁平な吹き込みチューブ22とから成り、吹き込みチュー
ブ22は各エアバッグ21内に位置する少くとも１個の自封
式弁23を備えている。チューブ22の一端は空気吹き込み
口となるためエアバッグの一端から突出22eさせてあ
る。他端（図示せず）は、開放したまゝでもよいが、空
気吹き込み操作を容易且つ能率的にするため適宜閉じる
とよい。

自封式弁23の一例は、第２図に吹き込みチューブ22の
一部を拡大して略示断面で示した所から認められるよう
に、チューブ22を形成しているフラットな面の一方22u
に形成したスリット24である。このスリット24と他方の
フラットな面22lとが密着することにより空気の流れは
遮断される。このような自封式弁又はスリット弁は、図
示の例のような横断スリットのほか、縦方向スリットで
もよく、或いは＋形又は×形のスリット（第５図参照）
として形成してもよい。

吹き込みチューブ22の内表面には、予め非融着性塗膜
25が施される（第３図参照）。この塗膜25は、チューブ
22を構成する上下２枚のフィルム細条のいずれか一方、
例えば第３図に示すように下方フィルム22lの内表面に
施され得る。第３図では、この塗膜25を明瞭にするため
便宜無数の点々で示してある。非融着性塗膜25は、好適
にシリコーン系耐熱剥離剤の薄膜で形成され得るが、そ
の他の耐熱性印刷インクなどを使用することもできる。
いずれにしても、適用容易な液状物で非融着性塗膜25を
形成することが望ましい。塗膜25は、透明液を使用して
もよいが、着色液を使用して塗膜適用部分を可視的なら
しめてもよい。

本考案の膨張性自封式緩衝材シートは、その製作がき
わめて容易で実際的であり、商業的な量産に特に適して
いる。第３図を参照してこの点について説明すれば、連
続した個々のエアバッグ21を形成するのは帯状の熱融着
性の上方フィルム21uと下方フィルム21である。この
２枚のフィルムを重ね合わせてその両縦縁を縦シール線
27でヒートシールすることにより、扁平な、膨らませ得
る筒状体を形成する。

吹き込みチューブ22は、このような筒状体より幅が細
く、長さが少し長い、熱融着性の細条フィルム22u、22l
から形成される。細条フィルム及び帯状フィルムとして
好適なのは、ナイロンとポリエチレンのラミネートフィ
ルムであるが、その他のヒートシール性と非通気性があ
り、機械的強度を備えたフィルム又はシートを使用する
ことができる。特に、エアバッグを構成する帯状フィル
ムは、やゝ厚手のものを使用することが望ましい。細条
フィルムの一方、図では上方フィルム22uに、予め前記
のような自封式弁23となるスリット24を所定間隔で形成
しておく。図て下方フィルム22lの内表面には前記のよ
うな非融着性塗膜25が予め施されている。これら２枚の
細条フィルム22u、22lを重ねてこの両縦縁をシール線29
によりヒートシールして、常時は扁平な吹き込みチュー
ブ22を形成する。

この扁平な吹き込みチューブ22を前記の帯状フィルム
21uと21から成る扁平な筒状体の中に挿入し、チュー
ブ端22eを筒状体の端部から突出させて、チューブ22の
スリット24を外れた位置で帯状フィルムに２本の横シー
ル線28でヒートシールを施し、第１図に示したような個
々のエアバッグ21多数が、つなぎ部分30でつながった本
考案の膨張性自封式緩衝材シートを完成する。

個々のエアバッグ21は、その縦シール線27と横シール
線28とで仕切られて１個ずつが独立した膨張性気密体を
構成する。横シール線28におけるエアバッグのフィルム
21u、21と吹き込みチューブ22とは、第４図に略示す
るように、フィルム21u、21の内面とチューブ22の外
面とがヒートシールにより封着されるが、チューブ22の
内表面自体は非融着性塗膜25があるため融着せずに多数
のエアバッグ21を貫く連続した空気吹き込み通路を形成
し得るようになっている。第４図で、ハッチングは融着
した部分を便宜示すものである。上方、下方フィルム21
u、21の断面には明瞭のためハッチングを施してな
い。

こうして本考案の膨張性自封式緩衝材シートは、フィ
ルム細条への非融着性塗膜25の適用とスリット24の形成
と縦シール29の形成による扁平吹き込みチューブ22の形
成、帯状フィルムへのチューブフ22の挿入と縦シール27
と横シール28との形成による個々のエアバッグ21の形成
という、きわめて能率的で、操作容易且つ単純な作業に
より一挙に製作され得るものであるから、本質的に量産
になじむものである。

第５図には本考案の膨張性自封式緩衝材シートの他の
実施例の部分斜視図を示す。この実施例の前例と異なる
所は、吹き込みチューブ22の内表面に施される非融着性
塗膜が部分塗膜26として形成されていることである。非
融着性塗膜は、帯状フィルムを吹き込みチューブ22と共
に横シール28する時に、チューブ内面が融着し閉塞する
ことを防ぐためであるから、本質的に横シール28が形成
されるべき部位に相当する吹き込みチューブの内面領域
にだけあれば足りる。２本の横シール線28が形成される
べき場合、この２本の線を含む小さい面積部分だけに部
分的に非融着性塗膜を形成し、前記のように帯状フィル
ム21u、21の筒状体に吹き込みチューブ22を挿入する
時にこの面積部分を正確にシール線形成部位に合わせる
ようにすればよい。しかしさらに、この位置合わせがよ
り正確を期し得る場合には、第５図に示すように部分塗
膜26は１本のシール線28を収めるに足る最小幅のものと
して形成され、隣接する２個の部分塗膜26の間に隙間30
aが残される。この場合、部分塗膜26を形成する耐熱性
剥離剤は着色しておくと便利である。隙間30aは個々の
エアバッグ21間のつなぎ部分30のほゞ中央にくるように
位置合わせされる。こうして、各横シール線28の下でエ
アバッグ21のフィルムと吹き込みチューブ22のフィルム
とは融着され、しかもチューブ22の内表面は融着されな
いで空気通路として残る。第５図の実施例は、つなぎ部
分30のほゞ中央で線31のように切断し、１個ずつのエア
バッグとして利用することが可能である。この場合、必
要があれば切断されたチューブ22の端部を封着すること
ができる。

次に、作用について第６図、第７図を参照して説明す
ると、扁平な状態にある（第１図参照）吹き込みチュー
ブ22の吹き込み端22eからエアコンプレッサなどの吹き
込み手段Ｐにより空気を吹き込むと、チューブ22は膨ら
んで空気流Ａを各エアバッグ21へ送り込む。第６図では
吹き込み端22eに一番近い側のエアバッグ21₁から21₂、2
1₃……と順次に膨らんでいく様子を略示している。空気
流Ａによりエアバッグ21₁内のスリット弁24が開かれ、
或る量の空気ａがまずエアバッグ21₁内に、ついで21₂、
21₃…内へと押し込まれる。十分な量の空気ａがエアバ
ッグに押し込まれた後、吹き込み手段Ｐを止めると、第
７図に示すようにエアバッグ21内に押し込まれた空気の
反作用ｒにより吹き込みチューブ22は平らに押し潰さ
れ、スリット弁24は自封式に閉じられる。この状態で、
吹き込みチューブ22は事実上空気通路として役立たなく
なるから、最早空気はエアバッグ21から逃げ出すことが
できなくなる。吹き込み端22eはそのまゝ放置してもよ
いが、適宜締め切り手段Ｓで封じるようにしてもよい。

本考案の膨張性自封式緩衝材シートは、種々の用途に
広く使用することができるが、その一例を第８図に示
す。容器Ｃの中に大きさが不揃いな多数の物品Ｂを入れ
る場合、物品と容器壁との間には大きさの異なる間隙が
できる。このような間隙を埋める保定材として、従来の
資材を用いる時は、異なる間隙ごとに異なる大きさの保
定材又は緩衝剤を個々に何度かに分けて詰めなければな
らない。そのため作業は煩雑となり、時間のかかるもの
となる。しかし、本考案の緩衝材を用いる時は、例えば
第８図で左側の不揃いな隙間を埋めようとするなら、第
１図に示したように扁平なシートを左側の容器壁に沿わ
せておいて多数の物品Ｂを容器に詰め、詰め終ってから
吹き込みチューブの吹き込み端部22eから空気を吹き込
めば、多数の個々のエアバッグ21₁，21₂，21₃，21₄はそ
れぞれが許された限度で個々に膨張して各個の隙間を埋
める。本考案によれば保定材の挿入作業は、従来の資材
を用いる場合に比し、比べものにならないくらい単純迅
速であり、且つ確実である。本考案の緩衝材は、もちろ
ん、同じ大きさの隙間の充填にも用いることができ、こ
のような例は第８図の右側の隙間について示してある。

この他、本考案の緩衝材は例えばガラスびん等の壊れ
やすい物品の回りに予め扁平なまゝ巻き付けて、そのよ
うな物品多数を箱などの容器に詰め、その後で各緩衝材
の吹き込みチューブから空気を吹き込んで、それぞれの
緩衝材を必要限度で膨らませるなどの用法に供すること
もできる。この場合も、従来の緩衝材をビンとビンの隙
間へ手で詰めるなどの作業に比べ、安全確実且つ迅速で
あって、包装梱包作業の能率向上に大きく寄与すること
ができる。

〔考案の効果〕

以上説明のように本考案によれば、少ない資材で単純
な構造の自封式緩衝材を量産方式で安価に提供すること
ができ、この緩衝材は広く種々の用途に供することがで
きる。具体的に本考案によれば、吹き込みチューブがそ
のまゝ逆止弁となるので、構成資材は最小限ですむ利点
がある。また、各個のエアバッグはその中を貫通する吹
き込みチューブがそのまゝ自封式弁となるので、各個独
立に膨張を維持することができ、１個のエアバッグが仮
に破裂したりしても、前後のエアバッグは影響を受けな
い利点がある。従ってまた本考案の緩衝材シートは各個
のエアバッグを個々に異なる程度に可変的に膨張させ
て、例えば種々の大きさの隙間を一挙に埋めたりする用
途に供することができる効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係る膨張性自封式緩衝材シートの膨ら
ませる前の状態を示す部分斜視図、 第２図は第１図に示した吹き込みチューブの自封式弁の
一例（スリット弁）を示す拡大部分断面図、 第３図は第１図に示した緩衝材シートの構成素材を分離
して示す部分斜視図、 第４図は吹き込みチューブと個々のエアバッグとの結合
状態を説明する第１図IV−IV線に相当する拡大断面図、 第５図は吹き込みチューブの他の実施例を示す拡大部分
斜視図、 第６図は本考案の膨張性自封式緩衝材シートの個々のエ
アバッグの膨らみ方を説明する略示断面図、 第７図は膨らみ終った１個のエアバッグの自封作用を説
明する略示断面図、 第８図は本考案の膨張性自封式緩衝材シートを保定材と
して使用する例を示す略示図である。 〔主要符号〕 21…個々のエアバッグ 21u…帯状の上方フィルム 21…帯状の下方フィルム 22…吹き込みチューブ 22u…細条上方フィルム 22l…細条下方フィルム 22e…突出端（吹き込み口） 23…自封式弁 24…スリット 25…非融着性塗膜 26…部分塗膜 27…縦シール線 28…横シール線、Ｐ…吹き込み手段 29…縦シール線、Ａ…空気流 30…つなぎ部分、ａ…空気 30a…隙間、ｒ…空気の反作用 31…切断線、Ｓ…締め切り手段

Claims (6)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】帯状をなす２枚の熱融着性フィルムを重ね
   た両縦縁をそれぞれヒートシールして形成される平らな
   筒状体の中に、 該筒状体より幅の細い２枚の熱融着性フィルム細条のい
   ずれか一方の内表面に非融着性塗膜を施し、いずれか一
   方の細条の面に所定間隔で自封式弁となるスリットを刻
   設した上、両細条フィルムの両縦縁をそれぞれヒートシ
   ールして形成される吹き込みチューブを貫挿し、該チュ
   ーブの少なくとも一方の端部を前記筒状体の端部から突
   出させ、 前記筒状体の両端と、貫挿した吹き込みチューブの前記
   スリットを外れた位置とで筒状体に横断的にヒートシー
   ルをして、個々に仕切られて連続している膨張可能な多
   数のエアバッグを形成して成る膨張性自封式緩衝材シー
   ト。
2. 【請求項２】前記非融着性塗膜は、着色又は非着色のシ
   リコーン系耐熱剥離剤により形成される請求項１に記載
   の膨張性自封式緩衝材シート。
3. 【請求項３】前記スリットは、フィルム細条の一方に横
   断方向若しくは長さ方向に切り込んだ短い−形、或いは
   ＋形又は×形に形成される請求項１に記載の膨張性自封
   式緩衝材シート。
4. 【請求項４】前記細条フィルムの一方にスリットが形成
   され、他方の細条フィルムの内表面に非融着性塗膜が施
   されている請求項２又は３に記載の膨張性自封式緩衝材
   シート。
5. 【請求項５】前記エアバッグの各々を仕切る横断的ヒー
   トシールが２本のシール線により形成されている請求項
   １に記載の膨張性自封式緩衝材シート。
6. 【請求項６】前記非融着性塗膜は、前記２本のシール線
   が形成されるべき部位に相当する領域のみに部分的に施
   される請求項５に記載の膨張性自封式緩衝材シート。