JP2502826Y2 - 内燃機関用セラミツクタペツト - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この発明は内燃機関用セラミックタペットに関し、と
くにクラックが発生しないタペットを提供するものであ
る。

（従来の技術） 内燃機関用のタペットの材質として、耐摩耗性に優れ
かつ軽量であることから、セラミックスが有望視されて
いる。

セラミックタペットとして実開昭61−137806号公報に
は、上面にプッシュロッドの一端を収容する摺動球面を
そなえかつ下面に動弁カムが当接する摺動面をそなえる
と共に、上記上面および下面間の外周面に、断面形状が
なだらかな曲線状をなす環状溝をそなえたセラミックス
製の底部材と、上記底部材を鋳包んで形成され上端が開
口したアルミニウム合金製の筒体とから構成されたセラ
ミックタペットが開示されている。

（考案が解決しようとする問題点） ところが該セラミックス製のタペットを内燃機関に適
用するに当り、その使用中に環状溝からプッシュロッド
を収容する摺動球面にわたってクラックが発生すること
がしばしば生じ、その改善が望まれていた。

本考案の目的は、使用中にクラックの発生しないセラ
ミックタペットを提案することにある。

（問題点を解決するための手段） 考案者は、上記の従来のセラミックタペットにクラッ
クが発生する原因は、環状溝の表面粗さと曲率半径とに
密接に関係していることを見い出した。

この考案は上記知見に由来するものである。

すなわちこの考案は、金属筒体の内側に円盤状のセラ
ミックタペット本体を組み合わせた内燃機関用セラミッ
クタペットにおいて、セラミックタペット本体は、その
上面にプッシュロッドの一端が収容される摺動球面を有
し、該上面と同径の下面に動弁カムが当接する断面円弧
状の摺動面を有し、さらに金属筒体の内周壁と全面的に
接触する外周面に金属筒体が嵌合される環状溝を有し、
該環状溝の表面粗さを最大高さで3.0μｍ以下で、かつ
曲率半径がセラミックタペット本体の厚さの0.1〜２倍
の範囲に形成したことを特徴とする内燃機関用セラミッ
クタペットである。

（作用） 本考案の内燃機関用セラミックタペットは、金属筒体
に鋳込まれる環状溝部の表面粗さが小さいので、使用中
にマイクロクラックが発生せず、また環状溝部の曲率半
径の範囲が規定されているので、応力集中が緩和され金
属筒体への保持が充分になされる。

（実施例） 本考案の詳細について、図面を参照して説明する。

第１図は本考案の一具体的であって、セラミックタペ
ット本体４は、上面にプッシュロッド７の下端部が受け
止められる摺動球面１を、下面に動弁カムが当接する摺
動面２を、外周面に環状溝３を有し、該環状溝３を含む
外周面には金属筒体６が鋳込まれ金属筒体６の突起５が
環状溝３に嵌合している内燃機関用セラミックタペット
である。

特に、図示のセラミックタペット本体４は、上述した
実開昭61−137806号公報に記載のものと比較し、セラミ
ックタペット本体４と金属筒体６との嵌合構造を異にす
るものである。

すなわち、上面と下面の外径が同じで、摺動面２が円
弧状であること、金属筒体６がセラミックタペット本体
４の外周部全面に対して鋳込れていること、および環状
溝３の曲率が緩いこと、で異なる内燃機関用セラミック
タペットである。

従って、セラミックタペット本体の上面と下面の外径
を同じにすることによって、セラミックタペットの形状
が単純でかつ上下対称に近い形になるため、金属外筒を
鋳込んだ時に発生する応力集中を緩和でき、破損を防止
できる。しかも、製造が容易となり、安価なコストでの
製造が可能である。

また、摺動面２を断面円弧状にすることによって、カ
ムと摺動する際に点接触に近い状態となるため、運転時
の摩擦力を低減できる。さらに、カムの摺動面とタペッ
ト面が確実に接触するため、カムのエッジ部との摺動に
よる異常摩耗が起こることがない。

外周部全面を鋳込み面とすることによって、タペット
本体の鋳込み時の嵌合力による応力集中を分散でき、破
損防止に役立てることができる。

そして、環状溝３の曲率を緩くすることによって、鋳
込み時の環状溝への応力集中を小さくできる。

ここで、環状溝３の表面粗さはダイヤモンド砥石ある
いはダイヤモンド砥石加工等の研摩加工により３μｍR
_max以下とする。表面粗さが３μｍR_maxを超えると使用
中に微細クラックが発生し、セラミックタペットが破壊
する。環状溝は鏡面仕上げすることが好ましいが、セラ
ミックタペットは硬さが大きいので、少くとも成形時の
加工痕を取り除く程度の表面粗さにすることが重要であ
る。

一方環状溝の曲率半径r₁は、セラミックタペットの厚
さ、即ち第１図に示すようにセラミックタペットの上面
と下面との間の距離ｔの0.1〜２倍の範囲である。この
理由は曲率半径r₁が0.1t未満であると環状溝に応力集中
が起りセラミックタペットを破壊に導くことになり、一
方曲率半径r₁が2tを超えるとセラミックタペット本体４
と金属筒体６との係合度合が小さくなり、使用中にセラ
ミックタペット本体４が金属筒体６から脱落するからで
ある。

セラミックタペットの厚さは、機械的強さ及び動弁系
の慣性の影響を少くするための重量制限から、５〜16mm
が好ましい。

環状溝３はその曲率半径r₁の中心が、第１図に示すよ
うに、セラミックタペット厚さｔの中間の位置で、半円
状に形成されることが、応力分布及び加工上好ましい。

とくに、環状溝３が判断円弧状であるから、セラミッ
クタペット本体４が金属筒体６に充分に保持されること
が肝要であり、弦から円弧までの距離が0.5以上になる
ように曲率半径r₁の中心を定めることが好ましい。

なおセラミックタペット本体４に金属筒体６を取付け
るには、前記の鋳込む方法以外に、焼嵌め又はかしめ等
の手段を採用してもよい。

セラミックタペット本体４の材質としては、窒化珪
素、炭化珪素、ジルコニアセラミックス等の機械的強さ
にすぐれたものがよく、金属筒体６の材質はアルミニウ
ム合金等の軽合金が用いられる。

次に窒化珪素粉末95wt％に焼結助剤5wt％添加し、振
動ミルにより10時間混合粉砕しスプレードライヤにて造
粒乾燥して得た成形用粉末を100kgf/cm²の圧力で第１図
に示すタペット本体の環状溝が未加工の形状に金型プレ
スによる成形を行った後仮焼したものを複数用意し、そ
れぞれに焼結後第１表に示す曲率半径になるように環状
溝を切削加工した後、窒素雰囲気中で1700℃にで焼成を
施して製品とした。焼成品の寸法は、上面の外径20mm、
下面、即ち摺動面の外径30mm、厚み10mmであった。

そして各焼結体の摺動球面及び環状溝にダイヤモンド
砥石による研磨を施して表１表に示す表面粗さに仕上げ
タペット本体とした。なお一部は比較のため研磨を施さ
ずにおいた。

アルミニウム合金で該セラミックタペット本体を鋳包
みタペットを製作した。

このようにして得られた内燃機関用セラミックタペッ
トをリグ試験装置（実機エンジンを模擬した試験装置）
にて、カム回転数1700rpm、プッシュロッド荷重800kgf
で200時間連続耐久試験を行いセラミックタペットのク
ラックの有無を調べた。その結果を第１表に示した。

第１表から、環状溝の表面粗さ（R_max）が3.0μｍ以
下で、曲率半径が１〜20mmのセラミックタペットは200
時間の連続運転の間にクラックの発生がないことがわか
る。

（考案の効果） 本考案によれば、使用中にクラックの発生しない優れ
た耐久性をそなえるセラミック製タペットが実現し、よ
って内燃機関へのセラミック製タペットの適用を実現し
得る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の実施例のセラミックタペットの断面図
である。 １…摺動球面、２…摺動面 ３…環状溝、４…タペット本体 ５…突起、６…金属筒体 ７…プッシュロッド、ｔ…タペット厚さ

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】金属筒体の内側に円盤状のセラミックタペ
   ット本体を組み合わせた内燃機関用セラミックタペット
   において、セラミックタペット本体は、その上面にプッ
   シュロッドの一端が収容される摺動球面を有し、該上面
   と同径の下面に動弁カムが当接する断面円弧状の摺動面
   を有し、さらに金属筒体の内周壁と全面的に接触する外
   周面に金属筒体が嵌合される環状溝を有し、該環状溝の
   表面粗さを最大高さで3.0μｍ以下で、かつ曲率半径が
   セラミックタペット本体の厚さの0.1〜２倍の範囲に形
   成したことを特徴とする内燃機関用セラミックタペッ
   ト。