JP2024512305A - 破骨細胞生成の新規制御因子としてのLaタンパク質 - Google Patents

破骨細胞生成の新規制御因子としてのLaタンパク質 Download PDF

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Abstract

本明細書では、破骨細胞融合を調節するための方法が開示される。いくつかの態様において、これらの方法は、有効量のループス自己抗原(La)タンパク質またはLaタンパク質の発現もしくは活性を調節する作用物質を、それを必要とする対象に投与し、それによって該対象における破骨細胞融合を調節する工程を含む。いくつかの態様において、本方法は破骨細胞融合および骨吸収を増加させる。別の態様において、本方法は破骨細胞融合および骨吸収を減少させる。TIFF2024512305000017.tif75170

Description

関連出願の相互参照
本願は、2021年3月3日に出願された米国仮出願第63/155,896号の恩典を主張し、この仮出願は参照により本明細書に組み入れられる。
政府の支援の陳述
本発明は米国国立衛生研究所、米国国立小児保健・人間発達研究所による政府の支援を受けてなされた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
発明の分野
本発明は破骨細胞融合の分野に関し、具体的には、破骨細胞融合を調節するための、例えば骨吸収を調節するための、有効量のループス自己抗原(La)タンパク質またはLaタンパク質の発現もしくは活性を調節する作用物質の使用に関する。
背景
破骨細胞は、生涯続く必要不可欠な骨格リモデリングを担っている多核食骨細胞(bone eater)であり、その機能障害は、骨粗鬆症、線維性骨異形成症、パジェット病および大理石骨病を含むいくつかの骨疾患の主要原因である。1千万人を超える米国人を侵すこれらの病態は、いずれも、破骨細胞が媒介する骨吸収の撹乱を呈する。多核破骨細胞は単核前駆体細胞の逐次的融合によって形成される。合胞体状破骨細胞(syncytial osteoclast)あたりの核の数、したがってその細胞を生成させた融合イベントの数は、その細胞の骨吸収傾向と直接相関し、破骨細胞の数および/または破骨細胞を生じる融合イベントの数は、多くの骨疾患において、有意に変化している。破骨細胞形成と骨リモデリングにおける融合の基本的役割にも関わらず、破骨細胞が、その生物学的機能を果たすために、どのようにしてその融合を制御し、「適正サイズ」に到達するかの理解は、現在のところ欠けている。破骨細胞がどのように融合するかをよりよく理解することは、これらの骨疾患の一因となる病理を解明し、骨格障害の新しい処置方法を提供するのに役立ちうる。
開示の要約
本明細書では、破骨細胞融合を調節するための方法が開示される。いくつかの態様において、これらの方法は、有効量のLaタンパク質またはLaタンパク質の発現もしくは活性を調節する作用物質を、それを必要とする対象に投与し、それによって該対象における破骨細胞融合を調節する工程を含む。骨吸収を調節するための方法も開示される。
いくつかの態様において、本方法は破骨細胞融合を増加させ、Laタンパク質の発現または活性を調節する作用物質は、Laタンパク質の発現または活性を増加させる作用物質であるか、またはLaタンパク質(またはそのフラグメント)である。さらなる態様において、これらの方法は、有効量のLaタンパク質(またはそのフラグメント)またはLaタンパク質の発現もしくは活性を増加させる作用物質を、それを必要とする対象に投与し、それによって該対象における破骨細胞融合を増加させる工程を含む。さらなる態様において、対象は骨吸収の低減を含む疾患を有し、本方法は骨吸収を増加させる。いくつかの非限定的な例では、Laタンパク質(またはそのフラグメント)が対象に投与される。
別の態様において、本方法は対象における破骨細胞融合を減少させ、作用物質はLaタンパク質の発現または活性を減少させる。さらなる態様において、これらの方法は、Laタンパク質の発現または活性を減少させる有効作用物質を、それを必要とする対象に投与し、それによって該対象における破骨細胞融合を減少させる方法を含む。さらなる態様において、対象は骨吸収の増加を含む疾患を有する。いくつかの非限定的な例において、作用物質は、阻害性RNAまたはLaに特異的に結合するアンタゴニスト抗体である。別の非限定的な例において、作用物質は阻害性Laペプチドである。
有効量のLaタンパク質(またはそのフラグメント)またはLaタンパク質の発現もしくは活性を調節する作用物質(例えば核酸分子、ベクターまたは抗体)を含み、開示する方法のいずれかにおいて有用な、薬学的組成物が開示される。
本開示の前記および他の特徴は、添付の図面を参照して以下に記載するいくつかの態様の詳細な説明から、いっそう明白になるだろう。
図1A~1G: 破骨細胞生成的分化は、La分子種の定常状態レベルおよび局在の激しい変化を伴う。(A)それぞれM-CSF(6日間)およびM-CSF+RANKL(5日間)後のヒト単球の破骨細胞生成誘導の段階の代表的画像(染色=ファロイジン-Alexa488、核ドット=Hoechst)。(B)RANKL添加後に経時的に観察される核の総数に対して正規化された融合イベント数の定量。(n=3)。各点はスコア化された>7,500個の核の平均を表す。(C)Aに図示した破骨細胞生成段階からの全タンパク質溶解物の代表的ビス-トリスPAGE分離および銀染色。50kDaマーカーが4-12%ポリアクリルアミドゲルからほとんど流れ出すまで溶解物を泳動することで、この分子量のタンパク質の最大限の分離を達成したところ、誤解を生じかねないほど重くみえる関心対象のバンドが得られた。<は、両方のレーンから切り出して質量分析によって評価した関心対象のバンドを表す。(D)初代ヒト単球およびAに図示する破骨細胞生成段階からの全タンパク質溶解物におけるLa発現を評価する代表的トリス-グリシンウェスタンブロット。(抗La抗体(α-La)、Abcam 75927)。(E)RANKL添加後のLa発現の時間経過を評価する代表的トリス-グリシンウェスタンブロット。(α-La、Abcam 75927)(α-GAPDHローディング対照)。(F)M-CSF誘導性破骨細胞前駆体およびRANKL適用の3日後におけるLaの代表的デジタル免疫蛍光像。(α-La、Abcam)。(G)低分子量(low molecular weight: LMW)La(α-LMW La)および完全長(full-length: FL)La(α-FL La)を特異的に認識するLa抗体を使った、破骨細胞中のLaの代表的デジタル免疫蛍光像。LMW LaとFL Laがどちらも豊富なRANKL添加の4日後に、細胞を固定した。 図1Aの説明を参照されたい。 図1Aの説明を参照されたい。 図1Aの説明を参照されたい。 図1Aの説明を参照されたい。 図1Aの説明を参照されたい。 図1Aの説明を参照されたい。 図2A~2I: 破骨細胞形成は短縮型Laに依存するが、Laドメインの機能は必要でない。(A)ヒト破骨細胞前駆体のsiRNA処理後のSSBのqPCR評価。(n=4)(P=0.0043)。(B)TRAPで染色した、aに示すような、非標的化ヒト破骨細胞およびSSB標的化ヒト破骨細胞の代表的位相差像。(C)B中の一つのような実験での、3+個の核を持つ合胞体の形成における融合イベント数の定量。(n=3)(P=0.0306)。(D)mRANKL添加前(対照)、mRANKL添加3日後、およびここで撮像されたもののように塊状の多核破骨細胞が決まって観察されたmRANKL添加5日後のRAW 264.7における、Laの代表的免疫蛍光像。(E)Dのように処理したマウスRAW 264.7から採取された全細胞溶解物の代表的トリス-グリシンウェスタンブロット。マウスRANKL(mRANKL)処理細胞は、方法の項で述べるように、単核集団(単核)または多核集団(多核)に濃縮された。(シクロフィリンB(α-Cyclo B)ローディング対照)。(F)LMW La 1-375、「切断不能型(uncleavable)」La D371A, D374A、および「RNAΔ」La 1-375 Q20A_Y24A_D33Iのトポロジー図。(G)空の発現プラスミド、La 1-375発現プラスミドまたはLa 1-375 Q20A_Y24A_D33I発現プラスミドをトランスフェクトしたRAW 264.7細胞での、3+個の核を持つ合胞体の形成における融合イベント数の定量。(n=3)(それぞれP=0.0213および0.0173)。(H)空の発現プラスミド、La 1-375発現プラスミドまたはLa D371A, D374A発現プラスミドをトランスフェクトしたヒト単球由来破骨細胞の代表的蛍光像。(I)Hでの、3+個の核を持つ合胞体における融合イベント数の定量。(n=4)(それぞれP=0.0205および0.325)。統計的有意性は対応のあるt検定によって評価した。*=P<0.05。**=P<0.001。エラーバー=SEM。 図2Aの説明を参照されたい。 図2Aの説明を参照されたい。 図2Aの説明を参照されたい。 図2Aの説明を参照されたい。 図2Aの説明を参照されたい。 図2Aの説明を参照されたい。 図2Aの説明を参照されたい。 図2Aの説明を参照されたい。 図3A~3G: Laは膜と会合し、表面に移動し、破骨細胞膜融合をコントロールする。(A)ヒト破骨細胞からのサイトゾル画分と膜結合タンパク質画分とを対比したウェスタンブロット。(B)非透過処理条件(上)およびDIC(下)での、ヒト破骨細胞における、α-Fish/TKS5(陰性対照として使用した破骨細胞表在性膜タンパク質)またはα-La抗体の表面染色を比較する代表的デジタル免疫蛍光像。(C)非透過処理条件下のRAW 264.7由来破骨細胞におけるアイソタイプ対照またはα-La抗体の表面染色を比較する代表的デジタル免疫蛍光像。(D)RANKL適用の2~5日後の、形成されつつある破骨細胞におけるLaの代表的デジタル免疫蛍光像(α-La、Abcam)。膜透過処理を行わずに、記載の時点において、細胞をLaで染色した。(E)多核破骨細胞の形成(上)および破骨細胞分化の先行段階から膜融合段階を単離するためのアプローチ(下)の逐次的過程を図解する模式図。RANKL誘発性破骨細胞生成の48時間後に半融合阻害剤リゾホスファチジルコリン(LPC)を適用すると融合前分化段階は許されるが、半融合は阻止されて、細胞が同期化されることになる。LPCを除去することで、破骨細胞間の膜融合を特異的に探索することが可能になる。(F)Eに図示するように融合前段階から切り離され同期化されたヒト破骨細胞融合の定量。α-La存在下での融合と、抗体の添加なしでの融合(洗浄)を、α-RANK対照に対して正規化した。(n=3)(それぞれP=0.0086および0.1330)。(G)同期化されたヒト破骨細胞融合に対するα-FL La適用またはα-LMW La適用の効果。アイソタイプ対照(IgG)適用後のデータに正規化されたデータ。(n=2)(それぞれP=0.03および0.4581)。(E、F)「LPC」-LPCを除去せずに観察された融合。統計的有意性は対応のあるt検定で評価した。*=P<0.05。**=P<0.001。エラーバー=SEM。 図3Aの説明を参照されたい。 図3Aの説明を参照されたい。 図3Aの説明を参照されたい。 図3Aの説明を参照されたい。 図3Aの説明を参照されたい。 図3Aの説明を参照されたい。 図4A~4E: 組換えLaは破骨細胞融合を促進する。(A)組換え熱不活化La 1-408、La 1-408、La 1-375またはLa 1-375 Q20A/Y24A/D33Iの終夜(RANKL後2日目の終わり)添加あり、またはそのような添加なしでの、RANKL添加3日後のヒト破骨細胞の代表的蛍光像。RANKL添加後2日目の最後に組換えタンパク質を約40nMで加え、翌朝、細胞を固定した。(B)Aの定量。(不活化n=2;その他n=3)(それぞれP=0.1232、0.0015、0.0035および0.0491)。(C)Aからのさまざまなサイズの合胞体中に存在する融合細胞中の核の分率。(n=3)。(D)La 1-187またはLa 188-375の添加あり、またはそのような添加なしでの、融合イベント数の定量。RANKL添加後2日目の最後に組換えタンパク質を約40nMで加え、翌朝、細胞を固定した。(E)組換えLa種の添加なし(洗浄)および添加ありでの同期化された融合イベント(図3Eに図解したもの)の定量。「LPC」-半融合阻害剤が固定まで残っていたことを示す。(n=3)(それぞれP=0.001および0.03)。統計的有意性は対応のあるt検定によって評価した。(B、D、E)では、データを、対照(B、Dではタンパク質の添加なし、Eでは洗浄ありかつタンパク質の添加なし)におけるデータに正規化した。エラーバー=SEM。 図4Aの説明を参照されたい。 図4Aの説明を参照されたい。 図4Aの説明を参照されたい。 図4Aの説明を参照されたい。 図5A~5E: Laの妨害はヒト破骨細胞による骨吸収に影響を及ぼす。(A)骨吸収をアッセイするための、リン酸カルシウム被覆プレートに捕捉されたフルオレセインアミン標識コンドロイチン硫酸の使用を表す図解。(B)空のプラスミドをトランスフェクトした破骨細胞についての値に対して正規化された、切断不能型La(D371A, D374A)または短縮型La(1-375)を過剰発現する破骨細胞における骨吸収。(n=3)(P=0.0564および0.0471)。(C)非標的化siRNAについての値に対して正規化された、La転写産物を標的とするsiRNAをトランスフェクトした破骨細胞における骨吸収。(n=5)(P=0.0045)。(D)7.5μg/mlのアイソタイプ対照抗体で処理された細胞についての値に対して正規化された、濃度の異なるα-Laにばく露された破骨細胞における骨吸収。(n=3)(P=0.0723、0.0098および0.004)。(E)同じ量のPBSを加えた後の対照に対して正規化された、40nM組換えLa 1-375で処理された破骨細胞における骨吸収。(n=3)。統計的有意性は対応のあるt検定で評価した。エラーバー=SEM。 図5Aの説明を参照されたい。 図5Aの説明を参照されたい。 図5Aの説明を参照されたい。 図5Aの説明を参照されたい。 図6A~6C: ヒト骨芽細胞/破骨細胞前駆体共培養における破骨細胞形成はLaタンパク質に依存する。(A)使用したヒト骨芽細胞/破骨細胞共培養系のマルチウェル構成の概略図: 骨芽細胞の3区域(ダークグレーで示す)と破骨細胞前駆体の1区域(ライトグレー)。ヒト単球のM-CSF誘導後にマルチウェルの仕切りを取り除き、破骨細胞前駆体と初代骨芽細胞培地とを混合した。(B)対照IgGまたはα-La抗体を使った破骨細胞融合を比較する代表的免疫蛍光像。矢じりは≧3個の核を持つ合胞体を表す。(C)対照IgG存在下での値に正規化された、α-La存在下での共培養における破骨細胞融合の定量。(n=4)(P=0.0331)。統計的有意性は対応のあるt検定で評価した。エラーバー=SEM。 図6Aの説明を参照されたい。 図6Aの説明を参照されたい。 図7A~7G: α-La処理は線維性骨異形成症(FD)外植片における異所性破骨細胞形成を抑制し、Laが健常時にも疾患時にも破骨細胞を制御することが確認される。(A)FDのテトラサイクリン誘導性モデルに基づくエクスビボ骨髄培養系の図解。(B)ホモ接合Gαs R201Cマウス(FD)および野生型同腹仔(WT)からの骨髄外植片のTRAP染色。外植片を、M-CSFのみと共に、またはM-CSFおよびDoxyと共に培養した。(C)Doxy処理後にFD培養物とWT培養物とにおいて産生されたmRANKLのELISA定量。(n=4)(P=0.0005(D)アイソタイプ対照またはα-La抗体で処理された、Doxyによって活性化されたFD外植片の代表的画像。(E)≧3個の核を持つ破骨細胞合胞体を産生する融合の数の定量。(n=4)(P=0.0054)。(F)Dからの≧3個の核を持つ破骨細胞合胞体の数の定量。(n=4)(P=0.0178)。BおよびDにおいて、矢じりは多核破骨細胞を表し、矢印は、Doxy添加後のFDに特有な線維細胞塊を表す。統計的有意性は、cでは、対応のないt検定で評価し、EおよびFでは対応のあるt検定で評価した。エラーバー=SEM。(G)破骨細胞形成の過程におけるLaタンパク質の図解。Laは、必要不可欠な遍在性RNA結合タンパク質として、すべての真核細胞の核において、その規範的な古くからの機能を果たす。理論に束縛されるものではないが、Laは、多核破骨細胞の形成においては、特殊化したさらなる機能を有する。破骨細胞生成において、Laは、循環単球が破骨細胞前駆体細胞になるにつれて、消散する。破骨細胞拘束がRANKLによって開始されるとLaは戻ってくるが、プロテアーゼによって迅速に切断されて、融合中の破骨細胞の表面にシャトル輸送される。融合中の破骨細胞の表面において、Laは、膜融合管理因子として、新規な機能を果たす。破骨細胞が、その生物学的機能にとっての「適正サイズ」に到達すると、表面Laは消失し、成熟破骨細胞の核へと戻っていく規範的な非切断型La(non-cleaved La)で置き換えられる。 図7Aの説明を参照されたい。 図7Aの説明を参照されたい。 図7Aの説明を参照されたい。 図7Aの説明を参照されたい。 図7Aの説明を参照されたい。 図7Aの説明を参照されたい。 図8A~8G: 単球由来破骨細胞の特徴づけおよび破骨細胞におけるLaタンパク質の同定。(A)図1aに示した条件からの破骨細胞分化マーカーCTSKのqPCR評価。(n=4)(P=0.0079)。(B)破骨細胞前駆体(M-CSF)と分化した破骨細胞(RANKL)とにおける蛍光骨吸収の定量(n=3)(P=0.0066)(RANKL後5日目)。(C)さまざまなサイズの合胞体状破骨細胞中の核の分率(n=4)(RANKL後5日目)。(D)図1bに見られるように、単一ゲル上で泳動した6つの別々のレーンにおいて分離された、6つの切り出されたバンドからの質量分析データ。各レーンは別個の細胞溶解物に相当した。細胞は、2人の健常ドナー(1および2)から収集し、M-CSFで6日間分化させ、M-CSFまたはM-CSF+RANKLで3日間、さらに分化させた。ドナー2からの細胞は、3つの独立した技術的レプリケート(2a~2c)において分化させた。各試料中のビメンチンも検出した。ビメンチンはLaと類似する分子量を有するが、ビメンチンレベルはM-CSF試料とRANKL試料との間で、ほぼ同等だったからである。この表は、タンパク質群(ペプチド)およびペプチドスペクトルマッチ(peptide spectrum match: PSM)に同定された明確に異なるペプチド配列の総数を示している。(E)Aに図示する破骨細胞生成段階からのSSB(La遺伝子)のqPCR評価(n=3)(P=0.027)。(F)RANKL添加の2日後と5日後とに優勢なLa種を評価する代表的トリス-グリシンウェスタンブロット。(G)RANKL適用の2~5日後の、形成されつつある破骨細胞におけるLaの代表的免疫蛍光像(α-La、Abcam)。膜透過処理を行い、記載の時点において、細胞をLaで染色した。統計的有意性は対応のあるt検定によって評価した。**=P<0.001。エラーバー=SEM。 図8Aの説明を参照されたい。 図8Aの説明を参照されたい。 図8Aの説明を参照されたい。 図8Aの説明を参照されたい。 図8Aの説明を参照されたい。 図8Aの説明を参照されたい。 外因性La構築物はヒト破骨細胞において類似するレベルで発現する。空の哺乳動物発現プラスミド、La D371A, D374A哺乳動物発現プラスミド、La 1-375哺乳動物発現プラスミドおよび「RNAΔ」La 1-375 Q20A_Y24A_D33I哺乳動物発現プラスミドをトランスフェクトしたヒト破骨細胞におけるLaシグナルのΔCq値。GAPDHをハウスキーピング転写産物対照として使用した。(n=2)。エラーバー=SEM。 図10A~10D: 多核破骨細胞の形成はLa切断に依存する。(A)カスパーゼ阻害剤z-VAD-fmkがヒト破骨細胞(RANKL後3~4日目)における切断型La(cleaved La)の産生を阻止できることを証明するウェスタンブロット。(B)活発な融合中(3日目)、および融合がほとんど完了した時(5日目)の、初代ヒト破骨細胞におけるα-FL La染色の代表的免疫蛍光像。(C)対照条件下(ビヒクル)、および汎カスパーゼ阻害剤z-VAD-fmkの適用によるLa切断の阻害後の、活発な融合中の初代ヒト破骨細胞(3日目)における、α-FL La染色の代表的免疫蛍光像。(D)cからの、3+個の核を持つ細胞における融合イベント数の定量。(n=3)(P=0.0455)。統計的有意性は対応のあるt検定によって評価した。*=P<0.05。エラーバー=SEM。 図10Aの説明を参照されたい。 図10Aの説明を参照されたい。 図10Aの説明を参照されたい。 LaのRNAi抑制は、破骨細胞生成的分化または破骨細胞融合に関与するタンパク質の定常状態転写産物レベルを変化させない。図2Aで述べたsiRNA処理後の、2つの破骨細胞分化マーカーNFATc1およびCTSK、ならびに破骨細胞融合関連転写産物シンシチン1(SYN1)、アネキシンA5(ANXA5)、S100A4およびANO6のqPCR評価。(n=4)。統計的有意性は対応のあるt検定で評価した。(P=0.4051、0.4679、0.45650、0.6172、0.7899および0.1129)。エラーバー=SEM。 図12A~12D: LaはAnx A5と相互作用する。(A)DTSSP表面架橋を伴う、または伴わない、RANKL添加の3日後の破骨細胞溶解物の免疫沈降。La超分子複合体を、マウスα-Laまたはアイソタイプ対照を介して免疫磁気ビーズ上に捕捉し、関心対象の標的に対して生じさせたウサギ抗体で、複合体をブロッティングした。(B)DTSSP表面架橋を伴う破骨細胞溶解物の免疫沈降。La(左)またはAnx A5(右)超分子複合体を、マウスα-Laまたはα-Anx A5を介して免疫磁気ビーズ上に捕捉し、関心対象の標的に対して生じさせたウサギ抗体を使って、複合体をブロッティングした。(C)リポソームに結合したタンパク質(下部画分)を可溶性タンパク質(上部画分)から分離することによって膜親和性を同定するためのアプローチの模式的図解。(D)Cに図解したようなリポソーム結合画分中の組換えLaとAnx A5の定量。(n=2)。エラーバー=SEM。 図12Aの説明を参照されたい。 図12Aの説明を参照されたい。 図12Aの説明を参照されたい。 図13A~13B: α-Laは、線維性骨異形成症(FD)における破骨細胞依存的骨量減少を抑制する。(A)食糧へのdoxy.添加前およびdoxy.添加の21日後の、FDマウスの後肢の代表的エックス線像。数字は、各骨についてFDの進展を定量するスコアを示し、このスコアは次に平均されて、bに提示するFDスコアを与える。(B)抗体注射を伴う、aのようなエックス線像でスコア化した、食糧へのdoxy.添加後のFDの進展の時間経過。 図14A~14C: La破骨細胞融合ドメインおよびペプチド阻害剤の同定。(A)La 1-375タンパク質モチーフの線形図。図の下の線は、La 188~375中のタンパク質モチーフを表すように設計された12本のオーバーラップペプチドを表す。(B)La 1-187またはLa 188-375の添加あり、またそのような添加はなしでの、融合イベント数の定量。RANKL後2日目と3日目の間に、組換えタンパク質を約40nMで一晩加えた。(C)Aと同じ、La 188~375(+対照)またはBに図解した12種のペプチドを使用。ペプチド2とペプチド9は、融合と多核破骨細胞の形成を阻害する。 図14Aの説明を参照されたい。 図14Aの説明を参照されたい。 図15A~15C: Laは破骨細胞融合装置アネキシンA5(Anx A5)と直接相互作用する。(A)RANKL3日後の破骨細胞溶解物から免疫磁気ビーズによって免疫沈降させた、La超分子タンパク質複合体。(B)PC:PSリポソーム、5mM Ca2+を含むPC:PSリポソーム、または5mM Ca2+を含むPCリポソームの膜上に濃縮された、組換えLaとAnx A5の定量。(C)ビオチン-Anx A5の磁気ストレプトアビジンプルダウン。レーン1=6×His-Laのみ、レーン2=プルダウン前の投入試料、およびレーン3=プルダウンおよび4回洗浄後。 図15Aの説明を参照されたい。 図15Aの説明を参照されたい。 図16A~16C: ソーティングネキシン10(SNX10)のsiRNA抑制は、破骨細胞表面上のLa含有量を増加させ、SNX10欠乏症に関連する乳児大理石骨病に特有の表現型である破骨細胞の過剰融合をもたらす。(A)48時間にわたるsiRNA処理後のα-La表面染色の定量。(B)48時間にわたるsiRNA処理後の合胞体あたりの核の定量。非標的化に対して正規化。+IgG/+α-Laは、6μg/ml抗体の添加を示す。(C)Laが破骨細胞表面に移動し、破骨細胞融合を停止させるためにLaが取り除かれる様子、大理石骨病におけるSNX10の喪失がLaの表面除去を妨害する様子、および過剰な表面Laの阻害が撹乱された破骨細胞の多核化を救出する様子の模式的表現。 図16Aの説明を参照されたい。 図16Aの説明を参照されたい。
配列表
列挙する核酸配列およびアミノ酸配列は、37C.F.R.1.822に規定されるとおり、ヌクレオチド塩基の標準的文字略号およびアミノ酸の3(または1)文字記号を使って示されている。各配列の一方の鎖だけが示されているが、表示された鎖への言及にはいずれも相補鎖が含まれると理解される。この配列表は、ASCIIテキストファイル[Sequence_Listing、2022年3月2日、12.7KB]として提出されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。添付の配列表において、下記の通りである:
SEQ ID NO: 1は、核局在化配列NLSを含む完全長ヒトLaタンパク質の例示的アミノ酸配列である。
SEQ ID NO: 2は、NLSを欠く、ヒトLaタンパク質のアミノ酸1~375の例示的アミノ酸配列である。
SEQ ID NO: 3は、ヒトLaタンパク質をコードする例示的核酸配列である。
SEQ ID NO: 4およびSEQ ID NO: 5は、Laに特異的な例示的アンチセンスRNAの核酸配列である。
SEQ ID NO: 6は、カスパーゼの活性部位の例示的アミノ酸配列である。
SEQ ID NO: 7は、ヒトLaタンパク質のアミノ酸188~375の例示的アミノ酸配列である。
SEQ ID NO: 8およびSEQ ID NO: 9は、Laタンパク質の例示的阻害ペプチドフラグメントのアミノ酸配列である。
SEQ ID NO: 10およびSEQ ID NO: 11は、それぞれペプチド2およびペプチド9をコードする例示的核酸配列である。
いくつかの態様の詳細な説明
破骨細胞は、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF}に応答したマクロファージ前駆体の逐次的産生と、核因子カッパB活性化受容体リガンド(RANKL)によるさらなる骨原性分化により、循環単球から誘導される(Feng et al., Bone Res.2013;1(1):11-26.Epub 2013/03/01.doi:10.4248/BR201301003.PubMed PMID:26273491;PMCID:PMC4472093)。破骨細胞融合中のプロテオミクス変化を調べている時に、破骨細胞生成には、SSB遺伝子によってコードされるループス自己抗原(Laタンパク質と呼ばれる)が関与することが見いだされた。Laは、豊富に存在する、見たところ遍在性のRNAシャペロンであり、あらゆるヒト細胞タイプおよび組織の、ほとんどもっぱら核内に観察される(Wolin et al., Annu Rev Biochem.2002;71:375-403.Epub 2002/06/05.doi:10.1146/annurev.biochem.71.090501.15000)。Laの核内保持は、そのC末の規範的な核局在化配列(NLS)による(Rosenblum et al., J Cell Biol.1998;143(4):887-99.Epub 1998/11/17.doi:10.1083/jcb.143.4.887.PubMed PMID:9817748)。数少ないいくつかの特殊な生物学的過程(例えばアポトーシス、ウイルス感染、血清飢餓)において、Laは、カスパーゼによって切断され、形質膜(plasma membrane: PM)の細胞外表面に輸送されると報告されている(Bachmann et al., Autoimmunity.1992;12(1):37-45.Epub 1992/01/01.doi:10.3109/08916939209146128;Bachmann et al., Autoimmunity.1991;9(2):99-107.Epub 1991/01/01.doi:10.3109/08916939109006745;Rutjes et al., Cell Death Differ.1999;6(10):976-86.Epub 1999/11/11.doi:10.1038/sj.cdd.4400571.5;Shiroki et al., J Virol.1999;73(3):2193-200.Epub 1999/02/11)。
本明細書に開示するとおり、Laは、破骨細胞生成においては、「遍在性」でもなければ核内でもなく、破骨細胞膜融合と骨吸収を双方向的に制御するので、Laを抑制すると、破骨細胞膜融合と骨吸収とが抑制され、Laを増加させると、破骨細胞膜融合と骨吸収とが増加する。Laは、初代ヒト単球には豊富に存在するが、破骨細胞前駆体へと分化すると消失する。破骨細胞生成の活性化後は、融合中の細胞の表面に検出される低分子量種として、Laが再び現れる。破骨細胞融合後は、低分子量Laが分解されて、完全長La種と置き換わり、それは合胞体状破骨細胞の核へと戻る。Laの低減、その切断の阻止、または特異的抗体による破骨細胞表面でのLaのブロッキングは、破骨細胞融合を阻害する。NLSを欠くLaタンパク質に相当し、したがってヒトLaタンパク質の低分子量切断型に相当する、組換えLa 1-375の添加、またはLa 1-375の過剰発現は、大規模な破骨細胞融合を激しく促進する。組換え完全長Laの添加も、破骨細胞融合を促進する。しかし、「切断不能型」La変異体の過剰発現には効果がない。なぜなら、これは切断されず、破骨細胞表面に到達することができないからである。破骨細胞の表面にあるLaを標的とすることによって破骨細胞サイズを撹乱すれば、初代ヒト破骨細胞の骨吸収傾向が双方向に制御される。
本明細書では、インビボおよびインビトロで破骨細胞融合を増加させるために、Laタンパク質(またはそのフラグメント、例えばSEQ ID NO: 7)、またはLaタンパク質の活性もしくは機能を増加させる作用物質、例えばLaをコードする核酸分子を使用できることが開示される。これらの方法は、骨吸収を増加させることが必要な対象における骨吸収を増加させる。対照的に、本明細書では、インビボおよびインビトロで破骨細胞融合を減少させるために、Laタンパク質の活性または機能を減少させる作用物質を使用できることが開示される。これらの方法は、骨吸収を減少させることが必要な対象における骨吸収を減少させる。
I. 用語
別段の注記がある場合を除き、技術用語は従来の用法に従って使用される。分子生物学においてよく使用される用語の定義は、Krebsら編、Lewin's genes XII、Jones&Bartlett Learning刊、2017に見いだされうる。本明細書において使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈からそうでないことがわかる場合を除き、単数と複数との両方を指す。例えば「タンパク質」(a protein)という用語は、単一のまたは複数のタンパク質を包含し、「少なくとも1つのタンパク質」という語句と等価であるとみなすことができる。本明細書において使用される「comprises」(を含む)という用語は「includes」(を含む)を意味する。別段の表示がある場合を除き、「約」は5%以内を示す。さらに、核酸またはポリペプチドに与えられるありとあらゆる塩基サイズまたはアミノ酸サイズおよびあらゆる分子量または分子質量の値は、別段の表示がある場合を除き、概数であり、説明のために記載されていると理解されるものとする。適切な方法と材料を以下に具体的に説明するが、本明細書記載のものと類似するか等価な数多くの方法および材料を使用することができる。矛盾が生じた場合は、用語の説明を含めて本明細書が優先される。また、材料、方法および実施例は単なる例示であって、限定を意図していない。さまざまな態様の検討が容易になるように、以下に、用語の説明を提供する。
投与: 選ばれた経路による、対象への、組成物(例えばLa活性を増加または減少させる作用物質を含有するもの)の導入。投与は局所的または全身的であることができる。例えば経路が静脈内である場合、組成物は、対象の静脈中に組成物を導入することによって投与される。同様に、経路が筋肉内である場合、組成物は、対象の筋肉中に組成物を導入することによって投与される。選ばれた経路が経口である場合、組成物は、組成物を摂取することによって投与される。本明細書に開示する方法において有用な例示的投与経路として、経口、注射(例えば皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、骨内および静脈内)、舌下、直腸、経皮(例えば外用)、鼻腔内、膣および吸入経路が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。投与は、対象の骨への投与など、局所的であることもできる。
動物: 生きている多細胞脊椎生物であり、このカテゴリーには、例えば哺乳類および鳥類が含まれる。哺乳動物という用語にはヒトと非ヒト哺乳動物とがどちらも含まれる。同様に、「対象」という用語にはヒト対象と獣医学的対象とがどちらも含まれる。
アミノ酸置換: 1つまたは複数の異なるアミノ酸による、ポリペプチド(例えばLa、例えばSEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 2)中のアミノ酸の置き換え。タンパク質配列との関連では、アミノ酸置換を変異ともいう。
抗体: エピトープ(例えばLaタンパク質またはそのフラグメントなどの抗原)を特異的に認識し結合する軽鎖免疫グロブリン可変領域または重鎖免疫グロブリン可変領域を少なくとも含むポリペプチド。これには、インタクトな免疫グロブリン、ならびに当技術分野において周知のそれらのバリアントおよび一部分、例えばFab'フラグメント、F(ab)'2フラグメント、一本鎖Fvタンパク質(「scFv」)、およびジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)が含まれる。scFvタンパク質は、免疫グロブリンの軽鎖可変領域と免疫グロブリンの重鎖可変領域とがリンカーで結合されている融合タンパク質であり、一方、dsFvでは、それらの鎖の会合を安定化するためのジスルフィド結合を導入する変異が、それらの鎖に加えられている。この用語には、キメラ抗体(例えばヒト化マウス抗体)、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば二重特異性抗体)などの遺伝子操作型も含まれる。Pierce Catalog and Handbook, 1994-1995(Pierce Chemical Co.、イリノイ州ロックフォード)、Kuby, J.、Immunology、第3版、W.H.Freeman&Co.、ニューヨーク、1997も参照されたい。
典型的には、免疫グロブリンは重鎖と軽鎖とを有する。重鎖および軽鎖は、それぞれ、定常領域と可変領域とを含有する(これらの領域は「ドメイン」としても公知である)。重鎖可変領域と軽鎖可変領域とは、共同して、抗原に特異的に結合する。軽鎖可変領域と重鎖可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる3つの超可変領域によって分断された「フレームワーク」領域を含有する。フレームワーク領域とCDRの範囲は画定されている(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、米国保健福祉省、1991参照。この文献は参照により本明細書に組み入れられる)。Kabatデータベースは現在はオンラインで維持されている。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内では比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域は、構成要素である軽鎖および重鎖の複合的フレームワーク領域であって、三次元空間中でCDRを位置づけ、整列させるのに役立つ。
抗原のエピトープへの結合はCDRが主として担っている。各鎖のCDRは、典型的には、N末から順に番号付けされて、CDR1、CDR2およびCDR3と呼ばれ、典型的には、その特定CDRが位置する鎖によっても識別される。したがって、VH CDR3は、それが見いだされる抗体の重鎖の可変ドメイン中に位置し、一方、VL CDR1は、それが見いだされる抗体の軽鎖の可変ドメインからのCDR1である。
「VH」または「VH」ヘの言及は、Fv、scFv、dsFvまたはFabのものを含む免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。「VL」または「VL」とは、Fv、scFv、dsFvまたはFabのものを含む免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
「モノクローナル抗体」とは、Bリンパ球の単一クローンによって産生されるか、または単一の抗体の軽鎖遺伝子と重鎖遺伝子とがトランスフェクトされた細胞によって産生される、抗体である。モノクローナル抗体は、例えば骨髄腫細胞と免疫脾臓細胞との融合でハイブリッド抗体形成細胞を作ることなど、当業者に公知の方法によって作製される。モノクローナル抗体にはヒト化モノクローナル抗体が含まれる。
「ヒト化」免疫グロブリンは、ヒトフレームワーク領域と非ヒト(例えばマウス、ラットまたは合成)免疫グロブリンからの1つまたは複数のCDRとを含む免疫グロブリンである。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは「アクセプター」と呼ばれる。一態様において、ヒト化免疫グロブリンでは、すべてのCDRがドナー免疫グロブリンに由来する。定常領域が存在する必要はないが、定常領域が存在する場合、それはヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一、すなわち少なくとも約85~90%同一、例えば約95%以上同一でなければならない。したがって、ヒト化免疫グロブリンのすべての部分は、おそらくはCDRを除いて、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応部分と実質的に同一である。「ヒト化抗体」は、ヒト化軽鎖免疫グロブリンとヒト化重鎖免疫グロブリンとを含む抗体である。ヒト化抗体は、CDRを提供するドナー抗体と同じ抗原に結合する。ヒト化免疫グロブリンまたはヒト化抗体のアクセプターフレームワークは、ドナーフレームワークから採用されたアミノ酸による限られた数の置換を有しうる。ヒト化モノクローナル抗体その他のモノクローナル抗体は、抗原結合機能または他の免疫グロブリン機能に対して実質的な効果を有しないさらなる保存的アミノ酸置換を有することができる。ヒト化免疫グロブリンは遺伝子操作を利用して構築することができる(例えば米国特許第5,585,089号参照)。
「アンタゴニスト抗体」または「阻害抗体」は、その標的ポリペプチド、例えばLaタンパク質の生物学的活性のうちのいずれかを妨害する抗体である。
骨疾患: 骨の強度、機能および/または完全性に影響を及ぼす、例えば骨の引張強さおよびモジュラスを減少させる、任意の疾患、欠陥または障害を包含する。骨疾患の例には、骨粗鬆症などの骨脆弱性疾患や、異常な骨形成をもたらす遺伝子疾患、例えばマッキューン・オルブライト症候群(McCune-Albright syndrome: MAS)および骨形成不全などがあるが、それらに限定されるわけではない。骨疾患の他の例には、骨の悪性疾患および/またはがん、例えば骨肉腫などの肉腫が含まれる。他の骨疾患には、骨パジェット病、線維性骨異形成症、関節リウマチ 骨髄炎および大理石骨病などがある。
骨治癒(Bone Healing)および骨折治癒(Fracture Healing): 骨は他の結合組織と比べるとユニークな方法で治癒(融合)する。骨は、瘢痕組織を発達させるのではなく、自分自身を完全に再生させる能力を有する。骨折の大部分は、膜内骨化と軟骨内骨化の組合せが関与する二次性骨折治癒によって治癒する。理論に束縛されるものではないが、骨折治癒の道筋には、5つの別々の治癒段階が関与すると、一般に考えられている。これには、血腫が形成され炎症が起こる初期段階、軟骨の形成が始まり血管新生が信仰する後続段階、その次に、軟骨石灰化、軟骨吸収および骨沈着、そして最終的に、より長期的な骨リモデリング段階という、3つの逐次的段階が含まれる。一般に、骨折治癒の過程には、拘束された骨前駆細胞と拘束されていない未分化の間葉系幹細胞とが寄与する。膜内骨化によって形成される骨は、初期に骨折部位から離れたところに見いだされ、硬仮骨の形成をもたらして、まず軟骨を形成することなく、直接的に骨を形成する。一般に、骨折の2週間後には細胞増殖が減退し、肥大軟骨細胞が軟骨仮骨中の主要細胞タイプになる。その結果生じる軟骨内性骨は、骨折部位に隣接して形成される。
骨吸収: 破骨細胞が骨中の組織を破壊して無機質を放出させる。破骨細胞は一般的には骨の外層上、骨膜のすぐ下に存在する。破骨細胞が骨単位に付着するとこの過程が始まる。次に破骨細胞はその細胞膜の陥入を誘導し、それ自身と骨表面との間に孤立した酸性化微小環境を形成し、吸収過程において重要なコラゲナーゼ、カテプシンK、その他の酵素を分泌する。破骨細胞が石灰化した骨を掘り進むにつれて、高レベルのカルシウム、マグネシウム、リン酸およびコラーゲンの産物が細胞外液に放出されることになる。
ビスホスホネート: 骨量減少を遅くすることによって働く薬物の一クラス。構造上、ビスホスホネートは、2つのリン酸基がエステル化によって連結された天然化合物である無機ピロリン酸(PPi)の化学的に安定な誘導体である。ビスホスホネートは骨塩に対して極めて高い親和性を有する。それらはヒドロキシアパタイト結晶に結合するからである。したがって、ビスホスホネートの骨格内貯留は、ヒドロキシアパタイト結合部位が利用可能かどうかに依存する。ビスホスホネートは、骨格ターンオーバーの加速を特徴とする状態においてよく見られるように、骨リモデリングが活発な部位に優先的に組み込まれる。ビスホスホネートは、骨表面上のヒドロキシアパタイト結合部位に付着すること、ならびに破骨細胞の寿命を短縮しおよび/または破骨細胞前駆体が骨と会合するのを妨げることによって、骨吸収を抑制する。ビスホスホネートについては、例えばDrake et al., Mayo Clin.Proc.83:1032-1045, 2008に総説がある。いくつかの例において、ビスホスホネートは、本明細書記載の方法と組み合わせて使用される。
Cas9: DNAを切断することができるRNAガイドDNAエンドヌクレアーゼ酵素。Cas9は、二重らせんの各鎖用に1つずつ、2つの活性切断部位(HNHおよびRuvC)を有する。この開示には触媒的に不活性な(不活化)Cas9(dCas9)も包含される。いくつかの例において、dCas9は、以下の点変異のうちの1つまたは複数を含む: D10A、H840A、およびN863A。
Cas9の核酸配列とタンパク質配列は公開されている。例えばGenBank(登録商標)アクセッション番号CP012045.1のヌクレオチド796693..800799およびCP014139.1のヌクレオチド1100046..1104152はCas9核酸を開示しており、GenBank(登録商標)アクセッション番号AMA70685.1およびAKP81606.1はCas9タンパク質を開示している。いくつかの例において、Cas9は、不活化型Cas9(dCas9)、例えばヌクレアーゼ欠損であるもの(例えばGenBank(登録商標)アクセッション番号AKA60242.1およびKR011748.1に示されているもの)である。特定の例において、Cas9は、そのような配列に対して少なくとも80%の配列同一性、例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し、DNA切断能を保っている。
カスパーゼ: システイン-アスパラギン酸プロテアーゼ、システインアスパルターゼまたはシステイン依存性アスパラギン酸指向性プロテアーゼである酵素。カスパーゼは、プログラム細胞死において極めて重要な役割を果たすプロテアーゼ酵素のファミリーである。これらは、その活性部位中のシステインがアスパラギン酸残基の後ろでのみ標的タンパク質を求核的に攻撃して切断するという、その特異的システインプロテアーゼ活性ゆえに、カスパーゼと呼ばれている。
cDNA(相補的DNA): 内部の非コードセグメント(イントロン)と転写を決定する制御配列とを欠く一片のDNA。cDNAは、細胞から抽出されたメッセンジャーRNAからの逆転写によって、実験室で合成される。
保存的バリアント: 「保存的」アミノ酸置換は、ポリペプチドの活性、例えば破骨細胞融合を調節するLaタンパク質の能力に、実質的に影響を及ぼさず、またはそれを減少させることのない置換である。保存的置換の非限定的な具体例には、以下の例が含まれる。
Figure 2024512305000002
保存的バリエーションという用語には、そのポリペプチドが無置換(親)ポリペプチドと同じ親和性で結合するという条件の下で、無置換親アミノ酸の代わりに置換アミノ酸を使用することも含まれる。非保存的置換は、ポリペプチドの能力を低減する置換である。
~から本質的になるおよびからなる: 指定されたアミノ酸配列から本質的になるアミノ酸配列を含むポリペプチドは、いかなる追加アミノ酸残基も含まない。ただし、ポリペプチド中の残基は、非ペプチド構成要素、例えばラベル(例えば蛍光ラベル、放射性ラベルまたは固体粒子ラベル)、糖類または脂質を含むように修飾することができ、ポリペプチドのN末またはC末はコンジュゲーション化学用のリンカーに(例えばペプチド結合で)接合することができる。指定されたアミノ酸配列からなるまたはそれから本質的になるポリペプチドは、グリコシル化されているか、またはアミド修飾を有することができる。指定されたアミノ酸配列からなるポリペプチドは、いかなる追加アミノ酸残基も含まず、追加の生物学的構成要素、例えば核酸 脂質、糖類も含まないし、ラベルも含まない。
ポリペプチドのN末またはC末は、コンジュゲーション化学用のリンカーとの関連において、異種アミノ酸、例えばペプチドタグ、またはシステイン(またはその他の)残基に(例えばペプチド結合で)接合することができる。例えば第2の配列からなる異種ポリペプチドに(ペプチド結合を介して)連結された第1の配列からなる第1のポリペプチドを含有する融合タンパク質の場合のように、特定アミノ酸配列からなるまたはそれから本質的になるポリペプチドは、そのN末もしくはC末またはリンカーを介して、独立した明確に異なる異種ポリペプチドに連結することができる。別の一例において、特定アミノ酸配列からなるまたは特定アミノ酸配列から本質的になるポリペプチドのN末またはC末は、1つまたは複数の追加異種ポリペプチドにさらに連結されるペプチドリンカーに、(ペプチド結合を介して)連結することができる。さらなる一例において、特定アミノ酸配列からなるまたはそれから本質的になるポリペプチドのN末またはC末は、ポリペプチドのさらなる修飾または操作を容易にする1つまたは複数のアミノ酸残基、例えばヒスチジンタグに連結することができる。
対照: 参照基準。いくつかの態様において、対照は、健常患者(例えば骨疾患を持たない患者)、または担体、非標的化核酸配列、スクランブル核酸/アミノ酸配列で処置された対象、または健常患者からの無処置細胞から得られた陰性対照試料である。別の態様において、対照は、活性作用物質で処置された患者から得られた陽性対照試料である。さらなる別の態様において、対照は、歴史的対照または標準参照値もしくは標準参照値範囲(例えば以前に試験された対照試料、例えば予後またはアウトカムがわかっている患者の群、またはベースライン値もしくは正常値を表す試料群)である。
試験試料と対照の間の相違は、増加である場合も、逆に減少である場合もある。相違は、定性的な相違であっても、定量的相違、例えば統計的有意差であってもよい。いくつかの例において、相違は、対照に対して、少なくとも約5%、例えば少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、または500%超の、増加または減少である。
CRISPR(Clustered Regularly InterSpaced Short Palindromic Repeats(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート))/Cas(CRISPR associated protein(CRISPR関連タンパク質))編集系: 細菌系に基づく操作されたヌクレアーゼ系であって、ゲノム操作に使用される。これは、部分的に、多くの細菌および古細菌の適応免疫応答に基づいている。このような方法を使用することで、例えば標的DNA配列または標的RNA配列(例えばLa核酸配列)中の特定の場所で、遺伝物質を付加、除去または改変することが可能になる。したがってCRISPR/Cas系は、例えば標的DNAまたは標的RNAを検出し、標的DNAまたは標的RNAを任意の所望の場所で改変し、または任意の所望の場所で標的DNAまたは標的RNAを切断するために、核酸ターゲティング(例えばDNAまたはRNA)に使用することができる。したがってこのような方法は、例えば発現をサイレンシングするための変異を導入すること、例えばLa遺伝子をノックアウトすることによって、Laタンパク質の発現を改変するために使用することができる。
一例において、この方法はゲノムなどのDNAを編集し、Cas9ヌクレアーゼを使用する。Cas9ヌクレアーゼはDNAを切断して、crRNA転写産物内に含有される20ヌクレオチドの相補鎖配列によって指定される部位での二本鎖切断点に平滑端を生成する。したがってCRISPR/Cas系は、細胞のゲノム中の所望の標的に二本鎖切断点を作り出し、その細胞に内在する機構を利用して、誘導された切断点を相同組換え修復(HDR)または非相同末端連結(NHEJ)によって修復するために、操作することができる。別の一例において、この方法はLa RNAなどのRNAを編集し、Cas13dヌクレアーゼを使用する。Cas13dヌクレアーゼはRNAを切断する(例えばWO 2019/040664を参照されたい)。
Casヌクレアーゼの非限定的な例には、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても公知である)、Cas10、Cas13d、Cpf1、C2c3、C2c2およびC2c1Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Cpf1、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、それらのホモログが含まれる。
縮重バリアント: あるペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、遺伝暗号の結果として縮重している配列を含むもの。天然のアミノ酸は20種類あり、その大半が2つ以上のコドンによって指定されている。したがって、縮重ヌクレオチド配列は、そのヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列が不変である限り、すべて、この開示に含まれる。
発現制御配列: それに機能的に連結されている異種核酸配列の発現を調節する核酸配列。発現制御配列は、その発現制御配列が核酸配列の転写と、適宜、翻訳とを制御し調節するのであれば、核酸配列に機能的に連結されている。したがって発現制御配列は、適当なプロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質コード遺伝子の前の開始コドン(すなわちATG)、イントロンのためのスプライシングシグナル、mRNAの適正な翻訳を可能にするための正しい遺伝子読み枠の維持、および停止コドンを含むことができる。「制御配列」という用語は、最低でも、その存在が発現に影響を及ぼすことのできる構成要素を含み、その存在が有益である追加の構成要素、例えばリーダー配列および融合パートナー配列も含むことができる。発現制御配列はプロモーターを含むことができる。
プロモーターは、転写を指示するのに十分な最小配列である。また、プロモーター依存的遺伝子発現を、細胞タイプ特異的であるか、組織特異的であるか、または外からのシグナルもしくは作用物質による誘導が可能であるように制御可能にするのに足りるプロモーター要素も含まれ、そのような要素は遺伝子の5'領域または3'領域に位置しうる。恒常性プロモーターと誘導性プロモーターはどちらも含まれる(例えばBitter et al., 1987, Methods in Enzymology 153, 516-544参照)。例えば細菌系においてクローニングする場合は、バクテリオファージラムダのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp-lacハイブリッドプロモーター)などの誘導性プロモーターを使用することができる。一態様において、哺乳動物細胞系でクローニングする場合は、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えばメタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えばレトロウイルス長末端反復;アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を使用することができる。組換えDNA技法または合成技法によって作製されるプロモーターも、核酸配列の転写をもたらすために使用することができる。
線維性骨異形成症: 骨を病的に侵食する、数が多すぎかつサイズが大きすぎる破骨細胞の異所性形成ゆえに、骨が失われる障害。次に、正常な骨および骨髄が線維組織で置き換えられ、弱くて膨脹を起こしやすい骨の形成をもたらす。結果として、大半の合併症は骨折、変形、機能障害および痛みに起因することになる。線維性骨異形成症には、1つの骨(単骨性)、複数の骨(多骨性)またはすべての骨(汎骨性)を侵すものがあり、単独で生じるか、または皮膚カフェオレ斑および機能亢進性内分泌疾患を併発して、マッキューン・オルブライト症候群と呼ばれる。線維性骨異形成症は、20q13.2-q13.3に位置してGs G共役タンパク質受容体のαサブユニットをコードするGNAS遺伝子座の接合後活性化変異に起因するモザイク疾患である。x線では、線維性骨異形成症は、骨中の泡状溶解性病変または磨りガラス状の外観として現れる。
異種: 異なる遺伝源に由来し、したがって自然界でそれらの生物学的構成要素が一緒に見いだされることはない。それらの構成要素は宿主細胞、遺伝子またはプロモーターなどの制御領域でありうる。異種構成要素が自然界で一緒に見いだされることはないが、ある遺伝子にとって異種であるプロモーターをその遺伝子に連結した場合など、それらが一緒に機能することはできる。
宿主細胞: ベクターがその中で増殖し、そのDNAを発現させることができる細胞。細胞は原核細胞または真核細胞でありうる。細胞は哺乳動物細胞、例えばヒト細胞であることができる。この用語は、対象宿主細胞の任意の子孫も包含する。複製中に起こる変異が存在しうるので、すべての子孫が親細胞と同一であるとは限らないことは理解される。しかし、「宿主細胞」という用語が使用される場合は、そのような子孫も含まれる。
疾患を阻害または処置する: 疾患、例えば限定するわけではないが、骨粗鬆症または大理石骨病を処置するとは、疾患の完全な進展を阻害することを指す。いくつかの例において、疾患を阻害するとは、その特定疾患の症状を少なくすることを指す。「処置」とは、疾患またはその疾患に関係する病理学的状態の徴候または症状を改善させる治療的介入を指す。処置は、任意の客観的または主観的パラメータ、例えば軽快、寛解、症状の減少またはその状態を患者が耐えやすいものにすること、変性または減退の速度を遅くすること、または変性の最終点の消耗性を減じること、対象の身体状態を改良することなど、外傷、病態または状態の減弱または改善の成功または成功のしるしを使って測定することができる。処置は、客観的または主観的パラメータ、例えば理学的検査または生物学的試験の結果などによって評価されうる。
阻害性核酸分子: アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、マイクロRNA(miRNA)、shRNAまたはリボザイムなどといった、阻害性RNA分子および阻害性DNA分子を包含する。Laをコードする核酸を特異的に標的としてその発現を制御する、任意のタイプのアンチセンス化合物の使用が想定される。Laアンチセンス化合物は、La核酸分子と特異的にハイブリダイズしてその発現を調節する化合物である。これらの化合物は、一本鎖化合物、二本鎖化合物、環状化合物、分岐化合物またはヘアピン化合物として導入することができ、内部または末端のバルジまたはループなどといった構造要素を含有することができる。二本鎖アンチセンス化合物は、二本鎖化合物を形成する2本の鎖であるか、または十分な自己相補性を持つのでハイブリダイゼーションと完全にまたは部分的に二本鎖である化合物の形成とが可能な一本鎖であることができる。いくつかの例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドがLaタンパク質をコードするmRNAにハイブリダイズし、その結果生じた二重鎖がRNaseHによって認識されることで、mRNAの切断が起こるような、一本鎖アンチセンス化合物である。いくつかの例において、miRNAは、RNAi経路によって遺伝子発現を制御する、mRNA分子に少なくとも部分的に相補的な、例えば約21~23ヌクレオチド長の一本鎖RNA分子である。さらなる例において、shRNAは、タイトなヘアピンを形成してsiRNAに切断される、RNAオリゴヌクレオチドである。siRNA分子は一般に約15~40ヌクレオチド長、例えば20~25ヌクレオチド長であり、3'端または5'端に0~5ヌクレオチドのオーバーハングを有してもよいし、平滑末端であってもよい。一般に、siRNAのうちの1本の鎖は、Laタンパク質をコードする核酸分子に少なくとも部分的に相補的である。La遺伝子を特異的に標的とするアンチセンス化合物は、mRNA配列などの標的ヌクレオチド配列に相補的な化合物を設計することによって調製することができる。アンチセンス化合物は、Laタンパク質をコードする核酸分子に100%相補的でなくても、標的に特異的にハイブリダイズしてその発現を制御することができる。例えばアンチセンス化合物、または二本鎖化合物であるなら、その化合物のアンチセンス鎖は、Laタンパク質をコードする核酸分子(例えばSEQ ID NO: 3)に、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%相補的であることができる。アンチセンス化合物を特異性に関してスクリーニングする方法は公知である(例えば米国特許出願公開第2003-0228689号参照)。
単離された: 「単離された」生物学的構成要素(例えば核酸分子またはタンパク質または細胞小器官)は、その構成要素を天然に含んでいる、その生物の細胞中の他の生物学的構成要素、すなわち他の染色体および染色体外のDNAおよびRNA、タンパク質ならびに細胞小器官から、実質的に分離または精製されている。「単離され」ている核酸およびタンパク質には、標準的精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。この用語は、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸およびタンパク質ならびに化学合成された核酸およびタンパク質も包含する。
ループス自己抗原(La)タンパク質: インビボでは、Laタンパク質は、全身性エリテマトーデス患者およびシェーグレン症候群患者において自己抗原として振る舞うことが多い47kDaポリペプチドである。Laタンパク質は主として細胞の核内に存在する。核内では、Laタンパク質はtRNAの産生に関与し、新生転写産物のUリッチな3'UTRに結合してそれらのフォールディングおよび成熟を支援することで、RNAポリメラーゼIII(RNAP III)転写因子として作用している。細胞質では、Laタンパク質は特異的mRNAの翻訳を容易にすることで、翻訳因子として作用する。RNA結合タンパク質(RBP)として、Laは、タンパク質合成をコントロールすることが公知である5'末オリゴピリミジン(5'TOP)モチーフを含有するmRNAのサブセットと会合する。特異的RNA分子クラスへのLaの結合は、それらの下流プロセスを制御し、それらをエンドヌクレアーゼ消化から保護し、核からのそれらの輸出をとりまとめる。本明細書では、Laタンパク質が破骨細胞融合を調節することを開示する。
例示的Laタンパク質配列と、これらのタンパク質配列をコードする核酸配列は、本明細書に開示すると共に、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NP_003133、2021年2月15日、NM_003142、2021年2月15日、およびNM_001294145、2021年2月15日でも開示されており、これらはいずれも参照により本明細書に組み入れられる。
ラベル: 別の分子に、当該分子の検出を容易にするために直接または間接的にコンジュゲートされる、検出可能な化合物または組成物。ラベルの非限定的具体例として、蛍光タグ、酵素結合(enzymatic linkage)および放射性同位体が挙げられる。
哺乳動物: この用語はヒトと非ヒト哺乳動物とをどちらも包含する。同様に、「対象」という用語にはヒト対象と獣医学的対象とがどちらも含まれる。
調節する: 統計的に有意であるように改変すること。調節は増加または減少であることができる。当業者は、パラメータの有意な増加または減少を決定するための適当なアッセイを特定することができる。これにはスチューデントのt検定または対応のある比t検定(paired ratio t test)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。例示的方法は実施例の項に記載する。
骨芽細胞: 骨形成を担う単核細胞。骨芽細胞は、主にI型コラーゲンで構成される類骨を産生する。骨芽細胞は類骨マトリックスの石灰化も担っている。骨は、骨を作る骨芽細胞と骨を吸収する破骨細胞とによって常に作り直されている動的組織である。骨芽細胞は、骨膜および骨髄中に位置する骨前駆細胞から生じる。骨前駆細胞は、マスター制御転写因子Cbfa1/Runx2を発現する未成熟前駆細胞である。骨前駆細胞がひとたび骨芽細胞への分化を開始すると、それらは、オステリックス(osterix)、コラーゲン1型、アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、オステオポンチンおよびオステオネクチンを含む、ある範囲のマーカーを発現し始める。
破骨細胞: 骨組織の石灰化したマトリックスを骨吸収の過程および類骨の有機相の分解によって除去することで、骨組織を取り除く、骨細胞の1タイプ。破骨細胞は単球-マクロファージ細胞系の細胞の融合によって形成される。破骨細胞生成は、前駆体の生残、単核前破骨細胞への分化、多核成熟破骨細胞への融合を含む数段階で構成される。古典的には、破骨細胞融合は、4つの基本的段階、(1)誘引/遊走、(2)認識、(3)細胞間接着、および(4)膜融合を含む。破骨細胞は酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼとカテプシンKの高発現を特徴とし、破骨細胞生成の過程は、特異的破骨細胞生成転写因子(例えば活性化T細胞核因子細胞質1(nuclear factor of activated T-cells, cytoplasmic 1))の検出によって評価される。1つの破骨細胞は3~100個の核を含有することができ、直径は10~300μMとさまざまである。ヒトの場合、成熟破骨細胞は典型的には4~8個/細胞の核を有する。
骨細胞: 自身の骨小窩(骨内の小腔)に収納されている成熟非分裂骨細胞。骨細胞は骨芽細胞に由来し、それらは骨細胞系譜の成熟の最終段階を表す。それらは骨芽細胞より活性が低く、骨基質の正味の増加の原因にはならないが、マトリックスの維持、通常のターンオーバーにとって不可欠であり、破骨細胞の産生において極めて重要な役割を果たす。骨細胞の細い細胞質突起は、細管(骨中の小さなチャネル)を介して、互いにおよび骨芽細胞に付着した状態を保つ。
骨髄炎: 骨の炎症。症状には、表面の発赤、発熱および脱力を伴う特定の骨の痛みが含まれうる。通常、原因は細菌感染であるが、真菌感染である場合もある。骨髄炎は、骨を吸収する破骨細胞の形成および活性の増加ならびに骨量減少を伴う。
大理石骨病: 骨が硬化して緻密化する稀な遺伝性障害である、大理石骨病(marble bone disease)またはアルバース-シェーンベルグ病(Albers-Schoenberg disease)としても公知の疾患。大理石骨病は骨が溶解したり折れたりする原因になりうる。ヒト大理石骨病は、さまざまな分子病変およびある範囲の臨床的特徴を包含する不均一な障害であるが、いずれの形態も破骨細胞に唯一の病原的つながり(pathogenic nexus)を持つ。大理石骨病を持つ対象は骨吸収が不足しているので、吸収される骨が少なすぎ、作り出される骨が過剰になる。大理石骨病は2つの障害群、すなわち常染色体顕性大理石骨病と、より重症で時には致命的な、乳児悪性大理石骨病としても公知の常染色体潜性大理石骨病(autosomal recessive osteopetrosis: ARO)とに分類されている(Sobacchi et al., Nat Rev Endocrinol.9, 522-536、Penna et al.Autosomal recessive osteopetrosis: mechanisms and treatments.Dis Model Mech.2021 May 1;14(5):dmm048940.doi:10.1242/dmm.048940 PMCID:PMC8188884;PMID:33970241を参照されたい)。ARO障害は出生数250,000例に1例の発生率を有し、RANKLまたはその受容体RANKの発現をそれぞれ損なうTNFSF11またはTNFRSF11Aをコードする遺伝子の機能喪失型変異を含む、破骨細胞の形成に関与するさまざまな遺伝子中の変異から生じる(低破骨細胞性(osteoclast-poor)大理石骨病)。高破骨細胞性大理石骨病(osteoclast-rich osteopetrosis)と呼ばれる、高破骨細胞性大理石骨病障害のもう一つのタイプは、V型プロトンATPアーゼまたは塩化物イオン電位作動性チャネル7または破骨細胞生成関連膜貫通タンパク質1をそれぞれコードするTCIRG1またはCLCN7またはOSTM1遺伝子中の変異が引き起こす破骨細胞機能の欠陥から生じる。ほとんどのARO症例は、タンパク質ソーチンネキシン10(Sortin Nexin-10)をコードするSNX10中の変異に関連する5%のARO症例を含めて、不活性な破骨細胞の存在が引き起こす(「高破骨細胞性ARO」)。Sobacchiら, 前掲、Pennら, 前掲参照)。低破骨細胞性大理石骨病は例えばPennaら, 前掲などに開示されている。
骨粗鬆症: 低い骨量、骨の脆弱性につながる骨組織の微細構造の劣化、そしてその結果として起こる骨折リスクの増加を特徴とする全身性骨格障害。高齢者ではこれが骨の破損の最も一般的な理由である。骨粗鬆症の主な帰結は、骨折リスクの増加である。骨粗鬆症性骨折は、健康な人々であれば通常は骨折しない状況で起こり、それゆえにそれらは脆弱性骨折とみなされる。典型的な脆弱性骨折は脊柱、肋骨、股関節および手首で起こる。世界保健機関(WHOは、骨粗鬆症を、参照基準(すなわち一般に約30歳の健康な若年成人)の骨密度より2.5標準偏差低い骨密度と定義している。「骨減少症」とは、骨粗鬆症が存在するかどうかに関わりなく、エックス線撮影技法などの適切な診断手順によって検出される、骨粗鬆症ほど重症ではない骨塩密度の減少を指す。WHOは、骨減少症を、上述のような参照基準の骨密度を1標準偏差~2.5標準偏差下回る骨密度と定義している。
オープンリーディングフレーム(ORF): 内部終止コドンを全く伴わずにアミノ酸をコードする一続きのヌクレオチドトリプレット(コドン)。これらの配列は通常はタンパク質に翻訳される。
機能的に連結される: 第1核酸配列が第2核酸配列と機能的な関係に配置されている場合、第1核酸配列は第2核酸配列と機能的に連結されている。例えば、プロモーターが、コード配列の、例えばポリペプチドをコードする配列の、転写または発現に影響を及ぼすのであれば、そのプロモーターはそのコード配列に機能的に連結されている。一般に、機能的に連結されたDNA配列は連続しており、2つのタンパク質コード領域を接合する必要がある場合には、同じ読み枠にある。
骨パジェット病: 通常は背骨、骨盤、肢の長骨および頭骨に見られる慢性骨障害であり、患部では骨の過剰な破壊と再成長が起こる。これらの対象における骨は、数が多すぎかつサイズがあまりに大きすぎる破骨細胞の異所性形成によって過剰に侵食されるからである。次に、骨は急速すぎる再成長を起こし、骨は通常よりも大きくかつ柔らかく、形が悪くなることもあり、容易に骨折する。これらの対象は、例えば本明細書において提供される方法を併用して、ビスホスホネートおよび/またはカルシトニンで処置することができる。この障害の第一段階は、病巣領域における骨吸収の増加を特徴とし、放射線検査では溶骨性病変が、一般に検出される異常である。破骨細胞は通常の成人破骨細胞より大きく、核の数も多い。過剰な骨吸収に続いて、骨形成の増加が起こるが、これは、正常に見える骨芽細胞数の増加を特徴とする段階である。しかし急速に沈着した骨は外観が構造的に乱れており、柔らかく多孔性の特徴を示し、それが骨格変形および骨折リスクの増加の説明になる。骨リモデリング速度の増加を反映して、血清アルカリホスファターゼレベルならびにヒドロキシプリンとピリジノリンの尿中排泄レベルの上昇がある。
核酸分子: ホスホジエステル結合、その関連天然構造バリアントおよび合成非天然類似体によって連結された、ヌクレオチド単位(リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、その関連天然構造バリアントおよび合成非天然アナログ)で構成されるポリマー。したがってこの用語には、ヌクレオチドとそれらの間の連結が、非天然合成類似体、例えば限定するわけではないが、ホスホロチオエート、ホスホラミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)などを含むヌクレオチドポリマーが含まれる。そのようなポリヌクレオチドは、例えば自動DNA合成装置を使って合成することができる。「オリゴヌクレオチド」という用語は、典型的には、一般的には約50ヌクレオチド以下の短いポリヌクレオチドを指す。ヌクレオチド配列がDNA配列(すなわちA、T、G、C)によって表される場合、それには、「T」が「U」で置き換えられたRNA配列(すなわちA、U、G、C)も含まれることは、理解されるだろう。
本明細書では、ヌクレオチド配列を記述するために従来の注釈を使用する。すなわち、一本鎖ヌクレオチドの左端は5'端であり、二本鎖ヌクレオチド配列の左手方向を5'方向という。新生RNA転写産物への5'→3'ヌクレオチド付加の方向を、転写方向という。mRNAと同じ配列を有するDNA鎖を「コード鎖」という。核酸配列上で関心対象の配列の5'側に位置する配列を「上流配列」といい、関心対象の配列の3'側に位置するヌクレオチド配列を「下流配列」という。
「コードする」とは、生物学的プロセスにおいて、所定のヌクレオチド配列(例えばrRNA、tRNAおよびmRNA)または所定のアミノ酸配列のどちらか一方とそれがもたらす生物学的性質とを有する他のポリマーおよび高分子を合成するためのテンプレートとして役立つという、遺伝子、cDNAまたはmRNAなどといったポリヌクレオチド中の特定ヌクレオチド配列の固有の性質を指す。したがって、細胞または他の生物学的な系において、ある遺伝子によって産生されるmRNAの転写および翻訳がタンパク質を産生するのであれば、その遺伝子はタンパク質をコードしている。コード鎖、すなわちmRNA配列と同一であって通常は配列表に掲載されているヌクレオチド配列と、遺伝子またはcDNAの転写にテンプレートとして使用される非コード鎖は、どちらも、タンパク質またはその遺伝子もしくはcDNAの他の産物をコードしているということができる。別段の明示がある場合を除き、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重物であって同じアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列をすべて包含する。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列はイントロンを含みうる。
「組換え核酸」とは、例えば野生型遺伝子と比較して、天然には一つに接合されていることのないヌクレオチド配列を有する核酸を指す。これには、適切な宿主細胞を形質転換するために使用することができる増幅されたまたは組み立てられた核酸を含む核酸ベクターが含まれる。一例において、組換え核酸は、天然でない配列を有するもの、または本来であれば分離されている2つの配列セグメントの人工的組合せによって作られる配列を有するものである。この人工的組合せは、多くの場合、化学合成によって達成されるか、または単離された核酸セグメントの人工的操作によって、例えば遺伝子操作の技法によって、達成される。組換え核酸を含む宿主細胞は「組換え宿主細胞」と呼ばれる。組換え核酸は、非コード機能(プロモーター、複製起点、リボソーム結合部位など)も提供しうる。
第1の配列である配列を持つポリヌクレオチドが第2の配列である配列を持つポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするのであれば、その第1の配列は、その第2の配列に対して「アンチセンス」である。したがってこれら2つの配列は相補的である。
薬学的に許容される担体: 有用な薬学的に許容される担体は従来のものである。E.W.Martin、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、ペンシルベニア州イーストン、第15版(1975)には、本明細書に開示する治療作用物質(例えばLaタンパク質、またはLaタンパク質の機能もしくは活性を調節する作用物質)の薬学的送達に適した組成物および製剤が記載されている。
一般に、担体の性質は、使用される特定の投与方式に依存することになる。例えば非経口製剤は通常、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、デキストロース水溶液、グリセロールなどの薬学的および生理学的に許容される流体をビヒクルとして含む注射可能な流体を含む。固形組成物(例えば散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル剤の形態)の場合、従来の非毒性固形担体として、例えば薬学的等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを挙げることができる。投与される薬学的組成物は、生物学的に中立な担体に加えて、例えば湿潤剤または乳化剤、保存剤およびpH緩衝剤など、例えば酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートなどの微量の非毒性補助物質も含有することができる。
「治療有効量」は、処置される対象において所望の効果を達成するための組成物または細胞の量である。例えばこれは、破骨細胞融合に影響を及ぼすのに必要な量であることができる。対象に投与される場合、一般的には、インビトロ効果を達成することが示されている標的組織濃度が達成されるような投薬量が、使用されることになる。
ポリペプチド: アミノ酸の任意の鎖であって、長さまたは翻訳後修飾(例えばグリコシル化またはリン酸化)は問わない。ポリペプチドおよびタンパク質に関して、「約」という単語は整数の量を示す。したがって一例において、「約」29アミノ酸長のポリペプチドは28~30アミノ酸長である。このように、「約」指定された数の残基を有するポリペプチドは、指定されたその数よりも1アミノ酸短いか、または1アミノ酸長くてもよい。融合ポリペプチドは、第1のポリペプチドと第2の異なるポリペプチド(例えば異種ポリペプチド)のアミノ酸配列を含み、単一のアミノ酸配列として合成することができる。組換えポリペプチドは、天然には存在しないアミノ酸配列、またはあるアミノ酸配列の本来であれば分離されている2つのセグメントによって作られるアミノ酸配列を有する。
プロモーター: 核酸の転写を指示する一連の核酸制御配列。プロモーターは、転写の開始部位に近い必須の核酸配列、例えばポリメラーゼII型プロモーターの場合であれば、TATA要素などを含む。プロモーターは、任意で、転写の開始部位から数千塩基対もの距離に位置する場合もある遠位のエンハンサー要素またはリプレッサー要素を含む。
精製された: 本明細書に開示するポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、当技術分野において公知の任意の手段によって精製(および/または合成)することができる(例えば、Guide to Protein Purification、Deutscher編, Meth.Enzymol.185, Academic Press, サンディエゴ, 1990、およびScopes、Protein Purification: Principles and Practice、Springer Verlag, ニューヨーク, 1982参照)。実質的精製とは、他のタンパク質、核酸分子または細胞構成要素からの精製を意味する。実質的に精製されたタンパク質は、少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%純粋である。したがって、非限定的な一具体例において、実質的に精製されたタンパク質は、他のタンパク質または細胞構成要素を90%含まない。このように、精製されたという用語は、絶対的に純粋であることを必要とするのではなく、相対的用語であるものとする。
同様に、精製された核酸とは、その核酸がその天然環境において細胞内にある場合よりも濃縮されているものをいう。
いくつかの例において、精製された核酸、タンパク質または細胞の集団は、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%純粋であり、またはそれぞれ他の核酸、タンパク質または細胞を含まない。
核因子カッパB活性化受容体リガンド(RANKL): ヒトではTNFSF11遺伝子によってコードされるタンパク質。RANKLは、骨髄細胞系譜の細胞上のRANKに結合し、破骨細胞の分化と活性化において機能する。RANKLは、主に骨芽細胞系譜の細胞によって分泌されるタンパク質であるオステオプロテゲリンにも結合しうる。オステオプロテゲリンは、RANKへのRANKLの結合を妨げることによる破骨細胞形成の強力な阻害物質である。RANKLは免疫系における機能も有し、Tヘルパー細胞によって発現されて、樹状細胞成熟に関与すると考えられている。これは樹状細胞生存因子であり、T細胞依存的免疫応答を制御するのを助ける。T細胞活性化はRANKL発現を誘導し、破骨細胞生成の増加および骨量減少につながりうる。ヒトRANKLの例示的なアミノ酸配列および核酸配列は、参照により本明細書に組み入れられるGENBANKアクセッション番号NM_003701.4、2021年2月16日に見いだすことができる。
関節リウマチ: 関節を侵す慢性自己免疫障害であって、滑膜の炎症が起こる。関節は腫脹し、圧痛を有し、熱を持つようになり、こわばりがその運動を制限する。時が経つにつれて、複数の関節が侵されるようになる(多発性関節炎)。最も一般的には、手、足および頸椎の小関節が侵されるが、肩や膝などの大きな関節が侵される場合もある。関節リウマチにおける骨の損壊は、主に、破骨細胞の分化と活性の増加によって引き起こされる。
配列同一性: アミノ酸配列間の類似性は、配列同一性とも呼ばれる配列間の類似性によって表現される。配列同一性は同一性(または類似性または相同性)パーセンテージによって測定されることが多く、パーセンテージが高いほど、2つの配列は類似している。ポリペプチドのホモログまたはバリアントは、標準的方法を使ってアライメントした場合に、比較的高度の配列同一性を有するだろう。
比較のために配列をアライメントする方法は公知のtである。さまざまなプログラムおよびアライメントアルゴリズムが、Smith and Waterman, Adv.Appl.Math.2:482, 1981、Needleman and Wunsch, 1970, J Mol Biol 48, 443-453、Higgins and Sharp, 1988, Gene 73, 237-244、Higgins and Sharp, 1989, CABIOS 5, 151-153、Corpet et al., 1988, Nucleic Acids Research 16, 10881-10890、およびPearson and Lipman, 1988, Proc Natl Acad Sci USA 85, 2444-2448に記載されている。Altschul et al., 1994, Nature Genet 6, 119-129では、配列アライメント方法および相同性計算の詳細な考察がなされている。
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al., 1990, J Mol Biol 215, 403-410)は、配列解析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxとの関連において使用するために、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI、メリーランド州ベセスダ)を含むいくつかの提供元から入手すること、およびインターネットで利用することができる。このプログラムを使って配列同一性を決定する方法の説明はインターネットのNCBIウェブサイトで読むことができる。
ポリペプチドのホモログおよびバリアントは、典型的には、デフォルトパラメータに設定されたNCBI Blast 2.0、gapped blastpを使って、ポリペプチドのアミノ酸配列との全長にわたるアライメントでカウントした場合に、少なくとも75%の、例えば少なくとも80%の、配列同一性を保持することを特徴とする。約30アミノ酸超のアミノ酸配列を比較するには、デフォルトのBLOSUM62行列を使用し、デフォルトパラメータ(gap existence costが11およびper residue gap costが1)に設定して、Blast 2 sequences関数を使用する。短いペプチド(30アミノ酸前後未満)をアライメントする場合は、PAM30行列を使用し、デフォルトパラメータ(open gap 9ペナルティ、extension gap 1ペナルティ)に設定して、Blast 2 sequences関数を使ったアライメントを行うべきである。参照配列に対してさらに大きな類似性を有するタンパク質は、この方法によって評価した場合に、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性など、同一性パーセンテージの増加を示すだろう。配列同一性に関して比較されている配列が配列全体よりも短い場合、ホモログおよび変異体は、典型的には、10~20アミノ酸の短いウインドウにおいて、典型的には少なくとも80%の配列同一性を有し、参照配列に対するそれぞれの類似性に応じて、少なくとも85%または少なくとも90%もしくは95%の配列同一性を有することができる。そのような短いウインドウにおいて配列同一性を決定する方法は、インターネット上のNCBIウェブサイトで利用することができる。これらの配列同一性範囲は手引きとして与えられているに過ぎず、与えられた範囲には入らない極めて重要なホモログが得られる可能性が十分にあることは、当業者には理解されるだろう。
したがっていくつかの例において、ポリペプチドまたは核酸配列のバリアントは、典型的には、関心対象のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列との全長にわたるアライメントでカウントして、少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性の保持を特徴とする。参照配列に対してさらに大きな類似性を有する配列は、この方法によって評価した場合に、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性など、同一性パーセンテージの増加を示すだろう。配列同一性に関して比較されている配列が配列全体よりも短い場合、ホモログおよび変異体は、典型的には、10~20アミノ酸(または30~60ヌクレオチド)の短いウインドウにおいて、典型的には少なくとも80%の配列同一性を有し、参照配列に対するそれぞれの類似性に応じて、少なくとも85%または少なくとも90%もしくは95%の配列同一性を有しうる。そのような短いウインドウにおいて配列同一性を決定する方法は、インターネット上のNCBIウェブサイトで利用することができる。
本明細書において「少なくとも90%の同一性」という場合、それ(または類似の表現)は、指定された参照配列に対して「少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはさらには100%の同一性」を指す。したがって、SEQ ID NO: 1、2、7、8または9に対して少なくとも90%の配列同一性を有するLaタンパク質(またはそのフラグメント)は、SEQ ID NO: 1または2に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、さらには100%の同一性を有するものである。同様に、SEQ ID NO: 3に対して少なくとも90%の配列同一性を有するLaコード配列は、SEQ ID NO: 3に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、さらには100%の同一性を有するものである。
対象: 生きている多細胞脊椎生物であり、このカテゴリーにはヒトと、非ヒト哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウマ、ウシおよびブタとが含まれる。一例において対象はヒトである。さらなる一例では、破骨細胞融合を調節する必要がある対象が選択される。例えば対象は、破骨細胞融合の増加または減少を必要とするか、または骨吸収の増加もしくは減少を必要とすることができる。
ベクター: 宿主細胞中に導入され、それによって形質転換された宿主細胞を産生する核酸分子。ベクターは、それが宿主細胞中で複製することを可能にする、複製起点などの核酸配列を含みうる。ベクターは、1つまたは複数の選択可能マーカー遺伝子および当技術分野において公知の他の遺伝要素も含みうる。ベクターには、プラスミドベクター、例えばグラム陰性細菌細胞およびグラム陽性細菌細胞における発現のためのプラスミドなどが含まれる。例示的ベクターとして、大腸菌(E.coli)およびサルモネラ(Salmonella)における発現用のベクターが挙げられる。ベクターには、ウイルスベクター、例えば限定するわけではないが、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、オルトポックスウイルス、トリポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カプリポックスウイルス、ブタポックスウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、アルファウイルス、バキュロウイルス、シンドビスウイルス、ワクシニアウイルスおよびポリオウイルスベクターも含まれる。ベクターには、酵母細胞または哺乳動物細胞における発現用のベクターも含まれる。
ウイルス: 生きている細胞の中で増殖する顕微鏡的感染性有機体。ウイルスはタンパク質コートで囲まれた単一核酸のコアから本質的になり、生きている細胞の中でのみ複製する能力を有する。「ウイルス複製」とは、少なくとも1回のウイルス生活環が起こることによる新たなウイルスの産生をいう。
II. 破骨細胞融合を増加させるのに使用するための、Laタンパク質およびLaタンパク質の機能および/または活性を増加させる作用物質
破骨細胞融合を増加させるための方法を本明細書に開示する。これらの方法は、対象における骨吸収を増加させるために使用することができる。これらの方法には、Laタンパク質、またはLaタンパク質の発現もしくは活性を増加させる作用物質、例えばLaタンパク質をコードする核酸分子を、利用することができる。これらの方法において有用な例示的作用物質を以下に開示する。
A. Laタンパク質
本明細書には、Laタンパク質のアミノ酸配列に対応するがカルボキシ末端の核局在化配列を欠く「切断型」組換えLaの添加、または「切断型」Laの過剰発現が、破骨細胞融合を激しく促進することが開示される。破骨細胞融合を促進するように機能する形態のLaタンパク質はいずれも、開示する方法において有用である。
例示的ヒトLaタンパク質配列を以下に掲載する。
Figure 2024512305000003
位置番号については、N末アミノ酸が位置1であり、残りの位置は順次番号を付与されたアミノ酸である。
いくつかの態様において、有用なLaタンパク質は、SEQ ID NO: 1のアミノ酸1~375を含むかまたはそれからなる。
Figure 2024512305000004
さらなる態様において、有用なLaタンパク質は、SEQ ID NO: 1のアミノ酸188~375を含むかまたはそれからなる。
Figure 2024512305000005
非限定的な具体例において、Laタンパク質は、SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含むか、またはそれから本質的になるか、またはそれからなる。
Laタンパク質のフラグメントまたはバリアントは、それが破骨細胞融合を促進するように機能する限りいずれも、本明細書に開示する方法において有用である。いくつかの態様では、開示する方法において有用なLaタンパク質が、SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 7に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する配列を含み、破骨細胞融合を促進する。Laタンパク質は、SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 7中に、最大で15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の保存的置換を含むことができる。いくつかの例において、Laタンパク質は、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の保存的置換を含有するSEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 7である。本明細書に開示する方法において有用なLaタンパク質は、天然に存在するか、または組換え体である。
いくつかの態様において、Laタンパク質は、SEQ ID NO: 2と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一なアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、このLaタンパク質は最大でも375アミノ酸長であり、SEQ ID NO: 1のアミノ酸376~408を含まない。さらなる態様において、Laタンパク質は、SEQ ID NO: 2のアミノ酸配列を含み、SEQ ID NO: 1と少なくとも95%同一であって、置換はSEQ ID NO: 2のアミノ酸376~408内だけに存在する。いくつかの態様において、置換は保存的置換である。
さらなる態様において、Laタンパク質は、SEQ ID NO: 7と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一なアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、このLaタンパク質はSEQ ID NO: 1のアミノ酸1~187および376~408を含まない。さらなる態様において、Laタンパク質は、SEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含み、SEQ ID NO: 1と少なくとも95%同一であって、置換はSEQ ID NO: 1のアミノ酸1~187および376~408内だけに存在する。いくつかの態様において、置換は保存的置換である。
さらなる態様において、Laタンパク質は、SEQ ID NO: 1のアミノ酸300~375および/またはSEQ ID NO: 1のアミノ酸6~242を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、このLaタンパク質はSEQ ID NO: 1のアミノ酸376~408を含まない。さらなる態様において、Laタンパク質は、SEQ ID NO: 1のアミノ酸300~375および/またはSEQ ID NO: 1のアミノ酸6~242を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、SEQ ID NO: 1のアミノ酸376~408内に置換を含む。いくつかの態様において、置換は保存的置換である。
開示する方法ではLaタンパク質フラグメントも有用であり、この場合、フラグメントは破骨細胞融合を増加させる。Laタンパク質は、最大で5アミノ酸、例えば1、2、3、4または5アミノ酸の欠失を含むことができる。いくつかの態様において、Laタンパク質は、3アミノ酸までの欠失、例えばSEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 7のうちの1、2または3アミノ酸の欠失を含むことができる。いくつかの態様において、欠失は、SEQ ID NO: 1のアミノ酸376~408内にある。非限定的な一例において、フラグメントはSEQ ID NO: 1のアミノ酸6~242である。
有用なLaタンパク質は、宿主細胞における発現などといった組換え法を使って調製することができる。例示的核酸分子はクローニング技法によって調製することができる(下記参照)。適当なクローニングおよびシーケンシング技法の例、および多くのクローニング作業を経た当業者に指示を与えるのに十分な説明書は、公知である(例えばSambrook et al.(Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第4版, Cold Spring Harbor, ニューヨーク, 2012)およびAusubel et al.(In Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley&Sons, ニューヨーク, supplement 104まで, 2013)を参照されたい。
宿主としては、微生物、酵母、昆虫および哺乳動物である生物を挙げることができる。真核生物配列またはウイルス配列を有するDNA配列を原核生物中で発現させる方法は当技術分野において周知である。適切な宿主細胞の非限定的な例として、細菌、古細菌、昆虫、真菌(例えば酵母)、植物および動物細胞(例えば哺乳動物細胞、例えばヒト細胞)が挙げられる。有用な例示的細胞として、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、SF9細胞、C129細胞、HEK293細胞、ニューロスポラ(Neurospora)、および哺乳動物の不死化された骨髄系およびリンパ系細胞株が挙げられる。培養下の哺乳動物細胞を増殖させるための技法は周知である(例えばHelgason and Miller編, 2012, Basic Cell Culture Protocols(Methods in Molecular Biology)第4版, Humana Press参照)。よく使用される哺乳動物宿主細胞株の例は、VEROおよびHeLa細胞、CHO細胞、ならびにWI38、BHKおよびCOS細胞株であるが、より高い発現量、所望のグリコシル化パターンまたは他の特徴が得られるように設計された細胞などの細胞株を使用してもよい。いくつかの態様において、宿主細胞には、HEK293細胞またはその派生物、例えばGnTI-/-細胞(ATCC(登録商標)番号CRL-3022)、またはHEK-293F細胞が含まれる。
組換えDNAによる宿主細胞の形質転換は従来の技法によって実行することができる。宿主が原核宿主(限定するわけではないが大腸菌など)であるいくつかの態様では、DNA取込み能を有するコンピテント細胞を、指数増殖期後に収穫した後、CaCl2で処理した細胞から調製することができる。あるいは、熱ショック、MgCl2またはRbClを使用することができる。形質転換は、所望であれば、宿主細胞のプロトプラストを形成させてから実施するか、またはエレクトロポレーションによって実施することもできる。
宿主が真核生物である場合は、リン酸カルシウム共沈殿法などのDNAトランスフェクション法、マイクロインジェクションなどの従来の機械的手順、エレクトロポレーション、リポソームに封入されたプラスミドの挿入、またはウイルスベクターを使用することができる。真核細胞は、本開示の抗原をコードするポリヌクレオチド配列と、単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子などの選択可能な表現型をコードする第2の外来DNA分子とで、共形質転換することもできる。もう一つの方法は、真核生物ウイルスベクター、例えばシミアンウイルス40(SV40)またはウシパピローマウイルスを使って、真核細胞を一過性に感染させまたは形質転換し、タンパク質を発現させることである(例えばViral Expression Vectors, Springer press, Muzyczka編, 2011参照)。COS、CHO、HeLaおよび骨髄腫細胞株などの高等真核細胞を含む細胞においてタンパク質を産生するのに役立つプラスミドおよびベクターなどの適当な発現系。
B. Laをコードする核酸分子およびベクター
Laタンパク質、バリアントまたはフラグメントをコードする核酸分子も、開示する方法において有用である。Laタンパク質、バリアントまたはフラグメントをコードする核酸を導入することによって、Laタンパク質の量が増加し、よってLaタンパク質の活性も増加する。
核酸分子は増幅法によって調製することができる。増幅法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写に基づく増幅系(transcription-based amplification system: TAS)、自己持続性配列複製系(self-sustained sequence replication system: 3SR)が挙げられる。多種多様なクローニング方法、宿主細胞およびインビトロ増幅方法が当業者には周知である。RNA分子も有用である。
Laタンパク質、バリアントまたはフラグメントをコードするポリヌクレオチドには、ベクター(例えば発現ベクター)に組み入れられるか、自律的に複製するプラスミドもしくはウイルスに組み入れられるか、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに組み入れられる組換えDNA、または他の配列には依存しない別個の分子(例えばcDNA)として存在する組換えDNAを、含めることができる。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはどちらかのヌクレオチドの修飾型であることができる。この用語は一本鎖型および二本鎖型のDNAを包含する。SEQ ID NO: 1をコードする例示的核酸分子を以下に掲載する。
Figure 2024512305000006
ペプチド2(下記参照)をコードする例示的核酸配列を以下に示す。
Figure 2024512305000007
ペプチド2(下記参照)をコードする例示的核酸配列を以下に示す。
Figure 2024512305000008
開示する方法において有用なLaタンパク質、そのバリアントまたはフラグメントをコードするポリヌクレオチドには、Laタンパク質をコードするDNA、cDNAおよびRNA配列が含まれる。コード配列中のサイレント変異は、2種以上のコドンが同じアミノ酸残基をコードできるという遺伝暗号の縮重(すなわち冗長性)に起因する。したがって、例えばロイシンはCTT、CTC、CTA、CTG、TTAまたはTTGによってコードされることができ、セリンはTCT、TCC、TCA、TCG、AGTまたはAGCによってコードされることができ、アスパラギンはAATまたはAACによってコードされることができ、アスパラギン酸はGATまたはGACによってコードされることができ、システインはTGTまたはTGCによってコードされることができ、アラニンはGCT、GCC、GCAまたはGCGによってコードされることができ、グルタミンはCAAまたはCAGによってコードされることができ、チロシンはTATまたはTACによってコードされることができ、イソロイシンはATT、ATCまたはATAによってコードされることができる。標準遺伝暗号を示す表は、さまざまな情報源に見いだすことができる(例えばL.Stryer, 1988, Biochemistry, 第3版, W.H.5 Freeman and Co., NY)。本明細書に開示する方法では縮重バリアントも有用である。
当業者は、本明細書において提供されるアミノ酸配列と遺伝暗号とを使って、Laタンパク質、バリアントまたはフラグメントをコードするさらなる核酸分子を、容易に作製することができる。Laタンパク質、バリアントまたはフラグメントをコードする核酸配列は、任意の適切な方法によって、例えば適当な配列のクローニングによって、またはNarang et al., Meth.Enzymol.68:90-99, 1979のホスホトリエステル法、Brown et al., Meth.Enzymol.68:109-151, 1979のホスホジエステル法、Beaucage et al., Tetra.Lett.22:1859-1862, 1981のジエチルホスホラミダイト法、Beaucage&Caruthers, Tetra.Letts.22(20):1859-1862, 1981に記載されている固相ホスホラミダイトトリエステル法などといった方法による直接的化学合成によって、例えばNeedham-VanDevanter et al., Nucl.Acids Res.12:6159-6168, 1984などに記載の自動合成装置および米国特許第4,458,066号に記載の固形支持体法を使って、調製することができる。化学合成では一本鎖(ss)オリゴヌクレオチドが作製され、それは、相補的配列とのハイブリダイゼーションによって、またはその一本鎖をテンプレートとして使用するDNAポリメラーゼを使った重合によって、二本鎖(ds)DNAに変換することができる。Laタンパク質、バリアントまたはフラグメントをコードする配列を含む例示的核酸は、クローニング技法によって調製することができる。
Laタンパク質、バリアントまたはフラグメントをコードする核酸分子は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写に基づく増幅系(TAS)、自己持続性配列複製系(3SR)およびQβレプリカーゼ増幅系(QB)などのインビトロ法によって、クローニングまたは増幅することができる。例えばLaタンパク質、バリアントまたはフラグメントをコードするポリヌクレオチドは、その分子のDNA配列に基づくプライマーを使用するcDNAのポリメラーゼ連鎖反応によって、単離することができる。多種多様なクローニングおよびインビトロ増幅方法を使用することができる。PCR法は、例えば米国特許第4,683,195号、Mullis et al., Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263, 1987、およびErlich編、PCR Technology(Stockton Press, NY, 1989)に記載されている。ポリヌクレオチドは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、所望のポリヌクレオチドの配列から選択されたプローブを使ったゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーのスクリーニングを行うことによって、単離することもできる。
典型的には、Laタンパク質、バリアントまたはフラグメントをコードするポリヌクレオチド配列は、例えばプロモーターおよびポリアデニル化シグナルを含む転写制御配列に機能的に連結される。転写の開始に関与する宿主細胞の転写機構(または導入された合成機構)によって認識されるポリヌクレオチド配列であるプロモーターは、いずれも使用することができる。ポリアデニル化シグナルは、転写産物の適正なプロセシングと翻訳に備えた核から細胞質への輸送のために、mRNA転写産物の最後に一連のヌクレオチドを付加することを指示する、ポリヌクレオチド配列である。
例示的プロモーターとしては、ウイルスプロモーター、例えばサイトメガロウイルス前初期遺伝子プロモーター(「CMV」)、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(「tk」)、SV40初期転写単位、ポリオーマ、レトロウイルス、パピローマウイルス、B型肝炎ウイルス、ならびにヒトおよびサルの免疫不全ウイルスが挙げられる。他のプロモーターには、哺乳動物遺伝子から単離されるプロモーター、例えば免疫グロブリン重鎖、免疫グロブリン軽鎖、T細胞受容体、HLA DQαおよびDQβ、β-インターフェロン、インターロイキン-2、インターロイキン-2受容体、MHCクラスII、HLA-DRα、β-アクチン、筋クレアチンキナーゼ、プレアルブミン(トランスサイレチン)、エラスターゼI、メタロチオネイン、コラゲナーゼ、アルブミン、フェトプロテイン、β-グロビン、c-fos、c-HA-ras、神経細胞接着分子(NCAM)、α1-アンチトリプシン、H2B(TH2B)ヒストン、I型コラーゲン、グルコース制御タンパク質(GRP94およびGRP78)、ラット成長ホルモン、ヒト血清アミロイドA(SAA)、トロポニンI(TNI)、血小板由来増殖因子、およびジストロフィン、ならびに骨細胞に特異的なプロモーターがある。
プロモーターは誘導性または恒常性であることができる。誘導性プロモーターは、誘導物質が存在しない限り、不活性であるかまたは低い活性を呈するプロモーターである。プロモーターのさらなる例には、MT II、MMTV、コラゲナーゼ、ストロメライシン、SV40、マウスMX遺伝子、α-2-マクログロブリン、MHCクラスI遺伝子h-2kb、HSP70、プロリフェリン、テトラサイクリン誘導性、腫瘍壊死因子、または甲状腺刺激ホルモン遺伝子プロモーターがあるが、それらに限定されるわけではない。誘導性プロモーターの一例は、インターフェロン誘導性ISG54プロモーターである(参照により本明細書に組み入れられるBluyssen et al., Proc.Natl Acad.Sci.92:5645-5649, 1995を参照されたい)。いくつかの態様において、プロモーターは、宿主細胞中に導入されると追加の因子が存在しなくても高レベルの転写をもたらす恒常的プロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは、オステオカルシンプロモーター、オステオポンチンプロモーター、またはオステオネクチンプロモーターなどの骨特異的プロモーターである(参照によりその全体が本明細書に組み入れられるGrienberg and Benayahu, BMC Genomics, 6, 46(2005), doi.org/10.1186/1471-2164-6-46 005も参照されたい)。さらにまた、いくつかの態様において、プロモーターは破骨細胞または破骨細胞前駆体特異的プロモーター、例えばカテプシンKプロモーター、酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼプロモーター、リゾチームMプロモーター、核因子κB活性化受容体プロモーター、マクロファージ表面抗原1プロモーター、またはマクロファージコロニー刺激因子受容体プロモーターである。インターネットncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6397767/を参照されたい。
任意で、転写制御配列には1つまたは複数のエンハンサー要素が含まれる。これは、最小プロモーターだけで観察される転写よりも転写を増加させる1つまたは複数の転写因子にとっての結合認識部位であり、これもまた、Laタンパク質をコードする核酸分子をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結される。Laタンパク質をコードする核酸分子については、mRNAを安定化し発現量を増加させるのを助けるイントロンも含まれうる。
La遺伝子転写産物の適正な終結とポリアデニル化を達成するために、ポリアデニル化シグナルを含めることが望ましいかもしれない。例示的ポリアデニル化シグナルは、ベータグロビン、ウシ成長ホルモン、SV40および単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子から単離されている。
Laタンパク質、バリアントまたはフラグメントをコードする核酸分子は、例えば対応するLaタンパク質、バリアントまたはフラグメントを宿主細胞中で産生させるためのプロトマーの発現、または本明細書に開示する対象への投与などのために、ウイルスベクターに含めることができる。典型的には、そのようなウイルスベクターは、Laタンパク質、バリアントまたはフラグメントをコードする核酸分子を含む。いくつかの例において、Laタンパク質、バリアントまたはフラグメントをコードするウイルスベクターは複製可能型(replication-competent)であることができる。例えばウイルスベクターは、ウイルスゲノム中に、宿主細胞におけるウイルス複製を減弱させるが完全には阻止しない変異(例えばプロトマーをコードする核酸の挿入)を有することができる。
本明細書において教示するように核酸に基づく治療に利用することができるさまざまなウイルスベクターには、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア、またはRNAウイルス、例えばレトロウイルス(HVJを含む。Kotani et al., Curr.Gene Ther.4:183-194, 2004参照)などがある。一態様において、レトロウイルスベクターは、マウスもしくはトリレトロウイルスまたはヒトもしくは霊長類レンチウイルスの誘導体である。外来遺伝子を挿入することができるレトロウイルスベクターの例には、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳房腫瘍ウイルス(MuMTV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV)があるが、それらに限定されるわけではない。一態様において対象がヒトである場合は、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)などのウイルスを利用することができる。異種エンベロープ遺伝子を含むシュードタイプレトロウイルスベクターを利用することができる。
さらなるレトロウイルスベクターのいくつかは、複数の遺伝子を組み入れることができる。これらのベクターはいずれも、形質導入された細胞を同定し生成させることができるように、選択可能マーカー用の遺伝子を導入しまたは組み入れることができる。Laタンパク質、バリアントまたはフラグメントをコードする核酸を、例えばウイルスエンベロープタンパク質としての機能を果たすことができ、特異的標的細胞上の受容体にとってのリガンドをコードすることもできる別の遺伝子と一緒に、ウイルスベクターに挿入すれば、そのベクターは標的特異的になる。レトロウイルスベクターは、例えば糖、糖脂質またはタンパク質を取り付けることでエンベロープタンパク質を改変することにより、標的特異的にすることができる。非限定的な一具体例では、標的化は、抗体を使ってレトロウイルスベクターを標的に向かわせることによって達成される。
組換えレトロウイルスは設計上非複製性であるため、感染性ベクター粒子を産生するには、補助が必要である。この補助は、例えば、レトロウイルスの構造遺伝子のすべてを末端反復(LTR)内の制御配列のコントロール下にコードするプラスミドを含有するヘルパー細胞株を使用することによって、提供することができる。これらのプラスミドは、パッケージング機構がキャプシド形成のためにRNA転写産物を認識することを可能にするヌクレオチド配列を欠いている。パッケージングシグナルが欠失しているヘルパー細胞株には、例えばψ2、PA317およびPA12などがあるが、それらに限定されるわけではない。これらの細胞株は、ゲノムがパッケージングされないので、空のビリオンを産生する。パッケージングシグナルはインタクトであるが、構造遺伝子が他の関心対象の遺伝子で置き換えられているレトロウイルスベクターが、そのような細胞に導入されると、そのベクターはパッケージングされ、ベクタービリオンが産生されうる。
あるいは、NIH 3T3または他の組織培養細胞に、レトロウイルス構造遺伝子gag、polおよびenvをコードするプラスミドを、従来のトランスフェクション法によって、直接トランスフェクトすることもできる。次に、これらの細胞に、関心対象の遺伝子を含有するベクタープラスミドをトランスフェクトする。その結果生じる細胞はレトロウイルスベクターを培養培地中に放出する。
アデノウイルスベクターも有用である。アデノウイルスベクターには、その複製可能型、複製欠損型、ガットレス型が含まれる。ウイルス遺伝子を完全にまたはほとんど完全に欠く欠損ウイルス、例えばアデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを使用することができる。欠損ウイルスベクターの使用は、ベクターが他の細胞にも感染できるという懸念を伴うことなく、特異的細胞への投与を可能にする。有用なAAVベクターは複製欠損性である。理論に束縛されるものではないが、アデノウイルスベクターは、インビトロで強い発現、優れた力価、ならびにインビボで分裂細胞および非分裂細胞に形質導入する能力を呈することが公知である(Hitt et al., Adv in Virus Res 55:479-505, 2000)。インビボで使用した場合、これらのベクターは、ベクターバックボーンに対して誘発される免疫応答により、強い、ただし一過性の、遺伝子発現をもたらす。いくつかの非限定的な例において、有用なベクターは、弱毒化アデノウイルスベクター、例えばStratford-Perricaudetら(J.Clin.Invest., 90:626-630 1992、La Salle et al., Science 259:988-990, 1993)が記載したベクター、または欠損性AAVベクター(Samulski et al., J.Virol., 61:3096-3101, 1987、Samulski et al., J.Virol., 63:3822-3828, 1989、Lebkowski et al., Mol.Cell.Biol., 8:3988-3996, 1988)である。
組換えAAVベクターは、それらが、標的とした細胞において、選択されたトランスジェニック産物の発現および産生を指示できることを特徴とする。したがって、これらの組換えベクターは、少なくとも、キャプシド形成および標的細胞の感染のための物理的構造にとって不可欠なAAVの配列を、すべてを含む。
AAVは、パルボウイルス科(Parvoviridae)およびデペンドウイルス属(Dependovirus)に属する。AAVは、線状一本鎖DNAゲノムをパッケージする小さな非エンベロープウイルスである。AAV DNAのセンス鎖とアンチセンス鎖は等しい頻度でAAVキャプシド中にパッケージングされる。いくつかの態様において、AAV DNAは、Laタンパク質、バリアントまたはフラグメントをコードする核酸分子に機能的に連結されたプロモーターを含む核酸を含む。本明細書に開示する核酸分子を含む組換えアデノウイルスベクターおよび組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターなどの組換えベクターが、さらに提供される。いくつかの態様において、AAVはrAAV8および/またはAAV2である。しかし、AAV血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV9、AAV10、AAV11もしくはAAV12、または2つ以上のAAV血清型のハイブリッドなど、他の適切なAAV血清型のいずれであることもできる。
Laの発現には、ポリオーマ、すなわちSV40(Madzak et al., 1992, J.Gen.Virol., 73:15331536)、ヘルペスウイルス、例えばHSVおよびEBVおよびCMV(Margolskee, 1992, Curr.Top.Microbiol.Immunol., 158:67-90、Johnson et al., 1992, J.Virol., 66:29522965、Fink et al., 1992, Hum.Gene Ther.3:11-19、Breakfield et al., 1987, Mol.Neurobiol., 1:337-371、Fresse et al., 1990, Biochem.Pharmacol., 40:2189-2199)、シンドビスウイルス(H.Herweijer et al., 1995, Human Gene Therapy 6:1161-1167、米国特許第5,091,309号および同第5,2217,879号)、アルファウイルス(S.Schlesinger, 1993, Trends Biotechnol.11:18-22、I.Frolov et al., 1996, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:11371-11377)、ならびに鳥類(Brandyopadhyay et al., 1984, Mol.Cell Biol., 4:749-754、Petropouplos et al., 1992, J.Virol., 66:3391-3397)、マウス(Miller, 1992, Curr.Top.Microbiol.Immunol., 158:1-24、Miller et al., 1985, Mol.Cell Biol., 5:431-437、Sorge et al., 1984, Mol.Cell Biol., 4:1730-1737、Mann et al., 1985, J.Virol., 54:401-407)およびヒト(Page et al., 1990, J.Virol., 64:5370-5276、Buchschalcher et al., 1992, J.Virol., 66:2731-2739)由来のレトロウイルスなど、さらなるウイルスベクターも利用することができる。バキュロウイルス(オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)多核多角体病(multinuclear polyhedrosis)ウイルス;AcMNPV)ベクターも当技術分野において公知であり、商業的供給源(例えばPharMingen(カリフォルニア州サンディエゴ)、Protein Sciences Corp.(コネチカット州メリデン)、Stratagene(カリフォルニア州ラホーヤ))から入手できる。
Laタンパク質、バリアントまたはフラグメントをコードするポリヌクレオチドのためのもう一つの標的送達系はコロイド分散系である。これらの系も開示する方法において有用である。
コロイド分散系としては、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、および脂質に基づく系、例えば水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、およびリポソームが挙げられる。コロイド分散系の一つはリポソームである。リポソームは、インビトロおよびインビボで送達ビヒクルとして有用な人工膜小胞である。サイズが約0.2~4ミクロンの範囲にある大きなユニラメラ小胞(LUV)が、大きな高分子を含有するかなりの割合の水性緩衝液を封入できることは示されている。RNA、DNAおよびインタクトなビリオンは、水性の内部に封入され、生物学的に活性な形態で細胞に送達されうる(Fraley et al., Trends Biochem.Sci.6:77, 1981)。リポソームは、哺乳動物細胞だけでなく、植物、酵母および細菌細胞におけるポリヌクレオチドの送達にも使用されている。リポソームが効率の良い遺伝子導入ビヒクルであるためには、以下の特徴が存在すべきである: (1)関心対象の核酸を、その生物学的活性を損なわずに、高い効率で封入すること、(2)非標的細胞と比較して標的細胞に優先的かつ実質的に結合すること、(3)小胞の水性内容物を標的細胞の細胞質に高い効率で送達すること、および(4)遺伝情報を性格かつ効果的に発現させること(Mannino et al., Biotechniques 6:682, 1988)。
リポソームの組成は、通常はリン脂質、特に相転移温度が高いリン脂質の、通常はステロイド、とりわけコレステロールと組み合わされた、組合せである。他のリン脂質または他の脂質も使用しうる。リポソームの物理的特徴はpH、イオン強度および二価カチオンの存在に依存する。
リポソーム作製に有用な脂質の例としては、ホスファチジル化合物、例えばホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガングリオシドが挙げられる。脂質部分が14~18個の炭素原子、特に16~18個の炭素原子を含有していて飽和しているジアシルホスファチジル-グリセロールは、特に有用である。例示的リン脂質としては、例えばホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。
リポソームのターゲティングは、解剖学的因子および機構的因子に基づいてクラス分けすることができる。解剖学的クラス分けは、例えば器官特異的、細胞特異的および細胞小器官特異的など、選択性のレベルに基づく。機構的ターゲティングは、それが受動的であるか能動的であるかに基づいて区別することができる。受動的ターゲティングでは、リポソームが、洞様毛細血管を含む臓器中の網内系(RES)の細胞に分布するというリポソームの天然の傾向を利用する。一方、能動的ターゲティングは、天然の局在部位以外の器官および細胞タイプへのターゲティングを達成するために、リポソームを特異的リガンド、例えばモノクローナル抗体、糖、糖脂質またはタンパク質にカップリングすること、またはリポソームの組成またはサイズを変化させることによる、リポソームの改変を伴う。
もう一つのターゲティング送達系は、骨における使用のための生分解性および生体適合性ポリマースキャフォールドの使用である(Jang et al., Expert Rev.Medical Devices 1:127-138, 2004)。これらのスキャフォールドは、通常、1種または複数種の生分解性ポリマー、例えば限定するわけではないが、飽和脂肪族ポリエステル、例えばポリ(乳酸)(poly(lactic acid): PLA)、ポリ(グリコール酸)、またはポリ(乳酸-co-グリコリド)(poly(lactic-co-glycolide): PLGA)コポリマー、不飽和線状ポリエステル、例えばポリフマル酸プロピレン(polypropylene fumarate: PPF)、または微生物が産生する脂肪族ポリエステル、例えばポリヒドロキシアルカノエート(polyhydroxyalkanoate: PHA)の混合物を含有する(Rezwan et al., Biomaterials 27:3413-3431, 2006、Laurencin et al., Clin.Orthopaed.Rel.Res.447:221-236参照)。さまざまな構成要素の比率を変えることにより、異なる機械的性質を持つポリマースキャフォールドが得られる。よく使用されるスキャフォールドではPLA対PGAの比が75:25であるが、この比は具体的応用によって変わりうる。よく使用される他のスキャフォールドには、表面生体侵食性(surface bioeroding)ポリマー、例えばポリ(無水物)、例えばトリメリチルイミドグリシン(TMA-gly)もしくはピロメリチルイミドアラニン(PMA-ala)、またはポリ(ホスファゼン)、例えば高分子量ポリ(オルガノホスファゼン)(poly(organophasphazenes))(P[PHOS])、および生物活性セラミクスがある。これらのスキャフォールドの漸進的生分解は、スキャフォールドからの薬物または遺伝子の漸進的放出を可能にする。したがって、これらのポリマー担体の利点は、それらがスキャフォールドに相当するだけでなく、薬物または遺伝子送達系にも相当することである。この系は、プラスミドDNAの送達に応用することができ、AAVまたはレトロウイルスベクターなどのウイルスベクター、ならびにトランスポゾンに基づくベクターにも応用することができる。
標的化送達系の表面はさまざまな方法で修飾しうる。リポソーム標的化送達系の場合は、ターゲティングリガンドをリポソーム二重層と安定に会合させておくために、リポソームの脂質二重層に脂質基を組み入れることができる。脂質鎖をターゲティングリガンドに接合するためにさまざまな連結基を使用することができる。
C. 化学化合物および低分子アゴニスト
Laタンパク質アゴニストには、天然物の大きなライブラリーまたは合成(もしくは半合成)抽出物の大きなライブラリーから同定される分子、またはケミカルライブラリーから同定される分子が含まれる。破骨細胞融合を測定することなどによってLa活性の増加を検出するスクリーニング方法は、多様な供給源から活性によって化合物を同定するのに有用である。初期スクリーニングは、化合物の多様なライブラリー、さまざまな他の化合物および化合物ライブラリーを使って行いうる。こうしてLaタンパク質の活性を増加させる分子を同定することができる。これらの低分子は、コンビナトリアルライブラリー、天然物ライブラリーまたは他の低分子ライブラリーから同定することができる。加えて、Laアゴニストは、商業的供給源からの化合物として、および同定された阻害剤の市販の類似体として同定することもできる。
試験抽出物または試験化合物の供給源そのものは、Laタンパク質アゴニストの同定にとって重要でない。したがってLaタンパク質アゴニストは、事実上無数の化学抽出物または化学化合物から同定することができる。そのような抽出物または化合物の例には、植物、真菌、原核生物または動物に基づく抽出物、発酵ブロス、および合成化合物、ならびに既存の化合物の修飾があるが、それらに限定されるわけではない。いくつもの化学化合物の、例えば限定するわけではないが、糖、脂質、ペプチドおよび核酸に基づく化合物の、ランダム合成または指向的合成(例えば半合成または全合成)を行うために、数多くの方法を利用することもできる。合成化合物ライブラリーは、Brandon Associates(ニューハンプシャー州メリマック)およびAldrich Chemical(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から市販されている。Laタンパク質アゴニストは、Maybridge Chemical Co.(英国コーンウォール州トレビレット)、Comgenex(ニュージャージー州プリンストン)、Brandon Associates(ニューハンプシャー州メリマック)およびMicrosource(コネチカット州ニューミルフォード)を含むいくつかの企業から市販されている合成化合物ライブラリーから同定することができる。Laタンパク質アゴニストは、Aldrich(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から入手可能なライブラリーなど、レアケミカルライブラリー(rare chemical library)から同定することができる。Laタンパク質アゴニストは、Biotics(英国サセックス州)、Xenova(英国スラウ)、Harbor Branch Oceangraphics Institute(フロリダ州フォートピアース)およびPharmaMar, U.S.A.(マサチューセッツ州ケンブリッジ)を含むいくつかの供給元から市販されている細菌抽出物、真菌抽出物、植物抽出物および動物抽出物の形態にある天然化合物のライブラリー中に同定することができる。天然のおよび合成的に作製されたライブラリーおよび化合物は、従来の化学的、物理的および生化学的手段によって、容易に修飾される。
有用な化合物は数多くの化合物クラス内に見いだされうる。ただし、それらは典型的には、低分子有機化合物を含む有機化合物である。本明細書に開示する方法では、50ダルトンを上回るが約2,500ダルトン未満、例えば約750ダルトン未満または約350ダルトン未満である分子量を有する低分子有機化合物を利用することができる。例示的クラスには、複素環、ペプチド、糖類、ステロイドなどがある。化合物は、効力、安定性、薬学的適合性などを強化するために修飾しうる。
III. Laタンパク質の機能および/または活性を減少させる作用物質
対象における破骨細胞融合を減少させる方法が本明細書に開示される。この方法は骨吸収を低減することができる。これらの方法では対象におけるLaタンパク質の発現または活性を減少させる作用物質を使用する。例示的作用物質を以下に開示する。
A. 抗体およびその抗原結合フラグメント
Laタンパク質の活性を減少させる作用物質は、Laタンパク質に特異的に結合するアンタゴニスト抗体、例えば限定するわけではないが、モノクローナル抗体であることができる。Laタンパク質に特異的に結合する抗体は市販されている。いくつかの態様において、抗体はLaタンパク質に結合し、破骨細胞融合を減少させる。例示的抗体を実施例8に開示する。
特異的に結合してLaタンパク質の活性を実質的に低減または阻害する抗体(例えば少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、さらには100%の低減)は、本明細書に開示する方法において有用である。抗体には、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、脱免疫化抗体および免疫グロブリン(Ig)融合タンパク質が含まれる。Laタンパク質に結合する完全ヒト抗体およびヒト化抗体は、当業者に公知の方法を使って作製することもできる。
ポリクローナルアンタゴニスト抗体は、例えば適切な対象(例えばヒト対象または獣医学的対象)をLaタンパク質で免疫処置することなどによって、調製することができる。免疫処置された対象における抗Laタンパク質抗体価は、例えば固定化されたLaタンパク質またはそのエピトープを使用する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使うなどして、経時的にモニターすることができる。一例において、Laタンパク質に得意的に結合する抗体分子は、哺乳動物から(例えば血清から)単離し、例えばIgG抗体を単離するためにプロテインAクロマトグラフィーを使用するなどして、さらに精製することができる。いくつかの態様において、抗体は、破骨細胞融合の阻害を検出するなどの機能アッセイを使って、選択することもできる。
抗体産生細胞は、免疫処置された対象などの対象から得ることができ、モノクローナル抗体を調製するために使用することができる(Kohler and Milstein Nature 256:495 49, 1995、Brown et al., J.Immunol.127:539 46, 1981、Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R.Liss, Inc., pp.77 96, 1985、Gefter, M.L.et al.(1977)Somatic Cell Genet.3:231 36、Kenneth, R.H.、in Monoclonal Antibodies:A New Dimension In Biological Analyses、Plenum Publishing Corp., ニューヨーク州ニューヨーク(1980)、Kozbor et al.Immunol.Today 4:72, 1983、Lerner, E.A.(1981)Yale J.Biol.Med.54:387 402、Yeh et al., Proc.Natl.Acad.Sci.76:2927 31, 1976参照)。一例では、不死化細胞株(典型的には骨髄腫)が、Laタンパク質で免疫処置された哺乳動物からのリンパ球(典型的には脾細胞)に融合され、その結果得られたハイブリドーマ細胞の培養上清が、関心対象のポリペプチドに特異的に結合しそのポリペプチドの機能を阻害するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定するために、スクリーニングされる。
一態様において、ハイブリドーマを作製するために、不死化細胞株(骨髄腫細胞株など)は、リンパ球と同じ哺乳動物種に由来する。例えばマウスハイブリドーマは、Laタンパク質またはそのエピトープで免疫処置されたマウスからのリンパ球を不死化マウス細胞株と融合することによって作出することができる。一例では、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含有する培養培地(「HAT培地」)に感受性であるマウス骨髄腫細胞株が利用される。メリーランド州ロックビルのAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手可能なP3-NS1/1-Ag4-1、P3-x63-Ag8.653またはSp2/O-Ag14骨髄腫株を含めて、数ある骨髄腫細胞株はいずれも、融合パートナーとして使用することができる。HAT感受性マウス骨髄腫細胞は、ポリエチレングリコール(「PEG」)を使ってマウス脾細胞と融合することができる。融合によって得られるハイブリドーマ細胞を、次に、融合していない(および非生産的に融合した)骨髄腫細胞を殺すHAT培地を使って選択する。関心対象のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、例えば、ハイブリドーマ培養上清を、Laポリペプチドに結合する抗体の産生について、例えば免疫学的アッセイ(例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA)を使うなどしてスクリーニングすることによって、検出することができる。
モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを調製するための代替法として、組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば抗体ファージディスプレイライブラリー)をLaタンパク質またはそのエピトープでスクリーニングして、そのポリペプチドに特異的に結合する免疫グロブリンライブラリーメンバーを単離することによって、Laタンパク質に特異的に結合するモノクローナル抗体を同定し、単離することもできる。特定の活性、例えばLaタンパク質に結合する活性、またはインビトロアッセイで破骨細胞融合を阻害する活性を有するライブラリーメンバーを選択することができる。ファージディスプレイライブラリーを作成しスクリーニングするためのキットは市販されている(限定するわけではないが、例えばPharmaciaおよびStratagene)。抗体ディスプレイライブラリーの作成とスクリーニングにおける使用に特に適した方法および試薬類の例は、例えば米国特許第5,223,409号、PCT出願公開番号WO 90/02809、PCT出願公開番号WO 91/17271、PCT出願公開番号WO 92/18619、PCT出願公開WO 92/20791、PCT出願公開番号WO 92/15679、PCT出願公開番号WO 92/01047、PCT出願公開WO 93/01288、PCT出願公開番号WO 92/09690、Barbas et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7978 7982, 1991、Hoogenboom et al., Nucleic Acids Res.19:4133 4137, 1991に見いだすことができる。破骨細胞融合をモニターするのに適したアッセイは、例えば実施例の項において開示される。
一例では、各CDRの特異性決定領域の配列が決定される。SDR(特異性決定領域(specificity determining region)、例えば非リガンド接触部位)外の残基が置換される。例えばCDR配列のいずれかにおいて、最大で1つ、2つまたは3つのアミノ酸を置換することができる。ある抗体からのフレームワーク領域と、それとは異なる抗体からのCDRとを含む、キメラ抗体の作製は、当技術分野において公知である。例えばヒト化抗体を作製することができる。抗体または抗体フラグメントは、Laタンパク質またはそのエピトープに結合するドナーモノクローナル抗体からのCDRと、ヒトアクセプター免疫グロブリン重鎖および軽鎖フレームワークからの免疫グロブリンならびに重鎖および軽鎖可変領域フレームワークとを有するヒト化免疫グロブリンであることができる。
ヒト化モノクローナル抗体は、ドナーマウス免疫グロブリン(Laタンパク質に特異的に結合するもの)の可変重鎖および可変軽鎖からヒト可変ドメインへとCDRを移し、次に親和性を保つために必要であれば、フレームワーク領域中のヒト残基を置換することによって作製することができる。ヒト化モノクローナル抗体に由来する抗体構成要素の使用により、ドナー抗体の定常領域の免疫原性に関連する潜在的課題が取り除かれる。ヒト化モノクローナル抗体を作製するための技法は、例えばJones et al., Nature 321:522, 1986、Riechmann et al., Nature 332:323, 1988、Verhoeyen et al., Science 239:1534, 1988、Carter et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:4285, 1992、Sandhu, Crit.Rev.Biotech.12:437, 1992、およびSinger et al., J.Immunol.150:2844, 1993に記載されている。抗体は任意のアイソタイプであってよいが、いくつかの態様では、抗体は、限定するわけではないがIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むIgGである。
一態様において、ヒト化免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワークの配列は、ドナー免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワークの配列と少なくとも約65%同一であることができる。したがって、ヒト化免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワークの配列は、ドナー免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワークの配列と少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約99%または少なくとも約95%同一である。ヒトフレームワーク領域と、ヒト化抗体フレームワーク領域中に加えることができる変異は、当技術分野において公知である(例えば参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第5,585,089号を参照されたい)。
例示的ヒト抗体はLENおよび21/28CLである。多くのヒト重鎖および軽鎖フレームワークの配列が公知である。一般に抗体、例えばヒト抗体またはヒト化抗体は、Laタンパク質および/またはそのエピトープに、少なくとも107M-1、例えば少なくとも108M-1、少なくとも5×108M-1または少なくとも109M-1の親和定数で特異的に結合する。いくつかの例において、抗体は、Laタンパク質またはそのエピトープに、少なくとも108M-1、少なくとも5×108M-1または少なくとも109M-1の親和定数で特異的に結合する。これらの抗体は、対照と比較して、例えば抗体の非存在下での、または対照アイソタイプ対応抗体を使った場合の、破骨細胞融合と比較して、破骨細胞融合を阻害することができる。抗体は完全ヒト抗体であることができる。
マウスモノクローナル抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体などの抗体には、完全長分子が含まれると共に、重鎖および軽鎖の可変領域を含み、特異的エピトープに結合することができる、Fab、F(ab')2およびFvなどといった、そのフラグメントも含まれる。これらの抗体フラグメントは、それらの抗原または受容体と選択的に結合する能力を、いくらか保っている。これらのフラグメントには以下に挙げるものが含まれる。
(1)Fabは、抗体分子の一価抗原結合フラグメントを含有するフラグメントであり、全酵素を酵素パパインで消化してインタクトな軽鎖と1本の重鎖の一部分とを得ることによって作製することができる、
(2)Fab'は、抗体分子のフラグメントであって、全抗体をペプシンで処理し、次に還元して、インタクトな軽鎖と重鎖の一部分とを得ることによって得ることができ、抗体分子1つにつき2つのFab'フラグメントが得られる、
(3)(Fab')2、全抗体を酵素ペプシンで処理した後に還元を行わないことによって得ることができる抗体のフラグメント。F(ab')2は、2つのジスルフィド結合によって一つにまとめられた2つのFab'フラグメントの二量体である、
(4)Fv、2本の鎖として発現された軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域とを含有する遺伝子操作されたフラグメント、および
(5)一本鎖抗体(scFvなど)、これは、適切なポリペプチドリンカーにより、遺伝子融合された一本鎖分子として連結された、軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作された分子と定義される。
これらのフラグメントを作る方法は公知である(例えばHarlow and Lane、Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory, ニューヨーク, 1988を参照されたい)。いくつかの例において、可変領域には、個別のポリペプチドとして発現される軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域が含まれる。Fv抗体は典型的には約25kDaであり、各重鎖と各軽鎖にそれぞれ3つのCDRを持つ完全な抗原結合部位を含有する。これらの抗体を作製するために、宿主細胞中で、2つの個別の核酸構築物から、VHおよびVLを発現させることができる。VHおよびVLを非連続的に発現させる場合、Fv抗体の鎖は典型的には非共有結合相互作用によって一つにまとめられる。しかしこれらの鎖は希釈すると解離しがちであるため、グルタルアルデヒド、分子間ジスルフィドまたはペプチドリンカーによってそれらの鎖を架橋する方法が開発されている。したがって一例において、Fvは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とがジスルフィド結合によって化学的に連結されたジスルフィド安定化Fv(dsFv)であることができる。
さらなる一例では、Fvフラグメントがペプチドリンカーによって繋がれたVH鎖とVL鎖を含む。これらの一本鎖抗原結合タンパク質(scFv)は、オリゴヌクレオチドによって繋がれたVHドメインとVLドメインとをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製される。この構造遺伝子は発現ベクターに挿入され、次に大腸菌などの宿主細胞中に導入される。組換え宿主細胞は、2つのVドメインを橋渡しするリンカーペプチドを持つ単一のポリペプチド鎖を合成する。scFvを作製するための方法は公知である(Whitlow et al., Methods: a Companion to Methods in Enzymology, Vol.2, 97頁, 1991、Bird et al., Science 242:423, 1988、米国特許第4,946,778号、Pack et al., Bio/Technology 11:1271, 1993、およびSandhu, 前掲を参照されたい)。
抗体フラグメントは、抗体のタンパク質分解的加水分解によって、またはそのフラグメントをコードするDNAの大腸菌における発現によって、調製することができる。抗体フラグメントは、従来の方法による全抗体のペプシン消化またはパパイン消化によって得ることができる。例えば抗体フラグメントは、抗体をペプシンで酵素的に切断してF(ab')2と呼ばれる5Sフラグメントを得ることによって作製することができる。チオール還元剤と、任意でジスルフィド結合の切断によって生じるスルフヒドリル基のための保護基とを使って、このフラグメントをさらに切断することにより、3.5S Fab'一価フラグメントを作製することができる。あるいは、ペプシンを使った酵素切断では、2つの一価Fab'フラグメントとFcフラグメントが直接生成する(米国特許第4,036,945号および米国特許第4,331,647号ならびにそれらに含まれる参考文献、Nisonhoff et al., Arch.Biochem.Biophys.89:230, 1960、Porter, Biochem.J.73:119, 1959、Edelman et al., Methods in Enzymology, Vol.1, 422頁, Academic Press, 1967、およびColigan et alのセクション2.8.1~2.8.10および2.10.1~2.10.4を参照されたい)。
抗体を切断する他の方法、例えば重鎖の分離による一価軽鎖-重鎖フラグメントの形成、フラグメントのさらなる切断、または他の酵素的、化学的もしくは遺伝子的技法も、そのフラグメントがインタクトな抗体によって認識される抗原に結合する限り、使用しうる。本明細書に記載する抗原結合フラグメントはいずれも有用である。
抗体の保存的バリアントを作製することができる。dsFvフラグメントまたはscFvフラグメントなどの抗体フラグメントにおいて使用されるそのような保存的バリアントは、正しいフォールディングおよびVH領域とVL領域の間の安定化に必要な決定的アミノ酸残基を保ち、分子の低いpIおよび低い毒性を失わないように残基電荷特徴を保つだろう。収量を増加させるためにVH領域およびVL領域にアミノ酸置換(例えば最大でも1つ、最大でも2つ、最大でも3つ、最大でも4つ、または最大でも5つのアミノ酸置換)を行うことができる。いくつかの態様において、これらの置換はフレームワーク領域において行われ、CDRでは行われない。保存的アミノ酸置換の表は上に掲載した。当業者は、関心対象の抗体のアミノ酸配列を精査し、上記簡易表中のアミノ酸の1つまたは複数を捜し出し、保存的置換を特定し、分子的技法を使って保存的バリアントを作製することが容易にできる。
治療部分、診断部分または検出部分などのエフェクター分子は、いくつもの手段を使って、Laタンパク質に特異的に結合するアンタゴニスト抗体に連結することができる。共有結合による取付けも非共有結合による取付けも使用しうる。抗体にエフェクター分子を取り付けるための手順は、エフェクターの化学構造によってさまざまである。ポリペプチドは典型的には、カルボン酸(COOH)、遊離アミン(-NH2)またはスルフヒドリル(-SH)基など、さまざまな官能基を含有し、それらを、抗体上の適切な官能基との反応に利用して、エフェクター分子の結合をもたらすことができる。あるいは、抗体は、追加の反応性官能基を露出させまたは取り付けるために誘導体化される。誘導体化は、イリノイ州ロックフォードのPierce Chemical Companyから入手できるものなど、数あるリンカー分子のいずれかの取付けを伴いうる。リンカーは抗体をエフェクター分子に接合するために使用される任意の分子であることができる。リンカーは、抗体への共有結合とエフェクター分子への共有結合の両方を形成することができる。適切なリンカーには直鎖または分岐鎖炭素リンカー、複素環式炭素リンカー、またはペプチドリンカーなどがあるが、それらに限定されるわけではない。抗体とエフェクター分子とがポリペプチドである場合、リンカーは、構成アミノ酸にそれらの側基を介して(例えばジスルフィド結合を介してシステインに)、または末端アミノ酸のアルファ炭素アミノ基およびアルファ炭素カルボキシル基に接合されうる。
抗体をコードする核酸配列は、任意の適切な方法によって、例えば適当な配列のクローニングによって、またはNarang et al., Meth.Enzymol.68:90-99, 1979のホスホトリエステル法、Brown et al., Meth.Enzymol.68:109-151, 1979のホスホジエステル法、Beaucage et al., Tetra.Lett.22:1859-1862, 1981のジエチルホスホラミダイト法、Beaucage&Caruthers, Tetra.Letts.22(20):1859-1862, 1981に記載されている固相ホスホラミダイトトリエステル法などといった方法による直接的化学合成によって、例えばNeedham-VanDevanter et al., Nucl.Acids Res.12:6159-6168, 1984などに記載の自動合成装置および米国特許第4,458,066号に記載の固形支持体法を使って、調製することができる。化学合成では一本鎖オリゴヌクレオチドが作製される。これは、相補的配列とのハイブリダイゼーションによって、またはその一本鎖をテンプレートとして使用するDNAポリメラーゼを使った重合によって、二本鎖DNAオリゴヌクレオチドに変換することができる。化学合成によって生成させた短い配列のライゲーションによって、より長い配列を得ることもできる。
Laタンパク質に特異的に結合するアンタゴニスト抗体をコードする配列をコードする例示的核酸は、クローニング技法によって調製することができる。適当なクローニングおよびシーケンシング技法の例、および多くのクローニング作業を経た当業者に指示を与えるのに十分な説明書は、Sambrookら, 前掲、Berger and Kimmel編, 前掲、およびAusubel, 前掲に見いだされる。生物学的試薬類および実験装置の製造業者からの製品情報も有用な情報を与える。そのような製造業者には、SIGMA Chemical Company(ミズーリ州セントルイス)、R&D Systems(ミネソタ州ミネアポリス)、Pharmacia Amersham(ニュージャージー州ピスカタウェイ)、CLONTECH Laboratories, Inc.(カリフォルニア州パロアルト)、Chem Genes Corp.、Aldrich Chemical Company(ウィスコンシン州ミルウォーキー)、Glen Research, Inc.、GIBCO BRL Life Technologies, Inc.(メリーランド州ゲイサーズバーグ)、Fluka Chemica-Biochemika Analytika(Fluka Chemie AG、スイス・ブックス)、Invitrogen(カリフォルニア州サンディエゴ)、およびApplied Biosystems(カリフォルニア州フォスターシティ)、ならびに他の商業的供給源がある。
核酸は増幅法によって調製することもできる。増幅法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写に基づく増幅系(TAS)、自己持続性配列複製系(3SR)が挙げられる。多種多様なクローニング方法、宿主細胞およびインビトロ増幅方法が公知である。
一例では、Laタンパク質に特異的に結合するアンタゴニスト抗体からの可変領域をコードするcDNAを、エフェクター分子(effector molecule: EM)をコードするcDNAを含むベクター中に挿入することによって、有用な抗体が調製される。この挿入は、可変領域とEMとが同じ読み枠で読み取られて、連続した一つのポリペプチドが産生されるように行われる。したがって、コードされているポリペプチドは、機能的なFv領域と機能的なEM領域とを含有する。一態様では、検出可能なマーカー(例えば酵素)をコードするcDNAが、そのマーカーがscFvのカルボキシル末に位置づけられるように、scFvにライゲートされる。別の一例では、検出可能なマーカーがscFvのアミノ末端に位置づけられる。さらなる一例では、検出可能なマーカーをコードするcDNAが、そのマーカーが重鎖可変領域のカルボキシル末に位置づけられるように、Laタンパク質に特異的に結合するアンタゴニスト抗体の重鎖可変領域にライゲートされる。次に、重鎖可変領域は、ジスルフィド結合を使って、Laタンパク質に特異的に結合する抗体の軽鎖可変領域にライゲートすることができる。さらにもう一つの例では、マーカーをコードするcDNAが、そのマーカーが軽鎖可変領域のカルボキシル末に位置づけられるように、Laタンパク質に結合するアンタゴニスト抗体の軽鎖可変領域にライゲートされる。次に、軽鎖可変領域は、ジスルフィド結合を使って、Laタンパク質に特異的に結合するアンタゴニスト抗体の重鎖可変領域にライゲートすることができる。
Laアンタゴニスト抗体またはその機能的フラグメントをコードする核酸が単離され、クローニングされたら、そのタンパク質を、細菌細胞、植物細胞、酵母細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞などの組換え操作された細胞中で発現させることができる。抗体またはその機能的フラグメントをコードする1つまたは複数のDNA配列は、適切な宿主細胞へのDNA導入によって、インビトロで発現させることができる。細胞は原核細胞または真核細胞でありうる。この用語は、対象宿主細胞の任意の子孫も包含する。複製中に起こる変異が存在しうるので、すべての子孫が親細胞と同一であるとは限らないことは理解される。外来DNAが宿主中に継続的に維持されることを意味する安定な移入の方法は公知である。
抗体またはその機能的フラグメント(例えばscFV)をコードするポリヌクレオチド配列は、発現制御配列に機能的に連結することができる。コード配列に機能的に連結された発現制御配列は、その発現制御配列と適合する条件下でコード配列の発現が達成されるようにライゲートされる。発現制御配列には、例えば適当なプロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質コード遺伝子の前の開始コドン(すなわちATG)、イントロンのためのスプライシングシグナル、mRNAの適正な翻訳を可能にするための当該遺伝子の正しい読み枠の維持、および停止コドンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。開示する抗体をコードするRNAも有用である。
抗体またはその機能的フラグメントをコードするポリヌクレオチド配列は、発現ベクター中に、例えば限定するわけではないが、配列の挿入または組み入れが可能になるように操作することができ、原核生物または真核生物のいずれかにおいて発現させることができるプラスミド、ウイルスその他のビヒクル中に、挿入することができる。宿主としては、微生物、酵母、昆虫および哺乳動物である生物を挙げることができる。真核生物配列またはウイルス配列を有するDNA配列を原核生物中で発現させる方法は当技術分野において周知である。宿主内で発現し複製することができる生物学的に機能的なウイルスDNAベクターおよびプラスミドDNAベクターは公知である。
組換えDNAによる宿主細胞の形質転換は従来の技法によって実行しうる。宿主が大腸菌などの原核宿主である場合、DNA取込み能を有するコンピテント細胞は、指数増殖期後に収穫し、次にCaCl2法で処理した細胞から、調製することができる。代替的にMgCl2を使用することもできる。形質転換は、所望であれば、宿主細胞のプロトプラストを形成させてから実施するか、またはエレクトロポレーションによって実施することもできる。
宿主が真核生物である場合は、リン酸カルシウム共沈殿法などのDNAトランスフェクション法、マイクロインジェクションなどの機械的手順、エレクトロポレーション、リポソームに封入されたプラスミドの挿入、またはウイルスベクターを使用しうる。真核細胞は、抗体またはその機能的フラグメントをコードするポリヌクレオチド配列と、単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子などの選択可能な表現型をコードする第2の外来DNA分子とで、共形質転換することもできる。もう一つの方法は、真核生物ウイルスベクター、例えばシミアンウイルス40(SV40)またはウシパピローマウイルスを使って、真核細胞を一過性に感染させまたは形質転換し、タンパク質を発現させることである(例えば、Eukaryotic Viral Vectors、Cold Spring Harbor Laboratory, Gluzman編, 1982参照)。当業者は、COS、CHO、HeLaおよび骨髄腫細胞株などの高等真核細胞を含む細胞においてタンパク質を産生するのに役立つプラスミドおよびベクターなどの発現系を容易に使用することができる。
組換え発現させたポリペプチドの単離および精製は、分取クロマトグラフィーおよび免疫学的分離を含む従来の手段によって実行することができる。組換え抗体を発現させたら、それを、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィーなどを含む当技術分野の標準的手順に従って、精製することができる(一般論についてはR.Scopes、Protein Purification、Springer-Verlag, N.Y., 1982を参照されたい)。本明細書では少なくとも約90~95%の均一性を有する実質的に純粋な組成物が開示され、薬学的目的には98~99%またはそれ以上の均一性を使用することができる。治療的に使用される場合、ひとたび要望どおり部分的にまたは均一に精製されたら、ポリペプチドはエンドトキシンを実質的に含んではならない。
大腸菌などの細菌からの一本鎖抗体の発現および/または一本鎖抗体を含む適当な活性型へのリフォールディングのための方法は記載されており、それらは本明細書に開示する抗体に応用可能である。Buchner et al., Anal.Biochem.205:263-270, 1992、Pluckthun, Biotechnology 9:545, 1991、Huse et al., Science 246:1275, 1989、およびWard et al., Nature 341:544, 1989を参照されたい。これらの文献はいずれも参照により本明細書に組み入れられる。
大腸菌または他の細菌からの機能的異種タンパク質は、封入体から単離され、強い変性剤を使った可溶化とそれに続くリフォールディングを必要とする場合が多い。可溶化工程中は、ジスルフィド結合を分離させるために、還元剤が存在しなければならない。還元剤を含む例示的緩衝液は、0.1MトリスpH8、6Mグアニジン、2mM EDTA、0.3M DTE(ジチオエリスリトール)である。ジスルフィド結合の酸化還元反応は、参照により本明細書に組み入れられるSaxena et al., Biochemistry 9:5015-5021, 1970に記載されているように、そして特にBuchnerら, 前掲に記載されているように、還元型および酸化型の低分子量チオール試薬の存在下で起こりうる。
復元は、典型的には、変性され還元されたタンパク質の、リフォールディング緩衝液への希釈(例えば100倍希釈)によって達成される。例示的緩衝液は、0.1Mトリス、pH8.0、0.5M L-アルギニン、8mM酸化型グルタチオン(GSSG)および2mM EDTAである。
二本鎖抗体精製プロトコールの変法として、重鎖領域と軽鎖領域が別々に可溶化され、還元され、次にそれらが、リフォールディング溶液中で混合される。これらの2つのタンパク質を、一方のタンパク質が他方のタンパク質に対して5倍モル過剰を超えないようなモル比で混合すると、例示的収量が得られる。酸化還元シャフリングの完了後、リフォールディング溶液には過剰量の酸化型グルタチオンまたは他の酸化低分子量化合物を加えることが望ましい。
組換え法に加えて、本明細書に開示するアンタゴニスト抗体およびその機能的フラグメントは、標準的ペプチド合成を使って、その全体または一部を構築することもできる。約50アミノ酸長未満のポリペプチドの固相合成は、その配列のC末アミノ酸を不溶性支持体に取り付け、次に配列中の残りのアミノ酸を逐次的に付加することによって達成することができる。固相合成の技法は、Barany&Merrifield、The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology. Vol.2: Special Methods in Peptide Synthesis、Part A, 3~284頁、Merrifield et al., J.Am.Chem.Soc.85:2149-2156, 1963、およびStewartら、Solid Phase Peptide Synthesis、第2版, Pierce Chem.Co., イリノイ州ロックフォード, 1984に記載されている。それより長いタンパク質は、短いフラグメントのアミノ末端とカルボキシ末端の縮合によって合成されうる。カルボキシ末端の活性化によって(例えばカップリング試薬N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミドを使用するなどして)ペプチド結合を形成させる方法は公知である。
B. 阻害性核酸分子
本明細書に開示する方法では、Laタンパク質の発現および/または活性を減少させる阻害性核酸も使用することができる。いくつかの例において、そのような阻害性核酸分子はLaタンパク質の発現または活性を少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、さらには100%減少させる。一態様は、標的の発現の妨害または阻害に使用することができるRNA干渉(RNAi)、例えば限定するわけではないが、低分子阻害性RNA(siRNA)または短鎖ヘアピンRNAである。Laタンパク質を特異的に標的とするRNAは、例えばSanta Cruz Biotechnology, Inc.、ThermoFisher Scientific、およびSigma Aldrichから市販されている。開示する方法に使用することができるLaに特異的な例示的市販RNAi配列には、
センス
Figure 2024512305000009
;およびアンチセンス
Figure 2024512305000010
が含まれる。
一般に、siRNAは、比較的長い二本鎖RNA分子がダイサーまたはDCL酵素で切断されることによって生成する(Zamore, Science, 296:1265-1269, 2002、Bernstein et al., Nature, 409:363-366, 2001)。動物および植物では、siRNAがRISCに組み込まれ、RISCの配列特異的リボヌクレオチド鎖切断活性をガイドすることにより、細胞質中のmRNAまたは他のRNA標的の切断をもたらす。核では、siRNAは、ヘテロクロマチン関連ヒストンおよびDNAのメチル化をガイドし、それが、個々の遺伝子または大きなクロマチンドメインの転写サイレンシングをもたらす。
本開示は、Laタンパク質の発現の妨害または阻害に適したRNAであって、発現の妨害または阻害が望まれるLaタンパク質などの標的遺伝子のmRNAまたは転写産物の一部分と実質的に同一な配列を持つ約19~約40ヌクレオチドの二本鎖RNAを含むRNAを提供する。この開示に関して、発現の妨害または阻害が望まれる標的遺伝子のmRNAまたは転写産物の特定部分に「実質的に同一な」RNAの配列と、標的遺伝子のmRNAまたは転写産物のその特定部分との相違は、約30%以下であり、いくつかの態様では、約10%以下または5%以下である。特定の態様において、RNAの配列は、標的遺伝子のmRNAまたは転写産物(例えばLaタンパク質転写産物)の特定部分と厳密に同一である。
したがって本明細書に開示するsiRNAは、約15~約40ヌクレオチド長の二本鎖RNAおよび各鎖上の0~5ヌクレオチドの長さを有する3'または5'オーバーハングを含み、二本鎖RNAの配列は、Laタンパク質をコードする核酸のmRNAまたは転写産物の一部分と実質的に同一(上記参照)である。特定の例では、二本鎖RNAが、Laタンパク質をコードする核酸と実質的に同一な約19~約25ヌクレオチド、例えば20、21または22ヌクレオチドを含有する。さらなる例では、二本鎖RNAが、Laタンパク質をコードする核酸と100%同一な約19~約25ヌクレオチドを含有する。この文脈において「約」とは整数量だけを指すことに注意すべきである。一例において、「約」20ヌクレオチドとは19~21ヌクレオチド長のヌクレオチドを指す。
二本鎖RNA上のオーバーハングに関して、オーバーハングの長さは、一方のオーバーハングの長さが他方の鎖上のオーバーハングの長さに依存しないという点で、2本の鎖の間で独立である。具体的な例において、3'または5'オーバーハングの長さは少なくとも一方の鎖では0ヌクレオチドであり、いくつかの例では、両方の鎖において0ヌクレオチド(したがって平滑末端dsRNA)である。別の例では、3'または5'オーバーハングの長さが少なくとも一方の鎖において1ヌクレオチド~5ヌクレオチドである。より具体的には、いくつかの例では、3'または5'オーバーハングの長さが少なくとも一方の鎖で2ヌクレオチドであるか、または両方の鎖で2ヌクレオチドである。具体的な例では、dsRNA分子が両方の鎖上に2ヌクレオチドの3'オーバーハングを有する。
したがって、提供される特定RNA態様の一つでは、二本鎖RNAが20、21または22個のヌクレオチドを含有し、3'オーバーハングの長さはどちらの鎖でも2ヌクレオチドである。本明細書において提供されるRNAの態様では、二本鎖RNAが約40~60%のアデニン+ウラシル(AU)と約60~40%のグアニン+シトシン(GC)を含有する。より具体的には、特定の例において、二本鎖RNAは約50%のAUおよび約50%のGCを含有する。
本明細書では、例えば二本鎖RNAのセンス鎖に、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドをさらに含むRNAも、開示される。特定の例において、修飾リボヌクレオチドは少なくとも一方の鎖の3'オーバーハング中、より具体的にはセンス鎖の3'オーバーハング中にある。修飾リボヌクレオチドの例には、検出可能なラベル(例えばローダミンまたはFITCなどの発蛍光団)を含むリボヌクレオチド、チオホスフェートヌクレオチド類似体、デオキシヌクレオチド(塩基分子はリボ核酸であるから修飾体とみなされる)、2'-フルオロウラシル、2'-アミノウラシル、2'-アミノシチジン、4-チオウラシル、5-ブロモウラシル、5-ヨードウラシル、5-(3-アミノアリル)-ウラシル、イノシン、または2'O-Me-ヌクレオチド類似体が含まれると考えられる。
Laタンパク質に対するアンチセンスおよびリボザイム分子は、本明細書に開示する方法において有用である。アンチセンス核酸は、特異的mRNA分子の少なくとも一部分に対して相補的なDNA分子またはRNA分子である(Weintraub, Scientific American 262:40, 1990)。細胞において、アンチセンス核酸は対応するmRNAにハイブリダイズして二本鎖分子を形成する。細胞は二本鎖であるmRNAを翻訳しないだろうから、アンチセンス核酸はmRNAの翻訳を妨害することになる。約15ヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーを使用することができる。それらは合成が容易で、Laタンパク質を産生する標的細胞中に導入した場合に、より長い分子よりも問題を引き起こす可能性が低いからである。遺伝子のインビトロ翻訳を阻害するためのアンチセンス法の使用は公知である(例えばMarcus-Sakura, Anal.Biochem.172:289, 1988参照)。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45または50ヌクレオチド長である。アンチセンス核酸は化学合成および酵素的ライゲーション反応を使って構築することができる。例えばアンチセンス核酸分子は、天然ヌクレオチドを使って化学合成するか、または分子の生物学的安定性を増加させるためもしくはアンチセンス核酸とセンス核酸との間で形成される二重鎖の物理的安定性を増加させるために設計された、さまざまに改変されたヌクレオチド、例えばホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを使用することができる。アンチセンス核酸を生成させるために使用することができる修飾ヌクレオチドの例には、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン(xantine)、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルキューオシン、イノシンなどがある。
転写を止めるためのオリゴヌクレオチドの使用は、三重鎖(triplex)戦略として公知であり、この場合、オリゴヌクレオチドは二重らせんDNAに巻き付いて三本鎖らせんを形成する。したがってこれらの三重鎖化合物は、選ばれた遺伝子上のユニークな部位を認識するように設計することができる(Maher, et al., Antisense Res.and Dev.1(3):227, 1991、Helene, C., Anticancer Drug Design 6(6):569), 1991。本明細書に開示する方法ではこのタイプの阻害性オリゴヌクレオチドも有用である。
DNA制限エンドヌクレアーゼと類似する形で他の一本鎖RNAを特異的に切断する能力を持つRNA分子であるリボザイムも有用である。これらのRNAをコードするヌクレオチド配列の修飾により、RNA分子中の特異的ヌクレオチド配列を認識しそれを切断する分子を工学的に作出することが可能である(Cech, J.Amer.Med.Assn.260:3030, 1988)。このアプローチの利点は、それらが配列特異的であるがゆえに、特定の配列を持つmRNAだけが不活化されることである。
リボザイムには2つの基本タイプ、すなわちテトラヒメナ型(Hasselhoff, Nature 334:585, 1988)と「ハンマーヘッド」型とがある。テトラヒメナ型リボザイムは4塩基長の配列を認識し、一方、「ハンマーヘッド」型リボザイムは11~18塩基長の塩基配列を認識する。認識配列が長いほど、その配列がもっぱら標的mRNA種だけに存在する可能性は高くなる。そのため、特異的mRNA種を不活化するにはテトラヒメナ型リボザイムよりハンマーヘッド型リボザイムの方が好ましく、18塩基認識配列が、それより短い認識配列よりも好ましい。
さまざまな送達系が公知であり、siRNAおよび他の阻害性核酸分子を治療薬として投与するには、それらを使用することができる。そのような系には、例えばリポソームへの封入、マイクロ粒子、マイクロカプセル、ナノ粒子、治療分子を発現させることができる組換え細胞(例えばWu et al., J.Biol.Chem.262, 4429, 1987参照)、レトロウイルスベクターまたは他のベクターの一部としての治療核酸の構築などがある。
C. 化学化合物、低分子およびカスパーゼ阻害剤
Laタンパク質阻害剤には、天然物の大きなライブラリーまたは合成(もしくは半合成)抽出物の大きなライブラリーから同定される分子、またはケミカルライブラリーから同定される分子が含まれる。Laタンパク質活性の減少を検出するスクリーニング方法は、多様な供給源から活性によって化合物を同定するのに有用である。初期スクリーニングは、化合物の多様なライブラリー、さまざまな他の化合物および化合物ライブラリーを使って行いうる。したがって、Laタンパク質に結合する分子、Laタンパク質の発現を阻害する分子、およびLaタンパク質の活性を阻害する分子を同定することができる。これらの低分子は、コンビナトリアルライブラリー、天然物ライブラリーまたは他の低分子ライブラリーから同定することができる。加えて、Laアンタゴニストは、商業的供給源からの化合物として、および同定された阻害剤の市販の類似体として同定することもできる。Laアンタゴニストは、例えばそれが破骨細胞融合を減少させることを確認するためのアッセイなどにおいて、試験することができる。
試験抽出物または試験化合物の供給源そのものは、Laタンパク質低分子アンタゴニストの同定にとって重要でない。したがってLaタンパク質阻害剤は、事実上無数の化学抽出物または化学化合物から同定することができる。Laタンパク質阻害剤であることができるそのような抽出物または化合物の例には、植物、真菌、原核生物または動物に基づく抽出物、発酵ブロス、および合成化合物、ならびに既存の化合物の修飾があるが、それらに限定されるわけではない。いくつもの化学化合物の、例えば限定するわけではないが、糖、脂質、ペプチドおよび核酸に基づく化合物の、ランダム合成または指向的合成(例えば半合成または全合成)を行うために、数多くの方法を利用することもできる。合成化合物ライブラリーは、Brandon Associates(ニューハンプシャー州メリマック)およびAldrich Chemical(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から市販されている。La阻害剤は、Maybridge Chemical Co.(英国コーンウォール州トレビレット)、Comgenex(ニュージャージー州プリンストン)、Brandon Associates(ニューハンプシャー州メリマック)およびMicrosource(コネチカット州ニューミルフォード)を含むいくつかの企業から市販されている合成化合物ライブラリーから同定することができる。Laタンパク質阻害剤は、Aldrich(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から入手可能なライブラリーなど、レアケミカルライブラリーから同定することができる。Laタンパク質阻害剤は、Biotics(英国サセックス州)、Xenova(英国スラウ)、Harbor Branch Oceangraphics Institute(フロリダ州フォートピアース)およびPharmaMar, U.S.A.(マサチューセッツ州ケンブリッジ)を含むいくつかの供給元から市販されている細菌抽出物、真菌抽出物、植物抽出物および動物抽出物の形態にある天然化合物のライブラリー中に同定することができる。天然のおよび合成的に作製されたライブラリーおよび化合物は、従来の化学的、物理的および生化学的手段によって、容易に修飾される。
阻害剤として機能する有用な化合物は数多くの化合物クラス内に見いだすことができる。ただし、それらは典型的には、低分子有機化合物を含む有機化合物である。本明細書に開示する方法では、50ダルトンを上回るが約2,500ダルトン未満、例えば約750ダルトン未満または約350ダルトン未満である分子量を有する低分子有機化合物を利用することができる。例示的クラスには、複素環、ペプチド、糖類、ステロイドなどがある。化合物は、効力、安定性、薬学的適合性などを強化するために修飾しうる。
いくつかの態様において、カスパーゼ阻害剤は本明細書に開示する方法において有用である。カスパーゼは、ペプチド基質の切断の開始時にシステイン残基を使用する細胞内エンドプロテアーゼのファミリーである。カスパーゼの酵素的性質は触媒ダイアド(catalytic dyad)(システイン、ヒスチジン)の存在によって支配され、ここでは、システインがペプチド結合の切断を開始するための求核剤として作用する。カスパーゼの活性部位は高度に保存されており、ペプチド配列QACXG(SEQ ID NO: 6)(ここでXはアルギニン(R)、グルタミン(Q)またはグリシン(G)である)に含まれる触媒システインと、それらに、セリンプロテアーゼ・グランザイムBを除けば哺乳動物プロテアーゼとしてはユニークなアスパラギン酸残基後の基質切断という特異性を与える塩基性サブサイトSIとを伴う。一般にカスパーゼは、切断可能な結合のN末側にあるテトラペプチドモチーフP1~P4を認識し、それらはそれぞれ酵素のサブサイトS1~S4によって認識される。下流位置アスパラギン酸(P'1およびP'2)もカスパーゼの認識および特異性に関与する。参照により本明細書に組み入れられるPCT出願公開番号WO2017162674A1参照。
カスパーゼは、好まれるアミノ酸配列または主に認識されるアミノ酸配列に応じて、3つのグループにクラス分けされている。カスパーゼ1、4および5を含むカスパーゼのグループは、切断部位のN末側の位置4に疎水性芳香族アミノ酸を好むことが示されている。カスパーゼ2、3および7を含むもう一つのグループは、切断部位のN末側の位置1および4の両方にあるアスパルチル残基、好ましくはAsp-Glu-X-Aspを認識する。カスパーゼ6、8、9および10を含む第3のグループは、一次認識配列(primary recognition sequence)中の多くのアミノ酸を認容するが、位置4にバリンおよびロイシンなどの分岐脂肪族側鎖を持つ残基を好むようである。さらなる情報は、例えば参照によりその全体が本明細書に組み入れられるPCT出願公開番号WO2001010383A2に提供されている。カスパーゼ阻害剤は、参照により本明細書に組み入れられるLee et al., Expert Opinion on Therapeutic Patents 28(1), DOI:10.1080/13543776.2017.1378426にも開示されている。カスパーゼ阻害剤は、汎カスパーゼ阻害剤、例えば限定するわけではないが、Q z-VAD-fmk、Q-VD-OPHもしくはZ-VKD-FMK、エムリカサンまたはIDN-6556などであることができる。いくつかの態様において、カスパーゼ阻害剤は、カスパーゼ阻害剤z-VAD-fmkなどの汎カスパーゼ阻害剤である。例示的カスパーゼ阻害剤には、Z-DEVD-FMK、Ac-DMPD-CMKおよびAc-DMLD-CMK、Ac-ATS010-KE、ロズマリン酸およびクルクミン、Ac-DNLD-CHO、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、例えばイブプロフェン、ナプロキセン、ケトロラク、IDN-6556、エムリカサン、GS 9450、およびVRT-043198/VX-765(ベルナカサン)も含まれる。いくつかの非限定的な例において、カスパーゼ阻害剤はカスパーゼ3、カスパーゼ7またはカスパーゼ8阻害剤であることができる。
D. 阻害性Laペプチド
本明細書にはLaのペプチド阻害剤が開示される。これらのペプチドは、Laに結合するか、または完全長Laタンパク質および/もしくは低分子量切断型Laに特異的に結合する標的分子に結合し、完全長Laタンパク質とその標的との相互作用を阻害する。ペプチド阻害剤は対象における破骨細胞融合を減少させおよび/または骨吸収を低減することができる。これらのペプチド阻害剤は対照におけるLa活性を減少させる。
いくつかの態様において、これらのペプチド阻害剤はアネキシンA5に結合し、完全長Laタンパク質とアネキシンA5の相互作用を阻害する。さらなる態様において、ペプチド阻害剤は、処置なしまたはビヒクルのみによる処置などといった対照と比べて、破骨細胞融合を低減する。
いくつかの態様において、ペプチド阻害剤は、SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 7のうちの少なくとも15アミノ酸を含み、SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2および/またはSEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含まない。ペプチド阻害剤は、SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 7のアミノ酸のうちの少なくとも15、20、25、30、35または40アミノ酸を含むことができ、SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2および/またはSEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含まない。さらなる態様において、ペプチド阻害剤は、SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 7のうちの15~40アミノ酸、例えばSEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 7のうちの20~40、25~35、25~40、または30~40、15~35、15~30、または15~25アミノ酸を含む。さらなる態様において、ペプチド阻害剤は、SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 7のうちの15、20、25、30、35または40アミノ酸以下である。さらに別の態様において、ペプチド阻害剤は、SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 7のうちの15、20、25、30、35または40アミノ酸である。ペプチド阻害剤は、Laタンパク質によって誘導される破骨細胞融合を阻害する。適切なアッセイは、例えば実施例の項において開示される。
いくつかの態様において、ペプチド阻害剤は、(a)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 7に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有し、破骨細胞融合を促進するアミノ酸配列、または(b)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2もしくはSEQ ID NO: 7中に最大でも15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の保存的置換を有するアミノ酸配列のうちの、少なくとも15アミノ酸を含む。ペプチド阻害剤は、(a)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 7に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有し、破骨細胞融合を促進するアミノ酸配列、または(b)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2もしくはSEQ ID NO: 7中に最大でも15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の保存的置換を有するアミノ酸配列のうちの、少なくとも15、20、25、30、35または40アミノ酸を含む。さらなる態様において、ペプチド阻害剤は、(a)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 7に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有し、破骨細胞融合を促進するアミノ酸配列、または(b)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2もしくはSEQ ID NO: 7中に最大でも15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の保存的置換を有するアミノ酸配列のうちの、15~40アミノ酸を含む。さらなる態様において、ペプチド阻害剤は、(a)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 7に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有し、破骨細胞融合を促進するアミノ酸配列、または(b)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2もしくはSEQ ID NO: 7中に最大でも15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の保存的置換を有するアミノ酸配列のうちの、15、20、25、30、35または40アミノ酸以下である。さらなる態様において、ペプチド阻害剤は、(a)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 7に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有し、破骨細胞融合を促進するアミノ酸配列、または(b)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2もしくはSEQ ID NO: 7中に最大でも15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の保存的置換を有するアミノ酸配列のうちの、15~40アミノ酸、例えば(a)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 7に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有し、破骨細胞融合を促進するアミノ酸配列、または(b)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2もしくはSEQ ID NO: 7中に最大でも15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の保存的置換を有するアミノ酸配列のうちの、20~40、25~40、または30~40、15~35、15~30、または15~25アミノ酸を含む。さらなる態様において、ペプチド阻害剤は、(a)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 7に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有し、破骨細胞融合を促進するアミノ酸配列、または(b)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2もしくはSEQ ID NO: 7中に最大でも15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の保存的置換を有するアミノ酸配列のうちの、15、20、25、30、35または40アミノ酸以下である。さらに別の態様において、ペプチド阻害剤は、(a)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 7に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有し、破骨細胞融合を促進するアミノ酸配列、または(b)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2もしくはSEQ ID NO: 7中に最大でも15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の保存的置換を有するアミノ酸配列のうちの、15、20、25、30、35または40アミノ酸である。これらのペプチド阻害剤はLaタンパク質によって誘導される破骨細胞融合を阻害する。適切なアッセイは、例えば実施例の項において開示される。
非限定的な具体例において、ペプチド阻害剤は、
ペプチド2:
Figure 2024512305000011
または、ペプチド9:
Figure 2024512305000012
を含むか、またはそれからなる。
さらなる態様において、ペプチドは、SEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9のいずれかに少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、ペプチドは、SEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9に対してアミノ酸置換を1つだけ含有する。別の例では、ペプチドが、2、3、4、5個またはそれ以上のアミノ酸置換、例えばSEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9に対して、2、3、4、5個またはそれ以上のアミノ酸置換を含む。さらなる態様において、ペプチドのアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。これらのペプチド阻害剤はLaタンパク質によって誘導される破骨細胞融合を阻害する。適切なアッセイは、例えば実施例の項において開示される。一態様において、ペプチドは最大でも35アミノ酸長である。いくつかの態様において、ペプチドは25、26、27、28、29または30アミノ酸長である。非限定的な一例において、ペプチドは30アミノ酸長である。非限定的な具体例において、阻害ペプチドは、(a)SEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9からなる、あるいは(b)SEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9を含み、かつ最大でも35アミノ酸長である、あるいは(c)1、2、3、4または5個の保存的置換を伴うSEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9からなる、あるいは(d)1、2、3、4または5個の保存的置換を伴うSEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9を含み、かつ最大でも35アミノ酸長である。
有用なLaペプチド阻害剤は、宿主細胞における発現などといった組換え法を使って調製することができる。例示的核酸分子は、Laタンパク質について上に開示したように、クローニング技法によって調製することができる。Laタンパク質について上に開示したように、開示する方法では、Laペプチド阻害剤をコードする核酸分子およびベクターも有用である。Laペプチド阻害剤をコードする核酸および/またはベクターを導入することにより、対象におけるLaの活性が減少する。この局面については、Laタンパク質の使用に関して上に開示したが、同じ発現制御要素、ベクターおよび宿主細胞を使用することができる。
E. CRISR/Cas9
本開示には、細胞中の核酸分子(例えばゲノム、RNA)の部位特異的改変のための方法が含まれる。これらの改変には、ヌクレオチドの部位特異的な変異、欠失、挿入および置き換えが含まれうるが、それらに限定されるわけではない。これらの改変は、ゲノム内の、例えばなかんずくコード配列、制御要素および非コードDNA配列を含むゲノム要素内の、どこにおいても行うことができる。そのような改変はいくつでも行うことができ、それらの改変は任意の順序または組合せで、例えばすべてを同時にまたは一つずつ、行いうる。そのような方法は、Laなどの遺伝子の発現を改変するために使用しうる。ゲノム編集によってそのような改変を行うための技法には、CRISPR-Cas系、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)および転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)などの使用が含まれる。
典型的な一組のCRISPR系は、2つの構成要素CRISPR関連ヌクレアーゼ9(Cas9)と、それぞれがCRISPR RNA(crRNA)とトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)とを含有する1つまたは複数のガイドRNA(gRNA)とで構成される。単純な遺伝子破壊を、標的部位の切断と、それに続く核酸の変化、例えば欠失、および非相同末端連結経路(NHEJ)による修復によって生じさせることができる。crRNAによる標的認識は標的DNAとの相補的塩基対合によって起こり、それがCasタンパク質を使った外来配列の切断を指示する。いくつかの態様において、ガイドRNAによるDNA認識と、その結果起こるエンドヌクレアーゼによる切断は、標的中のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)(例えば5'-NGG-3')およびプロトスペーサー領域との相補的塩基対合を必要とする(Jinek et.al., Science.337:816-821, 2012)。Cas9が認識するPAMモチーフはCas9タンパク質が異なると異なる。本明細書に開示する系および方法では任意のCas9タンパク質を使用することができる。本明細書に開示する系および方法の別の態様では、プロモーターがCas9をコードする核酸に機能的に連結される。非限定的な一例において、骨特異的プロモーターはRunx2である。[有用なプロモーターを選んでください。このプロモーターは骨特異的ではありますが、正しい細胞には合っていないのではないかと考えます。]
上述のように、Cas9 RNAガイド系は、トランス活性化crRNA(tracrRNA)と塩基対合して標的DNAすなわちLaをコードする遺伝子中の所望の二本鎖(ds)切断点の遺伝子座にCas9を導く2RNA構造(two-RNA structure)を形成する、成熟crRNAを含む。いくつかの態様では、塩基対合したtracrRNA:crRNAの組合せを工学的に操作して一本のRNAキメラにすることで、配列特異的Cas9 dsDNA切断を指示する能力を保ったガイド配列(例えばgRNA)が作製される(Jinek et al., Science.337:816-821, 2012参照)。いくつかの態様において、Cas9-ガイド配列複合体は、La遺伝子内の標的配列において一方の鎖または両方の鎖の切断をもたらす。このようにCas9エンドヌクレアーゼ(Jinek et al., Science.337:816-821, 2012、Mali et.al., Nat Methods.2013 Oct;10(10):1028-1034)およびgRNA分子は、La遺伝子の配列特異的な標的認識、切断およびゲノム編集に使用される。一態様において、切断部位は特異的ヌクレオチド、例えば限定するわけではないが20ヌクレオチド(nt)標的のうちの16、17または18番目のntにある。非限定的な一例において、切断部位は20nt標的配列の17番目のヌクレオチドにある。切断は二本鎖切断であることができる。
いくつかの態様において、gRNA分子は、標的ゲノムがプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を保持するように選択される。いくつかの態様において、ガイドRNAによるDNA認識と、その結果起こるエンドヌクレアーゼによる切断は、標的の直後にプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)(例えば5'-NGG-3')の存在を必要とする。PAMは、標的とした核酸配列中に存在するが、それを標的とするために作製されたcrRNA中には存在しない。いくつかの態様において、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)は、リーダー遠位端のプロトスペーサーから直ちにまたはその近傍で始まる2~5ヌクレオチドに対応する。PAMモチーフは、NNAGAA、NAG、NGGNG、AWG、CC、CC、CCN、TCN、またはTTCである場合もある。
いくつかの態様において、切断はPAMの約3塩基対上流で起こる。いくつかの態様において、Cas9ヌクレアーゼは二本鎖核酸配列を切断する。
いくつかの態様において、ガイド配列は、配列内の二次構造の程度が低減するように選択される。二次構造は任意の適切なポリヌクレオチドフォールディングアルゴリズムによって決定しうる。いくつかのプログラムは最小ギブス自由エネルギーを計算することに基づく。そのようなアルゴリズムの一つの例はmFoldである(Zuker and Stiegler, Nucleic Acids Res.9(1981), 133-148)。フォールディングアルゴリズムのもう一つの例は、セントロイド構造予測アルゴリズムを使用するオンラインウェブサーバーRNAfoldである(例えばGruber et al., 2008, Cell 106(1):23-24およびCan and Church, 2009, Nature Biotechnology 27(12):1151-62参照)。ガイド配列は、crispr.mit.eduに見いだされるMIT CRISPR設計ツール、chopchop.cbu.uib.noに見いだされるHarvard and University of BergenのCHOPCHOPウェブツール、またはwww.e-crisp.org/E-CRISPに見いだされるE-CRISPツールを使って設計することができる。tracrRNAおよびガイド配列を設計するためのさらなるツールは、Naito et al., Bioinformatics.2014 Nov 20およびMa et al.BioMed Research International, Volume 2013(2013), Article ID 270805に記載されている。crRNAは18~48ヌクレオチド長であることができる。crRNAは18、19、20、21、22、23、24または25ヌクレオチド長であることができる。一例において、crRNAは20ヌクレオチド長である。
本明細書に開示する系は、La標的がCas9によって切断されるように、La遺伝子に二本鎖DNA切断点を導入する。これにより機能的Laタンパク質は産生されなくなる。いくつかの態様において、2種以上のgRNAを使用することにより、2つ以上のDNA切断点を導入することができる。例えば、2つの切断点が達成されるように、2種のgRNAを利用することができる。2つ以上の切断イベントの位置を定めるために2種以上のgRNAを使用する場合、標的核酸では、一態様において、2つ以上の切断イベントが同じまたは異なるCas9タンパク質によって行われうる。例えば、2つの二重鎖切断点の位置を定めるために2種のgRNAを使用する場合、Cas9ヌクレアーゼを一種だけ使って、両方の二重鎖切断点を作り出しうる。
いくつかの態様において、開示する方法は、(a)II型Cas9ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列に機能的に連結されたRunx2などの骨特異的プロモーター、(b)ヒト細胞などの標的細胞中でLa遺伝子とハイブリダイズする1種または複数種のCRISPR-CasガイドRNAをコードする1種または複数種のヌクレオチド配列に機能的に連結されたU6プロモーターなどのプロモーターを含む1種または複数種のベクターの使用を含む。構成要素(a)および(b)は同じベクターまたは異なるベクター上に位置づけることができ、前記1種または複数種のガイドRNAは標的細胞中のLa遺伝子を標的とし、Cas9タンパク質はLa遺伝子を切断する。非限定的な具体例において、前記1種または複数種のベクターは、レンチウイルスベクターなどのウイルスベクターである。別の非限定的な例において、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターである。
IV. 処置方法および薬学的組成物
本明細書では、破骨細胞融合を調節するための方法が開示される。これらの方法はインビボまたはインビトロで実施することができる。いくつかの態様において、開示する方法は破骨細胞融合を増加させる。別の態様において、開示する方法は破骨細胞融合を減少させる。インビボで実施した場合、開示する方法は骨吸収を調節することができる。いくつかの態様において、開示する方法は骨吸収を増加させる。別の態様において、開示する方法は骨吸収を減少させる。これらの方法は、有効量のLaタンパク質、Laタンパク質をコードする核酸分子、またはLaタンパク質の発現もしくは活性を調節する他の作用物質を対象に投与する工程を含む。
対象はヒト対象または獣医学的対象であることができる。対象は哺乳動物であることができる。開示する方法は、典型的には、ヒト対象を処置するために使用されることになるが、他の脊椎動物、例えば他の霊長類、イヌ、ネコ、ウマおよびウシにおける類似のまたは同じ疾患を処置するためにも使用しうる。
投与は全身的または局所的であることができる。哺乳動物に組成物を投与するための方法の例としては、限定するわけではないが、経口投与、皮下投与、筋肉内投与、皮内投与、腹腔内投与および静脈内投与が挙げられる。ただし吸入および直腸投与などの他の経路も考えられる。局所投与には対象の骨または関節への投与が含まれる。一般に、有効量は、対象と比較して、例えば処置なしまたは担体による処置と比較して、破骨細胞融合を調節する。
一態様において、投与は局所的、例えば骨膜(perioseum)への投与である。別の一態様において、投与は局所的であり、例えば髄内注射による。髄内投与は、骨膜または骨皮質に注射することなく、骨折部位の骨髄腔への直接注射によって達成することができる。髄内投与は、骨髄への直接注射によって、または髄内管を通したK-ワイヤの挿入によって投与することができる。
投与は、全身的投与の必要がある対象には、全身的であることができる。いくつかの態様において、有効量は対象における破骨細胞融合を増加させる。有効量は対象における骨吸収を増加させることができる。別の態様において、有効量は対象における破骨細胞融合を減少させる。有効量は対象における骨吸収を減少させることができる。
投与は局所投与、例えばそれを必要とする対象の骨への投与であることができる。いくつかの態様において、有効量は対象における破骨細胞融合を増加させる。有効量は対象における骨吸収を増加させることができる。別の態様において、有効量は対象における破骨細胞融合を減少させる。有効量は対象における骨吸収を減少させることができる。
Laタンパク質、Laタンパク質をコードする核酸作用物質(nucleic agent)、またはLaタンパク質の発現もしくは活性を調節する別の作用物質については、1回または複数回の投与を、対象が必要とし許容する投薬量および頻度に応じて投与することができる。いずれにしても、組成物は、患者における破骨細胞融合を調節するなど、対象を効果的に処置するのに十分な量を与えるべきである。組成物は1回投与することができるが、治療結果が達成されるまで、または副作用ゆえに治療を中断することが妥当になるまで、定期的に適用してもよい。一例において、用量は時間をかけて注入される。一例では、持続注入を約1日~約10日にわたって、例えば約2日~約5日にわたって、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10日にわたって、投与することができる。別の一例において、作用物質の用量はボーラスとして1回または複数回投与される。
対象は、所望の治療結果が達成されるまで、規則正しい間隔で、例えば毎日、週2回、毎週、月2回、または毎月、処置することができる。一般に用量は、患者にとって許容できない毒性を生じることなく、疾患の症状または徴候を処置または改善するのに十分な量である。この用途に有効な量は、作用物質の活性、疾患の重症度および患者の健康の一般的状態に依存するだろう。有効量は、症状の主観的軽減をもたらすか、または臨床家もしくは他の有資格観察者が気づく客観的に特定することのできる改善をもたらす。作用物質の併用も想定される。投与は、疾患の抑制または予防が望まれた時はいつでも、例えば対象のある特定の年齢において、または環境ばく露に先行して、始めることができる。いくつかの態様において、本方法は、疾患の症状のうちの1つまたは複数が出現する前に、対象における骨吸収を調節することができる。別の態様において、本方法は、疾患の1つまたは複数の症状の開始後に対象における骨吸収を調節することができる。
対象の処置には、作用物質の活性、投与の仕方、障害の性質および重症度、患者の年齢および体重に応じて、異なる用量が必要になる。ただし、ある特定の状況下では、用量の増加または減少が適当でありうる。用量の投与は、個々の用量単位の形で、またはいくつかの小分けした用量単位の形で1回の投与によって実行することができ、細分された用量を特定の間隔で複数回にわたって投与することによって実行することもできる。熟練した臨床家は有効用量を容易に決定することができる。
対象への投与のために、有効量のLaタンパク質、Laタンパク質をコードする核酸分子、またはLaタンパク質の発現もしくは活性を調節する別の作用物質を、薬学的に許容される担体に含めることができる。これらの薬学的組成物は、投与単位で調製し、投与することができる。固形投与単位は錠剤、カプセル剤、単回注射剤、さらには坐剤である。適切な投与フォーマットは、医療従事者が各対象について個別に決定することが最善だろう。さまざまな薬学的に許容される担体およびそれらの製剤は、標準的な製剤専門書、例えばE.W.MartinのRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。Wang, Y.J.and Hanson, M.A., Journal of Parenteral Science and Technology, Technical Report No.10, Supp.42:2S, 1988も参照されたい。薬学的組成物の剤形は、選択した投与の様式によって決まるだろう。一般に薬学的組成物は、有効量のLaタンパク質、またはLaタンパク質の機能もしくは活性を調節する作用物質を含む。
適切な固形または液状の薬学的調製物の形態は、例えば顆粒剤、散剤、錠剤、コート錠、(マイクロ)カプセル剤、坐剤、シロップ剤、エマルション、懸濁剤、クリーム剤、エアロゾル、滴剤またはアンプル型の注射用溶液剤、および活性化合物が持続性に放出される調製物であり、これらの調製物では、通例、賦形剤ならびに添加剤および/または補助剤、例えば崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、潤滑剤、香味料、甘味料、可溶化剤またはスキャフォールドが、上述のとおり、使用される。薬学的組成物は、さまざまな薬物送達系における使用に適している。薬物送達のための現在の方法を簡単に概観するには、Langer, Science 249:1527-1533, 1990を参照されたい。
本組成物の放出制御非経口製剤は、インプラント、油状注射剤または粒子系として作ることができる。タンパク質送達系を幅広く概観するには、参照により本明細書に組み入れられるBanga, A.J.、Therapeutic Peptides and Proteins:Formulation, Processing, and Delivery Systems、Technomic Publishing Company, Inc., ペンシルベニア州ランカスター(1995)を参照されたい。粒子系には、マイクロスフェア、マイクロ粒子、マイクロカプセル、ナノカプセル、ナノスフェア、およびナノ粒子が含まれる。マイクロカプセルは細胞毒または薬物などの治療タンパク質を中核として含有する。マイクロスフェアでは、治療薬が粒子全体に分散される。約1μmより小さい粒子、マイクロスフェアおよびマイクロカプセルは一般にそれぞれナノ粒子、ナノスフェアおよびナノカプセルと呼ばれる。毛細血管はおよそ5μmの直径を有するので、ナノ粒子だけが静脈内に投与される。マイクロ粒子は典型的には直径が100μm前後であり、皮下または筋肉内に投与される。例えばKreuter, J.、Colloidal Drug Delivery Systems、J.Kreuter編, Marcel Dekker, Inc., ニューヨーク州ニューヨーク, 219-342頁, 1994、およびTice&Tabibi、Treatise on Controlled Drug Delivery、A.Kydonieus編, Marcel Dekker, Inc., ニューヨーク州ニューヨーク, 315~339頁, 1992を参照されたい。これらの文献はどちらも参照により本明細書に組み入れられる。
作用物質が利用可能である時間を延ばすために、治療作用物質をインプラント、油状注射剤、または粒子系として提供することができる。粒子系は、マイクロ粒子、マイクロカプセル、マイクロスフェア、ナノカプセルまたは類似の粒子であることができる。
本明細書に開示する組成物のイオン制御放出にはポリマーを使用することができる。当技術分野では、薬物送達制御において使用するための分解性および非分解性ポリマーマトリックスが、種々公知である(Langer, Accounts Chem.Res.26: 537-542, 1993)。例えばブロックコポリマーであるポロキサマー407は、低温では粘稠だが流動性のある液体として存在するが、体温では半固形ゲルを形成する。これは、組換えインターロイキン-2およびウレアーゼの製剤および持続送達にとって有効な媒体であることが示されている(Johnston et al., Pharm.Res.9:425-434, 1992およびPec et al., J.Parent.Sci.Tech.44(2):58-65, 1990)。あるいは、ヒドロキシアパタイトがタンパク質の放出制御用のマイクロキャリアとして使用されている(Ijntema et al., Int.J.Pharm.112:215-224, 1994)。さらにもう一つの局面では、リポソームが放出制御に使用されると共に、脂質封入薬の薬物ターゲティングにも使用される(Betageriら、Liposome Drug Delivery Systems、Technomic Publishing Co., Inc., ペンシルベニア州ランカスター, 1993)。治療タンパク質の送達制御のための系は他にも数多く公知である。例えば米国特許第5,055,303号、米国特許第5,188,837号、米国特許第4,235,871号、米国特許第4,501,728号、米国特許第4,837,028号、米国特許第4,957,735号、米国特許第5,019,369号、米国特許第5,055,303号、米国特許第5,514,670号、米国特許第5,413,797号、米国特許第5,268,164号、米国特許第5,004,697号、米国特許第4,902,505号、米国特許第5,506,206号、米国特許第5,271,961号、米国特許第5,254,342号および米国特許第5,534,496号を参照されたい。これらの各米国特許は参照により本明細書に組み入れられる。
いくつかの態様では、骨への局所投与のために、例えばポリ乳酸とグリコール酸の組合せなどを含むスキャフォールドが利用される。これら2つの構成要素の比率を変えることにより、機械的性質の異なるポリマーが得られる。したがっていくつかの態様では、ポリ乳酸:グリコール酸の比が約1:1、約2:1、約3:1または約4:1である。一例において、スキャフォールド材料は約75%ポリ乳酸および約25%グリコール酸を含む。
別の一態様においてスキャフォールドは多孔性である。例えばスキャフォールドは、非荷重負荷組織(non-weight bearing tissue)などの場合、多孔度は約85%、約90%、約95%、約98%であることができる。さらなる例において、スキャフォールドは、荷重負荷組織(weight bearing tissue)などの場合には、多孔度約5%、多孔度約10%、多孔度約15%または多孔度約20%である。多孔度は、CO2処理によるマイクロスフェアの融合などによって決定することができる。このプロセスでは、市販のポリマーペレットを所望のサイズのマイクロスフェアに転換し、それらを融合することで多孔性構造が形成される。マイクロポアサイズを変えることにより、マイクロ多孔度(microporosity)が異なるスキャフォールドを得ることができる。これらのスキャフォールドは、例えばプラスミドDNA、AAVウイルスベクター、トランスポゾンベクターおよびMLVベクターと共に使用することができる。その他のスキャフォールドは上述した。
A. 破骨細胞融合を増加させるための方法の追加説明
いくつかの態様において、本方法は対象における破骨細胞融合を増加させる。これらの方法は、上に開示したLaタンパク質、Laタンパク質をコードする核酸、またはLaタンパク質アゴニストを利用する。いくつかの態様において、対象は、骨吸収の低減を含む疾患を有する。これらには、骨折および低破骨細胞性大理石骨病、破骨細胞性骨吸収が低減する遺伝的状態が含まれるが、それらに限定されるわけではない。これらの方法は骨吸収を増加させ、骨吸収の増加が対象にとって有益な障害の処置に使用することができる。これらの対象には、骨折および/または大理石骨病を持つ対象が含まれるが、それらに限定されるわけではない。これらの方法は脊椎固定にも影響を及ぼすことができる。
骨折治癒を促進するための方法が提供される。骨折は、任意の骨、例えば限定するわけではないが、頭蓋骨、例えば前頭骨、頭頂骨、側頭骨、後頭骨、蝶形骨、篩骨;顔面骨、例えば頬骨、上顎骨および下顎骨(superior and inferior maxilla)、鼻骨、下顎骨、口蓋骨(palantine bone)、涙骨、鋤骨、下鼻甲介;耳の骨、例えばツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨;舌骨;肩の骨、例えば鎖骨または肩甲骨;胸郭の骨、例えば胸骨または肋骨;脊柱の骨、例えば頸椎、腰椎および胸椎;腕の骨、例えば上腕骨、尺骨および橈骨;手の骨、例えば舟状骨、月状骨、三角骨、豆状骨(psiform bone)、大菱形骨、小菱形骨、有頭骨(cpitate bone)および有鉤骨;手掌の骨、例えば中手骨;指の骨、例えば基節骨、中節骨および末節骨;骨盤の骨、例えば腸骨、仙骨および尾骨;脚の骨、例えば大腿骨、脛骨、膝蓋骨、および腓骨(fibulal);足の骨、例えば踵骨、距骨、足の舟状骨、内側楔状骨、中間楔状骨(intermediate cuniform bone)、外側楔状骨、立方骨(cuboidal bone)、中足骨、基節骨、中節骨および末節骨;ならびに骨盤骨における骨折であることができる。一例において、骨折は、骨外性骨形成を伴わずに、例えば軟部組織における骨形成を伴わずに修復される。
本明細書記載のベクターを使って脊椎固定を促進する方法も提供される。限定するわけではないが頸椎、腰椎および胸椎を含む椎骨のいずれかにおいて、脊椎固定を誘導することができる。一例において、脊椎固定は、骨外性骨形成を伴わずに、例えば軟部組織における骨形成を伴わずに起こる。
さらなる態様において、本明細書に開示する方法は、骨の強度、機能および/または完全性に影響を及ぼす、例えば骨の引張強さおよびモジュラスを減少させる、何らかの疾患、欠損または障害によって骨が破損している対象を処置するために使用することができる。骨疾患の例として、骨粗鬆症などの骨脆弱性疾患が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
いくつかの態様において、治療有効容量は、骨成長を誘導し、プロスタグランジンの発現を増加させ、または骨折を治癒させるのに必要な量である。Laタンパク質、Laタンパク質をコードする核酸、またはLaタンパク質の活性および/もしくは発現を増加させ、破骨細胞融合を増加させる他の作用物質の投与は、対象における骨折または脊椎障害の症状、例えば痛みおよびその合併症を抑えることができる。この用途に有効な量は、もちろん、苦痛の重症度ならびに患者の体重および一般的状態に依存するだろう。典型的には、インビトロで使用された投薬量が、薬学的組成物のインサイチュー投与に有用な量の有用な手引きになり、動物モデルを使って特定の障害を処置するための有効投薬量を決定しうる。さまざまな考察が、例えばGilmanら編、Goodman And Gilman's: The Pharmacological Bases of Therapeutics、第8版, Pergamon Press, 1990および、Remington's Pharmaceutical Sciences、第17版, Mack Publishing Co., ペンシルベニア州イーストン, 1990に記載されており、これらの文献はそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
ある方法によって骨欠損が処置されるかどうかを決定するための例示的アッセイとしては、X線撮影法(Lehmann et al., Bone 35:1247-1255, 2004、Rundle et al., Bone 32:591-601, 2003、Nakamura et al., J.Bone Miner.Res.13:942-949, 1998);マイクロコンピュータ断層撮影(μCT)法(Nakamura et al., J.Bone Miner.Res.13:942-949, 1998、Lehmann et al., Bone 35:1247-1255, 2004、Tamasi et al., J.Bone Miner.Res.18:1605-1611, 2003、Shefelbine et al., Bone 36:480-488, 2005)、末梢定量的コンピュータ断層撮影法(Rundle et al., Bone 32:591-601, 2003、Tamasi et al., J.Bone Miner.Res.18:1605-1611, 2003)、二重エネルギーX線吸収測定法(Holzer et al., Clin.Orthop.Rel.Res.366:258-263, 1999、Nakamura et al., J.Bone Miner.Res.13:42-949, 1998)、組織形態計測法(Lehmann et al., Bone 35:247-1255, 2004、Tamasi et al., J.Bone Miner.Res.18:1605-1611, 2003、Li et al., J.Bone Miner.Res.17:791-799, 2002、Schmidmaier et al., Bone 30:816-822;2002、Nakamura et al., J.Bone Miner.Res.13:942-949, 1998、Sheng et al., Bone 30:486-491, 2002)、コラーゲンのマッソントリクローム染色(Rundle et al., Bone 32:591-601, 2003)、コラーゲンのゴールドナー染色(Holzer et al., Clin.Orthop.Rel.Res.366:258-263;1999)、骨のフォン・コッサ銀染色(Schmidmaier et al., Bone 30:816-822, 2002)、コラーゲンのサフラニンオレンジ染色(Schmidmaier et al., Bone 30:816-822, 2002)、および免疫組織化学法(Rundle et al., Bone 32:591-601, 2003、Li et al., J.Bone Miner.Res.17:791-799, 2002、Safadi et al., J.Cell Physiol.196:51-62, 2003、Iwaki et al., J.Bone Miner.Res.12:96-102, 1997)が挙げられる。
骨欠損の処置には、骨欠損の部位における空隙または構造的不連続を少なくとも部分的に埋めるのに十分な骨形成の刺激が含まれる。骨欠損の処置は、完全な治癒の過程も、欠損をその欠損前の状態に復元するのに100%有効である処置も必要としない。骨欠損の処置の成功には、部分的修復または治癒、例えば骨欠損の、新しい骨材量による、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の充填が含まれる。
ウイルスベクターを利用する場合は、少なくとも105、少なくとも106、または少なくとも107プラーク形成単位/mg哺乳動物、例えば約105~約1010プラーク形成単位/mg哺乳動物の、組成物中の各組換えウイルスの投薬量を、レシピエントに与えることが望ましい場合がある。ただし、これより低いまたは高い用量を投与することもできる。組換えウイルスベクターの組成物を対象に導入することができる。
一般に、投与しようとするポリペプチドの核酸配列を運ぶ組換えウイルスベクターの量は、ウイルス粒子の力価に基づく。投与されるウイルスの例示的範囲は、ヒトなどの哺乳動物あたり105~1010ウイルス粒子である。
いくつかの態様において、Laタンパク質、Laタンパク質をコードする核酸、またはLaタンパク質の活性および/もしくは機能を増加させる作用物質は、追加の治療作用物質と共に投与することができる。したがって、例えば骨折の処置には、LMP-1、FGF-2、BMPもしくは関連タンパク質、またはこれらのタンパク質のうちの1つまたは複数をコードする核酸を投与することができる。例えばLMP-1は、複数の骨形態形成タンパク質(BMP)を動員することによって骨形成を誘導することが示されている転写制御因子である(Liu et al., Bone 35:673-681, 2004参照)。理論に束縛されるものではないが、LMP-1の発現は、周囲の細胞における骨芽細胞分化をさらに強化するプロスタグランジンやBMPなどの骨誘導性パラクリン因子を、細胞に産生させる。別の態様では、骨形態形成タンパク質、例えばBMP-2、BMP-4、BMP-7および/もしくはBMP-2/4ハイブリッド、または骨形態形成タンパク質をコードする核酸が、投与される。別の一態様では、骨折修復をさらに強化するために、FGF-2などの増殖因子が投与される。
化学化合物などの他の作用物質も投与することができる。一態様では、抗炎症剤、例えば非ステロイド性抗炎症剤が、対象に投与される。別の一態様では、抗生物質、抗真菌剤または抗ウイルス剤が、対象に投与される。このように、開示する方法では、骨折治癒および/または脊椎固定を促進するために、他の治療剤も利用することができる。
対象が骨粗鬆症を有する場合、本方法は、有効量のビスホスホネートまたはカルシトニンを投与する工程を、さらに含むことができる。さらなる態様において、本方法は、有効量のビスホスホネート、核因子カッパB活性化受容体リガンド(RANKL)に特異的に結合する抗体、および/またはテリパラチドを投与する工程を含む。非限定的な一具体例において、RANKLに特異的に結合する抗体はデノスマブである。ビスホスホネートの例としては、ゾレドロン酸、パミドロネート、イバンドロネート、アレンドロネート、およびリセドロネートが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
B. 破骨細胞融合を減少させる方法の追加説明
いくつかの態様において、対象における破骨細胞融合を減少させるための方法が開示される。本方法は、有効量の、対象におけるLaタンパク質の活性または発現を減少させる作用物質を、対象に投与する工程を含む。本方法は対象における骨吸収を減少させることができる。さらなる態様において、対象は骨吸収の増加を含む疾患を有する。これらの方法は骨吸収を減少させ、骨吸収の増加が対象において観察される障害の処置に使用することができる。いくつかの態様において、対象は骨粗鬆症、骨パジェット病、線維性骨異形成症、関節リウマチ、骨髄炎または転移性骨疾患を有する。非限定的な一具体例において、対象は線維性骨異形成症を有する。別の態様において、対象は高破骨細胞性大理石骨病を有する。
いくつかの態様において、作用物質は阻害性核酸分子である。非限定的な一具体例では、治療有効量のポリヌクレオチドが、骨吸収の増加を含む疾患を処置するために対象に投与される。
さらなる態様において、作用物質は、阻害性Laペプチド、阻害性Laペプチドをコードする核酸分子、または該核酸分子を含むベクターである。有効量の阻害性Laペプチド、阻害性Laペプチドをコードする核酸分子または該核酸分子を含むベクターの投与は、対象における破骨細胞融合を減少させる。
核酸構築物の投与は、例えば米国特許第5,643,578号、米国特許第5,593,972号および米国特許第5,817,637号ならびに米国特許第5,880,103号に教示されている。この方法は核酸の(またはLaタンパク質の)リポソーム送達を含む。
核酸投与のための1つのアプローチは、プラスミドDNA、例えば哺乳動物発現プラスミドの直接投与である。上述のように、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、分子の発現を増加させるために、プロモーターのコントロール下に置くことができる。本明細書に開示する方法ではCRISPR/Cas系も有用である。
阻害性核酸分子は、弱毒化ウイルス宿主もしくはベクターまたは細菌ベクターによって発現させることもできる。組換えワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、または他のウイルスベクターは、ペプチドまたはタンパク質を発現させるために使用することができる。例えばワクシニアベクターおよび投与方法は米国特許第4,722,848号に記載されている。BCG(Bacillus Calmette Guerin: カルメット・ゲラン菌)は、ペプチドを発現させるためのもう一つのベクターになる(Stover, Nature 351:456-460, 1991参照)。
ウイルスベクターを利用する場合は、少なくとも105、少なくとも106、または少なくとも107プラーク形成単位/mg哺乳動物、例えば約105~約1010プラーク形成単位/mg哺乳動物の、組成物中の各組換えウイルスの投薬量を、レシピエントに与えることが望ましい場合がある。ただし、これより低いまたは高い用量を投与することもできる。組換えウイルスベクターの組成物を対象に導入することができる。一般に、投与される組換えウイルスベクターの量はウイルス粒子の力価に基づく。投与されるウイルスの例示的範囲は、ヒトなどの哺乳動物あたり105~1010ウイルス粒子である。
いくつかの態様では、有効量のアンタゴニスト抗体またはその抗原結合フラグメントが対象に投与される。アンタゴニスト抗体およびその抗原結合フラグメントは、既知濃度の滅菌溶液としても提供されるが、凍結乾燥体として提供して、投与前に滅菌水で再水和することもできる。次に、0.9%塩化ナトリウムUSPが入っている注入バッグにその抗体溶液を加え、典型的には0.5~15mg/kg体重の投薬量で投与する。1997年のRITUXAN(登録商標)の承認以来、米国内で販売されてきた抗体薬の投与における豊富な経験を、当技術分野では利用することができる。抗体薬は、IVプッシュまたはIVボーラスよりはむしろ、緩徐注入によって投与することができる。一例では、高めの初回負荷量を投与した後、それより低いレベルで維持量を投与する。例えば、少なくとも0.5mg/kg、例えば少なくとも1mg/kg、例えば4mg/kgの初回負荷量を、およそ90分かけて注入し、次に、先の用量の忍容性が高ければ、少なくとも0.5mg/kg、例えば少なくとも1mg/kg、例えば2mg/kgの維持量を毎週、4~8週間にわたって、30分かけて注入する。
非限定的な一具体例において、静脈内投与用の薬学的組成物は、1日あたり患者あたり約0.1μg~10mgのアンタゴニスト抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。アンタゴニスト抗体またはその抗原結合フラグメントが体腔または臓器の内腔に投与される場合は特に、1日あたり対象あたり0.1mg~最大約100mgの投薬量を使用することができる。
いくつかの態様では、追加の作用物質が対象に投与される。いくつかの態様において、対象は骨粗鬆症を有する。さらなる態様において、本方法は、有効量のビスホスホネート、核因子カッパB活性化受容体リガンド(RANKL)に特異的に結合する抗体、および/またはテリパラチドを投与する工程を含む。非限定的な一具体例において、RANKLに特異的に結合する抗体はデノスマブである。ビスホスホネートの例としては、ゾレドロン酸、パミドロネート、イバンドロネート、アレンドロネート、およびリセドロネートが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
いくつかの態様において、対象は骨パジェット病を有する。本方法は有効量のビスホスホネートまたはカルシトニンを投与する工程を含むことができる。ビスホスホネートの例としては、ゾレドロン酸、パミドロネート、イバンドロネート、アレンドロネート、およびリセドロネートが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
さらなる態様において、対象は線維性骨異形成症を有する。本方法はデノスマブを投与する工程を含むことができる(Boyce et al., J Bone Miner Res.2012 Jul;27(7):1462-1470)。本方法は有効量のビスホスホネートを投与する工程を含むことができる。ビスホスホネートの例としては、ゾレドロン酸、パミドロネート、イバンドロネート、アレンドロネート、およびリセドロネートが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
さらなる態様において、対象は関節リウマチを有する。本方法は、有効量の非ステロイド性抗炎症剤、ステロイド、メトトレキサート、レフルノミド、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、トファシチニブ、アバタセプト、アダリムマブ、アナキナラ(anakinara)、バリシチニブ、セルトリズマブ、エンタネルセプト(entanercept)、ゴリムマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、サリルマブ、および/またはトシルズマブ(tocilzumab)を投与する工程を含むことができる。
さらなる態様において、対象は骨髄炎を有する。本方法は有効量の抗生物質を投与する工程を含むことができる。適切な抗生物質には、アモキシシリン-クラブラネート、シプロフロキサシン+クリンダマイシン、レボフロキサシン+クリンダマイシンまたはモキシフロキサシン)などがあるが、それらに限定されるわけではない。本方法は、抗真菌薬、例えば限定するわけではないが、イトラコナゾール、フルコナゾール、ケトコナゾール、テルビナフィン、およびボリコナゾールを投与する工程も含むことができる。本方法は、デノスマブおよび/またはテリパラチドを投与する工程も含むことができる。
さらなる他の態様において、対象は転移性骨疾患を有する。さらなる態様において、対象は骨肉腫を有する。本方法は、化学療法剤、免疫療法または放射線照射で対象を処置する工程も含むことができる。原発性がんは、例えば乳腺腫瘍、肺腫瘍、甲状腺腫瘍、腎臓腫瘍、または前立腺腫瘍であることができる。本方法は有効量のビスホスホネートまたはカルシトニンを投与する工程を含むことができる。ビスホスホネートの例としては、ゾレドロン酸、パミドロネート、イバンドロネート、アレンドロネート、およびリセドロネートが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。本方法は、デノスマブを投与する工程も含むことができる。
V. キット
キットも提供される。いくつかの態様において、キットは、Laタンパク質、そのフラグメントを含むことができる。キットは、Laタンパク質をコードする核酸またはベクターを含むこともできる。別の態様において、キットは、対象におけるLaタンパク質の発現または活性を減少させる作用物質を含むことができる。
いくつかの態様において、キットは、(a)Laタンパク質もしくはその有効フラグメント、またはLaタンパク質もしくはその有効フラグメントをコードする核酸分子もしくはベクター、および、任意で、(b)Laと相互作用してその活性を調節する1種または複数種のタンパク質、もしくはその有効フラグメント、またはこれらのタンパク質もしくはその有効フラグメントをコードする核酸分子もしくはベクター、および、(c)LMP-1、FGF-2、BMPもしくは関連タンパク質、またはこれらのタンパク質のうちの1つまたは複数をコードする核酸を含む。いくつかの態様において、キットは要素(a)および(c)を含む。
さらなる態様において、キットは、(a)対象におけるLaタンパク質の発現または活性を減少させる作用物質、ならびに、(b)ビスホスホネート、RANKLに特異的に結合する抗体、および/またはテリパラチドを含む。さらなる態様において、対象におけるLaタンパク質の発現または活性を減少させる作用物質は、i)阻害性核酸分子、ii)Laタンパク質に特異的に結合するアンタゴニスト抗体、iii)カスパーゼ阻害剤、またはiv)阻害ペプチドもしくは阻害ペプチドをコードする核酸分子である。いくつかの非限定的な例において、阻害ペプチドは、SEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9を含むまたはそれからなる、あるいは、1、2、3、4もしくは5個の保存的置換を伴うSEQ ID NO: 8もしくはSEQ ID NO: 9を含むまたはそれからなる。さらなる態様において、キットはCRISPRヌクレアーゼまたはCRISPRヌクレアーゼをコードする核酸分子を含む。
キットは、そのキットの設計目的である特定の応用を容易にするための追加の構成要素も含みうる。例えばキットは、ある特定方法の実施に通例使用される緩衝液および他の試薬類をさらに含みうる。
キットは、容器、および容器上のまたは容器に付属するラベルまたは添付文書を含むことができる。適切な容器には、例えば瓶、バイアル、シリンジなどがある。容器は、ガラスまたはプラスチックなど、さまざまな材料から形成されうる。いくつかの態様において、容器は、特定量の作用物質を抜き取ることができるように、アクセスポートを有しうる(例えば容器は静注用バッグであるか、または皮下注射針で突き刺すことができる栓を有するバイアルであってよい)。
ラベルまたは添付文書は組成物の用途を示す。添付文書には、典型的には、製品の市販パッケージに通例含まれていて、当該製品の投薬量、禁忌および/または使用上の注意に関する情報を含んでいる説明書が含まれる。教材は、書面、電子形式(例えばコンピュータディスケットまたはコンパクトディスク)、または視覚的教材(例えばビデオファイル)でありうる。
以下に非限定的実施例を挙げて、本開示を例証する。
破骨細胞形成は、Laタンパク質の定常状態レベル、分子種および細胞内局在の激しい変化を伴い、それに依存することを、ここに開示する。Laは破骨細胞融合の制御因子として機能し、破骨細胞の骨吸収能に影響を及ぼすことが証明される。驚いたことに、初代ヒト単球中に存在するLaは、M-CSF誘導性破骨細胞前駆体ではほとんど消失する。破骨細胞生成へのRANKL誘導性拘束は、拘束された融合中の破骨細胞の表面における切断型のLaタンパク質の再出現を推進する。破骨細胞融合がプラトーに達するにつれて、切断型Laは消失し、分子量の高い完全長タンパク質(FL-La)が成熟した多核破骨細胞の核内に観察される。Laの発現、切断または表面機能の撹乱は破骨細胞融合を阻害し、一方、外因性の表面Laは融合を促進する。さらにまた、Laが破骨細胞融合を促進する機序は、Laがその高度に保存されたLaドメインを介してRNAと相互作用する能力には依存しない。実際、LaのC末部分(SEQ ID NO: 7)は、LaドメインおよびRNA認識モチーフ1(RRM1)を欠くが、ヒト破骨細胞間の融合を促進するには十分である。この知見は、Laタンパク質が哺乳動物では破骨細胞融合管理因子としての機能を果たすように適応していることを示している。したがってLaは、骨代謝回転の撹乱に起因する骨疾患を処置するための標的である。
実施例1
多核破骨細胞の形成にはLaタンパク質が関与する
破骨細胞生成は、融合中の破骨細胞内でのLaのレベル、分子種および所在に激しい変化を伴うことが証明された。切断型の非核La種は破骨細胞形成を促進し、細胞が成熟サイズに到達するにつれて、LMW Laは、合胞体状破骨細胞の核に検出されるFL Laと置き換えられる。
初代単球をM-CSFで処理することで単核破骨細胞前駆体を誘導し、その後、そこに組換えRANKLを加えて、骨を容易に吸収する多核破骨細胞を得ることによって、ヒト破骨細胞生成をモデル化した(図1A、図1B、図8A~8C)(Verma et al., J Biol Chem 293, 254-270, doi:10.1074/jbc.M117.809681(2018))。破骨細胞前駆体は、RANKL添加後約2日で融合し始め、約5日後に成熟多核破骨細胞に特有のサイズ(約5~10個の核/細胞)10, 35, 36に到達する(図1B、図8C)(Moller et al., Int J Mol Sci 21, doi:10.3390/ijms21176368(2020)、Abdallah et al., Front Immunol 9, 632, doi:10.3389/fimmu.2018.00632(2018)、Stattin et al., Sci Rep 7, 3012, doi:10.1038/s41598-017-02533-2(2017))。
破骨細胞生成に関連するプロテオミクス変化を評価している時に、M-CSF誘導性前駆体にはほぼ存在しないが、細胞が急速に融合しつつある約3日間のRANKL刺激破骨細胞生成後には、破骨細胞中に豊富に発現する、明確に異なるタンパク質が発見された(図1C、矢印)。質量分析法を使って、このタンパク質はLaと同定された(図8D)。M-CSF誘導性マクロファージにおけるLaレベルが低いことは予想外だった。Laは、豊富に存在する遍在性のタンパク質であると一般にみなされているからである(例えばWolin and Cedervall, Annu Rev Biochem 71, 375-403, doi:10.1146/annurev.biochem.71.090501.150003(2002)参照)。
ウェスタンブロット解析により、Laが単球では十分に発現し、M-CSF誘導性破骨細胞前駆体では著しく低減し、RANKL誘導性破骨細胞形成中はLaの高い定常状態レベルが戻ることが確認された(図1D)。このデータから、破骨細胞生成中のLaの厳格な制御は翻訳後的に行われることが示唆された。M-CSF誘導性前駆体はRANKL適用後よりもさらに多いLa転写産物(遺伝子SSB)を含有していたからである(図8E)。Laは、破骨細胞生成中に、2種の明確に異なる、時間的に分離された分子種として現れた(図1E)。融合の開始時と強い融合中に検出される低分子量(LMW La)種は、融合が減速し破骨細胞が成熟サイズに到達するにつれて、完全長La(FL La)に対応する分子量の高い種で置き換えられる。
分子量の変化だけでなく、ヒト単球の破骨細胞生成的分化は、細胞内でのLaの所在に劇的な変化を伴う。規範的には、Laは、HeLa細胞で例示されるとおり、強い核染色を呈する(Wolin and Cedervall, Annu Rev Biochem 71, 375-403, doi:10.1146/annurev.biochem.71.090501.150003(2002))。対照的に、M-CSF誘導性破骨細胞前駆体は、ごくわずかなLa染色しか呈さず(図1F)、これは生化学的分析とも合致した(図1D)。RANKLの添加は、拘束された融合中の破骨細胞において、豊富なLaシグナルを生じたが、他のヒト細胞タイプおよび組織とは対照的に(Wolin and Cedervall, Annu Rev Biochem 71, 375-403, doi:10.1146/annurev.biochem.71.090501.150003(2002)、Maraia et al., Wiley Interdiscip Rev RNA 8, doi:10.1002/wrna.1430(2017))、Laは、破骨細胞融合の初期段階中は、明瞭な、主に非核斑点として、融合性破骨細胞じゅうの至るところに現れた(図1F)。
図1Dにおいて使用した抗La抗体(α-La)はLMW La種とFL La種の両方を認識する。Laの異なる分子量種が破骨細胞生成中に異なる局在を呈するかどうかを決定するために、いくつかの市販抗体を分析して、LMW La種を優先的に認識する抗体を選択した(α-LMW La、図8Fおよび以下の表も参照されたい)。
(表) ヒト破骨細胞中のLa分子種の検出に使用した抗体
Figure 2024512305000013
FL Laは、Ser366の大部分がリン酸化されていて、核に局在する(Intine et al., Mol Cell 12, 1301-1307, doi:10.1016/s1097-2765(03)00429-5(2003))。以前の研究により、LMW LaはFL Laの切断によって産生されること、ただしFL Laが切断可能になるには、FL Laの366番目が脱リン酸化されなければならないことが証明されている33。さらにまた、ホスホSer366 Laに特異的な抗体はLMW Laを認識しないことが、以前の報告によって示されている(Rutjes et al., Cell Death Differ 6, 976-986, doi:10.1038/sj.cdd.4400571(1999))。これらの実験には、FL Laを優先的に染色するために、α-ホスホSer366 La抗体を使用した(α-FL La)。両方のLa分子種が存在する中間時点では、LMW Laは、主として核外に、細胞じゅうの至るところで検出され、一方、FL Laは、融合した細胞の核内にもっぱら観察されることがわかった(図1G)。破骨細胞生成中のLa分布のシフトは、RANKL適用後のさまざまな日における、α-Laを使った染色によって、さらに確認された(図8G)。
破骨細胞生成的分化は、動機づけられたLaの発現と局在の激しい変化を伴うことがわかった。Laが破骨細胞形成に機能的に関与するかどうかを決定した。La発現は多核破骨細胞の形成を綿密に制御することがわかった。RNAiによるLa転写産物(SSB)の低減は破骨細胞融合を激しく阻害した(図2A~2C)。融合時のLaのサイトゾル局在は、RAW 264.7由来のマウス破骨細胞前駆体の破骨細胞生成的分化および融合中にも観察された(図2D)。さらにまた、大部分が単核である細胞と、大部分が多核である細胞とから、別々に収集された細胞溶解物のウェスタンブロット分析は、RANKL後3日目の強い融合がLaの定常状態レベルの激しい増加を伴うことを示した(図2E)。これらの知見から、破骨細胞形成におけるLa依存性はヒトとマウスで保存されていることが示唆された。ヒト細胞とは明確に異なり、RAW 264.7細胞の場合は、活発な融合の段階後、5日目までに、Laのレベルが低い融合前レベルに戻ったことに留意されたい。
破骨細胞生成に関連する機能的なLaの形態を同定するために、LMW Laの出現と破骨細胞間の融合との間の関係を決定した。アポトーシスの進行中に、ヒトLaは、カスパーゼにより、Glu-375において切断されて、LaのNLSが除去される(Rutjes et al., Cell Death Differ 6, 976-986, doi:10.1038/sj.cdd.4400571(1999)、Ayukawa et al., J Biol Chem 275, 34465-34470, doi:10.1074/jbc.M003673200(2000))。この切断された種を模倣するLa 1-375の過剰発現は、RAW 264.7由来のマウス破骨細胞でも単球由来のヒト破骨細胞でも、融合を著しく促進することがわかった(図2F~2I)。対照的に、FL Laの切断不能型変異体D371A, D374A La(Laの予想カスパーゼ切断部位を破壊する点変異)は、同様のレベルで発現しているにもかかわらず、破骨細胞融合には効果がなかったことから、多核破骨細胞の形成はLMW Laに依存することが示唆された(図2H、図2Iおよび図9)。汎カスパーゼ阻害剤z-VADが、分化中の破骨細胞におけるLMW Laの産生を阻止することもわかった(図10A)。LMW Laのカスパーゼ依存的産生を阻止すると、融合していない破骨細胞の核内でFL Laの時期尚早な繋留がもたらされ(図10C対図10B)、多核合胞体を形成する破骨細胞の能力が著しく撹乱される(図10D)。Szymczyk et al., J Cell Physiol 209, 836-844, doi:10.1002/jcp.20770(2006)も参照されたい。このデータは、多核破骨細胞の形成におけるカスパーゼ切断型LMW Laの役割を、さらに裏付けている。
実施例2
細胞表面結合型Laは破骨細胞形成の細胞融合段階を制御する。
Laは単独では融合活性を有しないものの、分化中の破骨細胞の表面では、それらの膜の融合を促進することが証明された。この促進は、LaのLaドメイン、RRM1またはNLSドメインを必要とせず、この促進には、破骨細胞融合機構の構成要素の一つであるAnx A5と共にLaが形成する複合体が、関与する。
破骨細胞生成におけるLaの役割の特徴づけでは、まず、破骨細胞の形成において、Laが、破骨細胞生成的分化または破骨細胞融合に関係づけられる因子の発現を変化させることによって間接的に、その機能を発揮するかどうかを調べた。多くの細胞タイプにおけるLa発現は多くの転写産物/タンパク質の定常状態レベルに影響を及ぼすが(Sommer et al., Oncogene 30, 434-444, doi:10.1038/onc.2010.425(2011))、LaのRNAi抑制は、必須の破骨細胞生成因子NFATc1およびCTSKの定常状態転写産物レベルも、融合関連タンパク質シンシチン1、Anx A5、S100A4もしくは脂質スクランブラーゼ・アノクタミン6/TMEM16Fをコードする転写産物も、変化させなかった(図11)(Verma et al., J Biol Chem 293, 254-270, doi:10.1074/jbc.M117.809681(2018))。それゆえに、Laのノックダウンは破骨細胞合胞体の形成を阻害したものの、それは破骨細胞の分化にも、細胞間融合にとって決定的に重要な他の機構にも、大きな影響を及ぼすことはなかった。Laが破骨細胞の形成に影響を及ぼし、それらの分化には影響を及ぼさない機序をさらに調べるために、多核破骨細胞の形成が、Laの詳しく特徴づけられたRNA結合機能に依存するかどうかを評価した。この高度に保存された機能は、Laドメインと、RNAポリメラーゼIII転写産物に共通するその高親和性オリゴ(U)-3'結合部位との間の高親和性相互作用に基づく。破骨細胞生成におけるLaドメインと転写産物との間の高親和性相互作用の要件を評価するために、Laドメイン機能を機能的に損なうことが公知である3つの点変異Q20A/Y24A/D33I(Bayfield et al., Nat Struct Mol Biol 16, 430-437, doi:10.1038/nsmb.1573(2009)、Vinayak et al., Nucleic Acids Res 46, 4228-4240, doi:10.1093/nar/gky090(2018))を有する変異体La 1-375(La 1-375 RNAΔ)を、過剰発現させた。La 1-375 RNAΔは、野生型La 1-375と同じくらい強く、多核破骨細胞の形成を促進することがわかり、RNAポリメラーゼIII転写産物に対するLaドメインの高い親和性は、破骨細胞形成におけるLaの役割にとっては必要でないことが示された(図2F、図3G)。
多核破骨細胞の形成におけるLaの役割がRNA代謝におけるLaの規範的な役割によるのではないことを示唆する第2の証拠は、破骨細胞におけるLaの機能が核内でも細胞質内でもなく、細胞表面における機能であることの証明だった。先に述べたように、分化中の破骨細胞において、LaはそのNLSを失い、細胞じゅうくまなく、斑点構造中に現れる。細胞が活発に融合している時点のRANKLによって拘束された破骨細胞からのタンパク質は、可溶性のサイトゾルタンパク質画分または膜結合型タンパク質画分に濃縮された。予想どおり、アクチンは大部分がサイトゾル画分に見いだされ、膜貫通型RANK受容体は膜画分に、そして表在性膜タンパク質Anx A5は両方の画分に見いだされた(図3A)。Laタンパク質は分化中の破骨細胞では可溶性タンパク質であると推定されるが、Laはサイトゾル画分と膜結合画分の両方に見いだされたことから、Laは破骨細胞生成中は予想外にも膜と会合していることが示唆された(図3A)。
以前の報告では、アポトーシス細胞におけるLa切断は細胞表面でのLaの検出を伴ったが(Rutjes et al., Cell Death Differ 6, 976-986, doi:10.1038/sj.cdd.4400571(1999)、Ayukawa et al., J Biol Chem 275, 34465-34470, doi:10.1074/jbc.M003673200(2000))、この表面Laが何らかの細胞機能を果たすのか、それとも単に表面抗原として働くのかは、今までわかっていなかった。破骨細胞Laが切断に続いて細胞表面に輸送されるかどうかを評価するために、融合中の破骨細胞を、非透過処理条件下、α-La抗体で染色した(図3B、図3C)。破骨細胞表在性膜タンパク質Fish(TSK5としても公知である)(Oikawa et al., J Cell Biol 197, 553-568, doi:10.1083/jcb.201111116(2012))は、破骨細胞融合中に濃縮され、形質膜(PM)の細胞質側リーフレットに結合するが(Oikawa et al., J Cell Biol 197, 553-568, doi:10.1083/jcb.201111116(2012))、それとは異なり、Laは、融合中のヒト破骨細胞の表面を、多量に修飾していた(図3B)。さらにまた、Laのこの表面プールはヒト破骨細胞に限ったことではない。有意なLa表面染色がRAW 264.7由来マウス破骨細胞において観察されたことから(図3C)、表面Laは哺乳動物における融合中の破骨細胞に共通する特徴であることが示唆された。
RANKL適用後さまざまな日数でのα-Laによる表面染色を使って、強い融合を伴う時点におけるLaの一過性の増加が観察され(図3D対図1B)、Laが融合にさらに関係づけられた。
次に、ヒト破骨細胞の表面にあるLaが破骨細胞生成の細胞融合段階において機能するかどうかを評価した。発生と組織維持におけるすべての細胞間融合イベントは、融合能を持つ細胞(fusion competent cell)を調製する遅い(日単位の)非同期的分化過程によって進行する(Brukman et al., J Cell Biol 218, 1436-1451, doi:10.1083/jcb.201901017(2019))。次に、PM融合は、最初の半融合連結部の形成から、2つの細胞の体積を合体させる融合細孔への迅速な(分単位の)進行によって起こる(図3D、上)。半融合阻害剤リゾホスファチジルコリン(LPC)を使って、多核合胞体の形成におけるこれらの段階を切り離した(Verma et al., J Biol Chem 293, 254-270, doi:10.1074/jbc.M117.809681(2018))。LPCの逆円錐型の外形は半融合ストーク(hemifusion stalk)のくぼんだ形状には貢献しないので、融合準備の整った細胞(ready-to-fuse cell)が半融合の上流で捕捉される。LPCの除去後、細胞は比較的迅速(90分以内)に同期化された融合を起こすので、上流分化過程から切り離された破骨細胞形成の膜融合段階において特異的に、タンパク質の機能を評価することが可能になる(図3D、下)。LPCの存在下では、融合準備が整った、RANKLによって拘束された細胞が蓄積し、次に、LPCを洗い流すことによって、この半融合阻止が解除された。LPC除去時点でのα-La抗体の適用は、同期化された破骨細胞膜融合を有意に阻害した(図3E)。これに対し、破骨細胞表面のPM受容体RANKを標的とする抗体には効果がなかった(図3F)。RANKL-RANKシグナル伝達は上流の破骨細胞生成的分化をトリガーするが、半融合同期化後のRANKの阻害は膜融合を阻害することができない。融合そのものはRANKの活性に依存しないからである(Verma et al., J Biol Chem 293, 254-270, doi:10.1074/jbc.M117.809681(2018))。さらにまた、α-LMW La抗体は同期化された破骨細胞膜融合を完全に阻止したが、α-FL La抗体には効果がなかった(図3G)。
表面Laを標的とする抗体の融合阻害効果とは対照的に、組換えLaの適用は破骨細胞融合を劇的に促進した。融合中の破骨細胞の外側のFL La(La 1-408)、短縮型La(La 1-375)または短縮型RNA結合変異体La 1-375 RNAΔは、多核合胞体の形成を有意に促進した(図4A~4C)。この促進は、組換えLaを熱不活化した場合には観察されなかった(図4B)。組換えLa 1-375 RNAΔはLa 1-408およびLa 1-375と同様に融合を促進したので、LaのRNAポリメラーゼIII転写産物との高親和性相互作用は破骨細胞融合の制御におけるLaの役割には必要ないことが確認された(図4A~4C)。さらにまた、FL Laが破骨細胞融合を促進できることは、FL Laそのものが融合能を持たないのではなく、むしろLaのタンパク質分解プロセシングおよび脱リン酸化が、細胞表面へのその送達にとって重要であることを示唆している。
RNA結合にとって決定的に重要なLaドメイン、LaおよびRRM1ドメインの寄与をさらに分析するために(Wolin et al., Annu Rev Biochem 71, 375-403, doi:10.1146/annurev.biochem.71.090501.150003(2002)、Maraia et al., Wiley Interdiscip Rev RNA 8, doi:10.1002/wrna.1430(2017)、Bayfield et al., Nat Struct Mol Biol 16, 430-437, doi:10.1038/nsmb.1573(2009)、Vinayak et al., Nucleic Acids Res 46, 4228-4240, doi:10.1093/nar/gky090(2018))、La 1-375をLa 1-187とLa 188-375とに分割した。La 188-375が多核破骨細胞の形成を著しく促進するのに対して、La 1-187には効果がないことがわかった(図4D)。これらのデータは、Laドメイン、RRM1およびLaのC末33AAが、破骨細胞形成におけるLaの役割にとって必要でないことを証明している(図4D)。重要なことに、Laは、分化の何らかの融合前段階ではなく、膜融合段階における破骨細胞の形成を促進した。この時点まで、LPCで同期化された破骨細胞への組換えLaの適用は、破骨細胞膜融合を劇的に促進した(図4E)。
これらのデータはすべて、Laが、破骨細胞形成の膜融合段階中の細胞表面において、大きな多核破骨細胞の形成を促進するように機能することを示している。膜融合に関与するタンパク質は、半融合中間体を生成し融合細孔を開かせるのに十分なタンパク質融合因子(fusogen)と、融合因子の活性を制御するタンパク質とに分類することができる(Bruckman et al., J Cell Biol 218, 1436-1451, doi:10.1083/jcb.201901017(2019))。細胞表面Laが単独で膜を融合して能動的タンパク質融合因子として機能しうるのかどうかを検証するために、HA0(非切断型のインフルエンザ融合因子ヘマグルチニン(HA))を安定に発現する3T3線維芽細胞と、脂質プローブおよび内容物プローブ(content probe)で標識された赤血球(RBC)との間の融合を促進するLaの能力を評価した(Leikina et al., Dev Cell 46, 767-780 e767, doi:10.1016/j.devcel.2018.08.006(2018))。HA0は融合能を持たないが、HA0発現線維芽細胞とRBCの間の極めて密な接触を確立する。分析した872のHA0-細胞結合RBCのうち、40nMの組換えLaの適用に応答して脂質プローブの交換(半融合の指標)または細胞質プローブの交換(融合細孔の指標)を起こしたものは、1つもないことがわかった。Wilsonの方法(Ludbrook et al., ANZ J Surg 79, 565-570, doi:10.1111/j.1445-2197.2009.04994.x(2009))によれば、Laが媒介する線維芽細胞-RBC融合の確率は細胞接触あたり0.0044を超えず、これらの条件下では、真の融合因子で活性化されたHA(接触あたり約0.5)の100分の1以下の活性を呈する。これらのデータは、Laはそれ自体が検出可能な細胞間融合活性を有するのではなく、Laはおそらく破骨細胞に特異的な、何らかのより大きな融合機構を制御するのであろうことを示している。
Laに直接的な融合活性がないことから、細胞表面Laは、融合に関与する他の何らかのタンパク質と相互作用することが示唆された。この仮説を検証するために、Laが、同様に破骨細胞の膜融合段階に関与する表在性膜タンパク質であり(Verma et al., J Biol Chem 293, 254-270, doi:10.1074/jbc.M117.809681(2018)、Whitlock and Chernomordik, J Biol Chem, 100411, doi:10.1016/j.jbc.2021.100411(2021))、破骨細胞生成において類似する時点でアップレギュレートされるAnx A5と相互作用するかどうかを評価した。LaおよびLa含有タンパク質複合体を、融合中のヒト破骨細胞から、α-La Abを持つ磁気ビーズ上に免疫沈降させたところ、Laタンパク質複合体はAnx A5を含有することがわかった(図12A)。融合中の破骨細胞からのLa超分子複合体は、どちらも融合中の破骨細胞中に豊富なAnx A1とAnx A4を、どちらも含有しなかったことから(図12B)、LaとAnx A5の会合の特異性が証明された。さらにまた、α-Anx A5 Abを使って単離された、融合中のヒト破骨細胞からのAnx A5超分子複合体の免疫沈降は、Laを含有する(図12B)。
La-Anx A5相互作用のさらなる証拠は、Anx A5へのLaの直接的結合が、ホスファチジルセリン(PS)含有リン脂質リポソーム上にLaを固定していることがわかった実験から得られた。Anx A5はPS含有膜にCa2+依存的に結合する。組換えLaを単独でまたは組換えAnx A5と共にPS含有リポソームに導入し、遠心分離によってリポソームをペレット化することで、Laがリポソームと共に濃縮されるか、それとも上清中に濃縮されるかを評価した(図12C)。Laは、単独では、あまりリポソームと共にペレット化されなかった。それ自体は膜結合ドメインそのものを有しないからである。対照的に、LaとAnx A5の両方であれば、Ca2+に応答してリポソームと共にペレット化された(図12D)。Laの膜会合はAnx A5、Ca2+およびPSを必要とした。LaとAnx A5はどちらもPSを欠くリポソームとはペレット化しなかったからである(図12D)。これらの知見は、Laと、融合の時に破骨細胞の表面に一過性に露出するPSに結合した細胞外Anx A5(Verma et al., J Biol Chem 293, 254-270, doi:10.1074/jbc.M117.809681(2018))との直接的相互作用が、Laと分化中の破骨細胞前駆体の表面との会合を容易にすることを示唆している。
実施例3
Laは破骨細胞の形成と機能に影響を及ぼすための潜在的標的になる
細胞表面Laは、破骨細胞前駆体と骨形成細胞との間の生物学的に意味のある相互作用によってトリガーされるヒトおよびマウスの多核破骨細胞の形成を制御することが証明された。Laを標的とすることにより、破骨細胞前駆体の融合が調節され、次にそれが、結果として生じる破骨細胞の骨吸収傾向を変化させる。さらにまた、LaはエクスビボFDモデルにおける破骨細胞形成に関与することがわかった。これは、発生中の破骨細胞の表面におけるLaの機能を標的とすることが、FDおよび過剰な破骨細胞活性に起因する他の吸収性骨疾患における有効な治療的介入であることを証明している。
破骨細胞融合と骨吸収の間には関係がある(Makris and Saffar, Arch Oral Biol 27, 965-969, doi:10.1016/0003-9969(82)90104-2(1982)、Piper et al., Anat Embryol(Berl)186, 291-299, doi:10.1007/BF00185977(1992)、Moller et al., Int J Mol Sci 21, doi:10.3390/ijms21176368(2020))。Laは、破骨細胞サイズを制御することによって、骨吸収も制御するという、仮説を設けた。この仮説を、骨の生体模倣物であるフルオレセイン化リン酸カルシウム(fluoresceinated calcium phosphate)上で破骨細胞を分化させることによって評価し、培地へのフルオレセインの放出によって破骨細胞依存的骨吸収を評価した(図5A)。単球由来の前駆体(M-CSFのみ)は、捕捉されたフルオレセインをごくわずかしか放出しないが、RANKLの添加は、リン酸カルシウムを容易に吸収してフルオレセインを放出する多核破骨細胞の形成をもたらした(図8B)。La 1-375の過剰発現は骨吸収を促進し、一方、切断不能型La変異体D371, 374Aには効果がなかった(図5B)。さらにまた、RNAiによるLaの低減は非標的化対照と比較して骨吸収を約40%低減させた(図5C)。融合を阻害するα-La抗体(図3E)は、破骨細胞依存的骨吸収も、用量依存的に劇的に低減させた(図5D)。最後に、融合中の破骨細胞への組換えLa 1-375の細胞外添加は、破骨細胞骨吸収を劇的に増加させた(図5E)。これらのデータに基づいて、細胞表面Laを標的にすることは、破骨細胞融合とその後の骨吸収の両方を双方向的に調節すると結論した。
生物学的に意味のある状況では、破骨細胞生成は、破骨細胞前駆体と、はるかに低濃度のRANKLおよび他の多くの破骨細胞生成制御因子を生じる骨形成性骨芽細胞/骨細胞および他の細胞タイプとの間の相互作用を背景にして発生する(Kitura et al., Int J Mol Sci 21, doi:10.3390/ijms21145169(2020))。Laが骨芽細胞誘導性破骨細胞形成に関与するかどうかを調べるために、初代ヒト骨芽細胞を海綿骨から単離し、初代ヒト単球のM-CSF誘導によって得られたヒト破骨細胞前駆体と共培養した。骨芽細胞と破骨細胞前駆体は、ウェルインサートによって互いに隔離して培養した(図6A)。ウェルインサートを除去しない限り、破骨細胞前駆体間に融合は観察されなかった。ウェルインサートを取り除くと、骨芽細胞/破骨細胞ウェルからの培地が混合され、共培養された破骨細胞前駆体は迅速に融合して、多核破骨細胞を産生した。α-La抗体の添加は、そのような共培養中の破骨細胞間の融合をほぼ75%阻止したことから(図6B、6C)、骨リモデリング病変の生物学的に意味のあるモデルにおける破骨細胞形成へのLaの関与が確認された。
Laの機能が骨病態において役割を果たすかどうかを調べるために、実験の焦点を破骨細胞依存性骨疾患である線維性骨異形成症(FD)に合わせた(de Castro et al., J Bone Miner Res 34, 290-294, doi:10.1002/jbmr.3602(2019))。FDは、cAMPシグナリングの恒常的増加とcAMP/RANKL依存的破骨細胞生成のアップレギュレーションにつながるGαsの機能獲得型変異が引き起こす(Boyce and Collins, Endocr Rev 41, doi:10.1210/endrev/bnz011(2020))。条件付きテトラサイクリン誘導性マウスモデルでは、ドキシサイクリン(Doxy)投与後2週間以内に成体マウスにおいて、FD様骨病変が発生する(Xao et al., Proc Natl Acad Sci USA 115, E428-E437, doi:10.1073/pnas.1713710115(2018))。これらの病変の形成は、FDにおいて観察される過剰なRANKL産生を担う、特異的に骨格幹細胞系譜の細胞における、誘導性機能獲得型変異体Gαs R201Cの活性化によって駆動される。この過剰なRANKL産生は、健康な骨を過剰に侵食する数多くの大きな破骨細胞の異所性形成をもたらす。これらのFDマウスからの骨髄外植片を使って、FDにおいて観察される異所性破骨細胞形成のロバストなエクスビボモデルを確立した(図7A)。図7Bに図示するように、M-CSFのみの存在下でのこれらFD外植片の培養は、数多くの接着細胞をもたらしたが、多核TRAP破骨細胞はもたらさなかった。対照的に、Doxyの添加は、誘導性Gαs R201C要素を欠く野生型同腹仔からの外植片では観測されない線維細胞凝集塊(矢印)および多数の多核TRAP破骨細胞(矢じり)の迅速な発生をもたらした。Doxy誘導性破骨細胞生成は、外植片によって産生されるmRANKLの約17倍の増加を伴った(図7C)。重要なことに、α-La抗体は、FD外植片へのDoxyの添加によって誘発された破骨細胞融合を約60%阻止し、観察される多核破骨細胞の数を約40%低減した(図7D~7F)。
マウス単球およびヒト単球の多核破骨細胞への分化は、Laの定常状態レベル、翻訳後修飾および細胞内局在の厳密に計画された変化に依存する(図7G)。破骨細胞生成の開始時には、M-CSF誘導性前駆体がLaタンパク質の劇的な喪失を示し、この分化過程が、定常状態Laの喪失によってトリガーされるmRNAの特異的La調節プールの協調的ダウンレギュレーションを必要としうることが示唆される。それに続く破骨細胞生成のRANKL誘導性段階では、Laが、細胞質および融合中の破骨細胞前駆体の表面に、リン酸化されていないタンパク質分解的に切断された種として再出現する。破骨細胞の成長が減速すると、融合の後期では、Laが、その従来のサイズと核局在で観察される。形成の速度、多核合胞体のサイズおよび破骨細胞のその後の骨吸収活性は、細胞表面Laタンパク質によって制御される。事実、細胞表面Laは、上流の分化過程ではなく破骨細胞形成の膜融合段階を調節することによって、破骨細胞機能を制御する。Laの量を、その転写産物の定常状態レベルを抑制すること、細胞表面へのその輸送に必要なタンパク質分解的プロセシングを阻止すること、またはその活性を抗体で阻害することによって低下させると、融合が阻害される。逆に、Laの定常状態濃度を、組換えタンパク質の過剰発現または適用のいずれかによって増加させると、融合が促進される。要約すると、これらのデータは、真核細胞のRNA生物学におけるキータンパク質であるLaは、破骨細胞の表面に存在し、そこでは、Laが破骨細胞膜融合のマスター制御因子であることを証明している。
本明細書に提示するデータは、破骨細胞融合および骨吸収の制御におけるLaの役割が、Laの詳しく記載された規範的役割とは別個であり、Laタンパク質の新規な機能に相当することを証明している。まず、同期化された破骨細胞膜融合を非細胞透過性試薬(例えば抗体、組換えLa)によって阻害または促進できることは、破骨細胞融合の制御が表面Laに依存することを示す。
破骨細胞形成のLa制御は、Laの高度に保存されたLaドメインおよびRRM1とRNAとの相互作用に依存しない。この結論は、Laドメイン内の決定的に重要な残基の変異も、Laタンパク質のN末端側の半分全体(LaドメインとRRM1をどちらも含有する)の欠失も、破骨細胞融合を促進する組換えLaの能力を消失させなかったという知見によって裏付けられる。
Laは、単独では、半融合も結合した膜間の融合も開始させないので、Laが膜融合を直接的に触媒しおよび/または駆動する可能性は低い。Laが破骨細胞融合複合体の他の構成要素を動員しまたは刺激する可能性の方が高い。後者のシナリオは、Laと融合制御因子Anx A5との会合に光を当てる本知見によって裏付けられる。組換えLaとAnx A5は直接的に相互作用し、Anx A5は、Ca2+依存的に、LaとPSを含有する膜との会合を容易にすることがわかった。これらの観察結果は、以前に報告された細胞表面PSおよびAnx A5に対する破骨細胞融合の依存性(Verma et al., J Biol Chem 293, 254-270, doi:10.1074/jbc.M117.809681(2018))と合わせて、破骨細胞がPSをどのように利用して、拘束された前駆体間の融合複合体の集合をトリガーするかを解明するヒントになる。
多くの骨格疾患における骨形成と骨吸収の不均衡は、破骨細胞の過剰な活性(例えば骨粗鬆症、パジェット病およびFD)または不十分な活性(例えば大理石骨病)のどちらかに関連づけられる。多核ヒト破骨細胞の形成は、破骨細胞前駆体の表面にあるLaタンパク質を標的とする処置によって阻害または促進できることが、本明細書に開示される。重要なことに、α-La抗体は、RANKL活性化単球に由来する破骨細胞による融合および骨吸収を阻害する。α-La抗体処置は、破骨細胞生成因子が病変内の骨芽細胞によって産生される骨リモデリング病変をモデル化したヒト破骨細胞前駆体/骨芽細胞共培養における多核破骨細胞の形成も阻害した(Ikebuchi et al., Nature 561, 195-200, doi:10.1038/s41586-018-0482-7(2018))。さらにまた、生物学的に意味のある状況での破骨細胞形成において細胞表面Laが重要な役割を果たすという仮説は、FDのエクスビボモデルでの実験によって実証された。FDの進展は、RANKLおよび他の破骨細胞生成因子の血清中レベルの激しい増加と、骨病変近傍における多数の多核破骨細胞の異所性形成とを特徴とする。予想どおり、骨髄外植片におけるFD表現型の誘導は、高濃度のRANKLおよび異所性破骨細胞生成をもたらした。α-Laが多核破骨細胞の形成をサイズでも数でも阻害するという知見により、骨病態における新規標的としてのLaの重要性が確認され、将来の治療開発のための標的としてのLaが浮き彫りになった。
破骨細胞生成的分化の初期段階に関与するタンパク質のうちのいくつかは、既に、動物研究および/または臨床研究において、潜在的治療標的として試験されている(Boyce et al., J Bone Miner Res 28, 711-722, doi:10.1002/jbmr.1885(2013))。α-RANKL抗体デノスマブは骨粗鬆症を処置するためのFDA承認薬である(Sordillo et al., Cancer 97, 802-812, doi:10.1002/cncr.11134(2003))。RANKL/RANK/オステオプロテゲリンシグナル伝達経路の下流にあるLa依存的破骨細胞融合は、骨リモデリングの異なる機構的段階にある治療標的に相当する。単核破骨細胞が骨を吸収することを考慮すると、La依存的破骨細胞融合を阻止することは、骨吸収に対して、上流での破骨細胞前駆体形成をα-RANKL抗体で阻止することよりも微妙で選択的な効果を有しうる(例えばMiyamoto et al., J Bone Miner Res 27, 1289-1297, doi:10.1002/jbmr.1575(2012)参照)。RANKLのように細胞表面Laには細胞不透過性薬物が接近できる。いくつかの臨床状況では、Laを標的とする処置の、より微妙な作用が、有利になりうる。さらにまた、破骨細胞生成だけでなく免疫応答も制御するRANKLとは異なり(Ono et al., Inflamm Regen 40, 2, doi:10.1186/s41232-019-0111-3(2020))、細胞表面Laの唯一公知の機能は、破骨細胞融合の制御における、ここに開示するその役割である。したがって表面Laの特異性により、オフターゲット効果は最小限に抑えられうる。最後に、破骨細胞が骨芽細胞活性を制御する因子を放出することは公知である(Sims et al., Curr Osteoporos Rep 10, 109-117, doi:10.1007/s11914-012-0096-1(2012))。RANKLを標的とすることによって破骨細胞生成を完全に阻止すると、破骨細胞-骨芽細胞シグナル伝達を阻止することになる可能性が高い。Laを標的とすることによって、破骨細胞の分化能を維持しつつ、破骨細胞形成の融合段階を抑制すると、病変内で、この破骨細胞-骨芽細胞間クロストークを維持することができ、このことは、それが失われている疾患における骨のリモデリングにとって重要なことでありうる。要約すると、開示するデータは、よく知られているRNAシャペロンとしてのその機能とは作用の場所、機序およびパートナータンパク質(Anx A5)が著しく異なった役割である破骨細胞形成のキー制御要素としての、Laタンパク質の機能を証明し、破骨細胞機能を調節するための治療的処置を提供する。
実施例4
線維性骨異形成症(FD)のモデルにおけるLa抗体の使用
FDは、破骨細胞-骨芽細胞(OC-OB)間シグナル伝達および協調の不均衡がその病態生理の中核をなす溶骨性骨疾患である。骨芽細胞だけで起こった接合後モザイクGαs変異は、OBからOCへのシグナル伝達を撹乱して、破骨細胞生成シグナルの過剰生成を引き起こし、破骨細胞の形成と活性を変化させる。食糧へのドキシシトリン(doxycytline)の添加が約3週間でFDの進行を誘導するFDの誘導性マウスモデルを使用した。x線経時変化によるマウス後肢における骨量の減少を視覚的に観察することによってFDの進行を検出し、石灰化した骨に沿った放射線透過性吸収窩および線維性骨(woven bone)の沈着の発達を観察することによって、FDの進行をスコア化した。骨量減少の程度を表す1~6のスコアを各骨に与え、それらのスコアを平均することで、各マウスにFD進行スコアを与えた(図13A)。アイソタイプ対照で処置した動物とは対照的に、α-La抗体の投与は、マウスモデルにおけるFDの継続的進展を抑制することがわかった(図13B)。
実施例5
Laタンパク質の阻害性ドメイン
Laは、真核生物におけるRNA代謝の規範的核制御因子である。Laが切断され、PM上に露出され、破格細胞の多核化および活性をコントロールするという、第2の機能が検出された。規範的なLa-RNA結合に不可欠なドメインを含有するLaの最初の187AA(例えばSEQ ID NO: 2のaa 1~187)は、破骨細胞の多核化を促進するLaの能力にとっては必要でない(図14B)。AA188~375の特徴づけられていない領域に、破骨細胞の多核化を制御するLaドメインが含まれているという仮説を設けた。破骨細胞多核化の制御を担うAA188~375内のドメインを同定するために、AA188~375にまたがるオーバーラップペプチド(30AA長(合計12本)(図14A))からなるペプチドライブラリーを合成した。これらのペプチドをスクリーニングすることにより、破骨細胞の多核化を特異的に阻害する2つのペプチド(2、SEQ ID NO: 8、および9、SEQ ID NO: 9)が同定された(図14C)。この図において、対照は添加なしである。また、+はLA 188-375の添加であり、これは融合を促進した。
ペプチド2:
Figure 2024512305000014
ペプチド9:
Figure 2024512305000015
実施例6
LaとアネキシンA5(Anx A5)の相互作用
Anx A5は、Ca2+依存的にホスファチジルセリン(PS)と結合することによって、融合中の破骨細胞の表面と会合する。一過性の形質膜(PM)PS露出とAnx A5結合は破骨細胞融合を促進する。融合中の破骨細胞においてネイティブLaがネイティブAnx A5と相互作用すること、そして組換えAnx A5がPS依存的かつCa2+依存的に膜上に組換えLaを濃縮することを、データは証明している(図15A、図15B)。これは、破骨細胞融合の時点および場所で、Anx A5が、PSを一過性に露出している破骨細胞PMにLaを濃縮することを示している。直接的なLa-Anx A5タンパク質相互作用が、融合中の破骨細胞の表面にLaを濃縮することによって、破骨細胞の多核化を促進するという仮説を設けた。組換え6×his-Laとビオチン-Anx A5とを溶液中でインキュベートし、ビオチン-Anx A5をプルダウンし、6×his-Laの共沈を評価することによって直接的La-Anx A5結合を評価するアッセイを開発した(図15C)。実施例5に記載したLaペプチドライブラリーは、La共沈を低減するペプチドを同定し、破骨細胞形成におけるLa-Anx A5結合をさらに評価するために使用される。
実施例7
破骨細胞融合を抑制することによる大理石骨病の処置
破骨細胞サイズの変化は骨吸収を変化させ、パジェット病や大理石骨病のような骨疾患の基礎となる。Snx10の喪失は、もはや骨には適正に付着しない極端に大きなOCを産生し、吸収の欠陥を呈し、大理石骨病につながる(M.Barnea-Zoha et al., 2021.、An SNX10-dependent mechanism downregulates fusion between mature osteoclasts、J Cell Sci.134(9):jcs254979.PMCID:PMC8182410;PMID:33975343)。Snx10の喪失によって、LaはOC表面に著しく濃縮されることを、データは示した(図16A)。この過剰な表面Laを阻害すると、Snx10の喪失後に観察される破骨細胞多核化の調節不全から、部分的に救出された(図16B)。SNX10は、破骨細胞が生理学的に要求される形で骨を吸収することができるように、表面Laを分解し破骨細胞形成を停止させるのに役割を果たすことを、データは示している。このモデルでは、大理石骨病につながるSNX10の喪失が、破骨細胞の形成/機能の欠陥の原因になる。なぜなら、それは破骨細胞の表面にLaを残すことになり、それゆえに破骨細胞が成長し続けて、付着および機能に欠陥が生じるからである。高破骨細胞性大理石骨病では、表面Laを阻害することによって、欠陥のあるOC形成から救出され、適正な破骨細胞機能を復元することができる。
実施例8
材料および方法
試薬類: ヒトのM-CSFおよびRANKLならびにマウスのM-CSFおよびRANKLはCell Sciencesから購入した(カタログ番号はそれぞれ#CRM146B、#CRR100B、#CRM735BおよびCRR101Dである)。LPC(1-ラウロイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、#855475)、PC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、#850375C)、PS(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン、#840035C)、リサミンローダミンホスファチジルエタノールアミン(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(リサミンローダミンBスルホニル、#810150C)は、Avanti Polar Lipidsから購入した。骨吸収アッセイキットはCosmo Bio Co.から購入し(カタログ番号CSR-BRA-24KIT)、製造者の説明書に従って使用した。Hoechst 33342およびファロイジン-Alexa555はInvitrogenから購入した(それぞれ#H3570およびA30106)。TRAP染色試薬はCosmo Bio Co.から購入した(#PMC-AK04F-COS)。蛍光性脂質PKH26(PKH26GL-1KT)およびカルボキシフルオレセインCF(5-(および-6)-カルボキシフルオレセイン、異性体混合物、#C368)はそれぞれSigmaおよびInvitrogenから購入した。
動物: 骨原性系譜の細胞における機能亢進型Gαs R201Cの誘導性発現を伴う線維性骨異形成症のマウスモデル(Zhao, X.et al., Proc Natl Acad Sci USA 115, E428-E437, doi:10.1073/pnas.1713710115(2018)、Boyce et al., Endocr Rev 41, doi:10.1210/endrev/bnz011(2020))を使って骨髄外植片を得た(後述)。この研究には12~18週齢の雌を使用した。
マウス骨髄外植片培養: 以前に記載された線維性骨異形成症の誘導性マウスモデル(Boyce et al., Endocr Rev 41, doi:10.1210/endrev/bnz011(2020))または野生型同腹仔から、脛骨および大腿骨を切離した。22ゲージの皮下針を使って各骨の骨端(epyphises)に穴をあけ、アルファMEMを使って骨髄を培養ディッシュに洗い出した。これらの骨髄単離物を、新しい22ゲージの皮下針によってさらに解離させることで単一細胞懸濁液を得て、T-75培養フラスコ中、アルファMEM+20%FBS、1×pen/strepおよび1×Normocin(InvivoGen、#Ant-nr-1)で7日間培養した。フラスコに付着した細胞をPBSで3回洗浄し、0.05%トリプシンとセルスクレーパーを使って継代し、アルファMEM+20%FBSおよび1×pen/strep中、継代数3回まで培養した。外植片の骨髄間質細胞サブセットにおけるGαs R201C発現誘導のために、細胞を6ウェルプレートにほぼコンフルエントにプレーティングし、1μMドキシサイクリン(Sigma、#D9891-5G)で処理した。誘導中は培地を毎日新しくした。抗体処理については、初期細胞間融合が観察された時(典型的には約4日間のドキシサイクリン処理)に、抗体を6μg/mlで一晩加えた。
細胞培養:
破骨細胞: 健常ドナーからエルトリエーション法で分離された(elutriated)単球を得た。イメージング用にはポリマーカバースリップ底面を持つ35mmディッシュ(Ibidi#81156)、また生化学的実験用には35mmまたは10cmディッシュに、細胞を、完全培地[α-MEMに10%ウシ胎仔血清(FBS)およびペニシリン-ストレプトマイシン-L-グルタミン(それぞれGibco Invitrogene#12571063、#26140079および#10378016)を補足したもの]中、1cm2あたり約2.9×105個の密度でプレーティングした。単球は、100ng/ml M-CSFの存在下で6日間、M2マクロファージに分化させた後、別段の表示がある場合を除き、100ng/ml M-CSFおよび100ng/ml RANKLで3日間分化させた。RAW 264.7細胞(ATCC、バージニア州マナッサス、#TIB-71)は、10%FBSを補足したDMEM中、最大で継代数8回まで維持した。RAW 264.7細胞は、100ng/mlマウスRANKLの存在下で5日間、破骨細胞に分化させた。融合していない単核RAW 264.7細胞と融合した多核RAW 264.7細胞を別々の画分に分離するために、多核細胞の方が培養ディッシュプラスチックにはるかに強く接着することを利用した。PBS中で洗浄した後、混合RAW培養物(RANKL分化後)を、Ca2+およびMg2+非含有PBS中に、室温で10分間放置した。次に培養ディッシュを実験台上でタップして、融合していない単核RAW細胞の大部分を遊離させ、それら遊離した細胞を遠心分離によって集めた。主に融合した多核合胞体の集団がディッシュに残るまで、このプロセスを2~4回繰り返した。次に、単核細胞画分および多核細胞画分を、後述の生化学的実験またはイメージング実験用に加工した。
ヒト骨芽細胞/破骨細胞共培養: 健常個体の海綿骨から単離された骨芽細胞をPromoCell(#C12720)から入手し、製造者の説明書に従って培養した。破骨細胞前駆体は、上述のようにM-CSF中での6日間の培養によって、初代ヒト単球から得た。骨芽細胞および破骨細胞前駆体を、4ウェル培養インサートを3:1のウェル比で使って、35mmディッシュで培養した(ibidi、#81156)。共培養混合の48時間前に、骨芽細胞を、1×pen/strep(Gibco)を含む無血清アルファMEMに切り替えた。血清飢餓に続いて、4ウェル培養インサートを取り除き、細胞を、それらの調整培地中、処理ありまたは処理なしで、一晩培養した。翌朝、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定した。
HA0発現細胞およびRBC: インフルエンザを安定に発現するクローン15細胞株のNIH 3T3マウス線維芽細胞を使用した。これらのHA0発現細胞は、10%熱不活化FBSおよび抗生物質を補足したDMEM中、37℃および5%CO2で培養した。HAを融合能を持たない形態に保つために、これらの細胞はトリプシン前処理なしで使用した。ヒト赤血球(RBC)は匿名健常ドナーから単離した。(77)に記載されているように、RBCを蛍光膜色素PKH26で標識し、水溶性蛍光色素CFを負荷した。
構築物および組換えタンパク質およびトランスフェクション: オーバーラップ配列を使って設計されたプライマーで、組換えLa 1-408、1-375、1-375 Q20A_Y24A_D33I、1-187および188-375を増幅し、それらをV78 pET28A大腸菌発現ベクター中のNdeI/HindIII間に挿入して、それぞれにN末6×his親和性タグを付加した。La 1-408は、SD Biosciences(カリフォルニア州サンディエゴ)により、大腸菌中で組換えタンパク質として発現され、IMACカラムを使って精製された。残りの構築物はBL2(DE3)ケミカルコンピテント大腸菌(Thermo Fisher Scientific)に形質転換し、IPTGでタンパク質発現を誘導した。それぞれ製造者の説明書に従い、Bugbuster(Sigma)で細胞を溶解し、HisPur Cobalt Spinカラム(Thermo Fisher Scientific)を使って、6×his-Laタンパク質をアフィニティー精製した。エンドトキシン夾雑物は、Pierce大容量エンドトキシン除去カラム(Thermo Fisher Scientific)を使用し、製造者の説明書に従って、アフィニティー精製6×his-Laタンパク質から枯渇させた。次に、タンパク質を滅菌濾過し、小分けして、-80Cで保存した。
RANKL刺激の2日目に、jetPRIME(Polyplus Transfection)によって、プラスミドを初代破骨細胞に導入した。FLAG-La 1-408、FLAG-La 1-375およびFLAG-La 1-375 Q20A_Y24A_D33Iプラスミドは、Maraia Lab(NICHD)から提供された。簡単に述べると、SSB(UniProt P05455)をpFLAG-CMV2ベクター(Sigma)のHindIIIとBamHIの間に挿入した。「切断不能型」Laは、FLAG-La 1-408プラスミドを採用し、このタンパク質のC末領域にあるカスパーゼ切断部位を失わせる2つの点変異をアミノ酸D371AおよびD374Aに作ることによって作製された(Emory Integrated Genomics Core)。siRNAは、RANKL刺激の1日後に、Lipofectamine RNAiMAX(Thermo Fisher Scientific)によって、初代破骨細胞中に導入した。非標的化siRNA(カタログ番号4390843)およびSSB標的化siRNA(カタログ番号4392420_ID:s13469)を、5ng/mlの濃度で導入した(Silencer Select、Ambion)。
抗体: α-シクロフィリンB(CST、D1VdJ)、α-GAPDH(CST、D16H11)、α-チューブリン(Abcam、7750)、α-RANK(Abcam、13918)、α-Anx A5(Abcam、54775)、対照ウサギポリクローナルIgG(Abcam、27478)、α-La、Abcam、75927)用のアイソタイプ対照として使用したIgG2a(Abcam、18415)、IgG1(Abcam、170190;α-Anx A5(Abcam、54775)用のアイソタイプ対照として使用)、α-Anx A1(Abcam、47661)、α-Anx A4(Abcam、65846)、α-6×His(Abcam、18184)およびα-FISH(Abcam、118575)。
表示がある場合、免疫ブロッティング、免疫染色および免疫阻害には、以下の抗La抗体を使用した: Abcam、75927(α-Laという);抗SSB抗体Invitrogen、PA5-29763(α-LMW Laという);抗LaホスホSer366 Abcam、61800(α-FL Laという)。単球に由来するヒト破骨細胞中に認められたLaの分子種を同定するために、この研究において使用したLa抗体を特徴づけた。上記表参照。破骨細胞生成中に観察された2つのLa種に対するこれらの抗体の選択性を評価するために、記載した2つのLa種のうちの1つだけが主として(すなわちほとんどLMW LaだけまたはほとんどFL Laだけが)含まれている時点の分化中のヒト破骨細胞からの溶解物をプローブした。Abcam 75927抗体(「α-La」)はウェスタンではどちらのLa種も認識した。Invitrogen PA5-29763(「α-LMW La」)はLMW Laを優先的に認識する。LMW LaはFL Laの切断産物であるので、FL LaはLMW La中のすべての残基を含有する。a-LMW LaがLMW Laを優先的に認識するという知見は、この抗体が、単に両方に共通する一次アミノ酸配列ではなく、LMW LaとFL Laとでは異なっている翻訳後エピトープまたはコンフォメーショナルエピトープを認識するはずであることを示唆している。FL Laを特異的に認識するために、リン酸化ヒトLa(ホスホSer366)に対するAbcam 61800抗体を使用した。このa-FL La抗体は、これらの実験におけるウェスタンブロッティングでは機能せず、一方、免疫蛍光染色では、この抗体は、FL Laを認識したが、LMW Laは認識しなかった。α-Laによるウェスタンブロット解析がどちらの破骨細胞La分子種も認識した中間時点(RANKL添加後4日目)での、分化中のヒト破骨細胞において、α-FL Laはもっぱら核Laを認識し、一方、a-LMWは主として細胞質中のLaを認識した。
生化学的アプローチ: 細胞を、パルス超音波処理によって氷上で溶解し、プロテアーゼ阻害剤(cOmplete、Sigma、#118361700010)の存在下、4℃で45分間、縦方向(end over end)に回転させた。定常状態タンパク質レベルは、SDS-PAGEとそれに続く免疫ブロッティングによって評価した。バルクタンパク質は、SDS-PAGEとそれに続く銀染色(SilverQuest, Thermo Fisher Scientific)によって評価した。関心対象のバンドを銀染色したゲルから切り出し、脱染し、タンデム質量分析と接続した液体クロマトグラフィーで評価した(Proteomics Core、NHLBI)。サイトゾルタンパク質画分と膜結合型タンパク質画分の選択的濃縮は、MEM-PER(商標)Plus膜タンパク質抽出キット(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号89842)を使用し、製造者の説明書に従って実行した。
免疫沈降は以前に記述されているように行った(78)。簡単に述べると、非膜透過性で12Å長の切断可能な架橋剤3,3'ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)(DTSSP)を使用し、製造者の説明書(Thermo Fisher Scientific)に従って、多タンパク質複合体を準化学量論的に架橋した。関心対象を標的とするMs抗体(α-La、Abcam, 75927;α-Anx A5、Abcam, 54775;IgG2a、Abcam, 18415;またはIgG1, Abcam、170190)で修飾されたヒツジα-Ms IgG磁気Dynabeads(Invitrogen)を使って、超分子複合体を免疫沈降させた。超分子複合体を変性させ、還元試薬(BME、BioRad)の添加によって架橋を切断し、これらの複合体内のタンパク質をPAGEによって分離した。タンパク質を転写し、免疫ブロッティングを使って関心対象のタンパク質をプローブした(上述)。関心対象のタンパク質については、Rb抗体を使って膜をプローブした(α-La PA5-29763、α-Anx A5 14196、α-Anx A1 47661またはα-Anx A4 65846)。
転写産物解析: リアルタイムPCRのために、PURELINK(商標)RNAキットを使用し、製造者の説明書に従って(Invitrogen#12183018A)、細胞溶解物から全RNAを収集した。High-Capacity RNA-to-cDNAキットを使用し、製造者の説明書に従って(Applied Biosystems、#4387406)、逆転写反応により、全RNAからcDNAを生成させた。次に、IQ(商標)SYBR(登録商標)Green Supermix(Biorad)を使って、cDNAを増幅した。プライマーはすべて、関心対象の遺伝子またはGAPDH対照に特異的な最高ランクスコアのプレデザインKICQSTART(登録商標)SYBR(登録商標)Greenプライマーであり、それらを製造者の説明書(Sigma)に従って使用した。リアルタイムPCR反応はすべて、GAPDHを内部対照として使用して、CFX96リアルタイムシステム(Biorad)で行い、解析した。ΔΔCt法を使って遺伝子発現の倍率変化を決定した。3~4回の独立した実験を行って、それぞれを二重に解析した。
融合アッセイ: 培養系中の破骨細胞融合を蛍光顕微鏡法で評価した(Verma et al., J Biol Chem 293, 254-270, doi:10.1074/jbc.M117.809681(2018))。簡単に述べると、細胞を関心対象の時点において4%パラホルムアルデヒドで固定し、0.1%TRITON(商標)X-100で透過処理し、5%FBSでブロッキングした。次に、細胞のアクチン細胞骨格および核をそれぞれ標識するために、細胞をファロジン(phallodin)-ALEXAFLURO(登録商標)488およびHoechstで染色した。16個の無作為に選択された視野を、ALEXAFLURO(登録商標)488、Hoechstおよび位相差適合フィルタセット(BioTek)を使用し、10×/0.3 NA Plan Fluorite WD対物レンズ(BioTek)を用いるLionheart FX顕微鏡で、Gen3.10ソフトウェア(BioTek)を使って撮像した。破骨細胞融合効率は、以前に記載されているように、これらの画像における細胞間の融合イベントの数として評価した。融合イベントの順序とは無関係に、N個の核を持つ合胞体を生成させるのに必要な細胞間融合イベントの数は常にN-1に等しいので、Σ(Ni-1)=Ntotal-Nsynとして、融合数指数(fusion number index)を計算した。ここに、Ni=個々の合胞体中にある核の数であり、Nsyn=合胞体の総数である。ディッシュ間での細胞密度の小さな変動を考慮に入れるために、融合イベントの数を、核の総数(融合していない細胞を含む)に正規化した。伝統的な融合指数(fusion index)測定とは対照的に、このアプローチでは、2つの単核細胞間、1つの単核細胞と1つの多核細胞間、および2つの多核細胞間の融合が、等しく考慮される。伝統的な融合指数計算では、2つの多核細胞間の融合は、合胞体中にある核のパーセンテージを変化させない。代わりに合胞体の数を数えれば、2つの多核間の融合イベントは、見逃されるだけでなく、合胞体の数を減少させる。対照的に、融合数指数には、すべての融合イベントが含まれる。
破骨細胞膜融合の同期化: (Verma, J Biol Chem 293, 254-270, doi:10.1074/jbc.M117.809681(2018))に記載されているように、破骨細胞融合を同期化した。簡単に述べると、RANKL処理の72時間後に、破骨細胞培地に、100ng/ml M-CSF、100ng/ml RANKLおよび350μmラウロイル-LPCを補給した。16時間後に、新鮮培地で5回洗浄することによってLPCを除去し、抗体処理または組換えLaの存在下または非存在下で90分間、細胞を融合させた。
HA0-RBC融合アッセイ: Laが融合を媒介できるかどうかを調べるために、RBCの表面にあるシアル酸受容体とHA0のHA1サブユニットとの間の相互作用によってRBCが強固に結合しているHA0発現細胞に、このタンパク質を適用した(82)。非切断型のHAであるHA0は結合するが、融合は媒介しない。HA細胞をPBSで2回洗浄し、1mlのRBC懸濁液(0.05%ヘマトクリット)と共に10分間インキュベートした。1細胞あたり0~2個のRBCが結合しているHA細胞をPBSで洗浄して、結合していないRBCを除去した。次に細胞を40nM FL Laにばく露した。融合活性(内容部混合および/または脂質混合)をLa適用の1時間後に蛍光顕微鏡法でアッセイした。
リポソーム結合アッセイ: 純粋なPCまたはPCとPSの9:1(w/w)混合物から、マルチラメラリポソームを形成させた。どちらの脂質組成物にも0.5mol%のリサミンローダミンホスファチジルエタノールアミンを補足した。リポソームを調製するために、ベンゼン/メタノール(95:5)中の脂質原液を液体窒素中で凍結し、SPEEDVAC(商標)(Savant)を使って一晩、凍結乾燥した。乾燥させた脂質を水性緩衝液(100mM NaCl、10mM Hepes、pH7.0)に1mMの総脂質濃度で再懸濁し、ボルテックスした。そのリポソームにタンパク質およびCaCl2を加え、その混合物を氷上で30分間インキュベートした。ペレット化するために、リポソームを15, 000gで20分間遠心分離したところ、ローダミン蛍光に基づけば、リポソームの約95%がペレット化された。次に、遠心分離した試料を、上部リポソーム枯渇画分と、リポソームおよびリポソーム結合タンパク質を含有する下部画分とに、分画した。次に、Laemmli緩衝液(Bio Rad)の添加によって画分を可溶化し、上述のように、SDS-PAGEによって分離した。組換えLaおよび組換えAnx A5は、それぞれのn末6×Hisタグにより、α-6×His抗体(Abcam)を使って検出し、可溶性タンパク質画分のシグナルとリポソーム結合タンパク質画分のシグナルとを、デンシトメトリーで評価した。データは、次式のとおり、リポソームに結合しているタンパク質シグナルのパーセンテージとして表した。
Figure 2024512305000016
蛍光顕微鏡イメージング: 免疫蛍光実験では、細胞をPBSで洗浄し、PBS中の温かい新鮮調製4%ホルムアルデヒド(Sigma、F1268)を使って、37℃で固定した。細胞をPBSで3回洗浄した。細胞を透過処理するために、それらを、PBS中の0.1%TRITON(商標)X100において5分間インキュベートした。細胞を再びPBSで3回洗浄し、非特異的結合を抑制するために、10%FBSを含むPBSに室温で10分間入れておいた。次に、10%FBSを含むPBS中で、細胞を一次抗体と共に1時間インキュベートした。PBS中で5回洗浄した後、10%FBSを含むPBS中に、細胞を二次抗体(抗ウサギIgG Fab2 ALEXAFLUOR(登録商標)または抗マウスIgG Fab2 ALEXAFLUOR(登録商標)488、どちらもCell Signaling Technology、カタログ番号はそれぞれ#647 4414Sおよび#4408S、1:500希釈液)と共に、室温で1時間入れておき、次に細胞を再びPBSで5回洗浄した。
非透過処理細胞の免疫染色を必要とする実験(図3B、図3C)では、細胞を上記のように固定し、次に一次抗体(10mg/ml)と共に37℃で10分間インキュベートした。完全培地で2回およびPBSで3回洗浄した後、細胞を上述のように固定した。固定後に、細胞をPBSで3回洗浄し、非特異的結合を抑制するために、10%FBSを含むPBS中に、室温で10分間入れておいた。次に、上述のように細胞を二次抗体と共にインキュベートし(10%FBSを含むPBS中、室温で1時間)、最後にPBSで5回洗浄した。Zeiss LSM 800 airyscan共焦点顕微鏡で、C-Apochromat 63x/1.2水浸対物レンズを使用して、画像をキャプチャした。
骨吸収: 骨吸収は、Cosmo Bio USAの骨吸収アッセイキットを使用し、製造者の説明書に従って評価した。簡単に述べると、フルオレセインアミン標識コンドロイチン硫酸を使って、24ウェルリン酸カルシウム被覆プレートを標識した。ヒト単球由来破骨細胞を、フェノールレッドなしのアルファMEMを使って、上述のように分化させた。RANKL添加の4~5日後に培地を収集し、培地内の蛍光強度を製造者の推奨どおりに評価した。
統計解析: 各グラフは、説明文に別段の言明がある場合を除き、独立した機会に繰り返された3つの独立した生物学的レプリケートからのデータを表す。データはGraphPad Prism 8.0を使ってアセンブルし、解析した。各実験について、同じ継代数、ドナーまたは動物からの細胞を、記載のさまざまな条件にわたって、ペアにした。報告した機能的依存性(functional dependency)はすべて、各独立実験において観察された。ただし、ヒト単球由来破骨細胞について公知であるように(Moller et al., Int J Mol Sci 21、doi:10.3390/ijms21176368(2020))、破骨細胞生成的分化の時間経過およびベースラインでの融合の程度は、異なるドナーからの単球ではかなり変動した。統計的有意性は、生の値を対数変換してから評価する対応のある比t検定を使って解析した。HA0-RBC実験の解析では、二項比率についてウィルソン法(Wilson method)に基づく信頼限界を、R(v.4.1.1)において、Hmiscパッケージ(v.4.5.0)のbinconf関数を使って計算した。
本発明者らの発明の原理を適用しうる数多くの考え得る態様に鑑み、例示の態様は本発明の例に過ぎず、本発明の範囲に関する限定とみなすべきでないことは、認識されるべきである。むしろ、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によって画定される。それゆえに、本発明者らは、本発明者らの発明として、これらの請求項の範囲および要旨に含まれるものすべてを主張する。
[本発明1001]
有効量のループス自己抗原(La)タンパク質またはLaタンパク質の発現もしくは活性を調節する作用物質を、それを必要とする対象に投与し、それによって該対象における破骨細胞融合を調節する工程
を含む、破骨細胞融合を調節する方法。
[本発明1002]
対象がヒトである、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記投与が、有効量のLaタンパク質またはLaタンパク質の発現もしくは活性を調節する作用物質を、対象に全身的に投与することを含む、本発明1001または本発明1002の方法。
[本発明1004]
対象における破骨細胞融合および骨吸収を増加させる、本発明1001~1003のいずれかの方法。
[本発明1005]
Laタンパク質の発現または活性を調節する作用物質が、Laタンパク質の発現または活性を増加させる作用物質である、本発明1004の方法。
[本発明1006]
対象が骨吸収の低減を含む疾患を有する、本発明1004または本発明1005の方法。
[本発明1007]
疾患が大理石骨病である、本発明1006の方法。
[本発明1008]
対象が骨折を有する、本発明1004または本発明1005の方法。
[本発明1009]
対象にLaタンパク質を投与する工程を含む、本発明1004または1006~1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
Laタンパク質が、
(a)SEQ ID NO: 1のアミノ酸300~375、
(b)SEQ ID NO: 1のアミノ酸6~242
を含み、および/または
Laタンパク質がSEQ ID NO: 1のアミノ酸376~408を含まない、
本発明1009の方法。
[本発明1011]
Laタンパク質が、
(a)SEQ ID NO: 2と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列であって、Laタンパク質が、最大でも375アミノ酸長であり、SEQ ID NO: 1のアミノ酸376~408を含まない、アミノ酸配列、
(b)SEQ ID NO: 2と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列、
(c)SEQ ID NO: 2のアミノ酸配列[Laのアミノ酸1~375]、
(d)SEQ ID NO: 1のアミノ酸配列、
(e)SEQ ID NO: 7と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列、
(f)SEQ ID NO: 7と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列であって、Laタンパク質がSEQ ID NO: 1のアミノ酸1~187および376~408を含まない、アミノ酸配列、または
(g)SEQ ID NO: 7
を含むかまたはそれからなる、本発明1001~1009のいずれかの方法。
[本発明1012]
Laタンパク質または活性を調節する作用物質が、Laタンパク質をコードする核酸分子である、本発明1004~1008のいずれかの方法。
[本発明1013]
Laタンパク質が、
(a)SEQ ID NO: 1のアミノ酸300~375、および/または
(b)SEQ ID NO: 1のアミノ酸6~242
を含み、
Laタンパク質がSEQ ID NO: 1のアミノ酸376~408を含まない、
本発明1012の方法。
[本発明1014]
Laタンパク質が、
(a)SEQ ID NO: 2と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列であって、Laタンパク質が、最大でも375アミノ酸長であり、SEQ ID NO: 1のアミノ酸376~408を含まない、アミノ酸配列、
(b)SEQ ID NO: 2と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列、
(c)SEQ ID NO: 2のアミノ酸配列[Laのアミノ酸1~375]、
(d)SEQ ID NO: 1のアミノ酸配列、
(e)SEQ ID NO: 7と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列、
(f)SEQ ID NO: 7と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列であって、Laタンパク質がSEQ ID NO: 1のアミノ酸1~187および376~408を含まない、アミノ酸配列、または
(g)SEQ ID NO: 7
を含むかまたはそれからなる、本発明1012の方法。
[本発明1015]
核酸分子がSEQ ID NO: 3を含む、本発明1012の方法。
[本発明1016]
Laタンパク質をコードする核酸分子を含む発現ベクターを対象に投与する工程を含む、本発明1012~1015のいずれかの方法。
[本発明1017]
前記ベクターがアデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、またはアデノ随伴ウイルスベクターである、本発明1016の方法。
[本発明1018]
前記方法が対象における破骨細胞融合および骨吸収を減少させ、前記作用物質が該対象におけるLaタンパク質の発現または活性を減少させる、本発明1001~1003のいずれかの方法。
[本発明1019]
対象が、骨吸収の増加を含む疾患を有する、本発明1018の方法。
[本発明1020]
疾患が、骨粗鬆症、骨パジェット病、線維性骨異形成症、関節リウマチ、高破骨細胞(osteoclast-rich)大理石骨病、骨髄炎または転移性骨疾患である、本発明1019の方法。
[本発明1021]
作用物質が、阻害性核酸分子、阻害性Laペプチドをコードする核酸分子、またはCRISPR/Cas系である、本発明1018~1020のいずれかの方法。
[本発明1022]
阻害性核酸分子が、低分子阻害性(si)RNA、アンチセンスRNAまたはリボザイムである、本発明1021の方法。
[本発明1023]
作用物質が、SEQ ID NO: 4またはSEQ ID NO: 5を含むかまたはそれからなるsiRNAである、本発明1021または1022の方法。
[本発明1024]
作用物質が、Laタンパク質に特異的に結合するアンタゴニスト抗体である、本発明1018~1020のいずれかの方法。
[本発明1025]
作用物質がカスパーゼ阻害剤である、本発明1018~1020のいずれかの方法。
[本発明1026]
作用物質が、阻害ペプチド、阻害ペプチドをコードする核酸分子、または阻害ペプチドをコードする核酸分子を含むベクターである、本発明1018~1020のいずれかの方法。
[本発明1027]
阻害ペプチドが、
(a)SEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9からなる、
(b)SEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9を含み、最大でも35アミノ酸長である、
(c)1、2、3、4または5個の保存的置換を伴うSEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9からなる、あるいは
(d)1、2、3、4または5個の保存的置換を伴うSEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9を含み、最大でも35アミノ酸長である、
本発明1026の方法。
[本発明1028]
作用物質が、阻害ペプチドをコードする核酸分子であり、前記核酸分子がSEQ ID NO: 10またはSEQ ID NO: 11を含む、本発明1026の方法。
[本発明1029]
対象が骨粗鬆症を有し、前記方法が、
有効量の、ビスホスホネート、核因子カッパB活性化受容体リガンド(RANKL)に特異的に結合する抗体、またはテリパラチドのうちの1つまたは複数を該対象に投与する工程
をさらに含む、本発明1019~1028のいずれかの方法。
[本発明1030]
RANKLに特異的に結合する抗体がデノスマブである、本発明1029の方法。
[本発明1031]
本発明1001~1030のいずれかの方法における使用のための、有効量のLaタンパク質またはLaタンパク質の発現もしくは活性を調節する作用物質を含む薬学的組成物。
[本発明1032]
(a)対象におけるLaタンパク質の発現または活性を減少させる作用物質、および
(b)ビスホスホネート、RANKLに特異的に結合する抗体、またはテリパラチド
を含むキット。
[本発明1033]
対象におけるLaタンパク質の発現または活性を減少させる作用物質が、
(a)阻害性核酸分子、
(b)CRISPR/Cas系、
(c)Laタンパク質に特異的に結合するアンタゴニスト抗体、
(d)カスパーゼ阻害剤、
(e)阻害ペプチド、または
(f)阻害ペプチドをコードする核酸分子
である、本発明1032のキット。
[本発明1034]
Laタンパク質の発現または活性を減少させる作用物質が阻害ペプチドであり、前記阻害ペプチドが、
(a)SEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9からなる、
(b)SEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9を含み、最大でも35アミノ酸長である、
(c)1、2、3、4または5個の保存的置換を伴うSEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9からなる、あるいは
(d)1、2、3、4または5個の保存的置換を伴うSEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9を含み、最大でも35アミノ酸長である、
本発明1032のキット。
[本発明1035]
(a)Laタンパク質、その有効フラグメント、または、Laタンパク質もしくはその有効フラグメントをコードする核酸分子もしくはベクター、および
(b)潜在性膜タンパク質(LMP)-1、線維芽細胞増殖因子(FGF)-2、もしくは骨形態形成タンパク質(BMP)、またはLMP-1、FGF-2、もしくはBMPをコードする核酸
を含むキット。
本開示の前記および他の特徴は、添付の図面を参照して以下に記載するいくつかの態様の詳細な説明から、いっそう明白になるだろう。

Claims (35)

  1. 有効量のループス自己抗原(La)タンパク質またはLaタンパク質の発現もしくは活性を調節する作用物質を、それを必要とする対象に投与し、それによって該対象における破骨細胞融合を調節する工程
    を含む、破骨細胞融合を調節する方法。
  2. 対象がヒトである、請求項1記載の方法。
  3. 前記投与が、有効量のLaタンパク質またはLaタンパク質の発現もしくは活性を調節する作用物質を、対象に全身的に投与することを含む、請求項1または請求項2記載の方法。
  4. 対象における破骨細胞融合および骨吸収を増加させる、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
  5. Laタンパク質の発現または活性を調節する作用物質が、Laタンパク質の発現または活性を増加させる作用物質である、請求項4記載の方法。
  6. 対象が骨吸収の低減を含む疾患を有する、請求項4または請求項5記載の方法。
  7. 疾患が大理石骨病である、請求項6記載の方法。
  8. 対象が骨折を有する、請求項4または請求項5記載の方法。
  9. 対象にLaタンパク質を投与する工程を含む、請求項4または6~8のいずれか一項記載の方法。
  10. Laタンパク質が、
    (a)SEQ ID NO: 1のアミノ酸300~375、
    (b)SEQ ID NO: 1のアミノ酸6~242
    を含み、および/または
    Laタンパク質がSEQ ID NO: 1のアミノ酸376~408を含まない、
    請求項9記載の方法。
  11. Laタンパク質が、
    (a)SEQ ID NO: 2と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列であって、Laタンパク質が、最大でも375アミノ酸長であり、SEQ ID NO: 1のアミノ酸376~408を含まない、アミノ酸配列、
    (b)SEQ ID NO: 2と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列、
    (c)SEQ ID NO: 2のアミノ酸配列[Laのアミノ酸1~375]、
    (d)SEQ ID NO: 1のアミノ酸配列、
    (e)SEQ ID NO: 7と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列、
    (f)SEQ ID NO: 7と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列であって、Laタンパク質がSEQ ID NO: 1のアミノ酸1~187および376~408を含まない、アミノ酸配列、または
    (g)SEQ ID NO: 7
    を含むかまたはそれからなる、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
  12. Laタンパク質または活性を調節する作用物質が、Laタンパク質をコードする核酸分子である、請求項4~8のいずれか一項記載の方法。
  13. Laタンパク質が、
    (a)SEQ ID NO: 1のアミノ酸300~375、および/または
    (b)SEQ ID NO: 1のアミノ酸6~242
    を含み、
    Laタンパク質がSEQ ID NO: 1のアミノ酸376~408を含まない、
    請求項12記載の方法。
  14. Laタンパク質が、
    (a)SEQ ID NO: 2と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列であって、Laタンパク質が、最大でも375アミノ酸長であり、SEQ ID NO: 1のアミノ酸376~408を含まない、アミノ酸配列、
    (b)SEQ ID NO: 2と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列、
    (c)SEQ ID NO: 2のアミノ酸配列[Laのアミノ酸1~375]、
    (d)SEQ ID NO: 1のアミノ酸配列、
    (e)SEQ ID NO: 7と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列、
    (f)SEQ ID NO: 7と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列であって、Laタンパク質がSEQ ID NO: 1のアミノ酸1~187および376~408を含まない、アミノ酸配列、または
    (g)SEQ ID NO: 7
    を含むかまたはそれからなる、請求項12記載の方法。
  15. 核酸分子がSEQ ID NO: 3を含む、請求項12記載の方法。
  16. Laタンパク質をコードする核酸分子を含む発現ベクターを対象に投与する工程を含む、請求項12~15のいずれか一項記載の方法。
  17. 前記ベクターがアデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、またはアデノ随伴ウイルスベクターである、請求項16記載の方法。
  18. 前記方法が対象における破骨細胞融合および骨吸収を減少させ、前記作用物質が該対象におけるLaタンパク質の発現または活性を減少させる、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
  19. 対象が、骨吸収の増加を含む疾患を有する、請求項18記載の方法。
  20. 疾患が、骨粗鬆症、骨パジェット病、線維性骨異形成症、関節リウマチ、高破骨細胞(osteoclast-rich)大理石骨病、骨髄炎または転移性骨疾患である、請求項19記載の方法。
  21. 作用物質が、阻害性核酸分子、阻害性Laペプチドをコードする核酸分子、またはCRISPR/Cas系である、請求項18~20のいずれか一項記載の方法。
  22. 阻害性核酸分子が、低分子阻害性(si)RNA、アンチセンスRNAまたはリボザイムである、請求項21記載の方法。
  23. 作用物質が、SEQ ID NO: 4またはSEQ ID NO: 5を含むかまたはそれからなるsiRNAである、請求項21または22記載の方法。
  24. 作用物質が、Laタンパク質に特異的に結合するアンタゴニスト抗体である、請求項18~20のいずれか一項記載の方法。
  25. 作用物質がカスパーゼ阻害剤である、請求項18~20のいずれか一項記載の方法。
  26. 作用物質が、阻害ペプチド、阻害ペプチドをコードする核酸分子、または阻害ペプチドをコードする核酸分子を含むベクターである、請求項18~20のいずれか一項記載の方法。
  27. 阻害ペプチドが、
    (a)SEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9からなる、
    (b)SEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9を含み、最大でも35アミノ酸長である、
    (c)1、2、3、4または5個の保存的置換を伴うSEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9からなる、あるいは
    (d)1、2、3、4または5個の保存的置換を伴うSEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9を含み、最大でも35アミノ酸長である、
    請求項26記載の方法。
  28. 作用物質が、阻害ペプチドをコードする核酸分子であり、前記核酸分子がSEQ ID NO: 10またはSEQ ID NO: 11を含む、請求項26記載の方法。
  29. 対象が骨粗鬆症を有し、前記方法が、
    有効量の、ビスホスホネート、核因子カッパB活性化受容体リガンド(RANKL)に特異的に結合する抗体、またはテリパラチドのうちの1つまたは複数を該対象に投与する工程
    をさらに含む、請求項19~28のいずれか一項記載の方法。
  30. RANKLに特異的に結合する抗体がデノスマブである、請求項29記載の方法。
  31. 請求項1~30のいずれか一項記載の方法における使用のための、有効量のLaタンパク質またはLaタンパク質の発現もしくは活性を調節する作用物質を含む薬学的組成物。
  32. (a)対象におけるLaタンパク質の発現または活性を減少させる作用物質、および
    (b)ビスホスホネート、RANKLに特異的に結合する抗体、またはテリパラチド
    を含むキット。
  33. 対象におけるLaタンパク質の発現または活性を減少させる作用物質が、
    (a)阻害性核酸分子、
    (b)CRISPR/Cas系、
    (c)Laタンパク質に特異的に結合するアンタゴニスト抗体、
    (d)カスパーゼ阻害剤、
    (e)阻害ペプチド、または
    (f)阻害ペプチドをコードする核酸分子
    である、請求項32記載のキット。
  34. Laタンパク質の発現または活性を減少させる作用物質が阻害ペプチドであり、前記阻害ペプチドが、
    (a)SEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9からなる、
    (b)SEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9を含み、最大でも35アミノ酸長である、
    (c)1、2、3、4または5個の保存的置換を伴うSEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9からなる、あるいは
    (d)1、2、3、4または5個の保存的置換を伴うSEQ ID NO: 8またはSEQ ID NO: 9を含み、最大でも35アミノ酸長である、
    請求項32記載のキット。
  35. (a)Laタンパク質、その有効フラグメント、または、Laタンパク質もしくはその有効フラグメントをコードする核酸分子もしくはベクター、および
    (b)潜在性膜タンパク質(LMP)-1、線維芽細胞増殖因子(FGF)-2、もしくは骨形態形成タンパク質(BMP)、またはLMP-1、FGF-2、もしくはBMPをコードする核酸
    を含むキット。
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