JP2024511109A - 合成ペプチド治療薬のcar-t送達の方法 - Google Patents

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アンディ ミン
カール エイチ. ジューン
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ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
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Abstract

本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)および治療用ペプチドを含む操作された細胞(例えば、T細胞)、ならびにその使用の方法を提供する。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法119条(e)項の下、2021年3月25日に出願された米国仮特許出願第63/166,073号の優先権を主張する権利を有し、該仮特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
連邦政府支援による研究開発に関する言明
本発明は、米国国立衛生研究所により授与されたCA228455の下、政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
発明の背景
キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)は、液性悪性腫瘍において高い潜在的可能性を示しているが、固形腫瘍における応答は、これまでのところ限定されている。同様に、生物活性ペプチド治療薬も、インビトロおよびインビボで有望な前臨床活性を実証しているが、高い臨床的有益性はまだ実証されていない。両療法は、より大きな患者集団において、はっきりと異なる活性障害に直面している。CAR-Tなどの養子細胞療法(ACT)の場合は、多様な局所腫瘍固有の免疫抑制機構が、抗腫瘍効果を限定している。同じく、ペプチド治療薬の効率的な送達および局在が、重大な障害となっていることも証明されている。
当技術分野において、増強された抗腫瘍活性を提供する改善されたCAR-T療法が必要とされている。本発明は、この必要性に応えるものである。
一局面では、本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)および治療用ペプチドを含む操作された細胞を提供する。CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。治療用ペプチドは、非天然型治療用ペプチドであり、CAR分子および治療用ペプチドは、同じ発現構築物から発現される。
別の局面では、本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)および治療用ペプチドを含む操作された細胞を提供する。CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、治療用ペプチドは、非天然型治療用ペプチドである。治療用ペプチドは、以下の特性:(i)治療用ペプチドは、インターフェロン遺伝子刺激因子(stimulator of interferon genes)(STING)経路の活性化因子である、(ii)治療用ペプチドは、環状ジヌクレオチドの模倣体である、(iii)治療用ペプチドは、短鎖脂肪酸(SCFA)の模倣体である、(iv)治療用ペプチドは、パターン認識受容体(PRR)のアゴニストである、(v)治療用ペプチドは、ステロイド/ホルモン様分子の模倣体である、(vi)治療用ペプチドは、標的細胞のアポトーシスを促進する、(vii)治療用ペプチドは、免疫原性エピトープである、および/または(viii)治療用ペプチドは、標的細胞における1つまたは複数のDNA修復機構を遮断する、の1つまたは複数を有する。
ある特定の態様では、治療用ペプチドは、cGAMP、cAMP、またはcGMPの模倣体である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、TLRアゴニストの模倣体である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、フラジェリン、CpGモチーフ、ペプチドグリカン、リポ多糖(LPS)、またはモノホスホリルリピドA(MPL)の模倣体である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、第2のミトコンドリア由来カスパーゼ活性化因子(second mitochondria derived activator of caspase)(SMAC)模倣体である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の阻害剤である。
ある特定の態様では、非天然型ペプチドは、天然に存在するペプチドに対して90%以下の配列同一性を有するペプチドである。ある特定の態様では、非天然型ペプチドは、天然に存在するペプチドに対して80%以下の配列同一性を有するペプチドである。ある特定の態様では、該ペプチドは、SEQ ID NO:1~16からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
ある特定の態様では、治療用ペプチドは、操作された細胞から細胞外小胞中に排出される。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)に結合するSCFAの模倣体である。
ある特定の態様では、標的細胞は、腫瘍細胞である。
ある特定の態様では、操作された細胞は、T細胞またはNK細胞である。
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、抗体、抗原結合断片(Fab)、および単鎖可変断片(scFv)からなる群より選択される。
ある特定の態様では、結合ドメインは、T細胞受容体(TCR)である。
ある特定の態様では、標的抗原は、CD19、CD20、CD22、BCMA、CD123、CD133、EGFR、EGFRvIII、メソテリン、Her2、PSMA、CEA、GD2、IL-13Ra2、グリピカン-3、CIAX、LI-CAM、CA 125、CTAG1B、ムチン1、および葉酸受容体-アルファからなる群より選択される。ある特定の態様では、標的抗原は、腸細胞上に発現される。
ある特定の態様では、膜貫通ドメインは、CD8アルファ、CD3ゼータ、CD3イプシロン、CD28、およびICOSからなる群より選択されるタンパク質からの膜貫通ドメインである。
ある特定の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ、TCRゼータ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3デルタ、またはICOSからなる群より選択されるタンパク質の機能的シグナル伝達ドメインを含む。ある特定の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、機能的シグナル伝達ドメインを含み、かつ、共刺激性ドメインをさらに含み、ここで、共刺激性ドメインは、4-1BBまたはCD28からの機能的シグナル伝達ドメインを含む。
ある特定の態様では、CARは、抗CD19 scFv、CD8アルファ膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激性ドメイン、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む。
ある特定の態様では、治療用ペプチドは、SCFA模倣体であるか、または、ステロイドおよび/もしくはホルモン様分子の模倣体であり、ここで、操作された細胞は、1つまたは複数のエフェクター機能の活性を低下させるようにさらに改変されている。
ある特定の態様では、操作された細胞は、1つもしくは複数の炎症性サイトカインの発現、グランザイムBの発現、またはパーフォリンの発現を低下または阻止するように改変されている。
ある特定の態様では、CAR分子および治療用ペプチドは、同じ発現構築物から発現され、ここで、発現構築物は、PRRを活性化するRNA分子をさらに含む。ある特定の態様では、RNA分子は、7SLである。
別の局面では、本開示は、本明細書において想定される操作された細胞のいずれかを含む組成物を提供する。
別の局面では、本開示は、(i)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)と(ii)治療用ペプチドとをコードする核酸分子であって、治療用ペプチドが非天然型ペプチドである、核酸分子を提供する。
ある特定の態様では、終止コドンは、CARをコードする核酸セグメントと、治療用ペプチドをコードする核酸セグメントとを隔てている。
ある特定の態様では、該核酸分子によってコードされる治療用ペプチドは、以下の特性:(i)治療用ペプチドは、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)経路の活性化因子である、(ii)治療用ペプチドは、環状ジヌクレオチドの模倣体である、(iii)治療用ペプチドは、短鎖脂肪酸(SCFA)の模倣体である、(iv)治療用ペプチドは、パターン認識受容体(PRR)のアゴニストである、(v)治療用ペプチドは、ステロイド/ホルモン様分子の模倣体である、(vi)治療用ペプチドは、標的細胞のアポトーシスを促進する、(vii)治療用ペプチドは、免疫原性エピトープである、および/または(viii)治療用ペプチドは、標的細胞における1つまたは複数のDNA修復機構を遮断する、の1つまたは複数を有する。
ある特定の態様では、治療用ペプチドは、cGAMP、cAMP、またはcGMPの模倣体である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、TLRアゴニストの模倣体である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、フラジェリン、CpGモチーフ、ペプチドグリカン、リポ多糖(LPS)、またはモノホスホリルリピドA(MPL)の模倣体である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、第2のミトコンドリア由来カスパーゼ活性化因子(SMAC)模倣体である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の阻害剤である。
ある特定の態様では、非天然型ペプチドをコードする核酸は、天然に存在するペプチドをコードする核酸に対して80%以下の配列同一性を有する。
ある特定の態様では、標的細胞は、腫瘍細胞である。
ある特定の態様では、該核酸分子によってコードされる抗原結合ドメインは、抗体、Fab、およびscFvからなる群より選択される。
ある特定の態様では、該核酸分子によってコードされる結合ドメインは、TCRである。
ある特定の態様では、該核酸分子によってコードされる結合ドメインは、CD19、CD20、CD22、BCMA、CD123、CD133、EGFR、EGFRvIII、メソテリン、Her2、PSMA、CEA、GD2、IL-13Ra2、グリピカン-3、CIAX、LI-CAM、CA 125、CTAG1B、ムチン1、および葉酸受容体-アルファからなる群より選択される標的抗原に結合する。
ある特定の態様では、該核酸分子によってコードされる膜貫通ドメインは、CD8アルファ、CD3ゼータ、CD3イプシロン、CD28、およびICOSからなる群より選択されるタンパク質からの膜貫通ドメインである。
ある特定の態様では、該核酸分子によってコードされる細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ、TCRゼータ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3デルタ、またはICOSからなる群より選択されるタンパク質の機能的シグナル伝達ドメインを含む。ある特定の態様では、該核酸分子によってコードされる細胞内シグナル伝達ドメインは、機能的シグナル伝達ドメインを含み、かつ、共刺激性ドメインをさらに含み、ここで、共刺激性ドメインは、4-1BBまたはCD28からの機能的シグナル伝達ドメインを含む。
ある特定の態様では、該核酸分子は、抗CD19 scFv、CD8アルファ膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激性ドメイン、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むCAR分子をコードする。
ある特定の態様では、該核酸分子は、PRRを活性化するRNA分子をさらに含む。ある特定の態様では、RNA分子は、7SLである。
別の局面では、本開示は、本明細書において想定される核酸分子のいずれかを含む発現ベクターを提供する。
別の局面では、本開示は、細胞においてCARおよび治療用ペプチドを共発現させるための方法を提供する。該方法は、CARおよび治療用ペプチドが発現されるような条件下で、本明細書において想定される発現ベクターのいずれかを細胞に送達することを含む。
別の局面では、本開示は、本明細書において想定される核酸分子のいずれかまたは発現ベクターのいずれかを含む細胞を提供する。
別の局面では、本開示は、対象における疾患または障害を治療するための方法を提供する。該方法は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変されたT細胞の有効量を対象に投与することを含む。CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む。該方法は、非天然型治療用ペプチドを介した、がんに対する内因性免疫応答の刺激をさらに含む。非天然型治療用ペプチドは、改変されたT細胞において発現される、および/または、改変されたT細胞と併用して投与される。非天然型治療用ペプチドは、以下の特性:(i)治療用ペプチドは、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)経路の活性化因子である、(ii)治療用ペプチドは、環状ジヌクレオチドの模倣体である、(iii)治療用ペプチドは、短鎖脂肪酸(SCFA)の模倣体である、(iv)治療用ペプチドは、パターン認識受容体(PRR)のアゴニストである、(v)治療用ペプチドは、ステロイド/ホルモン様分子の模倣体である、(vi)治療用ペプチドは、標的細胞のアポトーシスを促進する、(vii)治療用ペプチドは、免疫原性エピトープである、および/または(viii)治療用ペプチドは、標的細胞における1つまたは複数のDNA修復機構を遮断する、の1つまたは複数を有する。
ある特定の態様では、治療用ペプチドは、cGAMP、cAMP、またはcGMPの模倣体である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、TLRアゴニストの模倣体である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、フラジェリン、CpGモチーフ、ペプチドグリカン、リポ多糖(LPS)、またはモノホスホリルリピドA(MPL)の模倣体である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、第2のミトコンドリア由来カスパーゼ活性化因子(SMAC)模倣体である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の阻害剤である。
ある特定の態様では、非天然型ペプチドは、任意の天然に存在するペプチドに対して80%以下の配列同一性を有するペプチドである。
ある特定の態様では、該ペプチドは、SEQ ID NO:1~16からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
ある特定の態様では、治療用ペプチドは、免疫原性エピトープであり、ここで、対象への投与後に、免疫原性エピトープが、対象のがん細胞の表面に発現される。ある特定の態様では、治療用ペプチドが、改変されたT細胞において発現され、ここで、対象への改変されたT細胞の投与に続いて、治療用ペプチドが、改変されたT細胞から1つまたは複数の細胞外小胞中に排出される。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、1つまたは複数の細胞外小胞を介して、対象の1つまたは複数の抗原提示細胞に送達される。
別の局面では、本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変されたT細胞の抗がん活性を増強するための方法を提供する。CARは、腫瘍細胞上に発現される抗原に特異的に結合する抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびシグナル伝達ドメインを含む。該方法は、T細胞において非天然型治療用ペプチドを共発現させることを含む。非天然型治療用ペプチドは、以下の特性:(i)治療用ペプチドは、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)経路の活性化因子である、(ii)治療用ペプチドは、環状ジヌクレオチドの模倣体である、(iii)治療用ペプチドは、短鎖脂肪酸(SCFA)の模倣体である、(iv)治療用ペプチドは、パターン認識受容体(PRR)のアゴニストである、(v)治療用ペプチドは、ステロイド/ホルモン様分子の模倣体である、(vi)治療用ペプチドは、標的細胞のアポトーシスを促進する、(vii)治療用ペプチドは、免疫原性エピトープである、および/または(viii)治療用ペプチドは、標的細胞における1つまたは複数のDNA修復機構を遮断する、の1つまたは複数を有する。
別の局面では、本開示は、対象における炎症性疾患、自己免疫疾患、またはがんを治療するための方法を提供する。該方法は、本明細書において想定される操作された細胞のいずれかまたは組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
ある特定の態様では、がんは、固形腫瘍がんである。ある特定の態様では、がんは、肺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、中皮腫、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、卵管がん、子宮頸がん、前立腺がん、大腸がん、胃がん、膀胱がん、食道がん、および黒色腫からなる群より選択される。ある特定の態様では、がんは、血液がんである。ある特定の態様では、血液がんは、白血病またはリンパ腫である。ある特定の態様では、血液がんは、慢性リンパ球性白血病(CLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫、急性リンパ性白血病(ALL)、ホジキンリンパ腫、B細胞性急性リンパ性白血病(BALL)、T細胞性急性リンパ性白血病(TALL)、小リンパ球性白血病(SLL)、急性骨髄性白血病(AML)、B細胞性前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、慢性骨髄性白血病、骨髄増殖性腫瘍、濾胞性リンパ腫、小児型濾胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、小細胞型または大細胞型濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖性病態、MALTリンパ腫(粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫)、辺縁帯リンパ腫、骨髄異形成、骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、形質芽細胞性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、脾辺縁帯リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、および形質細胞性骨髄腫からなる群より選択される。
ある特定の態様では、自己免疫疾患は、炎症性腸疾患である。
本発明の前述および他の特徴および利点は、添付の図面と併せて、下記の例示的な態様の詳細な説明からより十分に理解されよう。
本開示の例示的な態様の概略図を描写している。 終止コドンによって隔てられたCAR分子(19BBz)と非天然型ペプチド(SIINFEKL)(SEQ ID NO:7)とを含む、例示的なCAR構築物の図解である。 19BBz CAR形質導入(CAR+)および非形質導入(CAR-)細胞;ならびにOva-19BBz CAR形質導入(CAR+)および非形質導入(CAR-)細胞上のペプチド/MHC発現を示しているフローサイトメトリープロットを描写している。 内部終止コドンが含まれているにもかかわらずCAR分子が発現されることを示しているフローサイトメトリープロットを描写している。CAR発現は、抗ヒトFab’2抗体で染色することによって判定した。提唱されるペプチド移送事象を示している。 CAR-T形質導入細胞から細胞外小胞への免疫原性ペプチドの封入および免疫原性ペプチドエピトープの腫瘍細胞への移送を評価するための研究の実験設計の図解である。 CAR-T EVなし、18μg EV、37.5μg EV、または75μg EVとインキュベートした腫瘍細胞上のペプチド/MHC発現(上段)およびOT-I T細胞におけるグランザイムB発現(下段)を示しているフローサイトメトリープロットを描写している。 CAR-T EVなし、18μg EV、37.5μg EV、または75μg EVとインキュベートしたOT-I T細胞におけるKi67発現(上段)およびIFNγ発現(下段)を示しているフローサイトメトリープロットを描写している。 図6Aの下段および図6Bに示されるOva-19BBz EVデータの定量を描写している。Ki67発現(図6C、左パネル)、グランザイムB発現(図6C、中央パネル)およびIFNγ発現(図6C、右パネル)は、EVの存在下で、19BBz(すなわち、Ovaペプチドなし)発現CAR-T細胞からの当量のEVと比較して有意に増加した。 OT-I T細胞および0μg EV、18μg EV、37.5μg EV、または75μg EVとインキュベートしたB16細胞の相対的細胞死を示している棒グラフである。 B16-hCD19腫瘍細胞を使用したインビボの免疫原性ペプチドエピトープの発現および移送のインビボ研究の研究設計の図解である。 腫瘍細胞移植マウスへの19BBzまたはOva-19BBz投与後の、腫瘍細胞(上の2つのパネル)または樹状細胞(下の2つのパネル)上のペプチド/MHCの発現を示している。 19BBz(左パネル)またはOva-19BBz(中央パネル)の投与後の腫瘍から収集したCD8+ T細胞に対するペプチド四量体染色を示している。Ova-19BBz群から単離した四量体+細胞はまた、Ki67+でもあり(右パネル)、このことは、SIINFEKL特異的細胞が活性化されたことを示している。 19BBzレシピエント対Ova-19BBzレシピエントでの、Ova+腫瘍細胞の%(左パネル)およびOva+内因性免疫細胞の%(右パネル)を示している。 19BBzレシピエントマウス対Ova-19BBzレシピエントマウスでの、Ova四量体で陽性染色された内因性T細胞の%(左上パネル)および増殖マーカーKi67を発現するCD8+ T細胞の%(右上パネル)を示している。レシピエントマウスの16日目の腫瘍重量を下パネルに示している。 図11Aは、B16-CD19細胞とB16 WT細胞の1:1混合物を使用して腫瘍を移植した、インビボの免疫原性ペプチドエピトープの発現および移送のインビボ研究の研究設計の図解である。図11Bは、腫瘍移植後21日目、24日目および28日目に、19BBzを投与した動物の腫瘍体積(cm3)が、Ova-19BBzを投与した動物の腫瘍体積よりも有意に高かったこと;そして、腫瘍体積が、Ova-19BBzレシピエントと比較して、19BBzレシピエントにおいてより急速に成長したことを示している。 終止コドンによって隔てられたCAR分子(19BBz)と非天然型ペプチド(SIINFEKL)とを含む、例示的なCAR構築物の図解;ならびにSIINFEKLペプチド、終止コドン、19BBz CAR分子および7SL RNAを含む、例示的なCAR構築物の図解である。RNAプロモーターU6は、19BBz CAR分子と7SLとを隔てている。また、Ova-19BBz、19BBz-7SL、Ova-19BBz-7SL、または対照(19BBz)CAR T細胞を使用し、KP-hCD19細胞とKP WT細胞の1:1混合物を使用して腫瘍を移植した、免疫原性ペプチドエピトープの発現および移送のインビボ研究の研究設計の図解も示している。 未処置マウス(Utxl)、19BBz、Ova-l9BBz(Ova-19)、19BBz-7SL(19-7SL)、またはOva-19BBz-7SL(Ova-19-7SL)で処置したマウスの各群における腫瘍体積を示している。 19BBz、Ova-19BBz(BBz-Ova)、19BBz-7SL(BBz-7SL)、およびOva-19BBz-7SL(Ova-BBz-7SL)で処置したマウス;または未処置マウス(utx)の経時的な生存率を示している。 cGAMPと複合体化したヒトSTING分子(PDB構造4EMT;左パネル)またはcGAMPが除去されて空のcGAMPポケットを有する単独の活性STING構造が露呈したSTING構造のタンパク質構造データバンク結晶構造を示している。 結合ペプチドを生成するためのサンプリングにポリ-Glyを用いたSTING(左パネル)および予測された結合ペプチドがcGAMP結合位置に存在するSTING(右パネル)を示している。示している予測された結合ペプチドは、ペプチドST2である。 DC活性化のリードアウトとしてCD86によって測定した場合の、同定されたSTINGアゴニストペプチドの活性を評価するための研究設計の図解描写である(左パネル)。図15の右パネルは、陰性対照、陽性対照(cGAMP)または指定のSTINGペプチドとのインキュベーション後のフローサイトメトリーによって測定した場合のCD86+細胞の%を示している。 DCおよびOT-1 T細胞とインキュベートしたときのSTINGアゴニストペプチドの効果を評価するための研究設計の図解描写である(左パネル)。右パネルは、リポソーム封入STINGペプチドとインキュベートしたWT細胞におけるグランザイムB、IFNγおよびKi67の倍率変化を示している。リポソームのみを陰性対照として使用した。WTに加え、STINGノックアウトマウス(KO)からの細胞を使用して、ST2によるT細胞の活性化がSTING依存的であることを示している。 19BBz CAR構築物とSTINGアゴニストペプチドST2および19BBzを含むSTINGアゴニストペプチド-19BBz CAR構築物の図解描写を提供する(上)。下部は、19BBz-ST2構築物を発現する細胞のインビボ評価の例示的な実験計画を示している。 19BBz-STINGペプチド発現CAR T細胞を受けた動物が、従来の19BBz CAR-T細胞を受けた動物と比較して、有意に改善された生存を示したことを示している。 TNFの存在下で、リポソームのみ(陰性対照)または指定の濃度のSMAC模倣ペプチドPepl、Pep3、Pep4、Pep5もしくはPep6とインキュベートしたときの、B16腫瘍細胞(左パネル)またはKP腫瘍細胞(右パネル)における相対的細胞死を示している。 TNFの存在下または非存在下で、リポソームのみ(陰性対照)または指定の漸増濃度のSMAC模倣ペプチドSMACm6とインキュベートしたB16細胞の相対的細胞死を示している。濃度は、μMで示している。細胞死の誘導におけるSMACm6の有効性は、TNFシグナル伝達に依存的である。 SMACm6ペプチドおよび19BBzを含むCAR-T構築物の図解描写(上)、ならびに、増大させたSMACm CAR-T細胞から放出されたEVの腫瘍細胞株に対する効果を評価するための実験設計(下)である。 19BBzまたは19BBz-SMACm6細胞からの指定の濃度のEVとインキュベートしたB16(左パネル)またはKP(右パネル)細胞の相対的細胞死を示している。 指定のCAR-T細胞(19BBzまたはl9-SMACm6)を投与した動物の、抗CTLA4療法ありまたはなしの場合の、腫瘍体積(cm3;左の2つのパネル)および生存率(右の2つのパネル)を示している。 PDL1のPARPi dsDNA誘発を示している図解である。 リポソーム封入PARPiペプチド(Pep1、Pep2、Pep1C、またはPep3)、陰性対照(リポソームのみ)または陽性対照(PARP阻害剤オラパリブ)とのインキュベーション後のTSA乳がん細胞におけるPD-L1発現を示している。 Ova(Ova-19BBz)またはOva+RN7SL1(Ova-19-7SL)を発現する19BBz CARベクターの設計(上)、ならびにCAR+およびCAR- T細胞上のSIINFEKLペプチドの検出を示している代表的なフローサイトメトリープロット(下)を示している。 Ova-19BBz CAR-T細胞または19BBz CAR-T細胞(対照)からの指定の濃度のEVを負荷したB16細胞上のSIINFEKLペプチドの検出を示している(フロープロット、上)。次いで、OT-I T細胞を加え、活性化を測定し(フロープロット、下)、GZMBおよびKi67を使用して定量した(ドットプロット、下)。 19BBzまたはOva-19BBz(Ova)CAR-T細胞でインビボ処理した後の混合CD19+/CD19- B16腫瘍において測定された、がんおよび免疫細胞へのSIINFEKLペプチド移送を示している。がん細胞の代表的なフローサイトメトリープロットを示している(左)。 四量体およびKi67発現によって測定された内因性Ova特異的T細胞増大を示している。 四量体およびKi67発現によって測定されたOva特異的およびKi67+ CD8 T細胞の頻度を示している。 指定のCAR-T細胞で処理した後の異種CD19+/CD19- B16腫瘍の成長を示している。 抗CTLA4+抗PD1によるCAR-T細胞療法後の異種CD19+/CD19- KP混合腫瘍の成長を示している。腫瘍移植前に5×105個のOT-I T細胞を移入した。 SIINFEKL/MHC-I染色についてフローサイトメトリーによって定量した場合の、混合CD19-およびCD19+ B16腫瘍における、CD45.1+ CAR- T細胞から腫瘍内CD45.2+免疫細胞対CD45.2-腫瘍細胞へのOvaペプチドの相対的な移送を示している。各棒は、個々の腫瘍を表している。 CAR-T細胞の細胞外小胞(EV)からの抗原ペプチドの送達により内因性T細胞を活性化するための、CAR-T細胞からのMHC-Iの要件を評価するための研究の実験セットアップを描写している。 指定の培養条件(x軸)下、MHC-I発現(上)またはMHC-I欠損(下)CAR-T細胞からのEVの添加後の、OT-I T細胞上の指定のT細胞活性化マーカーの発現を示している。 OT-I T細胞上のT細胞活性化マーカーの代表的なフローサイトメトリープロットを示している。 抗原ペプチドを送達するように操作されたCAR-T細胞からの細胞外小胞の、内因性T細胞を直接活性化する能力を評価するための研究の実験セットアップを描写している。 指定のCAR-T細胞を下部ウェルに添加した後の、上部ウェルからのOT-I CD8 T細胞の、指定のT細胞活性化マーカー(上段)またはCAR-T細胞EVから移送されたOVA/MHC-I(下段)に関する代表的なフローサイトメトリープロットを示している。2つの独立したリプリケートを示している。
詳細な説明
キメラ抗原受容体(CAR)療法、例えば、CAR-T細胞は、がんなどの疾患を治療するための新たな方法を提供するが、そのような療法に対して改善が必要とされている。CAR療法に対する望ましい改善には、がんに対する免疫応答の効力および/もしくは永続性を増強すること、腫瘍細胞内の細胞死促進経路を活用すること、新しくて多様な新生抗原を同定すること、腫瘍細胞のもしくは腫瘍環境における免疫回避および生存戦略を相殺もしくは無効にすること、新規腫瘍抗原を同定および使用して腫瘍に対する免疫応答を標的化すること、ならびに/またはそれ以外の方法で抗がん効果を誘発もしくは増強することが含まれる。
免疫系を刺激するRNA分子などの外因性RNA分子と共にCAR分子を細胞で発現させることを含む増強されたCAR-T療法が調査されており、改善された抗がん免疫活性を提供する。しかしながら、そのようなアプローチは、RNA分子上にコードできない多くの免疫応答の経路および特徴を利用することができない。本開示は、この必要性に応える説得力のある方法を提供し、本明細書に提供されるアプローチが驚くほど高い有効性を示すことを実証する。
したがって、ある特定の局面では、本開示は、疾患特異的な要求に合わせた、複数の抗腫瘍免疫成分を腫瘍および腫瘍微小環境に送達するための方法および組成物を提供する。ある特定の態様では、本開示は、CAR療法によって送達され、CAR療法を増強する、新規治療用分子を提供する。新規治療用分子は、ある特定の態様では、合成の非天然型ペプチドである。本開示は、本明細書に提供される新規組成物を製造および使用するための方法をさらに提供する。本開示は、免疫原性エピトープライブラリーを作製するための、かつ、免疫原性ペプチドを腫瘍細胞に移送して抗がん免疫を増強するための、組成物および方法をさらに提供する。
本開示に記載される方法は、本明細書において開示される特定の方法および/または実験条件が変動し得るので、そのような方法および条件に限定されないことを理解されたい。また、本明細書において使用される用語法は、特定の態様だけを説明することを目的とし、限定的であることは意図しないことも理解されたい。
さらに、本明細書に記載される実験は、特に示さない限り、当業者の技能の範囲内で従来の分子細胞生物学的および免疫学的技法を使用する。そのような技法は、熟練の作業者に周知であり、文献に十分に説明されている。例えば、すべての補遺を含むAusubel, et al., ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., NY, N.Y. (1987-2008)、MR GreenおよびJ. SambrookによるMolecular Cloning: A Laboratory Manual (Fourth Edition)ならびにHarlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Chapter 14, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor (2013, 2nd edition)を参照されたい。
A. 定義
特に定義されない限り、本明細書において用いられる科学用語および技術用語は、当業者によって広く理解されている意味を有する。何らかの潜在的意味不確定が発生した場合、本明細書において提供される定義が、任意の辞書または外部の定義よりも優先される。状況により特に必要とされない限り、単数の用語は複数を含むものとし、複数の用語は単数を含むものとする。特に述べない限り、「または」の使用は「および/または」を意味する。「含んでいる(including)」という用語ならびに「含む(includes)」および「含んだ(included)」などの他の形態の使用は、非限定的である。
一般的に、本明細書に記載される細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学ならびにタンパク質および核酸の化学およびハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法は周知であり、当技術分野において広く使用される。本明細書において提供される方法および技法は、特に示さない限り一般的に当技術分野において周知の従来法に従って、本明細書全体にわたり引用され、論じられる様々な一般的でより具体的な参考文献に記載されるように行われる。酵素反応および精製技法は、当技術分野において広く成し遂げられる、または本明細書に記載されるように製造業者の規格に従って行われる。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、および医薬化学に関連して使用される命名法ならびにその検査手技および技法は、周知であり、当技術分野において広く使用されるものである。化学合成、化学分析、薬学的調製、製剤化、および送達ならびに患者の処置のために標準的な技法が使用される。
本開示がより容易に理解され得るように、選ばれた用語を以下に定義する。
「1つの(a)」および「1つの(an)」という冠詞は、本明細書においてその冠詞の文法的対象物の1つまたは1つよりも多く(すなわち、少なくとも1つ)をいうように用いられる。例として、「1つの(an)要素」は、1つの要素または1つよりも多い要素を意味する。
量、時間的持続期間などのような測定可能な値をいう場合に本明細書において用いられる「約」は、特定された値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、なおより好ましくは±0.1%のばらつきを包含するものとするが、これはそのようなばらつきが、開示された方法を実施する上で妥当なためである。
本明細書において用いられる「活性化」とは、検出可能な細胞増殖を誘導するように十分に刺激されたT細胞の状態のことを指す。活性化はまた、誘導されたサイトカイン産生、および検出可能なエフェクター機能に関連することができる。「活性化T細胞」という用語は、特に、細胞分裂を起こしているT細胞のことを指す。
本明細書において使用される場合、疾患を「緩和する」は、疾患の1つまたは複数の症状の重症度を低減することを意味する。
本明細書において用いられる「抗原」という用語は、免疫応答を引き起こす分子と定義される。この免疫応答には、抗体産生、または特異的免疫適格細胞の活性化のいずれかまたは両方が含まれ得る。当業者は、事実上、すべてのタンパク質またはペプチドを含む任意の高分子が抗原として働くことができることを理解するであろう。
さらに、抗原は、組換えDNAまたはゲノムDNAに由来することができる。当業者は、免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAが、それゆえ、本明細書においてその用語が用いられる通りの「抗原」をコードすることを理解するであろう。さらに、当業者は、抗原が遺伝子の完全長ヌクレオチド配列のみによってコードされる必要はないことを理解するであろう。本開示が、1つよりも多い遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を含むが、これに限定されるわけではないこと、およびこれらのヌクレオチド配列が、所望の免疫応答を誘発するために様々な組み合わせで配置されることは、容易に明らかである。さらに、当業者は、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要はまったくないことを理解するであろう。抗原が生物学的試料から生成、合成または由来することができることは、容易に明らかである。そのような生物学的試料は、組織試料、腫瘍試料、細胞または生体液を含むことができるが、それに限定されるわけではない。
本明細書において用いられる場合、「自己」という用語は、後にその個体に再び導入される、同じ個体に由来する任意の材料をいうよう意図される。
「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それにより、非限定的に増殖などのT細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族結合パートナーを指す。共刺激分子には、MHCクラスI分子、BTLAおよびTollリガンド受容体が含まれるが、それに限定されるわけではない。
「共刺激シグナル」は、本明細書において使用される場合、TCR/CD3の連結などの一次シグナルとの組み合わせで、T細胞増殖および/または鍵となる分子のアップレギュレーションもしくはダウンレギュレーションを導くシグナルを指す。
「疾患」は、動物が恒常性を維持できず、疾患が改善されなければその動物の健康が悪化し続ける、動物の健康状態である。対照的に、動物における「障害」は、その動物が恒常性を維持できるが、その動物の健康状態が障害のない場合よりも好ましくない健康状態である。未処置のまま放置されても、障害が必ずしも動物の健康状態のさらなる低下を引き起こすとは限らない。
用語「ダウンレギュレーション」は、本明細書において使用される場合、1つまたは複数の遺伝子の遺伝子発現の減少または消失を指す。
「有効量」または「治療的有効量」は、本明細書において互換的に用いられ、特定の生物学的結果を達成するのに有効な、または治療的もしくは予防的利益をもたらす、本明細書において記述される化合物、製剤、材料または組成物の量のことを指す。そのような結果には、哺乳動物に投与した場合に、本開示の組成物の非存在下で検出される免疫応答と比較して検出可能なレベルの免疫抑制または耐容性を引き起こす量が含まれ得るが、それに限定されるわけではない。免疫応答は、おびただしい数の当技術分野において認識されている方法によって容易に評価することができる。当業者は、本明細書において投与される組成物の量が、変動すること、そして、処置されている疾患または状態、処置されている哺乳動物の齢および健康および身体の状態、疾患の重症度、投与されている特定の化合物などの多数の要因に基づいてこれを容易に決定できることを理解するであろう。
「コードする」とは、定義されたヌクレオチド(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)配列または定義されたアミノ酸配列のいずれかを有する、生物学的過程において他のポリマーおよび高分子の合成のための鋳型として働く、遺伝子、cDNAまたはmRNAのようなポリヌクレオチドにおける特定のヌクレオチド配列の固有の特性ならびにそれに起因する生物学的特性をいう。したがって、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳によって細胞または他の生体系においてタンパク質が産生される場合、タンパク質をコードする。mRNA配列と同一であり通常は配列表に示されるヌクレオチド配列であるコード鎖も、遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として用いられる非コード鎖も共に、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードするということができる。
本明細書において用いられる場合、「内因性」とは、生物、細胞、組織もしくは系の内部に由来するか、またはそれらの内部で産生される、任意の材料をいう。
用語「エピトープ」は、本明細書において使用される場合、免疫応答を誘発し、B細胞応答および/またはT細胞応答を誘導することができる、抗原上の小化学分子として定義される。抗原は、1つまたは複数のエピトープを有することができる。ほとんどの抗原は、多くのエピトープを有する;すなわち、これらは多価である。一般に、エピトープは、おおよそ約10アミノ酸および/または糖のサイズである。好ましくは、エピトープは、約4~18アミノ酸、より好ましくは約5~16アミノ酸、さらにより最も好ましくは6~14アミノ酸、より好ましくは約7~12、そして、最も好ましくは約8~10アミノ酸である。一般には、分子の特定の直鎖状配列よりも全体の三次元構造が抗原の特異性の主な基準であること、それゆえ、これによってあるエピトープが別のエピトープと区別されることを、当業者は理解する。本開示に基づいて、本発明で用いられるペプチドは、エピトープであることができる。
本明細書において用いられる場合、「外因性」という用語は、生物、細胞、組織もしくは系の外部から導入されるか、またはそれらの外部で産生される、任意の材料をいう。
本明細書において用いられる「増大する」という用語は、T細胞の数の増加のように、数が増加することをいう。一態様では、エクスビボで増大したT細胞は、培養物中に当初存在している数と比べて数が増加する。別の態様では、エクスビボで増大したT細胞は、培養物中の他の細胞型と比べて数が増加する。本明細書において用いられる「エクスビボ」という用語は、生物(例えば、ヒト)から取り出され、生物の外側で(例えば、培養皿、試験管、またはバイオリアクタ中で)繁殖させた細胞をいう。
本明細書において用いられる「発現」という用語は、そのプロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳と定義される。
「発現ベクター」とは、発現されるべきヌクレオチド配列に機能的に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターをいう。発現ベクターは、発現のために十分なシス作用性エレメントを含み;発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって、またはインビトロ発現系において供給されることができる。発現ベクターには、組換えポリヌクレオチドを組み入れたコスミド、プラスミド(例えば、裸のもの、またはリポソーム中に含まれるもの)ならびにウイルス(例えば、センダイウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)のような、当技術分野において公知のすべてのものが含まれる。
本明細書において用いられる「同一性」とは、2つのポリマー分子間の、特に2つのポリペプチド分子間のような2つのアミノ酸分子間のサブユニット配列の同一性をいう。2つのアミノ酸配列が同じ位置に同じ残基を有する場合;例えば、2つのポリペプチド分子の各々における位置がアルギニンによって占有されているなら、それらはその位置で同一である。2つのアミノ酸配列がアライメントにおいて同じ位置に同じ残基を有する同一性または程度は、百分率として表現されることが多い。2つのアミノ酸配列間の同一性は、一致しているまたは同一である位置の数の一次関数である;例えば、2つの配列における位置の半分(例えば、10アミノ酸長のポリマーにおける5つの位置)が同一であるなら、2つの配列は50%同一であり;位置の90%(例えば、10中9)が一致しているまたは同一であるなら、2つのアミノ酸配列は90%同一である。
本明細書において用いられる「免疫応答」という用語は、リンパ球が抗原分子を異物と同定し、抗体の形成を誘導し、かつ/またはリンパ球を活性化して抗原を除去する場合に起きる、抗原に対する細胞応答と定義される。
「免疫抑制」という用語は、本明細書において免疫応答全体を低減することを指すために使用される。
「単離された」とは、天然の状態から変えられたまたは取り出されたことを意味する。例えば、生きている動物に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離されて」いないが、その天然状態の共存物質から部分的にまたは完全に分離された同じ核酸またはペプチドは「単離されて」いる。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在することができ、または例えば、宿主細胞のような、非天然環境で存在することができる。
本明細書において用いられる「レンチウイルス」とは、レトロウイルス科(Retroviridae)ファミリーの属をいう。レンチウイルスは、非分裂細胞に感染できるという点で、レトロウイルスの中でも独特である;それらはかなりの量の遺伝情報を宿主細胞のDNA中に送達することができるため、それらは遺伝子送達ベクターの最も効率的な方法の1つである。HIV、SIVおよびFIVはすべて、レンチウイルスの例である。レンチウイルスに由来するベクターは、インビボで有意なレベルの遺伝子移入を達成するための手段を与える。
本明細書において用いられる用語「改変された」とは、本開示の分子または細胞の変化した状態または構造を意味する。分子は化学的に、構造的に、および機能的になど、多くの方法で改変され得る。細胞は、核酸の導入によって改変され得る。
本明細書において用いられる用語「モジュレートする」とは、処置もしくは化合物の非存在下での対象における応答のレベルと比較して、および/または他の点では同一であるが処置を受けていない対象における応答のレベルと比較して、対象における応答のレベルの検出可能な増加または減少を媒介することを意味する。この用語は、対象、好ましくはヒトにおいて、天然のシグナルもしくは応答を撹乱させ、かつ/またはそれに影響を与え、それにより有益な治療応答を媒介することを包含する。
本開示の文脈において、一般的に存在する核酸塩基に関する以下の略語が用いられる。「A」はアデノシンをいい、「C」はシトシンをいい、「G」はグアノシンをいい、「T」はチミジンをいい、そして「U」はウリジンをいう。
「オリゴヌクレオチド」という用語は、典型的には、短いポリヌクレオチドのことを指す。ヌクレオチド配列がDNA配列(すなわち、A、T、C、G)によって表される場合、このヌクレオチド配列はRNA配列(すなわち、A、U、C、G)(「U」が「T」に置き換わる)も含むことが理解されよう。
別途指定がなされない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いに縮重したバージョンでありかつ同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という語句は、該タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、あるバージョンにおいてイントロンを含有し得る限り、イントロンも含み得る。
免疫原性組成物の「非経口」投与は、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、もしくは胸骨内注射、または注入技術を含む。
本明細書において用いられる「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドの鎖と定義される。さらに、核酸はヌクレオチドのポリマーである。したがって、本明細書において用いられる核酸およびポリヌクレオチドは互換的である。当業者は、核酸がポリヌクレオチドであり、それらは単量体「ヌクレオチド」に加水分解することができるという一般知識を有する。単量体ヌクレオチドは、ヌクレオシドに加水分解することができる。本明細書において用いられる場合、ポリヌクレオチドには、非限定的に、組換え手段、すなわち通常のクローニング技術およびPCRなどを用いた組換えライブラリーまたは細胞ゲノムからの核酸配列のクローニングを含む、当技術分野において利用可能な任意の手段により、ならびに合成手段により得られるすべての核酸配列が含まれるが、それに限定されるわけではない。
本明細書において用いられる場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、互換的に用いられ、ペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸残基で構成される化合物をいう。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含まなくてはならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成することができるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドには、ペプチド結合によって相互につなぎ合わされた2つまたはそれよりも多いアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質が含まれる。本明細書において用いられる場合、この用語は、例えば、当技術分野において一般的にはペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーともいわれる短鎖と、当技術分野において一般にタンパク質といわれる長鎖の両方をいい、その中には多くのタイプがある。「ポリペプチド」には、とりわけ、例えば、生物学的に活性なフラグメント、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、またはそれらの組み合わせが含まれる。
抗体に関して本明細書において用いられる用語「特異的に結合する」とは、特異的抗原を認識するが、試料中の他の分子を実質的に認識またはそれと結合しない抗体を意味する。例えば、1つの種由来の抗原に特異的に結合する抗体が、1つまたは複数の種由来のその抗原にも結合する場合がある。しかし、そのような異種間反応性はそれ自体で、特異的としての抗体の分類を変化させることはない。別の例において、抗原に特異的に結合する抗体が、その抗原の異なる対立遺伝子型にも結合する場合がある。しかし、そのような交差反応性はそれ自体で、特異的としての抗体の分類を変化させることはない。場合によっては、「特異的結合」または「特異的に結合する」という用語を、抗体、タンパク質またはペプチドと第2の化学種との相互作用に関連して用いて、相互作用が化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存することを意味することができる;例えば、抗体は、タンパク質全体ではなく特定のタンパク質構造を認識し、それに結合する。抗体がエピトープ「A」に特異的であるなら、標識された「A」およびその抗体を含む反応物中にエピトープAを含む分子(または遊離した、標識されていないA)が存在することにより、その抗体に結合した標識されたAの量が低減するであろう。
「刺激」という用語は、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)がその同族リガンドと結合し、それによって、非限定的に、TCR/CD3複合体を介するシグナル伝達のような、シグナル伝達事象を媒介することにより誘導される一次応答を意味する。刺激は、TGF-ベータのダウンレギュレーション、および/または細胞骨格構造の再編成などのような、ある特定の分子の発現の変化を媒介することができる。
「刺激分子」とは、この用語が本明細書において用いられる場合、抗原提示細胞上に存在する同族刺激リガンドと特異的に結合する、T細胞上の分子を意味する。
本明細書において用いられる「刺激リガンド」は、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)に存在する場合、T細胞上の同族結合パートナー(本明細書において「刺激分子」といわれる)と特異的に結合でき、それによって、活性化、免疫応答の開始、増殖などを含むが、それに限定されるわけではない、T細胞による一次応答を媒介するリガンドを意味する。刺激リガンドは当技術分野において周知であり、とりわけ、ペプチドが負荷されたMHCクラスI分子、抗CD3抗体、スーパーアゴニスト抗CD28抗体、およびスーパーアゴニスト抗CD2抗体を包含する。
「対象」という用語は、免疫応答を誘発することができる生物(例えば、哺乳動物)を含むよう意図される。本明細書において用いられる「対象」または「患者」は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物であり得る。非ヒト哺乳動物には、例えば、ヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコおよびマウス哺乳動物のような、家畜およびペットが含まれる。好ましくは、対象はヒトである。
本明細書において使用される場合、「T細胞受容体」または「TCR」という用語は、抗原の提示に応答してT細胞の活性化に関与する膜タンパク質の複合体のことを指す。TCRは、主要組織適合性複合体分子に結合した抗原を認識する役割を担う。TCRは、アルファ(a)およびベータ(β)鎖のヘテロ二量体から構成されるが、一部の細胞では、TCRはガンマおよびデルタ(γ/δ)鎖からなる。TCRは、構造的に類似しているが異なる解剖学的位置および機能を有する、アルファ/ベータおよびガンマ/デルタ形態で存在し得る。各鎖は、2つの細胞外ドメイン、すなわち可変ドメインおよび定常ドメインから構成される。いくつかの態様では、TCRは、TCRを含む任意の細胞(例えば、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、およびガンマデルタT細胞を含む)上で改変され得る。
本明細書において用いられる「治療的」という用語は、処置および/または予防を意味する。治療効果は、疾患状態の抑制、寛解または根絶によって得られる。
「移植片」は、移植されることになる生体適合性の格子またはドナーの組織、臓器または細胞のことをいう。移植片の例には、皮膚細胞または組織、骨髄ならびに心臓、膵臓、腎臓、肺および肝臓などの実質臓器が含まれ得るが、それに限定されるわけではない。移植片はまた、宿主に投与されることになる任意の材料を指すことができる。例えば、移植片は、核酸またはタンパク質を指すことができる。
本明細書において用いられる「トランスフェクションされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、外因性核酸が宿主細胞に移入または導入される過程をいう。「トランスフェクションされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞は、外因性核酸でトランスフェクションされた、形質転換された、または形質導入されたものである。この細胞には初代対象細胞およびその子孫が含まれる。
疾患を「処置する」とは、この用語が本明細書において用いられる場合、対象が被っている疾患または障害の少なくとも1つの徴候または症状の頻度または重症度を低減することを意味する。
「ベクター」は、単離された核酸を含み、かつ単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用できる材料の組成物である。直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物と結び付いたポリヌクレオチド、プラスミドおよびウイルスを含むが、それに限定されるわけではない、多数のベクターが当技術分野において公知である。したがって、「ベクター」という用語は、自律的に複製するプラスミドまたはウイルスを含む。この用語はまた、例えばポリリシン化合物、リポソームなどのような、細胞内への核酸の移入を容易にする非プラスミド性および非ウイルス性の化合物を含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例としては、センダイウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
範囲:本開示の全体を通じて、本開示の様々な局面を範囲の形式で提示することができる。範囲の形式の記述は、単に便宜および簡略化のためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限と解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記述は、可能なすべての部分範囲およびその範囲内の個々の数値を具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、1~6のような範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などのような部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3および6を具体的に開示したものとみなされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
B. 治療用ペプチド
本明細書において使用される場合、「治療用ペプチド」という用語は、CAR分子によってまたはCAR分子と併用して送達され、かつ、対象において治療応答を惹起するおよび/または発揮するおよび/または増強する、ペプチドのことを指す。ある特定の態様では、治療用ペプチドによって惹起または発揮または増強される治療応答は、抗がん効果である。例えば、ある特定の態様では、治療用ペプチドは、標的に結合し、そして、細胞において、免疫応答を増加させるもしくは増強する、および/または腫瘍細胞において死促進経路を増加させるもしくは増強する、1つまたは複数の経路を引き起こす。他の態様では、治療用ペプチドは、免疫原性ペプチド、例えば、新生抗原である。ある特定の態様では、本明細書に提供される方法を介した治療用ペプチドの送達は、腫瘍細胞への免疫原性ペプチドの移送をもたらし、それにより、抗がん免疫応答を増強する。例えば、ある特定の態様では、本明細書に提供される治療用ペプチドは、同じ発現ベクターから発現され得るおよび/またはCAR分子と共に発現され得る、免疫原性ペプチドである。さらなる態様では、治療用ペプチドが細胞で発現されると、該ペプチドは、腫瘍細胞または免疫細胞(例えば、抗原提示細胞)に取り込まれる細胞外小胞中に分泌される。ある特定の態様では、治療用ペプチドが取り込まれ、処理され、MHCを介して腫瘍細胞上に提示されるように、該ペプチドは、細胞外小胞中に分泌される。
ある特定の態様では、本明細書に提供される治療用ペプチドは、合成物であり、非天然型ペプチドである。本明細書に提供される非天然型治療用ペプチドは、本明細書に提供される方法または当技術分野において公知の他の方法を介して同定された新規ペプチドであり得る。ある特定の態様では、本明細書に提供される治療用ペプチドは、特定の標的に結合可能である、合理的にまたは計算により設計されたペプチドである。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、特定の標的に対して高度に特異的である。ある特定の態様では、治療経路が、模倣体として作用するように設計され、受容体へのリガンドの結合を模倣する。ある特定の態様では、治療用ペプチドが模倣するリガンドは、ペプチドまたはタンパク質ではない。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、アゴニストまたはアンタゴニストとして作用して、細胞、例えば、免疫細胞において経路を引き起こす。例示的な標的および経路は、本明細書に詳述しているが、当業者であれば、本開示が、あらゆる所望の経路を標的とする合成治療用ペプチドを通じて抗がん効果を増強するための方法を提供することを認識するだろう。
ある特定の態様では、治療用ペプチドは、CAR分子を発現する同じ細胞で発現される。ある特定の態様では、治療用ペプチドおよびCAR分子は、同じ発現ベクター上にコードされる。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、CAR分子を発現する細胞で発現され、次いで、細胞から細胞外小胞(EV)中に分泌される。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、それが発現される細胞(例えば、CAR分子を発現する細胞)に対して効果を発揮する。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、細胞から排出され(例えば、EV中に)、細胞外空間(例えば、腫瘍微小環境)において効果を発揮するか、または、樹状細胞、T細胞もしくは腫瘍細胞などの隣接する細胞に対して直接的もしくは間接的に効果を発揮する。
ある特定の態様では、本明細書に提供される非天然型治療用ペプチドは、合理的に設計され、標準的なペプチド結合アッセイを使用して標的分子への結合について試験される。他の態様では、本明細書に提供される非天然型治療用ペプチドは、アルゴリズムおよび計算によるペプチド結合予測を使用して作製される。ある特定の態様では、そのリガンドと複合体化した標的の結晶構造が、リガンドが非存在下の標的の結晶構造と比較される。次いで、計算プログラムが、折り畳まれたペプチドの結合予測を繰り返しモデル化するプロセスを実行する。このようにして、合成候補ペプチドが同定され、作製される。合成候補ペプチドは、標的結合について試験され得る。合成候補ペプチドは、さらに、免疫刺激、腫瘍細胞死の誘導、免疫刺激および/もしくは細胞死に関する代用マーカーの誘導などの機能的効果、または標的に関連する任意の他の効果について試験され得る。さらに他の態様では、本明細書に提供される治療用ペプチドは、腫瘍試料からの免疫原性エピトープライブラリーの作製を介して同定された新生抗原である。候補となる合成ペプチドは、さらに、本明細書に提供されるようなCARを発現する発現ベクターから発現され、インビボ効果について、例えば、がんモデルにおいて試験され得る。
(表1)例示的な治療用ペプチドのアミノ酸配列
Figure 2024511109000001
本明細書に提供されるアミノ酸配列は、修飾され得る。そのような修飾は、保存的配列修飾であり得る。「保存的配列修飾」は、タンパク質の機能的特性に有意に影響を及ぼさないまたはそれを変更しないアミノ酸修飾のことを指す。保存的置換は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。ある特定の態様では、本明細書に提供されるアミノ酸配列は、これらが参照配列に対して約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するように修飾され得る。
また、本明細書に提供される特定の配列と約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%相同である(または、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有する)配列も本開示の範囲内に含まれる。
ある特定の態様では、本明細書に提供されるペプチドは、非天然型ペプチドである。非天然型ペプチドには、例えば、ペプチドの長さおよび状況に応じて、天然に存在するペプチドに対して99%以下、98%以下、97%以下、96%以下、95%以下、94%以下、93%以下、92%以下、91%以下、90%以下、89%以下、88%以下、87%以下、86%以下、85%以下、84%以下、83%以下、82%以下、81%以下、80%以下、79%以下、78%以下、77%以下、76%以下、75%以下、74%以下、73%以下、72%以下、71%以下、70%以下、69%以下、68%以下、67%以下、66%以下、65%以下、64%以下、63%以下、62%以下、61%以下または60%以下の配列同一性を有するペプチドが含まれる。非天然型タンパク質に関して、指向性進化アプローチまたはデノボペプチドの作製は、天然タンパク質と比較して新規および/またはまったく異なる機能を提供することが報告されている。例えば、少数のアミノ酸を変異させること(例えば、天然ペプチドに対して94%またはより高い相同性)は、天然ペプチドと比べてまったく異なる機能を有するペプチドをもたらすことが報告されている(例えば、Adriano-Silva et al., Nature 565(186-191) (2019)を参照のこと)。
ある特定の態様では、本開示は、細胞外小胞(EV)に含有される治療用ペプチドを提供する。したがって、ある特定の態様では、本開示は、本明細書に提供される治療用ペプチドのいずれか1つまたは複数を含むEVを提供する。EVは、細胞によって放出され、細胞間空間を移動可能で隣接細胞と接触可能な、膜状のマイクロまたはナノサイズの生物学的粒子である。本開示の組成物および方法において、ある特定の態様では、本明細書に提供される治療用ペプチドは、免疫細胞で発現され、次いで、EVにパッケージングされ、細胞から放出される。ある特定の態様では、本明細書に提供される治療用ペプチドの1つまたは複数を含むEVは、腫瘍細胞または他の免疫細胞などの隣接する細胞に取り込まれる。いったん隣接する細胞に取り込まれると、治療用ペプチドは、その治療効果を、例えば、免疫刺激分子、死促進もしくはアポトーシス経路のモジュレーター、DNA修復機構のモジュレーター、MHCとの関連で提示される抗原、または他の効果として発揮し得る。
C. 例示的な標的および経路
本開示は、有利なことに、治療用ペプチドを発現する細胞による所望の標的組織での永続的または長期的送達を含めた、治療薬の標的細胞への細胞ベースの送達のための組成物および方法を提供する。そのような方法および組成物は、現在利用可能な反復投与を必要とする分子の送達により治療され得るまたは治療されてきた疾患および障害の療法を大幅に改善する。したがって、本開示は、ある特定の疾患および障害の治療にしばしば必要な治療薬の長期反復投与を回避しつつ、疾患および障害を効果的に治療するための組成物および方法を提供する。
ある特定の態様では、疾患または障害は、がんまたは別のがん増殖障害である。そのような態様では、本明細書に提供される操作された細胞は、有利なことに、免疫応答を増強する、ならびに/または、がん細胞もしくは細胞増殖障害に関連する他の細胞においてアポトーシス促進プログラムおよび細胞死を惹起する。他の態様では、疾患または障害は、自己免疫疾患(例えば、炎症性腸疾患)などの免疫介在性疾患である。そのような態様では、本明細書に提供される操作された細胞は、エフェクター細胞機能を低下させるようにさらに改変され得る。例えば、増強された免疫応答が望ましくない場合、本明細書に提供される操作された細胞は、1つもしくは複数の炎症性サイトカインの産生、グランザイムB発現、パーフォリン発現、抗体分泌および/または増殖能を低下または排除するように改変され得る。
がんおよび他の細胞増殖障害に対する1つの有望な免疫療法は、病原性感染および/または細胞もしくは組織損傷に伴う特定の危険シグナルに対する免疫系の応答と関係している。自然免疫系は、抗原特異性を有しないが、ダメージ関連分子パターン(DAMP)および病原体関連分子パターン(PAMP)などの多様なエフェクター機構に応答する。PAMPを認識する受容体は、パターン認識受容体(PRR)と称され、Toll様受容体(TLR)、ヌクレオチド結合ドメインロイシンリッチリピート含有タンパク質(NLR;NOD様受容体とも称される)、C型レクチン受容体(CLR)、およびレチノイン酸誘導遺伝子-1(RIG-1)様受容体(RLR)のRNAヘリカーゼが含まれる。ある特定の態様では、本開示は、そのような免疫刺激性経路をCAR発現細胞療法と併用して、がんなどの疾患および障害を治療するための増強された標的化治療戦略を提供する。ある特定の態様では、これは、危険シグナル経路を刺激する低分子および治療用ペプチド模倣体を介して達成される。
PAMPおよびDAMPの例には、遊離の細胞質ゾルDNAおよびRNA、例えば、二本鎖DNA(dsDNA)が含まれる。環状ジヌクレオチドは、多種多様な細菌でのシグナル伝達に使用されるセカンドメッセンジャーであり、哺乳動物細胞における自然免疫応答のアゴニストである。例示的な環状ジヌクレオチドには、環状グアノシン一リン酸(cGMP)、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状ジGMP、環状ジAMP、および環状AMP-GMP(cAMP-GMP、またcGAMPとしても知られている)が含まれる。細胞質ゾルDNAの主要センサーは、cGAS(環状GMPAMPシンターゼ)である。細胞質ゾルDNAの認識によって、cGASは、cGAMPの生成を触媒し、cGAMPは、ER膜貫通アダプタータンパク質であるインターフェロン遺伝子刺激因子(Stimulator of Interferon Genes)(STING)に強く結合する。cGAMPがSTINGに結合すると、STINGは、立体構造変化を経て、核周囲コンパートメントに移動し、重要な転写因子IRF-3およびNF-κBの活性化を誘導する。これは、I型インターフェロンの強い誘導ならびにIL-6、TNF-αおよびIFN-γなどの炎症誘発性サイトカインの産生を導く。これらの分子は、例えば、樹状細胞およびマクロファージの抗原を取り込む、処理する、T細胞に提示および交差提示する能力を増強することによって、ならびに、それらの同族受容体をエンゲージしてインターフェロン応答遺伝子の活性化を誘発することによって、T細胞活性化を強く増大させる。したがって、cGAMP結合ならびに他のDAMPおよびPAMP誘発経路を介した、STINGの刺激は、適応免疫細胞活性化に大きく寄与する。
TLRは、自然免疫の強力な誘導因子であり、細胞表面のまたはエンドソームもしくはリソソームなどの細胞内小胞の内腔のPAMPを検出可能である。TLRの活性化は、リガンド(アゴニスト)結合後に起こり、アダプター分子MyD88およびTRIFの動員およびその後のキナーゼ駆動シグナル伝達経路の活性化を導き、IRF3/7 NF-κBの活性化および上述したような炎症反応をもたらす。TLRリガンドには、ウイルスの存在を示し、TLR3を活性化する、二本鎖RNA(dsRNA);ウイルスおよび細菌DNAに見いだされ、TLR9を活性化する、非メチル化CpGモチーフを含有するDNA;同じくウイルスに由来し、TLR7およびTLR8を活性化する、一本鎖RNA(ssRNA)および低分子干渉RNA(siRNA)分子;可動性細菌に由来し、TLR5を活性化する、フラジェリン;ならびに、各々TLR4を活性化するグラム陰性菌のリポ多糖(LPS)およびモノホスホリルリピドA(MPL)が含まれる。
NLRおよびPRRは、細胞質ゾルに見いだされ、細菌産物、例えば、ペプチドグリカン断片およびフラジェリンに由来するペプチド、III型分泌系ロッド成分、毒素(例えば、炭疽菌致死毒素(LT);ニゲリシン(ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス)、エロリジン(エロモナス・ハイドロフィラ)、マイトトキシン(海洋渦鞭毛藻類(Marina dinoflagellates))、グラミシジン(ブレビバチルス菌)およびα-毒素(黄色ブドウ球菌))、ならびにウイルス二本鎖DNA(dsDNA)によって活性化される。NOD1およびNOD2は、ペプチドグリカンとは異なる構造モチーフを認識する2つのよく特徴付けられたNLRである。NALP3およびNALP1は、毒素などの細菌に由来する成分を認識する。IPAFおよびNAIP5は、フラジェリンを認識する。NLR活性化は、カスパーゼ-1に関わりかつ最終的にIL-1βの産生を導く、「インフラマソーム」の形成を導く。
RLR(例えば、RIG-I)は、典型的には、細胞質ゾルのウイルスdsRNAを認識し、次いで、アダプターIFN-βプロモーター刺激因子1(IPS-1;またMAVS、VISAおよびCardifとも呼ばれる)を動員し、転写因子IRF-3およびIRF7のリン酸化ならびにI型IFN遺伝子の発現を導く。Absent in melanoma 2(AIM2)は、細胞質ゾル中のdsDNAに結合して、カスパーゼ-1の自己切断、それによりインフラマソーム活性化を誘導し得る、インターフェロン誘導性タンパク質である。デクチン-1などのC型レクチン受容体(CLR)は、真菌細胞壁成分(例えば、β-グルカン)に結合して、NF-κBの活性化を引き起こす。
ある特定の態様では、本開示は、免疫応答、例えば、限定されないが本明細書に記載するものを含めた自然免疫応答経路を活性化可能な、低分子および/または治療用ペプチドを提供する。低分子および/または治療用ペプチドは、自然免疫応答経路を刺激する分子の模倣体、例えば、PRR模倣体、環状ジヌクレオチド模倣体、および短鎖脂肪酸模倣体であり得る。ある特定の態様では、本開示は、細菌のセカンドメッセンジャー、TLRアゴニスト、NLRアゴニスト、RLRアゴニスト、CLRアゴニストまたは短鎖脂肪酸のいずれか1つまたは複数の模倣体である、合成の非天然型低分子および合成の非天然型治療用ペプチドを提供する。例えば、提供される低分子および/または治療用ペプチドは、cGAMP、cAMP、cGMP、CpG、LPS、フラジェリン、細菌毒素、ペプチドグリカン、または酪酸の模倣体であり得る。
したがって、そのような化合物は、ヒトがんの治療において使用できる可能性がある。免疫応答の刺激におけるSTINGおよび他のPRR関連経路の効力を考慮すれば、これらの分子は、CAR-T細胞療法などの既存の療法を増強することを目的とした極めて望ましい戦略と関連する。しかしながら、STING結合パートナーのcGAMPは、環状ジヌクレオチドであるので、RNA上にコードすることができない。同様に、他の多くのPRRおよび関連分子のいずれも、RNA上にコードすることができない、および/または、それらの結合パートナーは、合成により設計されたペプチド結合剤を使用してより強力に活性化できる。本開示は、CAR発現細胞で発現させるおよび/または該細胞と共に発現させることができ、かつSTING経路または他の免疫活性化経路を刺激してCAR療法を増強するために使用できるペプチド模倣体を含む、新規方法を提供する。
ある特定の態様では、治療用ペプチドは、PARP阻害剤である。ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)は、DNA修復、ゲノム安定性およびプログラム細胞死を含めた細胞プロセスに関与する核および細胞質酵素である。PARPの重要な機能は、DNA鎖切断を検出すること、および細胞における修復反応を開始することである。DNA切断に応答して、PARP-1またはPARP-2は、単一および二重DNAニックに結合する。がん治療のための放射線療法および多くの化学療法アプローチは、DNA損傷を誘導することにより作用するので、PARP阻害剤は、がん治療のための化学療法増感剤および放射線増感剤として有用である。DNA修復に関与することに加えて、PARPはまた、細胞死のメディエイターとしても作用し得る。PARPは、NAD+をニコチンアミド(nicotiamide)およびADP-リボースに分解してADP-リボースポリマーを形成することにより機能するため、PARP活性化は、細胞内NAD+の大幅な枯渇をもたらすことができ、それにより、細胞死をもたらすことができる。
一部のがんは、DNA修復をPARP活性に依存しており、したがって、PARP阻害剤が開発され、がん治療薬として使用されてきた。例示的なPARP阻害剤には、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ、ベリパリブ、およびパミパリブが含まれる。態様では、本開示は、合成により作製された低分子および/または治療用ペプチドである新規PARP阻害剤を提供する。ある特定の態様では、本明細書に提供されるPARP阻害剤を、CAR発現細胞療法と共に、例えば、がん療法において使用することができる。
ある特定の態様では、本明細書に提供される治療用ペプチドは、SMAC模倣体である。第2のミトコンドリア由来カスパーゼ活性化因子(SMAC)は、ある特定のアポトーシス反応の刺激に応答して細胞質ゾル中に放出されるアポトーシス誘導促進性(proapoptogenic)のミトコンドリアタンパク質である。細胞質ゾル中に存在すると、SMACは、アポトーシスタンパク質阻害剤(IAP)と相互作用してそれと拮抗し、カスパーゼの放出を介してアポトーシスを進行させる。したがって、SMACは、アポトーシスによって、腫瘍細胞を感作して死滅させる。高いIAP活性を有する一部のがん細胞では、SMAC活性が独自にアポトーシスを誘導することができる。一部のがん細胞では、SMACは、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)などの細胞死因子のアポトーシス効果を増加させる。理論により拘束されることを望まないが、活性化されたCAR-T細胞は、部分的にTRAILなどの細胞死誘発因子を介して腫瘍細胞のアポトーシスを誘導するため、SMAC経路は、CAR-T細胞療法との併用に特に適している。ある特定の態様では、本開示は、SMACの新規模倣体を提供する。ある特定の態様では、SMAC模倣体は、CAR発現細胞療法と共に、例えば、がん療法において使用して、がん細胞死を誘導することができる。
短鎖脂肪酸(SCFA)は、別のカテゴリーの免疫モジュレーターである。SCFAは、6個未満の炭素を含有する遊離脂肪酸である。これらは、腸内細菌叢によって細菌発酵産物として産生され、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、および2-メチルブタン酸が含まれる。SCFAは、腸上皮細胞、脂肪細胞、骨髄系細胞および/または腸に位置する他の細胞上に発現される代謝物感知Gタンパク質共役受容体(例えば、GPR41、GPR43、およびGPR109A)に結合することによって、免疫系分化および機能を調節することができる。SCFAはまた、HDAC阻害剤経路を通じても機能する。SCFAは、腸炎症の調節において抗炎症活性を有し、したがって、例えば、T細胞分化ならびにマクロファージ、DCおよび他の細胞を介して間接的にサイトカイン産生に影響を及ぼすことによって、慢性腸炎症反応の抑制を助けることが報告されている。SCFAは、IL-10および/またはIL-1βなどのサイトカインの産生を促進することが示されており、したがって、炎症性腸疾患(IBD)においてSCFAの作用を活用することに関心が向けられている。しかしながら、SCFAの送達と、作用を開始および/または維持するために必要とされ得る反復投与に課題がある。ある特定の態様では、本開示は、CAR発現細胞療法を介したSCFA模倣体の送達のための方法を提供する。本明細書に提供されるCAR発現細胞療法を介したSCFA模倣体の送達の重要な利点は、腸微小環境におけるSCFA模倣体の永続的発現(例えば、CAR発現細胞による)である。
ある特定の態様では、本開示は、CARおよびSCFA模倣体である治療用ペプチドを含むCAR構築物を含む、操作された細胞を提供する。ある特定の態様では、本開示は、胃腸系の障害を治療するための方法であって、それを必要とする対象に、CARおよびSCFA模倣体である治療用ペプチドを含む本明細書に提供される操作された細胞を投与することを含む、方法を提供する。ある特定の態様では、本開示は、炎症性障害を治療するための方法であって、それを必要とする対象に、CARおよびSCFA模倣体である治療用ペプチドを含む本明細書に提供される操作された細胞を投与することを含む、方法を提供する。例えば、ある特定の態様では、炎症性障害は、潰瘍性大腸炎またはクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)である。そのような状況では、その他の操作された細胞によって誘導される可能性のある炎症を低下させることが所望され得る。したがって、ある特定の態様では、操作された細胞は、1つまたは複数のエフェクター機能の発現または活性をノックアウトおよび/または低下させるようにさらに改変されている。例えば、ある特定の態様では、操作された細胞は、炎症性サイトカイン発現、グランザイムB発現、パーフォリン発現および/または炎症に関連する他のエフェクター機能に必要とされる1つまたは複数の遺伝子の発現をノックアウトまたは低下させるように改変されている。
ある特定の態様では、本開示の治療用ペプチドは、ステロイド、ホルモン、および/またはホルモン様分子の模倣体である。例えば、ある特定の態様では、治療用ペプチドは、疾患または障害の療法に使用されるステロイドまたはホルモンの模倣体である。例示的な疾患および障害には、成長欠陥障害、甲状腺障害、不妊、ならびに乳がんおよび前立腺がんなどのがんが含まれる。本明細書に提供される治療用ペプチドの例示的なホルモンまたはホルモン様分子は、ヒト成長ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アンタゴニスト、エストロゲン、エストラジオール、およびプロゲステロンであり得る。例示的なステロイドには、ベタメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、およびトリアムシノロンが含まれる。ある特定の態様では、ステロイド、ホルモンおよび/またはホルモン様分子を用いた治療に適している疾患および障害において炎症を低下させるまたは過剰な炎症を回避することが所望される。そのような態様では、操作された細胞はさらに、1つまたは複数のエフェクター機能の発現または活性をノックアウトおよび/または低下させるように改変され得る(例えば、炎症性サイトカイン発現、グランザイムB発現、パーフォリン発現および/または炎症に関連する他のエフェクター機能に必要とされる1つまたは複数の遺伝子の発現をノックアウトまたは低下させるように改変され得る)。
D. キメラ抗原受容体
本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)および治療用ペプチドを含む操作された細胞(例えば、免疫細胞またはその前駆体、例えば、T細胞)のための組成物および方法を提供する。したがって、いくつかの態様では、免疫細胞は、CARを発現するように遺伝子改変されている。本開示のCARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。
抗原結合ドメインは、細胞での発現のために、共に本明細書の他の箇所に記載される膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインなどの、CARの別のドメインに機能的に連結され得る。一態様では、抗原結合ドメインをコードする第1の核酸配列が、膜貫通ドメインをコードする第2の核酸に機能的に連結され、さらに細胞内ドメインをコードする第3の核酸配列に機能的に連結される。
本明細書に記載される抗原結合ドメインは、本明細書に記載される膜貫通ドメインのいずれか、本明細書に記載される細胞内ドメインもしくは細胞質ドメインのいずれか、または本開示のCARに含まれ得る本明細書に記載されるその他のドメインのいずれかと組み合わせることができる。本開示の対象CARはまた、本明細書に記載されるようなヒンジドメインも含み得る。本開示の対象CARはまた、本明細書に記載されるようなスペーサードメインも含み得る。いくつかの態様では、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインの各々は、リンカーによって隔てられる。
本発明は、当技術分野において公知のおよび/または本明細書に開示される任意のCARを含むように構築されるべきである。例示的なCARには、本明細書に開示されるもの、US8916381B1、US9394368B2、US20140050708A1、US9598489B2、US9365641B2、US20210079059A1、US9783591B2、WO2016028896A1、US9446105B2、WO2016014576A1、US20210284752A1、WO2016014565A2、WO2016014535A1、およびUS9272002B2に開示されているもの、ならびに当技術分野において一般的に開示されている任意の他のCARが含まれるが、それらに限定されない。
抗原結合ドメイン
CARの抗原結合ドメインは、タンパク質、炭水化物および糖脂質を含めた特異的な標的抗原に結合するためのCARの細胞外領域である。いくつかの態様では、CARは、標的細胞上の標的抗原に対する親和性を含む。標的抗原は、標的細胞に関連する任意の種類のタンパク質またはそのエピトープを含み得る。例えば、CARは、標的細胞の特定の疾患状態を示す標的細胞上の標的抗原に対する親和性を含み得る。
ある特定の態様では、標的細胞抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)である。腫瘍関連抗原(TAA)の例は、MART-1/MelanA(MART-I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2などの分化抗原およびMAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15などの腫瘍特異的多系統抗原;CEAなどの過剰発現胚抗原;p53、Ras、HER-2/neuなどの過剰発現がん遺伝子および変異腫瘍抑制遺伝子;BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RARなどの染色体転座から生じる特有の腫瘍抗原;ならびにエプスタイン・バールウイルス抗原EBVAおよびヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6およびE7などのウイルス抗原を含むが、それらに限定されない。他の大きなタンパク質系抗原は、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p 15、p 16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテイン、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、およびTPSを含む。好ましい態様では、CARの抗原結合ドメインは、限定されないがCD19、CD20、CD22、ROR1、メソテリン、CD33/IL3Ra、c-Met、PSMA、PSCA、糖脂質F77、EGFRvIII、GD-2、MY-ESO-1 TCR、MAGE A3 TCRなどを含む抗原を標的とする。
ある特定の態様では、標的抗原は、CD19、CD20、CD22、BCMA、CD123、CD133、EGFR、EGFRvIII、メソテリン、Her2、PSMA、CEA、GD2、IL-13Ra2、グリピカン-3、CIAX、LI-CAM、CA 125、CTAG1B、ムチン1、および葉酸受容体-アルファからなる群より選択される。
ある特定の態様では、標的抗原は、腸細胞上に発現される。
標的とされる所望の抗原に応じて、CARは、所望の抗原標的に特異的な適切な抗原結合ドメインを含むように操作することができる。例えば、CD19が標的とされる所望の抗原である場合、CD19に対する抗体を、CARに組み込むための抗原結合部分として使用することができる。
一態様では、標的細胞抗原は、CD19である。よって、一態様では、本開示のCARは、標的細胞上のCD19に対する親和性を有する。このことは、任意の標的抗原に対する親和性を有するCARが本開示の組成物または方法における使用に適する限り、決して限定として解釈されるべきではない。
本明細書に記載されるように、標的細胞上の特異的な標的抗原に対する親和性を有する本開示のCARは、標的特異的結合ドメインを含み得る。いくつかの態様では、標的特異的結合ドメインは、ネズミ科の標的特異的結合ドメインであり、例えば、標的特異的結合ドメインは、ネズミ科起源のものである。いくつかの態様では、標的特異的結合ドメインは、ヒトの標的特異的結合ドメインであり、例えば、標的特異的結合ドメインは、ヒト起源のものである。一態様では、標的細胞上のCD19に対する親和性を有する本開示のCARは、CD19結合ドメインを含み得る。
いくつかの態様では、本開示のCARは、1つまたは複数の標的細胞上の1つまたは複数の標的抗原に対する親和性を有し得る。いくつかの態様では、CARは、1つの標的細胞上の1つまたは複数の標的抗原に対する親和性を有し得る。そのような態様では、CARは、二重特異性CARまたは多重特異性CARである。いくつかの態様では、CARは、1つまたは複数の標的抗原に対する親和性を付与する1つまたは複数の標的特異的結合ドメインを含む。いくつかの態様では、CARは、同じ標的抗原に対する親和性を付与する1つまたは複数の標的特異的結合ドメインを含む。例えば、同じ標的抗原に対する親和性を有する1つまたは複数の標的特異的結合ドメインを含むCARは、標的抗原のまったく異なるエピトープに結合することもできる。CAR中に複数の標的特異的結合ドメインが存在する場合、結合ドメインは、縦に整列されてもよく、リンカーペプチドによって隔てられてもよい。例えば、2つの標的特異的結合ドメインを含むCARでは、結合ドメインは、オリゴもしくはポリペプチドリンカー、Fcヒンジ領域または膜ヒンジ領域を通じて、単一ポリペプチド鎖上で互いに共有結合によって接続される。
いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、抗体、抗原結合断片(Fab)、および単鎖可変断片(scFv)からなる群より選択される。いくつかの態様では、本開示のCD19結合ドメインは、CD19特異的抗体、CD19特異的Fab、およびCD19特異的scFvからなる群より選択される。一態様では、CD19結合ドメインは、CD19特異的抗体である。一態様では、CD19結合ドメインは、CD19特異的Fabである。一態様では、CD19結合ドメインは、CD19特異的scFvである。
抗原結合ドメインは、抗原に結合する任意のドメインを含むことができ、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、合成抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、非ヒト抗体、およびそれらの任意のフラグメントを含み得るが、それらに限定されない。いくつかの態様では、抗原結合ドメイン部分は、哺乳動物抗体またはそのフラグメントを含む。抗原結合ドメインの選択は、標的細胞の表面上に存在する抗原の種類および数に依存し得る。
本明細書に用いられる用語「一本鎖可変フラグメント」または「scFv」は、(例えば、マウスまたはヒトの)免疫グロブリンの重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域が共有結合して、VH::VLヘテロ二量体を形成した融合タンパク質である。重鎖(VH)および軽鎖(VL)は、直接的に繋がっているか、またはVHのN末端をVLのC末端と、もしくはVHのC末端をVLのN末端と接続するペプチドコードリンカーによって繋がっている。いくつかの態様では、抗原結合ドメイン(例えば、CD19結合ドメイン)は、N末端からC末端方向に、VH-リンカー-VLの配置を有するscFvを含む。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、N末端からC末端方向に、VL-リンカー-VHの配置を有するscFvを含む。当業者は、本開示での使用に適した配置を選択することが可能であろう。
リンカーは、通常、可動性のためにグリシンに富むだけでなく、可溶性のためにセリンまたはトレオニンに富む。リンカーは、細胞外抗原結合ドメインの重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを連結することができる。リンカーの非限定的な例は、Shen et al., Anal. Chem. 80(6):1910-1917 (2008)および国際公開公報第2014/087010号に開示されており、それらの内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。(GS)n、(GSGGS)n(SEQ ID NO:17)、(GGGS)n(SEQ ID NO:18)、および(GGGGS)n(SEQ ID NO:19)[配列中、nは少なくとも1の整数を表す]などのグリシンセリン(GS)リンカーを含むが、それに限定されるわけではない様々なリンカー配列が当技術分野において公知である。例示的なリンカー配列は、
Figure 2024511109000002
などを含むが、それに限定されるわけではないアミノ酸配列を含むことができる。当業者は、本発明への使用に適したリンカー配列を選択することが可能であろう。一態様では、本発明の抗原結合ドメイン(例えば、PSMA結合ドメイン)は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、その際、VHおよびVLは、核酸配列
Figure 2024511109000003
によってコードされ得るアミノ酸配列
Figure 2024511109000004
を有するリンカー配列により隔てられている。
定常領域の除去およびリンカーの導入にもかかわらず、scFvタンパク質は、本来の免疫グロブリンの特異性を保持する。一本鎖Fvポリペプチド抗体は、Hustonら(Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883, 1988)によって記載されるようなVHおよびVLコード配列を含む核酸から発現させることができる。米国特許第5,091,513号、同第5,132,405号および同第4,956,778号;ならびに米国特許出願公開第20050196754号および同第20050196754号も参照されたい。阻害活性を有するアンタゴニスト性scFvが、記載されている(例えば、Zhao et al., Hyrbidoma (Larchmt) 2008 27(6):455-51; Peter et al., J Cachexia Sarcopenia Muscle 2012 August 12; Shieh et al., J Imunol 2009 183(4):2277-85; Giomarelli et al., Thromb Haemost 2007 97(6):955-63; Fife eta., J Clin Invst 2006 116(8):2252-61; Brocks et al., Immunotechnology 1997 3(3):173-84; Moosmayer et al., Ther Immunol 1995 2(10:31-40を参照されたい)。刺激活性を有するアゴニスト性scFvが記載されている(例えば、Peter et al., J Bioi Chem 2003 25278(38):36740-7; Xie et al., Nat Biotech 1997 15(8):768-71; Ledbetter et al., Crit Rev Immunol 1997 17(5-6):427-55; Ho et al., BioChim Biophys Acta 2003 1638(3):257-66を参照されたい)。
本明細書に用いられる「Fab」は、抗原に結合するが、一価であってFc部分を有しない抗体構造のフラグメントを指し、例えば、酵素パパインによって消化された抗体は、2つのFabフラグメントおよび1つのFcフラグメント(例えば、重(H)鎖定常領域;抗原に結合しないFc領域)をもたらす。
本明細書に用いられる「F(ab')2」は、IgG抗体全体のペプシン消化によって生成される抗体フラグメントを指し、その際、このフラグメントは2つの抗原結合(ab')(二価)領域を有し、各(ab')領域は、抗原との結合のためのH鎖の一部および軽(L)鎖という2つの別々のアミノ酸鎖がS-S結合によって連結されたものを含み、残ったH鎖部分は一緒に連結している。「F(ab')2」フラグメントは、2つの個別のFab'フラグメントに分割することができる。
いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、CARが最終的に使用される種と同じ種に由来する場合がある。例えば、ヒトにおける使用のために、CARの抗原結合ドメインは、ヒト抗体またはそのフラグメントを含む場合がある。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、CARが最終的に使用される異なる種に由来し得る。例えば、ヒトにおいて使用するために、CARの抗原結合ドメインは、マウス抗体またはそのフラグメントを含み得る。
例示的な抗原結合ドメインには、US8916381B1、US9394368B2、US20140050708A1、US9598489B2、US9365641B2、US20210079059A1、US9783591B2、WO2016028896A1、US9446105B2、WO2016014576A1、US20210284752A1、WO2016014565A2、WO2016014535A1、US9272002B2に見いだされるもの、および当技術分野において一般的に開示されている任意のCARからの任意の抗原結合ドメインが含まれるが、それらに限定されない。さらなる例示的な抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:41、42または43に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するものである。
Figure 2024511109000005
膜貫通ドメイン
本開示のCARは、CARの抗原結合ドメインをCARの細胞内ドメインと接続する膜貫通ドメインを含み得る。対象のCARの膜貫通ドメインは、細胞(例えば、免疫細胞またはその前駆細胞)の形質膜を貫通することが可能な領域である。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、細胞膜、例えば、真核生物細胞膜内への挿入のためのものである。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、CARの抗原結合ドメインと細胞内ドメインとの間に挟まれている。
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、CARにおけるドメインの1つまたは複数に自然に関連している。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、このようなドメインと、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインとの結合を回避するように、選択または1つもしくは複数のアミノ酸置換によって修飾して、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限にすることができる。
膜貫通ドメインは、天然供給源または合成供給源のいずれかに由来する場合がある。供給源が天然である場合、ドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質、例えば、I型膜貫通タンパク質に由来し得る。供給源が合成である場合、膜貫通ドメインは、細胞膜へのCARの挿入を容易にする任意の人工配列、例えば、人工疎水性配列であり得る。本開示における特定の使用の膜貫通ドメインの例は、非限定的に、T細胞受容体のアルファ、ベータまたはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD7、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134(OX-40)、CD137(4-1BB)、CD154(CD40L)、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8およびTLR9に由来する(すなわち、これらの少なくとも膜貫通領域を含む)膜貫通ドメインを含む。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、合成であり得るが、この場合、それは、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主に含むであろう。好ましくは、合成膜貫通ドメインの各末端で、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンの3つ組が見いだされるであろう。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、CD8アルファ、CD3ゼータ、CD3イプシロン、CD28、およびICOSからなる群より選択される。
本明細書に記載の膜貫通ドメインを、本明細書に記載の抗原結合ドメインのいずれか、本明細書に記載の細胞内ドメインのいずれか、または対象のCARに含まれ得る本明細書に記載の他のドメインのいずれかと組み合わせることができる。
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、ヒンジ領域をさらに含む。本開示の対象のCARはまた、ヒンジ領域も含み得る。CARのヒンジ領域は、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置する親水性領域である。いくつかの態様では、このドメインは、CARにふさわしいタンパク質フォールディングを容易にする。ヒンジ領域は、CARの任意の成分である。ヒンジ領域は、抗体のFcフラグメント、抗体のヒンジ領域、抗体のCH2領域、抗体のCH3領域、人工的なヒンジ配列またはそれらの組み合わせより選択されるドメインを含み得る。ヒンジ領域の例は、非限定的に、CD8aヒンジ、3つのグリシン(Gly)ほどの小ささであり得るポリペプチドから構成される人工的なヒンジ、ならびにIgG(ヒトIgG4など)のCH1ドメインおよびCH3ドメインを含む。
いくつかの態様では、本開示の対象のCARは、抗原結合ドメインを膜貫通ドメインと接続してこれを次いで細胞内ドメインに接続する、ヒンジ領域を含む。ヒンジ領域は、好ましくは、抗原結合ドメインが標的細胞上の標的抗原を認識してこれに結合することを支援することが可能である(例えば、Hudecek et al., Cancer Immunol. Res. (2015) 3(2): 125-135を参照されたい)。いくつかの態様では、ヒンジ領域は、可動性ドメインであり、その結果、抗原結合ドメインが、腫瘍細胞などの細胞上の標的抗原の特異的な構造および密度を最適に認識する構造を有することが可能となる(Hudecekら、上記)。そのヒンジ領域の可動性は、ヒンジ領域が多くの異なる立体配座をとることを許容する。
いくつかの態様では、ヒンジ領域は、免疫グロブリン重鎖ヒンジ領域である。いくつかの態様では、ヒンジ領域は、受容体に由来するヒンジ領域ポリペプチド(例えば、CD8由来ヒンジ領域)である。
ヒンジ領域は、約4アミノ酸~約50アミノ酸、例えば、約4aa~約10aa、約10aa~約15aa、約15aa~約20aa、約20aa~約25aa、約25aa~約30aa、約30aa~約40aa、または約40aa~約50aaの長さを有することができる。いくつかの態様では、ヒンジ領域は、5aa超、10aa超、15aa超、20aa超、25aa超、30aa超、35aa超、40aa超、45aa超、50aa超、55aa超、またはそれ以上の長さを有することができる。
適切なヒンジ領域を、容易に選択することができ、いくつかの適切な長さ、例えば、4アミノ酸~10アミノ酸、5アミノ酸~9アミノ酸、6アミノ酸~8アミノ酸、または7アミノ酸~8アミノ酸を含む、1アミノ酸(例えば、Gly)~20アミノ酸、2アミノ酸~15アミノ酸、3アミノ酸~12アミノ酸のいずれかであることができ、1、2、3、4、5、6、または7アミノ酸であることができる。適切なヒンジ領域は、20アミノ酸超(例えば、30個、40個、50個、60個、またはそれ以上)の長さを有することができる。
例えば、ヒンジ領域は、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー(例えば、(GS)n、(GSGGS)n(SEQ ID NO:17)および(GGGS)n(SEQ ID NO:18)を含み、その際、nは少なくとも1の整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、および当技術分野において公知の他の可動性リンカーを含む。グリシンポリマーおよびグリシン-セリンポリマーを使用することができる;GlyおよびSerの両方は、相対的に構造不定であり、したがって、成分間の中性の繋ぎ鎖(tether)として役立つことができる。グリシンポリマーを使用することができる;グリシンは、アラニンより有意に多くφ-ψ空間にアクセスし、より長い側鎖を有する残基よりもはるかに制限を受けない(例えば、Scheraga, Rev. Computational. Chem. (1992) 2: 73-142を参照されたい)。例示的なヒンジ領域は、非限定的に、GGSG(SEQ ID NO:20)、GGSGG(SEQ ID NO:21)、GSGSG(SEQ ID NO:22)、GSGGG(SEQ ID NO:23)、GGGSG(SEQ ID NO:24)、GSSSG(SEQ ID NO:25)などを含むアミノ酸配列を含むことができる。
いくつかの態様では、ヒンジ領域は、免疫グロブリン重鎖ヒンジ領域である。免疫グロブリンヒンジ領域のアミノ酸配列は、当技術分野において公知である;例えば、Tan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1990) 87(1):162-166;およびHuck et al., Nucleic Acids Res. (1986) 14(4): 1779-1789を参照されたい。非限定的な例として、免疫グロブリンヒンジ領域は、以下のアミノ酸配列:
Figure 2024511109000006
(例えば、Glaser et al., J. Biol.Chem. (2005) 280:41494-41503を参照されたい);
Figure 2024511109000007
などのうちの1つを含むことができる。
ヒンジ領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4ヒンジ領域のアミノ酸配列を含むことができる。一態様では、ヒンジ領域は、野生型(天然に存在する)ヒンジ領域と比較して、1つまたは複数のアミノ酸置換および/または挿入および/または欠失を含むことができる。例えば、ヒトIgG1ヒンジのHis229は、Tyrにより置換することができ、それによって、ヒンジ領域は、配列
Figure 2024511109000008
を含む;例えば、Yan et al., J. Biol. Chem. (2012) 287: 5891-5897を参照されたい。ある態様では、ヒンジ領域は、ヒトCD8またはそのバリアントに由来するアミノ酸配列を含むことができる。
細胞内シグナル伝達ドメイン
本開示の対象CARはまた、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。「細胞内シグナル伝達ドメイン」および「細胞内ドメイン」という用語は、本明細書において互換的に使用される。CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが発現される細胞(例えば、免疫細胞)のエフェクター機能の少なくとも1つの活性化を担っている。細胞内シグナル伝達ドメインは、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞(例えば、免疫細胞)がその特殊な機能、例えば、標的細胞の損傷および/または破壊を遂行するように指令を出す。
本開示において使用するための細胞内ドメインの例は、表面受容体の細胞質部分、共刺激性分子、およびT細胞においてシグナル伝達を開始するように協力して作用する任意の分子、ならびに、これらのエレメントの任意の誘導体またはバリアント、および同じ機能的能力を有する任意の合成配列を含むが、それらに限定されない。
細胞内シグナル伝達ドメインの例は、非限定的に、T細胞受容体複合体のζ鎖またはその同族体のいずれか、例えば、η鎖、FcsRIγおよびβ鎖、MB 1(Iga)鎖、B29(Ig)鎖など、ヒトCD3ゼータ鎖、CD3ポリペプチド(Δ、δおよびε)、sykファミリーチロシンキナーゼ(Syk、ZAP 70など)、srcファミリーチロシンキナーゼ(Lck、Fyn、Lynなど)、ならびにCD2、CD5およびCD28などのT細胞伝達に関与する他の分子を含む。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ゼータ鎖、FcyRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質テール、細胞質受容体を保有する免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)、およびそれらの組み合わせであり得る。
ある態様では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、1つまたは複数の共刺激性分子の任意の部分、例えば、CD2、CD3、CD8、CD27、CD28、ICOS、4-1BB、PD-1に由来する少なくとも1つのシグナル伝達ドメイン、それらの任意の誘導体またはバリアント、同じ機能的能力を有するそれらの任意の合成配列、およびそれらの任意の組み合わせを含む。
細胞内ドメインの他の例には、TCR、CD3ゼータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD86、共通FcRガンマ、FcRベータ(FcイプシロンRib)、CD79a、CD79b、FcガンマRlla、DAP10、DAP12、T細胞受容体(TCR)、CD8、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX9、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、KIRファミリータンパク質、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80 (KLRF1)、CD127、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CDlib、ITGAX、CD11c、ITGBl、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、本明細書に記載される他の共刺激分子、それらの任意の誘導体、バリアント、またはフラグメント、同じ機能的能力を有する共刺激分子の任意の合成配列、およびそれらの任意の組み合わせを含むが、それに限定されるわけではない1つまたは複数の分子または受容体に由来するフラグメントまたはドメインが含まれる。
細胞内ドメインの追加的な例には、非限定的に、CD3、B7ファミリー共刺激受容体および腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリー受容体を含む第1、第2および第3世代のT細胞シグナル伝達タンパク質を非限定的に含む、数種類の様々な他の免疫シグナル伝達受容体の細胞内シグナル伝達ドメインが含まれる(例えば、Park and Brentjens, J. Clin. Oncol. (2015) 33(6): 651-653を参照されたい)。追加的に、細胞内シグナル伝達ドメインは、NK細胞およびNKT細胞によって使用されるシグナル伝達ドメイン(例えば、Hermanson and Kaufman, Front. Immunol. (2015) 6: 195を参照されたい)、例えば、NKp30(B7-H6)(例えば、Zhang et al., J. Immunol. (2012) 189(5): 2290-2299を参照されたい)、およびDAP12(例えば、Topfer et al., J. Immunol. (2015) 194(7): 3201-3212を参照されたい)、NKG2D、NKp44、NKp46、DAP10、およびCD3zのシグナル伝達ドメインを含み得る。
ある特定の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ、TCRゼータ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3デルタ、またはICOSからなる群より選択されるタンパク質の機能的シグナル伝達ドメインを含む。ある特定の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、機能的シグナル伝達ドメインを含み、かつ、共刺激性ドメインをさらに含み、ここで、共刺激性ドメインは、4-1BBまたはCD28からの機能的シグナル伝達ドメインを含む。
本開示の対象のCARにおいて使用するために適した細胞内シグナル伝達ドメインは、CARの活性化(すなわち、抗原および二量体化剤によって活性化される)に反応して別個のかつ検出可能なシグナル(例えば、細胞による1つまたは複数のサイトカインの産生の増加;標的遺伝子の転写の変化;タンパク質の活性の変化;細胞挙動の変化、例えば、細胞死;細胞増殖;細胞分化;細胞生存;細胞シグナル伝達応答のモジュレーションなど)を提供する任意の所望のシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、以下に記載のような少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つなど)のITAMモチーフを含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP10/CD28型シグナル伝達鎖を含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、膜結合CARに共有結合することなく、代わりに細胞質中に拡散される。
本開示の対象のCARにおいて使用するために適した細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)含有細胞内シグナル伝達ポリペプチドを含む。いくつかの態様では、ITAMモチーフは、細胞内シグナル伝達ドメイン内で二度反復され、そこで、ITAMモチーフの第1および第2の例は、6~8アミノ酸により互いに隔てられている。一態様では、対象のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、3つのITAMモチーフを含む。
いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、非限定的に、FcガンマRI、FcガンマRIIA、FcガンマRIIC、FcガンマRIIIA、FcRL5などの、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含有するヒト免疫グロブリン受容体のシグナル伝達ドメインを含む(例えば、Gillis et al., Front. Immunol. (2014) 5:254を参照されたい)。
適切な細胞内シグナル伝達ドメインは、ITAMモチーフを含有するポリペプチドに由来する、ITAMモチーフ含有部分であることができる。例えば、適切な細胞内シグナル伝達ドメインは、任意のITAMモチーフ含有タンパク質由来のITAMモチーフ含有ドメインであることができる。したがって、適切な細胞内シグナル伝達ドメインは、それが由来するタンパク質全体の配列全体を含有する必要はない。適切なITAMモチーフ含有ポリペプチドの例は、DAP12、FCER1G(Fcイプシロン受容体Iガンマ鎖)、CD3D(CD3デルタ)、CD3E(CD3イプシロン)、CD3G(CD3ガンマ)、CD3Z(CD3ゼータ)、およびCD79A(抗原受容体複合体関連タンパク質アルファ鎖)を含むが、それに限定されるわけではない。
一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP12(TYROBP;TYROタンパク質チロシンキナーゼ結合タンパク質;KARAP;PLOSL;DNAX活性化タンパク質12;KAR関連タンパク質;TYROタンパク質チロシンキナーゼ結合タンパク質;キラー活性化受容体関連タンパク質;キラー活性化受容体関連タンパク質などとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、FCER1G(FCRG;Fcイプシロン受容体Iガンマ鎖;Fc受容体ガンマ鎖;fc-イプシロンRI-ガンマ;fcRガンマ;fceRlガンマ;高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットガンマ;免疫グロブリンE受容体、高親和性ガンマ鎖などとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3デルタ鎖(CD3D;CD3-DELTA;T3D;CD3抗原、デルタサブユニット;CD3デルタ;CD3d抗原、デルタポリペプチド(TiT3複合体);OKT3、デルタ鎖;T細胞受容体T3デルタ鎖;T細胞表面糖タンパク質CD3デルタ鎖などとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3イプシロン鎖(CD3e、T細胞表面抗原T3/Leu-4イプシロン鎖、T細胞表面糖タンパク質CD3イプシロン鎖、AI504783、CD3、CD3イプシロン、T3eなどとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3ガンマ鎖(CD3G、T細胞受容体T3ガンマ鎖、CD3-GAMMA、T3G、ガンマポリペプチド(TiT3複合体)などとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3ゼータ鎖(CD3Z、T細胞受容体T3ゼータ鎖、CD247、CD3-ZETA、CD3H、CD3Q、T3Z、TCRZなどとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD79A(B細胞抗原受容体複合体関連タンパク質アルファ鎖;CD79a抗原(免疫グロブリン関連アルファ);MB-1膜糖タンパク質;ig-アルファ;膜結合免疫グロブリン関連タンパク質;表面IgM関連タンパク質などとしても知られている)に由来する。一態様では、本開示のFN3 CARにおいて使用するために適した細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP10/CD28型シグナル伝達鎖を含む。一態様では、本開示のFN3 CARにおいて使用するために適した細胞内シグナル伝達ドメインは、ZAP70ポリペプチドを含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79bまたはCD66dの細胞質シグナル伝達ドメインを含む。一態様では、CAR中の細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ゼータの細胞質シグナル伝達ドメインを含む。
通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体を用いることができるが、多くの場合、必ずしも鎖全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断型部分が使用される範囲内で、そのような切断型部分は、エフェクター機能シグナルを伝達する限り、無傷の鎖の代わりに使用され得る。細胞内シグナル伝達ドメインは、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の切断型部分を含む。
本明細書に記載の細胞内シグナル伝達ドメインを、本明細書に記載の抗原結合ドメインのいずれか、本明細書に記載の膜貫通ドメインのいずれか、またはCARに含まれ得る本明細書に記載の他のドメインのいずれかと組み合わせることができる。
E. 操作された細胞
本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)および治療用ペプチドを含む、操作された細胞(例えば、改変された免疫細胞またはその前駆体;例えば、T細胞)を提供する。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、非天然型治療用ペプチドである。ある特定の態様では、CAR分子および治療用ペプチドは、同じ発現構築物から発現される。また、本明細書において想定される核酸分子のいずれかまたは本明細書において想定される発現ベクターのいずれかを含む細胞も提供される。
ある特定の態様では、細胞は、以下の特性:(i)治療用ペプチドは、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)経路の活性化因子である、(ii)治療用ペプチドは、環状ジヌクレオチドの模倣体である、(iii)治療用ペプチドは、短鎖脂肪酸(SCFA)の模倣体である、(iv)治療用ペプチドは、パターン認識受容体(PRR)のアゴニストである、(v)治療用ペプチドは、ステロイド/ホルモン様分子の模倣体である、(vi)治療用ペプチドは、標的細胞のアポトーシスを促進する、(vii)治療用ペプチドは、免疫原性エピトープである、および/または(viii)治療用ペプチドは、標的細胞における1つまたは複数のDNA修復機構を遮断する、の1つまたは複数を有する治療用ペプチドを含む。
ある特定の態様では、治療用ペプチドは、cGAMP、cAMP、またはcGMPの模倣体である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、TLRアゴニストの模倣体である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、フラジェリン、CpGモチーフ、ペプチドグリカン、リポ多糖(LPS)、またはモノホスホリルリピドA(MPL)の模倣体である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、第2のミトコンドリア由来カスパーゼ活性化因子(SMAC)模倣体である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の阻害剤である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)に結合するSCFAの模倣体である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、SCFA模倣体であるか、または、ステロイドおよび/もしくはホルモン様分子の模倣体であり、ここで、操作された細胞は、1つまたは複数のエフェクター機能の活性を低下させるようにさらに改変されている。
ある特定の態様では、非天然型ペプチドは、天然に存在するペプチドに対して90%以下の配列同一性を有するペプチドである。ある特定の態様では、非天然型ペプチドは、天然に存在するペプチドに対して80%以下の配列同一性を有するペプチドである。ある特定の態様では、該ペプチドは、SEQ ID NO:1~16からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
ある特定の態様では、治療用ペプチドは、操作された細胞から細胞外小胞中に排出される。ある特定の態様では、標的細胞は、腫瘍細胞である。ある特定の態様では、操作された細胞は、T細胞またはNK細胞である。
ある特定の態様では、操作された細胞は、1つもしくは複数の炎症性サイトカインの発現、グランザイムBの発現、またはパーフォリンの発現を低下または阻止するように改変されている。
ある特定の態様では、CAR分子および治療用ペプチドは、同じ発現構築物から発現され、ここで、発現構築物は、PRRを活性化するRNA分子をさらに含む。ある特定の態様では、RNA分子は、7SLである。
したがって、投与された遺伝子操作された細胞の活性および効力を高めるなどによって、移入された細胞の経時的な持続性または曝露を維持しつつ、養子細胞療法における免疫細胞(例えば、T細胞)機能を増強する、細胞、組成物および方法、例えば、改善された有効性を提供するものが提供される。いくつかの態様では、遺伝子操作された細胞は、対象にインビボ投与されたときに、ある特定の利用可能な方法と比較して高められた増大および/または持続性を示す。いくつかの態様では、提供される細胞は、対象にインビボ投与されたときに、高められた持続性を示す。いくつかの態様では、投与されたときの対象における操作された細胞の持続性は、代替法、例えば、T細胞がCARおよび治療用ペプチドを含まない方法により操作された細胞を投与する方法によって達成されるであろう持続性と比較してより大きい。いくつかの態様では、持続性は、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍もしくはそれ以上、または約少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍もしくはそれ以上高められる。
いくつかの態様では、投与された細胞の持続性の程度または範囲は、対象に投与した後に検出または定量することができる。例えば、いくつかの局面では、定量的PCR(qPCR)が、対象の血液または血清または臓器または組織(例えば、疾患部位)中のCARおよび治療用ペプチドを発現する細胞の量を評価するために使用される。いくつかの局面では、持続性は、DNA 1マイクログラム当たりの、外因性受容体をコードするDNAまたはプラスミドのコピーとして、あるいは、試料、例えば、血液もしくは血清1マイクロリットル当たりの、または試料1マイクロリットル当たりの末梢血単核細胞(PBMC)もしくは白血球もしくはT細胞の総数当たりの、受容体発現細胞の数として定量される。いくつかの態様では、受容体を発現する細胞を一般的にその受容体に特異的な抗体を使用して検出するフローサイトメトリーアッセイを実施することもできる。また、細胞ベースのアッセイを使用して、機能性細胞、例えば、疾患もしくは病態の細胞または受容体によって認識される抗原を発現する細胞に結合可能および/または中和可能な、ならびに/またはその細胞に対して応答、例えば、細胞傷害性応答を誘導可能な、細胞の数または割合を検出してもよい。そのような態様のいずれにおいても、CARに関連する別のマーカー発現の範囲またはレベルを使用して、対象において投与された細胞と内因性細胞とを区別することができる。
F. 細胞の供給源
いくつかの態様では、エクスビボ操作のために細胞(例えば免疫細胞;例えばT細胞)の供給源が対象から得られる。エクスビボ操作のための標的細胞の供給源はまた、例えば、自己または異種のドナー血、臍帯血、または骨髄も含む場合がある。例えば、免疫細胞の供給源は、本開示の改変された免疫細胞により処置されるべき対象に由来する場合があり、例えば、対象の血液、対象の臍帯血、または対象の骨髄であり得る。対象の非限定的な例には、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびそれらのトランスジェニック種が含まれる。好ましくは、対象はヒトである。
免疫細胞は、血液、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、脾臓組織、臍帯、リンパ液、またはリンパ器官を含むいくつかの供給源から得ることができる。免疫細胞は、免疫系の細胞、例えば自然免疫または適応免疫の細胞、例えば、リンパ球、典型的にはT細胞および/またはNK細胞を含む骨髄系細胞またはリンパ球系細胞である。他の例示的な細胞には、人工多能性幹細胞(iPSC)を含む、複能性および多能性幹細胞などの幹細胞が含まれる。いくつかの局面では、細胞はヒト細胞である。処置されるべき対象に関して、細胞は、同種および/または自己であり得る。細胞は、典型的には、初代細胞、例えば、対象から直接単離され、かつ/または対象から単離され凍結された初代細胞である。
ある特定の態様では、細胞は、T細胞、例えば、CD8+ T細胞(例えば、CD8+ ナイーブT細胞、中枢性メモリーT細胞、またはエフェクターメモリーT細胞)、CD4+ T細胞、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)、制御性T細胞(Treg)、幹細胞メモリーT細胞、リンパ球系前駆細胞、造血幹細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)または樹状細胞である。いくつかの態様では、細胞は、単球または顆粒球、例えば、骨髄系細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、マスト細胞、好酸球、および/または好塩基球である。ある態様では、標的細胞は、人工多能性幹(iPS)細胞またはiPS細胞に由来する細胞、例えば、対象から生成され、1つまたは複数の標的遺伝子の発現を変化させる(例えばそれに変異を誘導する)または操作するように操作され、例えば、T細胞、例えば、CD8+ T細胞(例えば、CD8+ ナイーブT細胞、中枢性メモリーT細胞、またはエフェクターメモリーT細胞)、CD4+ T細胞、幹細胞メモリーT細胞、リンパ球系前駆細胞または造血幹細胞に分化したiPS細胞である。
いくつかの態様では、細胞は、T細胞または他の細胞型の1つまたは複数のサブセット、例えばT細胞集団全体、CD4+細胞、CD8+細胞、およびその部分集団、例えば機能、活性化状態、成熟、分化能、増大、再循環、局在、および/もしくは持続能、抗原特異性、抗原受容体の種類、特定の器官もしくは区画における存在、マーカーもしくはサイトカイン分泌プロファイル、および/または分化の度合いにより定義されるものを含む。T細胞ならびに/またはCD4+および/もしくはCD8+ T細胞のサブタイプおよび部分集団は中でも、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞およびそれらのサブタイプ、例えば幹細胞メモリーT(TSCM)、中枢性メモリーT(TCM)、エフェクターメモリーT(TEM)、または最終分化エフェクターメモリーT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、自然および適応制御性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞、例えばTH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞、アルファ/ベータT細胞、およびデルタ/ガンマT細胞である。ある特定の態様では、当技術分野において入手可能ないくつものT細胞系が、使用される場合がある。
いくつかの態様では、方法は、対象から免疫細胞を単離する段階、それらを調製、処理、培養、および/または操作する段階を含む。いくつかの態様では、操作された細胞の調製は、1つまたは複数の培養および/または調製段階を含む。記載のように操作するための細胞は、生物学的試料などの試料、例えば対象から得られたまたは対象に由来する試料から単離される場合がある。いくつかの態様では、細胞が単離される対象は、疾患もしくは状態を有する対象、または細胞療法を必要とする、もしくは細胞療法が投与されるであろう対象である。対象は、いくつかの態様では、そのために細胞が単離、処理、および/または操作される、養子細胞療法などの特定の治療的介入の必要のあるヒトである。したがって、細胞は、いくつかの態様では、初代細胞、例えば、初代ヒト細胞である。試料には、対象から直接採取された組織、液体、および他の試料、ならびに分離、遠心分離、遺伝子操作(例えばウイルスベクターによる形質導入)、洗浄、および/またはインキュベーションなどの1つまたは複数の処理段階の結果として生じる試料が含まれる。生物学的試料は、生物学的供給源から直接得られる試料または処理された試料であることができる。生物学的試料には、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗などの体液、組織、ならびに器官試料が、それらに由来する処理された試料を含めて含まれるが、それに限定されるわけではない。
いくつかの局面では、細胞が由来または単離される試料は、血液もしくは血液由来試料であるか、またはアフェレーシスもしくは白血球アフェレーシス産物である、もしくはそれに由来する。例示的な試料には、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸管関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ系組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸、精巣、卵巣、扁桃、もしくは他の器官、および/またはそれらに由来する細胞が含まれる。試料は、細胞療法、例えば、養子細胞療法に関連して、自己および同種供給源からの試料を含む。
いくつかの態様では、細胞は、細胞株、例えば、T細胞株に由来する。細胞は、いくつかの態様では、異種供給源から、例えば、マウス、ラット、非ヒト霊長類、およびブタから得られる。いくつかの態様では、細胞の単離は、1つまたは複数の調製段階および/または親和性に基づかない細胞分離段階を含む。いくつかの例では、細胞が、洗浄、遠心分離、および/または1つもしくは複数の試薬の存在下でインキュベートされて、例えば、望まれない成分が除去され、所望の成分が濃縮され、特定の試薬に感受性の細胞が溶解または除去される。いくつかの例では、細胞は、密度、接着特性、サイズ、特定の成分に対する感受性および/または耐性などの1つまたは複数の特性に基づき分離される。
いくつかの例では、対象の循環血からの細胞は、例えば、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスにより得られる。試料は、いくつかの局面では、T細胞、単球、顆粒球、B細胞を含むリンパ球、他の有核白血球、赤血球、および/または血小板を含有し、いくつかの局面では、赤血球および血小板以外の細胞を含有する。いくつかの態様では、対象から収集された血液細胞は、洗浄されて、例えば、血漿画分を除去し、その後の処理段階に適した緩衝液または媒質中に細胞を入れる。いくつかの態様では、細胞は、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄される。いくつかの局面では、洗浄段階は、タンジェント流濾過(TFF)により、製造業者の説明に従って成し遂げられる。いくつかの態様では、細胞は洗浄後に多様な生体適合性緩衝液中に再懸濁される。ある特定の態様では、血液細胞試料の成分が除去され、細胞が培地中に直接再懸濁される。いくつかの態様では、方法は、赤血球を溶解し、PercollまたはFicoll勾配による遠心分離を行うことによる末梢血からの白血球の調製などの、密度に基づく細胞分離方法を含む。
一態様では、免疫は、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって得られた個体の循環血から得られた細胞である。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含有する。血漿画分を除去するため、および適切な緩衝液もしくは媒質、例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)中に細胞を入れるために、アフェレーシスによって収集された細胞が洗浄される場合があり、または洗浄溶液は、その後の処理段階のためにカルシウムを欠如し、かつマグネシウムを欠如する場合があり、もしくはすべてとはいわないまでも多くの二価陽イオンを欠如する場合がある。洗浄後、細胞は、多様な生体適合性緩衝液、例えば、Ca不含、Mg不含PBSなどの中に再懸濁される場合がある。あるいは、アフェレーシス試料の望ましくない成分が、除去され、細胞が培地中に直接再懸濁される場合がある。
いくつかの態様では、単離方法は、1種または複数種の特異的分子、例えば表面マーカー、例えば、表面タンパク質、細胞内マーカー、または核酸の細胞中の発現または存在に基づく、異なる細胞型の分離を含む。いくつかの態様では、そのようなマーカーに基づく分離のために、任意の公知の方法が使用される場合がある。いくつかの態様では、分離は、親和性または免疫親和性に基づく分離である。例えば、分離は、いくつかの局面では、例えば、そのようなマーカーに特異的に結合する抗体または結合パートナーと一緒のインキュベーション、一般的にそれに続く洗浄段階、および抗体または結合パートナーに結合していない細胞からの抗体または結合パートナーと結合した細胞の分離による、1つまたは複数のマーカー、典型的には細胞表面マーカーの細胞発現または発現レベルに基づく細胞および細胞集団の分離を含む。
そのような分離段階は、試薬と結合した細胞がさらなる使用のために保持される正の選択、および/または抗体もしくは結合パートナーに結合していない細胞が保持される負の選択に基づくことができる。いくつかの例では、両方の画分がさらなる使用のために保持される。いくつかの局面では、所望の集団以外の細胞により発現されるマーカーに基づいて分離が最も良好に行われるように、不均一な集団中の細胞型を特異的に特定する抗体が利用不能な場合に、負の選択は特に有用であることができる。分離は、特定の細胞集団または特定のマーカーを発現している細胞の100%の濃縮または除去を生じる必要はない。例えば、特定の種類の細胞、例えばマーカーを発現している細胞の正の選択または濃縮は、そのような細胞の数またはパーセンテージを増加させることを指すが、マーカーを発現していない細胞の完全な非存在をもたらす必要はない。同様に、マーカーを発現している細胞などの特定の種類の細胞の負の選択、除去、または枯渇は、そのような細胞の数またはパーセンテージを減少させることを指すが、そのような細胞のすべての完全な除去をもたらす必要はない。
いくつかの例では、複数ラウンドの分離段階が実施され、その際、1つの段階から正または負の選択をされた画分が、後続の正または負の選択などの別の分離段階に供される。いくつかの例では、それぞれが負の選択のための標的とされるマーカーに特異的な複数の抗体または結合パートナーと共に細胞をインキュベートすることなどによって、複数のマーカーを同時発現している細胞を単一の分離段階で枯渇させることができる。同様に、複数の抗体または様々な細胞型に発現される結合パートナーと共に細胞をインキュベートすることによって、複数の細胞型に同時に正の選択を行うことができる。
いくつかの態様では、T細胞集団の1つまたは複数は、1つまたは複数の特定のマーカー、例えば表面マーカーについて陽性(マーカー+)である、もしくはそれを高レベル発現する(マーカーhigh)細胞、または1つもしくは複数のマーカーについて陰性である(マーカー-)もしくはそれを比較的低レベルを発現する(マーカーlow)細胞が濃縮または枯渇されている。例えば、いくつかの局面では、T細胞の特定の部分集団、例えば、1つまたは複数の表面マーカー、例えば、CD28+、CD62L+、CCR7+、CD27+、CD127+、CD4+、CD8+、CD45RA+、および/またはCD45RO+ T細胞について陽性またはそれを高レベル発現している細胞は、正または負の選択技法により単離される。場合によっては、そのようなマーカーは、T細胞のある特定の集団(非メモリー細胞など)に存在しない、または比較的低レベルで発現されるが、T細胞のある特定の他の集団(メモリー細胞など)に存在する、または比較的高レベル発現されるマーカーである。一態様では、細胞(CD8+細胞、またはT細胞、例えばCD3+細胞など)は、CD45RO、CCR7、CD28、CD27、CD44、CD127、および/もしくはCD62Lについて陽性である、もしくはその高い表面レベルを発現する細胞が濃縮されている(すなわち、正の選択をされている)、かつ/またはCD45RAについて陽性である、もしくはその高い表面レベルを発現する細胞が枯渇されている(例えば、それについて負の選択をされている)。いくつかの態様では、細胞は、CD122、CD95、CD25、CD27、および/またはIL7-Ra(CD127)について陽性であるまたはその高い表面レベルを発現している細胞が濃縮されているまたはそれを枯渇している。いくつかの例では、CD8+ T細胞は、CD45ROについて陽性(またはCD45RAについて陰性)およびCD62Lについて陽性の細胞が濃縮されている。例えば、CD3+、CD28+ T細胞は、CD3/CD28コンジュゲート磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T Cell Expander)を使用して正の選択を行うことができる。
いくつかの態様では、T細胞は、B細胞、単球、または他の白血球などの非T細胞に発現されるマーカー、例えばCD14の負の選択によってPBMC試料から分離される。いくつかの局面では、CD4+またはCD8+選択段階は、CD4+ヘルパーT細胞およびCD8+細胞傷害性T細胞を分離するために使用される。そのようなCD4+集団およびCD8+集団は、1つまたは複数のナイーブ、メモリー、および/またはエフェクターT細胞部分集団上に発現されるまたは比較的高い度合いで発現されるマーカーについて正の選択または負の選択により部分集団にさらに選別することができる。いくつかの態様では、CD8+細胞は、例えば、それぞれの部分集団に関連する表面抗原に基づく正の選択または負の選択により、ナイーブ、中枢性メモリー、エフェクターメモリー、および/または中枢性メモリー幹細胞についてさらに濃縮または枯渇される。いくつかの態様では、中枢性メモリーT(TCM)細胞についての濃縮は、有効性を増加させるために、例えば、投与後に長期生存、増大、および/または生着を改善するために実施され、それは、いくつかの局面ではそのような部分集団において特に堅固である。いくつかの態様では、TCMが濃縮されたCD8+ T細胞およびCD4+ T細胞を組み合わせることで、有効性がさらに高まる。
いくつかの態様では、メモリーT細胞は、CD8+末梢血リンパ球のCD62L+およびCD62L-サブセットの両方に存在する。PBMCは、抗CD8抗体および抗CD62L抗体などを使用して、CD62L-CD8+および/またはCD62L+CD8+画分について濃縮されているまたはそれを枯渇していることができる。いくつかの態様では、CD4+ T細胞集団およびCD8+ T細胞部分集団、例えば、中枢性メモリー(TCM)細胞について濃縮された部分集団である。いくつかの態様では、中枢性メモリーT(TCM)細胞についての濃縮は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、および/またはCD127について陽性またはその高い表面発現に基づく;いくつかの局面では、それは、CD45RAおよび/またはグランザイムBを発現しているまたは高度に発現している細胞についての負の選択に基づく。いくつかの局面では、TCM細胞が濃縮されたCD8+集団の単離は、CD4、CD14、CD45RAを発現している細胞の枯渇、およびCD62Lを発現している細胞についての正の選択または濃縮により実施される。一局面では、中枢性メモリーT(TCM)細胞の濃縮は、CD4の発現に基づき選択される細胞の負の画分から開始して実施され、それが、CD14およびCD45RAの発現に基づく負の選択、ならびにCD62Lに基づく正の選択に供される。そのような選択は、いくつかの局面では、同時に実施され、他の局面では、どちらかの順序で順次に実施される。いくつかの局面では、CD8+細胞集団または部分集団を調製するのに使用されるCD4発現に基づく同じ選択段階はまた、CD4+細胞集団または部分集団を生成するために使用され、それにより、CD4に基づく分離からの正の画分および負の画分の両方が、任意で1つまたは複数のさらなる正または負の選択段階に続いて、方法のその後の段階において保持および使用される。
CD4+ Tヘルパー細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を特定することにより、ナイーブ、中枢性メモリー、およびエフェクター細胞に選別される。CD4+ リンパ球は、標準的な方法により得ることができる。いくつかの態様では、ナイーブCD4+ Tリンパ球は、CD45RO-、CD45RA+、CD62L+、CD4+ T細胞である。いくつかの態様では、中枢性メモリーCD4+細胞は、CD62L+およびCD45RO+である。いくつかの態様では、エフェクターCD4+細胞は、CD62L-およびCD45ROである。一例では、負の選択によりCD4+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。いくつかの態様では、抗体または結合パートナーは、正および/または負の選択のための細胞の分離を可能にするために磁気ビーズまたは常磁性ビーズなどの固体支持体またはマトリックスに結合される。
いくつかの態様では、細胞は、遺伝子操作の前またはそれに関連してインキュベートおよび/または培養される。インキュベーション段階は、培養(culture)、培養(cultivation)、刺激、活性化、および/または繁殖を含むことができる。いくつかの態様では、組成物または細胞は、刺激条件または刺激物質の存在下でインキュベートされる。そのような条件には、集団中の細胞の増殖、増大、活性化、および/もしくは生存を誘導するために、抗原曝露を模倣するために、ならびに/または遺伝子操作、例えば組換え抗原受容体の導入のために細胞をプライミングするために設計された条件が含まれる。条件は、特定の媒質、温度、酸素含量、二酸化炭素含量、時間、作用物質、例えば、栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオン、および/または刺激因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体、および細胞を活性化するように設計された任意の他の作用物質のうちの1つまたは複数を含むことができる。いくつかの態様では、刺激条件または刺激物質は、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することが可能な1つまたは複数の作用物質、例えば、リガンドを含む。いくつかの局面では、作用物質は、T細胞におけるTCR/CD3細胞内シグナル伝達カスケードを始動する、または開始する。そのような作用物質は、例えば、ビーズなどの固体支持体に結合した抗体、例えば、TCR成分および/もしくは共刺激受容体に特異的な抗体、例えば、抗CD3、抗CD28、ならびに/または1つもしくは複数のサイトカインを含むことができる。任意で、増大方法は、培地に抗CD3および/または抗CD28抗体を(例えば、少なくとも約0.5ng/mlの濃度で)添加する段階をさらに含む場合がある。いくつかの態様では、刺激物質は、IL-2および/またはIL-15、例えば、少なくとも約10ユニット/mLのIL-2濃度を含む。
別の態様では、T細胞は、赤血球を溶解することおよび単球を枯渇させることによって、例えば、PERCOLL(商標)勾配による遠心分離により、末梢血から単離される。あるいは、T細胞は、臍帯から単離することができる。任意の事象では、T細胞の特定の部分集団を正または負の選択技法によりさらに単離することができる。
そのように単離された臍帯血単核細胞は、非限定的にCD34、CD8、CD14、CD19、およびCD56を含む、ある特定の抗原を発現している細胞を枯渇していることができる。これらの細胞の枯渇は、単離された抗体、抗体を含む生物学的試料、例えば腹水、物理的支持体に結合した抗体、細胞と結合した抗体を使用して成し遂げることができる。
負の選択によるT細胞集団の濃縮は、負の選択をされた細胞に独特な表面マーカーに対する抗体の組み合わせを使用して成し遂げることができる。好ましい方法は、負の選択をされた細胞上に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用する負磁気免疫接着(negative magnetic immunoadherence)またはフローサイトメトリーを介する細胞選別および/または選択である。例えば、負の選択によりCD4+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。
正または負の選択により細胞の所望の集団を単離するために、細胞濃度および表面(例えば、ビーズなどの粒子)を変化させることができる。ある特定の態様では、ビーズおよび細胞が一緒に混合される体積を顕著に減少させて(すなわち、細胞の濃度を増加させて)、細胞とビーズとの最大の接触を保証することが望ましい場合がある。例えば、一態様では、20億個/mlの細胞濃度が使用される。一態様では、10億個/mlの細胞濃度が使用される。さらなる態様では、細胞1億個/ml超が使用される。さらなる態様では、1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500万、または5000万個/mlの細胞濃度が使用される。なお別の態様では、7500万、8000万、8500万、9000万、9500万、または1億個/mlの細胞濃度が使用される。さらなる態様では、1億2500万または1億5000万個/mlの細胞濃度を使用することができる。高濃度を使用することは、増加した細胞収量、細胞活性化、および細胞増大をもたらすことができる。
T細胞はまた、単球の除去段階を必要としない洗浄段階の後に凍結することができる。理論に縛られることを望むわけではないが、凍結およびその後の解凍段階は、細胞集団中の顆粒球およびある程度の単球を除去することによって、より均一な産物を提供する。血漿および血小板を除去する洗浄段階の後で、細胞が凍結溶液中に懸濁される場合がある。多数の凍結溶液およびパラメーターが当技術分野において公知であり、この状況で有用であろうものの、非限定的な例では、1つの方法は、20% DMSOおよび8%ヒト血清アルブミンを含有するPBS、または他の適切な細胞凍結媒を使用することを伴う。次いで細胞は、1℃/分の速度で-80℃に凍結され、液体窒素保存タンクの気相中で保管される。制御凍結の他の方法および-20℃または液体窒素中での即時の非制御凍結が使用される場合もある。
一態様では、T細胞の集団は、末梢血単核細胞、臍帯血細胞、T細胞の精製集団、およびT細胞株などの細胞中に含まれる。別の態様では、末梢血単核細胞は、T細胞集団を含む。なお別の態様では、精製T細胞は、T細胞集団を含む。
ある特定の態様では、制御性T細胞(Treg)は、試料から単離することができる。試料は、臍帯血または末梢血を含むことができるが、それに限定されるわけではない。ある特定の態様では、Tregは、フローサイトメトリー選別によって単離される。試料は、当技術分野において公知の任意の手段により単離前にTregが濃縮されることができる。単離されたTregを、凍結保存し、かつ/または使用前に増大させることができる。Tregを単離するための方法は、米国特許第7,754,482号、同第8,722,400号、および同第9,555,105号、ならびに米国特許出願第13/639,927号に記載されており、それらの内容は、その全体で本明細書に組み入れられる。
G. 核酸および発現ベクター
本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)および治療用ペプチドをコードする核酸を提供する。本明細書の他の箇所に詳細に開示している任意のCARが想定される。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、非天然型ペプチドである。本明細書の他の箇所に詳細に開示している任意の治療用ペプチドが想定される。
ある特定の態様では、終止コドンは、CARをコードする核酸セグメントと、治療用ペプチドをコードする核酸セグメントとを隔てている。
ある特定の態様では、リンカーを使用して、複数のタンパク質が同じ核酸配列(例えば、多シストロン性または2シストロン性配列)によってコードされ得るようにしてもよく、それらのタンパク質は、別々のタンパク質成分に解離されるポリタンパク質として翻訳される。いくつかの態様では、リンカーは、配列内リボソーム進入部位(IRES)をコードする核酸配列を含む。本明細書において使用される場合、「配列内リボソーム進入部位」または「IRES」は、タンパク質コード領域のATGなどの開始コドンへの直接的な配列内リボソーム進入を促進し、遺伝子のキャップ非依存的翻訳を導くエレメントのことを指す。様々な配列内リボソーム進入部位が、当業者に公知であり、非限定的に、ウイルスまたは細胞のmRNA供給源から入手可能なIRES、例えば、免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP);血管内皮細胞増殖因子(VEGF);線維芽細胞増殖因子2;インスリン様成長因子;翻訳開始因子eIF4G;酵母転写因子TFIIDおよびHAP4;ならびに、例えば、カルジオウイルス、ライノウイルス、アフトウイルス、HCV、フレンドマウス白血病ウイルス(FrMLV)、およびモロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)から入手可能なIRESを含む。当業者は、本開示において使用するための適切なIRESを選択することができるであろう。
いくつかの態様では、リンカーは、自己切断ペプチドをコードする核酸配列を含む。本明細書において使用される場合、「自己切断ペプチド」または「2Aペプチド」は、複数のタンパク質がポリタンパク質としてコードされることを可能にするオリゴペプチドのことを指し、これらは、翻訳後に構成タンパク質へと解離する。「自己切断」という用語の使用は、タンパク質分解切断反応を意味することを意図していない。様々な自己切断ペプチドまたは2Aペプチドが、当業者に公知であり、非限定的に、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)ウイルスファミリーのメンバー、例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV0)、ゾセアアシグナウイルス(Thosea asigna virus)(TaV)、およびブタテッショウウイルス-1(PTV-1);ならびにタイロウイルスおよび脳心筋炎ウイルスなどのカルジオウイルスに見いだされるものを含む。FMDV、ERAV、PTV-1およびTaVに由来する2Aペプチドは、本明細書において、それぞれ「F2A」、「E2A」、「P2A」および「T2A」と称される。当業者は、本開示において使用するための適切な自己切断ペプチドを選択することができるであろう。
いくつかの態様では、リンカーは、フーリン切断部位をコードする核酸配列をさらに含む。フーリンは、トランスゴルジ中に存在し、タンパク質前駆体を分泌の前にプロセシングする、遍在的に発現されるプロテアーゼである。フーリンは、そのコンセンサス認識配列のCOOH-末端で切断する。当業者は、本開示において使用するための適切なフーリン切断部位を選択することができるであろう。
いくつかの態様では、リンカーは、フーリン切断部位と2Aペプチドの組み合わせをコードする核酸配列を含む。例は、非限定的に、フーリンおよびF2Aをコードする核酸配列を含むリンカー、フーリンおよびE2Aをコードする核酸配列を含むリンカー、フーリンおよびP2Aをコードする核酸配列を含むリンカー、フーリンおよびT2Aをコードする核酸配列を含むリンカーを含む。当業者は、本開示において使用するための適切な組み合わせを選択することができるであろう。そのような態様では、リンカーは、フーリンと2Aペプチドとの間にスペーサー配列をさらに含み得る。様々なスペーサー配列が、当技術分野において公知であり、非限定的に、グリシンセリン(GS)スペーサー、例えば、(GS)n、(GSGGS)n(SEQ ID NO:17)および(GGGS)n(SEQ ID NO:18)(式中、nは、少なくとも1の整数を表す)を含む。例示的なスペーサー配列は、非限定的に、GGSG(SEQ ID NO:20)、GGSGG(SEQ ID NO:21)、GSGSG(SEQ ID NO:22)、GSGGG(SEQ ID NO:23)、GGGSG(SEQ ID NO:24)、GSSSG(SEQ ID NO:25)などを含むアミノ酸配列を含むことができる。当業者は、本開示において使用するための適切なスペーサー配列を選択することができるであろう。
いくつかの態様では、本開示の核酸は、転写調節エレメント、例えば、プロモーターおよびエンハンサーなどに機能的に連結され得る。適切なプロモーターおよびエンハンサー エレメントは、当業者に公知である。
ある特定の態様では、CARをコードする核酸が、プロモーターと機能的連結状態にある。ある特定の態様では、プロモーターは、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーターである。
細菌細胞における発現に適したプロモーターには、lacI、lacZ、T3、T7、gpt、ラムダPおよびtrcが含まれるが、それに限定されるわけではない。真核細胞における発現に適したプロモーターには、軽鎖および/または重鎖免疫グロブリン遺伝子プロモーターおよびエンハンサーエレメント;サイトメガロウイルス前初期プロモーター;単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーター;初期および後期SV40プロモーター;レトロウイルス由来の長鎖末端反復配列に存在するプロモーター;マウスメタロチオネイン-Iプロモーター;ならびに当技術分野において公知の様々な組織特異的プロモーターが含まれるが、それに限定されるわけではない。可逆誘導性プロモーターを含む、適切な可逆プロモーターは、当技術分野において公知である。そのような可逆プロモーターは、多数の生物、例えば、真核生物および原核生物から単離され、それに由来する場合がある。第2の生物における使用のために第1の生物に由来する可逆プロモーターの改変(例えば、第1の原核生物および第2の真核生物、第1の真核生物および第2の原核生物など)は、当技術分野において周知である。そのような可逆プロモーター、およびそのような可逆プロモーターに基づくが、追加的な制御タンパク質も含むシステムには、アルコール調節プロモーター(例えば、アルコールデヒドロゲナーゼI(alcA)遺伝子プロモーター、アルコールトランス活性化因子タンパク質(A1cR)応答プロモーターなど)、テトラサイクリン調節プロモーター、(例えば、TetActivator、TetON、TetOFFなどを含むプロモーターシステム)、ステロイド調節プロモーター(例えば、ラットグルココルチコイド受容体プロモーターシステム、ヒトエストロゲン受容体プロモーターシステム、レチノイドプロモーターシステム、甲状腺プロモーターシステム、エクジソンプロモーターシステム、ミフェプリストンプロモーターシステムなど)、金属調節プロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーターシステムなど)、病原性関連調節プロモーター(例えば、サリチル酸調節プロモーター、エチレン調節プロモーター、ベンゾチアジアゾール調節プロモーターなど)、温度調節プロモーター(例えば、熱ショック誘導プロモーター(例えば、HSP-70、HSP-90、ダイズ熱ショックプロモーターなど)、光調節プロモーター、合成誘導プロモーターなどが含まれるが、それに限定されるわけではない。
いくつかの態様では、プロモーターは、CD8細胞特異的プロモーター、CD4細胞特異的プロモーター、好中球特異的プロモーター、またはNK特異的プロモーターである。例えば、CD4遺伝子プロモーターを使用することができる;例えば、Salmon et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90:7739;およびMarodon et al. (2003) Blood 101:3416を参照されたい。別の例として、CD8遺伝子プロモーターを使用することができる。NK細胞特異的発現は、NcrI(p46)プロモーターの使用により達成することができる;例えば、Eckelhart et al. Blood (2011) 117:1565を参照されたい。
酵母細胞における発現に適したプロモーターは、ADH1プロモーター、PGK1プロモーター、ENOプロモーター、PYK1プロモーターなどのような構成的プロモーター;またはGAL1プロモーター、GAL10プロモーター、ADH2プロモーター、PHOSプロモーター、CUP1プロモーター、GALTプロモーター、MET25プロモーター、MET3プロモーター、CYC1プロモーター、HIS3プロモーター、ADH1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、ADC1プロモーター、TRP1プロモーター、URA3プロモーター、LEU2プロモーター、ENOプロモーター、TP1プロモーター、およびAOX1(例えば、ピキア(Pichia)における使用のため)のような調節可能なプロモーターである。適切なベクターおよびプロモーターの選択は、十分に当業者のレベルの範囲内である。原核生物宿主細胞における使用に適したプロモーターには、バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼプロモーター;trpプロモーター;lacオペロンプロモーター;ハイブリッドプロモーター、例えば、lac/tacハイブリッドプロモーター、tac/trcハイブリッドプロモーター、trp/lacプロモーター、T7/lacプロモーター;trcプロモーター;tacプロモーターなど;araBADプロモーター;ssaGプロモーターなどのインビボ調節プロモーターまたは関連プロモーター(例えば、米国特許出願公開第20040131637号を参照されたい)、pagCプロモーター(Pulkkinen and Miller, J. Bacteriol. (1991) 173(1): 86-93;Alpuche-Aranda et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1992) 89(21): 10079-83)、nirBプロモーター(Harborne et al. Mol. Micro. (1992) 6:2805-2813)など(例えば, Dunstan et al., Infect. Immun. (1999) 67:5133-5141;McKelvie et al., Vaccine (2004) 22:3243-3255;およびChatfield et al., Biotechnol. (1992) 10:888-892を参照されたい);sigma70プロモーター、例えば、コンセンサスsigma70プロモーター(例えば、GenBankアクセッション番号AX798980、AX798961、およびAX798183を参照されたい);静止期プロモーター、例えば、dpsプロモーター、spvプロモーターなど;病原性アイランドSPI-2に由来するプロモーター(例えば、WO96/17951を参照されたい);actAプロモーター(例えば、Shetron-Rama et al., Infect. Immun. (2002) 70:1087-1096を参照されたい);rpsMプロモーター(例えば, Valdivia and Falkow Mol. Microbiol. (1996). 22:367を参照されたい);tetプロモーター(例えば、Hillen, W. and Wissmann, A. (1989) In Saenger, W. and Heinemann, U. (eds), Topics in Molecular and Structural Biology, Protein--Nucleic Acid Interaction. Macmillan, London, UK, Vol. 10, pp. 143-162を参照されたい);SP6プロモーター(例えば, Melton et al., Nucl. Acids Res. (1984) 12:7035を参照されたい)などが含まれるが、それに限定されるわけではない。大腸菌(Escherichia coli)などの原核生物における使用に適した強力なプロモーターには、Trc、Tac、T5、T7、およびPラムダが含まれるが、それに限定されるわけではない。細菌宿主細胞における使用のためのオペレーターの非限定的な例には、ラクトースプロモーターオペレーター(LacIリプレッサータンパク質は、ラクトースと接触した場合に立体配座を変化させ、それにより、Ladリプレッサータンパク質がオペレーターに結合するのを阻止する)、トリプトファンプロモーターオペレーター(トリプトファンと複合体化した場合、TrpRリプレッサータンパク質は、オペレーターと結合する立体配座を有し;トリプトファンの非存在下で、TrpRリプレッサータンパク質は、オペレーターに結合しない立体配座を有する)、およびtacプロモーターオペレーターが含まれる(例えば、deBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1983) 80:21-25を参照されたい)。
適切なプロモーターの他の例には、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列が含まれる。このプロモーター配列は、それに機能的に連結される任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を推進することが可能な、強力な構成的プロモーター配列である。サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳がんウイルス(MMTV)またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)長鎖末端反復配列(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン-バーウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、EF-1アルファプロモーター、ならびに非限定的にアクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、およびクレアチンキナーゼプロモーターなどのヒト遺伝子プロモーターを含むが、それに限定されるわけではない他の構成的プロモーター配列も使用される場合がある。さらに、本開示は、構成的プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導プロモーターもまた、本開示の一部として考えられている。誘導プロモーターの使用は、それが機能的に連結されるポリヌクレオチド配列の発現が望ましい場合に、そのような発現をオンにすること、または発現が望ましくない場合に発現をオフにすることが可能な分子スイッチを提供する。誘導プロモーターの例には、メタロチオニン(metallothionine)プロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、およびテトラサイクリンプロモーターが含まれるが、それに限定されるわけではない。
いくつかの態様では、適切なプロモーターを含有する遺伝子座または構築物または導入遺伝子は、誘導システムの誘導を経由して不可逆的にスイッチされる。不可逆スイッチの誘導に適したシステムは、当技術分野において周知であり、例えば、不可逆スイッチの誘導は、Cre-lox媒介組み換えを利用する場合がある(例えば、その開示が参照により本明細書に組み入れられる、Fuhrmann-Benzakein, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2000) 28:e99を参照されたい)。当技術分野において公知であるリコンビナーゼ、エンドヌクレアーゼ、リガーゼ、組換え部位などの任意の適切な組み合わせが、不可逆的にスイッチ可能なプロモーターを生成するために使用される場合がある。本明細書の他の箇所に記載される部位特異的組み換えを行うための方法、メカニズム、および要件が、不可逆的にスイッチされたプロモーターの生成に用いられ、当技術分野において周知である。例えば、その開示が、参照により本明細書に組み入れられる、Grindley et al. Annual Review of Biochemistry (2006) 567-605;およびTropp, Molecular Biology (2012) (Jones & Bartlett Publishers, Sudbury, Mass.)を参照されたい。
いくつかの態様では、本開示の核酸は、CAR誘導発現カセットをコードする核酸配列をさらに含む。一態様では、CAR誘導発現カセットは、CARシグナル伝達の際に放出されるトランスジェニックポリペプチド産物の産生のためである。例えば、Chmielewski and Abken, Expert Opin. Biol. Ther. (2015) 15(8): 1145-1154;およびAbken, Immunotherapy (2015) 7(5): 535-544を参照されたい。いくつかの態様では、本開示の核酸は、T細胞活性化応答プロモーターに機能的に連結されるサイトカインをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの態様では、T細胞活性化応答プロモーターに機能的に連結されるサイトカインは、別々の核酸配列上に存在する。一態様では、サイトカインはIL-12である。
本開示の核酸は、発現ベクターおよび/またはクローニングベクター内に存在し得る。発現ベクターは、選択マーカー、複製起点、ならびにベクターの複製および/または維持を提供する他の特徴を含むことができる。適切な発現ベクターには、例えば、プラスミド、ウイルスベクターなどが含まれる。多数の適切なベクターおよびプロモーターが、当業者に公知であり;対象の組換え構築物を生成するために多くが市販されている。以下のベクターが例として提供されるが、これらは、いかようにも限定として解釈されるべきではない:細菌:pBs、phagescript、PsiX174、pBluescript SK、pBs KS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene, La Jolla, Calif., USA);pTrc99A、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、およびpRIT5(Pharmacia, Uppsala, Sweden)。原核生物:pWLneo、pSV2cat、pOG44、PXR1、pSG(Stratagene)pSVK3、pBPV、pMSGおよびpSVL(Pharmacia)。
発現ベクターは、一般的に、プロモーター配列近くに位置する好都合な制限部位を有して、異種タンパク質をコードする核酸配列の挿入を提供する。発現宿主において作動する選択マーカーが存在する場合がある。適切な発現ベクターには、ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;アデノウイルス(例えば、Li et al., Invest. Opthalmol. Vis. Sci. (1994) 35: 2543-2549;Borras et al., Gene Ther. (1999) 6: 515-524;Li and Davidson, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1995) 92: 7700-7704;Sakamoto et al., H. Gene Ther. (1999) 5: 1088-1097;国際公開公報第94/12649号、同第93/03769号;同第93/19191号;同第94/28938号;同第95/11984号および同第95/00655号を参照されたい);アデノ随伴ウイルス(例えば、Ali et al., Hum. Gene Ther. (1998) 9: 81-86, Flannery et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1997) 94: 6916-6921;Bennett et al., Invest. Opthalmol. Vis. Sci. (1997) 38: 2857-2863;Jomary et al., Gene Ther. (1997) 4:683 690, Rolling et al., Hum. Gene Ther. (1999) 10: 641-648;Ali et al., Hum. Mol. Genet. (1996) 5: 591-594;国際公開公報第93/09239号におけるSrivastava、Samulski et al., J. Vir. (1989) 63: 3822-3828;Mendelson et al., Virol. (1988) 166: 154-165;およびFlotte et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90: 10613-10617を参照されたい);SV40;単純ヘルペスウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(例えば、Miyoshi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1997) 94: 10319-23;Takahashi et al., J. Virol. (1999) 73: 7812-7816を参照されたい)に基づくウイルスベクター;レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ならびにラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、および乳がんウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクター)などが含まれるが、それに限定されるわけではない。
使用に適した追加的な発現ベクターは、例えば、非限定的に、レンチウイルスベクター、ガンマレトロウイルスベクター、泡沫状ウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、操作ハイブリッドウイルスベクター、トランスポゾン媒介ベクターなどである。ウイルスベクター技法は、当技術分野において周知であり、例えば、Sambrook et al., 2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, volumes 1-4, Cold Spring Harbor Press, NY)ならびに他のウイルス学および分子生物学のマニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびレンチウイルスが含まれるが、それに限定されるわけではない。
一般に、適切なベクターは、少なくとも1つの生物において機能性の複製起点、プロモーター配列、好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位、および1つまたは複数の選択マーカーを含有する(例えば、国際公開公報第01/96584号;同第01/29058号;および米国特許第6,326,193号)。
いくつかの態様では、免疫細胞またはその前駆細胞(例えば、T細胞)中にCARを導入するために、発現ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)が使用される場合がある。したがって、本開示の発現ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、CARおよび治療ペプチドをコードする核酸を含む場合がある。いくつかの態様では、発現ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、その中にコードされるCARの機能的発現を助ける追加的なエレメントを含むであろう。いくつかの態様では、CARをコードする核酸を含む発現ベクターは、哺乳動物プロモーターをさらに含む。一態様では、ベクターは、伸長因子-1-アルファプロモーター(EF-1αプロモーター)をさらに含む。EF-1αプロモーターの使用は、下流の導入遺伝子(例えば、CARおよび治療ペプチドをコードする核酸配列)の発現における効率を上げる場合がある。生理的プロモーター(例えば、EF-1αプロモーター)は、組み込み媒介遺伝毒性を誘導する可能性が低い場合があり、レトロウイルスベクターが幹細胞を形質転換する能力を打ち消す場合がある。ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)における使用に適した他の生理的プロモーターは、当業者に公知であり、本開示のベクターに組み込まれる場合がある。いくつかの態様では、ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、力価および遺伝子発現を改善する場合がある、必須ではないシス作用配列をさらに含む。必須ではないシス作用配列の非限定的な一例は、効率的な逆転写および核内輸送に重要なセントラルポリプリントラクトおよびセントラルターミネーション配列(cPPT/CTS)である。他の必須ではないシス作用配列は、当業者に公知であり、本開示のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)に組み込まれる場合がある。いくつかの態様では、ベクターは、転写後調節エレメントをさらに含む。転写後調節エレメントは、RNAの翻訳を改善し、導入遺伝子の発現を改善し、RNA転写物を安定化する場合がある。転写後調節エレメントの一例は、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)である。したがって、いくつかの態様では、本開示のためのベクターは、WPRE配列をさらに含む。様々な転写後調節因子エレメントは、当業者に公知であり、本開示のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)に組み込まれる場合がある。本開示のベクターは、RNAの輸送のためのrev応答エレメント(RRE)、パッケージング配列、ならびに5'および3'長鎖末端反復配列(LTR)などの追加的なエレメントをさらに含む場合がある。「長鎖末端反復配列」または「LTR」という用語は、U3、RおよびU5領域を含むレトロウイルスDNAの末端に位置する塩基対のドメインを指す。LTRは、一般的にレトロウイルス遺伝子の発現(例えば、プロモーション、イニシエーションおよび遺伝子転写物のポリアデニル化)およびウイルス複製に必要な機能を提供する。一態様では、本開示のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、3' U3欠失LTRを含む。したがって、本開示のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、本明細書に記載されるエレメントの任意の組み合わせを含んで、導入遺伝子の機能的発現の効率を高める場合がある。例えば、本開示のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、CARおよび治療ペプチドをコードする核酸に加えてWPRE配列、cPPT配列、RRE配列、5'LTR、3' U3欠失LTR'を含む場合がある。
本開示のベクターは、自己不活化ベクターであり得る。本明細書に用いられる「自己不活化ベクター」という用語は、3' LTRエンハンサープロモーター領域(U3領域)が改変されている(例えば、欠失または置換により)、ベクターを指す。自己不活化ベクターは、ウイルス複製の第1ラウンドを超えたウイルス転写を防止し得る。結果として、自己不活化ベクターは、感染して、次いで宿主ゲノム(例えば、哺乳動物ゲノム)中に1回だけ組み込まれることができ得るが、さらに継代され得ない。したがって、自己不活化ベクターは、複製適格ウイルスを生み出すリスクを大きく低減し得る。
いくつかの態様では、本開示の核酸は、RNA、例えば、インビトロ合成されたRNAであり得る。RNAのインビトロ合成のための方法は、当業者に公知であり;任意の公知の方法を使用して、本開示のCARおよび治療ペプチドをコードする配列を含むRNAを合成することができる。宿主細胞内にRNAを導入するための方法は、当技術分野において公知である。例えば、Zhao et al. Cancer Res. (2010) 15: 9053を参照されたい。本開示のCARおよび治療ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むRNAを宿主細胞中に導入することは、インビトロまたはエクスビボまたはインビボで実施することができる。例えば、宿主細胞(例えば、NK細胞、細胞傷害性Tリンパ球など)に、本開示のCARおよび治療ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むRNAをインビトロまたはエクスビボでエレクトロポレーションすることができる。
ポリペプチドまたはその部分の発現を評価するために、細胞内に導入されるべき発現ベクターはまた、ウイルスベクターによりトランスフェクションまたは感染させようとする細胞集団から発現している細胞の特定および選択を容易にするために、選択マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子の一方または両方を含有する場合がある。いくつかの態様では、選択マーカーは、別々のDNA片上に保有され、共トランスフェクション手順に使用される場合がある。選択マーカーおよびレポーター遺伝子の両方は、宿主細胞における発現を可能にするために適切な調節配列に隣接する場合がある。有用な選択マーカーには抗生物質耐性遺伝子が含まれるが、それに限定されるわけではない。
トランスフェクションされた可能性のある細胞を特定するためおよび調節配列の機能性を評価するために、レポーター遺伝子が使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物または組織中に存在することもそれによって発現されることもない遺伝子であって、いくつかの容易に検出可能な特性、例えば、酵素活性によってその発現が明らかにされるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞内に導入された後の適切な時間に評価される。適切なレポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼをコードする遺伝子、または緑色蛍光タンパク質遺伝子が含まれる場合があるが、それに限定されるわけではない(例えば、Ui-Tei et al., 2000 FEBS Letters 479: 79-82)。
H. 処置の方法
本明細書に記載される操作された細胞(例えば、CARおよび治療ペプチドを含むT細胞)は、免疫療法のための組成物に含まれ得る。組成物は、薬学的組成物を含み得、薬学的に許容される担体をさらに含み得る。操作されたT細胞を含む薬学的組成物の治療有効量が投与され得る。
一局面では、本開示は、それを必要とする対象に本開示の操作T細胞を投与することを含む、養子細胞移入療法のための方法を提供する。別の局面では、本開示は、それを必要とする対象に操作T細胞の集団を投与することを含む、対象における疾患または病態を治療する方法を提供する。
養子細胞療法のための免疫細胞の投与のための方法は、当技術分野において公知であり、提供される方法および組成物と共に使用される場合がある。例えば、養子T細胞療法は、例えば、Gruenbergらの米国特許出願公開第2003/0170238号;Rosenbergの米国特許第4,690,915号;Rosenberg (2011) Nat Rev Clin Oncol. 8(10):577-85)に記載されている。例えば、Themeli et al. (2013) Nat Biotechnol. 31(10): 928-933;Tsukahara et al. (2013) Biochem Biophys Res Commun 438(1): 84-9;Davila et al. (2013) PLoS ONE 8(4): e61338を参照されたい。いくつかの態様では、細胞療法、例えば、養子T細胞療法は、細胞療法を受けることになる対象もしくはそのような対象に由来する試料から細胞が単離され、かつ/またはその他の方法で調製される、自己移入によって実施される。したがって、いくつかの局面では、細胞は、処置を必要とする対象、例えば、患者に由来し、細胞は、単離および処理の後に同じ対象に投与される。
いくつかの態様では、細胞療法、例えば、養子T細胞療法は、細胞が、細胞療法を受けることになる、または最終的に受ける対象、例えば、第1の対象以外の対象から単離され、かつ/またはその他の方法で調製される、同種移入によって実施される。そのような態様では、次いで細胞は、同じ種の異なる対象、例えば、第2の対象に投与される。いくつかの態様では、第1および第2の対象は、遺伝的に同一である。いくつかの態様では、第1および第2の対象は、遺伝的に類似である。いくつかの態様では、第2の対象は、第1の対象と同じHLAクラスまたは上位タイプを発現する。
いくつかの態様では、対象は、細胞または細胞を含有する組成物の投与前に疾患または状態、例えば、腫瘍を標的とする治療剤により処置されている。いくつかの局面では、対象は、他の治療剤に対して抗療性または非応答性である。いくつかの態様では、対象は、例えば、化学療法、放射線、および/または造血幹細胞移植(HSCT)、例えば、同種HSCTを含む別の治療的介入による処置の後に持続性疾患または再発性疾患を有する。いくつかの態様では、投与は、対象が別の治療法に抵抗性になったにもかかわらず、対象を効果的に処置する。
いくつかの態様では、対象は、他の治療剤に応答性であり、治療剤による処置は、疾病負荷を低減する。いくつかの局面では、対象は、最初は治療剤に応答性であるが、時間が経つにつれて疾患または状態の再発を示す。いくつかの態様では、対象は再発していない。いくつかのそのような態様では、対象は、再発の危険性がある、例えば再発の高い危険性があると決定され、したがって細胞は、例えば、再発の可能性を低減するまたは再発を防止するために、予防的に投与される。いくつかの局面では、対象は、別の治療剤による事前の処置を受けたことがない。
いくつかの態様では、対象は、例えば、化学療法、放射線、および/または造血幹細胞移植(HSCT)、例えば、同種HSCTを含む別の治療的介入による処置の後で、持続性疾患または再発性疾患を有する。いくつかの態様では、投与は、対象が別の治療法に抵抗性になったにもかかわらず、対象を効果的に処置する。
本開示の操作された細胞を、動物、好ましくは哺乳動物、なおより好ましくはヒトに投与して、がんを処置することができる。加えて、本開示の細胞は、疾患を処置または軽減することが望ましい場合に、がんに関係する任意の状態の処置、特に腫瘍細胞に対する細胞媒介免疫応答のために使用することができる。本開示の改変された細胞または薬学的組成物により処置されるべきがんの種類には、がん腫、芽腫、および肉腫、ならびにある特定の白血病またはリンパ系腫瘍、良性腫瘍および悪性腫瘍、ならびに悪性疾患、例えば、肉腫、がん腫、および黒色腫が含まれる。他の例示的ながんには、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、皮膚がん、膵臓がん、結腸直腸がん、腎臓がん、肝臓がん、脳がん、リンパ腫、白血病、肺がん、甲状腺がんなどが含まれるが、それに限定されるわけではない。がんは、非固形腫瘍(血液腫瘍など)または固形腫瘍であり得る。成人腫瘍/がんおよび小児腫瘍/がんもまた含まれる。一態様では、がんは固形腫瘍または血液学的腫瘍である。一態様では、がんは癌種である。一態様では、がんは肉腫である。一態様では、がんは白血病である。一態様では、がんは固形腫瘍である。
固形腫瘍は、通常、嚢胞または液体領域を含有しない組織の異常塊である。固形腫瘍は、良性または悪性であることができる。異なる種類の固形腫瘍が、それら(肉腫、がん腫、およびリンパ腫など)を形成する細胞の種類にちなんで名付けられる。肉腫およびがん腫などの固形腫瘍の例には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、および他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸がん、リンパ系腫瘍、膵臓がん、乳がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、肝細胞がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、甲状腺髄様がん、乳頭様甲状腺がん、褐色細胞腫、脂腺がん、乳頭状がん、乳頭状腺がん、髄様がん、気管支原性がん、腎細胞がん、肝細胞腫、胆管がん、絨毛がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、精上皮腫、膀胱がん、黒色腫、およびCNS腫瘍(神経膠腫(脳幹神経膠腫および混合性神経膠腫など)、神経膠芽腫(多形神経膠芽腫としても知られる)、星状細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫、シュワン細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫および脳転移など)が含まれる。
本明細書に開示される方法による治療の対象となるがん腫には、食道がん、肝細胞がん、基底細胞がん(皮膚がんの一形態)、扁平上皮がん(様々な組織)、移行上皮がん(膀胱の悪性新生物)を含む膀胱がん、気管支原性がん、結腸がん、結腸直腸がん、胃がん、肺がん、小細胞肺がんおよび非小細胞肺がんを含む肺がん、副腎皮質がん、甲状腺がん、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、腺がん、汗腺がん、脂腺がん、乳頭状がん、乳頭状腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、腎細胞がん、非浸潤性乳管がんまたは胆管がん、絨毛がん、精上皮腫、胎児性がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、子宮がん、精巣がん、骨原性がん、上皮がん、および上咽頭がんが含まれるが、それに限定されるわけではない。
本明細書に開示の方法による治療の対象となる肉腫には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、脊索腫、骨原性肉腫、骨肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、および他の軟組織肉腫が含まれるが、それに限定されるわけではない。
ある特定の例示的な態様では、本開示の改変された免疫細胞は、骨髄腫、または骨髄腫に関連する病態を処置するために使用される。骨髄腫またはそれに関連する病態の例は、非限定的に、軽鎖骨髄腫、非分泌性骨髄腫、意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)、形質細胞腫(例えば、孤立性形質細胞腫、多発性孤立性形質細胞腫、髄外性形質細胞腫)、アミロイドーシス、および多発性骨髄腫を含む。一態様では、本開示の方法は、多発性骨髄腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、難治性骨髄腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、再発性骨髄腫を処置するために使用される。
ある特定の例示的な態様では、本開示の改変された免疫細胞は、黒色腫、または黒色腫に関連する病態を処置するために使用される。黒色腫またはそれに関連する病態の例は、非限定的に、表在拡大型黒色腫、結節型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、肢端黒子型黒色腫、メラニン欠乏性黒色腫、または皮膚の黒色腫(例えば、皮膚黒色腫、眼黒色腫、外陰部黒色腫、膣黒色腫、直腸黒色腫)を含む。一態様では、本開示の方法は、皮膚黒色腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、難治性黒色腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、再発性黒色腫を処置するために使用される。
さらに他の例示的な態様では、本開示の改変された免疫細胞は、肉腫、または肉腫に関連する病態を処置するために使用される。肉腫またはそれに関連する病態の例は、非限定的に、血管肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、線維肉腫、消化管間質腫瘍、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍、骨肉腫、多形肉腫、横紋筋肉腫、および滑膜肉腫を含む。一態様では、本開示の方法は、滑膜肉腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、粘液状/円形細胞脂肪肉腫、分化型/脱分化型脂肪肉腫、および多形脂肪肉腫などの脂肪肉腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、粘液状/円形細胞脂肪肉腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、難治性肉腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、再発性肉腫を処置するために使用される。
投与されるべき本開示の細胞は、治療を受けている対象に対して自己であり得る。
本開示の細胞の投与は、当業者に公知の任意の好都合な方法で実施される場合がある。本開示の細胞は、エアロゾル吸入、注射、経口摂取、輸注、埋め込みまたは移植により対象に投与される場合がある。本明細書に記載される組成物は、患者に経動脈的、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髄内、筋肉内に、静脈内(i.v.)注射により、または腹腔内に投与される場合がある。他の例では、本開示の細胞は、対象における炎症部位、対象における局所疾患部位、リンパ節、器官、腫瘍などに直接注射される。
いくつかの態様では、細胞は、所望の投薬量で投与され、投薬量は、いくつかの局面では、細胞もしくは細胞型の所望の用量もしくは数および/または細胞型の所望の比を含む。したがって、細胞の投薬量は、いくつかの態様では細胞の合計数(またはkg体重あたりの数)およびCD4+対CD8+の比のように個別の集団またはサブタイプの所望の比に基づく。いくつかの態様では、細胞の投薬量は、個別の集団における、または個別の細胞型の細胞の所望の合計数(またはkg体重あたりの数)に基づく。いくつかの態様では、投薬量は、所望の総細胞数、所望の比、および個別の集団中の所望の細胞合計数などの、そのような特徴の組み合わせに基づく。
いくつかの態様では、CD8+ T細胞およびCD4+ T細胞などの細胞の集団またはサブタイプは、所望の用量の総細胞、例えば所望の用量のT細胞の許容される差異でまたは差異内で投与される。いくつかの局面では、所望の用量は、所望の細胞数、または細胞が投与される対象の単位体重あたりの所望の細胞数、例えば、個/kgである。いくつかの局面では、所望の用量は、最小細胞数または単位体重あたりの最小細胞数である、またはそれを超える。いくつかの局面では、所望の用量で投与される総細胞の中で、個別の集団またはサブタイプは、所望のアウトプット比(CD4+対CD8+の比など)でまたはそれ近くで、例えば、そのような比のある特定の許容される差異または誤差内で存在する。
いくつかの態様では、細胞は、細胞の個別の集団またはサブタイプのうち1つまたは複数の所望の用量、例えば、CD4+細胞の所望の用量および/またはCD8+細胞の所望の用量の許容される差異でまたは差異内で投与される。いくつかの局面では、所望の用量は、サブタイプもしくは集団の所望の細胞数、または細胞が投与される対象の単位体重あたりのそのような細胞の所望の数、例えば、個/kgである。いくつかの局面では、所望の用量は、集団もしくはサブタイプの最小細胞数、または単位体重あたりの集団もしくはサブタイプの最小細胞数である、またはそれを超える。したがって、いくつかの態様では、投薬量は、総細胞の所望の固定用量および所望の比に基づき、かつ/または個別のサブタイプもしくは部分集団の1つもしくは複数、例えば、それぞれの所望の固定用量に基づく。したがって、いくつかの態様では、投薬量は、T細胞の所望の固定用量もしくは最小用量およびCD4+細胞対CD8+細胞の所望の比に基づき、かつ/またはCD4+細胞および/もしくはCD8+細胞の所望の固定用量もしくは最小用量に基づく。
ある特定の態様では、細胞、または細胞のサブタイプの個別の集団は、約100万~約1000億個の細胞の範囲で、例えば、100万~約500億個の細胞(例えば、約500万個の細胞、約2500万個の細胞、約5億個の細胞、約10億個の細胞、約50億個の細胞、約200億個の細胞、約300億個の細胞、約400億個の細胞、または前記値の任意の2つにより定義される範囲)、例えば約1000万~約1000億個の細胞(例えば、約2000万個の細胞、約3000万個の細胞、約4000万個の細胞、約6000万個の細胞、約7000万個の細胞、約8000万個の細胞、約9000万個の細胞、約100億個の細胞、約250億個の細胞、約500億個の細胞、約750億個の細胞、約900億個の細胞、または前記値の任意の2つにより定義される範囲)で、場合によっては約1億個の細胞~約500億個の細胞(例えば、約1億2000万個の細胞、約2億5000万個の細胞、約3億5000万個の細胞、約4億5000万個の細胞、約6億5000万個の細胞、約8億個の細胞、約9億個の細胞、約30億個の細胞、約300億個の細胞、約450億個の細胞)またはこれらの範囲の間の任意の値で対象に投与される。
いくつかの態様では、総細胞の用量および/または細胞の個別の部分集団の用量は、細胞1×105個または約1×105個/kg~約1×1011個/kg、細胞104個~1011個または約1011個/キログラム(kg)体重、例えば、細胞105~106個/kg体重の範囲内であり、例えば、細胞1×105個または約1×105個/kg、細胞1.5×105個/kg、細胞2×105個/kg、または細胞1×106個/kg体重である。例えば、いくつかの態様では、細胞は、T細胞104個または約104個~109個または約109個/キログラム(kg)体重、例えば、T細胞105個~106個/kg体重で、またはその誤差のある特定の範囲内で、例えば、T細胞1×105個もしくは約1×105個/kg、T細胞1.5×105個/kg、T細胞2×105個/kg、またはT細胞1×106個/kg体重で投与される。他の例示的な態様では、本開示の方法に使用するために適した、改変された細胞の投薬量範囲は、細胞約1×105個/kg~細胞約1×106個/kg、細胞約1×106個/kg~細胞約1×107個/kg、細胞約1×107個/kg~細胞約1×108個/kg、細胞約1×108個/kg~細胞約1×109個/kg、細胞約1×109個/kg~細胞約1×1010個/kg、細胞約1×1010個/kg~細胞約1×1011個/kgを含むが、それに限定されるわけではない。例示的な態様では、本開示の方法に使用するために適した投薬量は、細胞約1×108個/kgである。例示的な態様では、本開示の方法に使用するために適した投薬量は、細胞約1×107個/kgである。他の態様では、適切な投薬量は、総細胞約1×107個~総細胞約5×107個である。いくつかの態様では、適切な投薬量は、総細胞約1×108個~総細胞約5×108個である。いくつかの態様では、適切な投薬量は、総細胞約1.4×107個~総細胞約1.1×109個である。例示的な態様では、本開示の方法に使用するために適した投薬量は、総細胞約7×109個である。
いくつかの態様では、細胞は、104または約104~109または約109個/キログラム(kg)体重のCD4+および/またはCD8+細胞、例えば、105~106個/kg体重のCD4+および/またはCD8+細胞で、またはその誤差のある特定の範囲内で、例えば、1×105もしくは約1×105個/kgのCD4+および/もしくはCD8+細胞、1.5×105個/kgのCD4+および/もしくはCD8+細胞、2×105個/kgのCD4+および/もしくはCD8+細胞、または1×106個/kg体重のCD4+および/もしくはCD8+細胞で投与される。いくつかの態様では、細胞は、約1×106個、約2.5×106個、約5×106個、約7.5×106個、もしくは約9×106個を超える、もしくは少なくとも約1×106個、約2.5×106個、約5×106個、約7.5×106個、もしくは約9×106個のCD4+細胞、および/または少なくとも約1×106個、約2.5×106個、約5×106個、約7.5×106個、もしくは約9×106個のCD8+細胞、および/または少なくとも約1×106個、約2.5×106個、約5×106個、約7.5×106個、もしくは約9×106個のT細胞で、またはその誤差のある特定の範囲内で投与される。いくつかの態様では、細胞は、約108個~1012個もしくは約1010個~1011個のT細胞、約108個~1012個もしくは約1010個~1011個のCD4+細胞、および/または約108個~1012個もしくは約1010個~1011個のCD8+細胞で、またはその誤差のある特定の範囲内で投与される。
いくつかの態様では、細胞は、CD4+およびCD8+細胞またはサブタイプなどの、複数の細胞集団またはサブタイプの所望のアウトプット比で、またはその耐容される範囲内で投与される。いくつかの局面では、所望の比は、特定の比であることができる、または比の範囲であることができ、例えば、いくつかの態様では、所望の比(例えば、CD4+細胞対CD8+細胞の比)は、5:1もしくは約5:1~5:1もしくは約5:1(または約1:5よりも大きく、約5:1よりも小さい)、または1:3もしくは約1:3~3:1もしくは約3:1(または約1:3よりも大きく、約3:1よりも小さい)、例えば、2:1もしくは約2:1~1:5もしくは約1:5(または約1:5よりも大きく、約2:1よりも小さい、例えば、5:1、4.5:1、4:1、3.5:1、3:1、2.5:1、2:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、もしくは1:5、または約5:1、約4.5:1、約4:1、約3.5:1、約3:1、約2.5:1、約2:1、約1.9:1、約1.8:1、約1.7:1、約1.6:1、約1.5:1、約1.4:1、約1.3:1、約1.2:1、約1.1:1、約1:1、約1:1.1、約1:1.2、約1:1.3、約1:1.4、約1:1.5、約1:1.6、約1:1.7、約1:1.8、約1:1.9、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、約1:4.5、もしくは約1:5である。いくつかの局面では、耐容される差は、所望の比の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%以内であり、これらの範囲の間の任意の値を含む。
いくつかの態様では、改変された細胞の用量は、それを必要とする対象に単回用量または複数回用量で投与される。いくつかの態様では、改変された細胞の用量は、複数回用量で、例えば、週1回または7日毎、2週1回または14日毎、3週1回または21日毎、4週1回または28日毎に投与される。例示的な態様では、改変された細胞の単回用量が、それを必要とする対象に投与される。例示的な態様では、改変された細胞の単回用量は、急速静脈内注入によりそれを必要とする対象に投与される。
疾患の予防または治療に適した投薬量は、処置されるべき疾患の種類、細胞もしくは組換え受容体の種類、疾患の重症度および経過、細胞が予防目的それとも治療目的で投与されるか、事前の療法、対象の臨床歴および細胞に対する応答、ならびに担当医師の判断に依存する場合がある。組成物および細胞は、いくつかの態様では、対象に1回でまたは一連の処置にわたり適宜投与される。
いくつかの態様では、細胞は、組み合わせ処置の部分として、例えば、別の治療的介入、例えば、抗体または操作された細胞または受容体または作用物質、例えば細胞傷害剤もしくは治療剤と同時にまたは任意の順序で順次に投与される。細胞は、いくつかの態様では、1つまたは複数の追加的な治療剤と共に、または別の治療的介入に関連して、同時にまたは任意の順序で順次に共投与される。いくつかの状況では、細胞は、細胞集団が1つまたは複数の追加的な治療剤の効果を高めるように十分に近い時間で別の療法と共に、またはその逆で共投与される。いくつかの態様では、細胞は、1つまたは複数の追加的な治療剤の前に投与される。いくつかの態様では、細胞は、1つまたは複数の追加的な治療剤の後に投与される。いくつかの態様では、1つまたは複数の追加的な作用物質は、例えば持続性を高めるための、IL-2などのサイトカインを含む。いくつかの態様では、この方法は、化学療法剤の投与を含む。
ある特定の態様では、本開示の操作された細胞(例えば、CARおよび治療ペプチドを含む改変された細胞)は、免疫チェックポイント抗体と組み合わせて対象に投与され得る。(例えば、抗PD1抗体、抗CTLA-4抗体、または抗PDL1抗体)。例えば、改変された細胞は、例えば、PD-1(プログラム死1タンパク質)を標的とする抗体または抗体フラグメントと組み合わせて投与され得る。抗PD-1抗体の例は、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標)、以前はランブロリズマブ、MK-3475としても知られている)、およびニボルマブ(BMS-936558、MDX-1106、ONO-4538、OPDIVA(登録商標))またはその抗原結合フラグメントを含むが、それらに限定されない。ある特定の態様では、改変された細胞は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントと組み合わせて投与され得る。抗PD-L1抗体の例は、BMS-936559、MPDL3280A(TECENTRIQ(登録商標)、アテゾリズマブ)、およびMEDI4736(デュルバルマブ、イミフィンジ)を含むが、それらに限定されない。ある特定の態様では、改変された細胞は、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合フラグメントと組み合わせて投与され得る。抗CTLA-4抗体の例は、イピリムマブ(商標名Yervoy)を含むが、それに限定されない。低分子、siRNA、miRNAおよびCRISPR系を非限定的に含む他のタイプの免疫チェックポイントモジュレーターを使用してもよい。免疫チェックポイントモジュレーターは、CARおよび治療ペプチドを含む改変された細胞の前に、その後に、またはそれと同時に投与され得る。ある特定の態様では、免疫チェックポイントモジュレーターを含む併用処置は、本開示の改変された細胞を含む療法の治療有効性を高め得る。
細胞の投与に続いて、いくつかの態様では、操作された細胞集団の生物学的活性が、例えば、多数の公知の方法のいずれかによって測定される。評価するためのパラメーターは、例えば画像化によるインビボ、または例えばELISAもしくはフローサイトメトリーによるエクスビボの、抗原への操作されたまたは天然のT細胞または他の免疫細胞の特異的結合を含む。ある特定の態様では、操作された細胞の標的細胞を破壊する能力を、例えば、Kochenderfer et al., J. Immunotherapy, 32(7): 689-702 (2009)、およびHerman et al. J. Immunological Methods, 285(1): 25-40 (2004)に記載されている細胞傷害アッセイなどの当技術分野において公知の任意の適切な方法を使用して測定することができる。ある特定の態様では、細胞の生物学的活性は、CD 107a、IFNγ、IL-2およびTNFなどの1つまたは複数のサイトカインの発現および/または分泌をアッセイすることによって測定される。いくつかの局面では、生物学的活性は、全身腫瘍組織量または腫瘍負荷量の減少などの臨床結果を評価することによって測定される。
ある特定の態様では、対象に二次的処置が提供される。二次的処置は、化学療法、放射線照射、外科手術および薬物治療を含むが、それらに限定されない。
いくつかの態様では、CAR T細胞療法の前に、対象に条件づけ療法を投与することができる。いくつかの態様では、条件づけ療法は、シクロホスファミドの有効量を対象に投与することを含む。いくつかの態様では、条件づけ療法は、フルダラビンの有効量を対象に投与することを含む。好ましい態様では、条件づけ療法は、シクロホスファミドとフルダラビンの組み合わせの有効量を対象に投与することを含む。CAR T細胞療法の前の条件づけ療法の投与は、CAR T細胞療法の有効性を高め得る。T細胞療法のための患者を条件づける方法は、米国特許第9,855,298号に記載されており、それは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
いくつかの態様では、本開示の特定の投薬レジメンは、改変されたT細胞の投与前にリンパ球枯渇工程を含む。例示的な態様では、リンパ球枯渇工程は、シクロホスファミドおよび/またはフルダラビンの投与を含む。
いくつかの態様では、リンパ球枯渇工程は、約200mg/m2/日~約2000mg/m2/日(例えば、200mg/m2/日、300mg/m2/日または500mg/m2/日)の用量のシクロホスファミドの投与を含む。例示的な態様では、シクロホスファミドの用量は、約300mg/m2/日である。いくつかの態様では、リンパ球枯渇工程は、約20mg/m2/日~約900mg/m2/日(例えば、20mg/m2/日、25mg/m2/日、30mg/m2/日または60mg/m2/日)の用量のフルダラビンの投与を含む。例示的な態様では、フルダラビンの用量は、約30mg/m2/日である。
一部の態様では、リンパ球枯渇工程は、約200mg/m2/日~約2000mg/m2/日(例えば、200mg/m2/日、300mg/m2/日または500mg/m2/日)の用量のシクロホスファミドおよび約20mg/m2/日~約900mg/m2/日(例えば、20mg/m2/日、25mg/m2/日、30mg/m2/日または60mg/m2/日)の用量のフルダラビンの投与を含む。例示的な態様では、リンパ球枯渇工程は、約300mg/m2/日の用量のシクロホスファミドおよび約30mg/m2/日の用量のフルダラビンの投与を含む。
例示的な態様では、シクロホスファミドの投薬は、3日間にわたる300mg/m2/日であり、フルダラビンの投薬は、3日間にわたる30mg/m2/日である。
リンパ球枯渇化学療法の投薬は、0日目のT細胞(例えば、CAR-T、TCR-T、改変されたT細胞など)注入に対して、-6日目~-4日目(-1日枠あり、すなわち、-7日目~-5日目に投薬)で計画され得る。
例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、改変されたT細胞の投与の3日前に静脈内注入によって300mg/m2のシクロホスファミドを含むリンパ球枯渇化学療法を受ける。例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、改変されたT細胞の投与前の3日間静脈内注入によって300mg/m2のシクロホスファミドを含むリンパ球枯渇化学療法を受ける。
例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、約20mg/m2/日~約900mg/m2/日(例えば、20mg/m2/日、25mg/m2/日、30mg/m2/日または60mg/m2/日)の用量のフルダラビンを含むリンパ球枯渇化学療法を受ける。例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、30mg/m2の用量のフルダラビンを含むリンパ球枯渇化学療法を3日間受ける。
例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、約200mg/m2/日~約2000mg/m2/日(例えば、200mg/m2/日、300mg/m2/日または500mg/m2/日)の用量のシクロホスファミドおよび約20mg/m2/日~約900mg/m2/日(例えば、20mg/m2/日、25mg/m2/日、30mg/m2/日または60mg/m2/日)の用量のフルダラビンを含むリンパ球枯渇化学療法を受ける。例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、約300mg/m2/日の用量のシクロホスファミドおよび30mg/m2の用量のフルダラビンを含むリンパ球枯渇化学療法を3日間受ける。
本開示の細胞は、適切な前臨床および臨床の実験および試験で決定されるべき投与量および経路かつ回数で投与することができる。細胞組成物は、これらの範囲内の投与量で複数回投与され得る。本開示の細胞の投与は、当業者によって決定されるような所望の疾患または病態を処置するのに有用な他の方法と併用してもよい。
CAR T細胞の注入後の有害作用の1つが、サイトカイン放出症候群(CRS)として知られている免疫活性化の開始であることが当技術分野において公知である。CRSは、上昇した炎症性サイトカインを招く免疫活性化である。CRSは、公知のオンターゲット毒性であり、その発生は、有効性と相関する可能性が高い。臨床尺度および検査尺度は、軽度のCRS(全身症状および/またはグレード2の臓器毒性)~重度のCRS(sCRS;グレード≧3の臓器毒性、積極的な臨床介入および/または潜在的に生死にかかわる)の範囲である。臨床特徴は、高熱、倦怠感、疲労、筋肉痛、悪心、食欲不振、頻脈/低血圧、毛細血管漏出、心機能不全、腎機能障害、肝不全、および播種性血管内凝固を含む。インターフェロン-ガンマ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、IL-10およびIL-6を含むサイトカインの劇的な上昇が、CAR T細胞注入後に示されている。1つのCRSの徴候は、IL-6(重度上昇)、IFN-ガンマ、TNF-アルファ(中度)およびIL-2(軽度)を含むサイトカインの上昇である。また、フェリチンおよびC反応性タンパク質(CRP)を含む炎症の臨床利用可能なマーカーの上昇も、CRS症候群と相関することが観察されている。CRSの存在は、一般的に、養子移入された細胞の増大および進行性免疫活性化と相関する。高い腫瘍量を有する患者は、より大きいsCRSを経験するので、CRSの重症度は注入時の疾病負荷により決まることが実証されている。
したがって、本開示は、CRSの診断後に、操作された細胞(例えば、CAR T細胞)の抗腫瘍有効性を弱めずに、制御されない炎症の生理的症状を緩和するために適したCRS管理戦略を提供する。CRS管理戦略は、当技術分野において公知である。例えば、全身コルチコステロイドは、最初の抗腫瘍応答を損なわずに、sCRS(例えば、グレード3のCRS)の症状を急速に後退させるために投与される場合がある。
いくつかの態様では、抗IL-6R抗体が投与される場合がある。抗IL-6R抗体の例は、米国食品医薬品局に承認された、アトリズマブとしても知られるモノクローナル抗体トシリズマブである(ActemraまたはRoActemraとして市販されている)。トシリズマブは、インターロイキン-6受容体(IL-6R)に対するヒト化モノクローナル抗体である。トシリズマブの投与は、CRSのほぼ即時の後退を実証した。
CRSは、一般的に、観察される症候群の重症度に基づき管理され、介入はそのように個別化される。CRSの管理の決定は、単に臨床検査値だけではなく、臨床徴候および症状ならびに介入に対する応答に基づき得る。
軽症例~中等症例は、一般的に、症状の十分な緩和のために必要に応じて輸液療法、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)および抗ヒスタミン薬を用いた症状管理で処置される。より重症の例は、任意の程度の血行動態不安定を有する患者を含み;任意の血行動態不安定では、トシリズマブの投与が推奨される。CRSの第一選択管理は、いくつかの実施形態では、表示用量8mg/kg(800mg/回を超えない)の60分間にわたるIVのトシリズマブであり得;トシリズマブは反復Q8時間であることができる。トシリズマブの初回用量に対する応答が最適以下である場合、トシリズマブの追加的な用量が考慮される場合がある。トシリズマブは、単独で、またはコルチコステロイド療法と組み合わせて投与することができる。トシリズマブに対して12~18時間で不十分な臨床改善または応答不良の、継続性または進行性のCRS症状を有する患者は、高用量コルチコステロイド療法、一般的にヒドロコルチゾン100mg IVまたはメチルプレドニゾロン1~2mg/kgで処置される場合がある。より重症の血行動態不安定またはより重症の呼吸器症状を有する患者では、患者は、CRSのクールの初期に高用量コルチコステロイド療法が投与される場合がある。CRS管理のガイダンスは、公表された基準に基づき得る(Lee et al. (2019) Biol Blood Marrow Transplant, doi.org/10.1016/j.bbmt.2018.12.758; Neelapu et al. (2018) Nat Rev Clin Oncology, 15:47; Teachey et al. (2016) Cancer Discov, 6(6):664-679)。
CRSの臨床徴候と同時発生的に、マクロファージ活性化症候群(MAS)または血球貪食性リンパ組織球症(HLH)に一致する特徴が、CAR-T療法で処置された患者で観察されている(Henter, 2007)。MASは、CRSから起こる免疫活性化に対する反応のように見え、したがって、CRSの徴候とみなすべきである。MASは、HLH(同じく免疫刺激に対する反応)と類似している。MASの臨床的症候群は、高グレードの非弛張性の発熱、3系統のうち少なくとも2つを冒す血球減少、および肝脾腫によって特徴付けられる。これは、高い血清フェリチン、可溶性インターロイキン-2受容体、およびトリグリセリド、ならびに循環ナチュラルキラー(NK)活性の減少に関連する。
よって、本明細書に記載されるような治療の方法において使用される場合の本開示のCARおよび治療用ペプチドを含む操作された細胞は、操作された細胞のその機能を発揮する能力を増強する。したがって、本開示は、本明細書に記載されるような治療の方法において使用するための操作された細胞(例えば、免疫細胞)の機能を増強するための方法を提供する。
一局面では、本開示は、それを必要とする対象におけるがんを治療する方法であって、本明細書に開示される操作された細胞のいずれか1つを対象に投与することを含む、方法を提供する。本開示のさらに別の局面は、それを必要とする対象におけるがんを治療する方法であって、本明細書に開示される方法のいずれか1つによって生成された操作された細胞を対象に投与することを含む、方法を提供する。
別の局面は、対象における疾患または障害を治療するための方法であって、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変されたT細胞の有効量を対象に投与することを含む、方法を含む。CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む。該方法は、非天然型治療用ペプチドを介した、がんに対する内因性免疫応答の刺激をさらに含む。非天然型治療用ペプチドは、改変されたT細胞において発現される、および/または、改変されたT細胞と併用して投与される。非天然型治療用ペプチドは、以下の特性:(i)治療用ペプチドは、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)経路の活性化因子である、(ii)治療用ペプチドは、環状ジヌクレオチドの模倣体である、(iii)治療用ペプチドは、短鎖脂肪酸(SCFA)の模倣体である、(iv)治療用ペプチドは、パターン認識受容体(PRR)のアゴニストである、(v)治療用ペプチドは、ステロイド/ホルモン様分子の模倣体である、(vi)治療用ペプチドは、標的細胞のアポトーシスを促進する、(vii)治療用ペプチドは、免疫原性エピトープである、および/または(viii)治療用ペプチドは、標的細胞における1つまたは複数のDNA修復機構を遮断する、の1つまたは複数を有する。
ある特定の態様では、治療用ペプチドは、cGAMP、cAMP、またはcGMPの模倣体である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、TLRアゴニストの模倣体である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、フラジェリン、CpGモチーフ、ペプチドグリカン、リポ多糖(LPS)、またはモノホスホリルリピドA(MPL)の模倣体である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、第2のミトコンドリア由来カスパーゼ活性化因子(SMAC)模倣体である。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の阻害剤である。ある特定の態様では、非天然型ペプチドは、任意の天然に存在するペプチドに対して80%以下の配列同一性を有するペプチドである。ある特定の態様では、該ペプチドは、SEQ ID NO:1~16からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
ある特定の態様では、治療用ペプチドは、免疫原性エピトープであり、対象への投与後に、免疫原性エピトープが、対象のがん細胞の表面に発現される。ある特定の態様では、治療用ペプチドが、改変されたT細胞において発現され、対象への改変されたT細胞の投与に続いて、治療用ペプチドが、改変されたT細胞から1つまたは複数の細胞外小胞中に排出される。ある特定の態様では、治療用ペプチドは、1つまたは複数の細胞外小胞を介して、対象の1つまたは複数の抗原提示細胞に送達される。
また、本明細書において、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変されたT細胞の抗がん活性を増強するための方法であって、CARが、腫瘍細胞上に発現される抗原に特異的に結合する抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む、方法も提供される。該方法は、T細胞において非天然型治療用ペプチドを共発現させることを含む。非天然型治療用ペプチドは、以下の特性:(i)治療用ペプチドは、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)経路の活性化因子である、(ii)治療用ペプチドは、環状ジヌクレオチドの模倣体である、(iii)治療用ペプチドは、短鎖脂肪酸(SCFA)の模倣体である、(iv)治療用ペプチドは、パターン認識受容体(PRR)のアゴニストである、(v)治療用ペプチドは、ステロイド/ホルモン様分子の模倣体である、(vi)治療用ペプチドは、標的細胞のアポトーシスを促進する、(vii)治療用ペプチドは、免疫原性エピトープである、および/または(viii)治療用ペプチドは、標的細胞における1つまたは複数のDNA修復機構を遮断する、の1つまたは複数を有する。
また、本明細書において、対象における炎症性疾患、自己免疫疾患、またはがんを治療するための方法であって、本明細書において想定される操作された細胞または組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む、方法も提供される。
I. 操作された細胞を産生する方法
腫瘍免疫療法、例えば、養子免疫療法のための、本開示の操作された細胞(例えば、免疫細胞またはその前駆体;例えば、T細胞)を産生または生成するための方法が本明細書に提供される。細胞は、一般的に、CARおよび治療用ペプチドをコードする1つまたは複数の核酸を細胞に導入することによって操作される。
また、細胞においてCARおよび治療用ペプチドを共発現させるための方法も提供される。該方法は、CARおよび治療用ペプチドが発現されるような条件下で、本明細書において想定される発現ベクターのいずれかを細胞に送達することを含む。
いくつかの態様では、CARおよび治療ペプチドは、発現ベクターによって細胞に導入される。本開示のCARおよび治療ペプチドをコードする核酸配列を含む発現ベクターは、本明細書に提供される。適切な発現ベクターは、レンチウイルスベクター、ガンマレトロウイルスベクター、泡沫状ウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、操作ハイブリッドウイルス、トランスポゾン媒介ベクターを非限定的に含むネイキッドDNA、例えばSleeping Beauty、PiggybakおよびPhi31などのインテグラーゼを含む。いくつかの他の適切な発現ベクターは、単純ヘルペスウイルス(HSV)およびレトロウイルス発現ベクターを含む。
ある特定の態様では、CARをコードする核酸は、ウイルス形質導入を介して細胞に導入される。ある特定の態様では、ウイルス形質導入は、免疫細胞または前駆細胞を、CARをコードする核酸を含むウイルスベクターと接触させる工程を含む。ある特定の態様では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。ある特定の態様では、AAVベクターは、5'ITRおよび3'ITRを含む。ある特定の態様では、AAVベクターは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を含む。ある特定の態様では、AAVベクターは、ポリアデニル化(ポリA)配列を含む。ある特定の態様では、ポリA配列は、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリA配列である。
アデノウイルス発現ベクターは、アデノウイルスに基づき、ゲノムDNA内への組み込みについて低い容量を有するが、宿主細胞へのトランスフェクションについて高い効率を有する。アデノウイルス発現ベクターは、(a)発現ベクターのパッケージングを支援するために、かつ(b)宿主細胞においてCARを最終的に発現させるために十分なアデノウイルス配列を含有する。いくつかの態様では、アデノウイルスゲノムは、36kbの直鎖状二本鎖DNAであり、本開示の発現ベクターを作製するために、そこに外来DNA配列(例えば、CARをコードする核酸)を挿入して、アデノウイルスDNAの大型片と置換してもよい(例えば、Danthinne and Imperiale, Gene Therapy (2000) 7(20): 1707-1714を参照のこと)。
別の発現ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づき、アデノウイルス共役系を利用する。このAAV発現ベクターは、宿主ゲノム内への高い組み込み頻度を有する。このベクターは、非分裂細胞に感染することができ、したがって、例えば組織培養またはインビボで哺乳動物細胞中に遺伝子を送達するのに役立つ。AAVベクターは、感染度について広い宿主範囲を有する。AAVベクターの生成および使用に関する詳細は、米国特許第5,139,941号および第4,797,368号に記載されている。
レトロウイルス発現ベクターは、宿主ゲノム内への組み込み、大量の外来遺伝物質の送達、広域の種および細胞型への感染、ならびに特別な細胞株へのパッケージングが可能である。レトロウイルスベクターは、核酸(例えば、CARおよび治療ペプチドをコードする核酸)をウイルスゲノム内のある特定の位置に挿入して、複製欠損のウイルスを産生することによって構築される。レトロウイルスベクターは、多種多様な細胞型に感染することができるが、CARおよび治療ペプチドの組み込みおよび安定な発現は、宿主細胞の分裂を必要とする。
レンチウイルスベクターは、レンチウイルスに由来し、一般的なレトロウイルス遺伝子gag、polおよびenvに加えて調節機能または構造的機能を有する他の遺伝子を含有する、複合レトロウイルスである(例えば、米国特許第6,013,516号および第5,994,136号を参照のこと)。レンチウイルスのいくつかの例は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1、HIV-2)およびサル免疫不全ウイルス(SIV)を含む。レンチウイルスベクターは、HIV病原性遺伝子を多重減弱化することによって生成されており、例えば、遺伝子env、vif、vpr、vpuおよびnefが欠失されて、ベクターが生物学的に安全になる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染可能であり、例えばCARおよび治療ペプチドをコードする核酸の、インビボおよびエクスビボの両方の遺伝子移入および発現に使用することができる(例えば、米国特許第5,994,136号を参照のこと)。
本開示の核酸を含む発現ベクターは、当業者に公知の任意の手段によって宿主細胞内に導入することができる。発現ベクターは、所望であればトランスフェクションのためのウイルス配列を含み得る。あるいは、発現ベクターは、融合、エレクトロポレーション、バイオリスティクス、トランスフェクション、リポフェクションなどによって導入され得る。宿主細胞は、発現ベクターの導入前に培養で成長および増大され、続いてベクターの導入および組み込みに適した処理が行われ得る。次いで、宿主細胞が増大され、ベクター中に存在するマーカーによりスクリーニングされ得る。使用され得る様々なマーカーが当技術分野において公知であり、hprt、ネオマイシン耐性、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシン耐性などを含み得る。本明細書において使用される場合、「細胞」、「細胞株」および「細胞培養」という用語は、互換的に使用され得る。いくつかの態様では、宿主細胞は、免疫細胞またはその前駆体、例えば、T細胞、NK細胞、またはNKT細胞である。
本開示はまた、本開示のCARを含みかつそれを安定的に発現する、遺伝子操作された細胞も提供する。いくつかの態様では、遺伝子操作された細胞は、治療的に関連する子孫を生じさせることが可能な遺伝子操作された、Tリンパ球(T細胞)、ナイーブT細胞(TN)、メモリーT細胞(例えば、中枢性メモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリー細胞(TEM))、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、およびマクロファージである。ある特定の態様では、遺伝子操作された細胞は、自家細胞である。ある特定の態様では、改変された細胞は、T細胞消耗に抵抗性である。ある特定の態様では、改変された細胞は、T細胞機能障害に抵抗性である。
改変された細胞(例えば、CARを含む)は、本開示の核酸を含む発現ベクターを宿主細胞に安定的にトランスフェクションすることによって産生され得る。本開示の改変された細胞を生成するための追加の方法は、非限定的に、化学的形質転換法(例えば、リン酸カルシウム、デンドリマー、リポソームおよび/または陽イオン性ポリマーを使用する)、非化学的形質転換法(例えば、エレクトロポレーション、光形質転換、遺伝子電気移入および/または流体力学的送達)および/または粒子に基づく方法(例えば、遺伝子銃を使用するインペールフェクションおよび/またはマグネトフェクション)を含む。本開示のCARおよび治療ペプチドを発現するトランスフェクションされた細胞は、エクスビボで増大され得る。
宿主細胞中に発現ベクターを導入するための物理的方法は、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどを含む。ベクターおよび/または外因性核酸を含む細胞を産生するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、Sambrook et al. (2001), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New Yorkを参照されたい。宿主細胞中に発現ベクターを導入するための化学的方法は、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズなどのコロイド分散系、ならびに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを含む脂質ベース系を含む。
使用に適した脂質は、商業的供給源から入手することができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma, St. Louis, MOから入手することができ;リン酸ジセチル(「DCP」)は、K & K Laboratories(Plainview, NY)から入手することができ;コレステロール(「Choi」)は、Calbiochem-Behringから入手することができ;ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)および他の脂質は、Avanti Polar Lipids, Inc.(Birmingham, AL)から入手してもよい。脂質のクロロホルムまたはクロロホルム/メタノール溶液の原液は、約-20℃で貯蔵することができる。クロロホルムは、メタノールよりも容易に蒸発するので唯一の溶媒として使用され得る。「リポソーム」は、封入された脂質二重層または凝集体の生成によって形成される多様な単一および多重膜脂質ビヒクルを包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜および内部水性媒体を有する小胞構造を有すると特徴付けることができる。多重膜リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。それらは、リン脂質を過剰の水溶液中に懸濁させると自然に形成される。閉鎖構造の形成前に、脂質成分は自己再構成を受け、脂質二重層の間に水および溶解した溶質を閉じ込める(Ghosh et al., 1991 Glycobiology 5: 505-10)。また、溶液状態で通常の小胞構造と異なる構造を有する組成物も包含される。例えば、脂質は、ミセル構造をとるか、または単に脂質分子の非均一凝集体として存在し得る。また、リポフェクタミン-核酸複合体も想定される。
外因性核酸を宿主細胞中に導入するために使用される方法か、それ以外の本開示の阻害剤に細胞を曝露するために使用される方法かを問わず、宿主細胞中の核酸の存在を確認するために多様なアッセイが行われ得る。そのようなアッセイは、例えば、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、RT-PCRおよびPCRなどの当業者に周知の分子生物学的アッセイ;特定のペプチドの存在または非存在を検出するなどの生化学的アッセイ、例えば、免疫学的手段(ELISAおよびウエスタンブロット)によるもの、または本開示の範囲内に入る作用物質を特定するための本明細書に記載されるアッセイによるものを含む。
一態様では、宿主細胞中に導入される核酸は、RNAである。別の態様では、RNAは、インビトロ転写されたRNAまたは合成RNAを含むmRNAである。RNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により生成された鋳型を使用するインビトロ転写によって産生され得る。任意の供給源からの関心対象のDNAを、PCRによって、適切なプライマーおよびRNAポリメラーゼを使用して、インビトロmRNA合成のための鋳型に直接変換することができる。DNAの供給源は、例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ファージDNA、cDNA、合成DNA配列または任意の他の適切なDNA供給源であり得る。
PCRを使用して、その後に細胞中に導入されるmRNAのインビトロ転写のための鋳型を生成してもよい。PCRを行うための方法は、当技術分野において周知である。PCRにおいて使用するためのプライマーは、PCRのための鋳型として使用されるべきDNA領域と実質的に相補的な領域を有するように設計される。「実質的に相補的な」は、本明細書において使用される場合、プライマー配列中の塩基の大部分またはすべてが相補的なヌクレオチド配列のことを指す。実質的に相補的な配列は、PCRのために使用されるアニーリング条件下で目的となるDNA標的とアニールまたはハイブリダイズすることが可能である。プライマーは、DNA鋳型の任意の部分と実質的に相補的であるように設計することができる。例えば、プライマーは、5' UTRおよび3' UTRを含む、細胞において通常転写される遺伝子部分(オープンリーディングフレーム)を増幅するように設計することができる。プライマーはまた、関心対象の特定のドメインをコードする遺伝子の一部を増幅するように設計され得る。一態様では、プライマーは、5' UTRおよび3' UTRのすべてまたは部分を含む、ヒトcDNAのコード領域を増幅するように設計される。PCRに有用なプライマーは、当技術分野において周知の合成方法により生成される。「フォワードプライマー」は、増幅されるべきDNA配列の上流であるDNA鋳型上のヌクレオチドと実質的に相補的なヌクレオチド領域を含有するプライマーである。「上流」は、本明細書において、コード鎖に対して増幅されるべきDNA配列の5位を指すために使用される。「リバースプライマー」は、増幅されるべきDNA配列の下流である二本鎖DNA鋳型と実質的に相補的なヌクレオチド領域を含有するプライマーである。「下流」は、本明細書において、コード鎖に対して増幅されるべきDNA配列の3'位を指すために使用される。
RNAの安定性および/または翻訳効率を促進する能力を有する化学構造も使用され得る。RNAは、好ましくは5' UTRおよび3' UTRを有する。一態様では、5' UTRは、ゼロ~3000ヌクレオチド長である。コード領域に付加されるべき5' UTRおよび3' UTR配列の長さは、UTRの異なる領域にアニールするPCR用プライマーを設計することを非限定的に含め、異なる方法によって変更することができる。このアプローチを使用して、当業者は、転写されたRNAのトランスフェクション後に最適な翻訳効率を達成するために必要な5'UTRおよび3'UTRの長さを改変することができる。
5' UTRおよび3' UTRは、関心対象の遺伝子についての天然に存在する内因性5' UTRおよび3' UTRであることができる。あるいは、関心対象の遺伝子に内因性でないUTR配列を、フォワードプライマーおよびリバースプライマー中にUTR配列を組み込むことによって、または鋳型の任意の他の改変によって付加することができる。関心対象の遺伝子に内因性でないUTR配列の使用は、RNAの安定性および/または翻訳効率を改変するために有用であることができる。例えば、3' UTR配列中のAUに富むエレメントは、mRNAの安定性を減少させ得ることが知られている。それゆえ、転写されたRNAの安定性を当技術分野において周知であるUTRの特性に基づいて増加させるように、3' UTRを選択または設計することができる。
一態様では、5' UTRは、内因性遺伝子のKozak配列を含有することができる。あるいは、関心対象の遺伝子に内因性でない5' UTRが上記のようにPCRによって付加される場合、5' UTR配列を付加することによりコンセンサスKozak配列を再設計することができる。Kozak配列は、いくつかのRNA転写物の翻訳効率を増加させることができるが、効率的な翻訳を可能にするためにすべてのRNAにとって必要であるとは思われない。多くのmRNAにとってのKozak配列の必要性は、当技術分野において公知である。他の態様では、5' UTRは、RNAゲノムが細胞中で安定なRNAウイルスに由来することができる。他の態様では、mRNAのエキソヌクレアーゼ分解を妨害するために、3'UTRまたは5'UTR中に様々なヌクレオチド類似体を使用することができる。
遺伝子クローニングの必要なしにDNA鋳型からのRNA合成を可能にするために、転写プロモーターが、転写されるべき配列の上流のDNA鋳型に付着されるべきである。RNAポリメラーゼについてのプロモーターとして機能する配列がフォワードプライマーの5'末端に付加される場合、RNAポリメラーゼプロモーターは、PCR産物中の転写されるべきオープンリーディングフレームの上流に組み込まれるようになる。一態様では、プロモーターは、本明細書の別の箇所に記載されるようなT7ポリメラーゼプロモーターである。他の有用なプロモーターは、T3およびSP6 RNAポリメラーゼプロモーターを含むが、それらに限定されない。T7、T3およびSP6プロモーターについてのコンセンサスヌクレオチド配列は、当技術分野において公知である。
一態様では、mRNAは、5'末端上のキャップおよび3'ポリ(A)テールの両方を有しており、これらが、リボソームの結合、翻訳開始および細胞中でのmRNAの安定性を決定する。環状DNA鋳型、例えばプラスミドDNA上で、RNAポリメラーゼは、真核細胞における発現に適さない長いコンカテマー産物を産生する。3'UTRの末端で直鎖状にされたプラスミドDNAの転写は、通常サイズのmRNAを生じ、このmRNAは、転写後にポリアデニル化された場合であっても真核生物のトランスフェクションに有効でない。
直鎖状DNA鋳型上で、ファージT7 RNAポリメラーゼは、転写物の3'末端を、鋳型の最終塩基を超えて延長することができる(Schenborn and Mierendorf, Nuc Acids Res., 13:6223-36 (1985); Nacheva and Berzal-Herranz, Eur. J. Biochem., 270:1485-65 (2003))。
転写DNA鋳型のポリA/Tセグメントは、100TテールなどのポリTテール(サイズは50~5000Tであることができる)を含有するリバースプライマーを使用することによってPCRの間に、または非限定的にDNAライゲーションもしくはインビトロ組み換えを含む任意の他の方法によってPCRの後に、産生することができる。ポリ(A)テールはまた、RNAに安定性を提供し、それらの分解を低減する。一般に、ポリ(A)テールの長さは、転写されたRNAの安定性と正に相関する。一態様では、ポリ(A)テールは、100~5000アデノシンである。
RNAのポリ(A)テールは、インビトロ転写後に大腸菌(E. coli)ポリAポリメラーゼ(E-PAP)などのポリ(A)ポリメラーゼの使用によりさらに伸長することができる。一態様では、ポリ(A)テールの長さを100ヌクレオチドから300~400ヌクレオチドへと増加させることは、RNAの翻訳効率に約2倍の増加をもたらす。加えて、3'末端への異なる化学基の付着は、mRNAの安定性を増加させることができる。そのような付着は、修飾/人工ヌクレオチド、アプタマーおよび他の化合物を含有することができる。例えば、ポリ(A)ポリメラーゼを使用して、ATP類似体をポリ(A)テールに組み込むことができる。ATP類似体は、RNAの安定性をさらに増加させることができる。
5'キャップもまた、RNA分子に安定性を提供する。好ましい態様では、本明細書に開示される方法によって産生されるRNAは、5'キャップを含む。5'キャップは、当技術分野において公知の技法および本明細書に記載される技法を使用して提供される(Cougot, et al., Trends in Biochem. Sci., 29:436-444 (2001); Stepinski, et al., RNA, 7:1468-95 (2001);Elango, et al., Biochim. Biophys. Res. Commun., 330:958-966 (2005))。
いくつかの態様では、RNAは、インビトロ転写RNAのように細胞中にエレクトロポレーションされる。糖、ペプチド、脂質、タンパク質、抗酸化物質および界面活性剤などの細胞透過性および生存率を助長する因子を含有することができる、細胞エレクトロポレーションに適した任意の溶質を含むことができる。
いくつかの態様では、本開示のCARをコードする核酸は、RNA、例えば、インビトロ合成されたRNAであろう。RNAのインビトロ合成のための方法は、当技術分野において公知であり;CARおよび治療ペプチドをコードする配列を含むRNAを合成するために任意の公知の方法を使用することができる。宿主細胞中にRNAを導入するための方法は、当技術分野において公知である。例えば、Zhao et al. Cancer Res. (2010) 15: 9053を参照されたい。CARおよび治療ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むRNAを宿主細胞中に導入することは、インビトロ、エクスビボまたはインビボで実施することができる。例えば、宿主細胞(例えば、NK細胞、細胞傷害性Tリンパ球など)に、CARおよび治療ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むRNAをインビトロまたはエクスビボでエレクトロポレーションすることができる。
開示される方法は、標的がん細胞を死滅する遺伝子改変されたT細胞の能力の評価を含め、がん、幹細胞、急性および慢性感染、ならびに自己免疫疾患の分野の基礎研究および治療法におけるT細胞活性のモジュレーションに適用することができる。
該方法はまた、例えば、プロモーターまたは投入RNAの量を変化させることによって、発現レベルを広い範囲で制御する能力を提供し、発現レベルを個別に調節することを可能にする。さらに、mRNA産生のPCRに基づく技法は、異なる構造およびそれらのドメインの組み合わせを有するmRNAの設計を極めて容易にする。
本開示のRNAトランスフェクション法の1つの利点は、RNAトランスフェクションが本質的に一過性であり、ベクター不要であることである。RNA導入遺伝子は、リンパ球に送達することができ、いかなる追加のウイルス配列の必要もなく、最小の発現カセットとして短時間のインビトロ細胞活性化後にその中で発現させることができる。これらの条件下で、宿主細胞ゲノム中への導入遺伝子の組み込みは、起こる可能性が低い。RNAのトランスフェクション効率およびリンパ球集団全体を均一に改変するRNAの能力により、細胞のクローニングは不必要である。
インビトロ転写RNA(IVT-RNA)によるT細胞の遺伝的改変は、共に様々な動物モデルにおいて試験に成功した2つの異なる戦略を利用する。インビトロ転写RNAがリポフェクションまたはエレクトロポレーションによって細胞にトランスフェクションされる。移入されたIVT-RNAの長期発現を達成するために、様々な改変を使用してIVT-RNAを安定化することが望ましい。
インビトロ転写のための鋳型として標準的な手法で利用されており、安定化されたRNA転写物が産生されるように遺伝的に改変されているいくつかのIVTベクターが文献から公知である。現在、当技術分野において使用されるプロトコルは、以下の構造を有するプラスミドベクターに基づく:RNA転写を可能にする5' RNAポリメラーゼプロモーターに続いて、3'および/または5'のいずれかに非翻訳領域(UTR)が隣接する関心対象の遺伝子、ならびに50~70個のAヌクレオチドを含有する3'ポリアデニルカセット。インビトロ転写の前に、II型制限酵素により環状プラスミドがポリアデニルカセットの下流で直鎖状にされる(認識配列は切断部位に対応する)。したがって、ポリアデニルカセットは、転写物中のその後のポリ(A)配列に対応する。この手順の結果として、いくつかのヌクレオチドは、直鎖状にされた後に酵素切断部位の部分として残り、ポリ(A)配列を3'末端で伸長またはマスクする。この非生理学的オーバーハングがそのような構築物から細胞内で産生されるタンパク質の量に影響するかどうかは明らかでない。
別の局面では、RNA構築物は、エレクトロポレーションによって細胞内に送達される。例えば、US 2004/0014645、US 2005/0052630A1、US 2005/0070841A1、US 2004/0059285A1、US 2004/0092907A1において教示されるような、哺乳動物細胞内への核酸構築物のエレクトロポレーションの製剤および方法論を参照されたい。任意の公知の細胞型のエレクトロポレーションに必要な電場の強さを含む様々なパラメーターが、関連する研究文献ならびに本分野の数多くの特許および出願から一般的に公知である。例えば、米国特許第6,678,556号、米国特許第7,171,264号、および米国特許第7,173,116号を参照されたい。エレクトロポレーションの治療的応用のための装置は、市販されており、例えば、MedPulser(商標)DNA Electroporation Therapy System(Inovio/Genetronics, San Diego, Calif.)、米国特許第6,567,694号;米国特許第6,516,223号、米国特許第5,993,434号、米国特許第6,181,964号、米国特許第6,241,701号、および米国特許第6,233,482号などの特許に記載されている;エレクトロポレーションはまた、例えばUS20070128708A1に記載されているように、細胞のインビトロトランスフェクションのためにも使用され得る。エレクトロポレーションはまた、核酸を細胞内にインビトロ送達するためにも利用され得る。したがって、当業者に公知の多くの利用可能なデバイスおよびエレクトロポレーションシステムのいずれかを利用した、発現構築物を含む核酸の細胞内へのエレクトロポレーション媒介投与は、関心対象のRNAを標的細胞に送達するための刺激的な新しい手段を提示する。
いくつかの態様では、細胞(例えば、T細胞)は、CARおよび治療用ペプチドをコードする核酸分子を導入する前に、その途中におよび/またはそれに続いて、インキュベーションまたはカルチベーションすることができる。いくつかの態様では、細胞(例えば、T細胞)は、CARおよび治療用ペプチドをコードする核酸分子を導入する前に、その途中におよび/またはそれに続いて、例えば、CARおよび治療用ペプチドをコードするウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)を細胞に形質導入する前に、その途中にまたはそれに続いて、インキュベーションまたはカルチベーションすることができる。いくつかの態様では、該方法は、CARおよび治療用ペプチドをコードする核酸分子を導入する前に、刺激物質または活性化物質(例えば、抗CD3/抗CD28抗体)で細胞を活性化または刺激することを含む。いくつかの態様では、作用物質を導入する前に、刺激もしくは活性化物質および/またはサイトカインは除去されない。当業者は、1つまたは複数の核酸配列の各々が宿主細胞に導入される順序を決定することができる。
J. 免疫細胞の増大
細胞を操作する(例えば、CARおよび治療ペプチドを発現させる)前か後かを問わず、細胞を、例えば、米国特許第6,352,694号;第6,534,055号;第6,905,680号;第6,692,964号;第5,858,358号;第6,887,466号;第6,905,681号;第7,144,575号;第7,067,318号;第7,172,869号;第7,232,566号;第7,175,843号;第5,883,223号;第6,905,874号;第6,797,514号;第6,867,041号;および米国特許出願公開第20060121005号に記載されているような方法を使用して、活性化し、その数を増大させることができる。例えば、本開示のT細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する作用物質およびT細胞表面の共刺激性分子を刺激するリガンドが付着している表面との接触により増大され得る。特に、T細胞集団は、表面に固定化された抗CD3抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または抗CD2抗体との接触によって、あるいはカルシウムイオノフォアと一緒のプロテインキナーゼC活性化因子(例えば、ブリオスタチン)との接触によって刺激され得る。T細胞表面のアクセサリー分子の共刺激のために、アクセサリー分子に結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞は、T細胞の増殖を刺激するために適した条件下で抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触させることができる。抗CD28抗体の例は、9.3、B-T3、XR-CD28(Diaclone, Besancon, France)を含み、これらを本開示において使用することができるが、当技術分野において公知の他の方法および試薬も同様に使用することができる(例えば、ten Berge et al., Transplant Proc. (1998) 30(8): 3975-3977;Haanen et al., J. Exp. Med. (1999) 190(9): 1319-1328;およびGarland et al., J. Immunol. Methods (1999) 227(1-2): 53-63を参照のこと)。
本明細書に開示される方法によるT細胞の増大は、約10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、2000倍、3000倍、4000倍、5000倍、6000倍、7000倍、8000倍、9000倍、10,000倍、100,000倍、1,000,000倍、10,000,000倍またはそれ以上、およびそれらの間の任意およびすべての整数(whole integer)および分数(partial integer)倍にすることができる。一態様では、T細胞は、約20倍~約50倍の範囲で増大する。
培養に続き、別の培養装置に細胞を継代する前に、T細胞を、培養装置内の細胞培地中で、一定期間または細胞がコンフルエンスに達するか最適な継代のための高い細胞密度に達するまで、インキュベートすることができる。培養装置は、細胞をインビトロ培養するために一般に使用される任意の培養装置であることができる。好ましくは、コンフルエンスのレベルは、別の培養装置に細胞を継代する前に70%またはそれ以上である。より好ましくは、コンフルエンスのレベルは、90%またはそれ以上である。期間は、インビトロ細胞培養に適した任意の時間であることができる。T細胞培地は、T細胞の培養中、任意の時間で交換され得る。好ましくは、T細胞培地は、約2~3日毎に交換される。次いで、T細胞を培養装置から回収し、その後、T細胞を直ちに使用するか、後で使用するために凍結保存して貯蔵することができる。一態様では、本開示は、増大したT細胞を凍結保存することを含む。凍結保存されたT細胞は、T細胞中に核酸を導入する前に融解される。
別の態様では、該方法は、T細胞を単離する工程およびT細胞を増大させる工程を含む。別の態様では、本開示はさらに、増大の前にT細胞を凍結保存する工程を含む。さらに別の態様では、凍結保存されたT細胞は、キメラ膜タンパク質をコードするRNAをエレクトロポレーションするために融解される。
細胞をエクスビボ増大させるための別の手順は、米国特許第5,199,942号(参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている。米国特許第5,199,942号に記載されるような増大は、本明細書に記載される他の増大法の代替または追加であることができる。簡潔に述べると、T細胞のエクスビボ培養および増大は、米国特許第5,199,942号に記載されるものなどの細胞増殖因子または他の因子、例えばflt3-L、IL-1、IL-3およびc-kitリガンドの添加を含む。一態様では、T細胞を増大させることは、flt3-L、IL-1、IL-3およびc-kitリガンドからなる群より選択される因子と共にT細胞を培養することを含む。
本明細書に記載されるような培養工程(本明細書に記載されるような作用物質との接触またはエレクトロポレーション後)は、非常に短く、例えば、24時間未満、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、または23時間であることができる。本明細書にさらに記載されるような培養工程(本明細書に記載されるような作用物質との接触)は、より長く、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、またはそれを超える日数であることができる。
培養細胞を記述するために様々な用語が使用される。細胞培養物は、一般に、生きた生物から採取され、制御された条件下で成長させた細胞のことを指す。初代細胞培養物は、生物から直接採取された細胞、組織または器官の培養物であって、最初の植え継ぎ前の培養物である。細胞の成長および/または分裂を容易にする条件下で細胞が成長培地中に入れられた場合に、細胞は培養で増大され、より大きい細胞集団をもたらす。細胞が培養で増大される場合、細胞の増殖速度は、典型的には、細胞の数が倍加するのに必要な時間、別の言い方で倍加時間として知られる時間によって測定される。
植え継ぎの各ラウンドは、継代と称される。細胞が植え継がれたとき、それらの細胞は継代されたと称される。特定の細胞集団または細胞株は、時に、継代された回数によって称される、または特徴付けられる。例えば、10回継代された培養細胞集団は、P10培養物と称され得る。初代培養物、すなわち、組織から細胞を単離した後の最初の培養物は、P0と呼ばれる。1回目の植え継ぎの後、細胞は二次培養物(P1または継代1)と記述される。2回目の植え継ぎの後、細胞は、三次培養物(P2または継代2)になる(等々)。継代期間の間に多くの集団倍加があり得ることが、当業者によって理解されるであろう;それゆえ、培養物の集団倍加数は、継代数よりも大きい。継代と継代の間の細胞の増大(すなわち、集団倍加数)は、非限定的に播種密度、基質、培地および継代間隔を含む多くの要因に依存する。
一態様では、細胞は、数時間(約3時間)~約14日間またはその間の任意の時間整数値の間、培養され得る。T細胞培養に適した条件は、血清(例えば、ウシ胎児血清またはヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-ガンマ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGF-ベータおよびTNF-αまたは当業者に公知の細胞の成長のための任意の他の添加剤を含む、増殖および生存に必要な因子を含有し得る適切な培地(例えば、最小必須培地またはRPMI Media 1640またはX-vivo 15(Lonza))を含む。細胞の成長のための他の添加剤は、界面活性剤、プラスマネート(plasmanate)、ならびにN-アセチル-システインおよび2-メルカプトエタノールなどの還元剤を含むが、それらに限定されない。培地は、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよびビタミンが添加された、無血清であるか適切な量の血清(または血漿)もしくは規定のホルモン群ならびに/またはT細胞の成長および増大に十分な量のサイトカインが補充された、RPMI 1640、AIM-V、DMEM、MEM、α-MEM、F-12、X-Vivo 15およびX-Vivo 20、Optimizerを含むことができる。抗生物質、例えば、ペニシリンおよびストレプトマイシンは、実験培養物中にのみ含まれ、対象に注入されるべき細胞の培養物中には含まれない。標的細胞は、成長を支援するために必要な条件下、例えば、適切な温度(例えば、37℃)および雰囲気(例えば、空気+5% CO2)下で維持される。
T細胞を培養するために使用される培地は、T細胞を共刺激することができる作用物質を含み得る。例えば、CD3を刺激することができる作用物質は、CD3に対する抗体であり、CD28を刺激することができる作用物質は、CD28に対する抗体である。本明細書に開示される方法によって単離される細胞は、およそ10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、2000倍、3000倍、4000倍、5000倍、6000倍、7000倍、8000倍、9000倍、10,000倍、100,000倍、1,000,000倍、10,000,000倍、またはそれ以上増大させることができる。一態様では、T細胞は、約20倍~約50倍の範囲、またはそれ以上増大する。一態様では、ヒト制御性T細胞は、抗CD3抗体で被覆されたKT64.86人工抗原提示細胞(aAPC)を介して増大される。T細胞を増大および活性化するための方法は、米国特許第7,754,482号、8,722,400号および9,555,105号に見いだすことができ、それらの内容は、その全体が本明細書に組み入れられる。
一態様では、T細胞を増大させる方法はさらに、増大されたT細胞をさらなる適用のために単離する工程を含むことができる。別の態様では、増大させる方法はさらに、それに続く増大されたT細胞のエレクトロポレーションを培養前に含むことができる。後続のエレクトロポレーションは、核酸を用いて、増大されたT細胞を形質導入すること、増大されたT細胞にトランスフェクションすること、または増大されたT細胞にエレクトロポレーションすることなど、増大されたT細胞集団に、作用物質をコードする核酸を導入することを含んでもよく、該作用物質が、T細胞をさらに刺激する。作用物質は、さらなる増大、エフェクター機能または別のT細胞機能を刺激するなどによって、T細胞を刺激し得る。
K. T細胞受容体
本開示は、外因性T細胞受容体(TCR)および治療用ペプチドを含む操作された細胞(例えば、免疫細胞またはその前駆体、例えば、T細胞)のための組成物および方法を提供する。したがって、いくつかの態様では、細胞は、特定のT細胞受容体(TCR)遺伝子(例えば、アルファ/ベータTCRをコードする核酸)を含有するように変更されている。TCRまたはその抗原結合部分は、腫瘍、ウイルスまたは自己免疫タンパク質の抗原などの、標的ポリペプチドのペプチドエピトープまたはT細胞エピトープを認識するものを含む。ある特定の態様では、TCRは、腫瘍関連抗原、例えば、ヒトNY-ESO-1に対する結合特異性を有する。
TCRは、抗原に応答してT細胞の活性化に関与する6つの異なる膜結合鎖から構成されるジスルフィド連結されたヘテロ二量体タンパク質である。アルファ/ベータTCRおよびガンマ/デルタTCRが存在する。アルファ/ベータTCRは、TCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖を含む。TCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖を含むTCRを発現するT細胞は、一般的にアルファ/ベータT細胞と称される。ガンマ/デルタTCRは、TCRガンマ鎖およびTCRデルタ鎖を含む。TCRガンマ鎖およびTCRデルタ鎖を含むTCRを発現するT細胞は、一般的にガンマ/デルタT細胞と称される。本開示のTCRは、TCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖を含むTCRである。
TCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖は各々、2つの細胞外ドメイン、可変領域および定常領域から構成される。TCRアルファ鎖可変領域およびTCRベータ鎖可変領域は、標的抗原に対するTCRの親和性に必要とされる。各可変領域は、標的抗原への結合を提供する3つの超可変または相補性決定領域(CDR)を含む。TCRアルファ鎖の定常領域およびTCRベータ鎖の定常領域は、細胞膜の近位にある。TCRは、膜貫通領域および短い細胞質テールをさらに含む。CD3分子は、TCRヘテロ二量体と一緒にアセンブルされる。CD3分子は、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)として知られているチロシンリン酸化のための特徴的な配列モチーフを含む。近位シグナル伝達事象は、CD3分子を通じて媒介され、したがって、TCR-CD3複合体相互作用は、細胞認識事象の媒介において重要な役割を果たしている。
TCRの刺激は、抗原ペプチドをT細胞に提示し、TCRと相互作用して一連の細胞内シグナル伝達カスケードを誘導する抗原提示細胞上の主要組織適合複合体分子(MHC)によって引き起こされる。TCRのエンゲージメントは、細胞増殖、サイトカイン産生および/または活性化誘導細胞死をもたらす正と負の両方のシグナル伝達カスケードを開始する。
本開示のTCRは、野生型TCR、高親和性TCR、および/またはキメラTCRであることができる。高親和性TCRは、野生型TCRと比較して標的抗原に対するより高い親和性を付与する野生型TCRへの改変の結果であり得る。高親和性TCRは、親和性成熟TCRであり得る。TCRの改変および/またはTCRの親和性成熟のための方法は、当業者に公知である。TCRを操作および発現させるための技法は、それぞれのサブユニットをつなぐ天然のジスルフィド架橋を含むTCRヘテロ二量体の産生(Garboczi, et al., (1996), Nature 384(6605): 134-41;Garboczi, et al., (1996), J Immunol 157(12): 5403-10;Chang et al., (1994), PNAS USA 91: 11408-11412;Davodeau et al., (1993), J. Biol. Chem. 268(21): 15455-15460;Golden et al., (1997), J. Imm. Meth. 206: 163-169;米国特許第6,080,840号)を含むが、それらに限定されない。
いくつかの態様では、外因性TCRは、完全TCRまたはその抗原結合部分もしくは抗原結合断片である。いくつかの態様では、TCRは、αβ形態またはγδ形態のTCRを含めた無傷または完全長TCRである。いくつかの態様では、TCRは、完全長TCRより短いが、MHC分子中に結合している特異的ペプチドに結合する、例えばMHC-ペプチド複合体に結合する、抗原結合部分である。いくつかの場合に、TCRの抗原結合部分または断片は、完全長または無傷TCRの構造ドメインの一部分だけを含有することができるが、それでもなお、完全TCRが結合するペプチドエピトープ、例えばMHC-ペプチド複合体に結合可能である。いくつかの場合に、抗原結合部分は、特異的なMHC-ペプチド複合体に結合するための結合部位を形成するのに十分なTCRの可変ドメイン、例えば、TCRの可変α鎖および可変β鎖を含有する。一般に、TCRの可変鎖は、ペプチド、MHCおよび/またはMHC-ペプチド複合体の認識に関与する相補性決定領域(CDR)を含有する。
いくつかの態様では、TCRの可変ドメインは、一般に抗原認識ならびに結合能および特異性への一次寄与因子である、超可変ループまたはCDRを含有する。いくつかの態様では、TCRのCDRまたはその組み合わせは、所与のTCR分子の抗原結合部位のすべてまたは実質的にすべてを形成する。TCR鎖の可変領域内の様々なCDRは、一般に、CDRと比較してTCR分子間で小さい変動性を一般に提示するフレームワーク領域(FR)によって隔てられている(例えば、Jores et al, Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 87:9138, 1990;Chothia et al., EMBO J. 7:3745, 1988を参照のこと;またLefranc et al., Dev. Comp. Immunol. 27:55, 2003も参照のこと)。いくつかの態様では、CDR3は、抗原結合もしくは特異性を担う主要CDRであるか、または、所与のTCR可変領域上の3つのCDRの中で、抗原認識および/もしくはペプチド-MHC複合体の処理されたペプチド部分との相互作用に最も重要なものである。いくつかの状況では、アルファ鎖のCDR1は、ある特定の抗原ペプチドのN末端部分と相互作用することができる。いくつかの状況では、ベータ鎖のCDR1は、該ペプチドのC末端部分と相互作用することができる。いくつかの状況では、CDR2は、MHC-ペプチド複合体のMHC部分との相互作用もしくはその認識に最も強く寄与するか、またはそれを担う一次CDRである。いくつかの態様では、β鎖の可変領域は、一般に超抗原結合に関与するが抗原認識には関与しないさらなる超可変領域(CDR4またはHVR4)を含有することができる(Kotb (1995) Clinical Microbiology Reviews, 8:411-426)。
いくつかの態様では、TCRは、可変アルファドメイン(Vα)および/もしくは可変ベータドメイン(Vβ)またはその抗原結合断片を含有する。いくつかの態様では、TCRのα鎖および/またはβ鎖はまた、定常ドメイン、膜貫通ドメインおよび/または短い細胞質テールを含有することもできる(例えば、Janeway et al., Immunobiology: The Immune System in Health and Disease, 3 Ed., Current Biology Publications, p. 4:33, 1997を参照のこと)。いくつかの態様では、α鎖定常ドメインは、TRAC遺伝子(IMGT命名法)によってコードされるか、またはそのバリアントである。いくつかの態様では、β鎖定常領域は、TRBC1またはTRBC2遺伝子(IMGT命名法)によってコードされるか、またはそのバリアントである。いくつかの態様では、定常ドメインは、細胞膜に隣接している。例えば、いくつかの場合に、2本の鎖によって形成されるTCRの細胞外部分は、2つの膜近位定常ドメイン、および2つの膜遠位可変ドメインを含有し、それらの可変ドメインは各々、CDRを含有する。
TCRの様々なドメインまたは領域を決定または同定することは当業者の技能の範囲内である。いくつかの局面では、TCRの残基は、公知であるか、またはInternational Immunogenetics Information System(IMGT)付番方式に従って同定することができる(例えばwww.imgt.orgを参照のこと;また、Lefranc et al. (2003) Developmental and Comparative Immunology, 2&;55-77;およびThe T Cell Factsbook 2nd Edition, Lefranc and LeFranc Academic Press 2001も参照のこと)。この方式を使用して、TCR Va鎖および/またはVβ鎖内のCDR1配列は、残基数27~38(各数値を含む)間に存在するアミノ酸に対応し、TCR Va鎖および/またはVβ鎖内のCDR2配列は、残基数56~65(各数値を含む)間に存在するアミノ酸に対応し、そして、TCR Va鎖および/またはVβ鎖内のCDR3配列は、残基数105~117(各数値を含む)間に存在するアミノ酸に対応する。当業者に公知の他の付番方式がある限り、また、TCRの様々なドメインまたは領域を同定するために利用可能な付番方式のいずれの使用も当業者の技能の範囲内である限り、IMGT付番方式は、決して限定として解釈されるべきではない。
いくつかの態様では、TCRは、ジスルフィド結合(1つまたは複数)などによって連結されている2本の鎖αおよびβ(または任意でγおよびδ)のヘテロ二量体であり得る。いくつかの態様では、TCRの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成する短い接続配列を含有し、それによりTCRの2本の鎖を連結し得る。いくつかの態様では、TCRは、TCRが定常ドメイン中に2つのジスルフィド結合を含有するように、α鎖およびβ鎖の各々にさらなるシステイン残基を有し得る。いくつかの態様では、定常および可変ドメインの各々は、システイン残基によって形成されるジスルフィド結合を含有する。
いくつかの態様では、記載されるような細胞を操作するためのTCRは、実質的に完全長のコード配列が容易に利用可能であるVα,β鎖の配列などの既知のTCR配列(複数)から生成されるものである。細胞供給源から、V鎖配列を含めた完全長のTCR配列を得るための方法は周知である。いくつかの態様では、TCRをコードする核酸は、多様な供給源から、所与の細胞(1つもしくは複数)内のもしくはそこから単離されたTCRをコードする核酸のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、または公的に入手可能なTCR DNA配列の合成などによって得ることができる。いくつかの態様では、TCRは、T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)などの細胞、T細胞ハイブリドーマまたは他の公的に入手可能な供給源などの生物学的供給源から得られる。いくつかの態様では、T細胞は、インビボ単離された細胞から得ることができる。いくつかの態様では、T細胞は、培養されたT細胞ハイブリドーマまたはクローンであることができる。いくつかの態様では、TCRまたはその抗原結合部分は、TCRの配列の知識から合成により生成することができる。いくつかの態様では、標的抗原(例えば、がん抗原)に対する高親和性T細胞クローンが同定され、患者から単離され、細胞に導入される。いくつかの態様では、標的抗原に対するTCRクローンが、ヒト免疫系遺伝子(例えば、ヒト白血球型抗原系、またはHLA)で操作されたトランスジェニックマウスにおいて生成されている。例えば、腫瘍抗原を参照されたい(例えば、Parkhurst et al. (2009) Clin Cancer Res. 15: 169-180およびCohen et al. (2005) J Immunol. 175:5799-5808を参照のこと)。いくつかの態様では、ファージディスプレイを使用して、標的抗原に対するTCRが単離される(例えば、Varela-Rohena et al. (2008) Nat Med. 14: 1390-1395およびLi (2005) Nat Biotechnol. 23:349-354を参照のこと)。
いくつかの態様では、TCRまたはその抗原結合部分は、改変または操作されているものである。いくつかの態様では、指向性進化法を使用して、特定のMHC-ペプチド複合体に対するより高い親和性などの変更された特性を有するTCRが生成される。いくつかの態様では、指向性進化は、限定されないが、酵母ディスプレイ(Holler et al. (2003) Nat Immunol, 4, 55-62;Holler et al. (2000) Proc Natl Acad Sci U S A, 97, 5387-92)、ファージディスプレイ(Li et al. (2005) Nat Biotechnol, 23, 349-54)、またはT細胞ディスプレイ(Chervin et al. (2008) J Immunol Methods, 339, 175-84)を含めたディスプレイ法によって達成される。いくつかの態様では、ディスプレイアプローチは、既知のTCR、親TCRまたは参照TCRを操作または改変することを含む。例えば、いくつかの場合に、野生型TCRを、CDRの1つまたは複数の残基が変異している変異誘発TCRを産生するための鋳型として使用することができ、所望の標的抗原に対するより高い親和性などの所望の変更された特性を有する変異体が選択される。
記載されるようないくつかの態様では、TCRは、導入されたジスルフィド結合(1つまたは複数)を含有することができる。いくつかの態様では、天然のジスルフィド結合は存在しない。いくつかの態様では、天然の鎖間ジスルフィド結合を形成する天然システイン(例えば、α鎖およびβ鎖の定常ドメイン中の)の1つまたは複数が、セリンまたはアラニンなどの別の残基で置換される。いくつかの態様では、導入ジスルフィド結合は、例えばα鎖およびβ鎖の定常ドメイン中のアルファおよびベータ鎖上の非システイン残基をシステインに変異させることによって形成することができる。TCRの例示的な非天然のジスルフィド結合は、国際公開公報第WO2006/000830号および同第WO2006/037960号に記載されている。いくつかの態様では、システインは、α鎖のThr48およびβ鎖のSer57の残基、α鎖のThr45およびβ鎖のSer77の残基、α鎖のTyr10およびβ鎖のSerl7の残基、α鎖のThr45およびβ鎖のAsp59の残基、ならびに/またはα鎖のSerl5およびβ鎖のGlul5の残基に導入することができる。いくつかの態様では、組換えTCR中の非天然のシステイン残基(例えば、1つまたは複数の非天然のジスルフィド結合をもたらす)の存在は、それが導入された細胞における所望の組換えTCRの産生を、天然TCR鎖を含有するミスマッチTCR対の発現よりも優先することができる。
いくつかの態様では、TCR鎖は、膜貫通ドメインを含有する。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、正に荷電している。いくつかの場合に、TCR鎖は、細胞質テールを含有する。いくつかの局面では、TCRの各鎖(例えば、アルファまたはベータ)は、1つのN末端免疫グロブリン可変ドメイン、1つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域、およびC末端の短い細胞質テールを保有することができる。いくつかの態様では、TCRは、例えば細胞質テールを介して、シグナル伝達の媒介に関与するCD3複合体のインバリアントタンパク質と会合する。いくつかの場合に、この構造は、TCRが、CD3およびそのサブユニットのような他の分子と会合することを可能にする。例えば、膜貫通領域を有する定常ドメインを含有するTCRは、タンパク質を細胞膜に固定し、CD3シグナル伝達装置または複合体のインバリアントサブユニットと会合し得る。CD3シグナル伝達サブユニット(例えば、CD3y、CD35、CD3sおよびCD3ζ鎖)の細胞内テールは、TCR複合体のシグナル伝達能に関与する1つまたは複数の免疫受容活性化チロシンモチーフまたはITAMを含有する。
いくつかの態様では、TCRは、完全長TCRである。いくつかの態様では、TCRは、抗原結合部分である。いくつかの態様では、TCRは、二量体TCR(dTCR)である。いくつかの態様では、TCRは、単鎖TCR(sc-TCR)である。TCRは、細胞結合型または溶液型であり得る。いくつかの態様では、提供される方法の目的のために、TCRは、細胞の表面に発現される細胞結合型である。いくつかの態様では、dTCRは、TCR α鎖可変領域配列に対応する配列がTCR α鎖定常領域細胞外配列に対応する配列のN末端に融合している第1のポリペプチド、およびTCR β鎖可変領域配列に対応する配列がTCR β鎖定常領域細胞外配列に対応する配列のN末端に融合している第2のポリペプチドを含有し、第1および第2のポリペプチドは、ジスルフィド結合によって連結されている。いくつかの態様では、その結合は、天然の二量体αβ TCR中に存在する天然の鎖間ジスルフィド結合に対応し得る。いくつかの態様では、鎖間ジスルフィド結合は、天然TCR中に存在しない。例えば、いくつかの態様では、1つまたは複数のシステインを、dTCRポリペプチド対の定常領域細胞外配列に組み込むことができる。いくつかの場合に、天然と非天然の両方のジスルフィド結合が望ましいことがあり得る。いくつかの態様では、TCRは、膜に固定するための膜貫通配列を含有する。いくつかの態様では、dTCRは、可変αドメイン、定常αドメインおよび定常αドメインのC末端に付着された第1の二量体化モチーフを含有するTCR α鎖、ならびに可変βドメイン、定常βドメインおよび定常βドメインのC末端に付着された第1の二量体化モチーフを含むTCR β鎖を含有し、ここで、第1および第2の二量体化モチーフは容易に相互作用して、第1の二量体化モチーフ中のアミノ酸と第2の二量体化モチーフ中のアミノ酸との間に共有結合を形成し、TCR α鎖とTCR β鎖を一緒に連結する。
いくつかの態様では、TCRは、scTCRであり、これは、MHC-ペプチド複合体に結合可能であるα鎖およびβ鎖を含有する単一のアミノ酸鎖である。典型的には、scTCRは、当業者に公知の方法を使用して生成することができ、例えば、国際公開公報第WO 96/13593号、同第WO 96/18105号、同第W099/18129号、同第WO04/033685号、同第WO2006/037960号、同第WO2011/044186号;米国特許第7,569,664号;およびSchlueter, C. J. et al. J. Mol. Biol. 256, 859 (1996)を参照されたい。いくつかの態様では、scTCRは、TCR α鎖可変領域に対応するアミノ酸配列によって構成される第1のセグメントと、TCR β鎖定常ドメイン細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合されたTCR β鎖可変領域配列に対応するアミノ酸配列によって構成される第2のセグメントと、第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列とを含有する。いくつかの態様では、scTCRは、TCR β鎖可変領域に対応するアミノ酸配列によって構成される第1のセグメントと、TCR α鎖定常ドメイン細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合されたTCR α鎖可変領域配列に対応するアミノ酸配列によって構成される第2のセグメントと、第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列とを含有する。いくつかの態様では、scTCRは、α鎖細胞外定常ドメイン配列のN末端に融合されたα鎖可変領域配列によって構成される第1のセグメントと、β鎖細胞外定常および膜貫通配列の配列のN末端に融合されたβ鎖可変領域配列によって構成される第2のセグメントと、任意で、第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列を含有する。いくつかの態様では、scTCRは、β鎖細胞外定常ドメイン配列のN末端に融合されたTCR β鎖可変領域配列によって構成される第1のセグメントと、α鎖細胞外定常ドメイン配列および膜貫通配列を含む配列のN末端に融合されたα鎖可変領域配列によって構成される第2のセグメントと、任意で、第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列を含有する。いくつかの態様では、scTCRがMHC-ペプチド複合体に結合するために、a鎖とβ鎖は、その可変領域配列がそのような結合のために配向されるように対合されなければならない。scTCR中のαとβの対合を促進する様々な方法が当技術分野において周知である。いくつかの態様では、単一のポリペプチド鎖を形成するためにa鎖とβ鎖を連結するリンカー配列が含まれる。いくつかの態様では、リンカーは、α鎖のC末端とβ鎖のN末端(またはその逆も同様)との間の距離を跨ぐのに十分な長さを有するべきである一方で、リンカー長は、標的ペプチド-MHC複合体へのscTCRの結合を遮断または低減するほど長くないことも保証されるべきである。いくつかの態様では、第1および第2のTCRセグメントを連結するscTCRのリンカーは、TCR結合特異性を保持しながら、単一のポリペプチド鎖を形成することが可能な任意のリンカーであることができる。いくつかの態様では、リンカー配列は、例えば、式-P-AA-P-を有し得る(式中、Pはプロリンであり、AAはアミノ酸配列を表し、ここで、アミノ酸はグリシンおよびセリンである)。いくつかの態様では、第1および第2のセグメントは、その可変領域配列がそのような結合のために配向されるように対合される。このため、いくつかの場合に、リンカーは、第1のセグメントのC末端と第2のセグメントのN末端(またはその逆も同様)との間の距離を跨ぐのに十分な長さを有するが、標的リガンドへのscTCRの結合を遮断または低減するほど長くない。いくつかの態様では、リンカーは、10~45アミノ酸または約10~45アミノ酸、例えば、10~30アミノ酸または26~41アミノ酸残基、例えば29、30、31または32アミノ酸を含有することができる。いくつかの態様では、scTCRは、単一のアミノ酸鎖の残基間にジスルフィド結合を含有し、それは、いくつかの場合に、単鎖分子のα領域とβ領域との間の対合の安定性を促進することができる(例えば、米国特許第7,569,664号を参照のこと)。いくつかの態様では、scTCRは、単鎖分子のα鎖の定常ドメインの免疫グロブリン領域の残基とβ鎖の定常ドメインの免疫グロブリン領域の残基とを連結する共有ジスルフィド結合を含有する。いくつかの態様では、ジスルフィド結合は、天然のdTCR中に存在する天然のジスルフィド結合に対応する。いくつかの態様では、天然のTCR中のジスルフィド結合は存在しない。いくつかの態様では、ジスルフィド結合は、例えば、scTCRポリペプチドの第1および第2の鎖領域の定常領域細胞外配列に1つまたは複数のシステインを組み込みことによって、導入された非天然のジスルフィド結合である。例示的なシステイン変異は、上記したようないずれかを含む。いくつかの場合に、天然と非天然の両方のジスルフィド結合が存在し得る。
いくつかの態様では、dTCRまたはscTCRを含めた任意のTCRを、T細胞の表面に活性なTCRを生じるシグナル伝達ドメインに連結することができる。いくつかの態様では、TCRは、細胞の表面に発現される。いくつかの態様では、TCRは、膜貫通配列に対応する配列を含有する。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、CaまたはCP膜貫通ドメインであることができる。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、非TCR起源のもの、例えば、CD3z、CD28またはB7.1からの膜貫通領域であることができる。いくつかの態様では、TCRは、細胞質配列に対応する配列を含有する。いくつかの態様では、TCRは、CD3zシグナル伝達ドメインを含有する。いくつかの態様では、TCRは、CD3とTCR複合体を形成可能である。いくつかの態様では、TCRまたはその抗原結合部分は、組換え産生された天然タンパク質または結合特性などの1つもしくは複数の特性が変更されているその変異型であり得る。いくつかの態様では、TCRは、ヒト、マウス、ラットまたは他の哺乳動物などの様々な動物種の1つに由来し得る。
いくつかの態様では、TCRは、標的細胞上の標的抗原に対する親和性を含む。標的抗原は、標的細胞に関連する任意の種類のタンパク質またはそのエピトープを含み得る。例えば、TCRは、標的細胞の特定の疾患状態を示す標的細胞上の標的抗原に対する親和性を含み得る。いくつかの態様では、標的抗原は、MHCによって処理および提示される。
L. 薬学的組成物および製剤
また、本開示の細胞(例えば、免疫細胞;例えば、T細胞)の集団、そのような細胞を含有するおよび/またはそのような細胞が濃縮された組成物、例えば、CARおよび治療ペプチドを発現する細胞が、組成物中の総細胞またはT細胞もしくはCD8+細胞もしくはCD4+細胞などのある特定の種類の細胞に対して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ超を占める、組成物も提供される。組成物は中でも、養子細胞療法のためなどの、投与のための薬学的組成物および製剤である。また、細胞および組成物を、対象、例えば、患者に投与するための治療法も提供される。
また、薬学的組成物および製剤を含めた投与のための細胞を含む組成物、例えば、所与の用量またはその画分での投与のための細胞数を含む単位用量形態組成物も提供される。薬学的組成物および製剤は、一般には、1つまたは複数の任意の薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも1つの追加の治療剤を含む。
用語「薬学的製剤」は、それに含有される活性成分の生物学的活性を有効にさせるような形態の調製物であって、製剤が投与されるであろう対象に対して許容できないほど有毒な追加の成分を含有しない、調製物を指す。「薬学的に許容される担体」は、対象に対して無毒である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体は、緩衝液、賦形剤、安定剤または保存料を含むが、それに限定されるわけではない。いくつかの局面では、担体の選択は、一部には、特定の細胞によっておよび/または投与方法によって決定される。したがって、多種多様な適切な製剤がある。例えば、薬学的組成物は、保存料を含有することができる。適切な保存料は、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウムおよび塩化ベンザルコニウムを含み得る。いくつかの局面では、2つまたはそれよりも多い保存料の混合物が使用される。保存料またはその混合物は、典型的には、全組成物の重量に対して約0.0001%~約2%の量で存在する。担体は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)により記載されている。薬学的に許容される担体は、一般には、採用される投与量および濃度でレシピエントに対して無毒であり、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;保存料(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコール;メチルパラベンもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン類;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む単糖、二糖および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含むが、それに限定されるわけではない。
いくつかの局面では、緩衝剤が組成物中に含まれる。適切な緩衝剤は、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウムならびに様々な他の酸および塩を含む。いくつかの局面では、2種またはそれより多くの緩衝剤の混合物が使用される。緩衝剤またはその混合物は、典型的には、全組成物の重量に対して約0.001%~約4%の量で存在する。投与可能な薬学的組成物を調製するための方法は公知である。例示的な方法は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins; 21st ed. (May 1, 2005)に、より詳細に記載されている。
製剤は、水溶液を含むことができる。製剤または組成物はまた、細胞により処置される特定の適応症、疾患、または状態に有用な1つよりも多い活性成分、好ましくは細胞を補完する活性であって、それぞれが、互いに悪影響を及ぼさない活性を有するもの、を含有し得る。そのような活性成分は、適切には、意図する目的に効果的な量で組み合わされて存在する。したがって、いくつかの態様では、薬学的組成物は、他の薬学的に活性な作用物質または薬物、例えば、化学療法剤、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチンおよび/またはビンクリスチンをさらに含む。薬学的組成物は、いくつかの態様では、疾患または状態を治療または予防するのに有効な量、例えば、治療有効量または予防有効量で細胞を含有する。治療有効性または予防有効性は、いくつかの態様では、処置される対象を定期的に評価することによってモニタリングされる。細胞の単回ボーラス投与によって、細胞の複数回ボーラス投与によって、または細胞の連続注入投与によって、所望の投与量を送達することができる。
製剤は、経口、静脈内、腹腔内、皮下、肺内、経皮、筋肉内、鼻腔内、口腔、舌下または坐剤投与のための製剤を含む。いくつかの態様では、細胞集団は、非経口投与される。用語「非経口」は、本明細書において使用される場合、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣内および腹腔内投与を含む。いくつかの態様では、細胞は、静脈内、腹腔内または皮下注射による末梢全身送達を使用して対象に投与される。組成物は、いくつかの態様では、無菌の液体調製物、例えば、等張性水溶液、懸濁液、エマルジョン、分散液または粘性組成物として提供され、これらは、いくつかの局面では、選択されたpHに緩衝化され得る。液体調製物は、通常、ゲル、他の粘性組成物および固体組成物よりも調製しやすい。追加的に、液体組成物が、投与に、とりわけ、注射による投与にいくらか便利である。他方で、粘性組成物を、特定の組織とのより長い接触期間をもたらすのに適した粘性範囲内で製剤化することができる。液体組成物または粘性組成物は、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であることができる、担体を含むことができる。
無菌注射液は、溶媒中に、例えば、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどの適切な担体、希釈剤または賦形剤と混合された溶媒中に細胞を取り入れることによって、調製することができる。組成物は、所望の投与経路および調製に応じて、湿潤剤、分散剤、または乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化もしくは粘性増強添加物、保存料、着香剤および/または着色剤などの補助物質を含有することができる。いくつかの局面では、適切な調製物を調製するために標準的な教科書に助言を求めてよい。
抗菌保存料、酸化防止剤、キレート剤、および緩衝液を含む、組成物の安定性および無菌性を増強する様々な添加物を添加することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールおよびソルビン酸によって保証することができる。注射用薬学的剤形の長期吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用することによってもたらすことができる。
インビボ投与に使用されるべき製剤は、一般に無菌のものである。無菌は、例えば滅菌濾過膜で濾過することによって、容易に達成され得る。
M. 態様の列記
以下の態様の列記が提供されるが、その番号付けは、重要性のレベルを示すものと解釈されるべきではない。
態様1は、以下を提供する:
キメラ抗原受容体(CAR)および治療用ペプチドを含む操作された細胞であって、CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、治療用ペプチドが、非天然型治療用ペプチドであり、CAR分子および治療用ペプチドが、同じ発現構築物から発現される、操作された細胞。
態様2は、以下を提供する:
キメラ抗原受容体(CAR)および治療用ペプチドを含む操作された細胞であって、CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、治療用ペプチドが、非天然型治療用ペプチドであり、治療用ペプチドが、以下の特性:
(i)治療用ペプチドは、インターフェロン遺伝子刺激因子(stimulator of interferon genes)(STING)経路の活性化因子である、
(ii)治療用ペプチドは、環状ジヌクレオチドの模倣体である、
(iii)治療用ペプチドは、短鎖脂肪酸(SCFA)の模倣体である、
(iv)治療用ペプチドは、パターン認識受容体(PRR)のアゴニストである、
(v)治療用ペプチドは、ステロイド/ホルモン様分子の模倣体である、
(vi)治療用ペプチドは、標的細胞のアポトーシスを促進する、
(vii)治療用ペプチドは、免疫原性エピトープである、および/または
(viii)治療用ペプチドは、標的細胞における1つまたは複数のDNA修復機構を遮断する
の1つまたは複数を有する、操作された細胞。
態様3は、以下を提供する:
治療用ペプチドが、cGAMP、cAMP、またはcGMPの模倣体である、上記態様のいずれか記載の操作された細胞。
態様4は、以下を提供する:
治療用ペプチドが、TLRアゴニストの模倣体である、態様1または2記載の操作された細胞。
態様5は、以下を提供する:
治療用ペプチドが、フラジェリン、CpGモチーフ、ペプチドグリカン、リポ多糖(LPS)、またはモノホスホリルリピドA(MPL)の模倣体である、態様4記載の操作された細胞。
態様6は、以下を提供する:
治療用ペプチドが、第2のミトコンドリア由来カスパーゼ活性化因子(second mitochondria derived activator of caspase)(SMAC)模倣体である、態様1または2記載の操作された細胞。
態様7は、以下を提供する:
治療用ペプチドが、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の阻害剤である、態様1または2記載の操作された細胞。
態様8は、以下を提供する:
非天然型ペプチドが、天然に存在するペプチドに対して90%以下の配列同一性を有するペプチドである、態様1~7のいずれか一つ記載の操作された細胞。
態様9は、以下を提供する:
非天然型ペプチドが、天然に存在するペプチドに対して80%以下の配列同一性を有するペプチドである、態様1~7のいずれか一つ記載の操作された細胞。
態様10は、以下を提供する:
ペプチドが、SEQ ID NO:1~16からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、態様1~9のいずれか一つ記載の操作された細胞。
態様11は、以下を提供する:
治療用ペプチドが、操作された細胞から細胞外小胞中に排出される、態様1~10のいずれか一つ記載の操作された細胞。
態様12は、以下を提供する:
治療用ペプチドが、Gタンパク質共役受容体(GPCR)に結合するSCFAの模倣体である、態様1~11のいずれか一つ記載の操作された細胞。
態様13は、以下を提供する:
標的細胞が、腫瘍細胞である、態様1~12のいずれか一つ記載の操作された細胞。
態様14は、以下を提供する:
T細胞またはNK細胞である、態様1~13のいずれか一つ記載の操作された細胞。
態様15は、以下を提供する:
抗原結合ドメインが、抗体、抗原結合断片(Fab)、および単鎖可変断片(scFv)からなる群より選択される、態様1~14のいずれか一つ記載の操作された細胞。
態様16は、以下を提供する:
結合ドメインが、T細胞受容体(TCR)である、態様1~14のいずれか一つ記載の操作された細胞。
態様17は、以下を提供する:
標的抗原が、CD19、CD20、CD22、BCMA、CD123、CD133、EGFR、EGFRvIII、メソテリン、Her2、PSMA、CEA、GD2、IL-13Ra2、グリピカン-3、CIAX、LI-CAM、CA 125、CTAG1B、ムチン1、および葉酸受容体-アルファからなる群より選択される、態様1~16のいずれか一つ記載の操作された細胞。
態様18は、以下を提供する:
標的抗原が、腸細胞上に発現される、態様17記載の操作された細胞。
態様19は、以下を提供する:
膜貫通ドメインが、CD8アルファ、CD3ゼータ、CD3イプシロン、CD28、およびICOSからなる群より選択されるタンパク質からの膜貫通ドメインである、態様1~18のいずれか一つ記載の操作された細胞。
態様20は、以下を提供する:
細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ゼータ、TCRゼータ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3デルタ、またはICOSからなる群より選択されるタンパク質の機能的シグナル伝達ドメインを含む、態様1~19のいずれか一つ記載の操作された細胞。
態様21は、以下を提供する:
細胞内シグナル伝達ドメインが、機能的シグナル伝達ドメインを含み、かつ、共刺激性ドメインをさらに含み、ここで、共刺激性ドメインが、4-1BBまたはCD28からの機能的シグナル伝達ドメインを含む、態様1~19のいずれか一つ記載の操作された細胞。
態様22は、以下を提供する:
CARが、抗CD19 scFv、CD8アルファ膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激性ドメイン、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む、態様1~21のいずれか一つ記載の操作された細胞。
態様23は、以下を提供する:
治療用ペプチドが、SCFA模倣体であるか、または、ステロイドおよび/もしくはホルモン様分子の模倣体であり、操作された細胞が、1つまたは複数のエフェクター機能の活性を低下させるようにさらに改変されている、態様1~13のいずれか一つ記載の操作された細胞。
態様24は、以下を提供する:
1つもしくは複数の炎症性サイトカインの発現、グランザイムBの発現、またはパーフォリンの発現を低下または阻止するように改変されている、態様23記載の操作された細胞。
態様25は、以下を提供する:
CAR分子および治療用ペプチドが、同じ発現構築物から発現され、ここで、発現構築物が、PRRを活性化するRNA分子をさらに含む、態様1~24のいずれか一つ記載の操作された細胞。
態様26は、以下を提供する:
RNA分子が、7SLである、態様25記載の操作された細胞。
態様27は、以下を提供する:
態様1~26のいずれか一つ記載の操作された細胞を含む、組成物。
態様28は、以下を提供する:
(i)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)と
(ii)治療用ペプチドと
をコードする核酸分子であって、治療用ペプチドが非天然型ペプチドである、核酸分子。
態様29は、以下を提供する:
終止コドンが、CARをコードする核酸セグメントと、治療用ペプチドをコードする核酸セグメントとを隔てている、態様28記載の核酸分子。
態様30は、以下を提供する:
前記核酸分子によりコードされる治療用ペプチドが、以下の特性:
(i)治療用ペプチドは、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)経路の活性化因子である、
(ii)治療用ペプチドは、環状ジヌクレオチドの模倣体である、
(iii)治療用ペプチドは、短鎖脂肪酸(SCFA)の模倣体である、
(iv)治療用ペプチドは、パターン認識受容体(PRR)のアゴニストである、
(v)治療用ペプチドは、ステロイド/ホルモン様分子の模倣体である、
(vi)治療用ペプチドは、標的細胞のアポトーシスを促進する、
(vii)治療用ペプチドは、免疫原性エピトープである、および/または
(viii)治療用ペプチドは、標的細胞における1つまたは複数のDNA修復機構を遮断する
の1つまたは複数を有する、態様28または態様29記載の核酸分子。
態様31は、以下を提供する:
治療用ペプチドが、cGAMP、cAMP、またはcGMPの模倣体である、態様30記載の核酸分子。
態様32は、以下を提供する:
治療用ペプチドが、TLRアゴニストの模倣体である、態様30記載の核酸分子。
態様33は、以下を提供する:
治療用ペプチドが、フラジェリン、CpGモチーフ、ペプチドグリカン、リポ多糖(LPS)、またはモノホスホリルリピドA(MPL)の模倣体である、態様32記載の核酸分子。
態様34は、以下を提供する:
治療用ペプチドが、第2のミトコンドリア由来カスパーゼ活性化因子(SMAC)模倣体である、態様30記載の核酸分子。
態様35は、以下を提供する:
治療用ペプチドが、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の阻害剤である、態様30記載の核酸分子。
態様36は、以下を提供する:
非天然型ペプチドをコードする核酸が、天然に存在するペプチドをコードする核酸に対して80%以下の配列同一性を有する、態様28~35のいずれか一つ記載の核酸分子。
態様37は、以下を提供する:
標的細胞が、腫瘍細胞である、態様28~36のいずれか一つ記載の核酸分子。
態様38は、以下を提供する:
前記核酸分子によりコードされる抗原結合ドメインが、抗体、Fab、およびscFvからなる群より選択される、態様28~37のいずれか一つ記載の核酸分子。
態様39は、以下を提供する:
前記核酸分子によりコードされる結合ドメインが、TCRである、態様28~37のいずれか一つ記載の核酸分子。
態様40は、以下を提供する:
前記核酸分子によりコードされる結合ドメインが、CD19、CD20、CD22、BCMA、CD123、CD133、EGFR、EGFRvIII、メソテリン、Her2、PSMA、CEA、GD2、IL-13Ra2、グリピカン-3、CIAX、LI-CAM、CA 125、CTAG1B、ムチン1、および葉酸受容体-アルファからなる群より選択される標的抗原に結合する、態様28~39のいずれか一つ記載の核酸分子。
態様41は、以下を提供する:
前記核酸分子によりコードされる膜貫通ドメインが、CD8アルファ、CD3ゼータ、CD3イプシロン、CD28、およびICOSからなる群より選択されるタンパク質からの膜貫通ドメインである、態様28~40のいずれか一つ記載の核酸分子。
態様42は、以下を提供する:
前記核酸分子によりコードされる細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ゼータ、TCRゼータ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3デルタ、またはICOSからなる群より選択されるタンパク質の機能的シグナル伝達ドメインを含む、態様28~41のいずれか一つ記載の核酸分子。
態様43は、以下を提供する:
前記核酸分子によりコードされる細胞内シグナル伝達ドメインが、機能的シグナル伝達ドメインを含み、かつ、共刺激性ドメインをさらに含み、ここで、共刺激性ドメインが、4-1BBまたはCD28からの機能的シグナル伝達ドメインを含む、態様28~42のいずれか一つ記載の核酸分子。
態様44は、以下を提供する:
抗CD19 scFv、CD8アルファ膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激性ドメイン、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むCAR分子をコードする、態様28~43のいずれか一つ記載の核酸分子。
態様45は、以下を提供する:
PRRを活性化するRNA分子をさらに含む、態様28~44のいずれか一つ記載の核酸分子。
態様46は、以下を提供する:
RNA分子が、7SLである、態様45記載の操作された細胞。
態様47は、以下を提供する:
態様28~46のいずれか一つ記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
態様48は、以下を提供する:
細胞においてCARおよび治療用ペプチドを共発現させるための方法であって、CARおよび治療用ペプチドが発現されるような条件下で、態様47記載の発現ベクターを細胞に送達することを含む、方法。
態様49は、以下を提供する:
態様28~45のいずれか一つ記載の核酸分子または態様47記載の発現ベクターを含む、細胞。
態様50は、以下を提供する:
キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変されたT細胞の有効量を対象に投与することを含む、対象における疾患または障害を治療するための方法であって、CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含み、該方法が、非天然型治療用ペプチドを介した、がんに対する内因性免疫応答の刺激をさらに含み、非天然型治療用ペプチドが、改変されたT細胞において発現される、および/または、改変されたT細胞と併用して投与され、非天然型治療用ペプチドが、以下の特性:
(i)治療用ペプチドは、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)経路の活性化因子である、
(ii)治療用ペプチドは、環状ジヌクレオチドの模倣体である、
(iii)治療用ペプチドは、短鎖脂肪酸(SCFA)の模倣体である、
(iv)治療用ペプチドは、パターン認識受容体(PRR)のアゴニストである、
(v)治療用ペプチドは、ステロイド/ホルモン様分子の模倣体である、
(vi)治療用ペプチドは、標的細胞のアポトーシスを促進する、
(vii)治療用ペプチドは、免疫原性エピトープである、および/または
(viii)治療用ペプチドは、標的細胞における1つまたは複数のDNA修復機構を遮断する
の1つまたは複数を有する、方法。
態様51は、以下を提供する:
治療用ペプチドが、cGAMP、cAMP、またはcGMPの模倣体である、態様50記載の方法。
態様52は、以下を提供する:
治療用ペプチドが、TLRアゴニストの模倣体である、態様50記載の方法。
態様53は、以下を提供する:
治療用ペプチドが、フラジェリン、CpGモチーフ、ペプチドグリカン、リポ多糖(LPS)、またはモノホスホリルリピドA(MPL)の模倣体である、態様50記載の方法。
態様54は、以下を提供する:
治療用ペプチドが、第2のミトコンドリア由来カスパーゼ活性化因子(SMAC)模倣体である、態様50記載の方法。
態様55は、以下を提供する:
治療用ペプチドが、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の阻害剤である、態様50記載の方法。
態様56は、以下を提供する:
非天然型ペプチドが、任意の天然に存在するペプチドに対して80%以下の配列同一性を有するペプチドである、態様50記載の方法。
態様57は、以下を提供する:
ペプチドが、SEQ ID NO:1~16からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、態様50記載の方法。
態様58は、以下を提供する:
治療用ペプチドが、免疫原性エピトープであり、ここで、対象への投与後に、免疫原性エピトープが、該対象のがん細胞の表面に発現される、態様50記載の方法。
態様59は、以下を提供する:
治療用ペプチドが、改変されたT細胞において発現され、ここで、対象への改変されたT細胞の投与に続いて、該治療用ペプチドが、該改変されたT細胞から1つまたは複数の細胞外小胞中に排出される、態様51~58のいずれか一つ記載の方法。
態様60は、以下を提供する:
治療用ペプチドが、1つまたは複数の細胞外小胞を介して、対象の1つまたは複数の抗原提示細胞に送達される、態様59記載の方法。
態様61は、以下を提供する:
キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変されたT細胞の抗がん活性を増強するための方法であって、CARが、腫瘍細胞上に発現される抗原に特異的に結合する抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびシグナル伝達ドメインを含み、該方法が、T細胞において非天然型治療用ペプチドを共発現させることを含み、非天然型治療用ペプチドが、以下の特性:
(i)治療用ペプチドは、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)経路の活性化因子である、
(ii)治療用ペプチドは、環状ジヌクレオチドの模倣体である、
(iii)治療用ペプチドは、短鎖脂肪酸(SCFA)の模倣体である、
(iv)治療用ペプチドは、パターン認識受容体(PRR)のアゴニストである、
(v)治療用ペプチドは、ステロイド/ホルモン様分子の模倣体である、
(vi)治療用ペプチドは、標的細胞のアポトーシスを促進する、
(vii)治療用ペプチドは、免疫原性エピトープである、および/または
(viii)治療用ペプチドは、標的細胞における1つまたは複数のDNA修復機構を遮断する
の1つまたは複数を有する、方法。
態様62は、以下を提供する:
態様1~26のいずれか一つ記載の操作された細胞または態様27記載の組成物または態様49記載の細胞の有効量を対象に投与することを含む、対象における炎症性疾患、自己免疫疾患、またはがんを治療するための方法。
態様63は、以下を提供する:
がんが、固形腫瘍がんである、態様50~61のいずれか一つ記載の方法。
態様64は、以下を提供する:
がんが、肺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、中皮腫、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、卵管がん、子宮頸がん、前立腺がん、大腸がん、胃がん、膀胱がん、食道がん、および黒色腫からなる群より選択される、態様63記載の方法。
態様65は、以下を提供する:
がんが、血液がんである、態様50~61のいずれか一つ記載の方法。
態様66は、以下を提供する:
血液がんが、白血病またはリンパ腫である、態様65記載の方法。
態様67は、以下を提供する:
血液がんが、慢性リンパ球性白血病(CLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫、急性リンパ性白血病(ALL)、ホジキンリンパ腫、B細胞性急性リンパ性白血病(BALL)、T細胞性急性リンパ性白血病(TALL)、小リンパ球性白血病(SLL)、急性骨髄性白血病(AML)、B細胞性前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、慢性骨髄性白血病、骨髄増殖性腫瘍、濾胞性リンパ腫、小児型濾胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、小細胞型または大細胞型濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖性病態、MALTリンパ腫(粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫)、辺縁帯リンパ腫、骨髄異形成、骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、形質芽細胞性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、脾辺縁帯リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、および形質細胞性骨髄腫からなる群より選択される、態様65記載の方法。
態様68は、以下を提供する:
自己免疫疾患が、炎症性腸疾患である、態様62記載の方法。
本明細書において言及または引用される論文、特許および特許出願、ならびにすべての他の文書および電子的に入手可能な情報の内容は、それぞれの個々の刊行物が参照によって組み入れられることが具体的かつ個々に示されているかのように、参照によってそれらの全体が同程度に本明細書に組み入れられる。出願人等は、そのような任意の論文、特許、特許出願または他の物理的および電子的文書からのあらゆる資料および情報を本出願中に物理的に組み入れる権利を有する。
本開示は、その具体的な態様を参照しながら記載されてきたが、本開示の真の精神および範囲から逸脱しなければ、様々な変更を行っても等価物に置換してもよいことが、当業者によって理解されるべきである。本明細書に開示の態様の範囲から逸脱しなければ、適切な等価物を使用して本明細書に記載の方法の他の適切な改変および適合を行ってよいことが、当業者には容易に明らかとなろう。加えて、多くの改変を行って、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、1つまたは複数のプロセス段階を本開示の目的、精神および範囲に適合させてもよい。そのような改変はすべて、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。ここでは特定の態様を詳細に記載してきたが、同じものが以下の実施例を参照することによってより明確に理解され、以下の実施例は、例証を目的としてのみ含まれるものであって、限定を意図するものではない。
実験的実施例
以下の実施例を参照して本発明をこれから説明する。これらの実施例は、例証だけの目的で提供されるものであって、本発明は、これらの実施例に限定されるわけではなく、本明細書において提供される教示の結果として明白であるすべての変形を包含する。
実施例1:免疫原性ペプチドエピトープを発現および移送するように操作されたCAR-T細胞
免疫原性ペプチドエピトープを発現および移送するようにCAR-T細胞を操作できるかどうかを評価するために、研究を実施した。SIINFEKLペプチド(SEQ ID NO:7)を試験ペプチドとして利用した。図2は、SIINFEKLペプチド送達のためのウイルス構築物の概略図を提供する。該構築物は、19BBz CAR分子(抗CD19 scFv、ならびに4-1BBおよびCD3ゼータ細胞内ドメイン)とSIINFEKLペプチドとを含む(「Ova-19BBz CAR」)。短いペプチド長は、内部終止コドンを許容し、それが、ペプチドとCAR分子の両方の効率的な発現を容易にする。図2に示しているようなSIINFEKLペプチドの構築物を、対象から単離したCD3+ T細胞に組み込んだ。その後、細胞をフローサイトメトリーによって評価して、CARおよび/またはペプチドが、操作された細胞において発現されたかを判定した。図3は、ペプチドとCAR分子の両方が効率的に発現されたことを示している。ペプチド発現は、SIINFEKLペプチド/MHC特異的抗体によって検出した。さらに、ペプチド/MHC複合体が、CAR+細胞上だけでなく、非形質導入(非CAR発現)細胞上でも検出されたが、このことは、その集団の他の細胞への抗原ペプチドの移送の成功を示している(図4)。
CAR発現細胞から腫瘍細胞および/または免疫細胞への抗原ペプチドの移送を評価するために、さらなる研究を実施した。図5の図解描写に示しているように、Ova-19BBz CAR T細胞を培養で増大させ、増大後に細胞およびEVを収集した。増大のために、マウス脾臓細胞から、陰性選択T細胞単離キットを使用してT細胞を単離した。単離に続いて、T細胞をCD3/CD28ビーズで刺激し、24時間後、指定のCAR分子をコードするレトロウイルス(MSGV骨格)を導入した。形質導入の48時間後、細胞を脱ビーズし、CAR形質導入について調べた。
超遠心分離を介して培地から細胞外小胞(EV)を収集した。次いで、EVを、SIINFEKLに特異的である1×106個のOT-I T細胞と共に、様々な濃度のB16細胞(黒色腫細胞株)とインビトロでインキュベートした。72時間後、ペプチド/MHC負荷およびOT-I T細胞活性化をフローサイトメトリーによって評価した。T細胞活性化は、グランザイムBの染色によって判定した。図6Aに示しているように、Ova-CAR-T発現細胞からのEVの濃度増加と共に、腫瘍上のOva/MHC発現の増加、ならびにOT-I T細胞におけるグランザイムB発現の増加の用量反応が観察された。図6Bに示しているように、同様に、OT-1 T細胞上のKi67(増殖)およびIFNγ発現も、Ova-CAR-T発現細胞から放出されたEVの存在下で用量依存的な様式で増加した。図6Cは、図6Aおよび6Bに示したKi67発現(左パネル)、グランザイムB発現(中央パネル)およびIFNγ発現の定量を提供する。データは、CAR-T細胞が該ペプチドを発現し、それを腫瘍細胞に移送し、そこで、該ペプチドがMHCとの関連で提示されたことを示した。さらに、このペプチド移送は、抗腫瘍T細胞応答を用量依存的かつ統計的に有意な様式で増強した。
同じ実験セットアップ(図5)を利用し、フローサイトメトリーによって、様々な濃度のOva-CAR T EV負荷での腫瘍細胞死も評価した。相対的細胞死を図7に示している。漸増EV濃度(0、18、37.5、および75μg)で、B16細胞とEVおよびOT-I T細胞のインキュベーションは、腫瘍細胞死レベルの統計的に有意な増加をもたらした。したがって、インビトロ研究は、免疫原性ペプチドを発現するように操作されたCAR-T細胞が、免疫原性ペプチドを腫瘍細胞に移送でき、かつ、免疫原性ペプチドを発現しないCAR-T細胞と比較して、増強されたT細胞応答および腫瘍死を惹起できることを示した。
CAR-T細胞が、インビボで免疫原性ペプチドエピトープを発現および移送するかどうかを調べるために、図8に描写しているように、マウスに、B16 WT細胞とB16-hCD19腫瘍細胞の1:1混合物(50,000個の細胞)を移植し、その後、12日目に4.5×106個のOva-19BBz CAR-T細胞で処置した。4日後、腫瘍を採取し、腫瘍細胞およびDCのペプチド負荷をフローサイトメトリーによって評価した。結果を図9Aに提供する。対照CAR-T細胞(19BBz)を受けた動物では、腫瘍細胞または樹状細胞でペプチド/MHC負荷は検出されなかった(生細胞/CD45.2+、F4/80-、CD11c+/MHCII+でゲーティング)。しかしながら、Ova-19BBz CAR-T細胞を受けた動物から単離した腫瘍細胞と樹状細胞の両方で、ペプチド/MHC陽性細胞が検出された。Ovaペプチド負荷はまた、Ova-19BBzレシピエントでの陽性四量体染色により検出されたように(図9B、中央パネル)、19BBz対照レシピエント(図9B、左パネル)と比較して、Ova特異的CD8+ T細胞の増大ももたらした。四量体陽性のOva特異的T細胞はまた、Ki67にも陽性であり、このことは、活性化を示している(図9B、右パネル)。図10Aは、19BBzおよびOva-19BBzレシピエントマウスにおけるOva+腫瘍細胞(左パネル)および内因性免疫細胞(右パネル)のパーセントを示している。上記のように、対照19BBz細胞を受けた動物では、Ova+腫瘍細胞または内因性免疫細胞は検出されなかったが、Ova-19BBzレシピエントにおいて多数の腫瘍細胞および内因性免疫細胞がOvaを提示した。Ova四量体について陽性染色された内因性T細胞の%およびKi67を発現するCD8 T細胞の%の定量を図10Bの上の2つのパネルに提供する。16日目の2つの異なる群の腫瘍重量を図10Bの下パネルに示している。Ova-19BBzレシピエントの腫瘍重量は、19BBzレシピエントの腫瘍重量よりも有意に低かった(p=0.002)。
類似のインビボ実験セットアップを使用するが、腫瘍の移植にB16-hCD16およびB16 WT細胞の1:1混合物を使用して、インビボの腫瘍成長を制御するOva-19BBz CAR-T細胞の能力をさらに評価した。マウスに、B16-hCD19/B16腫瘍細胞混合物を移植し、その後、移植後12日目にOva-19BBz CAR-T細胞または対照19BBz CAR-T細胞で処置した(図11A)。腫瘍細胞の成長を経時的にモニタリングし、腫瘍体積(cm3)として測定した。図11Bは、腫瘍移植後21日目(CAR-T細胞投与の8日後)までで、Ova-19BBz群に対し、19BBz群において腫瘍体積が有意に高かったことを示している。腫瘍移植後24日目および28日目、2つの群間の腫瘍体積の差は、時間と共に増大し続けた(p<0.001)。
まとめると、当研究は、免疫原性ペプチドエピトープをCAR構築物に組み込み、CAR分子およびペプチドを細胞において発現させることが、免疫原性ペプチドを腫瘍細胞および樹状細胞に移送し、抗腫瘍T細胞応答を増強することにより、CAR-T療法を増強できることを示した。この免疫原性ペプチド移送は、増強された抗原特異的T細胞活性化および抗腫瘍活性(腫瘍サイズの有意な阻害を含めた)につながる。したがって、この研究は、免疫原性ペプチドを発現させることとCAR-T細胞療法とを併用する方法が、CAR-T細胞療法の有効性を有意に改善することを示した。
低免疫原性がんという状況下のOva-19BBz CAR-T細胞の効果を調査するために、マウスに、混合KP腫瘍を移植し、その後、移植後5日目および12日目のOva-19BBz CAR-T細胞での処置に、8日目、11日目および14日目の抗CTLA4および抗PD1抗体での処置を併用した(図12A)。成長および生存をモニタリングした。加えて、当研究を、OvaペプチドおよびRNA RN7SL1(7SL)の組み合わせを含有するCARの低免疫原性がんにおける効果を評価するために設計した;図12Aの構築物を参照されたい。7SLは、腫瘍内PAMPとして機能し、PRRシグナル伝達を活性化する、高度に構造化されたRNAである。7SL CAR-T細胞(例えば、BBz-7SL)は、例えば、国際特許出願第PCT/US2019/012675号およびJohnson et al., J. Immunol vol. 202(1) 134-4 (2019)において考察されている。図12Bおよび12Cに示しているように、極めて低い免疫原性のKP腫瘍という状況下では、Ovaペプチドと7SL PAMPとの併用は、19BBz CAR-T細胞と比較して、ならびにOva-19BBzまたはBBz-7SL CAR-T細胞と比較して、経時的に有意に低下した腫瘍体積および有意に改善された生存をもたらした。それゆえ、免疫原性ペプチドおよび7SLの併用は、当状況下でCAR-T細胞の抗腫瘍効果を有意に改善させた。
多くの固形ヒト腫瘍は、十分な新生抗原および/または適切な抗腫瘍T細胞レパートリーを欠いており、そのいずれも、RN7SL1を発現するCAR-T細胞によって開始される内因性T細胞応答を限定し得る。これに取り組むために、RN7SL1を最適なペプチド抗原と共送達するように、CAR-T細胞を操作した。概念実証として、19BBz CAR-T細胞を、SIINFEKLペプチド単独を発現するように(Ova-19BBz)またはRN7SL1と共に発現するように(Ova-19-7SL)操作した(図26A、上)。MHCクラスIと複合体化したSIINFEKLを検出する抗体を使用して(Porgador et al., (1997) Immunity 6, 715-726)、このペプチドが、Ova-19BBz CAR-T細胞上に効果的に提示され、またCAR- T細胞上でも検出されることが確認されたが(図26A、下)、このことは、このペプチド抗原の発現および展開の成功を実証している。実際に、Ova-19BBz CAR-T細胞培養物からEVをB16腫瘍細胞とインキュベートしたとき、がん細胞上でのMHCクラスIによるSIINFEKL提示の用量依存的な増加が観察され(図26B、上段、左プロット)、ナイーブOT-I T細胞の添加は、増加するT細胞活性化を示した(図26B)。並行したインビボ実験は、Ova-19BBz CAR-T細胞が、腫瘍細胞およびCD45.2+免疫細胞によるMHCクラスI上での提示のためにSIINFEKLを送達し(図26C)、Ki67+ Ova特異的および全内因性CD8 T細胞の増大を促進し(図26D~26E)、そして、混合CD19+およびCD19- B16腫瘍の制御を改善する(図26F)ことを明らかにしている。CAR-T細胞によるRNA送達とは異なり、SIINFEKL送達は、免疫細胞に明らかに偏ることはなかった(図26H)。したがって、CAR-T細胞を、腫瘍細胞および免疫細胞によって効果的に提示されるペプチド抗原を送達するように操作することができる。
CAR-T細胞がOvaペプチドを効果的に送達できることを検証してきたが、CAR抗原喪失について、低変異量腫瘍モデルに対して、SIINFEKLとRN7SL1を共発現する19BBz CAR-T細胞を試験し、その有効性を評価した(図26G)。このために、マウスに、ヒトCD19+およびCD19- KP肺がん細胞の1:1混合物からなる腫瘍を移植し(DuPage et al., (2011) Cancer Cell 19, 72-85)、5×105個のOT-I T細胞を養子移入して、既存のT細胞プールの存在を調整した。19BBz CAR-T細胞またはSIINFEKLもしくはRN7SL1のいずれかを送達する19BBz CAR-T細胞は、ほとんど効果がなかった。このことは、わずかに免疫原性の異種腫瘍では、自律性のCAR機能、内因性免疫の動員、またはアジュバント性の増強なしの新生抗原の提供が、すべて個別に不十分であることを示唆している。しかしながら、RN7SL1+SIINFEKLの同時CAR-T細胞送達によってこれらの機能を組み合わせると、腫瘍成長が有意に遅延する。したがって、これらのデータは、多武装化CAR-T細胞が、ペプチド抗原とRN7SL1とを共展開して、内因性免疫をさらに動員することができ、それにより、たとえ異種CAR抗原発現を有する腫瘍が適切な新生抗原を欠いていたとしても、CAR-T細胞は、CAR抗原喪失の影響を受けにくいことを示唆している。
実施例2:新規STINGアゴニストペプチド、およびSTING経路を標的とするように操作されたCAR-T細胞
計算により開発されたデノボ治療用ペプチドの、CAR-T細胞を介して送達される能力、およびCAR-T細胞の有効性を増強する能力を評価するために、研究を行った。治療用ペプチドを開発するために、本発明者らは、計算によるペプチド結合予測アルゴリズムを利用した。このアルゴリズムは、折り畳まれていないペプチドを選び、指定された部位への結合の反復計算予測を使用して、それらを新規ペプチドへと折り畳む(例えば、Obarska-Koshina et al., "PepComposer: computational design of peptides binding to a given protein surface." Nucleic Acid Research 2016 Jul 8;44(W1): W522-8を参照のこと)。
免疫応答を引き起こすその強力な能力を考慮して、STING経路を経路標的として選択した。STINGは、環状ジヌクレオチドcGAMPによって引き起こされるが、cGAMPは、細胞での発現のために発現ベクターにCAR分子と一緒にコードすることができない。初期段階として、cGAMPによって占有されるSTING結合部位に結合するペプチドを作製した。STING構造に結合する新規ペプチドは、タンパク質構造データバンクによって提供される結晶構造で表示されるようにSTING-cGAMP活性複合体の構造(構造4EMT)からcGAMPを除去し、cGAMPのない単独の活性STINGの構造を得ることによって同定した(図13)。モンテカルロ側鎖置換によって、空になったcGAMPポケットでのペプチド結合を予測した。図14の左パネルは、代表的なサンプリングペプチド結合のためにポリグリシンペプチドを用いたSTING構造を示している。図14の右パネルは、予測されたSTING結合ペプチドがcGAMPポケット内に結合しているSTING構造を示している。この構造中に示されるペプチドは、ペプチドST2(SEQ ID NO:3:LFILSG)である。
活性を試験するために6つのcGAMP模倣ペプチド(本明細書において、STINGペプチドとも称される)を選択した。骨髄樹状細胞(BMDC)刺激についての初期スクリーンは、計算による方法を介して作製された6つのSTINGペプチドが活性であったことを明らかにした。BDMCは、マウスの後肢から骨髄を採取し、培地(RPMI+10% FBS、30ng/mL GM-CSF)中で4日間培養することによって調製した。次いで、BMDCを、リポソーム(Lipofectamine 2000)に封入した有望なSTINGアゴニストペプチドで刺激し、GM-CSFとの48時間の培養に戻した。次いで、STING活性の代用としてフローサイトメトリーによってCD86の発現についてBMDCを評価した。研究設計の図解を図15の左パネルに提供する。
結果を図15の右パネルに提供する。試験したペプチドは、ペプチドST1C、ST1、ST2、ST3、ST4、およびST5(それぞれ、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、および6)であった(表1)。天然リガンドcGAMPを陽性対照として使用した。当研究は、5つのペプチドすべてが、BMDCにおいて、陰性対照を超える統計的に有意なレベルでCD86発現を増加させたことを示した。ST2ペプチドが、試験したペプチドの中で最も高いCD86発現を誘導した。
STINGアゴニストペプチドST2の活性をさらに特徴付けた。野生型(WT)またはSTINGノックアウト(KO)マウスからのBMDCを上述したように調製した。ST2での刺激に続いて、細胞にOva(SIINFEKL)ペプチドを負荷し、次いで、十分に洗浄して残留ペプチドを除去した。次いで、Ovaペプチドに特異的なOT-I T細胞をBMDC培養物に加え、DC活性およびCD8 T細胞応答を刺激する能力を評価した。48時間後、グランザイムB(細胞殺傷活性の指標)、Ki67(細胞増殖の指標)およびIFNγのOT-I T細胞発現をフローサイトメトリーによって評価した。図16に示しているように、ST2ペプチドでのDCの刺激は、WT細胞においてグランザイムB、Ki67およびIFNγの3つすべてによって測定されたように、T細胞刺激を有意に増加させた。グランザイムB、Ki67およびIFNγは、STING KO 細胞においてリポソームのみの対照を超えて有意に増加することはなかったが、このことは、ST2の活性が、STING経路を必要とすることを示している。したがって、結果は、STINGペプチドが、STING依存的機序を介して、DCによるT細胞機能を増強することを示した。
次に、本明細書に提供される新規STINGペプチドのCAR-T細胞による送達がCAR-T療法の抗がん活性を増強するかどうかを判定するために、研究を実施した。図17の上のパネルは、当研究で使用したCAR-T構築物の概略図を提供する。19BBz CAR構築物を対照として使用して、CD19 CAR-T細胞(「19BBz」)を作製した。また、ST2ペプチドをコードする核酸セグメントと19BBz CAR分子をコードする核酸とを終止コドンにより分離した、ST2ペプチドをさらに含む19BBz CAR構築物を調製して、ST2ペプチドを有するCD19 CAR-T細胞(「19BBz-STINGペプチド」)を作製した。
研究設計の概略図を図17の下パネルに提供する。マウスに、B16-hCD19腫瘍を移植し、5日目および12日目にCAR-T細胞で、そして、8日目、11日目および14日目に抗CTLA4抗体で処置した。80日にわたって生存率をモニタリングした。19BBz-STINGペプチドCAR-T細胞を受けた動物は、ST2ペプチドなしのCAR-T細胞を受けたマウスと比較して、有意に改善された生存を示した(図18;p=0.036)。
まとめると、当研究は、計算による結合解析を介して作製された新規STINGペプチドが、強力なcGAMP模倣ペプチドとして作用し、がん抗原に対する免疫応答を増強することができることを示した。CAR-T細胞療法という状況下でのcGAMP模倣体のSTINGアゴニストペプチドの存在は、CAR-T細胞の抗がん効果を有意に改善させた。したがって、本開示は、以前から知られている手段または従来の手段でCAR-T細胞により送達できない免疫系の強力な経路の活用を介した、CAR-T細胞療法を改善するための新規方法を提供する。
実施例3:SMAC模倣ペプチドとCAR-T細胞療法との併用
SMACの活性化は、アポトーシスを増強し、細胞死シグナルの存在時の細胞死の誘導に特に効果的である。SMAC模倣低分子は、がんにおいて試験されているが、それら自体は、臨床研究において有効性を示していない。理論により拘束されることを望まないが、臨床研究でのSMAC低分子の低い有効性は、最適なSMAC活性に必要とされ得る細胞死誘因子(例えば、TNF/TRAIL経路の活性化)の欠如に全体的または部分的に起因し得る。
SMACペプチドは、合理的設計戦略を使用して作製した。用量反応アッセイにおいて最良の結合および効力(細胞死の誘導によって測定した場合)を有するペプチドを試験に選択した。SMAC模倣ペプチド組成物をリポソームに封入し、20ng/mLのTNFの存在下、様々な濃度のB16またはKP(肺腺がん)細胞にインビトロでトランスフェクトした。24時間後、細胞死をフローサイトメトリーによって評価した。例示的なデータセットを図19に提供する。ペプチド6(SMACm6;SEQ ID NO:8)を、複数の細胞株での用量反応に基づきさらなる分析に選択した。
SMACm6模倣ペプチドをリポソームに封入し、20ng/mLのTNFありまたはなしで、様々な濃度のB16またはKP細胞にインビトロでトランスフェクトした。図20に示しているように、TNFの非存在下では、細胞死は観察されなかった。TNFの存在下で、漸増濃度の封入SMACm6は、漸増する相対的細胞死をもたらした。したがって、データは、SMAC模倣ペプチドが、インビトロで腫瘍細胞のTNF依存的細胞死を誘導することを示した。
SMACm CAR-T構築物を図21に示しているように作製し、T細胞で発現させた。SMACm CAR-T細胞を培養で増大させた。細胞培養後、超遠心分離を介して培地からEVを収集した。次いで、EVを、20ng/mLのTNFと共に、様々な濃度の指定の細胞とインビトロでインキュベートした。24時間後、細胞死をフローサイトメトリーによって評価した。結果を図22に提供し、両方の腫瘍細胞型で、SMACm6 EVが、細胞死を有意に増強したことを示す。
さらに、SMACm CAR-T EVは、インビボで腫瘍制御を増強した。マウスに、50,000個のB16-hCD19腫瘍を移植し、移植後5日目および12日目に1用量当たり2×106個のSMACm6 CAR-T細胞で、かつ、いくつかの群では8日目、11日目および14日目に抗CTLA4抗体で処置した。腫瘍成長を経時的に測定した。当研究の結果は、SMACm CAR-T細胞が、免疫チェックポイント遮断剤としての抗CTLA4抗体の存在下または非存在下で、対照19BBz CAR-T細胞と比較して、腫瘍体積を有意に低下させ、生存を有意に増加させたことを示した(図23)。
したがって、当研究により、臨床研究において標的として限定された有用性を示したが、特定の状況下では細胞死の強力なメディエイターとして作用することができる、TNF依存的細胞死経路を引き起こすペプチドは、CAR-T細胞療法によって送達することができ、そして、標的腫瘍細胞において細胞死を増加させることによりCAR-T細胞療法の有効性を有意に改善できることが示された。さらに、免疫チェックポイント阻害剤の存在または非存在にかかわらず、CAR-T細胞+SMAC模倣ペプチド群で、腫瘍体積および生存の改善が達成された。
実施例4:PARP阻害剤とCAR-T細胞療法との併用
PARP阻害剤は、DNA損傷修復(DDR)を遮断して細胞死を誘導することによって、細胞ストレスを増強する。DDRの低下は、ダメージ関連分子パターン分子(DAMP)産生によって媒介される増強された抗腫瘍免疫、ならびに増加した新生抗原出現率に関連する。本発明者らは、本明細書に提供される抗がん方法および組成物においてPARPを標的とするための戦略の一部としてPARPi模倣ペプチドを作製および同定しようとした。
実施例2に記載されるような方法を使用して、PARP阻害剤ペプチドを計算により設計した。結果として得られたPARP阻害剤(PARPi)模倣ペプチドをリポソームに封入し、TSA乳がん細胞にインビトロでトランスフェクトした。48時間後、DNA損傷応答のリードアウトとして、PD-L1をフローサイトメトリーによって評価した。当研究の結果を図25に示している。PARPi模倣ペプチド(Pep1、Pep1C、Pep2、およびPep3;それぞれ、SEQ ID NO:13、14、15、および16)は、PD-L1発現を増加させた。PARP阻害剤オラパリブを陽性対照として使用した。PARPi模倣ペプチドは、オラパリブと比較して同等レベルにPD-L1発現を増加させた。したがって、当研究は、計算により設計された新規PARPi模倣ペプチドが、がん細胞死を導くDNA損傷応答を誘導することを示した。態様では、PARPi模倣ペプチドが、操作されたCAR-T細胞を介した腫瘍微小環境への送達のためにCAR構築物に導入され得る。
実施例5:CAR-T細胞からのMHC-Iが、CAR-T細胞の細胞外小胞(EV)からの抗原ペプチドの送達により内因性T細胞を活性化するために必要である
OVA-19BBzまたは対照CARを発現するMHC-IありまたはMHC-IなしのCAR-T細胞(野生型またはB2M KO CD4 T細胞から生成された)を使用して、EVを単離した(図27A)。次いで、これらのEVを、OT-I CD8 T細胞(OVA特異的)と野生型B16がん細胞またはMHC-Iを欠損するB16細胞(B2M KO)のいずれかとの共培養物に加えた。48時間後に、OT-I T細胞によって発現されたT細胞活性化マーカーについてフローサイトメトリーを実施した。指定の培養条件下、MHC-I発現またはMHC-I欠損CAR-T細胞からのEVを添加した後の、OT-I T細胞上の指定のT細胞活性化マーカーの発現を、図27Bの上と下にそれぞれ示している。OT-I T細胞上のT細胞活性化マーカーの代表的なフローサイトメトリープロットを図27Cに示している。データは、CAR-T細胞からのMHC-Iが、CAR-T細胞の細胞外小胞(EV)からの抗原ペプチドの送達により内因性T細胞を活性化するために必要であることを実証している。
実施例6:抗原ペプチドを送達するように操作されたCAR-T細胞からの細胞外小胞は、内因性T細胞を直接活性化することができる
トランズウェル(transwell)フィルターを使用して、OT-I CD8 T細胞(図28A、上部ウェル)を、形質導入していないまたはOVA-199BBz CARもしくは対照19BBz CARのいずれかを発現するCAR-T細胞(図28A、下部ウェル)から分離した。ウェルを分離するフィルターは、細胞ではなく細胞外小胞(EV)の通過を可能にする0.4ミクロンの細孔径を有していた(図28A)。指定のCAR-T細胞を下部ウェルに添加した後の、上部ウェルからのOT-I CD8 T細胞の、指定のT細胞活性化マーカーまたはCAR-T細胞 EVから移送されたOVA/MHC-Iに関する代表的なフローサイトメトリープロットを図28Bに示している。結果は、抗原ペプチドを送達するように操作されたCAR-T細胞からの細胞外小胞が、内因性T細胞を直接活性化することができることを実証している。
他の態様
本明細書中の可変部の任意の定義における要素の一覧の記載は、その可変部の定義を、列記された要素の任意の単一の要素としてまたはそれらの組み合わせ(または部分的組み合わせ)として含む。本明細書におけるある態様の記載は、その態様を、任意の単一の態様としてまたは任意の他の態様もしくはその一部との組み合わせで含む。
本明細書において引用されるありとあらゆる特許、特許出願および刊行物の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。本発明は、具体的な態様を参照して開示しているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなしに当業者によって本発明の他の態様および変形が考案されてよいことが明らかである。添付の特許請求の範囲は、そのような態様および等価な変形のすべてを包含すると解釈されるものとする。

Claims (68)

  1. キメラ抗原受容体(CAR)および治療用ペプチドを含む操作された細胞であって、CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、治療用ペプチドが、非天然型治療用ペプチドであり、CAR分子および治療用ペプチドが、同じ発現構築物から発現される、操作された細胞。
  2. キメラ抗原受容体(CAR)および治療用ペプチドを含む操作された細胞であって、CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、治療用ペプチドが、非天然型治療用ペプチドであり、治療用ペプチドが、以下の特性:
    (i)治療用ペプチドは、インターフェロン遺伝子刺激因子(stimulator of interferon genes)(STING)経路の活性化因子である、
    (ii)治療用ペプチドは、環状ジヌクレオチドの模倣体である、
    (iii)治療用ペプチドは、短鎖脂肪酸(SCFA)の模倣体である、
    (iv)治療用ペプチドは、パターン認識受容体(PRR)のアゴニストである、
    (v)治療用ペプチドは、ステロイド/ホルモン様分子の模倣体である、
    (vi)治療用ペプチドは、標的細胞のアポトーシスを促進する、
    (vii)治療用ペプチドは、免疫原性エピトープである、および/または
    (viii)治療用ペプチドは、標的細胞における1つまたは複数のDNA修復機構を遮断する
    の1つまたは複数を有する、操作された細胞。
  3. 治療用ペプチドが、cGAMP、cAMP、またはcGMPの模倣体である、請求項1または2記載の操作された細胞。
  4. 治療用ペプチドが、TLRアゴニストの模倣体である、請求項1または2記載の操作された細胞。
  5. 治療用ペプチドが、フラジェリン、CpGモチーフ、ペプチドグリカン、リポ多糖(LPS)、またはモノホスホリルリピドA(MPL)の模倣体である、請求項4記載の操作された細胞。
  6. 治療用ペプチドが、第2のミトコンドリア由来カスパーゼ活性化因子(second mitochondria derived activator of caspase)(SMAC)模倣体である、請求項1または請求項2記載の操作された細胞。
  7. 治療用ペプチドが、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の阻害剤である、請求項1または請求項2記載の操作された細胞。
  8. 非天然型ペプチドが、天然に存在するペプチドに対して90%以下の配列同一性を有するペプチドである、請求項1~7のいずれか一項記載の操作された細胞。
  9. 非天然型ペプチドが、天然に存在するペプチドに対して80%以下の配列同一性を有するペプチドである、請求項1~7のいずれか一項記載の操作された細胞。
  10. 前記ペプチドが、SEQ ID NO:1~16からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか一項記載の操作された細胞。
  11. 治療用ペプチドが、操作された細胞から細胞外小胞中に排出される、請求項1~10のいずれか一項記載の操作された細胞。
  12. 治療用ペプチドが、Gタンパク質共役受容体(GPCR)に結合するSCFAの模倣体である、請求項1~11のいずれか一項記載の操作された細胞。
  13. 標的細胞が、腫瘍細胞である、請求項1~12のいずれか一項記載の操作された細胞。
  14. T細胞またはNK細胞である、請求項1~13のいずれか一項記載の操作された細胞。
  15. 抗原結合ドメインが、抗体、抗原結合断片(Fab)、および単鎖可変断片(scFv)からなる群より選択される、請求項1~14のいずれか一項記載の操作された細胞。
  16. 前記結合ドメインが、T細胞受容体(TCR)である、請求項1~14のいずれか一項記載の操作された細胞。
  17. 標的抗原が、CD19、CD20、CD22、BCMA、CD123、CD133、EGFR、EGFRvIII、メソテリン、Her2、PSMA、CEA、GD2、IL-13Ra2、グリピカン-3、CIAX、LI-CAM、CA 125、CTAG1B、ムチン1、および葉酸受容体-アルファからなる群より選択される、請求項1~16のいずれか一項記載の操作された細胞。
  18. 標的抗原が、腸細胞上に発現される、請求項17記載の操作された細胞。
  19. 膜貫通ドメインが、CD8アルファ、CD3ゼータ、CD3イプシロン、CD28、およびICOSからなる群より選択されるタンパク質からの膜貫通ドメインである、請求項1~18のいずれか一項記載の操作された細胞。
  20. 細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ゼータ、TCRゼータ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3デルタ、またはICOSからなる群より選択されるタンパク質の機能的シグナル伝達ドメインを含む、請求項1~19のいずれか一項記載の操作された細胞。
  21. 細胞内シグナル伝達ドメインが、機能的シグナル伝達ドメインを含み、かつ、共刺激性ドメインをさらに含み、ここで、共刺激性ドメインが、4-1BBまたはCD28からの機能的シグナル伝達ドメインを含む、請求項1~19のいずれか一項記載の操作された細胞。
  22. CARが、抗CD19 scFv、CD8アルファ膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激性ドメイン、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む、請求項1~21のいずれか一項記載の操作された細胞。
  23. 治療用ペプチドが、SCFA模倣体であるか、または、ステロイドおよび/もしくはホルモン様分子の模倣体であり、操作された細胞が、1つまたは複数のエフェクター機能の活性を低下させるようにさらに改変されている、請求項1~13のいずれか一項記載の操作された細胞。
  24. 1つもしくは複数の炎症性サイトカインの発現、グランザイムBの発現、またはパーフォリンの発現を低下または阻止するように改変されている、請求項23記載の操作された細胞。
  25. CAR分子および治療用ペプチドが、同じ発現構築物から発現され、ここで、発現構築物が、PRRを活性化するRNA分子をさらに含む、請求項1~24のいずれか一項記載の操作された細胞。
  26. RNA分子が、7SLである、請求項25記載の操作された細胞。
  27. 請求項1~26のいずれか一項記載の操作された細胞を含む、組成物。
  28. (i)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)と
    (ii)治療用ペプチドと
    をコードする核酸分子であって、治療用ペプチドが非天然型ペプチドである、核酸分子。
  29. 終止コドンが、CARをコードする核酸セグメントと、治療用ペプチドをコードする核酸セグメントとを隔てている、請求項28記載の核酸分子。
  30. 前記核酸分子によりコードされる治療用ペプチドが、以下の特性:
    (i)治療用ペプチドは、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)経路の活性化因子である、
    (ii)治療用ペプチドは、環状ジヌクレオチドの模倣体である、
    (iii)治療用ペプチドは、短鎖脂肪酸(SCFA)の模倣体である、
    (iv)治療用ペプチドは、パターン認識受容体(PRR)のアゴニストである、
    (v)治療用ペプチドは、ステロイド/ホルモン様分子の模倣体である、
    (vi)治療用ペプチドは、標的細胞のアポトーシスを促進する、
    (vii)治療用ペプチドは、免疫原性エピトープである、および/または
    (viii)治療用ペプチドは、標的細胞における1つまたは複数のDNA修復機構を遮断する
    の1つまたは複数を有する、請求項28または請求項29記載の核酸分子。
  31. 治療用ペプチドが、cGAMP、cAMP、またはcGMPの模倣体である、請求項30記載の核酸分子。
  32. 治療用ペプチドが、TLRアゴニストの模倣体である、請求項30記載の核酸分子。
  33. 治療用ペプチドが、フラジェリン、CpGモチーフ、ペプチドグリカン、リポ多糖(LPS)、またはモノホスホリルリピドA(MPL)の模倣体である、請求項32記載の核酸分子。
  34. 治療用ペプチドが、第2のミトコンドリア由来カスパーゼ活性化因子(SMAC)模倣体である、請求項30記載の核酸分子。
  35. 治療用ペプチドが、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の阻害剤である、請求項30記載の核酸分子。
  36. 非天然型ペプチドをコードする核酸が、天然に存在するペプチドをコードする核酸に対して80%以下の配列同一性を有する、請求項28~35のいずれか一項記載の核酸分子。
  37. 標的細胞が、腫瘍細胞である、請求項28~36のいずれか一項記載の核酸分子。
  38. 前記核酸分子によりコードされる抗原結合ドメインが、抗体、Fab、およびscFvからなる群より選択される、請求項28~37のいずれか一項記載の核酸分子。
  39. 前記核酸分子によりコードされる前記結合ドメインが、TCRである、請求項28~37のいずれか一項記載の核酸分子。
  40. 前記核酸分子によりコードされる前記結合ドメインが、CD19、CD20、CD22、BCMA、CD123、CD133、EGFR、EGFRvIII、メソテリン、Her2、PSMA、CEA、GD2、IL-13Ra2、グリピカン-3、CIAX、LI-CAM、CA 125、CTAG1B、ムチン1、および葉酸受容体-アルファからなる群より選択される標的抗原に結合する、請求項28~39のいずれか一項記載の核酸分子。
  41. 前記核酸分子によりコードされる膜貫通ドメインが、CD8アルファ、CD3ゼータ、CD3イプシロン、CD28、およびICOSからなる群より選択されるタンパク質からの膜貫通ドメインである、請求項28~40のいずれか一項記載の核酸分子。
  42. 前記核酸分子によりコードされる細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ゼータ、TCRゼータ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3デルタ、またはICOSからなる群より選択されるタンパク質の機能的シグナル伝達ドメインを含む、請求項28~41のいずれか一項記載の核酸分子。
  43. 前記核酸分子によりコードされる細胞内シグナル伝達ドメインが、機能的シグナル伝達ドメインを含み、かつ、共刺激性ドメインをさらに含み、ここで、共刺激性ドメインが、4-1BBまたはCD28からの機能的シグナル伝達ドメインを含む、請求項28~42のいずれか一項記載の核酸分子。
  44. 抗CD19 scFv、CD8アルファ膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激性ドメイン、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むCAR分子をコードする、請求項28~43のいずれか一項記載の核酸分子。
  45. PRRを活性化するRNA分子をさらに含む、請求項28~44のいずれか一項記載の核酸分子。
  46. RNA分子が、7SLである、請求項45記載の操作された細胞。
  47. 請求項28~46のいずれか一項記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
  48. 細胞においてCARおよび治療用ペプチドを共発現させるための方法であって、CARおよび治療用ペプチドが発現されるような条件下で、請求項47記載の発現ベクターを細胞に送達することを含む、方法。
  49. 請求項28~45のいずれか一項記載の核酸分子または請求項47記載の発現ベクターを含む、細胞。
  50. キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変されたT細胞の有効量を対象に投与することを含む、対象における疾患または障害を治療するための方法であって、CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含み、該方法が、非天然型治療用ペプチドを介した、がんに対する内因性免疫応答の刺激をさらに含み、非天然型治療用ペプチドが、改変されたT細胞において発現される、および/または、改変されたT細胞と併用して投与され、非天然型治療用ペプチドが、以下の特性:
    (i)治療用ペプチドは、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)経路の活性化因子である、
    (ii)治療用ペプチドは、環状ジヌクレオチドの模倣体である、
    (iii)治療用ペプチドは、短鎖脂肪酸(SCFA)の模倣体である、
    (iv)治療用ペプチドは、パターン認識受容体(PRR)のアゴニストである、
    (v)治療用ペプチドは、ステロイド/ホルモン様分子の模倣体である、
    (vi)治療用ペプチドは、標的細胞のアポトーシスを促進する、
    (vii)治療用ペプチドは、免疫原性エピトープである、および/または
    (viii)治療用ペプチドは、標的細胞における1つまたは複数のDNA修復機構を遮断する
    の1つまたは複数を有する、方法。
  51. 治療用ペプチドが、cGAMP、cAMP、またはcGMPの模倣体である、請求項50記載の方法。
  52. 治療用ペプチドが、TLRアゴニストの模倣体である、請求項50記載の方法。
  53. 治療用ペプチドが、フラジェリン、CpGモチーフ、ペプチドグリカン、リポ多糖(LPS)、またはモノホスホリルリピドA(MPL)の模倣体である、請求項50記載の方法。
  54. 治療用ペプチドが、第2のミトコンドリア由来カスパーゼ活性化因子(SMAC)模倣体である、請求項50記載の方法。
  55. 治療用ペプチドが、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の阻害剤である、請求項50記載の方法。
  56. 非天然型ペプチドが、任意の天然に存在するペプチドに対して80%以下の配列同一性を有するペプチドである、請求項50記載の方法。
  57. 前記ペプチドが、SEQ ID NO:1~16からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項50記載の方法。
  58. 治療用ペプチドが、免疫原性エピトープであり、ここで、対象への投与後に、免疫原性エピトープが、該対象のがん細胞の表面に発現される、請求項50記載の方法。
  59. 治療用ペプチドが、改変されたT細胞において発現され、ここで、対象への改変されたT細胞の投与に続いて、該治療用ペプチドが、該改変されたT細胞から1つまたは複数の細胞外小胞中に排出される、請求項51~58のいずれか一項記載の方法。
  60. 治療用ペプチドが、1つまたは複数の細胞外小胞を介して、対象の1つまたは複数の抗原提示細胞に送達される、請求項59記載の方法。
  61. キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変されたT細胞の抗がん活性を増強するための方法であって、CARが、腫瘍細胞上に発現される抗原に特異的に結合する抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびシグナル伝達ドメインを含み、該方法が、T細胞において非天然型治療用ペプチドを共発現させることを含み、非天然型治療用ペプチドが、以下の特性:
    (i)治療用ペプチドは、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)経路の活性化因子である、
    (ii)治療用ペプチドは、環状ジヌクレオチドの模倣体である、
    (iii)治療用ペプチドは、短鎖脂肪酸(SCFA)の模倣体である、
    (iv)治療用ペプチドは、パターン認識受容体(PRR)のアゴニストである、
    (v)治療用ペプチドは、ステロイド/ホルモン様分子の模倣体である、
    (vi)治療用ペプチドは、標的細胞のアポトーシスを促進する、
    (vii)治療用ペプチドは、免疫原性エピトープである、および/または
    (viii)治療用ペプチドは、標的細胞における1つまたは複数のDNA修復機構を遮断する
    の1つまたは複数を有する、方法。
  62. 請求項1~26のいずれか一項記載の操作された細胞または請求項27記載の組成物または請求項49記載の細胞の有効量を対象に投与することを含む、対象における炎症性疾患、自己免疫疾患、またはがんを治療するための方法。
  63. がんが、固形腫瘍がんである、請求項50~61のいずれか一項記載の方法。
  64. がんが、肺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、中皮腫、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、卵管がん、子宮頸がん、前立腺がん、大腸がん、胃がん、膀胱がん、食道がん、および黒色腫からなる群より選択される、請求項63記載の方法。
  65. がんが、血液がんである、請求項50~61のいずれか一項記載の方法。
  66. 血液がんが、白血病またはリンパ腫である、請求項65記載の方法。
  67. 血液がんが、慢性リンパ球性白血病(CLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫、急性リンパ性白血病(ALL)、ホジキンリンパ腫、B細胞性急性リンパ性白血病(BALL)、T細胞性急性リンパ性白血病(TALL)、小リンパ球性白血病(SLL)、急性骨髄性白血病(AML)、B細胞性前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、慢性骨髄性白血病、骨髄増殖性腫瘍、濾胞性リンパ腫、小児型濾胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、小細胞型または大細胞型濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖性病態、MALTリンパ腫(粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫)、辺縁帯リンパ腫、骨髄異形成、骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、形質芽細胞性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、脾辺縁帯リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、および形質細胞性骨髄腫からなる群より選択される、請求項65記載の方法。
  68. 自己免疫疾患が、炎症性腸疾患である、請求項62記載の方法。
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