JP2024510908A - ペプチド抗原用の担体タンパク質 - Google Patents

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Abstract

いくつかのペプチドエピトープが共有結合的にグラフトされている配列番号1からなるコンジュゲートペプチドを含む医薬組成物、このコンジュゲートペプチドを製造するための要素を含むキット、合成方法、およびワクチンとしての使用。

Description

本発明は、ペプチド抗原の担体タンパク質としてのタンパク質CRM197(配列番号1)の使用に関する。
免疫学は、多数の因子が応答の誘発または制御に関与する、最も複雑な臨床、生物学、さらには生化学分野の1つである。
これに関連して、ワクチン接種は、所望の特異性を持たせて免疫系を調整するための独特のツールを表す。
種々のエピトープ、とりわけペプチドが開発されて、今もなお用いられている。これらのエピトープは、これらを有するポリペプチド、例えばタンパク質として注射されるか、または完全に合成されたペプチドエピトープが注射される。
選択されたエピトープが短い場合、これらは通常、免疫系によって認識されることを確実にするために、担体タンパク質(フランス語でproteine porteuse)にカップリングされる。
当該担体タンパク質(担体)は、数が少ない。
実際、潜在的なあらゆる組成物、したがって潜在的な新しいあらゆる担体タンパク質は、適切な動物モデルにおいて試験されなければならず、これは複雑かつ高価であり、そして加えて、倫理的な疑問を提起するので、この種の研究は、目的が単に担体タンパク質のスクリーニングであるが、単純ではない。最後に、研究は、齧歯類または他の動物に行われたかに応じて、多くの場合、矛盾する結果をもたらす。
したがって、新しい担体タンパク質が必要とされている。
考えられる候補は、タンパク質CRM197を含む。このタンパク質は、齧歯類において、かつ/または当該タンパク質にグラフトされることとなるエピトープが糖もしくは糖脂質である場合に、使用法が知られているが、ペプチド、特に疎水性ペプチドによってコンジュゲートされるための当該タンパク質の使用は、これまで実施されておらず、またはいずれの場合にも、ヒト患者に投与されていない。
国際公開第2016/184963号パンフレットは、疾患に対して有効なワクチンを製造することを目指して、AIDSウイルスの糖タンパク質gp41に由来する短い親水性ヘキサペプチドをタンパク質CRM-197またはKLH上にグラフトすることを記載している。架橋が、直接的に、またはヘテロ二官能性剤によって実行される。いくつかの理論上のペプチド/CRM-197比が言及されているが、とりわけより複雑な、またはより親水性が低いペプチドについては、前記実施を記載している完全な例はない。
欧州特許出願公開第2659906号明細書は、アルファ-シヌクレインのエピトープを記載しており、そしてまた担体タンパク質CRM-197またはKLHを示唆しているが、CRM-197上へのペプチドエピトープのカップリングについては記載していない。
国際公開第2016/184963号パンフレット 欧州特許出願公開第2659906号明細書
本発明の第1の態様は、好ましくは同一の、いくつかのペプチドエピトープが共有結合的にコンジュゲートされている配列番号1からなるコンジュゲートペプチドを含む医薬組成物である。
有利には、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、または10個のペプチドエピトープが、配列番号1のペプチド上にグラフトされており(ペプチドエピトープモル:配列番号1モル)、かつ/または20、19、18、17、16、15個未満のペプチドエピトープが、配列番号1のペプチドにコンジュゲートされている(ペプチドエピトープモル:配列番号1モル)。
好ましくは、ペプチドエピトープは(それぞれ)、有利にはヘテロ二官能性架橋剤、好ましくはSulfo-GMBSを介して、配列番号1の-NH2残基のレベルにてコンジュゲートされている。
有利には、遊離-SH基が、天然のペプチドエピトープに、好ましくは、システインアミノ酸が、グラフトされることとなるペプチドエピトープのN末端またはC末端に加えられている。
この医薬組成物は、ヒト、イヌ、ウマ、またはラクダ科のメンバーからなる群から選択される患者のワクチン接種、好ましくは治療に用いられるのに有利である。患者は、好ましくはヒトである。
好ましくは、この医薬組成物はさらに、ワクチンアジュバント、好ましくはエマルジョン、または1つ以上のCpG単位を含むオリゴヌクレオチドを含む。
本発明の関連する態様は、この医薬組成物、およびコンジュゲートされた配列番号1を含む溶液にとって所望のpHを確実にする(pH)バッファを含む、指定されたpHを有する水溶液である。
このバッファpHは、有利には、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、または8.5である。上記の値は、好ましくは目標値±0.2、さらにより好ましくは±0.1であり、または目標値にさらに近い。ゆえに、pH3.0は、好ましくは、2.9よりも大きく、かつ3.1未満のpHを意味する。好ましいバッファpHは、酢酸pH4.5、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸pH6.5、ビス-トリスpH6.0、CHES(2-(N-シクロヘキシルアミノ)エタン酸)pH9.5、クエン酸pH3.2(または4.0もしくは5.5)、イミダゾールpH8、グリシンpH3.0、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)pH7.5、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)pH6.2、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)pH7.0、PIPPS(ピペラジン-N,N’-ビス(3-プロパンスルホン酸)pH3.7、およびリン酸pH5.0からなる群から選択される。上記分子は、pHに応じて塩であるときがあり、例えば、グリシンpH3バッファは、グリシンがプロトン化形態、例えばグリシン-HClであることを意味することが理解されるべきである。
本発明の別の関連する態様は、遊離-SH基を含む天然のタンパク質に由来するエピトープ、-NH2基および-SH基に対して反応性であるヘテロ二官能性架橋剤、好ましくはカップリング剤Sulfo-GMBS、ならびに担体タンパク質、すなわち配列番号1を含むキットである。
好ましくは、このキットはさらに、ワクチンアジュバント、好ましくはエマルジョン、または1つ以上のCpG単位を含むオリゴヌクレオチドを含む。
本発明の別の関連する態様は、ペプチドエピトープを担体タンパク質にカップリングさせる方法であって、遊離-SH基を含むペプチドエピトープを特定するか、または遊離-SH基が加えられているペプチドエピトープを特定する工程と、配列番号1である担体タンパク質を生成する工程と、この担体タンパク質を、-NH2基および-SH基に対して反応性であるヘテロ二官能性架橋剤を介して活性化して、この配列番号1の複数の-NH2基を、この(ヘテロ)二官能性架橋剤と反応させる工程と、活性化された担体タンパク質を、組み込まれていない架橋剤から分離する工程と、活性化された担体タンパク質を、特定されたペプチドエピトープと接触させて、ペプチドエピトープのこの-SH基を、架橋剤によって活性化されたこの担体タンパク質と反応させる工程と、いくつかのペプチドエピトープにカップリングされた担体タンパク質を、未反応基質および反応副生成物から分離する工程とを含む、方法である。
この方法では、好ましくは、ヘテロ二官能性架橋剤は、活性化されることとなる配列番号1の-NH2残基の数と比較して、過剰である。
好ましくは、この方法はさらに、いくつかのエピトープにカップリングされた担体タンパク質(配列番号1)を、指定されたpHバッファを含む水溶液中に溶解させて、コンジュゲートされた配列番号1を含む溶液にとって所望のpHを確実にする工程を含む。
この指定されたpHは、有利には、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、または8.5である。上記の値は、好ましくは目標値±0.2、さらにより好ましくは±0.1であり、または目標値にさらに近い。ゆえに、pH3.0は、好ましくは、2.9よりも大きく、かつ3.1未満のpHを意味する。
好ましいバッファpHは、酢酸pH4.5、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸pH6.5、ビス-トリスpH6.0、CHES(2-(N-シクロヘキシルアミノ)エタン酸)pH9.5、クエン酸pH3.2(または4.0もしくは5.5)、イミダゾールpH8、グリシンpH3.0、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)pH7.5、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)pH6.2、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)pH7.0、PIPPS(ピペラジン-N,N’-ビス(3-プロパンスルホン酸)pH3.7、およびリン酸pH5.0からなる群から選択される。
溶解工程は、有利には、これ以外にもアセトニトリルを含む溶液中で、または上記のpHバッファと相乗的に実行されてもよく、例えば、好ましくは、前記水溶液は、アセトニトリルを、好ましくは10%~50%(アセトニトリル:水;v:v)、例えば40(容量)%未満、例えば約30:70(アセトニトリル:水;v:v)、含む。これは、いくつかのペプチドエピトープにカップリングされた担体タンパク質の凍結乾燥の(最終)工程とつながれ得る。
本発明の別の関連する態様は、上記方法によって得ることができるコンジュゲートペプチドを含む医薬組成物である。好ましくは、この組成物はさらに、好ましくはエマルジョンから選択される、ワクチン接種アジュバント、および1つ以上のCpG単位を含むオリゴヌクレオチドを含む。
タンパク質CRM197(配列番号1)は、その高い含量の-NH2残基、40:39リジン、すなわち配列のほぼ10%、およびアミノ末端に起因して、ペプチドエピトープのカップリングに関して、二重に特殊である。
高いリジン含量に加えて、配列番号1は、タンパク質が天然に親水性であるように、他の多くの荷電アミノ酸または極性アミノ酸を含む。しかしながら、いくつかのペプチドエピトープにコンジュゲートされると、-NH2残基、とりわけより露出した-NH2残基が動員されて、親水性を根本的に覆す。この作用は、グラフトされることとなるエピトープが疎水性であるか、またはほんのわずかに親水性である場合に、さらに顕著である。
例えば適切な溶媒を選択することによって、物理化学的特性のそのような変化を克服することが、確かに可能である。しかしながら、当該条件は、医薬品の使用に適合したままでなければならない。ゆえに、(i)毒性溶媒もしくは変性溶媒、または(ii)極端であるか、もしくはいくつかのペプチドにコンジュゲートされた配列番号1の溶解度の限界に近すぎる条件は、許容されない。さらに、ペプチド合成中に、凍結乾燥工程を使用して反応の生成物を濃縮すること、または最終生成物を、安定し、かつ輸送が容易な粉末の形態で得ることが好都合である。しかしながら、アセトニトリル等の特定の有機溶媒は、爆発の危険性を伴うため、これらの条件において、過度に高い濃度にて使用されることはできない。
したがって、本発明の第1の態様は、いくつかのペプチドエピトープが共有結合的にグラフトされている配列番号1からなるコンジュゲートペプチドを含む医薬組成物である。当該組成物は、好ましくは医薬用途(ワクチン接種)用である。
本発明の文脈において、用語「ワクチン」または「ワクチン接種」は、好ましくは、それらの最も広い意味で理解され、免疫系の特異的応答を誘発することを目的とした、患者内へのペプチドエピトープのあらゆる注射を意味する。ゆえに、用語「ワクチン」または「ワクチン接種」は、本発明の文脈において、患者のあらゆる免疫化を有利に含む。所望の目的は、予防的であっても治療的であってもよい。免疫(ワクチン接種)は、感染性疾患に限定されないが、炎症性疾患、自己免疫性疾患、および変性疾患も含む(癌を含む)。応答は、体液性もしくは細胞性、またはそれらの双方であり得る。応答は、免疫系の(特異的)活性化であっても免疫系の(特異的)抑制であってもよい。標的とされる免疫系の細胞の種類は限定されず、抗原提示細胞の性質も限定されない。
好ましくは、配列番号1の分子上にグラフトされることとなるペプチドエピトープは同一であるが、いくつかの異なるエピトープのグラフト化が、配列番号1の1つの分子上に非常に良好に実行されることができる。
有利には、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、または10個のペプチドエピトープ、好ましくは20、19、18、17、16、15個未満のペプチドエピトープが、配列番号1のペプチド上にグラフトされる(ペプチドエピトープモル:配列番号1モル)。
配列番号1あたりのペプチドエピトープの数を正確かつ/または予測可能にすることで、グラフト化タンパク質の精製がより良好に実行されることが可能となる。
配列番号1あたりで多数のペプチドエピトープを得ることは、とりわけ疎水性ペプチドについて困難であるが、より容易な分離、および患者へのペプチドエピトープのより大きな投与を可能にし、これは、治療的ワクチン接種において、特に有利である。
有利には、ペプチドエピトープは、用いられるカップリング剤(例えばSulfo-GMBS)に応じて、時には「スペーサ」を、例えばカップリング剤の残りの部分を介して、配列番号1の-NH2残基のレベルにてグラフトされる。
グラフト化(コンジュゲーション)が、非常に親水性であり、かつ露出している荷電残基を、とりわけいくつかのエピトープがグラフトされている場合に、結果として生じる複合体の疎水性を大幅に増大させる疎水性複合体に変換するとしても、本発明者らは、グラフトされることとなるペプチドエピトープが、ほんのわずかに親水性であり得るか、または疎水性ですらある条件を特定するのに成功した。
本発明の文脈において、「ペプチドエピトープ」は、天然アミノ酸で構成された天然のペプチド等の、アミド結合によって本質的に形成されたあらゆる分子を意味する。しかしながら、ペプチドエピトープは、修飾アミノ酸:特定の病理学的もしくは生理学的状況で(例えば、プロリン、セリン、アスパラギン、リジン、アルギニン、またはトリプトファンのレベルにて)生じる修飾、またはアルキル残基によるアミノ酸のカップリング等の化学的タイプの他の修飾のいずれかを含み得る。
好ましくは、本発明の文脈において、ペプチドエピトープは、ペプチド結合によって連結された7つのアミノ酸、好ましくは少なくとも8、9、10、11、12、13、14、かつ/または好ましくは40個未満のアミノ酸、35個未満のアミノ酸、30個未満のアミノ酸、もしくはさらに20個未満のアミノ酸の少なくとも1つの鎖を含む。
したがって、これらのペプチドエピトープは、配列番号1に共有結合的にグラフトされる。実際には、いくつかのペプチドエピトープが配列番号1にグラフトされる。また、これらのペプチドエピトープは、-NH2基および-SH基に対して反応性であるヘテロ二官能性架橋剤を含むキットに組み込まれており、対応するカップリングプロセスに用いられるので、本方法によって得られる医薬組成物に組み込まれる。
本発明の文脈において、「ほんのわずかに親水性であるか、または疎水性であるペプチド」は、アルギニン、リジン(および/またはオルニチン、シトルリン)、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸を50%未満、好ましくは40%未満、35%未満、もしくはさらに30%未満、もしくはさらに26%未満、かつ/またはバリン、ロイシン、イソロイシン(および/またはノルロイシン)、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸を20%、30%、35%、もしくはさらに40%超含むペプチドを意味する。好ましくは、疎水性ペプチドは、本発明の文脈において、バリン、ロイシン、イソロイシン(および/またはノルロイシン)、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸を少なくとも35%、ならびにアルギニン、リジン(および/またはオルニチン、シトルリン)、ヒスチジン、グルタミン酸、およびアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸を35%未満含む。より一般的には、本発明の文脈において、好ましくは、疎水性ペプチドは、アルギニン、リジン(および/またはオルニチン、シトルリン)、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、および潜在的にはセリンからなる群から選択されるアミノ酸よりも、バリン、ロイシン、イソロイシン(および/またはノルロイシン)、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸を多く(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8つ、またはそれ以上)含む。また、アミノ酸の側鎖の天然修飾または人工修飾を含む他の非天然アミノ酸は、親水性または疎水性を有する。ペプチドエピトープ内での考えられる組換えから生じるペプチドの疎水性に関する結果は、例えば上記の数値を適合させることによって、見出されることとなる。
これ以外にも、用語「ほんのわずかに親水性であるペプチド」は、例えばpH7にて、水または水溶液(界面活性剤を含まない)中での溶解度が低いペプチドに関する。溶解度は、水(pH7;25℃)-オクタノール系における分布から決定され得る:ほんのわずかに親水性であるペプチドは、主に、有機相(例えばオクタノール)内で見出される(例えば、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、または95%超)。
したがって、本発明は、有利には、CRM-197上に、疎水性ペプチドであっても、ペプチド(ペプチドエピトープ)を大量にグラフトすることを可能にする。したがって、疎水性(またはほんのわずかに親水性)ペプチドのグラフト化が可能であり、有利ですらある。
好ましくは、エピトープは、好ましくは-NH2基および-SH基に対して反応性の、ヘテロ二官能性架橋剤、さらにより好ましくはSulfo-GMBSを介してグラフトされる。
-SH基に対して反応性である架橋剤が用いられる場合、(アクセス可能な)-SH基が有利には、これを天然に欠く(または-SH基がアクセス不能である)ペプチドエピトープに加えられる。好ましい様式は、エピトープのカルボキシ末端またはアミノ末端)へのシステイン残基のカップリング(グラフト化)である。場合によっては加えられるこのシステインは、好ましくは、グラフトされることとなるペプチドの疎水性を推定するための上記計算に組み込まれる。
カップリング(グラフト)されることとなるペプチドエピトープが天然にシステインを含有する場合、好ましくは、カップリング(グラフト)工程は、このシステインがカップリング(グラフト化)に利用可能であるか、そして有利には、このシステイン上でのカップリング(グラフト化)がペプチドエピトープの免疫原性を変化させるかを判定するための予備工程を含む。ゆえに、好ましくは、ペプチドエピトープが天然にシステインを含有する場合(アクセス可能であるか否か;結合に使用される場合に問題があるか否か)、このシステインは保護され得、そして別のシステイン残基が、ペプチドエピトープの末端の一方に加えられ得る。
この医薬組成物は、ヒト(Homo sapiens)、イヌ(Canis vulgaris)、ウマ(Equus caballus)、およびラクダ科のメンバー(ラクダ(Camelus)属種)からなる群から選択される患者のワクチン接種に用いられるのに有利である。好ましくは、患者はヒトである。実際、配列番号1にカップリングされた多数のペプチドは、患者へのエピトープの大量投与を可能にし、これは、治療的ワクチン接種において特に有利である。
この治療的ワクチン接種は、感染性疾患(とりわけ感染体が細胞内にある場合)、自己免疫疾患、炎症性疾患、変性疾患、および癌の処置に有用である。
有利には、医薬組成物は、エマルジョン(水中油型および油中水型)、CpG単位を有するオリゴヌクレオチド、またはアルミニウム塩等の(ワクチン接種および/または免疫化)アジュバントの存在下で用いられるか、またはそれらと組み合わせて用いられる。好ましいアジュバントは、エマルジョン(水中油型および油中水型)、およびCpG単位を有するオリゴヌクレオチドである。
好ましくは、医薬組成物は、患者へのその投与を考慮して、バッファ中の水溶液であるか、またはそのような水溶液になり、バッファは、コンジュゲートされた配列番号1を含む溶液にとって所望のpHを確実にするものである。このバッファpHは、有利には、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、または8.5である。上記の値は、好ましくは目標値±0.2、さらにより好ましくは±0.1であり、または目標値にさらに近い。ゆえに、pH3.0は、好ましくは、2.9よりも大きく、かつ3.1未満のpHを意味する。
好ましいバッファpHは、酢酸pH4.5、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸pH6.5、ビス-トリスpH6.0、CHES(2-(N-シクロヘキシルアミノ)エタン酸)pH9.5、クエン酸pH3.2(または4.0もしくは5.5)、イミダゾールpH8、グリシンpH3.0(すなわちグリシン-HCl)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)pH7.5、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)pH6.2、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)pH7.0、PIPPS(ピペラジン-N,N’-ビス(3-プロパンスルホン酸)pH3.7、およびリン酸pH5.0からなる群から選択される。好ましくは、これらのpHバッファは、5~50mM、好ましくは20~50mMの濃度にて用いられる。pH値は、好ましくは±0.2の範囲内である。ゆえに、「pH5.0」は、厳密に5.0のpHが好ましいとしても、4.8~5.2を意味する(本実施例ではpH範囲を説明する)。有利には、好ましくはアルギニンおよびグルタミン(それぞれ50mM)、トリメチルアミンN-オキシド(500mM)、Tween(登録商標)20(1%;w:v)、トレハロース(500mM)、およびグリセロール(20%;v:v)から選択される添加剤が、pHバッファと組み合わされる。
本発明の関連する態様は、遊離-SH基を含む天然のタンパク質に由来する1つ以上のエピトープ、-NH2基および-SH基に対して反応性であるヘテロ二官能性架橋剤、好ましくはカップリング剤Sulfo-GMBS、ならびに配列番号1を含むキットである。当該キットは、1つ以上のエピトープを配列番号1にカップリングするための必須要素を含有する。
有利には、当該キットはまた、上記のアジュバントおよび/または上記のpHバッファを含む。
本発明の別の関連する態様は、ペプチドエピトープを担体タンパク質にカップリングさせる方法であって、
-遊離-SH基を含むペプチドエピトープを特定するか、または遊離-SH基が(例えば、システインがアミノ末端に)加えられているペプチドエピトープを特定する工程と、
-配列番号1である担体タンパク質を得る工程と、
--NH2基および-SH基に対して反応性であるヘテロ二官能性架橋剤によって担体タンパク質を活性化して、(この配列番号1の)複数の-NH2基を、二官能性架橋剤と反応させる工程と、
-活性化された担体タンパク質を、組み込まれていない架橋剤から分離する工程と、
-活性化された担体タンパク質を、特定されたペプチドエピトープと接触させて、ペプチドエピトープの-SH基を、架橋剤によって活性化された担体タンパク質と反応させる工程と、
-場合によっては、過剰のシステインを加えて、(過剰に)加えられたエピトープと反応しなかった-SH基の反応性残基を中和する工程と、
-未反応基質および反応副生成物のいくつかのペプチドエピトープにカップリングされた担体タンパク質を分離する工程と、
-場合によっては、いくつかのペプチドエピトープにカップリングされた担体タンパク質を、指定されたpHバッファを含む水溶液中に入れて、コンジュゲートされた配列番号1を含む溶液にとって所望のpHを確実にする工程と、
-場合によっては、いくつかのペプチドエピトープにカップリングされた担体タンパク質を凍結乾燥する工程と、
-場合によっては、担体タンパク質を、上記のpHバッファを含む水溶液中に再溶解させる工程と
を含む、方法である。
好ましくは、本発明の他の態様と同様に、これらのpHバッファは、5~50mM、好ましくは20~50mMの濃度にて用いられる。このバッファpHは、有利には、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、または8.5である。上記の値は、好ましくは目標値±0.2、さらにより好ましくは±0.1であり、または目標値にさらに近い。ゆえに、pH3.0は、好ましくは、2.9よりも大きく、かつ3.1未満のpHを意味する。好ましいバッファpHは、酢酸pH4.5、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸pH6.5、ビス-トリスpH6.0、CHES(2-(N-シクロヘキシルアミノ)エタン酸)pH9.5、クエン酸pH3.2(または4.0もしくは5.5)、イミダゾールpH8、グリシンpH3.0(グリシン-HCl)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)pH7.5、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)pH6.2、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)pH7.0、PIPPS(ピペラジン-N,N’-ビス(3-プロパンスルホン酸)pH3.7、およびリン酸pH5.0からなる群から選択される。pH値は、好ましくは±0.2の範囲内である。ゆえに、「pH5.0」は、厳密に5.0のpHが好ましいとしても、4.8~5.2を意味する(本実施例ではpH範囲を説明する)。有利には、好ましくはアルギニンおよびグルタミン(それぞれ50mM)、トリメチルアミンN-オキシド(500mM)、Tween(登録商標)20(1%;w:v)、トレハロース(500mM)、およびグリセロール(20%;v:v)から選択される添加剤が、pHバッファと組み合わされる。
本発明者らは、配列番号1の-NH2基の活性化、続くエピトープのグラフト化(例えば、遊離および/またはアクセス可能な-SH残基を介する)によって、より大きく、かつより再現性のある電荷を許容することに気付いた。配列番号1の分子上の(平均)12~13個のグラフトされたエピトープの「価数」が、それらの疎水性(非常に疎水性のエピトープおよび中程度に疎水性のエピトープ)にも拘わらず、少なくとも2つの異なるエピトープについて、再現性よく得られた。
本発明者らは、いくつか(2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはさらには13個)の疎水性エピトープが配列番号1の分子上にグラフトされた場合でも、水:アセトニトリル混合液70:30(v:v)が、グラフトされた配列番号1が溶解するのを可能にすることに気付いた。さらに、水溶液中に上記のpHバッファを組み込むことにより、コンジュゲートされた担体タンパク質の良好な溶解性が確実になる。好ましくは、この方法では、ヘテロ二官能性架橋剤は、活性化されることとなる配列番号1の-NH2残基の数と比較して、過剰であり、これにより、露出した-NH2基の最大活性化が可能となる。
また、好ましくは、エピトープは、配列番号1の-NH2残基の数と比較して(わずかに、例えば3倍未満)過剰である。ここでも、これにより、最大の一定グラフト化を確実にすることが可能となる。
好ましくは、コンジュゲートされた配列番号1は、アセトニトリルの存在下で、40%(v:v)未満、理想的には約30%(v:v)の含量にて溶液中に維持される。これ以外にも、水溶液中に上記のpHバッファを組み込むことにより、コンジュゲートされた担体タンパク質(配列番号1)の良好な溶解性が確実になる。これにより、コンジュゲートされた生成物の凍結乾燥の最終工程を実行することが可能となる。
凍結乾燥工程は、有機溶媒(例えばアセトニトリル)が、凍結乾燥を可能にする濃度にて使用されている場合に、特に有利である。
これ以外にも、コンジュゲートされた配列番号1は、有機溶媒の不在下で、例えば上記のバッファ混合液を用いて、可溶化され得る。この場合、凍結乾燥工程は好ましくないが、任意選択である。
これらの種々の仕上げ工程は、配列番号1にコンジュゲートされたこのペプチドを含む医薬組成物に有用である。この(凍結乾燥)組成物は、安定であり、容易に輸送可能であり、かつ長期保存が可能である。
もちろん、本発明は、上記した実施形態に何ら限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に記載した範囲内のままで、多くの変更が可能である。
実施例1:配列番号1および配列番号2~4のペプチドの合成
配列番号1が、大腸菌(Escherichia coli)の特定の株の発酵によって得られた。例えば、2021年2月26日出願のベルギー特許出願第2021/5137号明細書に記載される方法によって、タンパク質(成熟体、配列番号1)が周辺質腔内に分泌されるように配列が修飾された。タンパク質は、濾過およびクロマトグラフィによって、例えば2021年2月26日出願のベルギー特許出願第2021/5138号明細書に記載される方法によって回収かつ精製される。用いた試薬はいずれも動物起源ではなく、残留エンドトキシンの含量は、臨床用途に適合する。
配列番号2、3、4、および5のペプチドが、固相合成によって得られた。しかしながら、他の合成方法、または発酵方法でも可能である。実際には、ペプチドのC末端がポリマー支持体に固定されて、ペプチド鎖が構築されてから、カップリングサイクルを繰り返すことによってN末端まで伸長される。組み込まれることとなるアミノ酸のカルボキシ末端は、活性化されてから、樹脂に固定されたペプチドのアミノ末端にカップリングされる。アミノ基は、Fmoc基によって保護され、そして他の潜在的に反応性の官能基は、他の基によって保護される。伸長されることとなるペプチド上にアミノ酸がグラフトされる際には、過剰なアミノ酸を除去して洗浄工程を経た後に、ピペリジンを加えることによってFmoc基が切断される。樹脂の切断、およびアミノ酸の側鎖の官能基の脱保護が、トリフルオロ酢酸(TFA)を加えることによって実行される。
特定の場合において、配列番号2または配列番号4のトリプトファン残基は、アミド-TmobをTFAに加えることによって、インドール基上でアルキル化される。さらに、他の修飾も可能である。
樹脂の切断、脱保護、精製(例えば逆相HPLC)、および濾過(0.45μm)後、ペプチドが、質量分析(MALDI-TOF)およびHPLCによって分析された。HPLCにおける工程は、水(0.1%TFA)の、アセトニトリル勾配(0.1%TFA)との混合、およびUV(215および280nm)による検出によって毎回実行される。純度は、90%超、さらには95%でなければならない。実際に、本発明者らは、純度97%のペプチドを得た。
実施例2:グルタルアルデヒドに対するEDCによるカップリング。
本発明者らは、最初に、欧州特許第2004217号明細書に記載される方法を用いてカップリングを実行しようとしたが、KLHの代わりに配列番号1上にカップリングされることとなる配列番号2および配列番号4のペプチドに使用した。
この種のカップリングは機能するが、実際には満足できるものではない。実際、本発明者らは、得られた分子を濾過によって精製または滅菌するのが困難であり、バッチごとに均一性が欠如していることを観察した。本発明者らが進めた説明の1つは、ペプチドが複数回グラフトされると未修飾タンパク質の親水性が過剰に変換されて、担体タンパク質が下流の処理に使用できなくなるというものである。ゆえに、配列番号1のタンパク質は担体として有用であるが、この有用性は、ペプチドエピトープ、特に疎水性ペプチドエピトープのグラフト化の状況でははっきりしない。
しかしながら、本発明者らは、それにもかかわらず、別のカップリング剤、1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)(例えばPierceから入手可能)を選択することによってこの困難を克服しようと試みた。これは、カルボキシル基を第一級アミンにカップリングさせる薬剤である。EDCは、カルボキシル基と反応して、反応性中間体O-アシルイソ尿素を形成する。この中間体は、アミンと反応しないが、加水分解を受けて、カルボキシル基を再生する。
この目的のために、本発明者らは、カップリングの1工程法およびカップリングの2工程法を開発して、比較した。
1工程法では、グルタルアルデヒドに基づく方法と同様に、担体タンパク質(配列番号1)、EDC、および配列番号2または配列番号4のエピトープが、磁気撹拌しながら同じ容器内で一緒にされてから、沈殿物が回収されて、Sephadex(商標)G50により精製されてから、凍結乾燥する。
2工程法では、最初にEDCと接触させることによって配列番号1が活性化されてから、配列番号2のエピトープまたは配列番号4のエピトープが加えられて、分離、精製、および凍結乾燥を続ける。
グルタルアルデヒドに関して、反応生成物は、まだ使用不能な凝集体(収率損失と同義)が存在しても使用可能であり、そして配列番号1のかなりの部分が溶液中に残っている(未反応の(または不十分に反応した)タンパク質、すなわち第2の収率損失と同義)。さらに、カップリングの有効性は、バッチごとにかなり異なり、コンジュゲートの溶解度は並程度、または不十分ですらあり、濾過による滅菌をさらに複雑にしている。
1工程法の場合、収率は並程度であった(配列番号2のグラフト化については12%、配列番号4のグラフト化については30%)。しかしながら、この収率は、カップリングプロセスが2工程(配列番号4を有する配列番号1)で実行される場合、例えば60%増大する。モル分布比、配列番号1対配列番号2または配列番号4は、カップリングの1工程法については2未満であり、カップリングの2工程法については2超である。
実施例3:GMBSによるペプチドとのタンパク質CRM197のカップリング。
本発明者らは、25mgの担体タンパク質CRM197(配列番号1)を2.5mlの水溶液中に溶解させた。担体タンパク質は、臨床用途に適合するバッチ由来のものであり、エンドトキシン含量は検出限界未満であった。
本発明者らは、19mgのSulfo-GMBS(Pierce;リファレンス22324;N-γ-マレイミドブチリル-オキシスルホスクシンイミドエステル)を秤量してから、2.5mlのコンジュゲーション培地(100mMの「リン酸緩衝生理食塩水」、PBS、および10mMのエチレンジアミン四酢酸、EDTA)および2.5mlの配列番号1の溶液を加えた。この混合液はマグネチックスターラーで4℃にて1時間撹拌される。
本発明者らは、PBSバッファ(pH7.2)で平衡化したSephadex(商標)G50カラムでの通過によって、活性化された配列番号1を精製して、280nmでの配列番号1の回収をモニターした。
本発明者らは、280nmにて吸収ピークを有する画分(タンパク質CRM-GMBS)を、配列番号3(25mg、DMSO中に溶解)を含有するボトルに移し、これは次にマグネチックスターラーで4℃にて2時間撹拌された。配列番号1と配列番号3との間で形成されるコンジュゲートが沈殿する。遠心分離後、ペレットはアセトニトリル中に溶解される。
本発明者らは、1mlの1Mシステインを加えて、30分間撹拌した。
本発明者らは、反応混合液を50ml Falcon(登録商標)チューブに移した。これは遠心分離されて、ペレットは分離されて、水:アセトニトリル混合液(70:30 w:w)中に入れられる。
本発明者らは、Sephadex(商標)G50カラムで精製を実行して、ここでも280nmでの吸収をモニターした。
本発明者らは、精製されたコンジュゲートを凍結乾燥した。
上記の工程は全て、後の臨床用途に適合する条件で実行された。次いで、臨床用途を目的とした安定性の研究が実行された。-20℃および+5℃の温度にて貯蔵された粉末は、数ヶ月間安定なままである。これは、促進老化(25℃でのストレス)に少なくとも14日間耐える(化学的残留物または二次構造のあらゆる分解を評価するための非修飾SDS-PAGE、MALDI-TOF、キャピラリー電気泳動、および赤外線(FTIR)による測定)。
分析は、配列番号1が、配列番号3のペプチドと非常に支配的に反応したことを明らかにする。収率64%が得られた。良好な収率に加えて、配列番号1対配列番号3のモル比は8よりも大きい。13の値すら見出され、このカップリング収率について、再現可能に得られた。さらに高い比率も得られたが、カップリング収率を犠牲にし、より低くなる(例えば36および47%)。
実際には、ヘテロ二官能性剤とカップリングさせる方法は、とりわけ2工程で実行される場合、100μgの配列番号1に対して50μgを超えるペプチドのカップリングレベルすら可能にする。
配列番号3または5のいくつかのペプチドを組み込んだ配列番号1(下記参照)は、(例えば電気泳動によって)容易に分化される。というのも、10個のペプチドが配列番号1の1分子上にグラフトされているならば、その分子量は58kDaから約78kDaまで変化するか、またはより多くのペプチドが配列番号1の1分子上にグラフトされている、例えば1分子上に13もしくは14個のペプチドがグラフトされているならば、約90kDaですらあるからである。
実施例4:
同じプロトコルが、配列番号5のペプチドに使用される。配列番号1にカップリングされたペプチドの数と同様に、カップリング収率も優れている。
実施例5:
実施例3のペプチド(182μg、配列番号3の60μgに相当)が、実施例4のペプチド(182μg、配列番号5の60μgに相当)と組み合わされる。アジュバントが、この混合物またはプラセボに加えられる。有効成分またはプラセボは、重症筋無力症(MG)を患うヒト患者のコホートに二重盲検状態で注射される。実際には、3回の連続注射が実行される(1、5、および13週目)。次いで、同じプロトコルが、患者の第2のコホートのために設計されるが、さらに多くの活性成分を有する。最後に、処置の長期忍容性および有効性を評価するために、この研究が「オープンラベル」研究として継続される。各注射時に、患者は、いかなる副作用についても綿密に監視され、最初は病院で、次いで自宅で綿密に監視される。免疫原性アッセイ用の血液試料が採取される。
生成されたデータは、良好な忍容性(有効成分は、プラセボよりも多くの副作用を引き起こさない)および処置の有効性があると結論付けることができる。
ゆえに、驚くべきことに、本発明者らは、治療的用途を目的として、配列番号1がペプチドエピトープをカップリングするための良好な担体タンパク質であることを実証した。

Claims (21)

  1. いくつかのペプチドエピトープが共有結合的にグラフトされている配列番号1からなるコンジュゲートペプチドを含む医薬組成物であって、前記ペプチドエピトープは、ペプチド結合によって連結された少なくとも7つのアミノ酸の鎖を含む、医薬組成物。
  2. 前記いくつかのペプチドエピトープは同一であり、好ましくは、前記ペプチドエピトープは疎水性である、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 少なくとも3、4、5、6、7、8、9、または10個のペプチドエピトープが、配列番号1のペプチド上にグラフトされている(ペプチドエピトープモル:配列番号1モル)、請求項1または2に記載の医薬組成物。
  4. 20、19、18、17、16、15個未満のペプチドエピトープが、配列番号1のペプチド上にグラフトされている(ペプチドエピトープモル:配列番号1モル)、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  5. 前記ペプチドエピトープはそれぞれ、配列番号1の-NH2残基上のレベルにてグラフトされている、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  6. 前記ペプチドエピトープは、ヘテロ二官能性架橋剤を介してグラフトされている、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  7. 前記ヘテロ二官能性架橋剤は、-NH2基および-SH基に対して反応性であり、好ましくはスルホ-N-γ-マレイミドブチリル-オキシスルホスクシンイミドエステル(Sulpho-GMBS)である、請求項6に記載の医薬組成物。
  8. 前記ペプチドエピトープは遊離-SH基を含むか、または遊離-SH基が天然のペプチドエピトープに加えられている、請求項7に記載の医薬組成物。
  9. 前記ペプチドエピトープのアミノ末端またはカルボキシ末端にシステイン残基がグラフトされている、請求項8に記載の医薬組成物。
  10. ヒト、イヌ、ウマ、またはラクダ科のメンバーからなる群から選択される患者の免疫化用であり、好ましくは、前記患者はヒトである、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  11. 免疫化が治療目的のためのものであり、好ましくは感染症、自己免疫疾患、炎症性疾患、変性疾患、および癌を処置するためのものである、請求項10に記載の免疫化用の医薬組成物。
  12. ワクチンアジュバント、好ましくはエマルジョン、または1つ以上のCpG単位を含むオリゴヌクレオチドをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  13. 請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物を含む水溶液であって、前記水溶液の指定されたpHを確実にするようにバッファを含む、水溶液。
  14. -遊離-SH基を含む天然のタンパク質に由来するエピトープと、
    --NH2基および-SH基に対して反応性であるヘテロ二官能性架橋剤、好ましくはカップリング剤Sulfo-GMBSと、
    -配列番号1と
    を含むキットであって、
    天然のタンパク質に由来する前記エピトープは、ペプチド結合によって連結された少なくとも7つのアミノ酸の鎖を含む、
    キット。
  15. ワクチンアジュバント、好ましくはエマルジョン、または1つ以上のCpG単位を含むオリゴヌクレオチドをさらに含む、請求項14に記載のキット。
  16. ペプチドエピトープを担体タンパク質にカップリングさせる方法であって、
    -遊離-SH基を含むペプチドエピトープを特定し、かつ/または遊離-SH基が加えられているペプチドエピトープを特定する工程と、
    -配列番号1である前記担体タンパク質を得る工程と、
    -前記担体タンパク質を、-NH2基および-SH基に対して反応性であるヘテロ二官能性架橋剤によって活性化して、前記配列番号1の複数の-NH2基を、前記ヘテロ二官能性架橋剤と反応させる工程と、
    -活性化された前記担体タンパク質を、組み込まれていない前記架橋剤から分離する工程と、
    -活性化された前記担体タンパク質を、特定された前記ペプチドエピトープと接触させて、前記ペプチドエピトープの前記-SH基を、前記架橋剤によって活性化された前記担体タンパク質と反応させる工程と、
    -未反応基質および反応副生成物の前記ペプチドエピトープのいくつかにカップリングされた前記担体タンパク質を分離する工程と
    を含み、
    -前記ペプチドエピトープは、ペプチド結合によって連結された少なくとも7つのアミノ酸の鎖を含む、
    方法。
  17. 前記ヘテロ二官能性架橋剤は、活性化されることとなる配列番号1の-NH2残基の数と比較して、過剰である、請求項16に記載の方法。
  18. 前記エピトープのいくつかにカップリングされた前記担体タンパク質を、バッファを含む水溶液中に溶解させて、前記水溶液の指定されたpHを確実にする工程をさらに含み、好ましくは、前記水溶液は、アセトニトリルを、好ましくは10%~50%(アセトニトリル:水;v:v)、例えば40(容量)%未満、例えば約30:70(アセトニトリル:水;v:v)、含む、請求項16または17に記載の方法。
  19. いくつかのペプチドエピトープにカップリングされた前記担体タンパク質を凍結乾燥する工程をさらに含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
  20. 請求項16~19のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるコンジュゲートペプチドを含む医薬組成物。
  21. 好ましくはエマルジョンから選択されるワクチンアジュバント、および1つ以上のCpG単位を含むオリゴヌクレオチドをさらに含む、請求項20に記載の医薬組成物。
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