JP2024507368A - 酸化炭素電解槽の回復プロシージャ - Google Patents

酸化炭素電解槽の回復プロシージャ Download PDF

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Abstract

酸化炭素還元電解槽を動作する方法および/またはシステムは、(a)電解槽で通常動作を実行すること、(b)(i)修正された電流および/または電圧を電解槽に適用すること、および(ii)逆電流を電解槽に適用する間に、回復ガスをカソードに流すことを含む回復または保護プロセスを実行すること、および(c)電解槽で通常動作を再開することを含んでよい。修正された電流および/または電圧を適用することは、短絡を電解槽に適用すること、電解槽の電極を開回路電圧に保持すること、および/または、逆電流を電解槽に適用することを含んでよい。

Description

[政府のサポートの声明]
本発明は、National Energy Technology Laboratoryにより受賞された受賞番号DE-FE0031712の下、政府のサポートを受けてなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。[参照による引用]
PCTリクエストフォームは、本出願の一部として本明細書と同時に提出される。同時に出願されたPCT願書様式で特定される、本願が利益または優先権を主張する各出願は、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
電解二酸化炭素反応器は、アノードとカソードとでの反応物の組成、アノードとカソードとに供給される電気エネルギー、並びに、電解質、アノード、およびカソードの物理化学的環境等、様々な動作条件のバランスをとる必要がある。これらの条件のバランスを取ることで、電解反応器の動作電圧、ファラデー収率、並びに、一酸化炭素(CO)および/または他の炭素含有生成物(CCP)および水素を含む、カソードにおいて生成される生成物の混合に、強い影響がおよぶ可能性がある。
本明細書に含まれる背景および文脈上の説明は、本開示の文脈を一般的に提示することのみを目的として提供されている。本開示の多くは、発明者の研究を提示し、そのような研究が背景セクションに記載されているという理由、または本明細書の他の箇所で文脈として提示されているという理由だけで、そのような研究が先行技術として認められることを意味しない。
本開示のいくつかの態様は、酸化炭素還元のための電解槽を動作する方法に関し、このような方法は、以下の動作、(a)電解槽で通常動作を実行する段階;(b)電解槽のカソードおよびアノード間に短絡を生じさせることおよび、(ii)カソードおよびアノードを短絡させている間に、回復ガスをカソードに流すことを含む回復または保護プロセスを実行する段階;および(c)電解槽で通常動作を再開する段階で特徴付けられてよい。
特定の実施形態において、通常動作は、酸化炭素を含む反応ガスを電解槽のカソードへと注入し、および、電流を第1の電流密度で電解槽へ適用して酸化炭素を還元し、炭素含有還元生成物を生成することを含む。いくつかの実施形態において、通常動作を再開する段階は、カソードへの回復ガスの流れを停止または修正する段階、および短絡を除去する段階を含む。
特定の実施形態において、通常動作は、反応ガスをカソードへ第1のフローレートにおいて、および、第1の圧力において流すことを含む。特定の実施形態において、通常動作は、電解槽への電流を定期的に一時停止および/またはパルスすることを含む。特定の実施形態において、電解槽で通常動作を実行する段階は、少なくとも約100時間の期間にわたり通常動作を実行する段階を含む。
特定の実施形態において、方法は追加的に、電解槽で通常動作を再開する段階の後であって、再度、回復または保護プロセスを実行する、または電解槽の動作を終了する段階の前に、少なくとも約100時間にわたり電解槽で通常動作の実行を継続する段階を含む。
特定の実施形態において、酸化炭素はCOおよび/またはCOであり、炭素含有還元生成物はCO,炭化水素または有機酸素含有化合物を含む。
特定の実施形態において、回復ガスは反応ガスとは異なる組成を有する。特定の実施形態において、回復または保護プロセスは、約5~300分の期間にわたり実行される。
いくつかの実施形態において、方法は追加的に、電解槽の性能を害する可能性があるイベントが発生しているまたは発生する可能性があると判定する段階および保護プロセスを実行する段階を含む。
本開示のいくつかの態様は、酸化炭素還元のための電解槽を動作する方法に関し、このような方法は、以下の動作、(a)電解槽で通常動作を実行する段階;(b)(i)電解槽を、電解槽のカソードおよびアノード間に開回路電圧が存在する状態に移行させること、および(ii)電解槽が開回路電圧を維持する間に、回復ガスをカソードに流すことを含む回復または保護プロセスを実行する段階;および(c)電解槽で通常動作を再開する段階で特徴付けられてよい。
いくつかの実施形態において、通常動作は、酸化炭素を含む反応ガスを電解槽のカソードへと注入し、および、電流を第1の電流密度で電解槽へ適用して、電解槽のカソードおよびアノード間に動作電位を生成し、酸化炭素を還元し、炭素含有還元生成物を生成することを含む。いくつかの実施形態において、通常動作を再開する段階は、カソードへの回復ガスの流れを停止または修正する段階、および動作電位に戻す段階を含む。
特定の実施形態において、通常動作は、反応ガスをカソードへ第1のフローレートにおいて、および、第1の圧力において流すことを含む。特定の実施形態において、通常動作は、電解槽への電流を定期的に一時停止および/またはパルスすることを含む。特定の実施形態において、電解槽で通常動作を実行する段階は、少なくとも約100時間の期間にわたり通常動作を実行する段階を含む。
特定の実施形態において、方法は追加的に、電解槽で通常動作を再開する段階の後であって、再度、回復または保護プロセスを実行する、または電解槽の動作を終了する段階の前に、少なくとも約100時間にわたり電解槽で通常動作の実行を継続する段階を含む。
特定の実施形態において、酸化炭素はCOおよび/またはCOであり、炭素含有還元生成物はCO、炭化水素または有機酸素含有化合物を含む。
特定の実施形態において、回復ガスは、反応ガスとは異なる組成を有する。特定の実施形態において、回復または保護プロセスは、約5~300分の期間にわたり実行される。
本開示のいくつかの態様は、酸化炭素還元のための電解槽を動作する方法に関し、このような方法は以下の動作、(a)電解槽で通常動作を実行する段階;(b)(i)逆電流を電解槽に適用すること、および(ii)逆電流を電解槽に適用している間に、回復ガスをカソードに流すことを含む回復または保護プロセスを実行する段階;および(c)電解槽で通常動作を再開する段階で特徴付けられてよい。
通常動作は、酸化炭素を含む反応ガスを電解槽のカソードへと注入し、および、電流を第1の電流密度で電解槽へ適用して、電解槽のカソードおよびアノード間に動作電位を生成し、酸化炭素を還元し、炭素含有還元生成物を生成することを含んでよい。通常動作を再開する段階は、カソードへの回復ガスの流れを停止または修正する段階、および逆電流の電解槽への適用を中止する段階を含んでよい。
特定の実施形態において、逆電流を適用することは、アノード電流を最大で約-50mA/cm(カソードの平坦な表面積)の大きさで適用することを含む。
特定の実施形態において、通常動作は、反応ガスをカソードへ、第1のフローレートにおいて、および第1の圧力において流すことを含む。特定の実施形態において、通常動作は、電解槽への電流を定期的に一時停止および/またはパルスすることを含む。特定の実施形態において、電解槽で通常動作を実行する段階は、少なくとも約100時間の期間にわたり通常動作を実行する段階を含む。
特定の実施形態において、方法は追加的に、電解槽で通常動作を再開する段階の後であって、再度、回復または保護プロセスを実行する、または電解槽の動作を終了する段階の前に、少なくとも約100時間にわたり電解槽で通常動作の実行を継続する段階を含む。
特定の実施形態において、酸化炭素はCO2および/またはCOであり、炭素含有還元生成物は、CO、炭化水素または有機酸素含有化合物を含む。
特定の実施形態において、回復ガスは反応ガスとは異なる組成を有する。特定の実施形態において、回復または保護プロセスは、約5~300分の期間にわたり実行される。
いくつかの実施形態において、方法は追加的に、電解槽の性能を害する可能性のあるイベントが発生しているまたは発生する可能性があると判定する段階および保護プロセスを実行する段階を含む。
本開示の特定の態様は、酸化炭素還元電解槽に関し、酸化炭素還元電解槽は、次の特徴、(a)(i)酸化炭素の還元を促進する酸化炭素還元触媒を含むカソード、(ii)酸化を促進する触媒を含むアノード、および(iii)カソードおよびアノード間に配置されたポリマー電解質膜(PEM)層を含む少なくとも1つの膜電極アセンブリ(MEA);(b)酸化炭素還元電解槽に適用される電流を制御するよう構成された電源;および(c)1または複数のコントローラで特徴付けられてよく、1または複数のコントローラは、電解槽に、(1)MEAで通常動作を実行すること、ここで通常動作は、酸化炭素を含む反応ガスをMEAのカソードへと注入し、および、電流を第1の電流密度でMEAへ適用することを含む、(2)(i)電解槽のカソードおよびアノード間に短絡を生じさせること、および(ii)カソードおよびアノードを短絡させている間に、回復ガスをカソードへ流すことを含む回復または保護プロセスを実行すること、および(3)カソードへの回復ガスの流れを停止するまたは修正することにより、および短絡を除去することにより、MEAでの通常動作を再開することを行わせるよう構成されている。
特定の実施形態において、1または複数のコントローラは、電解槽に、通常動作中に、反応ガスをカソードへ、第1のフローレートにおいて、および第1の圧力において流すことを行わせるよう構成されている。特定の実施形態において、1または複数のコントローラは、電解槽に、通常動作中に、MEAへの電流を定期的に一時停止および/またはパルスすることを行わせるよう構成されている。特定の実施形態において、1または複数のコントローラは、電解槽に、少なくとも約100時間の期間にわたり通常動作を実行させるよう構成されている。
特定の実施形態において、1または複数のコントローラはさらに、電解槽に、MEAで通常動作を再開する後であり、且つ、再度、回復または保護プロセスを実行する、またはMEAの動作を終了する前に、少なくとも約100時間にわたり、MEAで通常動作の実行を継続させるよう構成されている。
特定の実施形態において、回復ガスは反応ガスとは異なる組成を有する。
特定の実施形態において、1または複数のコントローラは、電解槽に、約5~300分の期間にわたり回復または保護プロセスを実行させるよう構成されている。
特定の実施形態において、1または複数のコントローラは、電解槽の性能に害を及ぼす可能性のあるイベントが発生しているまたは発生する可能性があると判定する、および、保護プロセスを実行するよう構成されている。
本開示の特定の態様は、酸化炭素還元電解槽に関し、酸化炭素還元電解槽は以下の特徴、(a)(i)酸化炭素の還元を促進する酸化炭素還元触媒を含むカソード、(ii)酸化を促進する触媒を含むアノード、および(iii)カソードおよびアノード間に配置されたポリマー電解質膜(PEM)層を含む少なくとも1つの膜電極アセンブリ(MEA);(b)酸化炭素還元電解槽に適用される電流を制御するよう構成された電源;および(c)1または複数のコントローラによって特徴付けられてよく、1または複数のコントローラは、電解槽に、(1)MEAで通常動作を実行すること、ここで通常動作は、酸化炭素を含む反応ガスをMEAのカソードへと注入し、および、電流を第1の電流密度でMEAへ適用することを含む、(2)(i)電解槽を、電解槽のカソードおよびアノード間に開回路電圧が存在する状態に移行させること、および(ii)電解槽が開回路電圧を維持する間に、回復ガスをカソードへ流すことを含む回復または保護プロセスを実行すること、および(3)カソードへの回復ガスの流れを停止するまたは修正することにより、および動作電位に戻すことにより、MEAでの通常動作を再開することを行わせるよう構成されている。
特定の実施形態において、1または複数のコントローラは、電解槽に、通常動作中に、反応ガスをカソードへ、第1のフローレートにおいて、および、第1の圧力において流すことを行わせるよう構成されている。
特定の実施形態において、1または複数のコントローラはさらに、電解槽に、MEAで通常動作を再開する後であり、且つ、再度、回復または保護プロセスを実行する、またはMEAの動作を終了する前に、少なくとも約100時間にわたりMEAで通常動作の実行を継続させるよう構成されている。
特定の実施形態において、回復ガスは反応ガスとは異なる組成を有する。
本開示の特定の態様は、酸化炭素還元電解槽に関し、酸化炭素還元電解槽は、以下の特徴、(a)(i)酸化炭素の還元を促進する酸化炭素還元触媒を含むカソード、(ii)酸化を促進する触媒を含むアノード、および(iii)カソードおよびアノード間に配置されたポリマー電解質膜(PEM)層を含む少なくとも1つの膜電極アセンブリ(MEA);(b)酸化炭素還元電解槽に適用される電流を制御するよう構成された電源;および(c)1または複数のコントローラで特徴付けられてよく、1または複数のコントローラは、電解槽に、(1)MEAで通常動作を実行すること、ここで通常動作は、酸化炭素を含む反応ガスをMEAのカソードへと注入し、および、電流を第1の電流密度でMEAへ適用することを含む、(2)(i)逆電流を電解槽に適用すること、および(ii)逆電流を電解槽に適用している間に、回復ガスをカソードへ流すことを含む回復または保護プロセスを実行すること、および(3)カソードへの回復ガスの流れを停止するまたは修正することにより、および電解槽への逆電流の適用を中止することにより、MEAでの通常動作を再開することを実行させるよう構成されている。
特定の実施形態において、1または複数のコントローラは、電解槽に、通常動作中に、反応ガスをカソードへ、第1のフローレートにおいて、および、第1の圧力において流すことを行うよう構成されている。特定の実施形態において、1または複数のコントローラは、電解槽に、通常動作中に、MEAへの電流を定期的に一時停止および/またはパルスすることを行わせるよう構成されている。特定の実施形態において、1または複数のコントローラは、電解槽に、少なくとも約100時間の期間にわたり通常動作を実行させるよう構成されている。
特定の実施形態において、1または複数のコントローラはさらに、電解槽に、MEAで通常動作を再開する後であり、且つ、再度、回復または保護プロセスを実行する、またはMEAの動作を終了する前に、少なくとも約100時間にわたりMEAで通常動作の実行を継続させるよう構成されている。
特定の実施形態において、回復ガスは反応ガスとは異なる組成を有する。
特定の実施形態において、1または複数のコントローラは、電解槽に、約5~300分の期間にわたり回復または保護プロセスを実行させるよう構成されている。
特定の実施形態において、1または複数のコントローラは、電解槽の性能に害を及ぼす可能性のあるイベントが発生しているまたは発生する可能性があると判定する、および、保護プロセスを実行するよう構成されている。
本開示のさらなる別の態様は、酸化炭素還元電解槽を動作する方法に関し、方法は、以下の動作、(a)電解槽で通常動作を実行する段階、ここで通常動作は、酸化炭素を含む反応ガスを電解槽のカソードへと注入し、および、電流を第1の電流密度で電解槽へ適用して、酸化炭素を還元し、炭素含有還元生成物を生成することを含む;(b)(i)電解槽に適用される電流を停止するまたは著しく停電すること、および(ii)電解槽へ適用される電流を停止するまたは著しく低減する間に、カソードを液体と接触させることを含む回復プロセスを実行する段階;および(c)電解槽で通常動作を再開する段階で特徴付けられてよい。いくつかの実施形態において、通常動作を再開する段階は、カソードを液体と接触させることを停止する段階および電解槽への電流を再適用する段階を含む。
いくつかの実装において、カソードを液体と接触させることは、液体をカソードへ流すことを含む。いくつかの実施形態において、液体は水を含む。いくつかの実施形態において、水は、溶解塩を含む。いくつかの実施形態において、溶解塩は、約20mM以下の濃度の炭酸水素塩を含む。
いくつかの実施形態において、回復プロセスは追加的に、カソードを液体と接触させた後、且つ、少なくとも部分的に通常動作を再開する前に、乾燥ガスをカソードへ流すことを含む。このような実施形態において、乾燥ガスは、酸化炭素、不活性ガス、空気またはこれらの任意の組み合わせを含んでよい。
いくつかの実施形態において、回復プロセスはさらに、カソードを液体に接触させる前に、回復ガスをカソードへ流すことを含む。このような実施形態において、回復ガスは、反応ガスとは異なる組成を有してよく、通常動作中に反応ガスとは異なるフローレートカソードへ流れてよく、通常動作中に反応ガスとは異なる圧力でカソードと接触してよく、またはこれらの任意の組み合わせを含んでよい。
回復または保護動作を実行する複数の方法のいずれについても、通常動作は上述のように実行されてよい。さらに、いくつかの実施形態において、通常動作中、液体は、カソードに接触しない。追加的に、回復または保護動作を実行する複数の実施形態のいずれについても、酸化炭素および炭素含有反応生成物は上述のように特徴付けられてよい。
いくつかの実施形態において、回復プロセスは、約5~300分の期間にわたり実行される。
いくつかの実施形態において、方法は追加的に、電解槽で通常動作を再開する段階の後であって、再度、回復プロセスを実行する、または電解槽の動作を終了する段階の前に、少なくとも約100時間にわたり電解槽で通常動作の実行を継続する段階を含む。
いくつかの実施形態において、電解槽に適用される電流を著しく低減する段階は、電流をカソードへ、最大で約100mA/cm(カソードの平坦な表面積)のレベルで適用する段階を含む。いくつかの実施形態において、電解槽に適用される電流を著しく低減する段階は、電流をカソードへ、アノード方向で適用する段階を含む。いくつかの例において、電流をアノード方向に適用する段階は、アノード電流を最大で約1mA/cm(カソードの平坦な表面積)のレベルで適用することを含む。
いくつかの実施形態において、電解槽に適用される電流を停止するまたは著しく低減する間に、方法は追加的に、電解槽での電圧または電流スキャンを含む。いくつかのこのような実施形態において、電圧または電流スキャンは循環的に実行される。
本開示の特定の他の態様は酸化炭素還元電解槽に関し、酸化炭素還元電解槽は、以下の特徴、(a)(i)酸化炭素の還元を促進する酸化炭素還元触媒を含むカソード、(ii)酸化を促進する触媒を含むアノード、および(iii)カソードおよびアノード間に配置されたポリマー電解質膜(PEM)層を含む少なくとも1つの膜電極アセンブリ(MEA);(b)酸化炭素還元電解槽に適用される電流または電圧を制御するよう構成された電源;および(c)1または複数のコントローラで特徴付けられてよく、1または複数のコントローラは、電解槽に、(1)MEAで通常動作を実行すること、(2)(i)MEAに適用される電流を停止するまたは著しく低減すること、および(ii)MEAに適用される電流を停止するまたは著しく低減する間に、カソードを液体と接触させることを含む回復プロセスを実行すること、および(3)MEAで通常動作を再開すること、ここで通常動作を再開することは、カソードを液体と接触することを停止すること、およびMEAへの電流を再適用することを含む、を実行させるよう構成されている。通常動作は、酸化炭素を含む反応ガスをMEAのカソードに注入すること、および、電流を第1の電流密度でMEAへ適用することを含んでよい。特定の実施形態において、1または複数のコントローラは、電解槽に、液体をカソードへ流すことを行わせるよう構成されている。
回復または保護動作を実行する任意のシステムについて、通常動作は上述のようなシステムによって制御されてよい。追加的に、回復または保護動作を実行し得る複数の態様の任意のものについて、酸化炭素および炭素含有反応生成物は上述のように特徴付けられてよい。
特定の実施形態において、1または複数のコントローラはさらに、電解槽に、MEAで通常動作を再開する後であって、且つ、再度、回復プロセスを実行する、またはMEAの動作を終了する前に、少なくとも約100時間にわたりMEAで通常動作の実行を継続させるよう構成されている。特定の実施形態において、1または複数のコントローラは、電解槽に、約5~300分の期間にわたり回復プロセスを実行させるよう構成されている。
特定の実施形態において、1または複数のコントローラはさらに、電解槽に、カソードを液体と接触させる前に、回復ガスをカソードに流すことを行わせるよう構成されている。このような実施形態において、回復ガスは、反応ガスとは異なる組成を有してよく、通常動作中に、反応ガスとは異なるフローレートでカソードへ流れてよく、通常動作中に、カソードに反応ガスとは異なる圧力で接触してよく、またはこれらの任意の組み合わせを含んでよい。
特定の実施形態において、1または複数のコントローラはさらに、電解槽に、カソードを液体に接触させた後、且つ、少なくとも部分的に通常動作を再開する前に、乾燥ガスをカソードへ流すことを行わせるよう構成されている。
いくつかの実装において、カソードを液体と接触させることは、液体をカソードへ流すことを含む。いくつかの実施形態において、液体は水を含む。いくつかの実施形態において、水は、溶解塩を含む。いくつかの実施形態において、溶解塩は、約20mM以下の濃度の炭酸水素塩を含む。
特定の実施形態において、1または複数のコントローラは、電解槽に、カソードへ電流を最大で約100mA/cm(カソードの平坦な表面積)のレベルで適用することにより、MEAに適用される電流を著しく低減することを行わせるよう構成されている。
特定の実施形態において、1または複数のコントローラは、電解槽に、カソードへ電流をアノード方向に適用することにより、MEAへ適用される電流を著しく低減させるよう構成されている。いくつかのこのような実施形態において、アノード方向における電流は、最大で約1mA/cm(カソードの平坦な表面積)の電流密度を有する。
特定の実施形態において、1または複数のコントローラは、電解槽に、MEAに適用される電流を停止または著しく低減している間に、MEAで電圧または電流スキャンを実行することを行わせるよう構成されている。いくつかの場合において、1または複数のコントローラは、電解槽に、電圧または電流スキャンを循環的に実行させるよう構成されている。
本開示のいくつかのさらなる態様は、酸化炭素還元のための電解槽を動作する方法に関し、方法は、以下の動作、(a)電解槽で通常動作を実行する段階;(b)(i)電解槽に適用される電流を停止するまたは著しく低減すること、および(ii)電解槽に適用される電流を停止するまたは著しく低減している間に、回復ガスをカソードへ流すことを含む回復プロセスを実行する段階;および(c)電解槽での通常動作を再開する段階、ここで通常動作を再開する段階は、カソードへの回復ガスの流れを停止または修正する段階および電解槽へ電流を再適用する段階を含む、で特徴付けられてよい。
通常動作は、酸化炭素を含む反応ガスを電解槽のカソードに注入し、および、電流を第1の電流密度で電解槽に適用して、酸化炭素を還元し、炭素含有還元生成物を生成することを含んでよい。回復または保護動作を実行する複数の方法の任意のものについて、通常動作は、上述のように実行されてよい。さらに、いくつかの実施形態において、通常動作中、液体は、カソードに接触しない。追加的に、回復または保護動作を実行する複数の実施形態のいずれについても、酸化炭素および炭素含有反応生成物は上述のように特徴付けられてよい。
特定の実施形態において、回復ガスは、反応ガスとは異なる組成を有する。特定の実施形態において、回復プロセスは、約5~300分の期間にわたり実行される。
いくつかの実施形態において、方法は追加的、に電解槽で通常動作を再開する段階の後であって、再度、回復プロセスを実行する、または電解槽の動作を終了する段階の前に、少なくとも約100時間にわたり電解槽で通常動作の実行を継続する段階を含む。
特定の実施形態において、電解槽に適用される電流を著しく低減することは、電流をカソードへ、最大で約100mA/cm(カソードの平坦な表面積)のレベルで適用することを含む。特定の実施形態において、電解槽に適用される電流を著しく低減することは、電流をアノード方向でカソードへ適用することを含む。一例として、電流をアノード方向において適用することは、アノード電流を最大で約1mA/cm(カソードの平坦な表面積)のレベルで適用することを含む。
特定の実施形態において、電解槽に適用される電流を停止するまたは著しく低減する間に、方法は、電解槽で電圧または電流スキャンを実行する。一例として、電圧または電流スキャンは循環的に実行される。
本開示のさらに別の態様はシステムに関し、システムは、以下の要素、(a)(i)酸化炭素の還元を促進する酸化炭素還元触媒を含むカソード、(ii)酸化を促進する触媒を含むアノード、および(iii)カソードおよびアノード間に配置されたポリマー電解質膜(PEM)層を含む少なくとも1つの膜電極アセンブリ(MEA);(b)酸化炭素還元電解槽に適用される電流を制御するよう構成された電源;および(c)1または複数のコントローラによって特徴付けられ、1または複数のコントローラは、電解槽に、a.MEAで通常動作を実行すること、
b.(i)MEAに適用される電流を停止するまたは著しく低減すること、および(ii)MEAに適用される電流を停止するまたは著しく低減している間に、回復ガスをカソードに流すことを含む回復プロセスを実行すること、
c.MEAで通常動作を再開することを行わせるよう構成されている。
通常動作は、酸化炭素を含む反応ガスをMEAのカソードに注入すること、および、電流を第1の電流密度でMEAへ適用することを含んでよい。通常動作を再開することは、カソードを液体と接触させることを停止すること、およびMEAへの電流を再適用することを含んでよい。
回復または保護動作を実行する複数のシステムの任意のものについて、通常動作は、上述のようなシステムによって制御されてよい。追加的に、回復または保護動作を実行し得る複数の態様のいずれについても、酸化炭素および炭素含有反応生成物は上述のように特徴付けられてよい。
特定の実施形態において、1または複数のコントローラは、電解槽に、約5~300分の期間にわたり回復プロセスを実行させるよう構成されている。特定の実施形態において、1または複数のコントローラはさらに、電解槽に、MEAでの通常動作の再開の後、且つ、再度、回復プロセスを実行する、またはMEAの動作を終了する前に、少なくとも約100時間にわたりMEAで通常動作の実行を継続させるよう構成されている。いくつかの実施形態において、回復ガスは、反応ガスとは異なる組成を有する。
特定の実施形態において、1または複数のコントローラは、電解槽に、電流をカソードへ、最大で約100mA/cm(カソードの平坦な表面積)のレベルで適用することにより、MEAに適用される電流を著しく低減するよう構成されている。
特定の実施形態において、1または複数のコントローラは、電解槽に、電流をカソードへアノード方向において適用することにより、MEAに適用される電流を著しく低減することを実行させるよう構成されている。一例として、アノード方向における電流は、最大で約1mA/cm(カソードの平坦な表面積)の電流密度を有する。
特定の実施形態において、1または複数のコントローラは、電解槽に、MEAへ適用される電流を停止するまたは著しく低減している間に、MEAで電圧または電流スキャンを実行させるよう構成されている。一例として、1または複数のコントローラは、電解槽に、電圧または電流スキャンを循環的に実行させるよう構成されている。
本開示のこれらおよび他の特徴は、関連付けられる図面を参照して本明細書でさらも詳細に提示される。
本開示の様々な実施形態による、酸化炭素還元電解槽の動作中に実装されてよい、電流一時停止スケジュールまたはプロファイルの一例の図である。
本開示の様々な実施形態による、電流一時停止期間の開始時において電流が動作電流密度から一時停止電流密度に低減する際の電流プロファイルの概略的な例を示す図である。
本開示の様々な実施形態による、電流一時停止期間の終了時において動作電流密度に戻る電流プロファイルの概略的な例を示す図である。
回復または保護モード中に用いられる循環電圧スキャンの例示的な特徴を示す。
回復シーケンスのいくつかの影響を示す実験結果を示す。この例は、Au/C触媒粒子を用いる25cmカソードを有する二酸化炭素電解槽を用いた。
MEAを含むセルを含んでよい酸化炭素還元反応器の動作を制御するシステムを示す。
CO還元において用いるための一例のMEAを示す。
[導入および文脈]
ポリマーベースの膜電極アセンブリ(MEA)を含む酸化炭素電解槽は、アノードにおいて水から酸素を、および、カソードにおいて二酸化炭素または他の酸化炭素の電気化学的還元を通して1または複数の炭素ベースの化合物を生成するよう設計されている。本明細書で用いられる用語である酸化炭素とは、二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、炭酸イオン(CO 2-)、炭酸水素イオン(HCO )、およびこれらの任意の組み合わせを含む。MEAおよびMEAベースの酸化炭素電解槽の様々な例が以下の参照文献、PCT出願の公開公報第2017/192788(2017年11月9日に公開。発明の名称「CO、COおよび他の化合物の電気化学的反応のための高度なアーキテクチャを持つ反応器」)、PCT出願の公開公報第2019/144135(2019年7月25日に公開。発明の名称「二酸化炭素反応器制御のためのシステムおよび方法」)、および、米国仮特許出願第62/939,960(2019年11月25日に出願。発明の名称「CO還元のための膜電極アセンブリ」)に記載されており、これらの各々は参照により本明細書にその全体が組み込まれる。いくつかの場合において、MEAは両極性界面、すなわちカチオンよりもアニオンに対し実質的により伝導性である第1のイオン交換ポリマーの層、および、アニオンよりもカチオンに対し実質的により伝導性である第2のイオン交換ポリマーの層の間の界面を有する。いくつかの場合において、MEAは、アニオン交換ポリマーのみ、または、複数のアニオン交換ポリマー(随意で複数の層として提供される)を含む。
[動作パラメータタイプ]
本明細書には、MEAおよびMEAベースの酸化炭素電解槽の様々な動作条件が開示されている。動作パラメータのタイプの中でも、以下のものがある。
酸化炭素ガスフローパラメータ。例えば、CO2フローレート(モルおよび体積)、圧力および組成;
アノードの水フローパラメータ。例えば、水フローレート、圧力、温度および組成;
電気パラメータ。例えば、電流密度および電圧;
MEAおよびセル温度;
電解槽スタートアップ条件;および
動作条件における一時的バリエーション(例えば、パルス電流および/またはガスフロー)。
[ガス管理]
[はじめに]
酸化炭素還元セルでは、酸化炭素がカソードに供給される。酸化炭素は、考えられる複数の目的のうちの任意の1または複数を果たす。例えば、酸化炭素は反応物として機能する。酸化炭素はまた、水を除去する、および/またはカソードから還元生成物を除去するパージガスとして機能してよい。
カソードへのガスフローを特徴付けるパラメータには、セルへの入口におけるガス組成、セルからの出口におけるガス組成、カソードへのガスストリームの体積フローレート、カソードへのガスストリームの速度、カソードへの反応ガスのモルフローレート、セルへの入口におけるガスの圧力、カソードにわたるガス分布パターン、フローチャネルおよびガスがセル中を流れるときのガスの圧力降下の総断面積が含まれる。「入力ガスストリーム」という用語は、電解酸化炭素還元セルへの入口におけるガスを指す。フロー場を有するMEA電解槽では、入口ガスストリームは、MEAのセル上流およびフロー場に入るガスであってよい。MEA、ガス拡散層およびフロー場を含むセルスタックの例が、2019年7月25日に公開されたPCT特許出願の公開公報2019144135に記載されており、当該文献は参照により本明細書にその全体が組み込まれる。
[カソードに流れるガスの役割]
カソードへと流れるガスの少なくとも一部は、還元反応によって消費される。入口ガスは、セルに入る反応物酸化炭素のモルフローレートにより特徴付けられてよい。通常、モルフローレートは、指定された反応速度をサポートするだけ十分大きい。当該反応速度は、少なくとも部分的にカソードにおける電流密度およびカソードにおける還元反応の効率により決定されてよい。カソードの還元反応の非包含的リストをここに示す。
水が生成物である場合のCOおよびCOの電気分解反応。
CO+2H+2e→CO+HO(2電子)
2CO+12H+12e→CHCH+4HO(12電子)
2CO+12H+12e→CHCHOH+3HO(12電子)
CO+8H+8e→CH+2HO(8電子)
2CO+8H+8e→CHCH+2HO(8電子)
2CO+8H+8e→CHCHOH+HO (8電子)
CO+6H+6e→CH+HO(6電子)
水がプロトンソースである場合のCOおよびCOの電気分解反応。
CO+HO+2e→CO+2OH(2電子)
2CO+8HO+12e→CHCH+12OH(12電子)
2CO+9HO+12e→CHCHOH+12OH(12電子)
CO+6HO+8e→CH+8OH(8電子)
2CO+6HO+8e→CHCH+8OH(8電子)
2CO+7HO+8e→CHCHOH+8OH(8電子)
CO+5HO+6e→CH+6OH(6電子)
カソードへの入口ガスストリームの別の役割は、カソードで生成された反応生成物を洗い流すことであってよい。これらの生成物は、液体(例えば、エタノール、ギ酸、酢酸、1‐プロパノール)またはガス(例えば、CO、メタン、エチレンおよび/または水素)であってよい。
カソードへの入口ガスストリームの別の役割は、水をカソードから強制的に排出することであってよい。これにより、カソードが水であふれることを防ぎ、水があふれると触媒部位における反応を妨げる可能性がある。水は、ガスまたは液体(例えば、水滴)であってよい。当該水の一部または全部は、MEAのアノード側を起源とするものであってよい。水は、いくつかの酸化炭素還元反応から生成されてよい。入口ガスはカソード出口へと水を自身で携えて運んでよい。運ばれた水は、気相および/または液相(例えば、霧または液滴)であってよい。また入口ガスストリームは、MEAのカソード側へ圧力をかけてもよく、これによりMEA中へ水を浸透させアノードに向かわせること、および/または、MEAを超えるアノードからカソードへの水の移送に抵抗させる。
特定の実施形態において、入口ガスストリームは、水をMEAのカソードの少なくとも一部へと送る水分(加湿された入口ガスを通して)を運んでよい。優先的に、入口ガス中の水分は、乾燥を受けやすいMEAの部分、例えばガス入口に最も近いMEAの部分に湿気を与えてよい。当該水分はまた、特定の酸化炭素還元反応のためのプロトンソースとして作用してもよい。
[モルフローレート]
反応ガスのモルフローレートが電流と共に、酸化炭素還元反応速度を設定してよい。いくつかの実施形態において、入口酸化炭素のモルフローレートは、カソードにおける電流、および/または、酸化炭素還元反応の効率により設定されてよい。酸化炭素還元セルはしばしば、100%未満の電気化学的変換効率で動作することに留意されたい。故に、いくつかの実施形態においては、カソードへの酸化炭素のモルフローレートは、所望の還元生成物への入力酸化炭素の理論上の完全変換のために必要とされるものより大きい。さらに、たとえ入ってくる酸化炭素のすべてが電気化学的に還元可能であっても、カソードから水を流す、または、反応生成物を流す等の1または複数の他の目的を果たすべく、余剰ガスが必要とされてよい。換言すると、入ってくる酸化炭素ストリームは、完全な化学量論的変換に要求されるものを超える余剰酸化炭素を必要としてよい。たとえ酸化炭素還元反応が100%の効率であっても、システムは、無視できるくらい少量の入力ガス反応物を有することはあり得ない。というのは、カソードから水および/または特定の反応生成物を押し出すのに幾分かのガスが必要だからである。
モルフローレートが非常に大きいため、入口酸化炭素の大部分が未反応であっても、カソードの出力ストリームは、比較的低濃度の還元生成物(例えば、二酸化炭素中の比較的低濃度の一酸化炭素、例えば、約30%以下のモル)を有してよい。いくつかの文脈において、これは、還元生成物の広範囲のおよび/または高額の浄化を必要とし得る。
モルフローレートを電流に関連付ける1つの方法は、対応するフローレートと共に本明細書で「化学量論的値」と呼ばれるパラメータによることである。入力ストリームにおける酸化炭素のモルフローレートは、特定の電流に対し予期される反応の単位当たりのフローレートの観点から定義づけられてよい。本明細書における用語「化学量論的」値とは、カソードにおけるすべての電流を完全に利用するために必要とされる反応物酸化炭素のフローレートの分数または倍数を指し、ここで特定の反応に対し、カソードでの酸化炭素の還元反応は100%効率であることを前提とする。化学量論的値「1」を有する酸化炭素のフローレートは、カソードにおいて提供されるすべての電子を消費するのに必要とされるフローレートであり、カソードにおける特定の還元反応において、それ以下である。化学量論的値は、特定の反応のための電流効率が100%である場合に理論上反応可能なものを超えて(またはそれより少ない)存在する余剰(または不足)反応物の量を表わす。これは、無次元の数または分数である。
酸性環境で一酸化炭素を生成する二酸化炭素還元反応(CO+2H+2e→CO+HO)について、化学量論的値1を有する二酸化炭素フローレートは、セルにより提供される2モルの電子につき1モルの二酸化炭素を提供する。別の言い方をすると、1秒当たり2モルの電子を提供する電流を有するセル、および、1秒当たり1モルの二酸化炭素分子を提供する二酸化炭素フローレートが化学量論的値1を有する。同一の電流および1秒当たり0.5の二酸化炭素モルのフローレートでは、セルは化学量論的値0.5を有する。さらにもう一度言えば、同一の電流および1秒当たり1.5の二酸化炭素モルのフローレートでは、セルは、化学量論的値1.5を有する。化学量論的値1を達成するのに必要なモルまたは体積フローレートは、以下のように計算し得る。
化学量論的値1-フローレート(sccm)=[60(s/分)]*STPにおけるモルガス体積(mL/mol)/[ファラデー定数(C/mol e-)*#e-'s/モルCO]*電解槽へ供給される電流のアンペア。電解槽システムが、直列の2または2より多いセルのスタックを備える場合、フローレートは、スタックにおけるセルの数を乗じる。
一例において、500mA/cmの電流密度で、COからCOへの電気化学的還元を実行する100cmの電解槽が50Aの総電流を有し、反応が2モルのe-/モルCOが生成されることを必要とすると、化学量論的値1を有する化学量論的フローレートは、
[60*22,413]/[9,6485*2]*50=348.4sccm
この例では、化学量論的値0.5をもたらすフローレートは、0.5*348.4=174.2sccmである。
化学量論的値2をもたらすフローレートは、2*348.4=696.8sccmである。
二酸化炭素からエチレンを生成するセルの別の例では、2モルの二酸化炭素を1モルのエチレンに還元するのに12モルの電子が必要である。3つのセルの1500cmの電解槽について、300mA/cmの電流密度での、化学量論的値1をもたらす化学量論的フローレートは、
[60*22,413]/[96,485*6]*1350=3,136sccmである。
特定の実施形態において、化学量論的値は、少なくとも約1である。特定の実施形態において、化学量論的値は、約1~400の間である。特定の実施形態において、化学量論的値は、約1~20の間である。特定の動作レジームについての化学量論的値の特定の範囲は、本明細書の他の箇所に開示されている(例えば、出力ストリームにおけるCO:COの高比率)。
一例として、COからCOを生成する反応について、化学量論的値は約1から30であってよい。別の例として、両極MEA構成においてエチレンまたは他のC2生成物を生成する反応について、化学量論的値は約1から180であってよい。別の例として、AEMのみのMEA構成においてエチレンまたは他のC2生成物を生成する反応について、化学量論的値は約1から90であってよい。別の例として、メタンを生成する反応について、化学量論的値は約1から230であってよい。
[体積フローレートおよび流速]
入力ガスの体積フローレートおよび対応する流速は、反応ガスのモルフローレートに関連付けられるが、これらは独立に設定されてよい。さらに、体積フローレートおよび対応する速度の設定に異なる基準が適用されてよい。体積フローレートおよび流速を決定するための考慮事項としては、反応ガスのモルフローレートだけでなく、入力ガスストリームのガス圧力および組成が含まれてよい。入力ガスの特定の質量により占有される体積は、圧力の増大とともに減少する。従って、モルフローレートが固定の場合、特定の断面積の速度に対し比例する体積フローレートは、圧力の増大と共に減少する。さらに、反応ガスが非反応ガスで希釈される場合、体積フローレートは、反応ガスのモルフローレートおよび入力ガスストリームの圧力のみでなく、入口ストリームにおける非反応ガスのフローレートによっても決定される。
入力ガスストリームの体積フローレートおよび流速は、カソードからの水および/または反応生成物の除去速度に影響し得る。速度が速いほど、カソードからより多くの水および/または反応生成物を除去する。これらの原料は、ガスまたは液体の形態であってよい。入力ガスストリームは、カソードから何れかの相におけるこれら原料を捕捉して運び、これら原料を例えばフロー場を通して排気へと押し出す。例えば、ガスストリームは、フローチャネルを通して液体の水(液滴)を押し出してよい。カソードにおける水は、アノードからアノードの水の通路を介して到着してよいことに留意されたい。
MEAベースの酸化炭素還元電解槽においてアノードからカソードへ移動する水は、セルに導入される塩等の有価成分を含み得る。従って、特定の実施形態において、電解槽システムは、カソードを出てアノードへと戻るガスからの水をリサイクルするよう構成されている。特定の実施形態において、ガスストリームによってカソードから除去される水は、1または複数の液相の還元反応生成物(例えば、ギ酸塩またはエタノール)を有する。特定の実施形態において、カソードのガスストリームから回復された水は、還元反応生成物を除去するよう処理される。このような処理は、アノードへの再導入の前に実行されてよい。特定の実施形態において、ガスストリームによってカソードから除去される水は、塩イオンを有する。いくつかの場合において、カソードにおいてガスストリームにより除去される塩イオンの濃度は、アノードの水における塩イオンの濃度とは異なる。特定の実施形態において、アノードへの再導入の前に、カソードのガスストリームから回復された水は、その塩の濃度を調節すべく処理される。
特定の実施形態において、酸化炭素の体積フローレートは、約1.4E‐6~1.66E‐4リットル/(MEAカソードの活性表面積cm当たりの秒)である。いくつかの場合において、酸化炭素の体積フローレートは、約1.4E‐6~5.53E‐5リットル/(MEAカソードの活性表面積cm当たりの秒)である。特定の実施形態において、カソードの活性表面積上での酸化炭素の速度は、約0.2~4m/sである。
CH、C、エタノール等といった炭化水素を生成するために用いられるAEMのみのMEAを使用する特定の実施形態においては、AEMのみのMEAにおいては、水はカソードからアノード側へ移動するので、カソードにおいて回復される水は最小限で存在する。従って、このような実施形態においては、より低い体積入力ガスフローレートおよび対応するガス速度が使用されてよい。
[カソード側のセルへの入口におけるガス圧力]
入口ガスストリームの圧力は、様々な考慮事項に基づき、設定または調節されてよい。いくつかの考慮事項は、比較的高い圧力を示唆する。例えば、比較的高い圧力の入口ガスストリームは、カソードにおいて、比較的高いモルフローレートをもたらし、および比較的高い反応速度を許容してよい。別の言い方をすると、比較的高い圧力の入口ガスが、触媒への比較的速い供給速度の酸化炭素反応物を提供することで、電解槽の性能を増大させてよい。示した通り、実際の考慮事項は、たとえ100%の効率の反応であっても、完全な化学量論的変換に必要とされるものを超える余剰酸化炭素を必要としてよい。
いくつかの実装においては、比較的高い圧力ガスストリームが、カソードから水を除去する能力を増大させてよい。カソード上での加圧された酸化炭素は、浸透を通して、MEAのアノードの方へと向けて水を押し出してよく、特にアノードの水の圧力は、カソードでのガスストリームの圧力より小さい。
しかしながら、入口酸化炭素ガスストリームに加圧することでガス密度を増大させ、これにより、特定のモルフローレートについての体積フローレートおよび速度を低下させる。除去される水は、流速に依存する。圧力を上げると、体積フローの量を低減させ、これにおり、除去可能な水の量を低減させる。入口ガスストリームを圧縮することで、システムは、カソードから除去する水をより少なくし得る。
追加的に、ガスストリームは、カソードから生成物を洗い流す。低減した体積ガスフローレートは、より少ない生成物を洗い流してよく、これは反応平衡を反応物の方にシフトさせ得る。
さらにまた、ガスストリームの圧力が非常に高い場合、セルのカソードの入口および出口間のガス差圧は、セルのフロー場から水滴を押し出すのに不十分であってよい。
特定の実施形態において、高い入口ガス圧力における比較的高い体積フローを増大または維持すべく、フィードガスが希釈されてよい。例えば、所望の反応速度をサポートするのに十分な酸化炭素のモルフローレートを持つ入口ガスが提供されてよく、入口ガスは、全体的に比較的高い体積フローレートおよび対応する流速を維持する希釈材を有してよい。
いくつかの実施形態において、比較的高いガス出口のガス圧力(入口ガス圧力および電解槽を通した圧力降下により規定)は、下流処理のために好適な圧力でのガス電解槽生成物を提供する(例えば、フィッシャートロプシュ反応器への高圧ガス反応物)。
ガス圧力は、電解槽セルにより課される構造的または機械的制約により限定されてよい。例えば、両極性MEA(例えば、ナフィオン(登録商標)層を持つ)を使用する特定の実施形態においては、ガス圧力は、約100psig以下に限定される。AEMのみのMEAを使用する特定の実施形態においては、ガス圧力は、アニオン交換膜の限定的な機械的安定性により、約20psig以下に限定される。
ガス圧力は、入口ガスストリームの1または複数の成分の物理的特性により限定されてよい。例えば、二酸化炭素は、室温では~800psiで液化する。特定の実施形態において、ガスストリームの圧力は、酸化炭素および/または任意の他の成分が凝縮するまたは固体として堆積する点より低く維持される。
いくつかの実装において、セルのカソード側のガス圧力は、アノード側またはセル上での水圧とのつり合いを取る。カソードガスストリームの圧力が増大するにつれ通常、カソード側のガス(例えば、CO、COおよび/またはH)がセルのアノード側をより多く通過してよい。これは、危険なプロセス条件をもたらし得る。例えば、COおよび/またはOと混合されたHが、引火性混合物を生成し得る。MEAにおけるポリマー電解質膜等の任意のポリマーが、CO、COおよびH等のガスに対する幾分の浸透性を有してよいことに留意された。
特定の実施形態において、セルのカソード側への入口におけるガスストリームの圧力は、約10~400psigである。特定の実施形態において、セルのカソード側への入口におけるガスストリームの圧力は、約25~400psigである。一例として、カソードの入口におけるガスストリームの圧力は、約100psigである。別の例として、カソードの入口におけるガスストリームの圧力は、約10~20psigである。セルスタックへの入口、すなわち、ガス拡散層およびフロー場からの上流で、入口ガス圧力は測定されることに留意されたい。いくつかの実装において、セルスタックの入口からMEAへの顕著な圧力降下(例えば、蛇行パターンのフロー場において約0.5~15psi)があってよいことに留意されたい。また、列挙した圧力は、両極性MEAに特に適切であってよいことに留意されたい。
特定の実施形態において、AEMのみのセルのカソード側への入口におけるガスストリームの圧力は、約0~100psigである。特定の実施形態において、AEMのみのセルのカソード側への入口におけるガスストリームの圧力は、AEMの械械的安定性が低いことにより約0~20psigである。
[セルのカソード側にわたる圧力降下(入口P~出口P)]
ガス状反応生成物が、ガスストリームの入口圧力とは異なる圧力において、セルから出てくる。出口圧力は、入口圧力-セルのカソード側を流れるガスにより生じる圧力降下により与えられる。セルにわたる圧力降下は、様々なパラメータに依存するが、これらには例えば、フロー場構成、ガスフローレート、生成される還元生成物、フロー場における水または沈殿物の存在、GDLタイプ、フロー場へのフロー移行要素(例えば、マニホールド)、およびガス管直径が含まれる。様々な実施形態において、フローレートがまず設定され、所望の圧力降下(セットのフローレートのための)がチューニング(フロー場の設計を用いて)される。
特定の実施形態において、電解槽カソードを流れるガスストリームの圧力降下は、約0.5~20psiである。特定の実施形態において、電解槽セルを流れるガスストリームの圧力降下は、約2~7psiである。圧力降下は、電解槽のカソード入口管およびカソードの出口管の間で測定される。これらの圧力降下値は、一酸化炭素を生成するもの、メタンを生成するもの、および/またはエチレンを生成するものを含む様々な還元反応に適切であってよい。低いフローレートが必要とされるケースでは、より高い圧力降下が所望されてよい。
[入口における組成‐反応物(酸化炭素)、水(随意)、不活性ガス(随意)]
説明した通り、酸化炭素反応物のモルフローレートは、少なくとも部分的に、セルに供給される電流により決定されてよく、フローは、「化学量論的」フローレートと呼ばれるパラメータにより特徴付けられてよい。
プロセスは、大量の余剰反応物を使用してよく、しかしながら、どこかの時点において、生成物ストリーム中の未反応の反応物は、処理の負担になる。例えば、一酸化炭素生成物ストリーム中の大量の未反応二酸化炭素は、大きな分離コストをもたらし得る。多くの適用について、一酸化炭素は浄化される必要がある。約30%モル未満の一酸化炭素濃度を有するガスストリームについては、分離の負荷は著しく上がってよい。
入口ガスストリームの加湿の度合いは、電解槽の要件により調節されてよい。一般に、加湿された酸化炭素入口ガスストリームは、乾燥した入口ガスストリームよりもカソードから除去する水が少なくなり、カソードガスストリームを介したかなりの量の水の除去が望まれることが頻繁にある。しかしながら、いくつかの電解槽においては、加湿された入力ガスストリームは、電極領域にわたりMEAの比較的均一な水和をもたらす。特定の実施形態においては、MEA等におけるカソードは比較的乾燥する傾向にあるので、AEMのみのMEAを使用する電解槽では、加湿された入口ガスストリームが採用される。また、加湿が還元反応の選択性に影響し得ることが観察された。
様々なMEAの実装において、両極性膜システムでは、水はアノードからカソードへと移動する。一例として、1秒当たり、mA/cm2当たり約2~5E‐8モルの水が移動した。いくつかの実装においては、アノードからカソードへと移動する各プロトンについて、2~4の水分子がカソードに向かい移動する。いくつかの実装においては、この水の少なくとも一部が、出口ガスストリームから分離され、アノードへとリサイクルされる。
特定の実施形態においては、二酸化炭素ガスストリームは、意図的または非意図的に追加された1または複数の添加物を含む。例として、二酸化炭素フィードガスは、一酸化炭素または不活性ガス(例えば、窒素)または不純物と混合されてよい。いくつかの燃焼プロセスにおいて、廃棄物二酸化炭素は、窒素、酸素、一酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物等を含む。
特定の実施形態において、入口二酸化炭素濃度は、少なくとも約20モルパーセント、または、少なくとも約40モルパーセント、または少なくとも約75モルパーセント、または少なくとも約90モルパーセントである。特定の実施形態において、二酸化炭素還元反応器に提供される二酸化炭素は、約40~60モルパーセントの濃度を有する。
[水管理]
[はじめに]
様々な実施形態において、電解酸化炭素還元セルのアノードに水が供給される。いくつかの実装において、セルの動作中に、水は常にアノードを過ぎて流れる。いくつかの場合において、カソードから幾分の水が除去される。用語「アノードの水」とは、電解酸化炭素還元セルにおけるアノードへの入口における水を指す。
電解酸化炭素還元セルにおける水を特徴付け得るパラメータの中には、アノードへ供給される水の組成、カソードにおいて存在する(またはカソードから回復された)水の組成、アノードへの水の質量フローレート、カソードから回復された水の質量フローレート、アノードへの入口における水の圧力、アノードの入口および出口における水のそれぞれの温度、および、水がセルを流れるときの水の圧力降下がある。
[電解セルへ流れるまたは電解セル中を流れる水の役割]
セルにおける水は、様々な目的のうちの任意の1または複数の目的を果たしてよい。例えば、水は、アノードにおいて酸化される反応物として機能してよい。いくつかの場合において、水は、水素イオン、水酸化物イオンおよび/または炭酸水素イオン等の非可溶性または可溶性の反応生成物のための移送媒体として機能する。いくつかの場合において、水は、アノード反応生成物を除去するためのフラッシング剤として機能する。いくつかの実施形態において、水は、電解槽における1または複数の成分の温度を制御する。特定の実施形態において、水は、MEAの個々のイオン伝導性ポリマー層のうちの1または複数といった、MEAコンポーネントのための伝導性向上剤または活性増強剤として機能する。
アノードにおける反応物として、水は酸化され、アノードに電子を提供する。いくつかの実施形態において、アノード半反応は、2HO->4H+O+4eにより与えられる。
アノードを流れる水は、酸素等のアノードの酸化生成物を一掃するための媒体を提供してよい。一例として、流れる水は、動作する電解槽のアノード側から酸素バブルを除去してよい。
アノードの水は、例えば拡散、電気浸透、および/または浸透により、MEAにわたりカソードへと水を供給する条件下で提供されてよい。カソードに向かう水は、COフィードストックおよび/またはカソードを水和させてよい。水和されたカソードは、乾燥したカソードに比べ、活性および/または伝導性が高められてよい。
水は、電解セルを加熱または冷却してよい。特定の実施形態において、電解槽を含むシステムは、アノードからの上流の水を加熱または冷却するよう構成されたヒータおよび/またはクーラを含む。
アノードにおける水の圧力は、MEAのカソード側で印加される入口ガス圧力とのバランスを取ってよい。アノードの水により印加されるこの圧力は、セルのカソード側の補償されないガス圧力の結果としてMEAまたは他のセルコンポーネントに生じ得るダメージに対する保護を与え得る。またアノードの水の圧力は、アノードからのMEAにわたる種移送のための駆動力を提供してよく、および/または、カソードからアノードへの種移送のための駆動力を平衡させてよい。
アノードの水は、電解槽により必要とされる他の種のソースとして機能してよい。このような他の種の例には、電解を促進すべくMEAにより用いられる塩および他の添加物が含まれる。
[水フローレート]
特定の実施形態において、アノードへの水のフローレートは、少なくとも部分的にアノードにおける反応速度により決定され、アノードにおける反応速度は少なくとも部分的にアノードにおける電流により決定される。水のモルフローレートは、アノードにどれくらいの反応物が提供されるかを、おそらくより重要なことには、どれくらいの還元生成物がカソードにおいて生成され得るかを決定する。特定の実施形態において、モルフローレートは、アノードにおける電流により決定付けられる反応の速度(水の酸素および水素イオンとの酸化)をサポートするために必要な理論上の水の量と少なくとも同程度である(カソードにおける電流により決定付けられる)。
多くの実施形態において、アノードにおける水の反応速度は、アノードへの水のフローレートを設定する際の大きな考慮事項ではない。アノードへの水のフローレートに影響し得る他のファクタは、アノードからの酸素(例えば、気体酸素および/または溶解酸素)の除去、MEAおよび/またはセルスタック全体としての温度の制御、および/または、アノードの水への塩または他の添加物の供給を含む。
特定の実施形態において、体積フローレート(および関連付けられる速度)は、アノードにおいて生成される酸素ガスおよび/または他の生成物が一掃されることを保証できるだけ少なくとも十分高い。一般に、通常の動作条件下では、水は基本的に非圧縮性なので、モルフローレートは体積フローレートに比例する。
特定の実施形態において、アノードの水の体積フローレートは、約0.2~60ミリリットル/(MEAのアノードの活性表面積cm当たりの分)である。いくつかの場合において、アノードの水の体積フローレートは、約1.2~4.8リットル/(MEAのアノードの活性表面積cm当たりの秒)である。
[水の圧力](入口)
特定の実施形態において、圧力は、フロー場上の入口および/または出口において設定される。アノードのフロー場への入口における圧力は、アノードにおける所望の水のフローレートおよび/または所望の圧力に基づき設定されてよい。様々な実施形態において、フローレートがまず設定され、所望の圧力降下(セットのフローレートのための)がチューニング(フロー場の設計を用いて)される。特定のフローレートについては、圧力降下は、フロー場構成により設定される。いくつかの場合において、水の入口圧力は、カソード側における高圧の入口ガスと平衡させる。これにより、MEAをダメージから保護し、および/または、MEAにわたる1または複数の種の浸透レートに影響してよい。
特定の実施形態において、MEAセルのアノード側への入口における水の圧力は、約0.5~20psigである。いくつかの実施形態において、アノードの入口における水の圧力は約10psigである。AEMのみのMEAを使用するいくつかの実施形態において、アノードへの入口における水の圧力は、約0~5psigである。
[MEAにわたる水の圧力降下]
いくつかの実施形態において、MEAのアノード側およびカソード側間の圧力差は、制御されたパラメータである。いくつかの実装において、セルは、カソードでのガス圧力に対するアノードでの水圧のバランスを取るよう動作してよい。いくつかの場合において、アノードよりもカソードでより高い圧力をもたらす圧力勾配が維持される。しかしながら、圧力勾配が反対の場合(アノードがより高い)、MEAにわたる圧力差は、膜を通した幾分の浸透を駆動してよい。特定の実施形態において、カソードにおける氾濫を低減すべく、圧力勾配は意図的にカソード側でより高く維持される(アノード側に水を押し戻す)。これは、カソード側の水の管理において有効であってよく、例えば、水がカソードから離れるように駆動され、その結果、触媒部位が酸化炭素反応物の反応のために利用可能のままとなる。しかしながら、二酸化炭素のフィードストックがあまりに乾燥する場合、圧力勾配は、反対方向に駆動されてよい(アノードからカソードへ)。
特定の実施形態において、MEAにわたる圧力差(カソード側圧力-アノード側圧力)は約5~400psigである。特定の実施形態において、MEAにわたる圧力差(カソード側圧力-アノード側圧力)は約70~400psigである。
[アノードの水の組成]
様々なファクタのうちの任意のものが、アノードの水の組成に関連してよい。いくつかの実施形態において、アノードの水は、とりわけ特定のイオンに対する指定された純度で維持される。いくつかの実施形態において、アノードの水は、カソードにおける酸化炭素還元触媒を汚染し得る鉄おおび考え得る他のイオン等の不純物を非常に低い濃度で有する。
特定の実施形態において、アノードの水は、1または複数の塩またはイオンを含む。アノードの水の組成は、このような塩またはイオンを特定の濃度範囲内に維持するよう制御されてよい。
特定の実施形態において、アノードの水は、少なくとも約10μMの濃度を有する塩または塩イオンを含む。
いくつかの実装では、塩イオンはアルカリ金属イオンを含む。いくつかの実装においては、塩イオンは、リン酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、水酸化物イオン、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
一例として、銅を含む還元触媒を有する両極性MEAと共にアノードの水が用いられ、塩は、(i)アルカリ金属カチオン、および、(ii)炭酸水素塩、硫酸塩、または水酸化物アニオンを含む。この例において、塩は約1mM~約1M、または、約1mM~約50mMの濃度で存在してよい。いくつかの場合においえ、MEAは、カソードにおいて二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによりメタンを生成するよう構成されており、塩イオンはナトリウムイオンを含む。いくつかの場合において、MEAは、カソードにおいて2または2より多い炭素原子を有する有機化合物を生成するよう構成されており、塩イオンはカリウムのイオン、セシウムのイオン、ルビジウムのイオンまたはこれらの任意の組み合わせを含む。
一例として、金を含む還元触媒を有する両極性MEAと共にアノードの水が用いられ、塩は、(i)アルカリ金属カチオン、および、(ii)炭酸水素塩、水酸化物、または硫酸アニオンを含む。この例において、塩は約10uM~約200mM、または、約100uM~約20mMの濃度で存在してよい。
一例として、MEAにおけるすべてのポリマーがアニオン伝導性ポリマーである両極性MEAと共にアノードの水が用いられ、酸化炭素還元触媒は銅を含む。個の例において、塩は、(i)アルカリ金属カチオンおよび(ii)炭酸水素塩または水酸化物アニオンを含んでよい。塩は約10mM~約15M、または、約50mM~約1Mの濃度で存在してよい。いくつかの場合において、MEAは、カソードにおいて二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することでメタンを生成するよう構成されており、塩イオンはナトリウムイオンを含む。いくつかの場合において、MEAは、カソードにおいて二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することで2または2より多い炭素原子を有する有機化合物を生成するよう構成されており、塩イオンは、カリウムのイオン、セシウムのイオン、ルビジウムのイオン、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
塩および塩の供給制御方法および装置の複数の例が、PCT特許出願の公開公報2020/112919(2020年6月4日公開、発明の名称「電解槽および使用の方法」)に記載されており、当該文献は、参照により本明細書にその全体が組み込まれる。
[温度]
いくつかの実施形態において、酸化炭素電解槽は、指定の温度範囲で動作され、これが特定の動作を促進させてよい。いくつかの実施形態において、酸化炭素電解槽は、動作中に熱を生成する。これは、比較的高い過電圧に起因してよい。いくつかの実施形態において、酸化炭素電解槽は、加熱したアノードの水をアノードに流すことで加熱される。いくつかの実施形態において、酸化炭素電解槽は、セルスタック上のエンドプレートからの熱により加熱される。いくつかの実施形態において、酸化炭素電解槽は、動作中に冷却される。いくつかの実装において、セルは、温度を指定範囲に維持すべく空冷を用いる。いくつかの空気が冷却された電解槽は、スタック内に約50個または50個より少ない酸化炭素還元セルを有する。いくつかの実装において、セルは、温度を指定範囲に維持すべく水冷を用いる。いくつかの水が冷却された電解槽は、スタック内に約50個または50個より多い酸化炭素還元セルを有する。
酸化炭素電解槽内の様々な物理的効果のうちの1または複数は、温度の上昇に伴い変わってよい。温度を上昇させることは、ガスの溶解度の低下をもたらしてよく、これが触媒に到達する、入ってくる酸化炭素の速度または割合を下げ得る電解槽において温度を上昇させることは、ポリマー電解質の伝導性を増大させてよい。電解槽において温度を上昇させることは、MEAの水中のおよび/またはイオン伝導性ポリマー中の種の拡散を増大させること、および/または、MEAへの浸透により、水または他のガスの種のフローを増大させること等により、物質移送を増大させてよい。電解槽において温度を上昇させることは、カソードにおける反応速度を増大させてよい。これらは、酸化炭素還元反応および水素ガス発生反応のうちの一方または両方を含んでよい。電解槽において温度を上昇させることは、例えば触媒および/またはポリマー電解質を含むMEA材料の分解率を増大させてよい。電解槽において温度を上昇させることは、カソードを出るガスストリーム中の水の気相濃度を増大させてよい。これらの温度効果のうちの任意の1または複数は、セル動作温度を閾値より上または閾値より下に、または、特定の範囲内に維持することにより高められまたは制御されてよい。
比較すると、酸化炭素還元システムにおいて、反応の所望の温度はしばしば比較的低く、例えば、20℃未満である。ポリマーベースのMEA酸化炭素還元システムでは、所望の温度は比較的高く、例えば、約20℃を超えてよい。
特定の実施形態において、動作セルにおける両極性MEAの温度は、約20~90℃である。特定の実施形態において、動作セルにおける両極性MEAの温度は、約30~80℃である。
いくつかの実施形態において、動作セルにおける両極性MEAの温度は、約45℃またはそれより高い。いくつかの実施形態において、動作セルにおける両極性MEAの温度は、約70℃またはそれより高く、セルは例えば、セルは空冷システムを用いるものなど比較的控えめな冷却システムを用いる。
特定の実施形態において、動作セル内のAEMのみのMEAの温度は約20~45℃である。特定の実施形態において、動作セル内のAEMのみのMEAの温度は約25~35℃である。
最適な動作温度は、セルのコンポーネントの熱的安定性により限定されてよい。
[電気条件]
いくつかの実装において、酸化炭素電解システムは、酸化炭素還元セルに対し定電流および/または定電圧を提供するよう構成された電源を使用する。定電流の動作が、カソードおよびアノードにおいて生成される生成物の一般的に一定のレートを提供してよい。いくつかの動作条件下では、定電圧の動作は、電流密度が定電圧を維持しつつ変わり得るので、可変量の生成物をもたらしてよい。いくつかの実装において、カソードの還元生成物の選択性は、セル電圧を変えることでチューニングされてよい。
特定の実施形態において、単一の電解槽セルのカソードにおける定電流または公称電流密度は、約10~2000mA/cmである。特定の実施形態において、単一の電解槽セルのカソードにおける定電流の密度は、約20~600mA/cmである。これらの範囲においては、電流密度は、孔または他の表面テクスチャを考慮しない幾何学的にスムーズなカソードの活性表面のために定義される。
いくつかの場合において、電流密度は生成された生成物の選択性に影響してよい。いくつかの生成物は、低い電流密度および低いセル電圧では生成されない可能性があるので、特定の生成物を優先または優先しないために、電流密度をより高くまたは低く選択してよい。例えば、約200mA/cmを超える電流密度は、両極性MEA構成においてはメタンおよび/またはエチレン(一酸化炭素に対し)の生成を、または、AEMのみの構成においてはエチレンの生成を促進してよい。いくつかの実装においては、約270~330mA/cmまたは約300mA/cmにおいて、メタンおよび/またはエチレンの選択性(例えば、主産物)が促進される。約200mA/cm未満では、COおよびH2が主産物であってよい。
いくつかの実装において、酸化炭素電解槽の電源は、セルの電流をステップアップおよび/またはステップダウンすることにより、セルへの電流をランプアップおよび/またはランプダウンすることにより、および/または、セルへの電流をパルスすることにより電流を調節するよう構成されている。いくつかの実装においては、酸化炭素電解槽の電源は、セルの電圧をステップアップおよび/またはステップダウンすることにより、セルの電圧をランプアップおよび/またはランプダウンすることにより、および/または、セルの電圧をパルスすることにより電圧を調節するよう構成されている。
特定の実施形態においては、電解槽のコントローラは、一時的に正の電流を適用するよう構成されている(すなわち、一時的にカソードをアノードとして実行するおよび逆も然り)。これにより、動作中にカソード上を金属で覆い得る遷移金属等の不純物を激減(あるいは酸化してなくならせてよい)させてよい。一例として、このような不純物の発生源は、アノードの水中であってよい。電流を逆にすることで、カソード触媒を汚染し得る酸化炭素還元生成物の中間体を除去してよい。
2019年12月18日出願されたPCT特許出願PCT/US2019/067169(発明の名称「電解槽および使用方法」に、酸化炭素電解セルの電気条件を制御することに関する実施形態が記載されており、当該文献は参照により本明細書にその全体が組み込まれる。
[スタートアップ条件およびプロシージャ中の中断]
酸化炭素還元電解槽は、通常の動作条件とは異なる1または複数のスタートアップ条件を受けてよい。例えば、電解槽はスタートアップ中に加熱されてよい。別の例として、電解槽は、通常の動作条件と比較して、MEAにわたる(アノードからカソードへ)逆圧力勾配を受けてよい。
特定の実施形態において、電解槽のスタートアッププロセスには、まず電解槽を加熱して電解槽の動作温度(例えば、上記の温度範囲を参照)等へ昇温させることが含まれ、このとき、還元反応を駆動するための電気エネルギーを適用して、その後に動作電気エネルギーを適用することを伴わない。
いくつかの実施形態において、カーボン電解セルは、フル動作の前にプロシージャ中の中断を受ける。このようなプロシージャ中の中断には、セルへの電気エネルギーの制御、セルへの酸化炭素原料の供給の制御、および/または、セルの他の動作パラメータの制御が伴ってよい。
[電気パルス]
[動作の文脈およびステージ]
いくつかの実施形態において、MEAに適用される電流は、非一定プロファイルを有する。電流プロファイルは、以下にさらに記載されるように動作モードに従って異なり得る。動作モードは、水和(プレブレークイン)、ブレークイン、通常動作、計画された停止、延長された停止または保管、またはこれらの任意の組み合わせを含んでよい。これらの動作モード中に調節され得る他のセル動作パラメータ(しばしば電流の調節に関連する)には、(a)カソードのガス組成、フローレートおよび圧力、(b)アノードの水の組成およびフローレート、(c)温度、または、(d)これらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、電圧が制御される。
適用される電流は、セルの動作中に一時停止またはパルスされてよい。電流一時停止は、オフ/オンサイクルと称されてもよく、ここで、電流は1または複数回、オフに切り替えられて、その後オンにされる。いくつかの実施形態において、適用される電流は、電流一時停止中にゼロに低減される(すなわち、オフにされる)。いくつかの実施形態において、電流一時停止は、電流を非ゼロレベルに低減する。
いくつかの実施形態において、電流をセルに適用する前に、MEAは水和工程に通される。これには、電流を適用する前に定常状態に到達可能となるように、反応物を流すことを開始すること、および随意でセル(またはスタック)を加熱することが含まれてよい。いくつかの実装においては、スタックまたはセルを組み立てる前に、MEAが水に漬けられ、MEAの水和を開始させる。組み立て後、アノードの水およびカソードのCOの流れおよび圧力が設定される。乾性または加湿されたCOを流すことは、比較的長期間の動作中に乾性COが投入物として用いられる場合であっても、この工程において有益であり得る。アノードの出口は、この出口を出る気泡が存在しないことを確認するために観察されてよい。気泡が存在する場合、このことは、(膜内のピンホールからの)著しいCOクロスオーバまたはハードウェアにおける漏洩があることを示す。所望の動作温度が周囲よりも高い場合、セルは、アノードの水の流れを開始した後に所望の温度まで加熱されてよい。この工程の間、MEAは所望の温度で水和され続ける。
ブレークイン期間とは、動作条件およびパフォーマンスが所望の長期設定に合致するまでに、MEAまたはスタックに初めて適用されるプロシージャを指す。いくつかの実施形態において、MEAが初めて使用されるとき、通常の動作とは異なるプロシージャが使用されてよい。以前に動作したことのないMEAは、十分に水和されていない可能性があり、または、動作中の温度上昇に起因して構造に変化が生じる可能性がある。いくつかの実施形態において、電流は、所望の動作値まで一直線にジャンプするのではなく、一連の工程において低い値からより高い値へとランプアップする。漸進的な線形ランプアップが用いられてもよい。電流プロファイルの例が図1Aに示されている。マルチステップランプアップにおける中間工程の数は、例えば、1、2、3、4、5、または6であってよい。各工程における継続時間は、同じであってもまたは異なってもよい。
プレブレークイン前(例えば、水和期間中に)に動作温度に達する実施形態においては、温度はこの温度で一定に維持されてよい。他の実施形態において、温度は、ブレークインプロシージャ中にランプアップされてよい。
通常動作中にスタックをオフおよびオンにサイクルさせることは、長時間にわたってパフォーマンスを維持するのに有用であってよい。性能向上の例には、電解槽の電流効率の増大、電解槽の電圧効率の増大、単一のパス変換の提供(より低頻度でのパルスは、電解槽の変換/利用率全体を増大させる)、電解槽のMEAの耐用期間の増大、他のセルコンポーネント(ガス拡散層GDL等)の耐用期間の増大、および、特定の反応のための選択性の増大が含まれる。
いくつかの実施形態において、電流プロファイルまたは電流一時停止スケジュールは、電流オン期間が一時停止期間よりも大幅に長いようになっている。図1Aは、電流プロファイルとも称され得る電流一時停止スケジュールの概略的な例を示している。電流密度がy軸上に、時間がx軸上に示されている。いくつかの実施形態においては、高スループットのために、電流一時停止の継続期間が電流オン期間よりもはるかに短い。例えば、電流オン期間は、電流一時停止期間よりも、少なくとも3倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、または500倍長くてよい。
図1Aの例において、電流一時停止スケジュールは、通常動作の継続時間の間は一定である。他の実施形態において、間隔および/または一時停止継続時間は、動作の過程を通して変化してよい。例えば、電流一時停止は、高度な動作工程においてより頻繁になるようにプログラムされてよい。
また、図1Aの例では、一時停止期間の開始時に電流密度を減少させ、一時停止期間の終了時に動作密度まで戻すのに、単一ステップが用いられている。本明細書に記載される他の動作モードにおいて電流を増加または減少させるのと同様に、電流は、電流一時停止期間の開始および/または終了時に、複数のステップでまたは連続的にランプ状に変化させてよい。図1Bは、電流一時停止期間の開始時における、動作電流密度から一時停止電流密度へ電流を減少させる概略的な例を示している。同様に、図1Cは、電流一時停止期間の終了時における、動作電流密度への戻りの概略的な例を示している。開始時における電流プロファイルは、一時停止期間の終了時のそれとは独立して選択されてよい。例えば、電流は、単一ステップで減少させて、複数ステップで上昇させてもよい。
電流一時停止中、セル電圧は、様々な値のうちの任意のものに保持されてよい。いくつかの場合において、電流一時停止中、アノードおよびカソードは、(例えば、電源を通してまたは電極を金属若しくは他の導体に接続することによって)短絡される。この場合、セル電圧は0または略0ボルトである。いくつかの場合において、電流一時停止中、アノードおよびカソードはフロート可能にされ、セルの電圧は一般的な条件下でのその開回路電圧、例えば、0.8V~1.4V、0.8V~1.2V、または0.9V~1.1Vである。様々な実施形態によれば、カソードおよび/またはアノードの流れは、電流一時停止中に停止されてもよいし、または継続可能とされてもよい。
時々、CO電解システムの使用に応じて、計画された停止が実行されてよい。計画された停止においては、システムは短時間だけ停止され、その後オンに戻される。計画された停止の理由の例としては、システムの一部のメンテナンス(例えば、アノードの水のリサイクルループ上のフィルタの交換、フローコントローラの置換、または温度センサの試験)、計画停電、およびCO還元の生成物を用いる下流プロセスにおける一時停止が含まれる。計画された停止は、例えば数分~数日続く比較的短い停止期間を有してよい。
時に、システムまたはスタックが長期間停止されることが望ましい場合がある。例えば、施設の休日シャットダウン、システムの新施設への移動、またはCO供給の中断。この時間中は、システムを外部入力から完全に切り離すことができることが期待される。この場合、通常動作中に用いられるものとは異なるガスまたは水溶液を、アノードまたはカソード内に密封することができる。長期停止または保管期間後のスタートアッププロシージャは、上記に記載したブレークインプロシージャと同じであってよい。
[パルスによりトリガされる機構]
電気パルスは、1または複数の機構により、酸化炭素還元電解槽に影響を与えてよい。理論に縛られるつもりはないが、このような1つの機構は、強い両極性により生じる電極の内部ストレスを緩和することを含んでよい。これは、強い両極性により生じる、カソード内の炭素材料の充電の過電圧を緩和することで達成されてよい。多孔性カーボンカソード支持材料は、カーボン電解槽界面に、高容量の電気化学的二重層を生成(効率的にスーパーキャパシタを形成)してよい。経時的に、常時充電が持続的に過電圧を増大させて我々の電極を充電してよい。もたらされる電場が表面の再構築に影響をおよぼしてよく、また電極上の炭素(または他の)材料の充電に影響を及ぼしてよい。パルスまたは一時停止が、電極界面上の充電の一部を放出させてよい。
電気パルスはまた、物質移送を一時停止し、異なる電圧において吸着/脱着を変更することにより電極の表面環境を変更し、および/または、電極から不純物を激減させてよい。さもなければ、このような不純物は電極上に吸着し、性能を劣化させ得る。このような不純物の例には、主反応中間体または副反応中間体およびセルハードウェアまたは反応物(すなわち、水、CO)からの不純物が含まれる。電気パルスは、触媒の表面形態を再構築することにより、および/または、触媒部位を酸化炭素還元のためのより好ましい方向に再配置することにより、カソードを修正してよい。
追加的に、電気パルスは、カソードにおける水の品質に影響し得る。電気パルスは、アノードから移送される水量を低減させてよい(例えば、比較的低い電流密度で)一方で、ガスフローレートは同一であることに起因して、カソードにおける水の除去率は不変であってよく、これにより酸化炭素の物質移送を向上させる。
[パラメータ値]
いくつかの実施形態の文脈では、およびいくつかの実施形態では、酸化炭素還元セルの通常動作は、約0~10Vの電圧において(電解)、および/または、約0~2000mA/cmのカソードの電流密度において(電解)実行されてよい。セルは、約0~2.5Vの範囲における通常開回路電圧(静止電圧)を有してよい。本明細書で別途の記載がない限り、正の値を有するすべての電流および電圧が電解セルに提供されることに留意されたい(すなわち、カソードの電流は正電極で流れ、正電極のところで酸化炭素が還元される)。
以下のパラメータが電気パルスを特徴付けてよい。別途の記載がない限り、パラメータは、電流および/または電圧を制御することにより実装されてよい。電解槽が電流制御下で動作する場合、適用される電流パルスは対応する電圧パルスを有することとなり、電圧パルスは、電流パルスとは異なるプロファイルを有してよいことに留意されたい。同様に、電解槽が電圧制御下で動作する場合、適用される電圧パルスは、対応するが異なる電流パルスを有してよい。
[パルスまたは一時停止の大きさおよび継続時間]
電流パルスは、約100~2000mA/cmまたは約200~600mA/cmの高い電流密度である電流密度サイクルを用いて実行されてよい。高電流密度状態は、約30分から1000分にわたり保持されてよく、このような状態は、電流の低減または一時停止でそれぞれ分離されている。様々な実施形態により、電流は比較的頻繁な間隔(例えば、約10時間未満、または約2時間未満)で、または、比較的頻繁ではない間隔(例えば、約10時間以上)で一時停止される。パルス間の低減された電流は、約1~100mA/cmの電流密度を有してよく、および、約0.5秒~60分の期間にわたり保持されてよい。このサイクルが通常動作の継続時間の間反復されてよい。低電流密度の一時停止は逆方向、例えば、カソードにおける正(酸化)の電流を有してよいことに留意されたい。
いくつかの実施形態においては、高スループットのために、電流一時停止の継続期間が電流オン期間よりもはるかに短い。例えば、電流オン期間は、電流一時停止期間よりも、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、または少なくとも500倍長くてよい。特定の実施形態において、定期的パルス/パルスは、約0.2~1のデューティサイクルを有する。
言及した通り、パルスまたは一時停止に影響をおよぼすべくセル電圧が制御されてよい。一例として、電圧パルスは、高電圧状態が約2.7から3.9Vにわたるサイクルを用いて実装される。これらの例または他の例において、低電圧状態は約1.5から2.7Vにわたる。いくつかの例において、高電圧は約30分~1000分の間保持され、および/または、低電圧は約5分~100分の間保持される。このようなサイクルが通常動作の継続時間の間反復されてよい。特定の実施形態において、周期的パルス/パルスは、約0.2~1のデューティサイクルを有する。
特定の実施形態において、電流パルスは、カソードからの液体の水の除去に役立つ。低減された電流密度がカソードへ移送される水を低減してよい。動作電流密度は、動作時間の大半の間、約200~600mA/cmであってよく、動作時間の大半とは例えば、合計時間の約65%~95%の範囲である。一時停止された電流密度は、例えば約1~100mA/cmに低減するよう設定され、これに応じて、合計時間のごく一部、例えば約5%~35%である。
[段階的およびランプ変更]
初期のブレークインプロトコル中、または、パルス中の異なる電力密度間の移行プロトコル中、または、計画された停止の前後に、段階的変更またはランプ(上昇および下降)が用いられてよい。段階的変更は、2~10段階(例えば、約2~5段階)を含んでよい。いくつかの実施形態において、段階の大きさは、約50~300mA/cmである。いくつかの実施形態において、段階の継続時間は約1分~300分(例えば、約30~150分または約60~120分)である。ランププロトコルは、約1秒から200分の間でターゲットの電流に上昇するまたは下降することを含んでよい。いくつかの実装においえ、ランプは線形である。
いくつかの実施形態において、電気パルスまたは一時停止が発生する期間が、パルスまたは一時停止が発生しない期間で区切られる。このようなパルス/一時停止および非パルス/非一時停止の交互の期間が、通常動作、ブレークイン、計画された停止等の間に発生してよい。パルスが発生しない期間は、通常動作の前の第2の段階のブレークインプロトコルとして用いられてよい。一例として、約200~400mA/cmにわたる一定の中電流密度が、パルスプロトコルが開始する前に、約50~100時間の間適用されてよい。
パルスは、カソードが一時的に酸化の電流および電圧で動作する逆のセル電流(または極性)を有してよい。逆の電位パルスは、約0~3.5Vの範囲で、対応する電流密度は-10~0mA/cmの範囲であってよい。逆のパルスは、約0~60分の継続時間を有してよい。逆のパルスは、順方向電気パルスについて本明細書で記載さいたものと同一の周期および/または他のパラメータと共に実装されてよい。いくつかの実施形態において、逆電気パルスは、順方向電気パルスとインタリーブされる。
一時停止またはパルスパラメータのいくつかの関連値が、2019年12月18日に出願された米国特許出願の公開公報2020/022185に示されており、当該文献は参照により本明細書にその全体が組み込まれる。
以下のパラメータが、計画された停止サイクルを特徴付けてよい。停止サイクルは、100~10,000動作時間おきに配置されてよく、「オフ」電流状態は、絶対零度電流(OCVモード)または最小電流状態(ショートモード)であり得る。
[非電気パラメータパルス]
[文脈]
電流は、パルスまたは一時停止され得る唯一の反応器の条件ではない。パルスまたは一時停止され得る他の反応器の条件の例には、カソードへのガスフローレート、カソードへのガス圧力、セル温度、およびアノードへの水フローが含まれる。非電気パラメータのパルスは電気パルスと同期して実行されてよく、または、電気パルスが用いられる場合、電気パルスとは独立して実行されてよい。いくつかの実装では、COフローレート、電気パラメータ、セル温度、およびCO圧力が独立的に、またはすべて一緒に、または異なる組み合わせにおいて、パルスされる。
非電気パラメータの一時停止またはパルスの機構および効果は、電気パラメータの一時停止またはパルスの機構および効果と重複してよい。特定の実施形態において、機構は「水管理」を関与させ、水管理はCO物質移送を向上させ得る。水管理は、フロー場、ガス拡散層、触媒層(上記の気孔)および/またはMEAから水を取り除くことを含み得る。特定の実施形態において、水管理は、液体の形態の望ましくない中間体を取り除く。特定の実施形態において、水管理は、ガスフローを低下させるとき、潜在的な塩の詰まりを取り除く。
[非電気パラメータパルスの範囲]
以下は、パルスまたは一時停止の実施形態で使用可能な非電気パラメータの値の非限定的例である。
[パルスの圧力の大きさ]
反応器ガス圧力は、約数分~数百時間にわたる動作期間の間に維持される約90~150psiにわたる通常動作の設定値を有してよい。
パルスまたは一時停止の間、反応器のガス圧力は、約0~70psiにわたるより低いガス圧力を有してよく、当該圧力は、例えば、約数分から一時間にわたる期間の間維持され、このとき電流は適用する、または適用しない。
このようなサイクルが通常動作中に複数回、例えば、少なくとも約5回、または、少なくとも約10回反復されてよい。
[パルスの継続時間]
電解反応器は、約30分~1000時間にわたる動作期間の間、カソードのガス圧力が通常レベル(高)で動作してよい。
反応器は、例えば約5分~60分にわたる期間の間、より低いカソードのガス圧力で、電流の適用有りまたは無しで動作してよい。
一例として、酸化炭素還元セルは約45分の間、約90psiで動作した後、約5分の間、約0psi(ゲージ)で動作される。通常動作0~70psiのパルスは、水管理に役立つことが判明している。
[パルス中の体積フローレートのバリエーション]
電解反応器のカソードへのガスフローレートは、約30分~1000時間の継続時間の間、例えば約2~80sccm(カソードの1cmの平坦な表面積について、スケーラブル)にわたる通常動作の設定点を有してよい。いくつかの実施形態において、反応器のガスフローレートは、例えば約12~120sccm(カソードの1cmの平坦な表面積について、スケーラブル)にわたるより高いフローレートに増大する。いくつかの実施形態において、反応器のガスフローレートは、例えば約0.4~4sccm(カソードの1cmの平坦な表面積について、スケーラブル)等のより低いフローレートに低減する。ガスフローレートの逸脱(通常動作の設定点より高いまたは低い)の期間は、通常のガスフローレートの期間より短くてよい。例えば、逸脱するガスフローレートは、約0.1秒~12時間にわたってよく、電流が適用されてもされなくてもよい。他のパラメータの変化と同様、反応器のガスフローレートのサイクルは、複数回反復されてよい。
一例において、ガスフローレートのサイクルは、約1000sccmの酸化炭素フローレートの設定点を含み、これは約45分間にわたり維持される。当該例においては、その後、酸化炭素のフローレートは、約5分間、約2000sccmに増大する。このサイクルは、通常動作の間にわたり反復される。
[温度のパルス]
特定の実施形態において、酸化炭素還元電解セルは、通常動作の間、変化する温度を有する。いくつかの場合において、通常動作の温度は約30~70℃であり、より低い一時停止またはパルスの温度は約20~40℃である。いくつかの場合において、通常動作の温度は、約1~100日の間維持され、より低い温度が約1時間から1日の間維持される。
一例として、酸化炭素還元電解槽は、以下のような温度のバリエーションを用いてよい。電解槽は、約10日間、約50℃で動作された後、約1日間、約30℃で動作される。このサイクルは、電解槽の通常動作の間に複数回反復されてよい。セル温度を調節することで、触媒選択性を改善してよく、および、水揚げおよび化学物質移送速度等のポリマー電解質の特性を変更してよく、これにより効率的な水管理を促進する。
[パルスのランプレート(上昇および下降;線形および/または段階)]
ガス圧力パルスは、段階的変更またはランプにより実現されてよい。
ガスフローレートパルスは、段階的変更またはランプにより実現されてよい。
温度パルスは、段階的変更またはランプにより実現されてよい。
[回復およびプロセス]
[はじめに]
特定の実施形態において、動作シーケンスは、非標準条件下で、水または他の液体をカソードに流すための、および/または、ガスをカソードに流すための通常動作の条件から一時的に逸脱することを含む。水をカソードに流すこと、および/または、ガス例えば、通常の酸化炭素反応物以外のガス)をカソードに流すことは、酸化炭素電解槽の性能の回復を促進し得ることが判明している。この交互の動作シーケンスは時折「回復プロセス」または「回復シーケンス」と称される。
回復プロセスは、酸化炭素電解槽が運行され、通常条件下で数千時間等の期間にわたり動作した後に実行されてよい。回復プロセスが完了した後、電解槽は、通常動作に戻るよう移行してよい。回復プロセスは、電解槽の耐用年数にわたり、または電解槽の関連するMEA、ガス拡散層(GDL)、およびフロー場等の電解槽のコンポーネントのうちの1または複数の寿命にわたり、反復して実行されてよい。例えば、回復プロセスは、耐用年数の1000~10,000時間おきに実行されてよい。
本明細書に開示される多くの実施形態が酸化炭素電解槽の失われた性能を回復するためのプロシージャとして示される一方で、いくつかの実施形態は、酸化炭素電解槽を、電解槽への電力の損失等といった予期しない何らかのイベントの悪影響から保護することに関する。予期しないイベントが発生中である、またはまもなく発生する可能性があると判定された場合、酸化炭素電解槽は保護モードに置かれてよい。このような予期しないイベントが軽減されない場合、当該イベントは電解槽または電解槽を支持するインフラストラクチャにダメージを与え得る。
いくつかの実装において、回復を実行するための本明細書に記載された動作のうちの任意のもの、または、このような動作の任意の組み合わせは、酸化炭素電解槽の保護のために用いられてもよい。
いくつかの実施形態において、電解槽および/または関連する制御システムは、(a)予期しないおよび潜在的に有害なイベントが発生中である、または将来に発生する可能性があり、且つ、このような予期しないイベントが軽減されない場合、当該予期しないイベントは酸化炭素電解槽にダメージを与える、または、劣化させる可能性があると判定すること、および、(b)予期しないイベントが発生し続けるまたは実際に将来に発生した場合、電解槽がダメージを受ける、または劣化させられる可能性を低減する1または複数の保護動作を酸化炭素電解槽に実行することによって、保護モードを実装する。
保護動作をトリガし得る予期しないイベントの例には、陽極液または酸化炭素(例えばCO)ガス等の投入材料の突然の低減または損失、加熱または冷却の低減または損失、および、電解槽への電力の損失が含まれる。投入材料のかなりの低減または損失は、電解槽への電力を調節して、開回路電圧または電流なしをもたらすことが要求され得る。電解槽への電力の損失は電解槽に放電を生じさせ得、急速にまたは徐々に動作電圧から開回路電圧またはゼロ電圧等の制御されていない電圧へと至らせる。
予期しないイベントの影響を軽減するための保護動作の例には、比較的低い電流密度を電解槽に適用すること、電解槽の電圧を開回路電圧に移行させること、および、電解槽に適用される電流を低減するまたはランプダウンすることが含まれる。これらの保護動作のうちの任意のものが、予期しないイベントが発生し続けている間のみ、または、このようなイベントの発生の可能性が大幅に低減されるまでといったように、限定された時間にわたり適用されてよい。
いくつかの実施形態において、保護動作は、電解槽の電流密度を、約1~50mA/cmまたは約5~25mA/cm(例えば約10mA/cm)の比較的小さい(通常動作と比較して)順方向電流密度へ、または、通常動作条件における電流密度の約0.3%~20%へと低減する。
いくつかの実施形態において、保護動作は電解槽への電流をランプダウンする。ランプは、任意の形態またはスロープを有してよい。いくつかの場合において、フル電流(通常動作)から最終電流までの平均的なランプレートは、約0.1~1mA/cm/分、または、約1~10mA/cm/分である。いくつかの場合において、ランプは段階的である。段階の数、段階の継続時間、および段階の電流密度の変化の大きさは可変であってよい。一例として、ランプは、約2~50段階、または約5~30段階を有してよい。さらなる一例として、段階の継続時間は、約1~100秒、または約5~50秒であってよい。さらなる一例として、段階の電流の大きさは、約0.1~10mA/cmまたは約0.5~5mA/cmであってよい。
一例において、段階プロファイルは、電解槽への電流密度を通常動作の値(例えば、約300mA/cmから2A/cmへと)から段階シーケンスを介して低減し、各々がはるかにより小さい値(例えば、約10、9、8、7、6、5、4、3、2、1mA/cm)を有し、且つ、各々が定義された継続時間を有し(例えば、それぞれが約30秒)、その後に、電解槽を約5~10分間にわたり開回路で維持すべく最終電流出力を設定する。
いくつかの実施形態において、電解槽は、電流ランプを介して、回復または保護モードから通常動作条件へと戻る。このような戻りランプは、電流を反対方向、すなわち、低電流密度からより高い電流密度においてランプダウンするためにちょうど同定された特徴のうちの任意のものを有してよい。
[例示的な回復プロセス]
一例において、回復プロセスは以下のシーケンスを含む。すなわち、電解槽への電流を一時停止し、その後にカソードに水を流し、その後に電解槽への電流の流れを再開する。別の例においては、回復プロセスは以下のシーケンスを含む。すなわち、電解槽への電流を一時停止し、その後にカソードにガスを流し、その後にカソードに水を流し、その後にカソードにガスを再度流し、電流をセルに流すことで最終的に通常動作を再開する。回復シーケンスのいくつかのさらなる例が以下に含まれる。
いくつかの例において、回復動作は、電流がカソードに流れていない間に、カソードを水に接触させることを含む。いくつかの実装において、水がカソードに存在する間に、比較的少量の電流が流れる。いくつかの場合において、この電流は、逆方向(酸化炭素還元カソードにおける陽極)に流れる。一例として、水が存在する間に、わずか約1mA/cmの電流がカソードに逆方向に流れる。いくつかの例において、回復プロセスの一部の間に、カソードに静止的に接触する代わりに、水がカソードに流れる。水の流れまたは水の接触を含む回復動作の例は、例1、2、3および4を含む。
[例示的回復シーケンス1]
通常動作であり、随意で電流または電圧をパルスすることを含む;
電流をオフにする、または、著しく低減させる;
流す、またはカソードに接触させることにより、水をカソードに導入する;
電流をオンにする、または通常動作レベルに増大させ、通常動作を再確立する(例えば、通常動作圧力およびフローレートにおけるフロー反応ガス)。
いくつかの実施形態において、回復動作は、電流を停止し、水をカソードに流した後、カソードを乾燥させることを含む。乾燥させる動作は、反応ガス、修正された反応ガス、または不活性ガス等の異なるガスを用いて随意で実行される。
[例示的回復シーケンス2]
通常動作であり、随意で電流または電圧をパルスすることを含む;
電流をオフにする、または、著しく低減させる;
流す、またはカソードに接触させることにより、水をカソードに導入する;
カソードを乾燥させる(例えば、カソードにガスを流すことにより);
電流をオンにする、または通常動作レベルに増大させ、通常動作を再確立する(例えば、通常動作圧力およびフローレートにおけるフロー反応ガス)。
いくつかの実施形態において、回復動作は、ガス(反応物または他のガス)がカソードに流れていない間に、水をカソードに流すことを含む。
[例示的回復シーケンス3]
通常動作であり、随意で電流または電圧をパルスすることを含む;
電流をオフにする、または、著しく低減させる;
カソードへの反応ガスの背圧を放出し、当該反応ガスの流れを停止する;
水をカソードに導入する;
カソードを乾燥させる(例えば、カソードにガスを流すことにより);
電流をオンにする、または通常動作レベルに増大させ、通常動作を再確立する(例えば、通常動作圧力およびフローレートにおいて反応ガスを流す)。
ガスフローを停止すること、および、背圧を放出または低減することは、いずれの順序で生じてもよいことに留意されたい。プロセスが反応物とは異なるガスを用いる場合、まずガス圧力を放出した後、フローを停止する必要があり得る。
[例示的回復シーケンス4]
通常動作であり、随意で電流または電圧をパルスすることを含む;
セル電流をオフにする、または、著しく低減させる;
カソードへの反応ガスの背圧を放出し、当該反応ガスの流れを停止する;
代替条件下でガスをカソードに流す;
ガスフローを停止する;
流す、またはカソードに接触させることにより、水をカソードに導入する;
カソードを水に接触させることを停止する;
乾燥ガスをカソードに流す;
反応ガスをカソードに流す;
電流をオンにする、または通常動作レベルに増大させ、通常動作を再確立する。
いくつかの実施形態において、回復プロセスは、その後にガス(反応ガスまたは反応ガス以外のガスであってよい)を流すことを伴う電流の流れを停止することを含む。ガスが反応ガスではない場合、ガスが一定の期間流れた後に、反応ガスの流れが再開され、電流がオンに戻される。いくつかの実施形態において、反応ガス以外のガスは、空気、酸化性ガス、不活性ガス、これらの組み合わせ、または、反応ガスの修正された組成を含む。このようないくつかの実施形態においては、ガスが流れている間の少なくとも一部の時間においては、水はカソードに流されない。ガスが流れている時間の少なくとも一部にわたり水を接触させないガスフローを伴う回復動作の例は、例5、6、および7を含む。
[例示的回復シーケンス5]
通常動作であり、随意で電流または電圧をパルスすることを含む;
電流をオフにする、または、著しく低減させる;
反応ガスの背圧を放出し、カソードへの反応ガスをオフにする;
一定時間にわたり、反応ガス以外のガスをカソードに流す;
通常動作の圧力およびフローレートにおいて、反応ガスを再導入する;
電流をオンにする、または増大させて、通常動作を再構築する。
いくつかの実施形態において、回復プロセスは、その後に反応ガスを低減された圧力および/または低減されたフローレートで一定時間にわたり流すことを伴う電流の流れを停止し、その後に、反応ガスの圧力および/またはフローレートを通常動作の圧力に増大させ、最終的に電流を通常レベルに戻すことを含む。いくつかのこのような実施形態においては、水は、カソードに流されない。
[例示的回復シーケンス6]
通常動作であり、随意で電流または電圧をパルスすることを含む;
電流をオフにする、または、著しく低減させる;
低減されたフローレート等の代替条件下で、ガス(随意で反応ガス)をカソードに流す;
電流をオンにする、または増大させて、通常動作を再構築する。
[例示的回復シーケンス7]
通常動作であり、随意で電流または電圧をパルスすることを含む;
電流をオフにする、または、著しく低減させる;
カソードへの反応ガスの圧力を一定時間にわたり低減する;
反応ガスの圧力を通常動作の圧力に増大させる;
電流をオンにする、または増大させて、通常動作を再構築する。
[例示的回復シーケンス8]
通常動作であり、随意で電流または電圧をパルスすることを含む;
電解槽への電流をランプダウンして、随意で低い逆電流を適用する;
低減されたフローレートおよび/または圧力等の代替条件下でガス(随意で反応ガス)をカソードに流す(低い逆電流であってよい低い電流を適用する間);
正の電流をランプアップする;
完全な正電流および反応ガスの完全な流れを含む、完全な通常動作条件を再確立する。
[例示的回復シーケンス9]
通常動作であり、随意で電流または電圧をパルスすることを含む;
低い逆電流を適用する(ランプまたは直接の移行);
低減されたフローレートおよび/または圧力等の代替条件下でガス(随意で反応ガス)をカソードに流す(低い逆電流であってよい低い電流を適用する間);
正の電流をランプアップする;
完全な正電流および反応ガスの完全な流れを含む、完全な通常動作条件を再確立する。
[例示的回復シーケンス10]
通常動作であり、随意で電流または電圧をパルスすることを含む;
電源または関連付けられた回路を調節して電解槽を短絡させる、または開回路電圧より低い電位に到達させる。
低減されたフローレートおよび/または圧力等の代替条件下でガス(随意で反応ガス)をカソードに流す(電解槽を開回路電圧に、または、短絡状態に保持する間);
通常動作の電解槽の電位および反応ガスの完全な流れを含む、完全な通常動作条件を再確立する。
[例示的保護シーケンス11]
通常動作であり、随意で電流または電圧をパルスすることを含む;
予期しない、有害なイベントの発生可能性を判定する;
電解槽を保護モードに移行させる(保護モードの動作条件の例には、比較的低い電流密度を電解槽に適用することと、電解槽の電圧を開回路電圧に移行させること、電解槽に適用される電流を低減するまたはランプダウンすることを含む);
その有害イベントはもはや脅威でないことを判定する;
完全な通常動作条件を再確立する。
[例示的回復シーケンス12]
通常動作であり、随意で電流または電圧をパルスすることを含む;
電源または関連付けられた回路を調節して、開回路電圧に到達させ維持させる。
低減されたフローレートおよび/または圧力等の代替条件下でガス(随意で反応ガス)をカソードに流す(電解槽を開回路電圧に、または、短絡状態に保持する間);
通常動作の電解槽の電位および反応ガスの完全な流れを含む、完全な通常動作条件を再確立する。
[回復プロセスに関連付けられるプロセスパラメータ]
回復プロセスに関連付けられる様々な動作が以下のシーケンスに説明される。
[通常動作]
言及した通り、回復シーケンスが予期される前に、酸化炭素電解槽は一定期間の間、通常に動作してよい。通常動作は、本明細書の他の箇所に記載された通常動作の条件のセットを含んでよい。このような条件には、(a)カソードにおける反応ガス圧力およびフローレートまたは流速の通常レベルにより特徴付けられてよい、通常の反応ガスフロー、(b)反応ガス組成、(c)セットの温度または温度プロファイル、(d)電流または電圧の大きさ(随意で非一定の波形と共に)、または(e)これらの任意の組み合わせを含んでよい。いくつかの実施形態において、通常動作中、電流または電圧は、パルスまたは一時停止されたプロファイルを有し、当該プロファイルにおいては、電解槽における電流の大きさは定期的に、一時的な低減または増大がなされる。
通常動作は、反応ガス中の酸化炭素を炭素含有生成物に変換することを含んでよい。いくつかの実施形態において、酸化炭素はCOおよび/またはCOであり、炭素含有還元生成物はCO、炭化水素および/または有機酸素含有化合物を含む。通常、通常動作中に、酸化炭素入口またはMEAの外部にある他のソースを介して、液体(例えば、水)はカソードに導入されない。しかしながら、通常動作中に、霧または液滴の形態の液体は、入口ガスと共にカソードに接触してよい。
様々な実施形態において、回復シーケンスの前に、電解槽は一定の期間にわたり通常に動作する。例えば、回復シーケンスを実行する前に、電解槽は少なくとも約100時間の期間にわたり通常条件下で動作してよい。いくつかの場合において、回復シーケンスを実行する前の通常動作の期間は、少なくとも約1000時間、または少なくとも約2000時間、または少なくとも約5000時間、または少なくとも約10,000時間にわたり続く。回復シーケンスの後、電解槽は、少なくとも約100時間等の長期間にわたる通常動作に戻ってよい。通常動作を確保する期間は、別の回復プロセスによって、または、電解槽の動作を終了させることにより継続的に中断されなくてよい。いくつかの実装において、電解槽の寿命の間、回復プロセスは定期的に実行されるが、回復プロセスの複数のインスタンスは、少なくとも約100時間または少なくとも約500時間または少なくとも約1000時間の期間等、通常動作の最小期間で分離される。
[電流の低減または停止]
特定の実装において、回復シーケンスは電解槽への電流の流れを停止し、電流密度の大きさを低減し、またはカソードにおいて電流の方向を逆にする。電流の低減は大きくてよく、つまり電流の低減は電解槽またはカソード触媒層等、そのコンポーネントのいずれにも悪影響を及ぼさない。例えば、電流は、金属、炭素担体材料またはポリマー等の触媒成分を腐食させる、あるいは劣化させるべきではない。一例として、電流は少なくとも約50%だけ低減される。いくつかの例において、カソードにおける低減された電流密度は、最大で約100mA/cm(平坦なカソードの表面積)の大きさを有する。この電流密度は、ガスおよび/または水がMEAの外部からカソードに供給される場合に適用されてよい。
いくつかの場合において、回復シーケンスは、少なくとも一時的に電流を逆方向に適用(すなわち、セルのカソード側においてアノード電流が流れる)することを用いる。(カソード側における)少量のアノード電流は、後続の通常動作中の電解槽のカソードにおける性能の回復に寄与してよい。当該少量のアノード電流は、触媒の表面をリフレッシュしてよい。
いくつかの実施形態において、回復または保護のために、電流または電圧のランプが酸化炭素電解槽に適用される。保護モードの説明に関連付けて上記した通り、ランプは、任意の形態またはスロープを有してよい。いくつかの場合において、フル電流(通常動作)から最終電流への平均的ランプレートは、分当たり約20mA/cmまたはそれ未満、または、分当たり約1~10mA/cm、または分当たり約0.5~1mA/cmである。いくつかの場合において、ランプは段階化される。段階の数、段階の継続時間、および段階の電流密度の変化の大きさは可変であってよい。一例として、ランプは、約2~50段階、または約5~30段階を有してよい。さらなる一例として、段階の継続時間は、約1~100秒、または約5~50秒であってよい。さらなる一例として、段階の電流の大きさは、約0.1~10mA/cmまたは約0.5~5mA/cmであってよい。
[電流停止の継続時間]
特定の実施形態において、回復シーケンスにおける電流停止の継続時間は、約5分~数日(例えば、10日)である。特定の実施形態において、電流停止の継続時間は、約10分~約300分、または約15分~60分である。
回復プロセスの開示時に電流を通常動作から変更する場合、電流は、突然の停止(単一の段階)、ランプダウン、および/または複数の段階により低減されてよい。
逆電流が適用される特定の実施形態において、逆電流がカソードに適用される継続時間は、約5秒~60分、または、約5分~60分である。
[短絡]
いくつかの実施形態において、回復または保護モード中に、酸化炭素電解槽に電力供給するための電源は短絡される。短絡は、回路における電気抵抗がアノードおよびカソード間の電流の流れを妨げるほど十分大きくない場合に発生し得る。このような場合において、アノードおよびカソードの電位は等しい。換言すると、セル電圧は0ボルトである。短絡すると、電解槽は通常動作状態から、または開回路電圧から放電する。電解槽の短絡中、セル電圧は、開回路電圧未満のレベルへと移行する。
回復または保護モード中、短絡状態は所定の期間にわたり保持されてよい。いくつかの実施形態において、短絡モードは約30分以下、または約10分以下、または約5分以下、または約1~5分保持される。短絡状態を出た後、電解槽は通常動作の電圧に戻ってよく、随意で完全な通常動作に戻る。
電流が逆方向に流れる短絡および関連付けられた放出プロセスは、例えば、余剰の活性表面積を生成することにより、および/または、潜在的な不純物または中間体を除去することにより、触媒効果を増大させる酸化条件を触媒(例えば、金触媒)にもたらしてよい。短絡はまた、K、H、COOH、HCO 、CO2-)、OH、または正イオンおよび/または負イオンの任意の組み合わせ等のイオン種を激減してよい。短絡はまた、MEA界面(例えば、両極性MEA中のPEMおよびAEM間)におけるおよび/またはカソードにおける水電解を生じさせ得、酸化炭素(例えば、CO)のより良い物質移送のために乾燥条件をもたらす。短絡はまた、そのpHまたはイオン濃度等のカソードのローカル環境を一時的に変更することで、CO2還元の選択性を向上させてよい。より低いpHからより高いpHへの変更、または、カリウムのより低い濃度からより高い濃度への変更は、CO生成反応としての特定の反応のための選択性を向上させてよい。
特定の実施形態において、COからCOへの還元の選択性が特定のターゲット値未満である場合、および/または、電解槽の寿命を、例えば数百時間だけ延長することが望ましい場合、システムは短絡を適用する。特定の実施形態においては、反応選択性に関する周期的(例えば、循環性)回復のために、システムは短絡を適用して、特定の時間範囲内での特定の崩壊率ターゲットに至る。例えば、システムは、選択性が特定の値、例えば約90%以下に崩壊する場合は常に、回復動作を実行してよい。別のアプローチは、電解槽が定義された期間(例えば、約200~500時間)にわたり通常に動作するときはいつでも、回復動作を実行する。別のアプローチは、電解槽が選択性における閾値低下を示すときはいつでも、回復動作を実行する(例えば、約10%以下)。
[開回路電圧]
いくつかの実施形態において、酸化炭素電解槽は、回復または保護中に開回路電圧に到達することが可能とされ、または維持される。開回路電圧とは、アノードまたはカソードで正味の電気化学的反応が発生していないときのアノードおよびカソードの間の電圧差を指す。当該電圧差は、アノードおよびカソードの間に電流が流れないときをもたらしてよい。開回路電位は、電解槽および電源を含む回路内のスイッチが、アノードおよび/またはカソード間の伝導性経路を破壊することにより開くとき得られてよい。開回路電位はまた、電源および電解槽を含む回路内に非常に高いインピーダンス要素を用いることで得られてもよい。このような抵抗器は、電解槽のアノードおよびカソード間のすべての電流を完全にシャットオフまたはほぼシャットオフする効果を有する。
いくつかの場合において、カソードにおける同様のCOガスフローレートを維持しつつ、電解槽をOCVに設定すること、または、OCVに到達することを可能にすることで、比較的乾燥した状態をもたらし、それによりCOの物質移送の向上を可能にしてよい。電気化学的反応が発生していないときに、電解槽をOCVに設定すること、または、OCVに到達することを可能にすることで、触媒の表面上の潜在的な中間体または不純物を流し出してよい。いくつかの場合において、電解槽をOCVに設定すること、または、OCVに到達することを可能にすることで、pHまたはイオン濃度等のカソードのローカル環境を一時的に変更し、それにより例えばCO生成のためにCO還元選択性を向上させる。
電解槽をOCVに設定すること、または、OCVに到達することを可能にすることが様々なシナリオおよび適用に利点をもたらしてよい。いくつかの場合において、選択性の控えめな回復が所望される、および/または電解槽電圧が短絡状態と比較して比較的高レベルに維持される必要がある場合に、OCVが用いられる。
[逆電流]
既に示したように、いくつかの実施形態において、回復または保護中に、逆電流が酸化炭素電解槽に適用される。順方向電流とは、通常動作中に酸化炭素電解槽に適用される電流である。電源からカソードへ電子が供給され還元が生じることを可能とし、電子がアノードから抜き取られ、酸化が生じることを可能とする。逆電流の間は電子の流れが逆になり、その結果、通常動作中にカソードとして機能する電極が、逆電流の適用中はアノードして機能し、通常動作中にアノードとして機能する電極が、逆電流の適用中はカソードして機能する。
通常、逆電流は、炭素および/またはカソードの触媒における他の材料が酸化または腐食するレベル未満に維持される。いくつかの実施形態において、逆電流は約-100mA/cm以下または約-5~-100mA/cmの大きさを有する。いくつかの実施形態において、逆電流は約100分以下、または約50分以下、約30秒~20分の継続時間にわたり適用される。さらなる例として、逆電流は、約1mA/cm(カソードの表面積)と同程度の大きさ、または、約0.5mA/cm(カソードの表面積)と同程度の大きさであってよい。いくつかの場合において、逆電流フローは、セル電圧が約1.25V(反応ガスのため)および2.5V(空気等の酸化性ガスのため)を超えない、または、約0.5V(反応ガスのため)および2V(空気等の酸化性ガスのため)を超えないレベルで、またはそれ未満で維持される。逆電流を用いる特定の実施形態においては、このような電流は、わずか約0.6Coulombs/cm(カソードの表面積)程度に限定される。
逆電流の適用が終了した後、電解槽は通常動作の電流に戻ってよく、随意で完全な通常動作に戻ってよい。特定の実施形態において、逆電流の最終値は、当該最終値にランプすることで達成される。保護モードのための、または、低減された電流値を達成するための、本明細書に記載されたランプレートおよび/または段階付けられたランププロシージャが使用されてよい。
酸化炭素電解槽を逆電流にさらす潜在的な利点の中には、本明細書に記載した短絡を適用する場合の利点が挙げられる。同様に、酸化炭素電解槽を逆電流にさらすことは、短絡を適用する場合の適用と同様の適用を見出し得る。
[カソードに流れるガスのタイプ(水と事前に接触)]
回復プロセスのいくつかの実装では、電流が停止または低減された後、ガスが特定の期間にわたりカソードに流れる。本明細書でこのガスは「回復ガス」称されることがある。いくつかの場合において、回復ガスは、通常動作(随意で、通常動作において用いられるものとは異なる圧力および/またはフローレートで)中に流れる酸化炭素反応物と同一の組成を有する。例えば、通常動作中および回復プロセス中に流れるガスは、定義された濃度の二酸化炭素または一酸化炭素を含む。いくつかの場合において、回復プロセス中にカソードに流れる回復ガスは、反応ガスの組成と異なる組成を有する。いくつかの場合において、反応ガスと比較して、回復プロセスのガスは、より低い濃度の酸化炭素反応物を有する。いくつかの場合において、回復プロセスのガスは、通常プロセスのガス中には存在しない(または異なる濃度で存在する)不活性ガスを含む。不活性ガスの例として、希ガス(例えば、Ar、HeまたはKr)または窒素が含まれる。いくつかの場合において、回復プロセスのガスは空気である、または空気を含む。いくつかの場合において、回復ガスは、酸素等の酸化性ガスを含む。いくつかの場合において、酸化性ガスは単純に空気であり、当該空気は約21%の酸素を含有してよい。他の場合においては、酸化性ガスは酸素であり、または空気とは別に提供された他の酸化性物質である。例えば、通常動作中に電解槽のアノードで生成される酸素は、酸化的回復ガスとして用いられてよい。いくつかの実装において、回復ガスは加湿されている。いくつかの実施形態において、成分ガスは、二酸化炭素、空気、水、不活性ガス、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
いくつかの例において、回復ガスは100%または純粋な反応ガスである。いくつかの例において、回復ガスは100%または純粋な不活性ガスである。いくつかの例において、回復ガスは反応ガスおよび不活性ガスを任意の比率で含む。いくつかの例において、回復ガスは酸化性ガスおよび不活性ガスを任意の比率で含む。いくつかの例において、回復ガスは、体積で約0~2%の濃度で存在する水蒸気を有する加湿ガスである。いくつかの場合において、加湿ガスは、反応ガス、不活性ガス、酸化性ガス、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
[カソードにおけるガス圧力(水と事前に接触)]
いくつかの実施形態において、電流の停止または低減の後、カソードに流れる回復ガスの圧力は、最大で電解槽セルの通常動作の圧力に至るレベルであってよい。いくつかの実施形態において、電流の停止または低減の後、カソードのガスの背圧は、例えば0psigに低減される。カソードのガスの背圧は、ガス流路中のカソードから下流に配置された圧力調整器によって制御されてよい。カソードのガスの背圧を低減した後、回復ガスが存在してよく、随意で約0~600psigまたは約0~400psigまたは約0~50psigの圧力下で流れる。
[カソードを流れるガスフローレート(事前に水に接触)]
電流を低減または停止した後、回復ガスが流れる特定の実施形態においては、当該回復ガスは、約0~50sccm/cm(平坦なカソードの表面積)または約10~30sccm/cm(平坦なカソードの表面積)の速度で流れてよい。本明細書で示されるフローレート値は、カソードの表面積当たりの単位で規定されることに留意されたい(例えば、平坦なカソードの表面のcm当たり)。単一の例として、カソードの表面積25cmを有する電解槽について、ガスフローレートは約500sccmであってよい。ガスフローレートは、カソードの表面積と共に、線形または非線形にスケーリングしてよい。本明細書で示されるフローレート値は、瞬時のフローレートまたは平均フローレートであってよい。
[カソードで流れるガスの継続時間(事前に水に接触)]
回復ガスがカソードに流れる回復シーケンスの実施形態においては、そのガスは、電流が停止または低減された後、一定の期間にわたり流れてよい。特定の実施形態において、カソードに流れるまたはカソードに存在するガスの継続時間は、約30分~10日、または約1時間~2日である。回復シーケンスにおけるガスフローの継続時間は、少なくとも部分的に、ガスのフローレートに依存してよい(例えば、フローレートが可変の場合においては、平均フローレート)。一例として、数日間にわたる低フローまたはゼロフローおよび数分または数時間にわたる高フローは同様の効果を有してよい。さらなる一例として、ガスフローおよび/または曝露時間範囲は、30分から数日にさえおよび得る。しかしながら50sccm/cmのフローレートでは、最大接触/フロー時間は、約5時間であってよい。
いくつかの実施形態において、回復ガスはカソードに流れた後、カソードを水または他の液体に接触させる。回復ガスフローは、液体との接触の前に停止されてよい。
[カソードに接触する水の組成]
示したように、様々な回復プロセスには、カソードを水等の液体に接触させることを伴う。本明細書で水と言及するときは、回復プロセスは広範囲の純度にわたる水を用いてよいことを理解されたい。いくつかの実施形態において、水は、少なくとも約1メガオーム、または少なくとも約10メガオーム、または少なくとも約18メガオームの抵抗率を有する脱イオン水等の脱イオン水である。いくつかの実施形態において、水は1または複数の溶解溶質または懸濁成分を含む。溶解溶質の例には、炭酸水素塩、炭酸塩、硫酸塩、水素、硫酸塩、ギ酸塩、アセテート、ハロゲン化物が含まれる。一例として、溶質は金属(例えば、ナトリウム、カリウムまたはセシウム)またはこれらのアニオンのアンモニウム塩)であってよい。特定の実施形態において、回復プロセスの水は、最大で約10mMの炭酸水素イオン、または最大で約5mMの炭酸水素イオン、または最大で約2mMの炭酸水素イオンの濃度における炭酸水素塩を含む。いくつかの実施形態において、回復プロセスの水は、通常動作中に用いられるアノードの水の組成と合致するまたはそれと同様の組成を有する。アノードの水の組成の例は、2019年11月26日に出願されたPCT特許出願PCT/US2019/063471に示されており、当該文献は参照により本明細書にその全体が組み込まれる。
[カソードでの水のフローレート]
随意で、カソードとの接触中に水が流れる。いくつかの実施形態において、カソードへの水のフローレートは最大、平坦なカソードの表面積cm当たり約20ml/分である。一例として、水のフローレートは、平坦なカソードの表面積cm当たり約2‐10ml/分である。いくつかの実施形態において、当該フローレートは、ポンプおよび関連のハードウェアに基づき限定される。回復プロセスの一環としてカソードに供給される水はMEAを介してアノードから供給されるのに対し、通常MEAの外部から、例えばカソードへの酸化炭素入口を介して供給されることに留意されたい。
[カソードを水が流れる継続時間]
特定の実施形態において、カソードに水が流れる継続時間は、約1~100分である。特定の実施形態において、カソードに水が流れる継続時間は、約2~50分、または約5~15分である。
[水が流れた後の乾燥段階(ガスが流れる)]
水がカソードと接触しないとき、乾燥動作が実行されてよい。乾燥は、水が接触した後であり、且つ、通常動作の再開前、または可能性として通常動作の再開の初期期間中に実行あれてよい。
乾燥は、カソードから水を除去する任意の組成のガスを用いて実行されてよい。本明細書においてこのようなガスは「乾燥ガス」と称されてよい。乾燥ガス中に存在し得るガスの例には、空気、反応ガスおよび不活性ガスがある。不活性ガスの例には、希ガス(例えば、He、Ar、Kr)および窒素が含まれる。反応ガスが用いられる場合、随意でそれは通常動作中に用いられるのとは異なる濃度で用いられる。例えば、二酸化炭素は反応物中に50%(モル)で存在してよく、乾燥ガス中に約20%(モル)で存在してよい。
乾燥ガスが水をカソードから除去する際の物理的メカニズムには、液体の水を除去するのに十分な圧力および/または速度で、カソードをガスと接触させることにより、水をカソードから押し出す、あるいはさもなければ水をカソードから強制的に排出することが含まれてよい。
水はまた、あるいは代替的に、乾燥ガス中への蒸発により除去されてもよい。この目的のために、カソードに入る乾燥ガスの相対湿度は、蒸発を促進すべく制御されてよい。いくつかの実施形態において、乾燥ガスは非常に低い相対湿度(例えば、約0~100%)を有してよい一方で、他の実施形態においては、乾燥ガスはより高い値を有してよく、より高い値は、MEAが乾燥してその性能が劣化する程度までには水分を失わないことを保証するのに望ましくてよい。
[乾燥の継続時間]
特定の実施形態において、カソードを乾燥させる継続時間は、約0~500分、または、約2~100分、または約5~30分である。
いくつかの実施形態において、乾燥動作は、カソードから下流にさらなる液体の水(例えば、水滴または霧)が存在しなくなるまで継続する。いくつかの実施形態において、乾燥動作は、カソードに入る乾燥ガスの湿度が、カソードから出る乾燥ガスの湿度とほぼ同じになるまで継続する。
[フローまたは反応ガスを再開する]
反応ガスを用いた乾燥が実行されない場合、回復プロセスは、乾燥ガスを流すことから、反応ガスを流すことに移行する。これは、例えば、カソードの下流にある圧力調整器上の設定を調節することにより、カソードにおける通常動作のガス圧力を再構築することを含んでよい。乾燥ガスが反応ガスの場合、乾燥ガスを流すことから反応ガスを流すことへの移行は生じる必要はない、または随意で当該移行は生じるが、ガスフローレート、圧力、組成またはこれらの組み合わせの変化のみを呈する。
[回復後の電流ランプレート]
いくつかの実施形態において、回復動作の結果として、電流は直接的に元の値に戻って再開され、または、幾分のランプ段階または段階的増加と共に再開される。
[随意の電圧スキャン]
いくつかの実施形態において、回復プロセスは電圧または電流スキャンと共に実行される。電圧または電流スキャンは、2つのエンドポイント間で交互方向において反復して実行されてよい。電圧スキャンは、サイクリックボルタンメトリ式で実行されてよい。いくつかの場合において、電圧または電流スキャンは、電流が別の方法で停止されている間に、回復プロセスにおいて実行される。いくつかの場合において、ガスがカソードに流れており且つ水がカソードに接触しない間に、電圧または電流スキャンは実行される。例えば、電圧または電流スキャンは、上述の回復シーケンスの例2~4のうち任意のものにおいてガス乾燥動作中に実行されてよい。いくつかの例において、電圧または電流スキャンは、水との接触前に生じるガス接触動作中に実行される。上述の回復シーケンスの例3および4を参照されたい。いくつかの例において、電圧または電流スキャンは、水の接触動作と関連しないガス接触動作中に実行される。上述の回復シーケンスの例5-7を参照されたい。
電圧または電流スキャンは、電解槽セルまたはそのカソードに様々な影響を有してよい。例には、次が含まれる。
‐強い二極化により生じる電極内の炭素材料の充電の過電圧を、異なる時間の長さにわたる電流停止を通して緩和する。
‐ゼロ電圧またはわずかなアノード電圧または大気曝露下で、吸着/脱着環境を変更することによる、電極表面のクリーニング(不純物/望ましくない中間体の除去)。
‐カソード触媒部位をCO還元のためにより好ましい向きに再調整する。
‐MEAを水和状態に保つ。
電圧スキャンは、初期カソード電圧E0(V)、カソード電圧上限値V1(V)、カソード電圧下限値V2(V)およびスキャンレートS(mV/s)により特徴付けられてよい。いくつかの実施形態において、E0は、RHEに対して約-1V~1.2Vの範囲を有する。いくつかの実施形態において、E1は約-1V~1.2Vの範囲を有する。いくつかの実施形態において、E2は約-1V~1.2Vの範囲を有する。いくつかの実施形態において、Sは約-10000~-0.1mV/s、または約0.1~10000mV/sの範囲を有する。スキャン方向は、正または負であってよく、正は第1のスイープが正の方向に向かうことを意味する一方で、負は第1のスイープが正の方向に向かうことを意味する。正の方向および負の方向におけるスキャンレートは、同一または異なってよい。スキャンの数(n)は約1~1000の範囲であってよい。
図2は、循環電圧スキャンの例示的な特徴を示す。
[回復動作中の温度の変化]
特定の実施形態において、回復動作中、電解槽セルの温度は変化しない。特定の実施形態において、回復動作中、電解槽セルの温度は変化する。温度変化は、温度コントローラ、カソードに流れる水、カソードに流れるガス、またはこれらの任意の組み合わせにより駆動されてよい。いくつかの実施形態において、回復動作中、電解槽セルの温度は上がる。いくつかの実施形態において、回復動作中、電解槽セルの温度は、例えば約5~25℃だけ下がる。
[回復動作および保護動作の影響]
特定の実施形態において、回復プロセスを用いる場合、電解槽の電流効率は、回復プロセスの直後に、およびしばしばその後の長期間にわたり増大してよい。いくつかの場合において、電流効率は回復プロセス後に、少なくとも約20%だけ、または少なくとも約35%だけ、または少なくとも約50%だけ増大する。
特定の実施形態において、回復プロセスを用いる場合、電解槽の電圧効率は低減しない。例えば、電解槽の電圧効率は、回復プロセス後に、少なくとも約1%だけ、または少なくとも約3%だけ増大してよい。特定の実施形態において、回復プロセスを用いる場合、電解槽のセル電圧は増大しない。例えば、電解槽のセル電圧は、回復プロセス後に少なくとも約50mVだけ、または、少なくとも約100mVだけ低減してよい。
特定の実施形態において、回復プロセスを用いる場合、電解槽の動作耐用期間は、回復プロセスを受けない電解槽と比較して、少なくとも約100時間だけ、または少なくとも約1000時間だけ、または少なくとも約5000時間だけ、または少なくとも約10,000時間だけ増大してよい。特定の実施形態において、回復プロセスを用いる場合、電解槽の動作耐用期間は、回復プロセスを受けない電解槽と比較して、少なくとも約50%だけ増大してよい。
特定の実施形態において、回復プロセスを用いる場合、電解槽の単一のパス変換が増大する。単一のパス変換は、意図した生成物へ変換する反応ガスのモル分率であってよい。特定の実施形態において、二酸化炭素電解槽の単一のパス変換は、回復プロセス後に、少なくとも3%だけ、または少なくとも約5%だけ、または少なくとも約10%だけ増大する。
[例]
図3は、回復シーケンスの幾分の影響を示す予備実験を示す。この例では、Au/C触媒粒子を持つ25cmのカソードを有する二酸化炭素電解槽を用いた。
図3のグラフは、適用された電流密度(より下のプロット)、二酸化炭素を一酸化炭素に変換するための実験上観察されたファラデー収率(中央のプロット)および実験上観察された電解槽セルの電圧を示す。
実験はスタートアップシーケンス(回復シーケンスと混同されるべきではない)を用いており、スタートアップシーケンスは、連続的電流密度300mA/cmおよびセル温度50℃を用いた第1のステージ、および、45分ごとに、5分間の40℃にての10mA/cmの低電流の一時停止で中断される300mA/cmの高電流密度を用いた第2のステージを有することに留意されたい。第1のステージは72時間実行され、第2のフェーズは163分実行された。第2のステージが完了したとき、実験は、45分ごとに、5分間の40℃にての10mA/cmの低電流の一時停止で中断される200mA/cmの通常電流密度を用いる通常動作に移行した。
図示の通り、約3000時間を実験に費やし、通常動作が一時的に終了され、回復シーケンスが適用された。回復シーケンスは、セル電流のオフ、背圧の放出およびカソードへの反応ガスのフローの停止、カソードを大気圧における空気にさらすこと、脱イオン水をカソードに流すこと、カソードの水への接触を停止すること、空気をカソードに流すこと、反応ガスをカソードに流すこと、逆転することを含む。
理解できるように、電解槽セルの電圧は徐々に通常動作の期間にわたり増大する一方で、電解槽の一酸化炭素生成のファラデー収率は低下した。回復シーケンスを実行した後、セル電圧は約0.04ボルトだけ低下し、一酸化炭素生成のファラデー収率は約20%だけ増大した。
実験の後半、約3600時間の時点で、第2の回復シーケンスが実行された。このシーケンスは、セル電流のオフ、背圧の放出およびカソードへの反応ガスフローの停止、カソードを大気圧における空気にさらすこと、脱イオン水をカソードに流すこと、カソードの水への接触を停止すること、空気をカソードに流すこと、反応ガスをカソードに流すこと、電流をオンにすること、または、通常動作レベルに電流を増大させることを含む。第2の回復シーケンスを実行した後、セル電圧は約0.05ボルトだけ低下し、一酸化炭素生成のファラデー収率は約23%だけ増大した。
[プロセスウィンドウ]
特定の適用のために、および、指定の組成を有するカソードアウトプットを生成するために、電解槽の設計および動作条件はチューニング可能である。いくつかの実装において、要求される出力ストリームの組成を生成するように動作させるべく、1または複数の一般的原則が適用されてよい。
1.カソードの活性部位における二酸化炭素反応物の可用性を制限し、および/または、カソードにおける電流密度を増大させる。これらの動作条件の範囲は、以下の結果をもたらす傾向にある。(a)当初、二酸化炭素反応物の可用性を下げ、および/または、電流密度を増大させたとき、COに変換されるCOの比が増大する(すなわち、出力ストリーム中のCO:COが増大する);(b)ある時点で、さらに二酸化炭素反応物の可用性を下げ、および/または、電流密度を増大させたとき、水素イオン還元反応はより顕著になる(すなわち、H:COが増大する)。比較的わずかな二酸化炭素の投入/可用性で動作するよう構成された電解槽は、電解槽の上流の二酸化炭素のフローレートを制御するよう単純に設計されてよい。いくつかの場合において、電解槽は、二酸化炭素が電解槽のカソード上の活性部位に到達することを制限するフロー場またはガス拡散成分を有するよう構成されている。特定の実施形態において、インターデジタルではないフロー場設計、および蛇行経路等の長い経路をCOのソースおよびカソード間に有するフロー場設計は、CO:Hのより高い比率をもたらす。インターデジタルフロー場は、入力ガス(酸化炭素)を強制的にガス拡散層に流してから、フロー場の異なる場所において出させる。非インターデジタル設計は、酸化炭素フィードガスがカソードへ流入する、およびカソードから流出するための長い連続的経路を有する。入口側にあるチャネルは、出口側にあるチャネルから離間配置されている。比較的厚いガス拡散電極は、カソード活性部位へのCO物質移送を制約し得、従って、CO:COおよび/またはH:COの比率を増大させる傾向にある。
2.カソードにおいて水素イオンを比較的より利用可能にする。カソードにおいて水素イオンを比較的より利用可能にすることで、比較的高いH:COの比率を持つカソード生成物ストリームをもたらしてよい。比較的水素が豊富な生成物をもたらすように構成された電解槽は、(a)カソードに二酸化炭素反応物を欠乏させる(1に記載したように)、(b)比較的高流量の水素イオンがアノード(水素イオンはここで生成される)からカソードへ移送されることを許容する、および/または、(c)比較的高いセル温度で動作する設計を用いてよい。比較的高流量の水素イオンがカソードに流れる状態で動作し得る電解槽は、カソードにカチオン伝導性ポリマーおよび/または混合イオン伝導性ポリマーを備えたMEAを有してよい。代替的にまたは追加的に、カソードバッファ層を有するMEAでは、当該カソードバッファ層は、比較的薄く設計され、および/または、比較的高い水素イオン輸率を有するよう設計されている。
3.カソードにおいて水素イオンの利用可能性をより少なくする。カソードにおいて水素イオンの利用可能性を比較的より少なくすることで、比較的高いCO:Hの比率を持つカソード生成物ストリームをもたらしてよい。生成物中の水素の濃度を比較的低くもたらすように構成された電解槽は、(a)特定の電流密度について、カソードに余剰の二酸化炭素反応物を提供する、(b)水素イオンがカソードに到達することを防止するMEA設計を用いる、および/または、(c)比較的低いセル温度で動作する設計を用いてよい。
[COに対するCO還元生成物の高比率の動作パラメータレジーム]
特定の実施形態において、電解槽は、少なくとも約1:1、または少なくとも約1:2、または少なくとも約1:3のCO:COモル比を有する出力ストリームを生成するよう構成されており、且つ実際の動作時にそれを生成する。代替的に、高CO出力ストリームは、少なくとも約25モル%、または少なくとも約33モル%、または少なくとも約50モル%のCO濃度を有するとして特徴付けられてよい。
特定の実施形態において、高一酸化炭素出力濃度(上の例のいずれかにおける範囲)は、二酸化炭素電解槽を、次の動作条件のうちの任意の1つまたはこれら動作条件の任意の組み合わせをもたらすように動作させることで得られる。
カソードにおける少なくとも約100mA/cmの電流密度、
最大で約4、または最大で約2.5、または最大で約1.5のCO化学量論的フローレート(本明細書の他の箇所に記載した通り)、
最大で約80℃または最大で約65℃の温度、
約25~400psigの圧力範囲、
ギ酸塩および/または炭酸水素塩等である約0.1~50mMの塩を含むアノードの水の組成、および
少なくとも約1のアノードの水のpH。
特定の実施形態において、電解槽は、本明細書で例示したように、以下の特性のうちの任意の1つ、またはこれらの任意の組み合わせを有する二酸化炭素電解槽を用いることにより、CO:COの高モル比または高濃度に有利に働くように構築されてよい。
比較的小さいナノ粒子のカソード触媒(例えば、平均で約0.1~15nmの最大寸法を有する)、
カソード触媒材料としての金、
約5~20umのカソード触媒層の厚み、
微多孔質層(MPL)を持つカソードガス拡散層(GDL)、
約1~20wt%、または約1~10wt%、または約1~5wt%で存在するPTFEを持つカソードGDL、
少なくとも約200umの厚みを有するGDL、
少なくとも約5umの厚みを有するアニオン交換カソードバッファ層を有する両極性MEA、および
並列および/または蛇行流路を有するカソードフロー場。
[還元生成物の(H+CO)対CO高比率の動作パラメータレジーム]
特定の実施形態において、電解槽は少なくとも約2:1、または少なくとも約1:2、または少なくとも約1:3のモル比の(H+CO):COを有する出力ストリームを生成するよう構成されており、動作時に実際そのように生成する。
特定の実施形態において、比較的高い還元生成物出力濃度(上述の(H+CO):CO比率のうち任意のものを使用)は、以下の動作条件のうちのいずれ1つまたはこれらの任意の組み合わせをもたらすように二酸化炭素電解槽を動作させることで得られる。
少なくとも約300mA/cmの電流密度、
最大で約4、または最大で約2.5、または最大で約1.5のCO化学量論的フローレート、
最大で約125℃の温度、
最大で約800psiの圧力、
0~約500mMの炭酸水素塩のアノードの水の組成、および
約0~15のアノードの水のpH
特定の実施形態において、電解槽は、本明細書で定義したように、以下の特性のうちの任意の1つ、またはこれらの任意の組み合わせを有する二酸化炭素電解槽を用いることにより、(CO+H):COの高モル比または高濃度に有利に働くように構築されてよい。
ナノ粒子のカソード触媒(例えば、平均で約0.1~1000nmの最大寸法を有する)、
カソード触媒材料としての遷移金属、
約0.1~100umのカソード触媒層の厚み、
微多孔質層(MPL)を持つまたは持たないカソードガス拡散層、
約0~70wt%PTFEを持つGDL、
約10~1000umの厚みを有するGDL、および
約0~100umの厚みであるアニオン交換カソードバッファ層を有する両極性MEA。
[水素が豊富な生成物ストリームの動作パラメータレジーム]
特定の実施形態において、二酸化炭素電解槽は、少なくとも約1:1のモル比のH:COを有する出力ストリームを生成するよう構成され、および動作時にそのように実際に生成する。
特定の実施形態において、このような水素が豊富な出力濃度は、二酸化炭素電解槽を次の動作条件のうちの任意の1つ、またはこれらの任意の組み合わせをもたらすように動作させることで得られる。
少なくとも約300mA/cmの電流密度、
最大約2のカソードへのCO物質移送化学量論的フローレート、
少なくとも約65℃または少なくとも約80℃の温度、
約75~500psigの圧力範囲、
純水または少なくとも約50mMの炭酸水素塩のアノードの水の組成、および
最大で約1のアノードの水のpH。
特定の実施形態において、電解槽は、本明細書で定義したように、以下の特性のうちの任意の1つ、またはこれらの任意の組み合わせを有する二酸化炭素電解槽を用いることにより、水素豊富なモル比または濃度に有利に働くように構築されてよい。
比較的大きなナノ粒子のカソード触媒(例えば、平均で少なくとも約80nmの最大寸法を有する)、
カソード触媒材料としての銀、パラジウムまたは亜鉛、
最大で約5umの厚み、または少なくとも約25umの厚みのカソード触媒層、
微多孔質層(MPL)を持たないカソードガス拡散層、
PTFEを持たないまたは少なくとも約20wt%PTFEを持つカソードGDL、
最大で約200umまたは少なくとも約500umの厚みを有するカソードGDL、および
約0~5umの厚みを持つアニオン交換カソードバッファ層を有する両極性MEA。
[水素生成物に対する高還元生成物のストリーム動作パラメータレジーム]
特定の実施形態において、二酸化炭素電解槽は、少なくとも約2:1のモル比のCO:Hを有する出力ストリームを生成するよう構成され、および動作時に実際に生成する。
特定の実施形態において、このような生成物豊富な出力濃度は、二酸化炭素電解槽を次の動作条件のうちの任意の1つ、またはこれらの任意の組み合わせをもたらすように動作させることで得られる。
カソードにおける少なくとも約300mA/cmの電流密度、
少なくとも約1.5、または少なくとも約2.5または少なくとも約4のカソードへのCO物質移送化学量論的フローレート、
最大で約80℃の温度、
約75~400psigの範囲における圧力、
約0.1mM~50mMの炭酸水素塩のアノードの水の組成、および
約1より大きいアノードの水のpH。
特定の実施形態において、電解槽は、本明細書で定義したように、以下の特性のうちの任意の1つ、またはこれらの任意の組み合わせを有する二酸化炭素電解槽を用いることにより、生成物豊富なモル比または濃度に有利に働くように構築されてよい。
比較的小さなナノ粒子の触媒(例えば、平均で約0.1~15nmの最大寸法を有する)、
カソード触媒材料としての金、
約5~20umのカソード触媒層の厚み、
微多孔質層(MPL)を持つカソードガス拡散層、
約1~20wt%または約1~10wt%または約1~5wt%で存在するPTFEを持つカソードGDL、
少なくとも約200umの厚みを有するカソードGDL、および
少なくとも約5umの厚みを持つアニオン交換層を有する両極性MEA。
[回復動作の必要性の軽減]
本開示は、酸化炭素電解槽への回復および/または保護を実行する方法のみでなく、回復動作を実行する可能性または頻度を低減する方法にも関する。このような方法は、回復を必要とする問題を生じる可能性のない態様で電解槽を動作することを含んでよい。
回復動作が必要とされる可能性または回復動作が実行される頻度を低減する1つのやり方は、通常動作中に固体を沈殿させる傾向を限定的に有するアノードの水を用いることである。アノードの水は、溶解度限界をはるかに下回る濃度を有する塩を用いてよい。例には、通常動作中に、約10mM以下の濃度の重曹等のナトリウム塩が含まれる。いくつかの実施形態において、アノードの水は、約15mM以下の濃度の重炭酸カリウム等のカリウム塩を用いる。いくつかの場合において、アノードの水は、他の潜在的な塩と比較して、比較的高い溶解度を持つ塩を主にまたは専ら用いる。例えば、アノードの水は、カリウム塩および比較的少ないナトリウム塩またはナトリウム塩なしを、主にまたは専ら用いてよい。アノードの水の組成の追加の例は、2020年6月4日に公開されたPCT公報2020112919に示されており、当該文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
[システムの実施形態]
図4は、本明細書に記載のもののうちの任意の1または複数等のMEAを含むセルを備えてよい酸化炭素還元反応器403の動作を制御するシステム401を示す。反応器は、スタックにして配置される複数のセルまたはMEAを含んでよい。システム401は、還元反応器403のアノードとインタフェースするアノードサブシステムと、還元反応器403のカソードとインタフェースするカソードサブシステムとを備える。システム401は、上述の方法または動作条件のいずれかと共に使用されてよい、または上述の方法または動作条件の何れかを実装し得るシステムの例である。
図示するように、カソードサブシステムは、酸化炭素フィードストリームを還元反応器403のカソードに提供するよう構成されている酸化炭素ソース409を含み、これは、動作中、カソードにおける還元反応の生成物を含む出力ストリームを生成してよい。生成物ストリームは、未反応酸化炭素および/または水素を含んでもよい。408を参照されたい。
酸化炭素ソース409は、還元反応器403への酸化炭素の体積フローレートまたは質量フローレートを制御するよう構成された酸化炭素フローコントローラ413に連結されている。1または複数の他のコンポーネントが、フロー酸化炭素ソース409から還元反応器403のカソードまでの流路上に配置されてよい。例えば、任意の加湿器404が、経路上に設けられ、酸化炭素フィードストリームを加湿するよう構成されてよい。加湿された酸化炭素は、MEAの1または複数のポリマー層を湿潤させ、それにより、このような層の乾燥を回避し得る。流路上に配置され得る別のコンポーネントは、パージガスソース417に連結されているパージガス入口である。特定の実施形態において、パージガスソース417は、還元反応器403のセルへの電流が一時停止されている期間中に、パージガスを提供するよう構成されている。いくつかの実装において、MEAカソード上にパージガスを流すことは、触媒活性および/または選択性の回復を促進する。これは、少なくとも部分的に、特定の反応中間体を触媒活性部位から洗い流すことおよび/またはカソードから水を除去することに起因し得る。パージガスの例としては、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素、アルゴン、ヘリウム、酸素、およびこれらのうちの任意の2以上の混合物が挙げられる。
動作中、カソードからの出力ストリームは、セルのカソード側における圧力を定義された範囲(例えば、システム構成に応じて、約50~800psig)内に維持するように構成されている背圧コントローラ415に接続する導管407を介して流れる。出力ストリームは、反応生成物408を分離および/または濃縮のために1または複数のコンポーネント(図示せず)に提供してよい。
特定の実施形態において、カソードサブシステムは、出口ストリームからの未反応酸化炭素を還元反応器403のカソードに戻して制御可能にリサイクルするよう構成されている。いくつかの実装において、出力ストリームは、酸化炭素をリサイクルする前に、還元生成物および/または水素を除去するように処理される。MEAの構成および動作パラメータに応じて、還元生成物は、一酸化炭素、水素、メタンおよび/またはエチレン等の炭化水素、ギ酸、酢酸等の酸素含有有機化合物、およびこれらの任意の組み合わせであってよい。特定の実施形態において、生成物ストリームから水を除去するための1または複数のコンポーネント(図示せず)がカソード出口の下流フォームに配置される。このようなコンポーネントの例としては、生成物ガスストリームから液体水を除去するように構成されている相分離器、および/または、生成物ストリームガスを冷却し、それにより、乾性ガスを、例えば必要な場合に下流プロセスに提供するように構成されている凝縮器が挙げられる。いくつかの実装において、リサイクルされる酸化炭素は、カソードの上流のソース409からの新鮮な酸化炭素と混合されてよい。
図4に示すように、アノードサブシステムは、酸化炭素還元反応器403のアノード側にアノードフィードストリームを提供するよう構成されている。特定の実施形態において、アノードサブシステムは、新鮮なアノードの水を、アノードの水貯蔵器419およびアノードの水フローコントローラ411を含む再循環ループに提供するように構成されているアノードの水ソース(図示せず)を含む。アノードの水フローコントローラ411は、還元反応器403のアノードへのまたはそこからのアノードの水のフローレートを制御するよう構成されている。図示された実施形態において、アノードの水の再循環ループは、アノードの水の組成を調節するためのコンポーネントに連結されている。これらには、水貯蔵器421および/またはアノードの水添加物ソース423が含まれ得る。水貯蔵器421は、アノードの水貯蔵器419内のものとは異なる組成を有する水を供給する(およびアノードの水の再循環ループにおいて循環させる)よう構成されている。1つの例において、水貯蔵器421内の水は、循環アノードの水中の溶質または他の成分を希釈し得る純水である。純水は、従来の脱イオン水、さらには、例えば少なくとも約15MOhm-cmであるかまたは18.0MOhm-cmを超える抵抗率を有する超純水であってよい。アノードの水添加物ソース423は、循環アノードの水に塩および/または他の成分等の溶質を供給するよう構成されている。
動作中、アノードサブシステムは、水または他の反応物を反応器403のアノードに提供してよく、反応器のアノードにおいて、水または他の反応物は少なくとも部分的に反応して酸素等の酸化生成物を生成する。生成物は、未反応アノード供給材料とともに、還元反応器の出口ストリーム中に提供される。図4には示していないが、任意の分離コンポーネントがアノード出口ストリームの経路上に設けられ、アノード生成物ストリームから酸化生成物を凝縮または分離するよう構成されてよい。
他の制御機能部がシステム401に含まれてよい。例えば、温度コントローラは、その動作中の適切な時点において、酸化炭素還元反応器403を加熱および/または冷却するよう構成されてよい。図示された実施形態において、温度コントローラ405は、アノードの水の再循環ループに提供されるアノードの水を加熱および/または冷却するよう構成されている。例えば、温度コントローラ405は、アノードの水貯蔵器419内の水および/または貯蔵器421内の水を加熱または冷却し得る加熱器および/または冷却器を含むかまたはそれに連結されてよい。いくつかの実施形態において、システム401は、アノードの水成分以外の成分を直接加熱および/または冷却するよう構成された温度コントローラを含む。セルまたはスタック内のこのような他の成分およびカソードに流れる酸化炭素の例。
酸化炭素還元反応器403への電流が一時停止されるか否かを含む、電気化学的動作のフェーズに応じて、システム401の特定のコンポーネントは、非電気的動作を制御するよう動作してよい。例えば、システム401は、カソードへの酸化炭素のフローレートおよび/または反応器403のアノードへのアノード供給材料のフローレートを調節するよう構成されてよい。この目的で制御され得るコンポーネントとしては、酸化炭素フローコントローラ413およびアノードの水コントローラ411が挙げられ得る。
また、電流が一時停止されるか否かを含む、電気化学的動作のフェーズに応じて、システム401の特定のコンポーネントは、酸化炭素フィードストリームおよび/またはアノードフィードストリームの組成を制御するよう動作してよい。例えば、水貯蔵器421および/またはアノードの水添加物ソース423は、アノードフィードストリームの組成を調節するよう制御されてよい。いくつかの場合において、添加物ソース423は、水性アノードフィードストリーム中の1または複数の塩等の1または複数の溶質の濃度を調節するよう構成されてよい。
いくつかの場合において、コントローラ405等の温度コントローラは、動作のフェーズに基づいて、システム401の1または複数のコンポーネントの温度を調節するよう構成されている。例えば、セル403の温度は、ブレークイン、通常動作中の電流一時停止、および/または保管中に、上昇または低下されてよい。
いくつかの実施形態において、酸化炭素電解還元システムは、他のシステムコンポーネントからの還元セルの除去を容易にするよう構成されている。これは、保管、メンテナンス、改修等のためにセルを除去する必要がある場合に有用であり得る。図示の実施形態において、隔離弁425aおよび425bは、それぞれ酸化炭素ソースへの並びにカソードおよび背圧コントローラ415へのセル403の流体連通を遮断するよう構成されている。さらに、隔離弁425cおよび425dは、それぞれアノードの水入口および出口へのセル403の流体連通を遮断するよう構成されている。
酸化炭素還元反応器403はまた、1または複数の電源および関連するコントローラの制御下で動作してもよい。ブロック433を参照されたい。電源およびコントローラ433は、還元反応器403内の電極に供給される電流を制御および/または印加される電圧を制御するようにプログラムまたは別様に構成されてよい。電流および/または電圧は、本明細書の他の箇所に記載の電流スケジュールおよび/または電流プロファイルを実行するよう制御されてよい。例えば、電源およびコントローラ433は、還元反応器403のアノードおよび/またはカソードに適用される電流を定期的に一時停止するよう構成されてよい。本明細書に記載の電流プロファイルはいずれも、電源およびコントローラ433内にプログラムされてよい。
特定の実施形態において、電源およびコントローラ433は、酸化炭素還元反応器403における所望の電流スケジュールおよび/またはプロファイルを実装するのに必要な動作のすべてではないが一部を実行する。システムオペレータまたは他の責任者は、還元反応器403に適用される電流のスケジュールおよび/またはプロファイルを完全に定義するように、電源およびコントローラ433と連携して行動してよい。例えば、オペレータは、電源およびコントローラ433内にプログラムされている電流一時停止のセットの他に1または複数の電流一時停止を制定してよい。
特定の実施形態において、電源およびコントローラは、システム401の他のコンポーネントと関連付けられた1または複数の他のコントローラまたは制御機構と協調して動作する。例えば、電源およびコントローラ433は、カソードへの酸化炭素の供給、アノードへのアノードの水の供給、アノードの水への純水または添加物の添加、およびこれらの機能の任意の組み合わせを制御するためのコントローラと協調して動作してよい。いくつかの実装において、1または複数のコントローラは、以下の機能の任意の組み合わせを制御するように協調して制御または動作するように構成されている:還元セル403への電流および/または電圧の印加、(例えば、背圧コントローラ415を介した)背圧の制御、(例えば、パージガスコンポーネント417を用いた)パージガスの供給、(例えば、酸化炭素フローコントローラ413を介した)酸化炭素の供給、(例えば、加湿器404を介した)カソードフィードストリーム中の酸化炭素の加湿、(例えば、アノードの水フローコントローラ411を介した)アノードへのおよび/またはそこからのアノードの水のフロー、並びに(例えば、アノードの水ソース405、純水貯蔵器421、および/またはアノードの水添加物コンポーネント423を介した)アノードの水組成。
図示の実施形態において、電圧モニタリングシステム434は、MEAセルのアノードおよびカソードにかかるまたはセルスタックの任意の2つの電極にかかる電圧を決定する、例えば、マルチセルスタック内のすべてのセルにかかる電圧を決定するために用いられる。このようにして決定された電圧は、電流一時停止中にセル電圧を制御、一時停止の継続時間を通知等するために用いることができる。特定の実施形態において、電圧モニタリングシステム434は、還元セル403を指定の電圧範囲内に留まらせるように電源433と協調して機能するよう構成されている。例えば、電源433は、電流一時停止中にセル電圧を指定範囲内に維持するようにして還元セル403の電極に電流および/または電圧を適用するよう構成されてよい。例えば、電流一時停止中、セルの開回路電圧が規定範囲から逸脱する(電圧モニタリングシステム434によって判定される)場合、電源は、セル電圧を指定範囲内に維持するように電極に電流または電圧を適用するよう構成されてよい。
保護モードをトリガしてよい条件は、電解槽への電力損失である。このような条件下では、電流がさもなければ利用不可である間に、少量の電流を電解槽に適用することが所望されてよい。これを達成すべく、いくつかの電解槽システムは、無中断の電源(UPS)を含み、無中断の電源は、電解槽に少なくとも限定量の電流を提供するのに十分なキャパシティを有するバッテリまたはバッテリパック等の電源を含んでよい。示されるように、このような電流を供給することで、停電等の予期しない中断により生じる問題または潜在的問題を軽減してよい。
いくつかの実施形態において、UPSは、酸化炭素電解槽または一群の電解槽と直接統合されている。いくつかの産業スケールの酸化炭素電解槽システムは、専用のUPSを用いてよい。産業スケールの電解槽の例としては、一日当たり少なくとも約100kgの二酸化炭素を消費するよう構成されたものが含まれる。いくつかの場合において、このような産業スケールの酸化炭素電解槽システムは、約100kWまたはそれより大きい電力がなくて動作してよい。
図4に示すもの等の電解酸化炭素還元システムは、1または複数のコントローラと、ポンプ、センサ、ディスペンサ、弁、および電源等の1または複数の制御可能なコンポーネントとを含む制御システムを使用してよい。センサの例としては、圧力センサ、温度センサ、流量センサ、導電率センサ、電圧計、電流計、電気化学機器を含む電解質組成センサ、クロマトグラフィーシステム、吸光度計測ツール等の光学センサ等が挙げられる。このようなセンサは、アノードの水、純水、塩溶液等を保持するための貯蔵器、および/または電解酸化炭素還元システムの他のコンポーネントにおいて、(例えば、フロー場における)MEAセルの入口および/または出口に連結されてよい。
1または複数のコントローラによって制御され得る様々な機能には、電流および/または電圧を酸化炭素還元セルに適用すること、このようなセル上でカソードからの出口にかかる背圧を制御すること、カソード入口にパージガスを供給すること、カソード入口に酸化炭素を供給すること、カソードフィードストリーム中の酸化炭素を加湿すること、アノードにおよび/またはアノードからアノードの水を流すこと、並びにアノードフィード組成を制御することが挙げられる。これらの機能のうちの任意の1または複数は、その機能を単独で制御するための専用コントローラを有してよい。これらの機能のうちの任意の2以上は、コントローラを共有してよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1のマスタコントローラが2または2より多いコンポーネントコントローラに命令を与える、コントローラのヒエラルキが用いられる。例えば、システムは、高水準制御命令を(i)酸化炭素還元セルへの電源、(ii)カソードフィードストリームフローコントローラ、および(iii)アノードフィードストリームフローコントローラに与えるよう構成されているマスタコントローラを備えてよい。例えば、システムの個々のコンポーネントを制御するために、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)が用いられてよい。
特定の実施形態において、制御システムは、本明細書に記載の特徴のうち任意のものを有し得る電流スケジュールに従って、MEAを備える酸化炭素還元セルに電流を適用するよう構成されている。例えば、電流スケジュールは、適用された電流に定期的な一時停止を提供し得る。いくつかの場合において、制御システムは、本明細書に記載のようなランプおよび/または段階的変化等の定義されたプロファイルを有する電流一時停止を提供する。
特定の実施形態において、制御システムは、電流スケジュールと協調して、1または複数のフィードストリーム(例えば、酸化炭素フロー等のカソードフィードストリームおよびアノードフィードストリーム)のフローレートを制御するよう構成されている。例えば、酸化炭素またはパージガスのフローは、MEAセルに適用されている電流が一時停止されるときオンに切り替えられ、オフに切り替えられ、または別様に調節され得る。
特定の実施形態において、制御システムは、本明細書に記載の回復シーケンスを実装するよう構成されてよい。このような制御システムは、電流を一時停止または低減する、回復ガスフローを流す、水または他の液体を流す、カソードを乾燥させる、通常動作を再開する、またはこれらの任意の組み合わせを実行するよう構成されてよい。コントローラは、回復シーケンスの初期化の制御し、回復シーケンスにおける任意の動作の継続時間の制御等を実行するよう構成されてよい。
コントローラは、任意の数のプロセッサおよび/またはメモリデバイスを含んでよい。コントローラは、ソフトウェアまたはファームウェア等の制御ロジックを含んでよい、および/または別のソースから提供された命令を実行してよい。酸化炭素を還元する前、途中、および後の電解セルの動作を制御するために、コントローラを電子機器と統合してよい。コントローラは、1または複数の電解酸化炭素還元システムの様々なコンポーネントまたはサブパーツを制御してよい。コントローラは、処理要件および/またはシステムのタイプに応じて、ガスの供給、温度設定(例えば、加熱および/または冷却)、圧力設定、電力設定(例えば、MEAセルの電極に供給される電圧および/または電流)、液体フローレート設定、流体供給設定、および浄水および/または塩溶液の投与等、本明細書に開示されるプロセスのいずれかを制御するようプログラムされてよい。これらの被制御プロセスは、電解酸化炭素還元システムと協調して機能する1または複数のシステムと接続またはインタフェースしてよい。
様々な実施形態において、コントローラは、命令を受け取り、命令を発行し、本明細書に記載の動作を制御する様々な集積回路、ロジック、メモリ、および/またはソフトウェアを有する電子機器を備える。集積回路は、プログラム命令を格納するファームウェアの形態のチップ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)として定義されるチップ、および/または1または複数のマイクロプロセッサ、またはプログラム命令(例えば、ソフトウェア)を実行するマイクロコントローラを含んでよい。プログラム命令は、電解酸化炭素還元システムの1または複数のコンポーネント上にプロセスを実行するための動作パラメータを定義する、様々な個別の設定(またはプログラムファイル)の形でコントローラに通信される命令であってもよい。いくつかの実施形態では、動作パラメータは、一酸化炭素、炭化水素、および/または他の有機化合物等の特定の還元生成物の生成中に1または複数の処理段階を達成するためにプロセスエンジニアによって定義されるレシピの一部であってよい。
いくつかの実装では、コントローラは、システムと統合されるか、システムに連結されるか、他の方法でシステムにネットワーク接続されるか、またはそれらの組み合わせがなされるコンピュータの一部であるか、そのコンピュータに連結されてよい。例えば、コントローラは、リモートで(例えば、「クラウド」に)格納された命令を利用してよい、および/またはリモートで実行してよい。コンピュータは、システムへのリモートアクセスを可能にすることで、電解動作の現在の進行状況を監視し、過去の電解動作の履歴を調べ、複数の電解動作からの傾向または性能測定基準を調べて、現在の処理のパラメータを変更するか、現在の処理に従うように処理段階を設定するか、新しいプロセスを開始してよい。いくつかの例では、リモートコンピュータ(例えば、サーバ)が、ローカルネットワークまたはインターネットを含み得るネットワークを介してシステムにプロセスレシピを提供することができる。リモートコンピュータは、パラメータおよび/または設定の入力またはプログラミングを可能にするユーザインタフェースを含んでよく、パラメータおよび/または設定は、次に、リモートコンピュータからシステムに通信される。いくつかの例において、コントローラは、1または複数の動作中に実行されることになる処理段階のそれぞれについてのパラメータを指定する、データの形式の命令を受信する。
コントローラは、一緒にネットワーク接続され、MEAセルへの電流の適用および本明細書に記載の他のプロセス制御等の共通の目的に向けて機能する、1または複数の別個のコントローラを含むこと等によって、分散され得る。このような目的で分散された制御システムの一例としては、酸化炭素を電解還元するためのシステム上の1または複数のプロセッサ、および、プロセスを制御するために組み合わせられる(プラットフォームレベルでまたはリモートコンピュータの一部として等)遠隔に配置される1または複数のプロセッサが挙げられる。
コントローラおよびプロセッサ、メモリ、命令、ルーチン、モデル、または他のコンポーネントを含む様々な関連の計算要素はしばしば、タスクを実行する「よう構成された」として説明または特許請求される。このような文脈においては、「よう構成された」という文言は、コンポーネントが動作中にタスク(複数可)を実行する構造(例えば、格納された命令、回路等)を含むことを示すことにより、構造を含意するために用いられる。そのため、コントローラおよび/または関連付けられたコンポーネントは、たとえ特定のコンポーネントが必ずしも現在動作中(例えば、オンでない)でない場合でも、タスクを実行するよう構成されていると言えてよい。
ある動作を実行する「よう構成された」コントローラおよび他のコンポーネントは、ハードウェアとして実装されてよく、これには、例えば、回路、当該動作を実装するために実行可能なプログラム命令等を格納するメモリが含まれる。追加的に、ある動作を実行する「よう構成された」コントローラおよび他のコンポーネントは、記載されたタスクを実行可能であるように動作させるべく、ソフトウェアおよび/またはファームウェア(例えば、FPGAまたはソフトウェアを実行する汎用プロセッサ)により操作されるハードウェアとして実装されてよい。追加的に、「よう構成された」は、記載されたタスクを実行するためのコンピュータ実行可能命令を格納する1または複数のメモリまたはメモリ要素を指してよい。このようなメモリ要素は、処理ロジックを有するコンピュータチップ上のメモリを含んでよい。
MEA設計の実施形態
[MEAの概要]
様々な実施形態において、MEAは、アノード層、カソード層、電解質、および随意で1または複数の他の層を含む。層は、固体および/またはゲルであってよい。これらの層は、イオン伝導性ポリマー等のポリマーを含んでよい。
使用中、MEAのカソードは、CO、COと化学的に反応するイオン(例えば、プロトン)、および電子という3つの入力を組み合わせることにより、COの電気化学的還元を促進する。還元反応は、CO、炭化水素、および/またはメタノール、エタノールおよび酢酸等の有機化合物を含有する酸素および水素を生成し得る。使用時、MEAのアノードは、酸素元素およびプロトンを生成するように、水の電解等の電気化学酸化反応を促進する。カソードおよびアノードは、それぞれの反応を促進するように触媒をそれぞれ含んでよい。
MEA内の層の組成および構成は、CO還元生成物の高収率を促進し得る。このために、MEAは、以下の条件:(a)カソードにおける寄生還元反応(非CO還元反応)が最小であること、(b)MEA内のアノードまたは他の箇所におけるCOx反応物の損失が少ないこと、(c)反応中のMEAの物理的完全性を維持(例えば、MEA層の層間剥離を防止)すること、(d)COx還元生成物のクロスオーバを防止すること、(e)酸化生成物(例えば、O)のクロスオーバを防止すること、(f)酸化のためのカソードにおける好適な環境を維持すること、(g)不所望のイオンを遮断しながら所望のイオンがカソードとアノードとの間を移動するための経路を提供すること、および(h)電圧損失を最低限に抑えることのうちの任意の1または複数を促進してよい。本明細書で説明するように、MEA中の塩または塩イオンの存在は、これらすべての条件のうちのいくつかを容易にすることができる。
[COx還元の考慮事項]
MEA等のポリマー系膜アセンブリは、水電解槽等の様々な電解システムにおいて、および、燃料電池等の様々なガルバニックシステムにおいて用いられてきた。ただし、COの還元は、水電解槽および燃料電池では発生しない、または発生する程度が少ない問題を提示する。
例えば、多くの用途では、CO還元のためのMEAが、約50,000時間以上程度(約5年間の連続動作)の寿命を必要とし、これは、自動車用途の燃料電池の予想寿命(例えば、5,000時間程度)よりも大幅に長い。また、様々な用途において、CO還元のためのMEAは、自動車用途の燃料電池に使用されるMEAと比較して、比較的大きな表面積を有する電極を使用している。例えば、CO還元のためのMEAは、少なくとも約500cmの表面積(空孔および他の非平面形状部を考慮しない)を有する電極を用い得る。
CO還元反応は、特定の反応物および生成物種の物質移送を容易にし、且つ、寄生反応を抑制する、動作環境で実装されてよい。燃料電池および水電解槽MEAは、多くの場合、そのような動作環境を作り出すことができない。例えば、このようなMEAは、カソードにける気体水素の発生および/またはアノードにおける気体COの生成等の不所望な寄生反応を促進し得る。
いくつかのシステムでは、CO還元反応の速度は、カソードでのガス状CO反応物の利用可能性によって制限される。対照的に、水の電解速度は反応物のアベイラビリティによって有意に制限されない。液体水はカソードおよびアノードに容易に接近可能である傾向があり、電解槽は可能な限り最高の電流密度付近で動作をすることができる。
[MEAの構成]
特定の実施形態において、MEAは、カソード層と、アノード層と、アノード層とカソード層との間のポリマー電解質膜(PEM)を有する。ポリマー電解質膜は、短絡を引き起こすであろう電子伝達を防止しながら、アノード層とカソード層との間のイオン伝達を提供する。カソード層は、還元触媒および第1のイオン伝導性ポリマーを含む。カソード層はまた、イオン伝導体および/または電子伝導体を含んでよい。アノード層は、酸化触媒および第2のイオン伝導性ポリマーを含む。アノード層はまた、イオン伝導体および/または電子伝導体を含んでよい。PEMは、第3のイオン伝導性ポリマーを含む。
特定の実施形態では、MEAが、カソード層とポリマー電解質膜との間にカソードバッファ層を有する。カソードバッファは、第4のイオン伝導性ポリマーを含む。
特定の実施形態では、MEAが、アノード層とポリマー電解質膜との間にアノードバッファ層を有する。アノードバッファは、第5のイオン伝導性ポリマーを含む。
特定のMEA設計に関連して、イオン伝導性ポリマーには、アニオン伝導体、カチオン伝導体、およびカチオン-アニオン混合伝導体という3つの利用可能なクラスがある。特定の実施形態では、第1、第2、第3、第4、および第5のイオン伝導性ポリマーのうちの少なくとも2つは、異なるクラスのイオン伝導性ポリマーに由来する。
[MEA層のためのイオン伝導性ポリマー]
「イオン伝導性ポリマー」という用語は、アニオンおよび/またはカチオンに対して約1mS/cmを超える比伝導率を有するポリマー電解質を記述するために本明細書において使用される。「アニオン伝導体」という用語は、主にアニオンを伝導し(ただし、依然としていくらか少量のカチオン伝導があるであろう)、且つ、約100ミクロンの厚さで約0.85を超えるアニオンの輸率を有する、イオン伝導性ポリマーを表わす。「カチオン伝導体」および/または「カチオン伝導性ポリマー」という用語は、主にカチオンを伝導し(例えば、依然として付随的な量のアニオン伝導が存在し得る)、且つ、約100ミクロンの厚さで約0.85を超えるカチオンの輸率を有する、イオン伝導性ポリマーを表わす。アニオンおよびカチオンの両方を伝導すると説明されているイオン伝導性ポリマー(「カチオン-アニオン伝導体」)の場合は、アニオンもカチオンも、約100ミクロンの厚さで輸率が約0.85を超えることも約0.15を下回ることもない。材料がイオン(アニオンおよび/またはカチオン)を伝導すると言うことは、その材料がイオン伝導性材料またはアイオノマーであると言うことである。各クラスのイオン伝導性ポリマーの例は、以下の表1に提示されている。
[ポリマー構造]
イオン化可能部分またはイオン性部分を含み得、且つ、本明細書に記載のMEA内のイオン伝導性ポリマーとして使用可能なポリマー構造の例を以下に示す。イオン伝導性ポリマーは、イオン伝導性ポリマーを含む複数のMEA層のいずれかにおいて適切なものとして使用されてよい。材料を通した電荷伝導は、イオン化可能部分/イオン性部分におり提供される電荷のタイプおよび量(例えば、ポリマー構造上のアニオン電荷および/またはカチオン電荷)によって制御されてよい。また、組成は、ポリマー、ホモポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー、ポリメリックブレンド、他のポリマーベースの形態、または単量体繰り返し単位の他の有用な組み合わせを含んでよい。以下に記載の通り、様々な実施形態により、イオン伝導性ポリマー層は、架橋、連結部分、およびアリーレン基のうちの1または複数を含んでよい。いくつかの実施形態において、2または2より多いイオン伝導性ポリマー(例えば、MEAの2または2より多いイオン伝導性ポリマー層における)は架橋されてよい。
非限定的な単量体単位は、以下のうちの1または複数を含み得る。
ここで、Arは、随意で置換されたアリーレンまたは芳香族である;Akは随意で置換されたアルキレン、ハロアルキレン、脂肪族、ヘテロアルキレン、またはヘテロ脂肪族;およびLは、連結部分(例えば、本明細書で記載した任意の)または‐C(R)(R)‐であってよい。さらに他の非限定的な単量体単位は、随意で置換されたアリーレン、アリーレンオキシ、アルキレンまたはこれらの組み合わせ、例えば随意で置換された(aryl)(alkyl)ene(例えば、‐Ak‐Ar‐または‐Ak‐Ar‐Ak‐または‐Ar‐Ak‐、ここでArは随意で置換されたアリーレンおよびAkは随意で置換されたアルキレン)を含んでよい。1または複数のモノマーユニットは、随意で1または複数のイオン化可能部分またはイオン性部分(例えば、本明細書で記載したように)で置換されてよい。
1または複数のモノマーユニットは組み合わされてポリマーユニットを形成し得る。非限定的なポリマーユニットは、以下のうちの任意のものを含む。
式中、Ar、Ak、L、nおよびmは本明細書で説明した任意のものであってよい。いくつかの実施形態において、各mは独立して0または1以上の整数である。他の実施形態において、Arは2または2より多いアリーレンまたは芳香族基を含み得る。
他の代替的な構成もまた本明細書の組成で包含され、例えば、分岐構成、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、ランダムコポリマーまたは統計的コポリマー、ステロブロックコポリマー、グラジエントコポリマー、グラフトコポリマー、および本明細書に記載の任意のブロックまたは領域の組み合わせである。
ポリマー構造の例は、式(I)‐(V)および(X)~(XXXIV)のうちの任意の1つによるものまたはこれらの塩を含む。いくつかの実施形態において、ポリマー構造はコポリマーであり、且つ、式(I)‐(V)のうちの任意の1つのものまたはこれらの塩から選択された第1のポリマー構造を含む;第2のポリマー構造は、随意で置換された芳香族、随意で置換されたアリーレン、式(I)‐(V)および(X)~(XXXIV)の任意の1つから選択された構造、またはこれらの塩を含む。
一実施形態において、イオン伝導性ポリマーのMWは、少なくとも10,000g/molまたは約5,000~2,500,000g/molの重量平均分子量(Mw)である。別の実施形態において、MWは、少なくとも20,000g/molまたは約2,000~2,500,000g/molの数平均分子量である。
本明細書のいずれの実施形態においても、n、n2、n3、n4、m、m1、m2またはm3の各々は独立して1以上、20以上、50以上、100以上および1~1,000,000、例えば10~1,000,000、100~1,000,000、200~1,000,000、500~1,000,000または1,000~1,000,000である。
非限定的ポリマー構造は、以下
またはこれらの塩を含み得る。式中、
、R、R、R10の各々は独立して、電子求引性部分、H、随意で置換された脂肪族、アルキル、ヘテロ脂肪族、ヘテロアルキレン、芳香族、アリール、またはアリールアルキレンであり、ここで、RまたはRのうち少なくとも一方は、電子求引性部分であり、または、RおよびRまたはRおよびR10の組み合わせを取り得、随意で置換された巡回群を形成する;
Arは、随意で置換された芳香族またはアリーレン(例えば、本明細書で記載したいずれかの)を含む、または随意で置換された芳香族またはアリーレンである;
nの各々は、独立して1以上の整数である;
環a~cの各々は、随意で置換可能である;および
環a~c、R、R、RおよびR10は随意でイオン化可能部分またはイオン性部分を含む。
さらに非限定的ポリマー構造は、以下のうちの1または複数
またはこれらの塩を含み得る。式中、
は本明細書に記載した任意のもの(例えば、式(I)~(V))であってよい。
nは、1以上である;
各L8A、LB'およびLB''は、独立して連結部分である;および
各X8A、X8A'、X8A' '、XB'およびXB''は、独立して、イオン可能部分またはイオン性部分である。
さらなる他のポリマー構造は、以下
またはこれらの塩を含む。式中、
、R、R、R、R、RおよびR10の各々は独立して電子求引性部分、H、随意で置換された脂肪族、アルキル、ヘテロ脂肪族、ヘテロアルキレン、芳香族、アリールまたはアリールアルキレンであり、ここでRまたはRのうち少なくとも一方は電子求引性部分を含んでよく、または、ここでRおよびRまたはRおよびR10の組み合わせを取り随意で置換された循環群を形成し得る;
各Akは、随意で置換された脂肪族、アルキレン、ハロアルキレン、ヘテロ脂肪族またはヘテロアルキレンである、またはこれらを含む;
各Arは、随意で置換されたアリーレンまたは芳香族である、またはこれらを含む;
、L、LおよびLの各々は独立して連結部分である;
n、n1、n2、n3およびn4、m、m1、m2およびm3の各々は独立して1以上の整数である;
qは0、1、2またはこれら以上である;
各環a~iは随意で置換されてよい;および
環a~i、R、R、RおよびR10は随意でイオン化可能部分またはイオン性部分を含んでよい。
特定の実施形態(例えば、(XIV)または(XVの式に関する)において、環aおよび/または環b上の窒素原子の各々は、随意で置換された脂肪族、アルキル、芳香族、アリール、イオン化可能部分またはイオン性部分で置換される。いくつかの実施形態において、1または複数の水素またはフッ素原子(例えば、式(XIX)または(XX)における)は置換されて、イオン化可能部分またはイオン性部分(例えば、本明細書で記述された任意の)を含んでよい。他の実施形態において、ポリマー構造中に存在する酸素原子(例えば、式(XXVIII)における)は、アルカリドーパント(例えば、K)と関連付けられてよい。
特定の例において、Ar、環a~i(例えば、環a、b、f、g、hまたはi)、L、L、L、L、L、Ak、R、R、Rおよび/またはR10の1または複数は、随意で1または複数のイオン化可能部分またはイオン性部分、および/または、1または複数の電子求引性基で置換されてよい。Ar、環(例えば環a~i)、L、Ak、R、R、RおよびR10のためのさらなる他の非限定的置換基には、本明細書に記載の1または複数、例えば、シアノ、ヒドロキシ、ニトロおよびハロ、および随意で置換された脂肪族、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アミノ、アミノアルキル、アリール、アリールアルキレン、アリロイル(aryloyl)、アリールオキシ、アリールアルコキシ、ヒドロキシアルキルおよびハロアルキルが含まれる。
いくつかの実施形態において、R、RおよびRの各々は独立してH、随意で置換された芳香族、アリール、アリールオキシ、またはアリールアルキレンである。他の実施形態において(例えば、式(I)‐(V)または(XII)において)、Rは電子求引性部分を含む。さらなる他の実施形態において、R8、および/またはR10はイオン化可能部分またはイオン性部分を含む。
一例において、ポリマーサブユニットは、イオン性部分を有しないことがあり得る。代替的に、ポリマーサブユニットは、Ar基、L基、ArおよびL基の両方に、または、L基の一部として統合され得るイオン性部分を含み得る。イオン化可能部分またはイオン性部分の非限定的例には、本明細書に記載されたカチオン性基、アニオン性基およびマルチイオン基が含まれる。
本明細書のいずれの実施形態においても、電子求引性部分は、随意で置換されたハロアルキル、シアノ(CN)、リン酸塩(例えば、-O(P=O)(ORP1)(ORP2)または-O-[P(=O)(ORP1)-O]P3-RP2)、硫酸塩(例えば、-O-S(=O)(ORS1))、スルホン酸(-SOH)、スルホニル(例えば、-SO-CF)、ジフルオロボラニル(-BF)、ボロノ(B(OH))、チオシアナト(-SCN)またはピペリジニウムを含み得、またはこれらであってよい。さらなる他の非限定的なリン酸基には、リン酸の誘導体、例えば、オルトリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、トリメタリン酸、および/または、無水リン酸、またはこれらの組み合わせを含んでよい。
さらなる他のポリマーユニットには、ポリ(ベンズイミダゾール)(PBI)、ポリフェニレン(PP、ポリイミド(PI)、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、スルホン化ポリイミド(SPI)、ポリスルホン(PSF)、スルホン化ポリスルホン(SPSF)、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、カルド基を有するPEEK(PEEK‐WC)、ポリエーテルスルホン(PES)、スルホン化ポリエーテルスルホン(SPES)、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)(SPEEK)、カルド基を有するSPEEK(SPEEK‐WC)、ポリ(P‐フェニレンオキシド)(PPO)、スルホン化ポリフェニレンオキシド(SPPO)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(エピクロルヒドリン)(PECH)、ポリ(スチレン)(PS)、スルホン化ポリ(スチレン)(SPS)、水素化ポリ(ブタジエン‐スチレン)(HPBS)、スチレンジビニルベンゼンコポリマー(SDVB)、スチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレン(SEBS)、スルホン化ビスフェノール‐A‐ポリスルホン(SPSU)、ポリ(4‐フェノキシベンゾイル‐1,4‐フェニレン)(PPBP)、スルホン化ポリ(4‐フェノキシベンゾイル‐1,4‐フェニレン)(SPPBP)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(フォスファゼン)、ポリ(アリールオキシフォスファゼン)、ポリエーテルイミドおよびこれらの組み合わせが含まれ得る。
[COx還元のための両極性MEA]
特定の実施形態において、MEAは、MEAのカソード側のアニオン伝導性ポリマーと、MEAのアノード側の界面カチオン伝導性ポリマーとを有する両極性界面を備える。いくつかの実装では、カソードが、第1の触媒およびアニオン伝導性ポリマーを含有する。特定の実施形態では、アノードが、第2の触媒およびカチオン伝導性ポリマーを含有する。いくつかの実装では、カソードとPEMとの間に位置するカソードバッファ層が、アニオン伝導性ポリマーを含有する。一部の実施形態において、アノードバッファ層は、アノードとPEMとの間に配置され、カチオン伝導性ポリマーを含む。
動作中に、両極性界面を備えたMEAは、ポリマー電解質を介してイオンを移動させ、カソード層およびアノード層における金属および/または炭素を介して電子を移動させ、層の細孔を介して液体およびガスを移動させる。
カソードおよび/またはカソードバッファ層でアニオン伝導性ポリマーを使用する実施形態では、MEAは、望ましくない生成物を生成し、且つ、セルの全体的な効率を低下させる、望ましくない反応を低減または遮断することができる。アノードおよび/またはアノードバッファ層にカチオン伝導性ポリマーを使用する実施形態では、所望の生成物の生成を減少させ、且つ、セルの全体的な効率を低下させる、望ましくない反応を低減または遮断することができる。
例えば、COのカソード還元に使用される電位のレベルでは、水素イオンが水素ガスに還元され得る。これは寄生反応であり、COを削減するために使用できる電流は、代わりに水素イオンを削減するために使用される。水素イオンは、CO還元反応器のアノードで実行される様々な酸化反応によって生成されてよく、MEAを横切って移動し、カソードに到達してよく、そこで還元されて水素ガスを生成することができる。この寄生反応が進行できる範囲は、カソードに存在する水素イオンの濃度の関数である。従って、MEAは、カソード層および/またはカソードバッファ層でアニオン伝導性材料を使用してよい。アニオン伝導性材料は、水素イオンがカソード上の触媒部位に到達することを少なくとも部分的に遮断する。その結果、水素ガス発生の寄生生成が減少し、COまたは他の生成物の生成速度とプロセスの全体的な効率とが向上する。
回避可能な別の反応は、COを生成するアノードでの炭酸イオンまたは炭酸水素イオンの反応である。水性炭酸イオンまたは炭酸水素イオンは、カソードでCOから生成され得る。そのようなイオンがアノードに到達すると、水素イオンと反応してガス状COを生成および放出し得る。その結果、COはカソードからアノードへ純移動し、そこで反応せず、酸化生成物と一緒に失われる。カソードにおいて生成された炭酸イオンおよび重炭酸イオンがアノードに到達するのを防止するために、アノードおよび/またはアノードバッファ層は、カチオン伝導性ポリマーを含んでよく、これが、重炭酸イオン等の負イオンのアノードへの移動を少なくとも部分的に阻止する。
従って、いくつかの設計では、両極性膜構造が、カソードでのpHを上げて、CO還元を促進し、プロトン交換層などのカチオン伝導性ポリマーが、相当量のCOおよびCO還元生成物(例えば、炭酸水素塩)のセルのアノード側への通過を防止する。
CO還元に使用するためのMEA500の例を図5に示す。MEA500は、イオンがカソード層520とアノード層540との間を移動するための経路を提供するイオン伝導性ポリマー層560によって分離された、カソード層520とアノード層540とを有する。特定の実施形態では、カソード層520は、アニオン伝導性ポリマーを含む、および/または、アノード層540は、カチオン伝導性ポリマーを含む。特定の実施形態では、MEAのカソード層および/またはアノード層は多孔性である。空孔は、ガスおよび/または流体移動を促進し得、反応に利用可能な触媒表面積の量を増加させ得る。
イオン伝導性層560は、2つまたは3つの副層、すなわち、ポリマー電解質膜(PEM)565、随意のカソードバッファ層525、および/または随意のアノードバッファ層545を含んでよい。イオン伝導性層の1または複数の層が多孔性であってもよい。特定の実施形態では、少なくとも1つの層が非多孔性であるため、カソードの反応物および生成物は、ガスおよび/または液体の移送によってアノードに通過することができず、その逆も同様である。特定の実施形態では、PEM層565が非多孔性である。アノードバッファ層およびカソードバッファ層の特性の例は、本明細書の他の箇所に提供されている。特定の実施形態において、イオン伝導性層は、専ら単層であるかまたは2の副層を含む。
いくつかの実施形態では、酸化炭素電解槽のアノードが、酸化触媒とアノードイオン伝導性ポリマーとのブレンドを含有する。アノードに供給される反応物とアノード触媒とに応じて、アノードで発生し得る様々な酸化反応が存在する。一構成では、酸化触媒は、Ir、Pt、Ni、Ru、Pd、Auの金属および酸化物とそれらの合金、IrRu、PtIr、Ni、NiFe、ステンレス鋼、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。酸化触媒は、炭素、ホウ素ドープダイヤモンド、およびチタンからなる群から選択される伝導性担持粒子をさらに含有することができる。
酸化触媒は、構造化メッシュの形態であってもよいし、粒子の形態であってもよい。酸化触媒が粒子の形態である場合は、粒子は、電子伝導性担持粒子によって担持され得る。酸化触媒が粒子の形態である場合は、粒子は、電子伝導性担持粒子によって担持され得る。伝導性担持粒子はナノ粒子であり得る。伝導性担持粒子は、CRRが動作中に電解槽アノードに存在する化学物質と互換性があってよく、且つ酸化的に安定しており、その結果、伝導性担持粒子は、電気化学的反応に関与しない。これは、伝導性担持粒子が、アノードでの電圧および反応物を念頭に置いて選択される場合に、特に有用である。いくつかの配置では、伝導性担持粒子がチタンであり、高電圧に非常に適している。他の構成では、伝導性担持粒子が炭素であり、低電圧で最も有用であり得る。一般に、そのような伝導性担持粒子は酸化触媒粒子より大きく、各伝導性担持粒子は多くの酸化触媒粒子を担持することができる。一構成では、酸化触媒がイリジウム酸化ルテニウムである。酸化触媒に使用できる他の材料の例には、上記のものが含まれるが、これらに限定されない。これらの金属触媒の多くは、特に反応条件下で、酸化物の形態であり得ることが理解されるべきである。
いくつかの実施形態では、MEAは、酸化触媒と第2のイオン伝導性ポリマーとを含むアノード層を有する。第2のイオン伝導性ポリマーは、可動性の正帯電イオンを移送するように構成された、共有結合した負帯電官能基を含有する1または複数のポリマーを含むことができる。第2のイオン伝導性ポリマーは、エタンスルホン酸フルオリド、テトラフルオロエチレンを伴う2-[1-[ジフルオロ-[(トリフルオロエテニル)オキシ]メチル]-1,2,2,2-テトラフルオロエトキシ]-1,1,2,2,-テトラフルオロ-、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロ-3,6-ジオキサ-4-メチル-7-オクタンスルホン酸コポリマー、他のペルフルオロスルホン酸ポリマーおよびそれらのブレンドから成る群から選択することができる。カチオン伝導性ポリマーの例には、例えば、Nafion115、Nafion117、および/またはNafion211が含まれる。
アノード内のイオン伝導性ポリマーの量を選択することにはトレードオフがあってよい。十分なイオン伝導性を提供するのに十分なアノードイオン伝導性ポリマーを含めることが重要である。しかし、反応物および生成物が、アノードを容易に移動できるように、また反応に利用可能な触媒表面積の量を最大化するために、アノードが多孔性であることも重要である。様々な配置において、アノード中のイオン伝導性ポリマーは、層の約50重量%、または約5~20重量%、10~90重量%、20~80重量%、25~70重量%、または任意の適切な範囲を構成する。アノード240が、可逆水素電極に対する約1.2Vを超える電圧等の高電圧に耐え得る場合、特に有用である。利用可能な触媒表面積の量を最大化するとともにガスおよび液体の移動を促進すべく、アノード240が多孔性である場合が、特に有用である。
金属触媒の一例では、Ir粒子またはIrOx粒子(100~200nm)およびNafionアイオノマーが、約10μmの厚さの多孔質層を形成する。金属触媒充填量は、おおよそ0.5~3g/cmである。
一部の実施形態において、塩基性反応にNiFeOxが用いられる。
[PEM]
MEAは、アノード触媒層とカソード触媒層との間に配置され、且つ、アノード触媒層およびカソード触媒層に伝導的に連結された、ポリマー電解質膜(PEM)を含んでよい。特定の実施形態において、ポリマー電解質膜は、高イオン伝導性(例えば、約1mS/cm超)を有し、および、機械的に安定である。機械的安定性は、高い引張強度、弾性率、破断点伸び、および引き裂き抵抗等、様々な方法で証明され得る。多くの市販の膜を、ポリマー電解質膜に使用することができる。例には、様々なNafion(登録商標)製剤、GORE-SELECT、FumaPEM(登録商標)(PFSA)(FuMA-Tech GmbH)、およびAquivion(登録商標)(PFSA)(Solvay)が含まれるが、これらに限定されない。
一構成では、PEMが、カチオン伝導体である少なくとも1つのイオン伝導性ポリマーを含む。第3のイオン伝導性ポリマーは、可動性の正帯電イオンを移送するように構成された、1または複数の共有結合した負帯電官能基を含むことができる。第3のイオン伝導性ポリマーは、フッ化エタンスルホニル、2-[1-[ジフルオロ-[(トリフルオロエテニル)オキシ]メチル]-1,2,2,2-テトラフルオロエトキシ]-1,1,2,2,-テトラフルオロ-、テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ-3,6-ジオキサ-4-メチル-7-オクテンスルホン酸コポリマー、他のパーフルオロスルホン酸ポリマー、およびそれらのブレンドからなる群から選択され得る。
[カソードバッファ層]
ポリマー電解質膜がカチオン伝導体(例えば、それはプロトンを伝導する)である場合、それは、CRRの動作中に高濃度のプロトンを含んでよい一方で、低濃度のプロトンが存在する場合、カソードはより良く動作してよい。高濃度のプロトンから低濃度のプロトンへの遷移領域を提供するために、ポリマー電解質膜とカソードとの間にカソードバッファ層が提供されてよい。一構成では、カソードバッファ層が、カソード内のイオン伝導性ポリマーと同じ特性のうちの多くを有するイオン伝導性ポリマーである。カソードバッファ層は、プロトン濃度が、高いプロトン濃度を有するポリマー電解質膜から低いプロトン濃度を有するカソードへ遷移するための領域を提供してよい。カソードバッファ層内で、ポリマー電解質膜からのプロトンが、カソードからのアニオンと遭遇してよく、それらは互いに中和してよい。カソードバッファ層は、ポリマー電解質膜からの有害な数のプロトンがカソードに到達してプロトン濃度を上昇させないことを確実にするのに役立ってよい。カソードのプロトン濃度が高過ぎる場合、CO還元は生じない。高プロトン濃度は、約10~0.1モルの範囲の濃度であってよく、低プロトン濃度は、約0.01モル未満の濃度であってよい。
カソードバッファ層は、単一のポリマーまたは複数のポリマーを含むことができる。カソードバッファ層が複数のポリマーを含む場合、複数のポリマーは、一緒に混合することができるか、または、別個の隣接する層に配置することができる。カソードバッファ層に使用できる材料の例としては、限定されるものではないが、FumaSep FAA-3、Tokuyamaアニオン交換膜材料、およびポリエチレンオキシド(PEO)等のポリエーテル系ポリマー、並びにそれらのブレンドが挙げられる。さらなる例は、カソード触媒層の説明において上述されている。
カソードバッファ層の厚さは、プロトン濃度が低いためにCO還元活性が高くなるのに十分であるように選択される。この十分性は、カソードバッファ層の材料によって異なる可能性がある。一般に、カソードバッファ層の厚さは、約200nmから100μmの間、300nmから75μmの間、500nmから50μmの間、または任意の適切な範囲である。
いくつかの実施形態では、カソードバッファ層は、50μm未満、例えば、1~5μm、5~15μm、または10~25μmの間等、1~25μmの間である。この範囲の厚さのカソードバッファ層を使用することにより、セルの全体的な伝導率を維持しながら、カソード内のプロトン濃度を低減することができる。いくつかの実施形態では、超薄層(100nm~1μm、およびいくつかの実施形態では、サブミクロン)を使用してよい。また、上記のように、いくつかの実施形態では、MEAがカソードバッファ層を有しない。いくつかのそのような実施形態では、カソード触媒層中のアニオン伝導性ポリマーで十分である。カソードバッファ層の厚みは、PEMのそれに対して特性評価され得る。
カソードバッファ層とPEMとの界面で形成された水とCOとは、ポリマー層が接続するMEAを剥離する可能性がある。層間剥離の問題には、不活性フィラー粒子および関連付けられる細孔を有するカソードバッファ層を使用することによって対処することができる。その有効性についての1つの可能な説明は、気体二酸化炭素が還元され得るカソードに気体二酸化炭素が戻るように逃げるための経路を空孔が作成することである。
不活性フィラー粒子として適切な材料には、TiO、シリカ、PTFE、ジルコニア、およびアルミナが含まれるが、これらに限定されない。様々な配置において、不活性フィラー粒子のサイズは、5nmから500μmの間、10nmから100μmの間、または任意の適切なサイズ範囲である。粒子は、一般に球形であってよい。
PTFE(または他のフィラー)の量が多すぎると、イオン伝導度が低くなるまでポリマー電解質が希釈される。ポリマー電解質の量が多すぎると、気孔率に役立たないまで、PTFEを希釈する。多くの実施形態では、ポリマー電解質/PTFEの質量比は、0.25~2であり、より具体的には、0.5~1である。ポリマー電解質/PTFE体積比(または、より一般的には、ポリマー電解質/不活性フィラー)は、0.25~3、0.5~2、0.75~1.5、または1.0~1.5であってよい。
他の構成では、気孔率は、層が形成されるときに特定の処理方法を使用することによって達成される。そのような処理方法の一例は、ナノサイズからマイクロサイズのチャネルが層に形成されるレーザーアブレーションである。別の例は、層に機械的に穴をあけて、層を通るチャネルを形成することである。
一構成では、カソードバッファ層は、0.01%~95%(例えば、重量、体積、質量等で、だいたいその間)の間の気孔率を有する。ただし、他の構成では、カソードバッファ層が、任意の適切な気孔率(例えば、0.01~95%、0.1~95%、0.01~75%、1~95%、1~90%)を有することができる。いくつかの実施形態では、気孔率は50%以下であり、例えば、0.1~50%、5~50%、20~50%、5~40%、10~40%、20~40%、または25%~40%である。いくつかの実施形態では、気孔率は20%以下であり、例えば、0.1~20%、1~10%、または5~10%である。
気孔率は、満たされたスペース対空のスペースを計算するために、水銀ポロシメトリー、X線回折(SAXSまたはWAXS)、およびTEM画像の画像処理等の方法で、コンポーネントの質量負荷および厚みを使用することを含めて、触媒層に対して上述したように測定されてよい。気孔率は、MEAが完全に乾燥したときに測定される。なぜなら、材料は、動作中に水にさらされると様々な程度に膨潤するからである。
カソードバッファ層を含むMEAの層の気孔率は、以下でさらに説明される。
[アノードバッファ層]
いくつかのCRR反応において、カソードにおいて炭酸水素塩が生成される。カソードおよびアノード間のどこかでの炭酸水素塩の移送をブロックして、カソードからの炭酸水素塩の移動を防止するポリマーが存在することが有用であってよい。炭酸水素塩は移動するときにいくらかのCOを取り込むため、カソードでの反応に利用できるCO2の量が減少する可能性がある。いくつかのMEA構成では、ポリマー電解質膜が、炭酸水素塩の移送をブロックするポリマーを含む。そのようなポリマーの例には、Nafion(登録商標)製剤、GORE-SELECT、FumaPEM(登録商標)(PFSA)(FuMA-Tech GmbH)、およびAquivion(登録商標)(PFSA)(Solvay)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかのMEAの構成では、ポリマー電解質膜とアノードとの間にアノードバッファ層があり、これが炭酸水素塩の移送をブロックする。ポリマー電解質膜がアニオン伝導体であるか、または炭酸水素塩の移送をブロックしない場合は、炭酸水素塩の移送を防止するためのさらなるアノードバッファ層が有用であり得る。炭酸水素塩の移送をブロックするために使用できる材料には、Nafion(登録商標)製剤、GORE-SELECT、FumaPEM(登録商標)(PFSA)(FuMA-Tech GmbH)、およびAquivion(登録商標)(PFSA)(Solvay)が含まれるが、これらに限定されない。当然ながら、CRR内に炭酸水素塩が存在しない場合、イオン交換層内に炭酸水素塩ブロッキング機能を含むことは特に望ましくない。
特定の実施形態において、アノードバッファ層は、プロトン濃度がポリマー電解質膜からアノードの間へ移行するための領域を提供する。ポリマー電解質膜中のプロトンの濃度は、その組成およびそれが伝導するイオンの両方に依存する。例えば、プロトンを伝導するナフィオンポリマー電解質膜は、高プロトン濃度を有する。水酸化物を伝導するFumaSep FAA-3ポリマー電解質膜は、低プロトン濃度を有する。例えば、アノードでの所望のプロトン濃度がポリマー電解質膜と3桁より大きく異なる場合は、アノードバッファ層は、ポリマー電解質膜のプロトン濃度からアノードの所望のプロトン濃度への移行に影響を及ぼすのに有用であり得る。アノードバッファ層は、単一のポリマーまたは複数のポリマーを含むことができる。アノードバッファ層が複数のポリマーを含む場合、複数のポリマーは、一緒に混合することができるか、または、別個の隣接する層に配置することができる。pH遷移のための領域を提供するのに有用であり得る材料には、Nafion、FumaSep FAA-3、Sustainion(登録商標)、Tokuyamaアニオン交換ポリマー、およびポリエチレンオキシド(PEO)等のポリエーテル系ポリマー、それらのブレンド、および/または他の任意の適切な材料が含まれるが、これらに限定されない。高いプロトン濃度は、約10~0.1モルの範囲であると見なされ、低濃度は約0.01モル未満であると見なされる。イオン伝導性ポリマーは、伝導するイオンのタイプに基づいて、異なるクラスに分類され得る。これについては、上記で詳しく説明された。上記の表1に記載されているイオン伝導性ポリマーには3つのクラスがある。本発明の1つの実施形態において、カソード、アノード、ポリマー電解質膜、カソードバッファ層、およびアノードバッファ層内のイオン伝導性ポリマーのうちの少なくとも1つは、その他のうちの少なくとも1つと異なるクラスのものである。
[層の気孔率]
以下の層:カソード、カソードバッファ層、アノード、およびアノードバッファ層のうちのいくつかまたはすべてが多孔性である場合が有用であり得る。いくつかの構成では、気孔率は、不活性フィラー粒子をこれらの層のポリマーと組み合わせることによって達成される。不活性フィラー粒子として適切な材料には、TiO、シリカ、PTFE、ジルコニア、およびアルミナが含まれるが、これらに限定されない。様々な配置において、不活性フィラー粒子のサイズは、5nmから500μmの間、10nmから100μmの間、または任意の適切なサイズ範囲である。他の構成では、気孔率は、層が形成されるときに特定の処理方法を使用することによって達成される。そのような処理方法の一例は、ナノサイズからマイクロサイズのチャネルが層に形成されるレーザーアブレーションである。レーザーアブレーションは、追加的または代替的に、サブサーフェスアブレーションによって層の気孔率を達成することができる。サブサーフェスアブレーションは、層内のある点にビームを集束させ、それによってその点の近くの層材料を気化させると、層内にボイドを形成することができる。このプロセスを繰り返して、層全体にボイドを形成し、それによって層に気孔率を達成することができる。ボイドの体積は、好ましくは、レーザ出力によって決定される(例えば、より高いレーザ出力は、より大きなボイド体積に対応する)が、追加的または代替的に、ビームの焦点サイズ、または他の任意の適切なレーザパラメータによって決定され得る。別の例は、層に機械的に穴をあけて、層を通るチャネルを形成することである。気孔率は、層において任意の好適な分布を有することができる(例えば、均一、層を通して増加していく気孔率勾配、ランダム気孔率勾配、層を通して減少していく気孔率勾配、周期的気孔率等)。
上記の例および他の例並びに変形例の気孔率(例えば、カソードバッファ層、アノードバッファ層、膜層、カソード層、アノード層、他の好適な層等の気孔率等)は、好ましくは均一な分布を有するが、追加的または代替的に任意の好適な分布(例えば、ランダム化された分布、層を通じてまたは層に渡って増加する孔サイズの勾配、層を通じてまたは層に渡って減少する孔サイズの勾配等)を有することができる。気孔率は、不活性フィラー粒子(例えば、ダイヤモンド粒子、ホウ素ドープダイヤモンド粒子、ポリフッ化ビニリデン/PVDF粒子、ポリテトラフルオロエチレン/PTFE粒子等)などの任意の適切なメカニズムと、ポリマー層内に実質的に非反応性の領域を形成するための他の任意の適切なメカニズムとによって形成され得る。不活性フィラー粒子は、最小で約10ナノメートル、最大で約200ナノメートル、および/または任意の他の好適な寸法または寸法分布等の、任意の好適なサイズを有することができる。
上記のように、カソードバッファ層は、好ましくは、約1~90容量パーセントの気孔率を有するが、追加的または代替的に、任意の好適な気孔率(例えば、気孔率がないことを含む)を有することができる。ただし、他の構成および例では、カソードバッファ層が、任意の好適な気孔率(例えば、0.01~95%、0.1~95%、0.01~75%、1~95%、1~90%等)を有することができる。いくつかの実施形態では、気孔率は20%以下であり、例えば、0.1~20%、1~10%、または5~10%である。
いくつかの実施形態では、カソードバッファ層は多孔性であるが、カソード層とアノード層との間の少なくとも1つの層は非多孔性である。これにより、層間剥離を依然防止しながらも、カソード層とアノード層との間のガスおよび/またはバルク液体の通過を防止することができる。例えば、非多孔質層は、アノードからカソードへの水の直接通過を防止することができる。
[他の実施形態]
簡単にするため省略したが、システムおよび/または方法の実施形態は、様々なシステムコンポーネントおよび様々な方法プロセスのあらゆる組み合わせおよび置換を含むことができ、本明細書に記載の当該方法および/またはプロセスの1または複数の例は、本明細書に記載のシステム、要素、および/またはエンティティのうちの1または複数の例により、および/または、当該例を用いて、非同期的に(例えば、シーケンシャルに)、同時に(例えば、並行して)、または任意の他の好適な順序で実行できる。
当業者が前述の詳細な説明と図面および特許請求の範囲とから認識するように、本発明の好ましい実施形態に対する修正および変更を、以下の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく加えることができる。

Claims (43)

  1. 酸化炭素還元のための電解槽を動作する方法であって、前記方法は、
    前記電解槽で通常動作を実行する段階、ここで前記通常動作は、酸化炭素を含む反応ガスを前記電解槽のカソードへと注入し、および、電流を第1の電流密度で前記電解槽へ適用して前記酸化炭素を還元し、炭素含有還元生成物を生成することを含む;
    (i)前記電解槽の前記カソードおよびアノード間に短絡を生じさせること、および(ii)前記カソードおよび前記アノードを短絡させている間に回復ガスを前記カソードに流すことを含む回復または保護プロセスを実行する段階;および
    前記電解槽で前記通常動作を再開する段階、ここで前記通常動作を再開する段階は、前記カソードへの前記回復ガスの流れを停止または修正する段階および前記短絡を除去する段階を含む、を備える方法。
  2. 前記通常動作は、前記反応ガスを前記カソードへ第1のフローレートにおいて、および第1の圧力において流すことを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記酸化炭素はCOおよび/またはCOであり、前記炭素含有還元生成物はCO、炭化水素、または有機酸素含有化合物を含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記通常動作は、前記電解槽への前記電流を定期的に一時停止および/またはパルスすることを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記電解槽で前記通常動作を実行する段階は、少なくとも約100時間の期間にわたり前記通常動作を実行する段階を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記電解槽で前記通常動作を再開する段階の後であって、再度、前記回復または保護プロセスを実行する、または前記電解槽の動作を終了する段階の前に、少なくとも約100時間にわたり前記電解槽で前記通常動作の実行を継続する段階をさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記回復ガスは、前記反応ガスとは異なる組成を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記回復または保護プロセスは、約5~300分の期間にわたり実行される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記電解槽の性能を害する可能性のあるイベントが発生している、または発生する可能性があると判定する段階、および、前記保護プロセスを実行する段階をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 酸化炭素還元のための電解槽を動作する方法であって、前記方法は、
    前記電解槽で通常動作を実行する段階、ここで前記通常動作は、酸化炭素を含む反応ガスを前記電解槽のカソードへと注入し、および、電流を第1の電流密度で前記電解槽へ適用して、前記電解槽の前記カソードおよびアノード間に動作電位を生成し、前記酸化炭素を還元し、炭素含有還元生成物を生成することを含む;
    (i)前記電解槽を、前記電解槽の前記カソードおよび前記アノード間に開回路電圧が存在する状態に移行させること、および(ii)前記電解槽が前記開回路電圧を維持する間に、回復ガスを前記カソードに流すことを含む回復または保護プロセスを実行する段階;および
    前記電解槽で前記通常動作を再開する段階、ここで前記通常動作を再開する段階は、前記カソードへの前記回復ガスの流れを停止または修正する段階および前記動作電位に戻す段階を含む、を備える方法。
  11. 前記通常動作は、前記反応ガスを前記カソードへ第1のフローレートにおいて、および第1の圧力において流すことを含む、請求項10に記載の方法。
  12. 前記通常動作は、少なくとも約100時間の期間にわたり前記通常動作を実行することを含む、請求項10に記載の方法。
  13. 前記電解槽で前記通常動作を再開する段階の後であって、再度、前記回復または保護プロセスを実行する、または前記電解槽の動作を終了する段階の前に、少なくとも約100時間にわたり前記電解槽で前記通常動作の実行を継続する段階をさらに備える、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記回復ガスは、前記反応ガスとは異なる組成を有する、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 酸化炭素還元のための電解槽を動作する方法であって、前記方法は、
    前記電解槽で通常動作を実行する段階、ここで前記通常動作は、酸化炭素を含む反応ガスを前記電解槽のカソードへと注入し、および、電流を第1の電流密度で前記電解槽へ適用して前記電解槽の前記カソードおよびアノード間に動作電位を生成し、前記酸化炭素を還元し、炭素含有還元生成物を生成することを含む;
    (i)逆電流を前記電解槽に適用すること、および(ii)前記逆電流を前記電解槽に適用している間に回復ガスを前記カソードに流すことを含む回復または保護プロセスを実行する段階;および
    前記電解槽で前記通常動作を再開する段階、ここで前記通常動作を再開する段階は、前記カソードへの前記回復ガスの流れを停止または修正する段階、および前記逆電流の前記電解槽への適用を中止する段階を含む、を備える方法。
  16. 前記逆電流を適用することは、アノード電流を最大で約‐50mA/cm(カソードの平坦な表面積)の大きさで適用することを含む、請求項15に記載の方法。
  17. 前記通常動作は、前記反応ガスを前記カソードへ第1のフローレートにおいて、および第1の圧力において流すことを含む、請求項15または16に記載の方法。
  18. 前記酸化炭素は、COおよび/またはCOであり、前記炭素含有還元生成物は、CO、炭化水素、または有機酸素含有化合物を含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 前記通常動作は、前記電解槽への前記電流を定期的に一時停止および/またはパルスすることを含む、請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。
  20. 前記電解槽で前記通常動作を実行する段階は、少なくとも約100時間の期間にわたり前記通常動作を実行する段階を含む、請求項15から19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 前記電解槽で前記通常動作を再開する段階の後であって、再度、前記回復または保護プロセスを実行する、または前記電解槽の動作を終了する段階の前に、少なくとも約100時間にわたり前記電解槽で前記通常動作の実行を継続する段階をさらに備える、請求項15から20のいずれか一項に記載の方法。
  22. 前記回復ガスは、前記反応ガスとは異なる組成を有する、請求項15から21のいずれか一項に記載の方法。
  23. 前記電解槽の性能を害する可能性のあるイベントが発生している、または発生する可能性があると判定する段階、および、前記保護プロセスを実行する段階をさらに備える、請求項15から22のいずれか一項に記載の方法。
  24. 酸化炭素還元電解槽であって、
    (a)(i)酸化炭素の還元を促進する酸化炭素還元触媒を含むカソード、(ii)酸化を促進する触媒を含むアノード、および(iii)前記カソードおよび前記アノード間に配置されたポリマー電解質膜(PEM)層を含む少なくとも1つの膜電極アセンブリ(MEA);
    (b)酸化炭素還元電解槽に適用される電流を制御するよう構成された電源;および
    (c)1または複数のコントローラを備え、前記1または複数のコントローラは、前記酸化炭素還元電解槽に、
    前記MEAで通常動作を実行すること、ここで前記通常動作は、酸化炭素を含む反応ガスを前記MEAのカソードへと注入し、および、電流を第1の電流密度で前記MEAへ適用することを含む、
    (i)前記酸化炭素還元電解槽の前記カソードおよび前記アノード間に短絡を生じさせること、および(ii)前記カソードおよび前記アノードを短絡させている間に、回復ガスを前記カソードへ流すことを含む回復または保護プロセスを実行すること、および
    前記カソードへの前記回復ガスの流れを停止するまたは修正することにより、および前記短絡を除去することにより、前記MEAでの前記通常動作を再開することを行わせるよう構成されている、酸化炭素還元電解槽。
  25. 前記1または複数のコントローラは、前記酸化炭素還元電解槽に、前記通常動作中に、前記反応ガスを前記カソードへ、第1のフローレートにおいて、および、第1の圧力において流すことを行わせるよう構成されている、請求項24に記載の酸化炭素還元電解槽。
  26. 前記1または複数のコントローラは、前記酸化炭素還元電解槽に、前記通常動作中に、前記MEAへの前記電流を定期的に一時停止および/またはパルスすることを行わせるよう構成されている、請求項24または25に記載の酸化炭素還元電解槽。
  27. 前記1または複数のコントローラは、前記酸化炭素還元電解槽に、少なくとも約100時間の期間にわたり前記通常動作を実行させるよう構成されている、請求項24から26のいずれか一項に記載の酸化炭素還元電解槽。
  28. 前記1または複数のコントローラはさらに、前記酸化炭素還元電解槽に、前記MEAで前記通常動作を再開する後であり、且つ、再度、前記回復または保護プロセスを実行する、または、前記MEAの動作を終了する前に、少なくとも約100時間にわたり前記MEAで前記通常動作の実行を継続させるよう構成されている、請求項24から27のいずれか一項に記載の酸化炭素還元電解槽。
  29. 前記回復ガスは、前記反応ガスとは異なる組成を有する、請求項24から28のいずれか一項に記載の酸化炭素還元電解槽。
  30. 前記1または複数のコントローラは、前記酸化炭素還元電解槽に、約5~300分の期間にわたり前記回復または保護プロセスを実行させるよう構成されている、請求項24から29のいずれか一項に記載の酸化炭素還元電解槽。
  31. 前記1または複数のコントローラは、前記酸化炭素還元電解槽の性能に害を及ぼす可能性のあるイベントが発生しているまたは発生する可能性があると判定する、および、前記保護プロセスを実行するよう構成されている、請求項24から30のいずれか一項に記載の酸化炭素還元電解槽。
  32. 酸化炭素還元電解槽であって、
    (a)(i)酸化炭素の還元を促進する酸化炭素還元触媒を含むカソード、(ii)酸化を促進する触媒を含むアノード、および(iii)前記カソードおよび前記アノード間に配置されたポリマー電解質膜(PEM)層を含む少なくとも1つの膜電極アセンブリ(MEA);
    (b)酸化炭素還元電解槽に適用される電流を制御するよう構成された電源;および
    (c)1または複数のコントローラを備え、前記1または複数のコントローラは、前記酸化炭素還元電解槽に、
    前記MEAで通常動作を実行すること、ここで前記通常動作は、酸化炭素を含む反応ガスを前記MEAのカソードへと注入し、および、電流を第1の電流密度で前記MEAへ適用することを含む、
    (i)前記酸化炭素還元電解槽を、前記酸化炭素還元電解槽の前記カソードおよび前記アノード間に開回路電圧が存在する状態に移行させること、および(ii)前記酸化炭素還元電解槽が前記開回路電圧を維持する間に、回復ガスを前記カソードへ流すことを含む回復または保護プロセスを実行すること;および
    前記カソードへの前記回復ガスの流れを停止するまたは修正することにより、および動作電位に戻すことにより、前記MEAでの前記通常動作を再開することを行わせるよう構成されている、酸化炭素還元電解槽。
  33. 前記1または複数のコントローラは、前記酸化炭素還元電解槽に、前記通常動作中に、前記反応ガスを前記カソードへ、第1のフローレートにおいて、および、第1の圧力において流すことを行わせるよう構成されている、請求項32に記載の酸化炭素還元電解槽。
  34. 前記1または複数のコントローラはさらに、前記酸化炭素還元電解槽に、前記MEAで前記通常動作を再開する後であり、且つ、再度、前記回復または保護プロセスを実行する、または、前記MEAの動作を終了する前に、少なくとも約100時間にわたり前記MEAで前記通常動作の実行を継続させるよう構成されている、請求項32または33に記載の酸化炭素還元電解槽。
  35. 前記回復ガスは、前記反応ガスとは異なる組成を有する、請求項32から34のいずれか一項に記載の酸化炭素還元電解槽。
  36. 酸化炭素還元電解槽であって、
    (a)(i)酸化炭素の還元を促進する酸化炭素還元触媒を含むカソード、(ii)酸化を促進する触媒を含むアノード、および(iii)前記カソードおよび前記アノード間に配置されたポリマー電解質膜(PEM)層を含む少なくとも1つの膜電極アセンブリ(MEA);
    (b)酸化炭素還元電解槽に適用される電流を制御するよう構成された電源;および
    (c)1または複数のコントローラを備え、前記1または複数のコントローラは、前記酸化炭素還元電解槽に、
    前記MEAで通常動作を実行すること、ここで前記通常動作は、酸化炭素を含む反応ガスを前記MEAの前記カソードへと注入し、および、電流を第1の電流密度で前記MEAへ適用することを含む、
    (i)逆電流を前記酸化炭素還元電解槽に適用すること、および(ii)前記逆電流を前記酸化炭素還元電解槽に適用している間に、回復ガスを前記カソードへ流すことを含む回復または保護プロセスを実行すること;および
    前記カソードへの前記回復ガスの流れを停止するまたは修正することにより、および前記酸化炭素還元電解槽への前記逆電流の適用を中止することにより、前記MEAでの前記通常動作を再開することを実行させるよう構成されている、酸化炭素還元電解槽。
  37. 前記1または複数のコントローラは、前記酸化炭素還元電解槽に、前記通常動作中に、前記反応ガスを前記カソードへ、第1のフローレートにおいて、および、第1の圧力において流すことを行わせるよう構成されている、請求項36に記載の酸化炭素還元電解槽。
  38. 前記1または複数のコントローラは、前記酸化炭素還元電解槽に、前記通常動作中に、前記MEAへの前記電流を定期的に一時停止および/またはパルスすることを行わせるよう構成されている、請求項36または37に記載の酸化炭素還元電解槽。
  39. 前記1または複数のコントローラは、前記酸化炭素還元電解槽に、少なくとも約100時間の期間にわたり前記通常動作を実行させるよう構成されている、請求項36から38のいずれか一項に記載の酸化炭素還元電解槽。
  40. 前記1または複数のコントローラはさらに、前記酸化炭素還元電解槽に、前記MEAで前記通常動作を再開する後であり、且つ、再度、前記回復または保護プロセスを実行する、または前記MEAの動作を終了する前に、少なくとも約100時間にわたり前記MEAで前記通常動作の実行を継続させるよう構成されている、請求項36から38のいずれか一項に記載の酸化炭素還元電解槽。
  41. 前記回復ガスは、前記反応ガスとは異なる組成を有する、請求項36から38のいずれか一項に記載の酸化炭素還元電解槽。
  42. 前記1または複数のコントローラは、前記酸化炭素還元電解槽に、約5~300分の期間にわたり前記回復または保護プロセスを実行させるよう構成されている、請求項36から38のいずれか一項に記載の酸化炭素還元電解槽。
  43. 前記1または複数のコントローラは、前記酸化炭素還元電解槽の性能に害を及ぼす可能性のあるイベントが発生しているまたは発生する可能性があると判定する、および、前記保護プロセスを実行するよう構成されている、請求項36から38のいずれか一項に記載の酸化炭素還元電解槽。
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