JP2024503086A - メソフェーズピッチの製造プロセス - Google Patents

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    • D01F9/155Carbon filaments; Apparatus specially adapted for the manufacture thereof by decomposition of organic filaments from pitch or distillation residues from petroleum pitch

Abstract

メソフェーズピッチの製造プロセスについて記述する。プロセスは、一般的にT5≧400°F(204℃)及びT95≦1,400°F(760℃)を有する原料を準備するステップと、この原料を約420℃~約520℃の範囲の温度で加熱して、等方性ピッチを含む熱処理生成物を生成するステップとを含む。一般的に、加熱は、関係[X*Y]≧20,000秒(Xは、加熱の当量反応時間であり、Yは、ASTM D1159に準拠して測定される原料の臭素数である)を満たすのに十分な条件下で行なわれる。プロセスは、一般的に、等方性ピッチを、少なくとも約10SUの溶解性ブレンディング数(SBN)を有する溶媒と、この溶媒を含む溶媒留分及びメソフェーズピッチを含む不溶性留分を生成するのに十分な条件下で接触させるステップと、メソフェーズピッチを回収するステップとをさらに含む。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、参照することによりその開示内容を本明細書に援用する2021年1月15日に出願された米国仮出願第63/138,051号の利益及び該出願に対する優先権を主張する。
分野
本開示は、通常は炭素繊維の製造に用いるためのメソフェーズピッチの製造に関する。
背景
等方性ピッチ及びメソフェーズピッチは、石炭又は石油原料の加工中又は小芳香族種の酸触媒縮合等の他の方法によって生成される残渣から形成され得る炭素含有原料である。一部のグレードの炭素繊維のためには、等方性ピッチを初期原料として使用することができる。しかしながら、等方性ピッチから製造される炭素繊維は、一般的にほとんど分子配向を示さず、相対的に不十分な機械特性を示す。等方性ピッチから形成される炭素繊維とは対照的に、メソフェーズピッチから製造される炭素繊維は非常に好ましい分子配向及び相対的に優れた機械特性を示す。従って、炭素繊維の製造に適したメソフェーズピッチを製造する能力を改善できるシステム及び/又は方法を明らかにすることが有益であろう。
米国特許第4,208,267号は、メソフェーズピッチの形成方法を記述する。等方性ピッチサンプルは溶媒抽出される。抽出物は次に230℃~約400℃の範囲の高温にさらされてメソフェーズピッチを形成する。
米国特許第5,032,250号は、メソフェーズピッチの単離プロセスを記述する。メソゲンを含有する等方性ピッチが溶媒と混ぜ合わされ、濃密相又は超臨界条件にさらされ、メソゲンが相分離される。
米国特許第5,259,947号は、(1)炭素質芳香族等方性ピッチを溶媒と混ぜ合わせるステップと、(2)十分な撹拌及び十分な加熱を加えて、前記混合物中の不溶性物質に液状溶媒和メソフェーズ小滴を形成させるステップと、(3)不溶性物質を固体又は流体溶媒和メソフェーズとして回収するステップとを含む、溶媒和メソフェーズの形成方法を記述する。
興味ある可能性がある他の参考文献としては、米国特許第9,222,027号、米国特許公開第2019/0382665号、及び米国特許公開第2020/0181497号が挙げられる。
本開示のプロセスの非限定例の略図である。 例2を実施するために用いた等方性ピッチ(ピッチA)の光学偏光顕微鏡写真である。 例3を実施するために用いた等方性ピッチ(ピッチB)の光学偏光顕微鏡写真である。 例2で回収された固体生成物の光学偏光顕微鏡写真である。 例3で回収された固体生成物の光学偏光顕微鏡写真である。
概要
本開示によれば、今や原料の臭素数との関連で十分に苛酷な条件下で重質原料を熱処理すると、その後溶媒抽出を介してメソフェーズ凝集体になり得るメソフェーズピッチ前駆体分子の形成増加を有利に可能にすることが分かった。
従って、一態様では、本開示はメソフェーズピッチの製造プロセスであって、T5≧400°F(204℃)及びT95≦1,400°F(760℃)を有する原料を準備するステップと、この原料を約420℃~約520℃の範囲の温度で加熱して、等方性ピッチを含む熱処理生成物を生成するステップであって、この加熱が、関係[X*Y]≧20,000秒(Xは、加熱の当量反応時間であり、Yは、ASTM D1159に準拠して測定される原料の臭素数である)を満たすのに十分な条件下で行なわれるステップと、等方性ピッチを、少なくとも約10SUの溶解性ブレンディング数(Solubility Blending number)(SBN)を有する溶媒と、この溶媒を含む溶媒留分及びメソフェーズピッチを含む不溶性留分を生成するのに十分な条件下で接触させるステップと、メソフェーズピッチを回収するステップとを含むプロセスに関する。
さらなる態様では、本開示は、前述のプロセスによって製造されるメソフェーズピッチに関する。
さらなる態様では、本開示は、前述のメソフェーズピッチから製造される炭素繊維に関する。
さらに別の態様では、本開示は、メソフェーズピッチの製造プロセスであって、主カラム残留物(main column bottoms)(MCB)、水素加工MCB、スチームクラッカータール、水素処理スチームクラッカータール、減圧残油(vacuum resid)、脱アスファルト残渣又はロック、及びこれらの混合物又は組み合わせから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを含む原料を準備するステップと、この原料を約420℃~約520℃の範囲の温度で加熱して、等方性ピッチを含む熱処理生成物を生成するステップであって、この加熱が、関係[X*Y]≧20,000秒(Xは、加熱の当量反応時間であり、Yは、ASTM D1159に準拠して測定される原料の臭素数である)を満たすのに十分な条件下で行なわれるステップと、等方性ピッチを、単環芳香族化合物、二環芳香族化合物、パラフィン、ミッドカット(midcut)溶媒、及びこれらの混合物又は組み合わせから成る群より選択される溶媒と、この溶媒を含む溶媒留分及びメソフェーズピッチを含む不溶性留分を生成するのに十分な条件下で接触させるステップと、メソフェーズピッチを回収するステップとを含むプロセスに関する。
好ましい実施形態の詳細な説明
本明細書に記載の種々の実施形態は、T5≧400°F(204℃)及びT95≦1,400°F(760℃)を有する重質原料を十分に苛酷な条件で熱処理することによって形成される等方性ピッチの溶媒抽出を介したメソフェーズピッチの製造プロセスを提供する。理論に束縛されることを望むものではないが、最小10溶解力単位(solvency unit)(「SU」)の溶解性ブレンディング数(SBN)を有する脱アスファルト溶媒の利用すると、メソフェーズ凝集体の発達を妨害することなく、有利に等方性ピッチ中の低水素含量の大型芳香族分子の溶解を可能にすると考えられる。一般的に、重質原料の熱処理は、約420℃~約520℃の範囲の温度及び5分~8時間、より好ましくは約5分~約1時間、最も好ましくは5分~30分、例えば約10分~約30分の滞留時間で行なわれる。理論に束縛されることを望むものではないが、その臭素数によって測定される重質原料の反応性に対して十分に高度な苛酷度で重質原料の熱処理を行なうと、有利に、その後溶媒抽出を介してメソフェーズ凝集体になり得るメソフェーズピッチ前駆体分子の形成増加をもたらし、それによって不溶性留分から回収される固体生成物中のメソフェーズピッチ収量を増やすと考えられる。
詳細な説明及び本願の特許請求の範囲内の全ての数値は、「約(about又はapproximately)」で修飾された指示値であり、当業者が予測するであろう実験誤差及び変動を考慮する。別段の指示がない限り、室温は約23℃である。
本明細書で使用する場合、「wt%」は質量百分率を意味し、「vol%」は体積百分率を意味し、「mol%」はモル百分率を意味し、「ppm」は100万分の1を意味し、「ppm wt」及び「wppm」を互換的に用いて、質量ベースで100万分の1を意味する。本明細書で使用する全ての「ppm」は、別段の定めがない限り、質量ppmである。本明細書の全ての濃度は、問題になっている組成物の総量に基づいて表される。本明細書に記載の全ての範囲は、別段の定めがないか又は反対に指示されない限り、2つの具体的実施形態として両端点を含むべきである。
定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的で、下記用語を定義する。
本明細書で使用する場合、用語「アスファルテン」は、原油から得ることができ、かつ約1,200°F(650℃)の初期沸点を有する物質を指し、ヘキサンやヘプタン等の直鎖アルカン、すなわち、パラフィン溶媒に不溶性である。
本明細書で使用する場合、用語「当量反応時間(ERT)」は、468℃で操作する反応器内で54kcal/モルの活性化エネルギーを有する反応について滞留時間の秒数として表される操作の苛酷度を指す。操作のERTは、以下のように計算される。
Figure 2024503086000001
式中、Wは、秒での操作の滞留時間であり;eは2.71828であり;Eaは225,936J/モルであり;Rは8.3145J・モル-1・K-1であり;Trxnは、ケルビンで表される操作温度である。ごく一般的な言い方をすると、温度が12~13℃上昇する毎に反応速度は2倍になる。従って、468℃で60秒の滞留時間は60ERTに等しく、温度を501℃に上げると、苛酷度として操作を5倍、すなわち300ERTにすることになる。別の方法で表現すると、468℃で300秒は、501℃で60秒に相当し、どちらのセットの条件下でも同一生成物の混合物及び分布が得られるはずである。
本明細書で使用する場合、用語「ピッチ」は、石油、コールタール、又は有機物質の蒸留から得られる粘弾性の炭素質残渣を指す。本明細書で別段の定めがない限り、用語「ピッチ」は、石油ピッチ(すなわち、石油の蒸留から得られるピッチ)を指す。
本明細書で使用する場合、用語「等方性ピッチ」は、光学的に規則正しい液晶状態に整列されない分子を含むピッチを指す。
本明細書で使用する場合、用語「主カラム残留物(MCB)」は、流体接触分解プロセスからの底部留分を指す。
本明細書で使用する場合、用語「メソゲン」は、メソフェーズピッチ形成物質又はメソフェーズピッチ前駆体を指す。
本明細書で使用する場合、用語「メソフェーズピッチ」は、構造的に規則正しい光学的に等方性の液晶であるピッチを指す。メソフェーズ構造については、光複屈折、光散乱、又は他の散乱技術等の種々の技術によって記述及び特徴づけることができる。
本明細書で使用する場合、「ミッドカット溶媒」は、スチームクラッカータールのアップグレーディング中に生じる生成物の再循環部分を指し、該再循環部分は約350°F(177℃)~約850°F(454℃)の大気圧沸点範囲を有する。
試験方法
溶解性ブレンディング数(SBN)及び不溶性数(IN)
溶解性ブレンディング数(SBN)及び不溶性数(IN)に相当するSU値は、本明細書に記載の脱アスファルト溶媒の溶解特性を特徴づけるために使用できる値である。
本明細書に記載の脱アスファルト溶媒について不溶性数及び溶解性ブレンディング数を決定する際の第1のステップは、脱アスファルト溶媒がn-ヘプタン不溶性アスファルテンを含有するかどうかを確認することである。これは、1体積の脱アスファルト溶媒を5体積のn-ヘプタンとブレンドし、アスファルテンが不溶性であるかどうかを判定することによって達成される。いずれの従来法を利用してもよい。1つの可能性は、スライドガラスとガラスカバースリップとの間の試験用液体混合物と脱アスファルト溶媒のブレンドの液滴を光学顕微鏡で50~600倍の拡大率にて観察することである。アスファルテンが溶液中にある場合、たとえあったとしてもごくわずかな暗色粒子が観察されるであろう。アスファルテンが不溶性である場合、通常は0.5~10ミクロンの大きさの多くの暗色、通常は茶色っぽい粒子が観察されるだろう。別の可能な方法は、試験用液体混合物と脱アスファルト溶媒のブレンドの液滴を1枚の濾紙の上に置き、乾燥させることである。アスファルテンが不溶性である場合、溶媒によってできる黄褐色スポットの中心の回りに暗色の輪又は環が見られるだろう。アスファルテンが可溶性である場合、溶媒によってできるスポットの色は、相対的に不均一であろう。脱アスファルト溶媒がn-ヘプタン不溶性アスファルテンを含有することが分かれば、不溶性数及び溶解性ブレンディング数を決定するために次の3段落に記載する手順を続ける。脱アスファルト溶媒がn-ヘプタン不溶性アスファルテンを含有しないことが分かれば、不溶性数に値ゼロを割り当て、表示「アスファルテンのない脱アスファルト溶媒」のセクションに記載の手順によって溶解性ブレンディング数を決定する。
アスファルテン含有脱アスファルト溶媒
アスファルテンを含有する脱アスファルト溶媒、例えば残油を含む重油に関するIN及びSBNの決定は、脱アスファルト溶媒と試験用液体混合物の最少でも2つの体積比で試験用液体混合物中の脱アスファルト溶媒の溶解度を調べる必要がある。二液体を種々の比率で混合することによって、試験用液体混合物を調製する。一方の液体は非極性であり(試験溶媒A)、脱アスファルト溶媒中のアスファルテンにとって溶媒である。他方の液体は非極性であり(試験溶媒B)、脱アスファルト溶媒中のアスファルテンにとって非溶媒である。試験溶媒Aは典型的にトルエンであり、試験溶媒Bは典型的にn-ヘプタンである。
油と試験用液体混合物の便利な体積比は、第1の試験について、例えば、1mlの油と5mlの試験用液体混合物である。次にn-ヘプタンとトルエンを種々の既知比率でブレンドすることによって、試験用液体混合物の種々の混合物を調製する。これらのそれぞれを脱アスファルト溶媒と、脱アスファルト溶媒と試験用液体混合物の選択した体積比で混合する。次にこれらのそれぞれについてアスファルテンが可溶性であるか又は不溶性であるかを判定する。いずれの便利な方法を利用してもよい。例えば、試験用液体混合物と脱アスファルト溶媒のブレンドの液滴をスライドガラスとガラスカバースリップとの間で透過光を用いて光学顕微鏡で50~600倍の拡大率で観察することができる。アスファルテンが溶液中にある場合、たとえあったとしてもごくわずかな暗色粒子が観察されるだろう。アスファルテンが不溶性である場合、通常は0.5~10ミクロンの大きさの多くの暗色、通常は茶色がかった粒子が観察されるだろう。脱アスファルト溶媒と全ての試験用液体混合物のブレンディングの結果は、試験用液体混合物中のトルエンパーセントの上昇に準じて規則正しい。所望の値は、アスファルテンを溶解する最小トルエンパーセントとアスファルテンを沈殿させる最大トルエンパーセントとの間であろう。これらの限界間のトルエンパーセントでさらに試験用液体混合物を調製し、油と試験用液体混合物の選択した体積比で油とブレンドし、アスファルテンが可溶性であるか又は不溶性であるかを判定する。所望の値は、アスファルテを溶解する最小トルエンパーセントとアスファルテンを沈殿させる最大トルエンパーセントとの間であろう。所望の精度内で所望の値が測定されるまでこのプロセスを続ける。最終的に、所望の値は、アスファルテンを溶解する最小トルエンパーセントとアスファルテンを沈殿させる最大トルエンパーセントの平均であると見なされる。これは、選択した油と試験用液体混合物の体積比R1における第1のデータ点T1である。この試験は、トルエン当量試験(toluene equivalence test)と呼ばれる。
第2のデータ点は、第1のデータ点と同じプロセスによって、脱アスファルト溶媒と試験用液体混合物の異なる体積比を選択するだけで決定することができる。これとは別に、第1のデータ点について決定されたより低いトルエンパーセントを選択することができ、かつアスファルテンがちょうど沈殿し始めるまで既知体積の油にその試験用液体混合物を添加することができる。当該点では試験用液体混合物中の選択したトルエンパーセントT2における油と試験用液体混合物の体積比R2が第2のデータ点となる。第2のデータ点が第1のデータ点からさらに離れるにつれて最終的な数値の精度が増すので、第2のデータ点を決めるために好ましい試験用液体混合物は、0%のトルエン又は100%のn-ヘプタンである。この試験は、ヘプタン希釈試験と呼ばれる。
不溶性数INは、以下のように定義される。
Figure 2024503086000002
可溶性ブレンディング数INは、以下のように定義される
Figure 2024503086000003
アスファルテンのない脱アスファルト溶媒
脱アスファルト溶媒がアスファルテンを含有しない場合、不溶性数はゼロである。しかしながら、アスファルテンを含有しない脱アスファルト溶媒についての溶解性ブレンディング数の決定は、今述べた手順を利用して、不溶性数及び溶解性ブレンディング数が既に決定された、アスファルテンを含有する試験油を使用する必要がある。まず第1に、1体積の試験油を5体積の脱アスファルト溶媒とブレンドする。不溶性アスファルテンは、上記顕微鏡又はスポット技術によって検出され得る。油が非常の粘性(100センチポアズ超)である場合、ブレンディング中にそれらを100℃まで加熱してから室温に冷ました後に不溶性アスファルテンを探してよい。また、スポット試験は、粘性油のブレンドに関してオーブン内で50℃~70℃で行なってよい。不溶性アスファルテンが検出されたら、脱アスファルト溶媒は、試験油にとって非溶媒であり、次の段落の手順に従わなければならない。しかしながら、不溶性アスファルテンが検出されなければ、脱アスファルト溶媒は試験油にとって溶媒であり、次の段落後の段落の手順に従うべきである。
1体積の試験油を5体積の脱アスファルト溶媒とブレンドするときに不溶性アスファルテンが検出された場合、不溶性アスファルテンが検出されるまで5mlの試験油に小体積増分の脱アスファルト溶媒を添加する。非溶媒油の体積VNSOは、不溶性アスファルテンが検出される直前の体積増分に対して添加された脱アスファルト溶媒の総体積と、不溶性アスファルテンが最初に検出されたときに添加された総体積の平均に等しい。体積増分の大きさは、所望の精度に必要とされる体積増分まで減らしてよい。これは、非溶媒油希釈試験と呼ばれる。SBNTOが試験油の溶解性ブレンディング数であり、かつINTOが試験油の不溶性数である場合、非溶媒油の溶解性ブレンディング数SBNは、下記式で与えられる。
Figure 2024503086000004
1体積の試験油を5体積の脱アスファルト溶媒とブレンドするときに不溶性アスファルテンが検出されなかった場合、脱アスファルト溶媒は試験油にとって溶媒油である。試験油について不溶性数及び溶解性ブレンディング数を測定するために用いたのと同一の油と試験用液体混合物の体積比RTOを選択する。しかしながら、今度はトルエンとn-ヘプタンの代わりに、様々な既知比率の石油とn-ヘプタンをブレンドすることによって、試験用液体の種々の混合物を調製する。これらの各混合物を、RTOに等しい油と試験用液体混合物の体積比で試験油と混合する。次にこれらの各混合物について、顕微鏡又は前述のスポット試験法によってのように、アスファルテンが可溶性であるか又は不溶性であるかを判定する。油と全ての試験用液体混合物のブレンディングの結果は、試験用液体混合物中の脱アスファルト溶媒パーセントの増加に準じて規則正しい。望ましい値は、アスファルテンを溶解する最小石油パーセントと、アスファルテンを沈殿させる最大脱アスファルト溶媒パーセントの間であろう。これらの限界値間の脱アスファルト溶媒パーセントでさらに試験用液体混合物を調製、選択した試験油と試験用液体混合物の体積比(RTO)で試験油とブレンドし、アスファルテンが可溶性であるか又は不溶性であるかを判定する。望ましい値は、アスファルテンを溶解する最小脱アスファルト溶媒パーセントと、アスファルテンを沈殿させる最大脱アスファルト溶媒パーセントの間であろう。所望精度内で望ましい値が決められるまでこのプロセスを続ける。最終的に、望ましい値は、アスファルテンを溶解する最小脱アスファルト溶媒パーセントと、アスファルテンを沈殿させる最大脱アスファルト溶媒パーセントの平均であると見なされる。これは、選択した試験油と試験用液体混合物の体積比RTOにおけるデータ点TSOである。この試験は、溶媒油当量試験(solvent oil equivalence test)と呼ばれる。TTOが、様々な比のトルエンとn-ヘプタンで構成された試験用液体を用いて、試験油に関して試験油と試験用液体混合物の体積比RTOで既に測定したデータ点である場合、脱アスファルト溶媒の溶解性ブレンディング数SBNは、下記式で与えられる。
Figure 2024503086000005
光学顕微鏡法によるメソフェーズピッチ含量
本明細書に特別な定めのない限り、サンプルのメソフェーズピッチ含量は、光学顕微鏡法により下記手順に従って決定する。光学顕微鏡を用いてサンプルのデジタル画像を作製する。次にその高い屈折率に起因するメソフェーズピッチに対応する軽強度領域で、色強度によってデジタル画像の総画素数のヒストグラムを作成する。メソフェーズピッチに相当する特定閾値未満の強度を有するエリアで、閾値処理によって画像をメソフェーズピッチエリアと非メソフェーズピッチエリアに分割する。次に画像の非メソフェーズピッチ面積を減算した後、画像のメソフェーズピッチ面積の総量を画像の総面積で割ることによって面積%でのサンプルのメソフェーズピッチ含量の推定値を得る(その結果は、vol%の推定値に対応するように外挿することができる)。
以下、本発明の特定態様についてさらに詳述する。下記記述は特定の態様に関するものであるが、これらは例示に過ぎず、本発明は他の方法で実施できることが当業者なら分かるだろう。「発明」への言及は、請求項によって定義される発明の必ずしも全てではないが、1つ又は複数を指すことがある。表題の使用は、単に便宜のためであり、これらは本発明の範囲を特定の態様に限定するものと解釈すべきでない。
重質原料
本開示のプロセスでは、重質原料は沸点範囲を特徴とし得る。沸点範囲を規定するための1つの選択肢は、フィードの初期沸点及び/又はフィードの最終沸点を使用することである。場合によってはフィードのより代表的な記述を与えることができる別の選択肢は、1つ以上の温度で沸騰するフィードの量に基づいてフィードを特徴づけることである。例えば、フィードの「T5」沸点は、フィードの5wt%が沸騰する温度と定義される。同様に、「T95」沸点は、フィードの95wt%が沸騰する温度である。所与の温度で沸騰するフィードの百分率は、例えば、ASTM D2887に規定される方法によって(又はASTM D2887が特定の留分に適さない場合はASTM D7169の方法によって)決定可能である。一般に、重質原料はT5≧400°F(204℃)及び≦1,400°F(760℃)のT95を有し得る。該重質原料の例には、1,050°F+(566℃+)留分を有するものが含まれる。一部の態様では、566℃+留分は、重質原料の1wt%以上(すなわち、566℃以上のT99)、又は2wt%以上(566℃以上のT98)、又は10wt%以上(566℃以上のT90)、又は15wt%以上(566℃以上のT85)、又は30wt%以上(566℃以上のT70)、又は40wt%以上(566℃以上のT60)、例えば約1wt%~約40wt%又は約2wt%~約30wt%に相当し得る。
本開示の重質原料は、その臭素数によって測定される反応性を特徴とし得る。本開示の重質原料は、ASTM D1159に準拠して測定される≧3、又は≧5、又は≧10、又は≧30、又は≧40、例えば約3~約50、又は約5~約40、又は約10~約30の臭素数を有し得る。
本開示の重質原料は、芳香族含量を特徴とし得る。本開示の重質原料は、約40モル%以上、又は約50モル%以上、又は約60モル%以上、例えば約75モル%まで若しくはおそらくさらに多くの芳香族炭素を含むことができる。重質原料の芳香族炭素含量は、ASTM D5186に従って決定することができる。
本開示の重質原料は、平均炭素数を特徴とし得る。本開示の重質原料は、約33~約45(例えば、約35~約40、又は約37~約42、又は約40~約45)の平均炭素数を有する炭化水素で構成され得る。
本開示の重質原料は、ASTM D4530-15より測定されるマイクロカーボン残留物(MCR)を特徴とし得る。本開示の重質原料は、約5wt%以上(例えば、約5wt%~約45wt%、又は約10wt%~約45wt%)のMCRを有し得る。
本開示の重質原料は、水素含量を特徴とし得る。本開示の重質原料は、一般的に、約6wt%~約11wt%、例えば約6wt%~約10wt%の水素含量を有する。
本開示の重質原料は、多核芳香族炭化水素(PNA)と多環芳香族炭化水素(PAH)の累積濃度を特徴とし得る。本開示の重質原料は、部分的に水素化されたPNAと部分的に水素化されたPAHの約20wt%以上(例えば、約50wt%~約90wt%)の累積濃度を有してよい。
一部の態様では、適切な重質原料は、約50wppm~約10,000wppm又はそれより多くの元素窒素(すなわち、原料内の種々の窒素含有化合物中の窒素の質量)を含むことができる。さらに又はこれとは別に、重質原料は、約100wppm~約20,000wppmの元素硫黄、好ましくは約100wppm~約5,000wppmの元素硫黄を含むことができる。硫黄は、通常は有機的に結合した硫黄として存在するであろう。該硫黄化合物の例としては、ヘテロ環式硫黄化合物の分類、例えばチオフェン、テトラヒドロチオフェン、ベンゾチオフェン等並びにそれらの同族体及び類似体が挙げられる。他の有機的に結合した硫黄化合物には、脂肪族、ナフテン系、及び芳香族メルカプタン、スルフィド、並びにジスルフィド及びポリスルフィドが含まれる。
適切な重質原料の例としては、限定するものではないが、主カラム残留物(MCB)、スチームクラッカータール、減圧残油、脱アスファルト残渣又はロック、前述のいずれかの水素加工形又は水素処理形、及び前述のいずれかの組み合わせが挙げられる。好ましい重質原料は、水素加工MCBであり得る。重質原料の別の好ましい例は、水素処理スチームクラッカータールである。スチームクラッカータール及びその後の水素処理は、例えば、その内容全体を参照することによりここに援用する米国特許第8,105,479号に開示されているように、いずれの適切な方法によっても製造/実施するこができる。
熱処理
本開示にプロセスでは、重質原料は、一般的に熱処理ステップを受けて、重質原料を脱アルキル化及び/又は脱水素し、等方性ピッチを生成する。上述したように、理論に束縛されることを望むものではないが、原料の反応性との関連で十分に高度な苛酷度の条件下で熱処理ステップを行なうと、結果として生じる等方性ピッチにおいて、その後溶媒抽出を介してメソフェーズ凝集体になり得るメソゲンの形成を有利にもたらすと考えられる。多くの場合、該条件は、ビスブレーキング(visbreaking)で利用される条件より高度に苛酷である。さらに詳細には、一般的に、熱処理は、約420℃~約520℃、好ましくは約480℃~約510℃の範囲の温度及び約5分~8時間、さらに好ましくは約5分~約1時間、最も好ましくは約5分~約30分、例えば約10分~約30分の範囲の滞留時間で行なってよい。一般的に、熱処理ステップに必要な苛酷度は、重質原料の臭素数によって決まる。典型的に、熱処理条件に必要な苛酷度は、重質原料の臭素数が減少するにつれて増大する。一般的に、熱処理は、関係[X*Y]≧20,000秒(例えば、≧30,000秒、又は≧50,000秒、又は≧70,000秒、又は≧200,000秒、又は≧500,000秒、又は≧700,000秒)(Xは、加熱の当量反応時間であり、Yは、原料の臭素数である)を満たすのに十分な条件下で行なわれる。例えば、[X*Y]は、約20,000~約1,000,000秒、例えば約30,000秒~約700,000秒、又は約50,000秒~約500,000秒、又は約50,000秒~約100,000秒の範囲であってよい。例えば、重質原料が臭素数≧10を有する実施形態では、熱処理ステップの最小ERTは、約2,000秒以下、例えば500秒の最小ERTであってよい。重質原料が臭素数<10を有する実施形態では、熱処理ステップの最小ERTは、約2,000秒超、例えば、10,000秒の最小ERT、或いは、8,000秒の最小ERTであり得る。
熱処理ステップの適切な圧力は、約200psig(1,380kPa-g)~約2,000psig(13,800kPa-g)、例えば約400psig(2,760kPa-g)~約1,800psig(12,400kPa-g)の範囲であってよい。熱処理は、いずれの容器でも、例えばタンク、パイプ、管型反応器、又は蒸留塔で行なってよい。熱処理を行なうために利用してよい適切な反応器構成の例は、その内容全体を参照することによりここに援用する米国特許第9,222,027号に記載されている。
一般的に、熱処理生成物は液体である。特定態様では、例えばフラッシング、蒸留、分別、沸点範囲に基づいた別のタイプの分離等、好ましくは減圧蒸留によって熱処理生成物をさらに加工して、本明細書に記載の等方性ピッチを生成し得る。例えば、多くの場合熱処理生成物は、ディーゼル及び/又はガソリン成分を含有する1つ以上の軽質留分と、本明細書に記載の等方性ピッチを含有する重質留分とを含有するだろう。該態様では、重質等方性ピッチ含有留分の収率は、典型的に熱処理生成物の約50wt%超、例えば約60wt%超、好ましくは約80wt%超である。
等方性ピッチ
熱処理(及びその後の任意的分離ステップ)の結果として得られる等方性ピッチは、ASTM D4530-15に準拠して測定されるマイクロカーボン残留物(MCR)を特徴とし得る。一般的に、本開示の等方性ピッチは、30wt%以上(例えば、好ましくは約50wt%以上、さらに好ましくは約60wt%以上)のMCRを有し得る。例えば、適切な等方性ピッチは、約30wt%~約90wt%、好ましくは約50wt%~約90wt%、さらに好ましくは約60wt%~約90wt%の範囲のMCRを有し得る。典型的に、等方性ピッチは、重質原料のMCRより少なくとも5%多い、例えば少なくとも10%多い、さらに好ましくは少なくとも20%多いMCRを有する。
本開示の等方性ピッチは、ASTM D3104-14に準拠して測定される軟化点を特徴とし得る。一般的に、本開示の等方性ピッチは、約80℃以上、好ましくは約100℃以上、さらに好ましくは約120℃以上、もっとさらに好ましくは約200℃以上(例えば、好ましくは約80℃~約250℃の範囲、さらに好ましくは約100℃~約250℃の範囲、もっとさらに好ましくは約150℃~約250℃の範囲)の軟化点を有し得る。
本開示の等方性ピッチは、ASTM D2318-15に準拠して測定されるキノリン不溶分を特徴とし得る。一般的に、本開示の等方性ピッチは、約1wt%以上(例えば、好ましくは約2wt%以上、もっとさらに好ましくは約5wt%以上、例えば約1wt%~約10wt%)のキノリン不溶分を有し得る。
本開示の等方性ピッチは、メソフェーズピッチ含量を特徴とし得る。多くの場合、本開示の等方性ピッチは、ASTM D4616-95(2018)に準拠して測定される約0.5wt%超及び/又は約0.5vol%超、例えば約0.5wt%~約1wt%のメソフェーズピッチ含量を有し得る。或いは、本開示の等方性ピッチは、ASTM D4616-95(2018)に準拠して測定される0.5wt%未満、例えば約0wt%又は約0vol%のメソフェーズピッチ含量を有し得る。
本開示の等方性ピッチは、水素含量を特徴とし得る。一般的に、本開示の等方性ピッチは、約8wt%未満(例えば、好ましくは約6wt%以下、例えば約4wt%~約6wt%)の水素含量を有し得る。
本開示の等方性ピッチは、硫黄含量を特徴とし得る。一般的に、本開示の等方性ピッチは、約2wt%未満(例えば、好ましくは約1wt%以下、もっとさらに好ましくは約0.5wt%以下)、例えば約0wt%~約2wt%の硫黄含量を有し得る。
脱アスファルト溶媒
本開示のプロセスでは、適切な脱アスファルト溶媒は、その溶解性ブレンディング数(SBN)に基づいて選択可能である。典型的に、脱アスファルト溶媒は、最小約10溶解力単位(「SU」)のSBNを有する。例えば、適切な脱アスファルト溶媒は、約10~約150SU、例えば約10~約130SU、又は約10~約70SU、又は約10~約50SU、又は約70~約130SUのSBNを有し得る。
本開示の脱アスファルト溶媒は、沸点範囲を特徴とし得る。一部の態様では、脱アスファルト溶媒は、およそ65℃~200℃、例えば約100℃~約175℃の大気圧沸点範囲を有し得る。有利には、脱アスファルト溶媒の大気圧沸点範囲は、本明細書に記載の抽出プロセスからの例えば蒸留による溶媒の回収を容易にするために約200℃未満であってよい。
適切な脱アスファルト溶媒の例としては、限定するものではないが、C2-C10パラフィン、例えばペンタン、ヘプタン、及びブタン;単環芳香族化合物、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン、及びトリメチルベンゼン;多環芳香族化合物、例えばナフタレン、メチルナフタレン、インダン、テトラリン、及びアントラセン;ヘテロ原子を含む芳香族化合物、例えばピリジン;他のヘテロ原子化合物、例えばテトラヒドロフラン;重質ナフサ、ケロセン、及び/又は軽質ディーゼル留分;スチームクラッカータール等の重油原料のアップグレーディング中に生じた生成物の再循環部分;及び適切な沸点範囲を有する他の炭化水素又は炭化水素様留分が挙げられる。スチームクラッカータールのアップグレーディング中に生じた生成物の再循環部分が脱アスファルト溶媒に含まれるとき、再循環部分のための蒸留カットポイントを調整して適切な沸点範囲及び/又は適切なSBNを与えることができる。典型的に、再循環部分に適した大気圧沸点範囲は、約350°F(177℃)~約850°F(454℃)に及び、すなわちミッドカット溶媒である。ミッドカット溶媒を得るための好ましい重油原料アップグレーディングプロセスは、その内容全体を参照することによりここに援用する米国特許公開第2020/0071627号にさらに記載されている。一部の態様では、好ましくは溶媒の総体積に基づいて約90vol%まで、例えば約10vol%の量でヘキサン又はヘプタン等のパラフィンを共溶媒として含めて溶媒混合物の溶解パラメーターを改善してよい。例えば、好ましい脱アスファルト溶媒は、約0~約90vol%のパラフィン、例えばn-ヘプタン、及び約10~約100vol%のトルエン、例えば90vol%のトルエンと10vol%のn-ヘプタン、或いは80vol%のトルエンと20vol%のn-ヘプタン、或いは70vol%のトルエンと30vol%のn-ヘプタン、或いは10vol%トルエンと90vol%のn-ヘプタンを含んでよい。好ましい脱アスファルト溶媒の例をそれらの関連SBN値と共に下表1に示す。
Figure 2024503086000006
溶媒抽出
本開示のプロセスでは、典型的な溶媒抽出条件は、等方性ピッチを、脱アスファルト溶媒と、約10:1~約1:1、例えば約8:1以下の体積比(脱アスファルト溶媒:等方性ピッチ)で混合するステップを含む。典型的に、抽出は、溶媒を液相状態で維持するのに適した条件下で行なわれる。例えば、抽出は、好ましくは約90℃~約350℃、好ましくは約150℃~約350℃、もっとさらに好ましくは約200℃~約350℃の範囲の温度;約15psig(約105kPa-g)~約800psig(約5,600kPa-g)の範囲の全圧;及び約5分~約5時間の滞留時間を含む抽出条件下で行なってよい。典型的に、抽出は、撹拌、例えば回転スターラーを用いる機械的撹拌下で行なってよい。適切な撹拌速度は、約10RPM~約8,500RPM、例えば約50RPM~約5,000RPMの範囲でよい。
等方性ピッチを脱アスファルト溶媒と接触させて少なくとも2つのタイプの生成物流を生成する。1つのタイプの生成物流は、脱アスファルト溶媒の大半と、脱アスファルト溶媒に可溶性である熱処理生成物又は結果として分離された重質留分の部分の大半とを含む溶媒相留分であり得る。脱アスファルト溶媒の少なくとも一部は典型的に、溶媒抽出のために回収された脱アスファルト溶媒の再循環及び再利用のため、例えば蒸留によって、溶媒相留分から回収される。溶媒相の、脱アスファルト溶媒の回収後に結果として生じる部分は、別名脱アスファルト油(DAO)として知られている補足ピッチ生成物を一般的に含み、これは場合により熱処理ステップに再循環されることがある。別名ロックとしても知られている不溶性留分(第2のタイプの生成物流)は、等方性ピッチの残留部分、すなわち脱アスファルト溶媒に溶けない部分を含む。一般的に、不溶性留分は、メソフェーズピッチのみならず、同伴残存溶媒及びメソフェーズピッチ前駆体を含む。場合によっては、不溶性留分を低軟化点等方性ピッチ(例えば、<200℃)又は低沸点溶媒(例えば、約200°F(93.3℃)~約650°F(343℃)の範囲の大気圧沸点を有する)と混合することによって、不溶性留分の軟化点を下げてもよい。該態様では、低軟化点等方性ピッチ又は低沸点溶媒を、不溶性留分と、混合物の総体積に基づいて約10vol%~約60vol%、さらに好ましくは約10vol%~約40vol%、もっとさらに好ましくは約10vol%~約20vol%の範囲の量で混合してよい。さらに又はこれとは別に、不溶性留分は、引き続き熱処理ステップを経て、残留メソフェーズ前駆体をメソフェーズピッチに変換することができる。この任意的熱処理ステップは、約300℃~約350℃の範囲の温度で行なってよく、溶媒、好ましくは低沸点溶媒(例えば、約200°F(93.3℃)~約650°F(343℃)の範囲の大気圧沸点を有する)の存在下で行なってよい。残存溶媒を不溶性留分から除去するためには、例えば、乾燥、蒸留、分別、沸点範囲に基づいた別のタイプの分離等のいずれの便利な分離形態を利用することもできる。場合によっては、結果として回収される残存溶媒を溶媒抽出のために再循環及び再利用してもよい。一般的に、残存溶媒が除去された後に得られる不溶性留分から回収される残留固体生成物の収率は、少なくとも約10wt%、好ましくは少なくとも約15wt%、例えば約10wt%~約50wt%、又は約20wt%~約40wt%である。回収される固体生成物は、典型的に約30vol%以上、例えば約30vol%~約95vol%又は約50vol%~約85vol%の光学活性留分を含む。一部の態様では、回収される固体生成物中のキノリン不溶分の量は、約75wt%以下、又は約50wt%以下、又は約30wt%以下、例えば約0wt%~約30wt%であり得る。さらに又はこれとは別に、回収される固体生成物中のトルエン不溶分の量は、約80wt%以下、又は約60wt%以下、又は約40wt%以下、又は約30wt%以下、例えば約0wt%~約30wt%であり得る。
炭素繊維
本明細書に記載の溶媒抽出プロセスから得られるメソフェーズピッチを用いて、例えば通常の溶融紡糸プロセスを利用することによって、炭素繊維を形成することができる。炭素繊維の形成のための溶融紡糸は既知技術である。例えば、書籍“Carbon-Carbon Materials and Composites”は、表題“Carbon Fiber Manufacturing”のD.D. Edie及びR.J. Diefendorfによる章を含む。別の例は、論文“Melt Spinning Pitch-Based Carbon Fibers”, Carbon, 27(5), p 647, (1989)である。
プロセスの概要
本明細書で開示するプロセスは、バッチ、セミバッチ、連続、半連続プロセス、又はこれらの任意の組み合わせであってよく、好ましくは連続プロセスである。図1は、本開示の非限定プロセス例100の概要を示す。重質原料102が、容器104内で、関係[X*Y]≧20,000秒(Xは、加熱の当量反応時間であり、Yは、原料102の臭素数である)を満たすのに十分な条件下で熱処理ステップを受ける。容器104内で行なわれる熱処理ステップが、等方性ピッチを含む熱処理生成物106の形成をもたらす。多くの場合(必須ではないが)、熱処理生成物106は、分離ステップを経て、等方性ピッチを含む重質留分108と軽質留分110とを形成することができる。場合によっては、軽質留分110を燃料油とブレンドすることができる。結果として生じた熱処理生成物106又は重質留分108は、脱アスファルト溶媒114と共に溶媒抽出器112の中に通される。これが、脱アスファルト溶媒114の大半と、熱処理生成物106又は重質留分108の、脱アスファルト溶媒114に溶ける部分の大半とを含む溶媒相留分116の形成をもたらす。熱処理生成物106又は重質留分108の不溶性部分の大半を含む不溶性留分118、すなわちロックも形成される。一般的に、不溶性留分118は、メソフェーズピッチのみならず、同伴残存溶媒及びメソフェーズピッチ前駆体をも含む。多くの場合(必須ではないが)、本明細書で述べるように、不溶性留分118は、引き続き熱処理ステッチ(図示せず)を経て、残留メソフェーズ前駆体をメソフェーズピッチに変換し、及び/又は混合ステップ(図示せず)を経て、不溶性留分118の軟化点を下げることができる。多くの場合(必須ではないが)、溶媒相留分116の一部が分離ステップを経て、回収溶媒流122及び脱アスファルト油(DAO)120を形成することができる。場合によっては、回収された脱アスファルト溶媒流122の少なくとも一部を、脱アスファルト溶媒流112と共に又は分離流を介して、溶媒抽出器112に再循環させることができる。さらに、場合によりDAO120の少なくとも一部及び/又は不溶性留分118の少なくとも一部を、重質原料102と共に又は分離流を介して容器104に再循環させてよい。
下記例は、本発明を実証する。数値の修正及び変更が可能であり、かつ添付の特許請求の範囲内で、本明細書に具体的に述べた以外の方法で本発明を実施してよいことを理解すべきである。
例1:等方性ピッチの調製
下表2に要約する特性を有する重質原料を、下表3に要約する条件で熱処理することによって5つの等方性ピッチ例(ピッチA、ピッチB、ピッチC、ピッチD、及びピッチE)及び1つの等方性ピッチ比較例(ピッチF)を調製した。ピッチA及びピッチBでは、熱処理後に減圧蒸留によって重質留分を分離した(ピッチC、ピッチD、ピッチE、又はピッチFでは行なわず)。ピッチA及びBのために用いた重質原料は、米国特許公開第2020/0071627号に記載の方法に従ってスチームクラッカータールのアップグレーディングによって生じた生成物であり、ピッチC、ピッチD、及びピッチFのために用いた重質原料は、水素加工したMCBであり、ピッチEのために用いた重質原料は、(非水素加工)MCBだった。
Figure 2024503086000007
Figure 2024503086000008
図2及び図3は、それぞれ、ピッチA及びピッチBの光学顕微鏡写真を示す。これらの図から明らかなように、ほとんど又は全くメソフェーズが観察されなかった。下表4は、結果として生じた等方性ピッチ例(ピッチA~E)及び比較ピッチ例(ピッチF)の特性を示す。
Figure 2024503086000009
表4から明らかなように、ピッチA及びピッチCは中程度のMCRを示したが、ピッチB及びピッチDは高いMCRを示した。ピッチB及びピッチDを形成するために用いた熱処理条件がピッチA及びピッチCに比べて高い苛酷度であることを考慮すれば、これらの結果は予測された。
例2~6&比較例:等方性ピッチの溶媒抽出
各例2~6及び比較例では、等方性ピッチ(それぞれ、ピッチA、ピッチB、ピッチC、ピッチD、ピッチE、又はピッチF)を500MLのHastelloy(商標)C276オートクレーブに導入した後、トルエン、すなわち、100SUのSBNを有する脱アスファルト溶媒を等方性ピッチ1グラム当たり8mlのトルエンの比率で導入した。結果として生じた混合物をオートクレーブ内で密封し、不活性な窒素環境下に置いた。
溶媒抽出プロセスは、オートクレーブ内で自原的圧力下、例2、3、及び6については230℃で、例4、5、及び比較例については280℃で行なった。溶媒/等方性ピッチ混合物を例2、3、4、及び6については1時間、例5については85分間、比較例については3時間撹拌し、いずれの場合もその後室温まで冷ました。抽出の過程で、230℃及び280℃で行なった実験についてそれぞれ160psig(1,100kPa-g)及び350psig(2,410kPa-g)の圧力が発生した。溶媒相留分をデカントした後に不溶性相留分(もしあれば)を収集し、引き続き30分間乾燥させて残存溶媒を除去し、回収固体生成物を生じさせた。
図1及び図2に示すように、等方性ピッチ中にほとんど又は全くメソフェーズピッチが観察されなかったので、溶媒抽出プロセス中のメソフェーズピッチの形成を実証した。
図4及び図5は、それぞれ例2及び3から回収された固体生成物の光学顕微鏡写真を示す。各例2~6及び比較例について回収された固体生成物の結果を下表5に要約する。
Figure 2024503086000010
表5から明らかなように、各例2~6では固体生成物が回収されたが、比較例では回収されなかった。各ピッチA~EについてのERT×臭素数値がピッチFに比べて高いことを考慮すれば、これらの結果は予測された。
例7:10SUの脱アスファルト溶媒による等方性ピッチの溶媒抽出
例7では、下記特性:24.2%のMCR、6.9wt%の水素含量、及び約40の臭素数を有する流動タール重質原料を熱処理することによって等方性ピッチを調製した。熱処理は、下記条件:460℃の温度;1,000psig(6,900kPa-g)の圧力;35分の滞留時間;及び1,387秒のERTで行なった。結果として生じた等方性ピッチは、下記特性:35.1%のMCR;5.32wt%の水素含量;<30℃の軟化点;及び0vol%のメソフェーズピッチ含量を示した。
得られた等方性ピッチを500MLのHastelloy(商標)C276オートクレーブに導入した後、90vol%:10vol%のn-ヘプタン:トルエン混合物、すなわち、10SUのSBNを有する脱アスファルト溶媒を等方性ピッチ1グラム当たり8mlの溶媒の比率で導入した。結果として生じた混合物をオートクレーブ内で密封し、不活性な窒素環境下に置いた。
オートクレーブ内で自原的圧力下280℃で溶媒抽出プロセスを行なった。溶媒/等方性ピッチ混合物を1時間撹拌してから室温に冷ました。抽出の過程で、350psig(2,410kPa-g)の圧力が発生した。溶媒相留分をデカントした後に不溶性相留分を収集し、引き続き30分間乾燥させて残存溶媒を除去し、回収固体生成物を生じさせた。
結果として回収された固体生成物は、下記特性:21wt%の収率;90面積%の光学活性留分;及び>400℃の軟化点を示した。これらの結果は、メソフェーズピッチを含む固体生成物を生じさせる際に10SUのSBNを有する脱アスファルト溶媒が有効であることを実証する。
本明細書に記載の全ての文書は、いずれの優先権書類及び/又は試験手順をも含め、それらが本テキストと矛盾しない程度まで、参照することにより本明細書に組み込まれる。前述の一般的説明及び具体的実施形態から明らかなように、本開示の形態を説明及び記述したが、本開示の精神及び範囲を逸脱することなく種々の変更を加えることができる。従って、本開示をそれらによって限定する意図ではない。同様に、用語「含む(comprising)」は、米国法の目的の用語「含む(including)」と同義とみなす。同様に組成物、要素、要素群に移行句「含む(comprising)」が先行するときはいつでも、組成物、要素、要素群の記述に先行する移行句「から本質的に成る」、「から成る」、「から成る群より選択される」、又は「である」を伴う同組成物又は要素群をも企図し、逆もまた同様であるという共通認識がある。
本明細書に記載の全ての文書は、いずれの優先権書類及び/又は試験手順をも含め、それらが本テキストと矛盾しない程度まで、参照することにより本明細書に組み込まれる。前述の一般的説明及び具体的実施形態から明らかなように、本開示の形態を説明及び記述したが、本開示の精神及び範囲を逸脱することなく種々の変更を加えることができる。従って、本開示をそれらによって限定する意図ではない。同様に、用語「含む(comprising)」は、米国法の目的の用語「含む(including)」と同義とみなす。同様に組成物、要素、要素群に移行句「含む(comprising)」が先行するときはいつでも、組成物、要素、要素群の記述に先行する移行句「から本質的に成る」、「から成る」、「から成る群より選択される」、又は「である」を伴う同組成物又は要素群をも企図し、逆もまた同様であるという共通認識がある。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕メソフェーズピッチの製造プロセスであって、
T5≧400°F(204℃)及びT95≦1,400°F(760℃)を有する原料を準備するステップと、
前記原料を約420℃~約520℃の範囲の温度で加熱して、等方性ピッチを含む熱処理生成物を生成するステップであって、前記加熱が、関係[X*Y]≧20,000秒(Xは、前記加熱の当量反応時間(ERT)であり、Yは、ASTM D1159に準拠して測定される前記原料の臭素数である)を満たすのに十分な条件下で行なわれるステップと、
前記等方性ピッチを、少なくとも約10SUの溶解性ブレンディング数(S BN )を有する溶媒と、前記溶媒を含む溶媒留分及びメソフェーズピッチを含む不溶性留分を生成するのに十分な条件下で接触させるステップと、
前記メソフェーズピッチを回収するステップと
を含む、前記プロセス。
〔2〕前記原料が、10以上の臭素数を有し、かつ前記加熱が、少なくとも約2,000秒のERTで行なわれる、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔3〕前記原料が、10未満の臭素数を有し、かつ前記加熱が、少なくとも約4,000秒のERTで行なわれる、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔4〕前記加熱が、約420℃~約510℃の範囲の温度で行なわれる、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔5〕前記原料が、該原料の質量に基づいて約1wt%~約40wt%の範囲の、1,050°F(566℃)以上の沸点を有する留分を含む、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔6〕前記原料が、主カラム残留物(MCB)、水素加工MCB、スチームクラッカータール、水素処理スチームクラッカータール、減圧残油、脱アスファルト残渣又はロック、及びこれらの混合物又は組み合わせから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを含む、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔7〕前記等方性ピッチが、下記特性:
(a)約30%~約90%の範囲の、ASTM D4530-15に準拠して測定されるマイクロカーボン残留物(MCR);
(b)約80℃~約250℃の範囲の、ASTM D3104-14に準拠して測定される軟化点;
(c)約0.5vol%超の、ASTM D4616-95(2018)に準拠して測定されるメソフェーズピッチ含量;及び
(d)約1wt%超の、ASTM D2318-15に準拠して測定されるキノリン不溶分
の少なくとも1つを有する、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔8〕前記等方性ピッチが、少なくとも約60%の、ASTM D4530-15に準拠して測定されるマイクロカーボン残留物(MCR)を有する、前記〔7〕に記載のプロセス。
〔9〕前記熱処理生成物を分離して、前記等方性ピッチを含む重質留分及び軽質留分を生成するステップをさらに含む、前記〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔10〕前記不溶性留分が、残存量の前記溶媒を含み、かつ前記メソフェーズピッチを回収するステップが、前記残存溶媒の少なくとも一部を除去して回収固体生成物を形成することを含む、前記〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔11〕前記回収固体生成物の収率が、少なくとも約10wt%であり、かつ前記回収固体生成物が、少なくとも約30vol%の光学活性留分を含む、前記〔10〕に記載のプロセス。
〔12〕前記接触中の前記等方性ピッチと前記溶媒の比が、体積で約10:1~約1:1の範囲である、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔13〕前記溶媒が、約10SU~約130SUの範囲のS BN を有する、前記〔1〕~〔12〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔14〕前記溶媒が、約10SU~約100SUの範囲のS BN を有する、前記〔1〕~〔13〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔15〕前記溶媒が、単環芳香族化合物、二環芳香族化合物、パラフィン、ミッドカット溶媒、及びこれらの混合物又は組み合わせから成る群より選択される、前記〔1〕~〔14〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔16〕前記溶媒が、該溶媒の体積に基づいて約10~約100vol%の単環芳香族化合物及び約0~約90vol%のn-ヘプタンを含む、前記〔15〕に記載のプロセス。
〔17〕前記接触が、約90℃~約350℃の範囲の温度で行なわれる、前記〔1〕~〔16〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔18〕前記接触が、約150℃~約350℃の範囲の温度、約15psig(約105kPa-g)~約800psig(約5,600kPa-g)の範囲の圧力、及び約5分~約5時間の滞留時間で行なわれる、前記〔1〕~〔17〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔19〕溶媒相を分離して、回収溶媒流及び脱アスファルト油流を形成するステップをさらに含む、前記〔1〕~〔18〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔20〕前記回収溶媒流の少なくとも一部を前記溶媒抽出に再循環させるステップをさらに含む、前記〔19〕に記載のプロセス。
〔21〕前記脱アスファルト油流の少なくとも一部を前記加熱処理に再循環させるステップをさらに含む、前記〔19〕又は〔20〕に記載のプロセス。
〔22〕前記〔1〕~〔21〕のいずれか1項に記載のプロセスによって製造される前記メソフェーズピッチ。
〔23〕前記〔22〕に記載の前記メソフェーズピッチから製造される炭素繊維。
〔24〕メソフェーズピッチの製造プロセスであって、
主カラム残留物(MCB)、水素加工MCB、スチームクラッカータール、水素処理スチームクラッカータール、減圧残油、脱アスファルト残渣又はロック、及びこれらの混合物又は組み合わせから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを含む原料を準備するステップと、
前記原料を約420℃~約520℃の範囲の温度で加熱して、等方性ピッチを含む熱処理生成物を生成するステップであって、前記加熱が、関係[X*Y]≧20,000秒(Xは、前記加熱の当量反応時間であり、Yは、ASTM D1159に準拠して測定される前記原料の臭素数である)を満たすのに十分な条件下で行なわれるステップと、
前記等方性ピッチを、単環芳香族化合物、二環芳香族化合物、パラフィン、ミッドカット溶媒、及びこれらの混合物又は組み合わせから成る群より選択される溶媒と、前記溶媒を含む溶媒留分及びメソフェーズピッチを含む不溶性留分を生成するのに十分な条件下で接触させるステップと、
前記メソフェーズピッチを回収するステップと
を含む、前記プロセス。

Claims (24)

  1. メソフェーズピッチの製造プロセスであって、
    T5≧400°F(204℃)及びT95≦1,400°F(760℃)を有する原料を準備するステップと、
    前記原料を約420℃~約520℃の範囲の温度で加熱して、等方性ピッチを含む熱処理生成物を生成するステップであって、前記加熱が、関係[X*Y]≧20,000秒(Xは、前記加熱の当量反応時間(ERT)であり、Yは、ASTM D1159に準拠して測定される前記原料の臭素数である)を満たすのに十分な条件下で行なわれるステップと、
    前記等方性ピッチを、少なくとも約10SUの溶解性ブレンディング数(SBN)を有する溶媒と、前記溶媒を含む溶媒留分及びメソフェーズピッチを含む不溶性留分を生成するのに十分な条件下で接触させるステップと、
    前記メソフェーズピッチを回収するステップと
    を含む、前記プロセス。
  2. 前記原料が、10以上の臭素数を有し、かつ前記加熱が、少なくとも約2,000秒のERTで行なわれる、請求項1に記載のプロセス。
  3. 前記原料が、10未満の臭素数を有し、かつ前記加熱が、少なくとも約4,000秒のERTで行なわれる、請求項1に記載のプロセス。
  4. 前記加熱が、約420℃~約510℃の範囲の温度で行なわれる、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
  5. 前記原料が、該原料の質量に基づいて約1wt%~約40wt%の範囲の、1,050°F(566℃)以上の沸点を有する留分を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
  6. 前記原料が、主カラム残留物(MCB)、水素加工MCB、スチームクラッカータール、水素処理スチームクラッカータール、減圧残油、脱アスファルト残渣又はロック、及びこれらの混合物又は組み合わせから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
  7. 前記等方性ピッチが、下記特性:
    (a)約30%~約90%の範囲の、ASTM D4530-15に準拠して測定されるマイクロカーボン残留物(MCR);
    (b)約80℃~約250℃の範囲の、ASTM D3104-14に準拠して測定される軟化点;
    (c)約0.5vol%超の、ASTM D4616-95(2018)に準拠して測定されるメソフェーズピッチ含量;及び
    (d)約1wt%超の、ASTM D2318-15に準拠して測定されるキノリン不溶分
    の少なくとも1つを有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
  8. 前記等方性ピッチが、少なくとも約60%の、ASTM D4530-15に準拠して測定されるマイクロカーボン残留物(MCR)を有する、請求項7に記載のプロセス。
  9. 前記熱処理生成物を分離して、前記等方性ピッチを含む重質留分及び軽質留分を生成するステップをさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のプロセス。
  10. 前記不溶性留分が、残存量の前記溶媒を含み、かつ前記メソフェーズピッチを回収するステップが、前記残存溶媒の少なくとも一部を除去して回収固体生成物を形成することを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
  11. 前記回収固体生成物の収率が、少なくとも約10wt%であり、かつ前記回収固体生成物が、少なくとも約30vol%の光学活性留分を含む、請求項10に記載のプロセス。
  12. 前記接触中の前記等方性ピッチと前記溶媒の比が、体積で約10:1~約1:1の範囲である、請求項1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
  13. 前記溶媒が、約10SU~約130SUの範囲のSBNを有する、請求項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
  14. 前記溶媒が、約10SU~約100SUの範囲のSBNを有する、請求項1~13のいずれか1項に記載のプロセス。
  15. 前記溶媒が、単環芳香族化合物、二環芳香族化合物、パラフィン、ミッドカット溶媒、及びこれらの混合物又は組み合わせから成る群より選択される、請求項1~14のいずれか1項に記載のプロセス。
  16. 前記溶媒が、該溶媒の体積に基づいて約10~約100vol%の単環芳香族化合物及び約0~約90vol%のn-ヘプタンを含む、請求項15に記載のプロセス。
  17. 前記接触が、約90℃~約350℃の範囲の温度で行なわれる、請求項1~16のいずれか1項に記載のプロセス。
  18. 前記接触が、約150℃~約350℃の範囲の温度、約15psig(約105kPa-g)~約800psig(約5,600kPa-g)の範囲の圧力、及び約5分~約5時間の滞留時間で行なわれる、請求項1~17のいずれか1項に記載のプロセス。
  19. 溶媒相を分離して、回収溶媒流及び脱アスファルト油流を形成するステップをさらに含む、請求項1~18のいずれか1項に記載のプロセス。
  20. 前記回収溶媒流の少なくとも一部を前記溶媒抽出に再循環させるステップをさらに含む、請求項19に記載のプロセス。
  21. 前記脱アスファルト油流の少なくとも一部を前記加熱処理に再循環させるステップをさらに含む、請求項19又は20に記載のプロセス。
  22. 請求項1~21のいずれか1項に記載のプロセスによって製造される前記メソフェーズピッチ。
  23. 請求項22に記載の前記メソフェーズピッチから製造される炭素繊維。
  24. メソフェーズピッチの製造プロセスであって、
    主カラム残留物(MCB)、水素加工MCB、スチームクラッカータール、水素処理スチームクラッカータール、減圧残油、脱アスファルト残渣又はロック、及びこれらの混合物又は組み合わせから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを含む原料を準備するステップと、
    前記原料を約420℃~約520℃の範囲の温度で加熱して、等方性ピッチを含む熱処理生成物を生成するステップであって、前記加熱が、関係[X*Y]≧20,000秒(Xは、前記加熱の当量反応時間であり、Yは、ASTM D1159に準拠して測定される前記原料の臭素数である)を満たすのに十分な条件下で行なわれるステップと、
    前記等方性ピッチを、単環芳香族化合物、二環芳香族化合物、パラフィン、ミッドカット溶媒、及びこれらの混合物又は組み合わせから成る群より選択される溶媒と、前記溶媒を含む溶媒留分及びメソフェーズピッチを含む不溶性留分を生成するのに十分な条件下で接触させるステップと、
    前記メソフェーズピッチを回収するステップと
    を含む、前記プロセス。
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