JP2024119446A - センサユニット付軸受キャップ及びハブユニット軸受 - Google Patents

センサユニット付軸受キャップ及びハブユニット軸受 Download PDF

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Abstract

Figure 2024119446000001
【課題】ボルト締結工具を回す際の困難性やセンサワイヤを疵付けるリスクを低減可能なセンサユニット付軸受キャップ及びハブユニット軸受を提供する。
【解決手段】キャップ平面部44aのうち、エンコーダ13と軸方向に対向する部分には、センサ90を挿入するためのセンサ挿入孔45が設けられ、キャップ傾斜面部44bには、センサホルダ80を固定するためのボルト8が螺合可能な雌ねじ孔46が設けられ、ホルダ平面部81には、ホルダ平面部81を軸方向に貫通するように延びるセンサ90が固定され、ホルダ傾斜面部83には、雌ねじ孔46と連続する孔を形成するように、ホルダ傾斜面部83を貫通してボルト8が挿入可能なボルト挿入孔84が設けられる。
【選択図】図1

Description

本発明は、センサユニット付軸受キャップ及びハブユニット軸受に関する。
従動輪用ハブユニット軸受のインボード側は、エンドキャップ(軸受キャップ)で密封されており、内輪部材にエンコーダが取り付けられている。このようなハブユニット軸受では、センサを保持するセンサホルダがエンドキャップに固定されており、当該エンドキャップがインボード側の密封装置として機能する。
特許文献1には、センサホルダを備える従動輪用ハブユニット軸受が開示されている。このハブユニット軸受においては、センサ先端をセンサホルダのセンサ孔に挿入すると共に、センサのフランジ部をセンサホルダにモールド固定されたインサートナットにボルト止めしている。
ところで、センサホルダに係止されたセンサのインボード側には、外部装置とセンサとを接続するワイヤが延在している。したがって、センサ固定用ボルトの締結時に、締結工具(例えば六角レンチ)を回す時の障害となり、また、著しい場合は、センサワイヤを疵付け、ABSやトラクションコントロール機能に障害を起こす虞がある。
特開2015-045350号公報
そこで本発明は、ボルト締結工具を回す際の困難性やセンサワイヤを疵付けるリスクを低減可能なセンサユニット付軸受キャップ及びハブユニット軸受を提供することを目的とする。
本発明は下記構成からなる。
(1) インボード側端部にエンコーダを支持した内輪部材を、その径方向内側に複数個の転動体を介して回転自在に支持した外輪部材のインボード側開口を塞ぐ状態で、前記外輪部材のインボード側端部に装着される軸受キャップと、
センサと、前記センサを保持した状態で前記軸受キャップに支持固定されるセンサホルダと、を備えたセンサユニットと、
を備え、
前記軸受キャップは、
前記外輪部材のインボード側端部に固定される筒部と、
前記筒部のインボード側を塞ぐ底板部と、
を備え、
前記底板部のインボード側面は、
軸方向と垂直に延びるキャップ平面部と、
前記キャップ平面部に対して傾斜するキャップ傾斜面部と、
を備え、
前記キャップ平面部のうち、前記エンコーダと軸方向に対向する部分には、前記センサを挿入するためのセンサ挿入孔が設けられ、
前記キャップ傾斜面部には、前記センサホルダを固定するためのボルトが螺合可能な雌ねじ孔が設けられ、
前記センサホルダは、
軸方向と垂直に延びて、前記キャップ平面部と当接するホルダ平面部と、
前記ホルダ平面部に対して傾斜し、前記キャップ傾斜面部と当接するホルダ傾斜面部と、
を備え、
前記ホルダ平面部には、前記ホルダ平面部を軸方向に貫通するように延びる前記センサが固定され、
前記ホルダ傾斜面部には、前記雌ねじ孔と連続する孔を形成するように、前記ホルダ傾斜面部を貫通して前記ボルトが挿入可能なボルト挿入孔が設けられる、
ことを特徴とするセンサユニット付軸受キャップ。
(2) 前記キャップ傾斜面部は、前記キャップ平面部の径方向内側端部に接続し、径方向内側に向かうにしたがってアウトボード側に傾斜し、
前記ホルダ傾斜面部は、前記ホルダ平面部の径方向内側端部に接続し、径方向内側に向かうにしたがってアウトボード側に傾斜し、前記キャップ傾斜面部と当接する、
請求項1に記載のセンサユニット付軸受キャップ。
(3) 前記雌ねじ孔は、前記キャップ傾斜面部に穿孔された孔に圧入された、外径がセレーション形状のインサートナットによって形成される、
(1)に記載のセンサユニット付軸受キャップ。
(4) 前記雌ねじ孔は、前記キャップ傾斜面部にモールド固定されたインサートナットによって形成される、
(1)に記載のセンサユニット付軸受キャップ。
(5) 内周面に外輪軌道面を有し、使用時に回転しない外輪部材と、
外周面に内輪軌道面を有し、使用時に回転する内輪部材と、
前記外輪軌道面と前記内輪軌道面との間に転動自在に設けられた複数個の転動体と、
前記内輪部材のインボード側端部に前記内輪部材と同心に支持固定され、その特性を円周方向に関して交互に且つ等ピッチで変化させたエンコーダと、
前記外輪部材のインボード側開口を塞ぐ状態で、前記外輪部材のインボード側端部に装着される軸受キャップと、
前記軸受キャップに支持固定されたセンサユニットと、
を備えたハブユニット軸受であって、
前記軸受キャップに前記センサユニットを支持固定して成るセンサユニット付軸受キャップが、(1)~(4)のいずれか1つに記載したセンサユニット付軸受キャップであることを特徴とするハブユニット軸受。
本発明によれば、ボルト締結工具を回す際の困難性やセンサワイヤを疵付けるリスクを低減可能なセンサユニット付軸受キャップ及びハブユニット軸受を提供できる。
図1は、第1実施形態に係るハブユニット軸受の断面図である。 図2は、図1のハブユニット軸受に装着される軸受キャップ及びセンサユニットの拡大図である。 図3は、軸受キャップにインサートナットを圧入する様子を示す図である。 図4は、軸受キャップをインボード側から見た図である。 図5は、センサホルダ及びセンサの成形方法を説明するための図である。 図6は、第2実施形態に係る軸受キャップ及びセンサユニットの断面図である。 図7は、軸受キャップの断面図である。 図8は、軸受キャップをインボード側から見た図である。 図9は、インサートナットの断面図である。 図10は、軸受キャップの成形方法を説明するための図である。 図11は、変形例に係る軸受キャップの成形方法を説明するための図である。 図12は、変形例に係るインサートナットの断面図である。 図13は、他の変形例に係るインサートナットの断面図である。
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るハブユニット軸受の断面図である。図2は、図1のハブユニット軸受に装着される軸受キャップ及びセンサユニットの拡大図である。図3は、軸受キャップにインサートナットを圧入する様子を示す図である。図4は、軸受キャップをインボード側から見た図である。
図1に示すように、第1実施形態に係るハブユニット軸受1は、第3世代のハブユニット軸受であり、従動輪用として用いられる。なお、自動車への組み付け状態で車体の幅方向外側となる、図1の左側を「アウトボード側」と称す。また、反対に車体の幅方向中央側となる図1の右側を、「インボード側」と称す。「軸方向」とは、軸受装置の回転軸Oが延びる方向を表し、図1中の左右方向である。「径方向外側」とは、回転軸Oから遠ざかる方向を表し、図1中の上下方向両側である。「径方向内側」及び「径方向中心側」とは、回転軸Oに近づく方向を表し、図1中の上下方向中央側である。「周方向」とは、回転軸Oを中心に旋回する方向を表す。
本実施形態の回転速度検出装置付のハブユニット軸受1は、従動輪である車輪をナックル等の懸架装置に対して回転自在に支持すると共に、この車輪の回転速度を検出するものである。ハブユニット軸受1は、使用時に懸架装置に支持固定された状態で回転しない外輪(外輪部材)2の径方向内側に、使用時に図示しない車輪を支持した状態でこの車輪と共に回転する内輪部材3を、複数個の転動体4、4を介して、回転自在に支持している。
外輪2の外周面には、懸架装置を構成する図示しないナックルに結合固定するための固定側フランジ5が形成される。外輪2の内周面には、複列の外輪軌道面23a、23bが形成される。
内輪部材3は、ハブ輪24と内輪25とを、かしめ部26により結合固定して成るものである。内輪部材3の外周面には、複列の内輪軌道面27a、27bを有する。内輪部材3は、外輪2の径方向内側に、この外輪2と同心に支持されている。また、ハブ輪24のアウトボード側端部で、外輪2のアウトボード側開口よりもアウトボード側に突出した部分には、車輪を支持するための回転側フランジ6が設けられている。
各外輪軌道面23a、23bと各内輪軌道面27a、27bとの間には、それぞれ各転動体4、4が複数個ずつ転動自在に設けられている。なお、図示の例では、これら各転動体4、4として玉を使用しているが、重量の嵩む自動車用のハブユニット軸受の場合には、円すいころを使用する場合もある。
外輪2及び内輪部材3を構成するハブ輪24は、S53C等の中炭素鋼製であり、少なくとも各軌道面23a、23b、27aの表面に、高周波焼き入れ等の硬化処理が施されている。一方、内輪部材3を構成する内輪25及び各転動体4、4は、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼製であり、例えば、ずぶ焼き入れによる硬化処理が施されている。
内輪部材3を構成する内輪25のインボード端部には、回転速度検出装置を構成する、円環状のエンコーダ13が、内輪部材3と同心に支持固定されている。このエンコーダ13は、支持環28と、エンコーダ本体29と、を含む。
支持環28は、SUS430等のフェライト系ステンレス鋼板やSPCC等の冷間圧延鋼板に、プレス加工を施す事により、断面L字形で全体を円環状に形成されている。支持環28は、支持円筒部30と、この支持円筒部30のインボード端部から径方向外方に折れ曲がる状態で設けられた支持円輪部31と、を備える。そして、このうちの支持円筒部30のアウトボード端部が、内輪25のインボード端部に締り嵌めで外嵌固定されている。
エンコーダ本体29は、フェライト粉末等の磁性体を混入したゴム磁石またはプラスチック磁石等の永久磁石により全体を円輪状に造られたもので、支持円輪部31のインボード側面に添着固定されている。被検出面であるエンコーダ本体29のインボード側面には、S極とN極とが円周方向に関して交互に且つ等ピッチで配置されている。これにより、エンコーダ13は、その特性を円周方向に関して交互に且つ等ピッチで変化させている。この様なエンコーダ13の被検出面は、内輪部材3と同心に、且つ、ハブ輪24のインボード端部に形成されたかしめ部26のインボード側端面よりもインボード側に配置されている。
また、外輪2の内周面と内輪部材3の外周面との間で各転動体4、4を設置した空間のアウトボード側開口は、シールリング7により塞がれている。これに対し、外輪2のインボード端部には、有底円筒状のセンサユニット付軸受キャップ40(以下、単に軸受キャップ40とする)が装着されて、この外輪2のインボード側開口が塞がれている。軸受キャップ40は、回転速度検出装置を構成するセンサユニット70を支持固定している。センサユニット70は、合成樹脂製のセンサホルダ80にセンサ90を保持して成る。
図2に示すように、軸受キャップ40は、合成樹脂製で全体を有底円筒状に構成されたキャップ本体50と、このキャップ本体50にモールド固定された金属板製の金属環60から構成されている。軸受キャップ40は、外輪2のインボード側端部に固定される円筒状の筒部41と、この筒部41のインボード端開口を塞ぐ底板部43と、を備えている。
キャップ本体50は、例えばポリアミド66樹脂に、グラスファイバーを適宜加えた繊維強化ポリアミド樹脂材料を、射出成形する事により造られている。また、必要に応じて、ポリアミド樹脂に、非晶性芳香族ポリアミド樹脂(変性ポリアミド6T/6I)、低吸水脂肪族ポリアミド樹脂(ポリアミド11樹脂、ポリアミド12樹脂、ポリアミド610樹脂、ポリアミド612樹脂)を適宜加える事で、より耐水性を向上させても良い。また、本実施形態の場合、金属環60は、キャップ本体50の射出成形時にモールド固定する事により、このキャップ本体50に固定されている。
軸受キャップ40の筒部41は、軸方向に関して、先端部(アウトボード側端部、図1~図2の左端部)に設けられた小径筒部34と、基端部(インボード側端部、図1~図2の右端部)及び中間部に設けられた大径筒部35とを、段差面36により連続させた、段付き円筒状に構成されている。
本実施形態の場合、小径筒部34を、金属環60により構成している。この金属環60は、ステンレス鋼板や冷間圧延鋼板等から造られており、断面L字形である。金属環60は、金属環円筒部37と、この金属環円筒部37のインボード側端部から径方向外側に折れ曲がる状態で設けられた金属環円輪部38と、を備えている。このうちの金属環円筒部37は、大径筒部35の外部に露出しているのに対し、金属環円輪部38は、この大径筒部35の内部に埋め込まれている。また、段差面36の径方向内側部分を、金属環円輪部38のアウトボード側面に隣接する状態で配置された、Oリング33用の係止溝とし、この係止溝にこのOリング33を係止している。
そして、筒部41の先端部(アウトボード側端部)を構成する金属環60は、外輪2のインボード側端部外周面に締り嵌めで外嵌固定される。これにより、金属環60は、外輪2のインボード端開口を塞ぐ状態で、外輪2のインボード端部に装着されている。
図4も参照し、軸受キャップ40の底板部43は、全体を略円板状に構成されている。この様な底板部43のうち、円周方向一部分{使用状態で、図1~図4に示す様に、上半部の前後方向(図4の左右方向)中央部に位置する部分}に、他の部分よりも軸方向厚さ寸法が大きくなった(インボード側に向けて膨出した)筒状のコネクタ部42が設けられている。コネクタ部42の軸方向から見た形状は、図4に示す様に、径方向(図4の上下方向)に伸長する長円形状である。なお、コネクタ部42の軸方向から見た形状は、長円形状に限られず、任意の形状としてよい。
底板部43のコネクタ部42のインボード側面44は、後述するようにセンサホルダ80を載置可能であり、したがってセンサホルダ80の座面として機能する。インボード側面44は、径方向中途部分で折れ曲がった形状であり、二つの平面部(キャップ平面部44a及びキャップ傾斜面部44b)によって構成されている。インボード側面44は、軸方向(回転軸O)と垂直に延びるキャップ平面部44aと、キャップ平面部44aに対して傾斜するキャップ傾斜面部44bと、を備える。
図示の例では、キャップ傾斜面部44bは、キャップ平面部44aの径方向内側端部に接続し、径方向内側に向かうにしたがってアウトボード側に傾斜している。しかしながら、キャップ傾斜面部44bは、キャップ平面部44aに対して平行ではなく傾斜している限り、傾斜の向きは限定されない。
また、キャップ平面部44aとキャップ傾斜面部44bとの交差部分は稜線形状であるが、逃げや丸みを有する形状であってもよい。なお、図示の例では、キャップ傾斜面部44bの径方向内側端部は、使用状態で回転軸Oよりも上側に位置するが、キャップ傾斜面部44bの径方向内側端部は、使用状態で回転軸Oよりも下側に突出してもよい。
キャップ平面部44aのうち、エンコーダ13と軸方向に対向する部分には、センサ90を挿入するためのセンサ挿入孔45が設けられる。センサ挿入孔45は、回転軸Oと平行に延び、軸受キャップ40のコネクタ部42を軸方向に貫通する。後述するように、センサ挿入孔45には、センサホルダ80に保持されたセンサ90がインボード側から挿入され、当該センサ90はエンコーダ13と近接対向する。
キャップ傾斜面部44bには、センサホルダ80を固定するためのボルト8が螺合可能な雌ねじ孔46が設けられる。雌ねじ孔46は、キャップ傾斜面部44bに対して垂直に延びている。したがって、雌ねじ孔46は、アウトボード側に向かうにしたがって径方向外側(使用状態では上側)に傾斜するように延びている。
雌ねじ孔46は、軸受キャップ40に圧入固定されたインサートナット9の中央の雌ねじ孔である。図3に示すように、インサートナット9を軸受キャップ40に圧入固定する際には、先ず、キャップ傾斜面部44bに、ドリル等で穿孔加工して穿孔孔47を設ける。穿孔孔47は、キャップ傾斜面部44bに対して垂直に延びており、したがって、アウトボード側に向かうにしたがって径方向外側(使用状態では上側)に傾斜するように延びている。
次に、穿孔孔47の内径よりも外径が大きいインサートナット9を、穿孔孔47に圧入する。この際、インサートナット9の外周面はセレーション形状とされているため、インサートナット9の圧入に伴い、インサートナット9の外周面と穿孔孔47の内周面とがセレーション嵌合される。
なお、図示の例では、インサートナット9の雌ねじ孔46が、軸方向に貫通した構造であるが、インサートナット9はこの構造に限定されず、軸方向に貫通しない有底構造(袋ナット)としてもよい。
上述の様な構成を有する軸受キャップ40は、筒部41のうちの小径筒部34(金属環円筒部37)を外輪2のインボード端部に締り嵌めで内嵌固定する事により、外輪2のインボード端開口を塞ぐ状態で、外輪2のインボード端部に装着される。また、この状態で、段差面36を、外輪2のインボード端面に突き当てる事により、外輪2に対する軸受キャップ40の軸方向に関する位置決めが図られる。これと共に、Oリング33を、外輪2のインボード端面と金属環円輪部38のアウトボード側面との間で弾性的に圧縮する事により、これら両側面同士の間部分がシールされる。そして、底板部43のうちで、センサ90が挿入されるセンサ挿入孔45が、エンコーダ13(エンコーダ本体29)の被検出面に対し軸方向に対向する。
なお、本実施形態では、金属環円筒部37の外周面が外輪2に嵌合される金属嵌合の軸受キャップを例示しているが、この構成に限定されず、金属環円筒部37の外周面を樹脂で覆い当該樹脂部分を外輪2に外嵌する樹脂嵌合の軸受キャップとしてもよい。樹脂嵌合の軸受キャップとする場合は、Oリング33は不要である。
上述の様な構成を有する本例の回転速度検出装置付きのハブユニット軸受1の場合、従動輪である車輪を懸架装置に対して回転自在に支持できると共に、この車輪の回転速度を検出する事ができる。すなわち、車輪が回転すると、センサ90の近傍を、エンコーダ13の被検出面に配置されたS極とN極とが交互に通過する。この結果、このセンサ90の検出部内を流れる磁束の密度が変化し、その出力信号を変化させる。この様にしてセンサ90の出力信号が変化する周波数は、車輪の回転数に比例する。従って、この出力信号をセンサワイヤ91を介して図示しない制御器に送れば、ABS(アンチロックブレーキシステム)やTCS(トラクションコントロールシステムを適切に制御できる。
次に、センサ90を保持するセンサホルダ80について説明する。センサホルダ80は、径方向中途部分で折れ曲がった板状であり、二つの平面部(ホルダ平面部81及びホルダ傾斜面部83)によって構成されている。このセンサホルダ80は、軸方向(回転軸O)と垂直に延びて、キャップ平面部44aと軸方向に当接するホルダ平面部81と、ホルダ平面部81に対して傾斜し、キャップ傾斜面部44bと当接するホルダ傾斜面部83と、を備える。
図示の例では、ホルダ傾斜面部83は、ホルダ平面部81の径方向内側端部に接続し、径方向内側に向かうにしたがってアウトボード側に傾斜している。しかしながら、ホルダ傾斜面部83は、ホルダ平面部81に対して平行ではなく傾斜している限り、傾斜の向きは限定されない。
このように、軸受キャップ40のコネクタ部42のインボード側面44(キャップ平面部44a及びキャップ傾斜面部44b)は、センサホルダ80が載置される座面として機能する。図示の例では、ホルダ平面部81の径方向外側端部は、コネクタ部42のインボード側面44の径方向外側端部よりも径方向内側に位置し、ホルダ傾斜面部83の径方向内側端部は、コネクタ部42のインボード側面44の径方向内側端部よりも径方向外側に位置する。
センサ90は、先端部(アウトボード側端部。図1~図3の左端部)に不図示のセンサ素子をモールド固定(包埋)した円柱形状(棒状)である。センサ素子は、ホールIC、ホール素子、MR素子、GMR素子等の磁気検知素子及び波形成形回路を組み込んだICから成るものであり、センサ90の先端部にモールド固定されている。センサ90の基端(インボード側部。図1~図3の右側部。)には、センサホルダ80のホルダ平面部81が、例えば基端をホルダ平面部81に形成された貫通孔に圧入することにより一体的に結合されている。
したがって、ホルダ平面部81には、当該ホルダ平面部81を軸方向に貫通するように延びるセンサ90が固定される。そして、ホルダ平面部81がキャップ平面部44aに当接した状態で、センサ90は軸受キャップ40のセンサ挿入孔45に挿入される。
センサホルダ80のホルダ傾斜面部83には、ホルダ傾斜面部83を貫通してボルト8が挿入可能なボルト挿入孔84が設けられる。ボルト挿入孔84は、軸受キャップ40のキャップ傾斜面部44bの雌ねじ孔46と同心に配置され、当該雌ねじ孔46と連続する孔を形成する。ボルト挿入孔84は、ホルダ傾斜面部83やキャップ傾斜面部44bに対して垂直に延びている。すなわち、ボルト挿入孔84は、アウトボード側に向かうにしたがって径方向外側(使用状態では上側)に傾斜するように延びている。ボルト挿入孔84は、ホルダ傾斜面部83に埋め込まれた金属製のスリーブ85の中央の貫通孔である。
図5は、センサホルダ80及びセンサ90の成形方法を説明するための図である。図5に示すように、センサホルダ80及びセンサ90は、これらの形状に対応する移動型101及び固定型103を用いて、樹脂を射出成形することによって製造可能である。
ここで、センサホルダ80のホルダ傾斜面部83には金属製のスリーブ85が埋め込まれるため、射出成形時に移動型101が開いた状態でスリーブ85を固定型103に仮固定する必要がある。この仮固定のためにスリーブ85と同心で斜めに延びた円筒状の固定ピンを用いると成形品が型から外れなくなってしまう。そこで、本実施形態では、固定型103に設けられた突起105を、スリーブ85の貫通孔(ボルト挿入孔84)に挿入させてスリーブ85を仮止めする。そして、移動型101を閉じた状態では、スリーブ85の両端面を移動型101及び固定型103によって押さえ、溶融樹脂がスリーブ85の貫通孔内に入らないようにして射出成形が行われる。
このようにホルダ傾斜面部83に埋め込まれたスリーブ85のボルト挿入孔84は、ホルダ傾斜面部83がキャップ平面部44aに当接した状態において、雌ねじ孔46と連続する。そして、ボルト8は、ボルト挿入孔84を介して雌ねじ孔46に挿入されて螺合固定される。
ここで、センサホルダ80に係止されたセンサ90のインボード側には、外部装置とセンサ90とを接続するセンサワイヤ91が延在している。このセンサワイヤ91は、センサホルダ固定用のボルト8の締結時に、締結工具(例えば六角レンチ)を回す時の障害となり得る。しかしながら、本実施形態では、キャップ平面部44a及びホルダ平面部81に対して傾斜する(径方向内側に向かうにしたがってアウトボード側に傾斜する)キャップ傾斜面部44b及びホルダ傾斜面部83に、ボルト8が挿入螺合される雌ねじ孔46及びボルト挿入孔84が設けられるので、センサワイヤ91から離れる方向から斜めにボルト8を挿入することになる。したがって、ボルト8の締結工具を回す際の困難性やセンサワイヤ91を疵付けるリスクを低減できる。
(第2実施形態)
次に第2実施形態に係る軸受キャップについて説明する。本実施形態の軸受キャップ40は、インサートナット9がモールディングで固定されることが、第1実施形態と異なる。その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、同一の構成に関しては同一の符号を図面に付すことで、その説明を省略または簡略化する。
図6は、第2実施形態に係る軸受キャップ40及びセンサユニット70の断面図である。図7は、軸受キャップ40の断面図である。図8は、軸受キャップ40をインボード側から見た図である。図9は、インサートナット9の断面図である。図10は、軸受キャップ40の成形方法を説明するための図である。
通常、インサートナットをモールディング固定する場合、インサートナットをインサートナットピンで係止した状態で射出成型が行われる(例えば、特開2018-071775を参照)。しかしながら、本実施形態の軸受キャップ40においては、インサートナット9がキャップ傾斜面部44bに固定されるため、インサートナット9を回転軸Oから傾けた状態でモールディングする必要がある。したがって、インサートナットピンを用いると成形品が型から外れなくなる。
そこで、本実施形態では、図9に示すようなインサートナット9を用いることで、成形時にインサートナットピンを用いずにインサートナット9を軸受キャップ40にモールド固定している。本実施形態のインサートナット9は、有底構造の袋ナット10と、袋ナット10のインボード側端部(図9の下側端部)が固定されるナットホルダ11と、を含む。
袋ナット10は、その中心に雌ねじ孔46を有し、アウトボード側が塞がれた有底形状とされている。また、袋ナット10の外周面は、セレーション形状とされると共に、周溝10aが凹設されている。したがって、射出成形時に、セレーション溝と周溝10aに合成樹脂が入り込むことで、インサートナット9の回り止めや抜け止めがされる。
ナットホルダ11は、袋ナット10の軸心に対して略垂直に延びる円筒部11aと、円筒部11aの径方向外側端部から円筒部11aと垂直にインボード側に延びるフランジ部11bと、を含む断面略U字形状であり、例えば金属板をプレス加工してなる。ナットホルダ11の外径は、袋ナット10の外径よりも大きく設定されている。円筒部11aの中心に設けられた貫通孔11cには、袋ナット10のインボード側端部が締り嵌めで固定される。
このように、本実施形態のインサートナット9は、袋ナット10とナットホルダ11とからなるナット組立体を予め組み立てておき、このナット組立体としてのインサートナット9をモールディングによって軸受キャップ40に固定する。図10に示すように、軸受キャップ40は、その形状に対応する移動型111及び固定型113を用いて、インサートナット9及び金属環60を移動型111及び固定型113の間に固定した状態で、樹脂を射出成形することによって製造可能である。
軸受キャップ40のキャップ傾斜面部44bにインサートナット9を固定するため、射出成形時に移動型111が開いた状態でインサートナット9を仮固定する必要がある。そこで、本実施形態では、固定型113に設けられた突起115を、インサートナット9のナットホルダ11の円筒部11aの外周面11dに当接させ、移動型111に設けられた支持突起117を袋ナット10の底部10bに当接させる。
図11は、変形例に係る軸受キャップ40の成形方法を説明するための図である。図10に示すように、移動型111に設けられた支持突起117は、袋ナット10の底部10bよりも小径であってもよく、図11に示すように、袋ナット10の底部10bよりも大径であってもよい。
突起115は、円筒部11aの外周面11dを使用状態で下側から支持している。突起115の数は特に限定されないが、本実施形態では一対設けられている。したがって、図8に示すように、成形品である軸受キャップ40のキャップ傾斜面部44bには、一対の突起115に対応する凹部48が一対設けられる。なお、図10や図11では、一対の突起115のうち1個のみが示されている。ここで、ナットホルダ11の円筒部11aの外径は、袋ナット10の外径よりも大きく設定されているので、一対の突起115によって円筒部11aを支持し易く、突起115からインサートナット9が脱落し難い構成とされている。
そして、移動型111を閉じた状態では、インサートナット9の両端面を移動型111及び固定型113によって押さえ、溶融樹脂がインサートナット9内(貫通孔11c及び雌ねじ孔46)に入らないようにして射出成形が行われる。
このようにキャップ傾斜面部44bに埋め込まれたインサートナット9の雌ねじ孔46は、センサホルダ80が軸受キャップ40に載置された状態において、センサホルダ80のボルト挿入孔84と連続する。そして、ボルト8は、ボルト挿入孔84及び貫通孔11cを介して雌ねじ孔46に挿入されて螺合固定される。
ここで、第一実施形態と同様、センサホルダ80に係止されたセンサ90のインボード側には、外部装置とセンサ90とを接続するセンサワイヤ91が延在している。このセンサワイヤ91は、センサホルダ固定用のボルト8の締結時に、締結工具(例えば六角レンチ)を回す時の障害となり得る。しかしながら、本実施形態では、キャップ平面部44a及びホルダ平面部81に対して傾斜する(径方向内側に向かうにしたがってアウトボード側に傾斜する)キャップ傾斜面部44b及びホルダ傾斜面部83に、ボルト8が挿入螺合される雌ねじ孔46及びボルト挿入孔84が設けられるので、センサワイヤ91から離れる方向から斜めにボルト8を挿入することになる。したがって、ボルト8の締結工具を回す際の困難性やセンサワイヤ91を疵付けるリスクを低減できる。
なお、ナットホルダ11に対する袋ナット10の固定方法は、締り嵌め(圧入ナットのような台形形状も含む)や溶接(摩擦溶接も含む)等、特に限定されない。図12は、変形例に係るインサートナット9の断面図である。図13は、他の変形例に係るインサートナット9の断面図である。
図12の例では、インサートナット9の袋ナット10は、圧入ナットであり、ナットホルダ11に嵌合される嵌合部10cの外径がナットホルダ11側(インボード側。図12の下側。)に向かうにしたがって大きくなるように形成されている。そして、袋ナット10がナットホルダ11の貫通孔11cに加圧挿入されることで、ナットホルダ11の母材金属が嵌合部10cのアンダーカットに流れ込み、袋ナット10とナットホルダ11とが固定される。
図12の袋ナット10は、外周面にセレーション部や周溝10a(図9参照)を有さず、回り止めや抜け止めの機能を有さない。そこで、袋ナット10に代わり、ナットホルダ11をクランク形状や皿型形状とすることで、回り止めや抜け止めの機能を付与している。本例のナットホルダ11では、フランジ部11bのアウトボード側端部(図12の上側端部)に、径方向外側に向かう複数の凸部11eが形成される。複数の凸部11eによって、ナットホルダ11のフランジ部11b外径を菊座金のような花弁形状とすれば、回り止め機能をさらに高めることができる。
図13の例では、インサートナット9の袋ナット10は、ナットホルダ11に対して溶接部49によって接合固定される。また、袋ナット10は、外周面にセレーション部や周溝10a(図9参照)を有さず、回り止めや抜け止めの機能を有さない。そこで、図12の例と同様に、袋ナット10に代わり、ナットホルダ11をクランク形状や皿型形状とすることで、回り止めや抜け止めの機能を付与している。本例のナットホルダ11では、径方向外側に向かう複数の凸部11eを傾斜させることで、回り止め機能及び抜け止め機能を高めている。
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
1 ハブユニット軸受
2 外輪(外輪部材)
3 内輪部材
4 転動体
5 固定側フランジ
6 回転側フランジ
8 ボルト
9 インサートナット
10 袋ナット
10a 周溝
10b 底部
10c 嵌合部
11 ナットホルダ
11a 円筒部
11b フランジ部
11c 貫通孔
11d 外周面
13 エンコーダ
23a、23b 外輪軌道面
24 ハブ輪
25 内輪
26 かしめ部
27a,27b 内輪軌道面
28 支持環
29 エンコーダ本体
30 支持円筒部
31 支持円輪部
34 小径筒部
35 大径筒部
36 段差面
37 金属環円筒部
38 金属環円輪部
40 軸受キャップ
41 筒部
42 コネクタ部
43 底板部
44 インボード側面
44a キャップ平面部
44b キャップ傾斜面部
45 センサ挿入孔
46 雌ねじ孔
47 穿孔孔
48 凹部
49 溶接部
50 キャップ本体
60 金属環
70 センサユニット
80 センサホルダ
81 ホルダ平面部
83 ホルダ傾斜面部
84 ボルト挿入孔
85 スリーブ
90 センサ
91 センサワイヤ
101 移動型
103 固定型
105 突起
111 移動型
113 固定型
115 突起
117 支持突起
O 回転軸

Claims (5)

  1. インボード側端部にエンコーダを支持した内輪部材を、その径方向内側に複数個の転動体を介して回転自在に支持した外輪部材のインボード側開口を塞ぐ状態で、前記外輪部材のインボード側端部に装着される軸受キャップと、
    センサと、前記センサを保持した状態で前記軸受キャップに支持固定されるセンサホルダと、を備えたセンサユニットと、
    を備え、
    前記軸受キャップは、
    前記外輪部材のインボード側端部に固定される筒部と、
    前記筒部のインボード側を塞ぐ底板部と、
    を備え、
    前記底板部のインボード側面は、
    軸方向と垂直に延びるキャップ平面部と、
    前記キャップ平面部に対して傾斜するキャップ傾斜面部と、
    を備え、
    前記キャップ平面部のうち、前記エンコーダと軸方向に対向する部分には、前記センサを挿入するためのセンサ挿入孔が設けられ、
    前記キャップ傾斜面部には、前記センサホルダを固定するためのボルトが螺合可能な雌ねじ孔が設けられ、
    前記センサホルダは、
    軸方向と垂直に延びて、前記キャップ平面部と当接するホルダ平面部と、
    前記ホルダ平面部に対して傾斜し、前記キャップ傾斜面部と当接するホルダ傾斜面部と、
    を備え、
    前記ホルダ平面部には、前記ホルダ平面部を軸方向に貫通するように延びる前記センサが固定され、
    前記ホルダ傾斜面部には、前記雌ねじ孔と連続する孔を形成するように、前記ホルダ傾斜面部を貫通して前記ボルトが挿入可能なボルト挿入孔が設けられる、
    ことを特徴とするセンサユニット付軸受キャップ。
  2. 前記キャップ傾斜面部は、前記キャップ平面部の径方向内側端部に接続し、径方向内側に向かうにしたがってアウトボード側に傾斜し、
    前記ホルダ傾斜面部は、前記ホルダ平面部の径方向内側端部に接続し、径方向内側に向かうにしたがってアウトボード側に傾斜し、前記キャップ傾斜面部と当接する、
    請求項1に記載のセンサユニット付軸受キャップ。
  3. 前記雌ねじ孔は、前記キャップ傾斜面部に穿孔された孔に圧入された、外径がセレーション形状のインサートナットによって形成される、
    請求項1に記載のセンサユニット付軸受キャップ。
  4. 前記雌ねじ孔は、前記キャップ傾斜面部にモールド固定されたインサートナットによって形成される、
    請求項1に記載のセンサユニット付軸受キャップ。
  5. 内周面に外輪軌道面を有し、使用時に回転しない外輪部材と、
    外周面に内輪軌道面を有し、使用時に回転する内輪部材と、
    前記外輪軌道面と前記内輪軌道面との間に転動自在に設けられた複数個の転動体と、
    前記内輪部材のインボード側端部に前記内輪部材と同心に支持固定され、その特性を円周方向に関して交互に且つ等ピッチで変化させたエンコーダと、
    前記外輪部材のインボード側開口を塞ぐ状態で、前記外輪部材のインボード側端部に装着される軸受キャップと、
    前記軸受キャップに支持固定されたセンサユニットと、
    を備えたハブユニット軸受であって、
    前記軸受キャップに前記センサユニットを支持固定して成るセンサユニット付軸受キャップが、請求項1~4のいずれか1項に記載したセンサユニット付軸受キャップであることを特徴とするハブユニット軸受。
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