JP2024103025A - 原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維及びその製造方法 - Google Patents

原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】生産ロット毎の色相のバラツキが小さい原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維を得る。【解決手段】1種類以上の有機顔料から構成される着色剤を、繊維質量に対して0.1~2.5質量%含有するメタ型全芳香族ポリアミド繊維であって、該有機顔料の平均粒子径が0.12μmを越え、0.20μm未満であり、且つ該メタ型全芳香族ポリアミド繊維の色相を表すL*値、a*値、及びb*値の標準偏差が、それぞれL*値が1.0以下、a*値が0.5以下、b*値が0.3以下の原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維とする。【選択図】なし

Description

本発明は、所定の濃度に着色された原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維及びその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、平均粒子径が0.12μmを越え、0.20μm未満である有機顔料から構成される着色剤を、繊維質量に対して0.1~2.5質量%含有させることにより、着色の安定性が可及的に向上された原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維及びその製造方法に関するものである。
従来、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジハライドから製造される全芳香族ポリアミドが耐熱性及び難燃性に優れていることは周知であり、また、これらの全芳香族ポリアミドは、アミド系極性溶媒に可溶であり、全芳香族ポリアミドを該溶媒に溶解した重合体溶液から乾式紡糸、湿式紡糸、半乾半湿式紡糸等の方法により繊維となし得ることもよく知られている。
これら全芳香族ポリアミドのうち、ポリメタフェニレンイソフタルアミドで代表されるメタ型全芳香族ポリアミド(以下、「メタアラミド」と称することがある)繊維は、耐熱・難燃性繊維として特に有用なものであり、これらの特性を発揮する分野、例えば、フィルター、電子部品等の産業用途や、耐熱性、防炎性、耐炎性が重視される防護衣料等の防災安全衣料用途等に用いられている(特許文献1参照)。
特にメタ型全芳香族ポリアミド繊維が防護衣料等に使用される場合、視認性や識別性が必要となり、さらに意匠性やデザインも製品として重要な要素となっており、多彩な色相が要求される。そして、これら要求を満たすため、メタ型全芳香族ポリアミド繊維への着色方法は、繊維化後、染料を用いて染色する後染色法、或いは紡糸原液に顔料を添加して繊維化する原料着色(原着)法が知られている。
その中でも、原料着色(原着)法は、染料の浸透性に劣るメタ型全芳香族ポリアミド繊維に対し、頻繁に用いられている手法であるが、この原料着色(原着)法においては、生産ロット毎の色相のバラツキが大きいという問題があった。
このような問題を解決するため、例えば特開平1-139814号公報(特許文献2)には、平均粒径が0.4μm以下の耐熱性顔料を微細分散させることにより、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の発色性を改善する方法が開示されているが、該方法によっても、生産ロット毎の色相のバラツキを、極めて精密にコントロールすることは困難であるのが実情であった。
特開2006-016709号公報 特開平1-139814号公報
本発明の目的は、かかる従来技術における問題点を解消し、生産ロット毎の色相のバラツキを、極めて精密にコントロールできる、即ち、色再現性の高い原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、平均粒子径が極めて精密に制御された有機顔料を繊維に練り込むとき、原着繊維の色相を安定化することができ、また、顔料粒子径を小さくすることによりこれまでよりも少ない顔料使用量で同じ色相が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明によれば、
1.1種類以上の有機顔料から構成される着色剤を、繊維質量に対して0.1~2.5質量%含有するメタ型全芳香族ポリアミド繊維であって、該有機顔料の平均粒子径が0.12μmを越え、0.20μm未満であり、且つ該メタ型全芳香族ポリアミド繊維の色相を表すL*値、a*値、及びb*値の標準偏差が、それぞれL*値が1.0以下、a*値が0.5以下、b*値が0.3以下であることを特徴とする原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維、
2.下記方法により測定される、原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の、引張強度の最低値が3.0cN/dtex以上、及び引張伸度の最低値が20%以上である上記1記載の原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維、
(繊維の引張強度、引張伸度の測定方法)
JIS L 1015に基づき、インストロン社製(型番5565)引張試験機を用いて以下の条件で測定した、N=20の値の平均値を繊維の引張強度、引張伸度とした。
また、n=20の測定値の中で最も低かった値を、それそれ引張強度の最低値、引張伸度の最低値とした。
(測定条件)
つかみ間隔 :20mm
初荷重 :0.044cN/dtex
引張速度 :20mm/分
3.下記方法により測定され、下記式(1)及び(2)で示される、原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の引張強度と引張伸度それぞれの保持率が80%以上である上記1又は2記載の原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維、
引張強度保持率(%)=(原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の引張強度)/(着色剤を含まないメタ型全芳香族ポリアミド繊維の引張強度)×100 (1)
引張伸度保持率(%)=(原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の引張伸度)/(着色剤を含まないメタ型全芳香族ポリアミド繊維の引張伸度)×100 (2)
(繊維の引張強度、引張伸度の測定方法)
JIS L 1015に基づき、インストロン社製(型番5565)引張試験機を用いて以下の条件で測定した、N=20の値の平均値を繊維の引張強度、引張伸度とした。
(測定条件)
つかみ間隔 :20mm
初荷重 :0.044cN/dtex
引張速度 :20mm/分
4.原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の残存溶媒量が繊維質量全体に対して0.2質量%以下である上記1記載の原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維、
及び、
5.平均粒子径が0.12μmを越え、0.20μm未満である有機顔料から構成される着色剤を、メタ型全芳香族ポリアミド紡糸用ドープへ、メタ型全芳香族ポリアミドの質量に対して0.1~2.5質量%となるように添加した後、紡糸することを特徴とする原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法、
が提供される。
本発明の原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、生産ロット毎の色相のバラツキが小さい繊維となる。このため、難燃性、耐熱性というメタ型全芳香族ポリアミド繊維が本来持つ性質に加えて、製造が異なるロットでも繊維の色相が制御された原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維となる。
したがって、本発明に係る原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維を用いて作成された防護衣料は、以前の製造ロットと色相差がなく、色整合性の優れた耐熱性難燃作業服を得ることが可能となる。このため、消防服や耐熱性作業服などの防護衣料として好適に使用することが出来る。
以下、本発明について詳細を説明する。
本発明におけるメタ型全芳香族ポリアミドは、メタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸成分とを原料として、例えば溶液重合や界面重合させることにより製造されるポリアミドであるが、本発明の目的を阻害しない範囲で、パラ型全芳香族ポリアミド等の他の共重合成分を共重合したものであってもよい。
上記メタ型全芳香族ジアミン成分としては、メタフェニレンジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン等の全芳香族ジアミン、及びこれらの芳香環にハロゲン、炭素数1~3のアルキル基等の置換基を有する誘導体、例えば2,4-トルイレンジアミン、2,6-トルイレンジアミン、2,4-ジアミノクロルベンゼン、2,6-ジアミノクロルベンゼン等を使用することができる。なかでも、メタフェニレンジアミン又はメタフェニレンジアミンを70モル%以上含有する上記の混合ジアミンが好ましい。
また、上記メタ型芳香族ジカルボン酸成分としては、イソフタル酸クロライド、イソフタル酸ブロマイド等のイソフタル酸ハライド、及びこれらの芳香環にハロゲン、炭素数1~3のアルコキシ基等の置換基を有する誘導体、例えば3-クロルイソフタル酸クロライド、3-メトキシイソフタル酸クロライドを使用することができる。なかでも、イソフタル酸クロライド又はイソフタル酸クロライドを70モル%以上含有する上記の混合カルボン酸ハライドが好ましい。
上記のジアミン成分とジカルボン酸成分以外で使用し得る共重合成分としては、芳香族ジアミンとして、パラフェニレンジアミン、2,5-ジアミノクロルベンゼン、2,5-ジアミノブロムベンゼン、アミノアニシジン等のベンゼン誘導体、1,5-ナフチレンジアミン、4,4‘-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルケトン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられ、一方、芳香族ジカルボン酸ハライドとして、テレフタル酸クロライド、1,4-ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,6-ナフタレンジカルボン酸クロライド、4,4’-ビフェニルジカルボン酸クロライド、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸クロライド等が挙げられる。
これらの共重合成分の共重合比は、あまりに多くなりすぎるとメタ型全芳香族ポリアミドの特性が低下しやすいので、ポリアミドの全酸成分を基準として20モル%以下が好ましい。特に、好適なメタ型全芳香族ポリアミドは、全繰り返し単位の80モル%以上がメタフェニレンイソフタルアミド単位からなるポリアミドであり、なかでもポリメタフェニレンイソフタルアミドが好ましい。
このようなメタ型全芳香族ポリアミドの重合度は、30℃において97%濃硫酸を溶媒として測定した固有粘度(IV)が1.3~3.0の範囲が適当である。
次にここで得られたメタ型全芳香族ポリアミドを溶解する溶媒に溶解して紡糸ドープを調整するが、重合後メタ型全芳香族ポリアミドを単離せずそのまま紡糸ドープとすることも可能である。
ここで用いる溶媒としてアミド系溶媒を一般的に用いることができ、主なアミド系溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等を例示することができる。これらのなかでは溶解性と取り扱い安全性の観点から、NMPまたはDMAcを用いることが好ましい。
メタ型全芳香族ポリアミド溶液の濃度としては、次工程である紡糸・凝固工程での凝固速度および重合体の溶解性の観点から、適当な濃度を適宜選択すればよく、例えば、ポリマーがポリメタフェニレンイソフタルアミドで溶媒がNMPの場合には、通常は10~30質量%の範囲とすることが好ましい。
本発明においては、上記紡糸ドープに、平均粒子径が0.12μmを越え、0.20μm未満の有機顔料から構成される着色剤を添加することが肝要である。該有機顔料の平均粒子径が0.12μm以下の場合、顔料が凝固および洗浄工程で抜け出し、目標の色相が得られ難い上、色相のバラツキ抑制の効果が得られなくなる。一方、該有機顔料の平均粒子径が0.20μm以上の場合、得られる繊維の物性が低下し、引張強度、引張伸度の最低値や、引張強度保持率、引張伸度保持率が低下してしまう。
この際添加される有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、ペリノン系、ペリレン系、アンスラキノン系等の有機顔料のうち、少なくとも1種類以上が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、本発明において、上記有機顔料の平均粒径を0.12μmを越え、0.20μm未満の範囲とするためには、顔料を分級する、顔料の粘度を調整する、或いは平均粒径の大きい顔料と、平均粒径の小さい顔料とを2種或以上混合して、上記平均粒径とする方法などが例示される。
また、使用する有機顔料の、後述する方法により測定した、10質量%溶液粘度は900cp以下であることが好ましい。
メタ型全芳香族ポリアミドと顔料との混合方法は、アミド系溶媒中に顔料を均一分散したアミド系溶媒スラリーを作成し、当該アミド系溶媒スラリーをメタ型全芳香族ポリアミドがアミド系溶媒に溶解した溶液に添加する方法、あるいは顔料粉末を直接、メタ型全芳香族ポリアミドがアミド系溶媒に溶解した溶液に添加する方法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
添加する有機顔料の量は、最終的に得られる原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の質量に対して0.1~2.5質量%となるように添加する。有機顔料の含有量が2.5質量%より多い場合は、得られる繊維の物性が低下する。また、有機顔料の含有量が0.1質量%より少ない場合は、得られる繊維の色相が淡くなり、JISL0843に準拠した耐光性評価で、目標の3級未満となる。有機顔料の含有量の好ましい範囲は、0.5~2.1質量%である。
このようにして得られた紡糸液(原着メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)は、例えば以下の工程を経て、繊維に成形される。
上記のとおり調製された紡糸ドープを凝固液中へ紡出し凝固させる。紡糸装置としては特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置を使用することができる。また、安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態、孔形状等は特に制限する必要はなく、例えば、孔数が500~30000個、紡糸孔径が0.05~0.2mmのスフ用の多ホール紡糸口金等を用いてもよい。
また、紡糸口金から紡出する際の紡糸ドープの温度は、10~90℃の範囲が適当である。本発明の繊維を得るために用いる凝固浴の例としては、無機塩を含まないアミド系溶媒の濃度45~60質量%の水溶液を、浴液の温度10~35℃の範囲で用いる。アミド系溶媒の濃度が45質量%未満ではスキン層が厚い構造となってしまい、洗浄工程における洗浄効率が低下し、最終繊維に溶媒が残存することとなる場合がある。また、アミド系溶媒の濃度が60質量%を超える場合には、繊維内部に至るまで均一な凝固を行うことができず、このため、繊維成形加工時に単糸が切断するなどの不具合が多く発生することがある。
なお、凝固浴中への繊維の浸漬時間は、0.1~30秒の範囲が適当である。次に凝固浴にて凝固して得られた繊維が可塑状態にあるうちに、可塑延伸浴中にて繊維を延伸処理する。可塑延伸浴液としては特に限定されるものではなく、従来公知の浴液を採用することができる。
本発明の繊維を得るためには、可塑延伸浴中の延伸倍率を、3.5~5.0倍の範囲とする必要があり、さらに好ましくは3.7~4.5倍の範囲とする。本発明の繊維の製造においては、可塑延伸浴中にて特定倍率の範囲で可塑延伸することにより、凝固糸中からの脱溶剤を促進することができる。可塑延伸浴中での延伸倍率が3.5倍未満である場合には、凝固糸中からの脱溶剤が不十分となる場合がある。また、破断強度が不十分となり、紡績工程等の加工工程における取り扱いが困難となる場合がある。一方で、延伸倍率が5.0倍を超える場合には、単糸切れが発生するため、工程安定性が悪くなる場合がある。
可塑延伸浴の温度は、10~90℃の範囲が好ましい。好ましくは温度20~90℃の範囲にあると、工程安定性がよい。
次に、繊維中に残留している溶剤を洗浄する。この工程においては、可塑延伸浴にて延伸された繊維を、十分に洗浄する。洗浄は、得られる繊維の品質面に影響を及ぼすことから、多段で行うことが好ましい。特に、洗浄工程における洗浄浴の温度および洗浄浴液中のアミド系溶媒の濃度は、繊維からのアミド系溶媒の抽出状態および洗浄浴からの水の繊維中への浸入状態に影響を与える。このため、これらを最適な状態とする目的においても、洗浄工程を多段とし、温度条件およびアミド系溶媒の濃度条件を制御することが好ましい。
洗浄の温度条件およびアミド系溶媒の濃度条件については、最終的に得られる繊維の品質を満足できるものであれば、特に限定されるものではない。ただし、最初の洗浄浴を60℃以上の高温とすると、水の繊維中への浸入が一気に起こるため、繊維中に巨大なボイドが生成し、品質の劣化を招く。このため、最初の洗浄浴は、30℃以下の低温とすることが好ましい。
得られた繊維中に溶媒が残っている場合、該繊維の難燃性を低下させる上に、該繊維を用いた製品の加工、および当該繊維を用いて形成された製品の使用における環境安全性においても好ましくない。このため、本発明に用いられる繊維に含まれる溶媒量は、0.2質量%以下であり、より好ましくは0.15質量%以下であり、0.1質量%以下であることが特に好ましい。
次に、乾熱処理工程においては、洗浄工程を経た繊維を、乾燥・熱処理する。乾熱処理の方法としては特に限定されるものではないが、例えば、熱ローラー、熱板等を用いる方法を挙げることができる。乾熱処理を経ることにより、最終的に、本発明に用いられるメタ型全芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。
本発明に用いられる視認性の高いメタ型全芳香族ポリアミド繊維を得るためには、乾燥のために100℃での乾熱処理を実施した後に、280~310℃の範囲で1回につき5秒以下で少なくとも2回以上繰り返し乾熱処理することが好ましく、290~300℃の範囲で実施することがさらに好ましい。熱処理温度が280℃未満の場合には、繊維の結晶化が不十分となり、繊維の収縮性が高くなる場合がある。280~310℃の範囲で行う乾熱処理は、得られる繊維の破断強度の向上に寄与する。
乾熱処理が施されたメタ型全芳香族ポリアミド繊維には、必要に応じて、さらに捲縮加工を施してもよい。さらに、捲縮加工後は、適当な繊維長に切断し、次工程に提供してもよい。また、場合によっては、マルチフィラメントヤーンとして巻き取ってもよい。
かくして得られた本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、平均粒子径が0.12μmを越え、0.20μm未満の有機顔料から構成される着色剤を、繊維質量に対して0.1~2.5質量%含有しており、該メタ型全芳香族ポリアミド繊維の色相を表すL*値、a*値、及びb*値の標準偏差が、それぞれL*値が1.0以下、a*値が0.5以下、b*値が0.3以下であることを特徴とする。
L*値、a*値、及びb*値の標準偏差が上記範囲を外れる場合は、ロット毎の色相が大きくずれ(色差ΔEが2以上となる)、色整合性に優れた防護衣料などが製造できなくなる。
また、本発明の原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の、後述の方法により測定された引張強度の最低値は3.0cN/dtex以上、及び引張伸度の最低値は20%以上であることが好ましい。
引張強度の最低値、及び引張伸度の最低値が上記値を満足できない場合、弱糸の発生により、織物にしたときに、特に引裂強力が規格を大きく外れる場合がある。
さらに、後述の方法により測定され、下記式(1)及び(2)で示される、本発明の原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の引張強度と引張伸度それぞれの保持率は80%以上であることが好ましい。
引張強度保持率(%)=(原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の引張強度)/(着色剤を含まないメタ型全芳香族ポリアミド繊維の引張強度)×100 (1)
引張伸度保持率(%)=(原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の引張伸度)/(着色剤を含まないメタ型全芳香族ポリアミド繊維の引張伸度)×100 (2)
引張強度保持率、及び引張伸度保持率が上記値を満足できない場合、弱糸の発生により、織物にしたときに、特に引裂強力が規格を大きく外れる場合がある。
以下、本発明について詳細を説明する。
実施例および比較例により、本発明詳細に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例及び比較例に制限されるものではない。また、実施例中の各物性は以下の方法により測定した。
<原綿の色斑>
各実施例及び比較例に従い、2時間生産した際の原綿を目視で観察し、以下のような判断基準の下、〇、△、×の3段階で評価した。
〇:採取した原綿の中で、他と色が明らかに異なる箇所の数が0~5
△:採取した原綿の中で、他と色が明らかに異なる箇所の数が6~10
×:採取した原綿の中で、他と色が明らかに異なる箇所の数が11以上
<原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維製造工程における顔料配管の詰まり>
原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維製造工程において、有機顔料が通過している配管の詰まりについて、目視で観察し、次のような判断基準の下、〇、×の2段階で評価した。
〇:原綿を2時間生産した際、配管が詰まらなかった。
△:原綿を2時間生産した際、配管が詰まった。
<繊維中の顔料の平均粒子径:試料の作成及び観察方法>
(1)原綿をシリコーン平板に固定後、エポキシ樹脂で5日間包埋する。
(2)ウルトラミクロトームULTRACUT-Sで、繊維軸に垂直に約90nmの厚みで薄切後、コロジオン膜を張ったグリッドに載台する。
(3)透過電子顕微鏡TECNAI G2(FEI製)を用いて加速電圧120kvで観察・撮影し、各サンプルの糸2本の横断面の外側表層部(4視野)と中心部(2視野)を観察し(0.5μmマーカー)、n=20の顔料をマークした後、画像処理ソフト(Nexus NewQube)により円相当径を求め、これを平均粒子径とした。
<繊維の色相>
分光色彩計 SD7000(日本電色工業製)を用いて、異なる10か所についてL*値、色度a*値、b*値を測定した。更にそれらの測定結果について、それぞれ標準偏差を算出した。
<繊維の引張強度、引張伸度>
JIS L 1015に基づき、インストロン社製(型番5565)引張試験機を用いて以下の条件で測定した、N=20の値の平均値を繊維の引張強度、引張伸度とした。
また、n=20の測定値の中で最も低かった値を、それそれ引張強度の最低値、引張伸度の最低値とした。
(測定条件)
つかみ間隔 :20mm
初荷重 :0.044cN/dtex
引張速度 :20mm/分
<有機顔料の粘度>
有機顔料をDMAcで希釈して10%の溶液を作成し、B型粘度計で粘度を測定した。EKO INSTRUMENT製DV-II+Proモデル、スピンドル6、60rpmで測定を行った。測定容器は、100mlスクリュー瓶で内径3.5cm、高さ10cmを用いた。環境温度は、30℃で実施した。
<残存溶媒量の測定方法>
繊維を約8.0g採取し、105℃で120分間乾燥させた後にデシケーター内で放冷し、繊維質量(M1)を秤量する。続いて、この繊維について、メタノール中で1.5時間、ソックスレー抽出器を用いて還流抽出を行い、繊維中に含まれるアミド系溶媒の抽出を行う。抽出を終えた繊維を取り出して、150℃で60分間真空乾燥させた後にデシケーター内で放冷し、繊維質量(M2)を秤量する。繊維中に残存する溶媒量(アミド系溶媒質量)N(%)は、得られるM1およびM2を用いて、下記式により算出する。
N(%)=[(M1-M2)/M1]×100
[実施例1]
[紡糸液調整工程]
乾燥窒素雰囲気下の反応容器に、水分率が100ppm以下のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)721.5質量部を秤量し、このDMAc中にメタフェニレンジアミン97.2質量部(50.18モル%)を溶解して0℃に冷却した。この冷却したDMAc溶液に、さらにイソフタル酸クロライド(以下IPCと略す)181.3質量部(49.82モル%)を徐々に攪拌しながら添加し、重合反応を行った。
次に、平均粒子径が10μm以下の水酸化カルシウム粉末を66.6質量部秤量し、重合反応が完了したポリマー溶液に対してゆっくり加え、中和反応を実施した。水酸化カルシウムの投入が完了した後、さらに40分間攪拌し、透明なポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液からポリメタフェニレンイソフタルアミドを単離して固有粘度(I.V.)を測定したところ、1.65であった。
また、ポリマー溶液中のポリマー濃度は17%であった。該ポリマー溶液に、平均粒子径が0.22μmのPigment Blue 15顔料70gに、平均粒子径が0.01μmのPigment Blue 15:1顔料30gを混ぜることにより得た、平均粒子径が0.16μmのPigment Blue 15顔料を、ポリマー質量対比2.0質量%均一分散させ、減圧脱法して紡糸液(紡糸ドープ)を作製した。
[紡糸・凝固工程]
上記紡糸ドープを、孔径0.07mm、孔数500の紡糸口金から、浴温度30℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固液の組成は、水/DMAc=45/55(質量部)であり、凝固浴中に糸速7m/分で吐出して紡糸した。
[可塑延伸浴延伸工程]
引き続き、温度40℃の水/DMAc=45/55(質量部)の組成の可塑延伸浴中にて、3.7倍の延伸倍率で延伸を行った。
[洗浄工程]
延伸後、20℃の水/DMAc=70/30(質量部)の浴(浸漬長1.8m)、続いて20℃の水浴(浸漬長3.6m)で洗浄し、さらに60℃の温水浴(浸漬長5.4m)に通して十分に洗浄を行った。
[乾熱処理工程]
洗浄後の繊維について、表面温度300℃の熱ローラーにて乾熱処理を施し、原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。
[捲縮、カット工程]
得られた原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維クリンパーに通して捲縮を付与した後、カッターでカットして51mmの短繊維とすることにより、原着メタ型全芳香族ポリアミド原綿を得た。得られた原綿についての各種測定結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1の紡糸液調整工程において、ポリマー溶液に、平均粒子径が0.22μmのPigment Blue 15顔料52gに、平均粒子径が0.01μmのPigment Blue 15:3顔料48gを混ぜることにより得た、平均粒子径が0.12μmのPigment Blue 15顔料を、ポリマー質量対比2.0質量%均一分散させた以外は、実施例1と同様に実施して原着メタ型全芳香族ポリアミド原綿を製造した。得られた原綿の各種測定結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1の紡糸液調整工程において、ポリマー溶液に、平均粒子径が0.25μmのPigment Blue 15粉末を、ポリマー質量対比2.0質量%均一分散させた以外は、実施例1と同様に実施して原着メタ型全芳香族ポリアミド原綿を製造した。得られた原綿の各種測定結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1の紡糸液調整工程において、ポリマー溶液に、平均粒子径が0.20μmのPigment Blue 15粉末を、ポリマー質量対比2.0質量%均一分散させた以外は、実施例1と同様に実施して原着メタ型全芳香族ポリアミド原綿を製造した。得られた原綿の各種測定結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例1の紡糸液調整工程において、ポリマー溶液に、平均粒子径が0.22μmのPigment Blue 15顔料50gに、平均粒子径が0.50μmのPigment Blue 15:1顔料50gを混ぜることにより得た、平均粒子径が0.36μmのPigment Blue 15顔料を、ポリマー質量対比2.0質量%均一分散させた以外は、実施例1と同様に実施して原着メタ型全芳香族ポリアミド原綿を製造した。得られた原綿の各種測定結果を表1に示す。
[比較例4]
実施例1の紡糸液調整工程において、ポリマー溶液に顔料を分散させなかった以外は、実施例1と同様に実施してメタ型全芳香族ポリアミド原綿を製造した。得られた原綿の各種測定結果を表1に示す。
[比較例5]
実施例1の紡糸液調整工程において、ポリマー溶液に、平均粒子径が0.06μmのPigment Blue 15顔料を、ポリマー質量対比2.0質量%均一分散させた以外は、実施例1と同様に実施して原着メタ型全芳香族ポリアミド原綿を製造した。得られた原綿の各種測定結果を表1に示す。
[比較例6]
実施例1の紡糸液調整工程において、ポリマー溶液に、実施例1と同様の方法により得た、平均粒子径が0.15μmのPigment Blue 15粉末を、ポリマー質量対比3.0質量%均一分散させた以外は、実施例1と同様に実施して原着メタ型全芳香族ポリアミド原綿を製造した。得られた原綿の各種測定結果を表1に示す。
本発明によれば、生産ロット毎の色相のバラツキが小さい原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維が得られるので、該繊維を用いて防護衣料などを作成した場合、以前の製造ロットと色相差がなく、色整合性の優れた耐熱性難燃作業服を得ることが可能となるので、産業上の利用可能性は高く、その工業的価値は極めて大きい。

Claims (5)

  1. 1種類以上の有機顔料から構成される着色剤を、繊維質量に対して0.1~2.5質量%含有するメタ型全芳香族ポリアミド繊維であって、該有機顔料の平均粒子径が0.12μmを越え、0.20μm未満であり、且つ該メタ型全芳香族ポリアミド繊維の色相を表すL*値、a*値、及びb*値の標準偏差が、それぞれL*値が1.0以下、a*値が0.5以下、b*値が0.3以下であることを特徴とする原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維。
  2. 下記方法により測定される、原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の、引張強度の最低値が3.0cN/dtex以上、及び引張伸度の最低値が20%以上である請求項1記載の原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維。
    (繊維の引張強度、引張伸度の測定方法)
    JIS L 1015に基づき、インストロン社製(型番5565)引張試験機を用いて以下の条件で測定した、N=20の値の平均値を繊維の引張強度、引張伸度とした。
    また、n=20の測定値の中で最も低かった値を、それそれ引張強度の最低値、引張伸度の最低値とした。
    (測定条件)
    つかみ間隔 :20mm
    初荷重 :0.044cN/dtex
    引張速度 :20mm/分
  3. 下記方法により測定され、下記式(1)及び(2)で示される、原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の引張強度と引張伸度それぞれの保持率が80%以上である請求項1又は2記載の原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維。
    引張強度保持率(%)=(原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の引張強度)/(着色剤を含まないメタ型全芳香族ポリアミド繊維の引張強度)×100 (1)
    引張伸度保持率(%)=(原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の引張伸度)/(着色剤を含まないメタ型全芳香族ポリアミド繊維の引張伸度)×100 (2)
    (繊維の引張強度、引張伸度の測定方法)
    JIS L 1015に基づき、インストロン社製(型番5565)引張試験機を用いて以下の条件で測定した、N=20の値の平均値を繊維の引張強度、引張伸度とした。
    (測定条件)
    つかみ間隔 :20mm
    初荷重 :0.044cN/dtex
    引張速度 :20mm/分
  4. 原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の残存溶媒量が繊維質量全体に対して0.2質量%以下である請求項1記載の原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維。
  5. 平均粒子径が0.12μmを越え、0.20μm未満である有機顔料から構成される着色剤を、メタ型全芳香族ポリアミド紡糸用ドープへ、メタ型全芳香族ポリアミドの質量に対して0.1~2.5質量%となるように添加した後、紡糸することを特徴とする原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法。
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