JP2024079351A - 塗装物品およびその製造方法 - Google Patents

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貴和 山根
圭一 岡本
浩司 寺本
隆治 野中
一光 玉井
英一 河瀬
辰夫 常岡
隆臣 松田
智宏 藤本
夏海 三村
尊元 中本
有子 ▲濱▼田
勇貴 重松
健志 丸王
一樹 辻原
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Abstract

【課題】優れた色の深み感を有する塗装物品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】被塗物および複層塗膜を備え、前記複層塗膜は、光輝性顔料を含む光輝性塗膜と着色顔料を含む着色塗膜とクリヤー塗膜とを備え、前記複層塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L 15と、前記光I45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L 110との比(L 15/L 110)が、5以上9以下であり、前記光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 15と、前記光I45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 110との比(C 15/C 110)が、8以上12以下である、塗装物品。
【選択図】図1

Description

本発明は、塗装物品およびその製造方法に関する。
自動車塗装などの工業製品分野においては、利用者の好みに応じた、多彩な色彩および意匠性が求められている。このような意匠の一例として、光輝性顔料および/または着色顔料を含む塗膜の上に、着色顔料を含むカラークリヤー塗膜を積層した複層塗膜が挙げられる(特許文献1)。
特開2014-042891号公報
このような複層塗膜は、上層に設けられたカラークリヤー塗膜を通して、下層の塗膜の色彩および/または反射光を視認することができるため、色の深みが感じられる。
本発明の課題は、さらに優れた色の深み感を有する塗装物品およびその製造方法を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]
被塗物および複層塗膜を備える塗装物品であって、
前記複層塗膜は、
前記被塗物上に形成され、光輝性顔料を含む光輝性塗膜と、
前記光輝性塗膜上に形成され、着色顔料を含む着色塗膜と、
前記着色塗膜上に形成されたクリヤー塗膜と、を備え、
前記複層塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L 15と、前記光I45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L 110との比(L 15/L 110)が、5以上9以下であり、
前記光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 15と、前記光I45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 110との比(C 15/C 110)が、8以上12以下である、塗装物品。
[2]
前記光輝性塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光GI45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づく明度GL 15と、前記光GI45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づく明度GL 110との比(GL 15/GL 110)が、15以上25以下であり、
前記光GI45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度GC 15と、前記光GI45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度GC 110との比(GC 15/GC 110)が、15以上35以下である、上記[1]に記載の塗装物品。
[3]
前記光輝性塗膜の厚さは、3μm以上7μm以下である、上記[1]または[2]に記載の塗装物品。
[4]
前記光輝性顔料は、鱗片状アルミニウム粒子を含む、上記[1]または[2]に記載の塗装物品。
[5]
前記鱗片状アルミニウム粒子は、平均粒子径が8μm以上13μm以下であり、かつ、厚さが0.08μm以上0.2μm以下である、上記[4]に記載の塗装物品。
[6]
前記光輝性顔料は、蒸着酸化クロムを含む、上記[1]または[2]に記載の塗装物品。
[7]
被塗物上に光輝性顔料を含む光輝性顔料分散体を塗装して、未硬化の光輝性塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の光輝性塗膜上に着色顔料を含む着色塗料を塗装して、未硬化の着色塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の着色塗膜上にクリヤー塗料を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の光輝性塗膜、前記未硬化の着色塗膜および前記未硬化のクリヤー塗膜を硬化させて複層塗膜を得る工程と、を備え、
前記複層塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L 15と、前記光I45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L 110との比(L 15/L 110)が、5以上9以下であり、
前記光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 15と、前記光I45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 110との比(C 15/C 110)が、8以上12以下である、塗装物品の製造方法。
[8]
前記光輝性顔料分散体の固形分含有率は、16質量%以上20質量%以下である、上記[7]に記載の塗装物品の製造方法。
[9]
前記クリヤー塗料は、水酸基含有樹脂およびポリイソシアネート化合物を含む2液型塗料である、上記[7]または[8]に記載の塗装物品の製造方法。
本発明によれば、特に優れた色の深み感を有する塗装物品およびその製造方法を提供することができる。
受光角度を説明する図である。
[塗装物品]
色の「深み」とは、例えば、色の「奥行き」あるいは「立体性」と言い換えられる。見る角度によって色の明るさ(明度)および色の鮮やかさ(彩度)が大きく変化すると、その色の奥行きあるいは立体性が感じられ、深い色であると感じることができる。
明度および彩度は、それぞれ異なる色の性質(属性)を表わしている。一般に、明度が高くなると彩度は低下する。つまり、明度の変化率と彩度の変化率とは背反関係にある。
本開示の塗装物品は、大きな明度変化率と大きな彩度変化率との両立を実現する。本開示の塗装物品は、被塗物および複層塗膜を備え、複層塗膜は、被塗物上に形成され、光輝性顔料を含む光輝性塗膜と、光輝性塗膜上に形成され、着色顔料を含む着色塗膜と、着色塗膜上に形成されたクリヤー塗膜と、を備える。複層塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L 15と、光I45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L 110との比(L 15/L 110)は、5以上9以下である。さらに、光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 15と、光I45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 110との比(C 15/C 110)は、8以上12以下である。これにより、優れた色の深み感が得られる。
(明度L 15、L 110
本開示では、複層塗膜の明度の変化率を、明度L 15と明度L 110との比(L 15/L 110)により表わす。本開示において、複層塗膜のL 15/L 110は、5以上9以下である。L 15/L 110がこの範囲であるということは、見る角度によって、明度Lが大きく変化すると言える。
明度L 15は、クリヤー塗膜側から複層塗膜に入射角45°で入射した光I45を、その正反射光に対して15°の角度で受光した分光反射率から計算された、Lh表色系における明度Lである。明度L 110も同様に、クリヤー塗膜側から複層塗膜に入射角45°で入射した光I45を、その正反射光に対して110°の角度で受光した分光反射率から計算された、Lh表色系における明度Lである。
h表色系において、Lは明度を、Cは彩度を、hは色相角度を表わす。明度Lの数値が増加するに従い被測定物質の明るさが増し、その数値が小さくなるに従い暗さが増す。
15/L 110は、5.5以上であってよく、6以上であってよく、6.5以上であってよい。L 15/L 110は、8.5以下であってよく、8以下であってよく、7.5以下であってよい。
h表色系は、CIELb表色系(CIE1976L色空間)に基づいて算出される。CIE1976L色空間は、JIS Z 8781-4に準拠して求めることができる。CIELb表色系は、国際照明委員会により定められており、Section 4.2 of CIE Publication 15.2 (1986) に記載されている。明度L 15および明度L 110は、例えば、マルチアングル測色器(例えば、BYK-mac i、BYK-Gardner社製)を用いて取得することができる。
光受光角15°は、いわゆるハイライト条件であって、シェードおよびフェース条件よりも明度Lは高くなり易い。明度L 15は、より明るさを感じ易い条件における明度を表わしていると言える。明度L 15は、明度の変化率が大きくなり易い点で、10以上であってよく、15以上であってよい。明度L 15は、同様の観点から、30以下であってよく、25以下であってよい。
光受光角110°は、いわゆるシェード条件であり、明度L 110は、より明るさを感じ難い条件における明度を表わしていると言える。明度L 110は、同様の観点から、0以上であってよく、2以上であってよい。明度L 110は、同様の観点から、6以下であってよく、4以下であってよい。
(彩度C 15、C 110
本開示では、複層塗膜の彩度の変化率を、彩度C 15と彩度C 110との比(C 15/C 110)により表わす。本開示において、複層塗膜のC 15/C 110は、8以上12以下である。C 15/C 110がこの範囲であるということは、見る角度によって、彩度Cが大きく変化すると言える。
彩度C 15は、クリヤー塗膜側から複層塗膜に入射角45°で入射した光I45を、その正反射光に対して15°の角度で受光した分光反射率から計算された、Lh表色系における彩度Cである。彩度C 110も同様に、クリヤー塗膜側から複層塗膜に入射角45°で入射した光I45を、その正反射光に対して110°の角度で受光した分光反射率から計算された、Lh表色系における彩度Cである。
h表色系において、彩度Cが大きくなるほど鮮やかさが増し、小さくなるにつれてくすみが増加する。
15/C 110は、8.5以上であってよく、9以上であってよい。C 15/C 110は、11以下であってよく、10以下であってよい。
彩度C 15は、彩度の変化率が大きくなり易い点で、35以上であってよく、40以上であってよい。彩度C 15は、同様の観点から、55以下であってよく、50以下であってよい。
彩度C 110は、同様の観点から、1以上であってよく、3以上であってよい。彩度C 110は、同様の観点から、9以下であってよく、7以下であってよい。
図1は、受光角度を説明する図である。複層塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光I45の正反射光は、Rで示されている。光I45の正反射光に対して15度の角度で受光される光は、R15で示されている。光R15の分光反射率から、明度L 15および彩度C 15が計算される。光I45の正反射光に対して110度の角度で受光される光は、R110で示されている。光R110の分光反射率から、明度L 110および彩度C 110が計算される。
(粒子感Si15
色の深み感を高めるには、複層塗膜による光の乱反射が小さいことが望ましい。例えば、複層塗膜に入射角15°で入射した光を、複層塗膜の法線方向から撮像し、特定の画像解析アルゴリズムで解析することにより求められる値(以下、粒子感Si15と称する。)が4以下であると、色の深み感がより高まる。上記の画像解析アルゴリズムには、明るさレベルのヒストグラムが用いられる。
粒子感Si15は、マルチアングル測色器(例えば、BYK-mac i、BYK-Gardner社製)を用いて取得することができる。Si15値は、異なる5つの試料の粒子感Si15の平均値である。
粒子感Si15は、3.6以下であってよく、3.3以下であってよい。粒子感Si15は、2.4以上であってよく、2.7以上であってよい。
(被塗物)
被塗物としては、例えば、乗用車、トラック、バスなどの車体の少なくとも一部が挙げられる。被塗物の材質としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛またはこれらの合金を含む金属が挙げられる。被塗物は、板状であってもよいし、立体形状を有していてもよい。本開示に係る塗装物品は、例えば、自動車の少なくとも一部を構成する。
被塗物は、脱脂処理および/または表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、リン酸塩処理、クロメート処理、ジルコニウム化成処理、複合酸化物処理が挙げられる。金属材は、表面処理後、電着塗料によって下塗り塗装されていてよい。電着塗料は、カチオン型であってよく、アニオン型であってよい。
(光輝性塗膜)
光輝性塗膜は、光輝性顔料を含む。光輝性塗膜は、被塗物の質感および色彩を隠蔽するとともに、複層塗膜に金属調の質感を与える。光輝性塗膜の明度および彩度の変化率は、複層塗膜の明度および彩度の変化率に影響を与える。光輝性塗膜は、光輝性顔料分散体(X)により形成される。光輝性顔料分散体(X)については後述する。
<明度GL 15、GL 110
光輝性塗膜の明度の変化率は、明度GL 15と明度GL 110との比(GL 15/GL 110)により表わすことができる。
明度GL 15は、光輝性塗膜に入射角45°で入射した光GI45を、その正反射光に対して15°の角度で受光した分光反射率から計算された、Lh表色系における明度Lである。明度GL 110も同様に、光輝性塗膜に入射角45°で入射した光GI45を、その正反射光に対して110°の角度で受光した分光反射率から計算された、Lh表色系における明度Lである。明度GLは、被塗物に硬化後の光輝性塗膜のみが配置された塗板を用いて測定される。
光輝性塗膜の明度GL 15と明度GL 110との比(GL 15/GL 110)は、例えば、15以上25以下である。GL 15/GL 110がこの範囲であると、複層塗膜の明度の変化率がより大きくなり易い。
GL 15/GL 110は、17以上であってよく、18以上であってよい。GL 15/GL 110は、24以下であってよく、23以下であってよい。
明度GL 15は、明度の変化率が大きくなり易い点で、35以上であってよく、40以上であってよい。明度GL 15は、同様の観点から、55以下であってよく、50以下であってよい。
明度GL 110は、同様の観点から、1以上であってよく、2以上であってよい。明度GL 110は、同様の観点から、11以下であってよく、9以下であってよい。
<彩度GC 15、GC 110
光輝性塗膜の彩度の変化率は、彩度GC 15と彩度GC 110との比(C 15/C 110)により表わすことができる。
彩度GC 15は、光輝性塗膜に入射角45°で入射した光GI45を、その正反射光に対して15°の角度で受光した分光反射率から計算された、Lh表色系における彩度Cである。彩度GC 110も同様に、光輝性塗膜に入射角45°で入射した光GI45を、その正反射光に対して110°の角度で受光した分光反射率から計算された、Lh表色系における彩度Cである。彩度GCは、被塗物に硬化後の光輝性塗膜のみが配置された塗板を用いて測定される。
GC 15/GC 110は、例えば、15以上35以下である。GC 15/GC 110がこの範囲であると、複層塗膜の彩度の変化率がより大きくなり易い。
GC 15/GC 110は、18以上であってよく、20以上であってよく、22以上であってよい。GC 15/GC 110は、32以下であってよく、30以下であってよく、27以下であってよい。
彩度GC 15は、彩度の変化率が大きくなり易い点で、15以上であってよく、20以上であってよい。彩度GC 15は、同様の観点から、35以下であってよく、30以下であってよい。
彩度GC 110は、同様の観点から、0以上であってよく、0.5以上であってよい。彩度GC 110は、同様の観点から、2以下であってよく、1.5以下であってよい。
特に、光輝性塗膜の明度GL 15と明度GL 110との比(GL 15/GL 110)が15以上25以下であって、かつ彩度GC 15と彩度GC 110との比(GC 15/GC 110)が5以上35以下であってよい。
<隠蔽性>
色の深み感は、光輝性塗膜の隠蔽性が高いほど向上し得る。下地(被塗物)の色彩の影響が小さくなるためである。
光輝性塗膜の隠蔽性は、例えば、白黒隠蔽膜厚により評価される。白黒隠蔽膜厚は、JIS K 5600-4-1(b)に準拠した隠蔽率試験紙を用いて測定される。隠蔽率測定紙が有する2×2cm角の白黒の市松模様上に、乾燥膜厚の勾配ができるように、光輝性顔料分散体をスプレー塗装し、その後、加熱硬化させる。次いで、目視により、白黒の市松模様が透けて見えない限界の塗膜部位を判定し、その部位の膜厚を測定する。この測定された膜厚が白黒隠蔽膜厚である。白黒隠蔽膜厚が小さいほど、隠蔽性が高いと言える。
光輝性塗膜の白黒隠蔽膜厚は、9μm以下であってよく、7μm以下であってよく、6μm以下であってよい。この場合、光輝性塗膜は高い隠蔽性を有すると言える。
<光線透過率>
光線透過率は、低いことが望ましい。金属製の被塗物に通常、形成される電着塗膜は、耐光性が低い。光輝性塗膜の光線透過率が低いことにより、電着塗膜に到達する光線量が低減できて、電着塗膜の劣化が抑制される。これにより、光輝性塗膜の電着塗膜との界面における剥離が抑制される。
光輝性塗膜の波長400~700nmの光線の透過率は、0.25%以下であってよく、0.15%以下であってよく、0.10%以下であってよい。この場合、光輝性塗膜は低い光線透過率を有すると言える。400~700nmのいずれの波長においても、光線透過率が0.15%以下であってよい。
光輝性塗膜の光線透過率は、光輝性顔料分散体により形成されたフィルム(硬化後の光輝性塗膜単体)に対して、分光光度計(日立社製U-3310)を用いて、波長400~700nmの光線を照射して、10nm毎に測定される。
<光輝性顔料>
光輝性顔料は、光を反射する限り特に限定されない。
光輝性顔料としては、例えば、金属粒子が挙げられる。具体的には、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ、酸化アルミニウム、酸化クロムおよびこれらを含む合金の粒子が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。光輝性顔料は、着色されていてもよい。
乱反射が抑制され易い点で、鱗片状の光輝性顔料であってよく、鱗片状の金属粒子であってよい。鱗片状光輝性顔料のアスペクト比は、例えば、2以上である。アスペクト比は、鱗片状光輝性顔料の一方の主面の長径と、鱗片状光輝性顔料の2つの主面の間の距離(厚さ)との比(長径/厚さ)である。鱗片状光輝性顔料のアスペクト比は、10以上1000以下であってよい。
光輝性塗膜は、鱗片状光輝性顔料とともに鱗片状光輝性顔料以外の他の光輝性顔料(アスペクト比が2未満の光輝性顔料)を含んでいてもよい。ただし、他の光輝性顔料の含有量は、全光輝性顔料の10質量%以下であってよく、5質量%以下であってよい。
少量で高い光輝感が得られる点で、鱗片状のアルミニウム粒子であってよく、蒸着法により製膜された後、粉砕されて得られた鱗片状の酸化クロム(蒸着酸化クロム)であってよい。
鱗片状のアルミニウム粒子と蒸着酸化クロムとを併用してよい。この場合、配合比は、質量基準で、鱗片状のアルミニウム粒子/蒸着酸化クロム=99/1~90/10であってよい。
鱗片状のアルミニウム粒子の平均粒子径は、光輝感が向上し易い点で、8μm以上13μm以下であってよい。鱗片状のアルミニウム粒子の平均粒子径は、8.2μm以上であってよく、8.5μm以上であってよい。鱗片状のアルミニウム粒子の平均粒子径は、12.8μm以下であってよく、12.5μm以下であってよい。
平均粒子径は、体積平均粒子径D50を意味する。体積平均粒子径D50は、レーザ回折・散乱方式の粒度分布測定装置(例えば、日機装社製、「マイクロトラックUPA150」)を用いた体積基準の粒度分布における、50%平均粒子径(D50)である。
鱗片状のアルミニウム粒子の厚さは、0.08μm以上0.2μm以下であってよい。これにより、光輝性塗膜を薄くすることが出来て、光輝感がさらに向上し得る。鱗片状のアルミニウム粒子の厚さは、0.09μm以上であってよく、0.1μm以上であってよい。鱗片状のアルミニウム粒子の厚さは、0.19μm以下であってよく、0.18μm以下であってよい。
鱗片状光輝性顔料の厚さは、複層塗膜の厚さ方向の断面を電子顕微鏡で観察することにより算出してもよい。観察視野において、光輝性顔料に対応する領域とそれ以外の領域とを画像処理ソフトにより二値化する。次いで、任意に20個の光輝性顔料を選出し、その最も厚い部分の長さをそれぞれ測定する。これら測定値の平均値が、鱗片状光輝性顔料の厚さである。
鱗片状アルミニウム粒子は、平均粒子径が8μm以上13μm以下であり、かつ、厚さが0.08μm以上0.2μm以下であってよい。
蒸着酸化クロムの平均粒子径は、10μm以上20μm以下であってよい。蒸着酸化クロムの平均粒子径は、11.0μm以上であってよく、12.0μm以上であってよい。蒸着酸化クロムの平均粒子径は、19.0μm以下であってよく、16.0μm以下であってよい。
蒸着酸化クロムの厚さは、0.01μm以上0.3μm以下であってよい。蒸着酸化クロムの厚さは、0.012μm以上であってよく、0.013μm以上であってよい。蒸着酸化クロムの厚さは、0.28μm以下であってよく、0.25μm以下であってよい。
<厚さ>
光輝性塗膜の厚さは、3μm以上7μm以下であってよい。これにより、光輝性顔料の配向性が向上し得る。光輝性塗膜の厚さは、3.5μm以上であってよく、4μm以上であってよい。光輝性塗膜の厚さは、6.5μm以下であってよく、6μm以下であってよい。光輝性塗膜の厚さは、乾燥後あるいは硬化後の厚さである。
塗膜の厚さは、例えば、電磁式膜厚計により測定される。光輝性塗膜の厚さは、異なる5つの試料における光輝性塗膜の厚さの平均値である。他の層の厚さも同様に測定および算出できる。
(着色塗膜)
着色塗膜は着色顔料を含む。着色塗膜は、塗装物品に所望の色彩を与える。着色塗膜は、着色塗料(Y)により形成される。着色塗料(Y)については後述する。
<着色顔料>
着色顔料としては、例えば、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料および金属錯体顔料等の有機系着色顔料:黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラックおよび二酸化チタン等の無機系着色顔料が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
着色顔料の一次粒子径は、隠蔽性の観点から、10nm以上300nm以下であってよい。着色顔料の一次粒子径は、30nm以上であってよい。着色顔料の一次粒子径は、100nm以下であってよい。一次粒子径は、複層塗膜の断面の電子顕微鏡の画像から、画像処理ソフトウェアを用いて測定することができる。
<厚さ>
着色塗膜の厚さは、例えば、4μm以上20μm以下である。着色塗膜の厚さは、6μm以上であってよく、8μm以上であってよい。着色塗膜の厚さは、17μm以下であってよく、15μm以下であってよい。
(クリヤー塗膜)
クリヤー塗膜は、光輝性塗膜および着色塗膜を保護する。クリヤー塗膜は特に限定されず、従来公知のクリヤー塗膜と同様の構成を有する。クリヤー塗膜は、クリヤー塗料(Z)により形成される。クリヤー塗料(Z)については後述する。
<厚さ>
クリヤー塗膜の厚さは、耐擦傷性が向上し、かつ、色の深み感が損なわれ難い点で、10μm以上50μm以下であってよい。クリヤー塗膜の厚さは、15μm以上であってよい。クリヤー塗膜の厚さは、40μm以下であってよい。
[塗装物品の製造方法]
本開示に係る塗装物品は、被塗物上に、光輝性塗膜、着色塗膜およびクリヤー塗膜をこの順に形成することにより製造される。着色塗膜が形成される際、光輝性塗膜は硬化していてもよく、未硬化であってもよい。クリヤー塗膜が形成される際、着色塗膜は硬化していてもよく、未硬化であってもよい。なかでも、色の深み感がより向上し得る点で、各塗膜を硬化させることなく積層した後、加熱して、これら3つの未硬化の塗膜を同時に硬化させることが好ましい。この方法によれば、生産性、付着性および耐水性も向上し得る。
本開示に係る塗装物品は、例えば、被塗物上に光輝性顔料分散体(X)を塗装して、未硬化の光輝性塗膜を形成する工程と、未硬化の光輝性塗膜上に着色塗料を塗装して、未硬化の着色塗膜を形成する工程と、未硬化の着色塗膜上にクリヤー塗料を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程と、未硬化の着色塗膜、未硬化の光輝性塗膜および未硬化のクリヤー塗膜を硬化させて複層塗膜を得る工程と、を備える方法により製造される。
形成された複層塗膜は、L 15/L 110が5以上9以下であり、C 15/C 110が8以上12以下である。
(1)未硬化の光輝性塗膜を形成する工程
被塗物上に光輝性顔料分散体(X)を塗装して、未硬化の光輝性塗膜を形成する。
塗装方法としては、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装が挙げられる。これらの方法と静電塗装とを組み合わせてもよい。なかでも、塗着効率の観点から、回転霧化式静電塗装が好ましい。回転霧化式静電塗装には、例えば、通称「マイクロ・マイクロベル(μμベル)」、「マイクロベル(μベル)」、「メタリックベル(メタベル)」などと呼ばれる回転霧化式の静電塗装機が用いられる。
光輝性顔料分散体(X)は、例えば、得られる複層塗膜における光輝性塗膜の厚さが3μm以上7μm以下になるように、塗布される。
光輝性顔料分散体(X)を塗装した後、予備乾燥を行ってもよい。これにより、光輝性塗膜の流動性が速やかに低下して、光輝性顔料の流動が抑制され易くなる。さらに、予備乾燥により、未硬化の光輝性塗膜と、これに塗装される着色塗料(Y)とが混ざりあうことが抑制されて、混層が形成され難くなる。そのため、得られる複層塗膜の外観が向上し得る。
予備乾燥としては、例えば、20℃以上25℃以下の温度条件で15分以上30分以下放置する方法、50℃以上100℃以下の温度条件で30秒以上10分以下加熱する方法が挙げられる。
(光輝性顔料分散体(X))
光輝性塗膜は、光輝性顔料分散体(X)により形成される。光輝性顔料分散体(X)は水系であってよく、溶剤系であってよい。水系とは、全溶媒に占める水の割合が50質量%以上であることを言う。溶剤系とは、全溶媒に占める有機溶媒の割合が50質量%以上であることを言う。
光輝性顔料分散体(X)は、上記の光輝性顔料を含む。光輝性顔料分散体(X)は、必要に応じて、樹脂成分および溶媒等を含む。光輝性顔料分散体(X)は、光輝性顔料、さらには樹脂成分および各種添加剤等の混合物を、溶媒で希釈することにより調製される。
光輝性顔料分散体(X)の20℃でB型粘度計により測定される粘度は、例えば、3000cps/6rpm以上15000cps/6rpm以下であってよい。
光輝性顔料分散体(X)の固形分含有率は、塗装時の塗料組成物の吐出量に影響する。吐出量が変化すると、塗料組成物の液滴の大きさ等も変化し、光輝性顔料の配向性に影響を与える。GL 15/GL 110を15以上25以下に、GC 15/GC 110を15以上35以下に調整し易い点で、光輝性顔料分散体(X)の固形分含有率は、16質量%以上20質量%以下であってよい。これにより、特に、GL 15/GL 110が15以上25以下に調整され易い。光輝性顔料分散体(X)の固形分含有率は、16.5質量%以上であってよく、17質量%以上であってよい。光輝性顔料分散体(X)の固形分含有率は、19.5質量%以下であってよく、19質量%以下であってよい。光輝性顔料分散体(X)の固形分は、光輝性顔料分散体(X)から溶媒を除いた全成分である。
光輝性顔料のPWC(顔料質量濃度)は、5.0質量%以上25.0質量%以下であってよい。光輝性顔料のPWCは、7.0質量%以上であってよく、10.0質量%以上であってよい。光輝性顔料のPWCは、23.0質量%以下であってよく、20.0質量%以下であってよく、15.0質量%以下であってよい。
PWC(顔料質量濃度)は、塗料に含まれる樹脂の固形分質量および対象顔料(上記の場合、光輝性顔料)の質量の合計に対する、当該顔料の質量割合である。樹脂の固形分とは、塗料に含まれる樹脂成分(後述参照)の固形分である。
・樹脂成分
光輝性顔料分散体(X)は、樹脂成分を含んでよい。樹脂成分としては、例えば、熱硬化性樹脂が挙げられる。樹脂成分として、さらに、硬化剤が含まれ得る。
樹脂成分の含有量は、例えば、光輝性顔料分散体(X)の全固形分の30質量%以上75質量%以下であってよい。樹脂成分の上記含有量は、35質量%以上であってよく、40質量%以上であってよい。樹脂成分の上記含有量は、70質量%以下であってよく、66質量%以下であってよい。
熱硬化性樹脂は、例えば、架橋性官能基およびベース樹脂により形成される。架橋性官能基としては、例えば、カルボキシ基、水酸基、エポキシ基、シラノール基、(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
ベース樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は、ウレタン変性エポキシ樹脂であってよい。ポリエステル樹脂は、ウレタン変性ポリエステル樹脂であってよい。アクリル樹脂は、ウレタン変性アクリル樹脂であってよい。各ウレタン変性樹脂は、樹脂骨格中にウレタン結合を有する。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、耐チッピング性が向上する点で、アクリル樹脂およびウレタン変性ポリエステルであってよい。
アクリル樹脂は、例えば、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸、水酸基、アミド基、メチロール基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル、およびその他の(メタ)アクリル酸エステル、スチレンを共重合することにより得られる。
ウレタン変性ポリエステルは、水酸基含有ポリエステルと、脂肪族ジイソシアネート化合物との反応により得られる。水酸基含有ポリエステルは、多価カルボン酸および/または酸無水物などの酸成分と多価アルコールとを重縮合することによって調製される。脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネートおよびメチルシクロヘキサンジイソシアネートが挙げられる。
溶媒として水を用いる場合、親水性基を有する熱硬化性樹脂を用いてもよい。熱硬化性樹脂の親水性基を中和してアルカリ塩とすることにより、熱硬化性樹脂は水溶性化もしくは水分散化される。親水性基としては、例えば、カルボキシ基、水酸基、メチロール基、アミノ基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン結合が挙げられる。中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウムおよびアミン化合物等のアルカリ性物質が挙げられる。
熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂の原料モノマーを界面活性剤や水溶性樹脂の存在下で乳化重合させることにより、水分散した状態で調製され得る。あるいは、熱硬化性樹脂を乳化剤により、水分散させてもよい。これらの場合、熱硬化性樹脂は親水性基を含まなくてもよく、あるいは、親水性基をわずかに含んでいてよい。
硬化剤としては、例えば、アミノ樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシ基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、ヒドラジド基含有化合物およびセミカルバジド基含有化合物が挙げられる。ポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基がブロック剤でブロックされたブロック化ポリイソシアネート化合物を包含する。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、得られる塗膜の諸性能およびコストの点で、アミノ樹脂および/またはポリイソシアネート化合物であってよい。
アミノ樹脂は、例えば、メラミン、ベンゾグアナミンまたは尿素等のアミノ化合物と、ホルムアルデヒドとを縮合させ、さらには低級1価アルコールでエーテル化することにより得られる。ポリイソシアネート化合物の詳細は、後述する。
硬化剤の含有量は特に限定されない。硬化性の点で、硬化剤の固形分質量は、熱硬化性樹脂の固形分質量と硬化剤の固形分質量の合計の10質量%以上40質量%以下であってよい。硬化剤の上記固形分質量は、15質量%以上であってよい。硬化剤の上記固形分質量は、30質量%以下であってよく、25質量%以下であってよい。
熱硬化性樹脂の含有量は特に限定されない。硬化剤が含まれる場合、熱硬化性樹脂の固形分質量は、熱硬化性樹脂の固形分質量と硬化剤の固形分質量との合計の60質量%以上90質量%以下であってよい。熱硬化性樹脂の上記固形分質量は、70質量%以上であってよい。熱硬化性樹脂の上記固形分質量は、85質量%以下であってよい。
・溶媒
溶媒は、水(脱イオン水)であってよく、有機溶媒であってよく、これらの組み合わせであってよい。なかでも、低VOC(Volatile Organic Compounds)の観点から、水であってよい。すなわち、光輝性顔料分散体(X)は水系であってよい。水系の光輝性顔料分散体(X)において、溶媒に占める水の割合は50質量%以上であり、80質量%以上であってよい。
有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;
プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、メチルメトキシブタノール、エトキシプロパノール、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコール-t-ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メトキシブタノール、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、ブタノール、プロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;スワゾール、シェルゾール、ミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素系溶剤;キシレン、トルエン、ソルベッソ-100(S-100)、ソルベッソ-150(S-150)などの芳香族系溶剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
溶媒は、例えば、光輝性顔料分散体(X)の固形分が16質量%以上20質量%以下になるように、添加される。
・その他の顔料
光輝性顔料分散体(X)は、隠蔽性等に応じて、光輝性顔料以外の他の顔料を含み得る。他の顔料としては、例えば、防錆顔料、着色顔料、体質顔料が挙げられる。着色顔料としては、例えば、着色塗膜に用いられる着色顔料として例示されたのと同様のものが挙げられる。体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルクが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
・添加剤
光輝性顔料分散体(X)は、必要に応じて、種々の添加剤を含み得る。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、粘性調整剤、沈降防止剤、分散剤、表面調整剤、ピンホール防止剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
(2)未硬化の着色塗膜を形成する工程
未硬化の光輝性塗膜上に着色塗料(Y)を塗装して、未硬化の着色塗膜を形成する。
着色塗料(Y)は、例えば、硬化後の着色塗膜の厚さが5μm以上15μm以下になるように、塗布される。
塗装方法としては、例えば、光輝性顔料分散体(X)の塗装方法と同様の方法が挙げられる。なかでも、塗着効率の観点から、回転霧化式静電塗装が好ましい。
着色塗料(Y)を塗装した後、予備乾燥(プレヒートとも称される)を行ってもよい。これにより、硬化工程において着色塗膜に含まれる溶媒の突沸が抑制されて、ワキの発生が抑制され易くなる。予備乾燥の条件は特に限定されず、光輝性顔料分散体(X)の予備乾燥と同様であってよい。
(着色塗料(Y))
着色塗膜は、着色塗料(Y)により形成される。着色塗料(Y)は水系であってよく、溶剤系であってよい。着色塗料(Y)は、1液型塗料であってよく、2液型塗料等の多液型塗料であってよい。
着色塗料(Y)は、上記の着色顔料を含む。着色塗料(Y)は、必要に応じて、樹脂成分および溶媒等を含む。着色塗料(Y)は、着色顔料、さらには樹脂成分および各種添加剤等の混合物を、溶媒で希釈することにより調製される。
着色塗料(Y)の20℃でB型粘度計により測定される粘度は、例えば、500cps/6rpm以上6000cps/6rpm以下であってよい。
着色塗料(Y)の固形分含有率は、10質量%以上40質量%以下であってよい。着色塗料(Y)の固形分は、着色塗料(Y)から溶媒を除いた全成分である。
着色顔料のPWCは、例えば、50質量%以下0.1質量%以上であってよい。着色顔料のPWCは、20質量%以下であってよい。
・樹脂成分
着色塗料(Y)は、樹脂成分を含んでよい。樹脂成分としては、例えば、光輝性顔料分散体(X)の樹脂成分として例示されたのと同様のもの(代表的には、熱硬化性樹脂および硬化剤)が挙げられる。
樹脂成分の含有量は、例えば、着色塗料(Y)の全固形分の50質量%以上95質量%以下であってよい。樹脂成分の上記含有量は、60質量%以上であってよく、65質量%以上であってよい。樹脂成分の上記含有量は、90質量%以下であってよく、85質量%以下であってよい。
・溶媒
溶媒は、水(脱イオン水)であってよく、有機溶媒であってよく、これらの組み合わせであってよい。なかでも、低VOCの観点から、水であってよい。すなわち、着色塗料(Y)は水系であってよい。水系の着色塗料(Y)において、溶媒に占める水の割合は50質量%以上であり、80質量%以上であってよい。有機溶媒としては、光輝性顔料分散体(X)の有機溶媒として例示されたのと同様のものが挙げられる。
・その他の顔料
着色塗料(Y)は、隠蔽性等に応じて、さらに他の顔料を含み得る。他の顔料としては、例えば、防錆顔料、上記の体質顔料が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
・添加剤
着色塗料(Y)は、必要に応じて、種々の添加剤を含み得る。添加剤としては、光輝性顔料分散体(X)の添加剤として例示されたのと同様のものが挙げられる。
(3)未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程
未硬化の着色塗膜上にクリヤー塗料(Z)を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する。
塗装方法としては、例えば、着色塗料の塗装方法と同様の方法が挙げられる。なかでも、塗着効率の観点から、回転霧化式静電塗装が好ましい。
クリヤー塗料(Z)は、例えば、硬化後のクリヤー塗膜の厚さが25μm以上45μm以下になるように、塗布される。
(クリヤー塗料(Z))
クリヤー塗膜は、クリヤー塗料(Z)により形成される。クリヤー塗料(Z)は、粉体であってよく、水系であってよく、溶剤系であってよい。クリヤー塗料(Z)は、1液型塗料であってよく、2液型塗料等の多液型塗料であってよい。塗膜の物性が向上し易い点で、クリヤー塗料(Z)は2液型であってよい。
クリヤー塗料(Z)は、樹脂成分を含む。クリヤー塗料(Z)は、必要に応じて溶媒を含む。クリヤー塗料(Z)は、樹脂成分、さらには各種添加剤等の混合物を、溶媒で希釈することにより調製される。
クリヤー塗料(Z)の20℃でB型粘度計により測定される粘度は、例えば、500cps/6rpm以上6000cps/6rpm以下であってよい。
クリヤー塗料(Z)の固形分含有率は、例えば、40質量%以上60質量%以下であってよい。クリヤー塗料(Z)の固形分は、クリヤー塗料(Z)から溶媒を除いた全成分である。
・樹脂成分
クリヤー塗料(Z)は、樹脂成分を含む。樹脂成分としては、例えば、光輝性顔料分散体(X)の樹脂成分として例示されたのと同様のものが挙げられる。クリヤー塗料(Z)は、樹脂成分として、熱硬化性樹脂および硬化剤を含んでいてよい。このようなクリヤー塗料(Z)は、いわゆる2液型塗料である。
2液型のクリヤー塗料(Z)は、塗膜の物性が向上し易い点で、熱硬化性樹脂として水酸基含有樹脂と、硬化剤としてポリイソシアネート化合物とを含んでよい。
水酸基含有樹脂としては、具体的には、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有ポリエーテル樹脂、水酸基含有ポリウレタン樹脂が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、水酸基含有アクリル樹脂および水酸基含有ポリエステル樹脂であってよく、水酸基含有アクリル樹脂であってよい。
水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は、例えば、80mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であってよい。これにより、得られる塗膜の耐擦り傷性および耐水性が向上し得る。水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は、100mgKOH/g以上であってよい。水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は、180mgKOH/g以下であってよい。
水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は、2500以上40000以下であってよい。これにより、得られる塗膜の耐酸性および平滑性が向上し得る。水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は、5000以上であってよい。水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は、30000以下であってよい。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから、標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出できる。ゲルパーミエーションクロマトグラフとしては、例えば、HLC8120GPC(東ソー社製)が用いられる。カラムとしては、TSKgel G-4000HXL、TSKgel G-3000HXL、TSKgel G-2500HXL、TSKgel G-2000HXL(いずれも東ソー(株)社製)が用いられる。クロマトグラフィーは、例えば、移動相としてテトラヒドロフランを、検出器として示差屈折率検出器(RI)を用いて、測定温度40℃、流速1cc/分の条件下で行われる。
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、分子中にイソシアネート基に結合していない芳香環を有する脂肪族ポリイソシアネート(芳香脂肪族ポリイソシアネート)、芳香族ポリイソシアネート、これらポリイソシアネートの誘導体が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)などの脂肪族ジイソシアネート;2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-もしくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1-シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)などの脂環族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートが挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1-フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω'-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4-TDI)もしくは2,6-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6-TDI)もしくはその混合物、4,4'-トルイジンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4',4''-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート;4,4'-ジフェニルメタン-2,2',5,5'-テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートが挙げられる。
ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDIが挙げられる。
付着性および相溶性等の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)であってよく、ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体であってよい。
ポリイソシアネート化合物として、上記のポリイソシアネートまたはその誘導体のプレポリマーを使用してもよい。プレポリマーは、ポリイソシアネートまたはその誘導体と、これと反応し得る化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させることにより得られる。ポリイソシアネートまたはその誘導体と反応し得る化合物は、水酸基、アミノ基などの活性水素基を有する化合物である。上記化合物としては、例えば、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、アミン、水が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物として、ブロック化ポリイソシアネート化合物を使用してもよい。ブロック化ポリイソシアネート化合物は、上記のポリイソシアネートまたはその誘導体中のイソシアネート基をブロック剤でブロックすることにより得られる。
ブロック剤としては、例えば、フェノール化合物、ラクタム化合物、アルコール、エーテル、オキシム化合物、活性メチレン基を有する化合物、メルカプタン化合物、酸アミド化合物、イミド化合物、アミン化合物、イミダゾール化合物、尿素化合物、カルバミン酸エステル、イミン化合物、亜硫酸塩、アゾール化合物およびケトン化合物が挙げられる。
水酸基含有樹脂の水酸基とポリイソシアネート化合物のイソシアネート基との当量比(=OH/NCO)は、塗膜の硬化性および耐擦傷性等の観点から、0.5以上2.0以下であってよい。上記当量比(=OH/NCO)は、0.8以上であってよい。上記当量比(=OH/NCO)は、1.5以下であってよい。
・溶媒
溶媒は、水(脱イオン水)であってよく、有機溶媒であってよく、これらの組み合わせであってよい。なかでも、低VOCの観点から、水であってよい。すなわち、クリヤー塗料(Zは水系であってよい。水系のクリヤー塗料(Zにおいて、溶媒に占める水の割合は50質量%以上であり、80質量%以上であってよい。有機溶媒としては、光輝性顔料分散体(X)の有機溶媒として例示されたのと同様のものが挙げられる。
・顔料
クリヤー塗料(Z)は、透明性を損なわない範囲で、顔料を含み得る。顔料としては、例えば、上記の光輝性顔料、着色顔料および体質顔料が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。顔料の添加量は特に限定されない。顔料のPWCは、例えば、30質量%以下であってよく、10質量%以下であってよい。顔料のPWCは、例えば、0.01質量%以上であってよい。
・添加剤
クリヤー塗料(Z)は、必要に応じて、種々の添加剤を含み得る。添加剤としては、光輝性顔料分散体(X)の添加剤として例示されたのと同様のものが挙げられる。
(4)硬化工程
未硬化の光輝性塗膜、未硬化の着色塗膜および未硬化のクリヤー塗膜を一度に硬化させる。各塗膜は加熱により硬化し得る。
加熱条件は、各塗膜の組成等に応じて適宜設定される。加熱温度は、例えば70℃以上150℃以下であり、80℃以上140℃以下であってよい。加熱時間は、例えば10分以上40分以下であり、20分以上30分以下であってよい。加熱装置としては、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉が挙げられる。
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
[実施例1]
(I)被塗物の準備
被塗物として、硬化電着塗膜を備えるリン酸亜鉛処理鋼板を準備した。硬化電着塗膜は、日本ペイント社製のカチオン電着塗料組成物である「パワーニクス」を、乾燥膜厚が20μmとなるようにリン酸亜鉛処理鋼板に電着塗装した後、160℃で30分間加熱することにより形成した。
(II)塗料の準備
・光輝性顔料分散体(X)の準備
鱗片状アルミニウム(Al)粒子A0.86部、鱗片状Al粒子B0.09部、蒸着酸化クロム0.03部、アルミ溶解シンナー13.7部、カーボンブラック顔料0.99部、ペリレン顔料1.04部、酸化鉄顔料0.09部、水酸基含有アクリルエマルション樹脂3.50部、熱硬化性樹脂3.50部、リン酸0.24部、表面調整剤0.33部、アミン0.37部、消泡剤0.03部に、固形分含有率が18.0%になるように脱イオン水を加えて撹拌し、光輝性顔料分散体(X)を得た。
鱗片状Al粒子A:商品名「Z0684N」、東洋アルミ社製、厚さ0.15μm、平均粒子径12μm
鱗片状Al粒子B:商品名「FD-5090」、旭化成社製、厚さ0.11μm、平均粒子径9μm
蒸着酸化クロム:商品名「METALURE Liquid Black」、Eckart社製、厚さ0.015~0.2μm、平均粒子径14μm
・着色塗料(Y)の準備
ペリレン顔料1.01部、酸化鉄顔料0.27部、水酸基含有アクリルエマルション樹脂7.57部、アクリル樹脂1.71部、熱硬化性樹脂4.81部、表面調整剤0.26部、アミン0.47部、消泡剤0.01部に、全量が100部になるように脱イオン水を加えて撹拌し、固形分含有率23.0%の着色塗料(Y)を得た。
(水酸基含有アクリル樹脂エマルションの製造)
攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器および窒素導入管などを備えた通常のアクリル系樹脂エマルション製造用の反応容器に、水445部およびニューコール293(日本乳化剤社製)5部を仕込み、これらを攪拌しながら75℃に昇温した。メタクリル酸メチル145部、スチレン50部、アクリル酸エチル220部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル70部およびメタクリル酸15部を含むモノマー混合物、水240部およびニューコール293(日本乳化剤社製)30部の混合物を、ホモジナイザーを用いて乳化して、モノマープレ乳化液を得た。上記反応容器内を攪拌しながら、モノマープレ乳化液を3時間にわたって滴下した。モノマープレ乳化液の滴下と併行して、重合開始剤としてAPS(過硫酸アンモニウム)1部を水50部に溶解した水溶液を、上記反応容器中に上記モノマープレ乳化液の滴下終了時まで均等に滴下した。モノマープレ乳化液の滴下終了後、さらに80℃で1時間、反応を継続した。反応物を冷却した後、上記反応容器にジメチルアミノエタノール2部を水20部に溶解した水溶液を投入し、固形分含有率40.6質量%の水酸基含有アクリル樹脂エマルションを得た。
得られた水酸基含有アクリル樹脂エマルションの固形分について、酸価は20mgKOH/g、水酸基価は60mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は30℃であった。固形分含有率は、JIS K 5601-1-2 加熱残分測定方法に従って測定した。
・クリヤー塗料(Z)の準備
クリヤー塗料(Z)として、PUエクセルO-3100-6(日本ペイント社製、2液クリヤー塗料、水酸基含有樹脂およびポリイソシアネート化合物を含む)を準備した。
(III)未硬化の光輝性塗膜の形成工程
電着塗膜を備える被塗物上に、光輝性顔料分散体(X)をメタベルを用いて塗装した。
(IV)未硬化の着色塗膜の形成工程
未硬化の光輝性塗膜上に、着色塗料(Y)をメタベルを用いて塗装した。
(V)未硬化のクリヤー塗膜の形成工程
未硬化の着色塗膜上に、クリヤー塗料(Z)をマイクロマイクロベルを用いて塗装した。
(VI)硬化工程
クリヤー塗膜の形成工程(V)の後、140℃で20分間加熱して、複層塗膜A1を備える被塗物を得た。複層塗膜A1において、光輝性塗膜の厚さは5μm、着色塗膜の厚さは10μm、クリヤー塗膜の厚さは30μmであった。
[比較例1]
以下のようにして調製された光輝性顔料分散体(x1)を用いたこと以外、実施例1と同様にして、複層塗膜B1を備える塗装物品を得た。
・光輝性顔料分散体(x1)の準備
鱗片状Al粒子C0.95部、蒸着酸化クロム0.03部、アルミ溶解シンナー13.7部、カーボンブラック顔料0.99部、ペリレン顔料1.04部、酸化鉄顔料0.09部、水酸基含有アクリルエマルション樹脂3.50部、熱硬化性樹脂3.50部、リン酸0.24部、表面調整剤0.33部、アミン0.37部、消泡剤0.03部に、固形分含有率が18%になるように脱イオン水を加えて撹拌し、光輝性顔料分散体(x1)を得た。
鱗片状Al粒子C:商品名「WM-2068」、旭化成社製、厚さ0.15μm、平均粒子径16μm
[比較例2]
以下のようにして調製された光輝性顔料分散体(x2)を用いたこと以外、実施例1と同様にして、複層塗膜B2を備える塗装物品を得た。
・光輝性顔料分散体(x2)の準備
鱗片状Al粒子D0.95部、蒸着酸化クロム0.03部、アルミ溶解シンナー13.7部、カーボンブラック顔料0.99部、ペリレン顔料1.04部、酸化鉄顔料0.09部、水酸基含有アクリルエマルション樹脂3.50部、熱硬化性樹脂3.50部、リン酸0.24部、表面調整剤0.33部、アミン0.37部、消泡剤0.03部に、固形分含有率が18%になるように脱イオン水を加えて撹拌し、光輝性顔料分散体(x2)を得た。
鱗片状Al粒子D:商品名「TCR-3080」、東洋アルミ社製、厚さ0.33μm、平均粒子径13μm
[比較例3]
光輝性塗膜の厚さを2μmにしたこと以外、実施例1と同様にして、複層塗膜B3を備える塗装物品を得た。
[比較例4]
光輝性塗膜の厚さを10μmにしたこと以外、実施例1と同様にして、複層塗膜B4を備える塗装物品を得た。
[比較例5]
光輝性顔料分散体の固形分含有率を15.0%に調整したこと以外、実施例1と同様にして、複層塗膜B5を備える塗装物品を得た。
[比較例6]
光輝性顔料分散体の固形分含有率を25.0%に調整したこと以外、実施例1と同様にして、複層塗膜B6を備える塗装物品を得た。
[評価]
得られた複層塗膜または光輝性塗膜に対して、下記の評価を行った。評価結果を表1に示す。
(1)光輝性塗膜の厚さ
電磁式膜厚計(FISCHERSCOPE(登録商標)MMS PC2、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を用いて、硬化後の光輝性塗膜の厚さを測定した。異なる5つの試料の平均値を、光輝性塗膜の厚さとした。他の塗膜の厚さも同様にして測定した。
(2)明度L 15、明度L 110
試験板として、複層塗膜が形成された塗装物品を用いた。
変角色差計(Gonio-Spectrophotometer GSP-1、株式会社村上色材研究所製)を用いて、クリヤー塗膜側から複層塗膜に対して45度の角度から照射した光I45を、正反射光に対して15度および110度の角度で受光したときの、Lh表色系における明度L 15および明度L 110を取得した。異なる5つの試料の平均値を、明度L 15および明度L 110とした。実施例1の明度L 15は20.0であり、明度L 110は2.9であった。
(3)彩度C 15、彩度C 110
(2)と同様にして、Lh表色系における彩度C 15および彩度C 110を取得した。異なる5つの試料の平均値を、彩度C 15および彩度C 110とした。実施例1の彩度C 15は44.1であり、彩度C 110は4.6であった。
(4)明度GL 15、明度GL 110
被塗物に光輝性顔料分散体を塗装して、140℃で20分間加熱したものを試験板とした。得られた光輝性塗膜の表面に対して45度の角度から光を照射したこと以外は、(2)と同様にして、光輝性塗膜のLh表色系における明度GL 15および明度GL 110を取得した。異なる5つの試料の平均値を、明度GL 15および明度GL 110とした。実施例1の明度GL 15は46.4であり、明度GL 110は2.3であった。
(5)彩度GC 15、GC 110
(4)と同様にして、Lh表色系における彩度GC 15および彩度GC 110を取得した。異なる5つの試料の平均値を、彩度GC 15および彩度GC 110とした。実施例1の彩度GC 15は23.4であり、彩度GC 110は1.0であった。
(6)粒子感Si15
マルチアングル測色器(BYK-mac i、BYK-Gardner社製)を用いて、複層塗膜の法線方向に対して15度傾いた方向から照射した光を、複層塗膜の法線方向から撮像し解析することにより、粒子感Si15を取得した。異なる5つの試料の平均値を、粒子感Si15とした。
(7)光輝性塗膜の隠蔽性
JIS K 5600-4-1(b)に準拠した隠蔽率試験紙(日本テストパネル株式会社製)を用いた。隠蔽率試験紙が有する2×2cm角の白黒の市松模様上に、乾燥膜厚の勾配ができるように、光輝性顔料分散体をスプレー塗装し、その後、加熱硬化させた。次いで、目視により、白黒の市松模様が透けて見えない限界の塗膜部位を判定し、その部位の膜厚を測定した。測定された膜厚を、白黒隠蔽膜厚とした。得られた白黒隠蔽膜厚から下記評価基準に基づいて、光輝性塗膜の隠蔽性を評価した。
(評価基準)
良:白黒隠蔽膜厚が6μm以下
不良:白黒隠蔽膜厚が6μm超
(8)光線透過率
剥離用の基材に光輝性顔料分散体を塗装して、140℃で20分間加熱した。次いで、形成された塗膜を基材から剥離して、フィルムを得た。このフィルムに対して、分光光度計(日立社製U-3310)を用いて、波長400~700nmの光線を照射して、10nm毎に光線透過率を測定した。
(評価基準)
良:いずれの波長においても、光線透過率が0.25%以下
不良:いずれかの波長において、光線透過率が0.25%超

本開示は以下の態様を含む。
[1]
被塗物および複層塗膜を備える塗装物品であって、
前記複層塗膜は、
前記被塗物上に形成され、光輝性顔料を含む光輝性塗膜と、
前記光輝性塗膜上に形成され、着色顔料を含む着色塗膜と、
前記着色塗膜上に形成されたクリヤー塗膜と、を備え、
前記複層塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L 15と、前記光I45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L 110との比(L 15/L 110)が、5以上9以下であり、
前記光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 15と、前記光I45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 110との比(C 15/C 110)が、8以上12以下である、塗装物品。
[2]
前記光輝性塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光GI45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づく明度GL 15と、前記光GI45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づく明度GL 110との比(GL 15/GL 110)が、15以上25以下であり、
前記光GI45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度GC 15と、前記光GI45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度GC 110との比(GC 15/GC 110)が、15以上35以下である、上記[1]の塗装物品。
[3]
前記光輝性塗膜の厚さは、3μm以上7μm以下である、上記[1]または[2]の塗装物品。
[4]
前記光輝性顔料は、鱗片状アルミニウム粒子を含む、上記[1]~[3]のいずれかの塗装物品。
[5]
前記鱗片状アルミニウム粒子は、平均粒子径が8μm以上13μm以下であり、かつ、厚さが0.08μm以上0.2μm以下である、上記[4]の塗装物品。
[6]
前記光輝性顔料は、蒸着酸化クロムを含む、上記[1]~[5]のいずれかの塗装物品。
[7]
被塗物上に光輝性顔料を含む光輝性顔料分散体を塗装して、未硬化の光輝性塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の光輝性塗膜上に着色顔料を含む着色塗料を塗装して、未硬化の着色塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の着色塗膜上にクリヤー塗料を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の光輝性塗膜、前記未硬化の着色塗膜および前記未硬化のクリヤー塗膜を硬化させて複層塗膜を得る工程と、を備え、
前記複層塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L 15と、前記光I45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L 110との比(L 15/L 110)が、5以上9以下であり、
前記光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 15と、前記光I45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 110との比(C 15/C 110)が、8以上12以下である、塗装物品の製造方法。
[8]
前記光輝性顔料分散体の固形分含有率は、16質量%以上20質量%以下である、上記[7]の塗装物品の製造方法。
[9]
前記クリヤー塗料は、水酸基含有樹脂およびポリイソシアネート化合物を含む2液型塗料である、上記[7]または[8]の塗装物品の製造方法。
本発明の塗装物品は、特に自動車車体の外板として適している。

Claims (9)

  1. 被塗物および複層塗膜を備える塗装物品であって、
    前記複層塗膜は、
    前記被塗物上に形成され、光輝性顔料を含む光輝性塗膜と、
    前記光輝性塗膜上に形成され、着色顔料を含む着色塗膜と、
    前記着色塗膜上に形成されたクリヤー塗膜と、を備え、
    前記複層塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L 15と、前記光I45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L 110との比(L 15/L 110)が、5以上9以下であり、
    前記光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 15と、前記光I45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 110との比(C 15/C 110)が、8以上12以下である、塗装物品。
  2. 前記光輝性塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光GI45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づく明度GL 15と、前記光GI45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づく明度GL 110との比(GL 15/GL 110)が、15以上25以下であり、
    前記光GI45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度GC 15と、前記光GI45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度GC 110との比(GC 15/GC 110)が、15以上35以下である、請求項1に記載の塗装物品。
  3. 前記光輝性塗膜の厚さは、3μm以上7μm以下である、請求項1または2に記載の塗装物品。
  4. 前記光輝性顔料は、鱗片状アルミニウム粒子を含む、請求項1または2に記載の塗装物品。
  5. 前記鱗片状アルミニウム粒子は、平均粒子径が8μm以上13μm以下であり、かつ、厚さが0.08μm以上0.2μm以下である、請求項4に記載の塗装物品。
  6. 前記光輝性顔料は、蒸着酸化クロムを含む、請求項1または2に記載の塗装物品。
  7. 被塗物上に光輝性顔料を含む光輝性顔料分散体を塗装して、未硬化の光輝性塗膜を形成する工程と、
    前記未硬化の光輝性塗膜上に着色顔料を含む着色塗料を塗装して、未硬化の着色塗膜を形成する工程と、
    前記未硬化の着色塗膜上にクリヤー塗料を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程と、
    前記未硬化の光輝性塗膜、前記未硬化の着色塗膜および前記未硬化のクリヤー塗膜を硬化させて複層塗膜を得る工程と、を備え、
    前記複層塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L 15と、前記光I45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L 110との比(L 15/L 110)が、5以上9以下であり、
    前記光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 15と、前記光I45を、正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 110との比(C 15/C 110)が、8以上12以下である、塗装物品の製造方法。
  8. 前記光輝性顔料分散体の固形分含有率は、16質量%以上20質量%以下である、請求項7に記載の塗装物品の製造方法。
  9. 前記クリヤー塗料は、水酸基含有樹脂およびポリイソシアネート化合物を含む2液型塗料である、請求項7または8に記載の塗装物品の製造方法。
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