JP2024079066A - ポリカーボネート樹脂組成物ペレットおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた摩擦・摩耗特性を有するとともに、フッ素イオンが極めて少ない成形品を与えるポリカーボネート樹脂組成物ペレットおよびその製造方法を提供する。【解決手段】芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、フッ素系樹脂(B)6~25重量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物ペレットであって、フッ素系樹脂(B)からメタノール水で抽出した抽出フッ素イオン濃度が50μg/L未満であり、ペレットから温水に溶出した溶出フッ素イオンの濃度が20μg/L未満である、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットに関する。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物ペレット、およびその製造方法に関する。
ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐衝撃性、耐熱性、熱安定性等に優れた熱可塑性樹脂であり、電気、電子、ITE、機械、自動車などの分野で広く用いられているが、最近では、耐熱性、熱安定性、耐衝撃性等に優れることから、例えば電子関連部品等の容器等にも使用が検討されている。
電子関連部品等の容器としては、複数枚のチップを貯蔵、及び、搬送する容器やシリコンウエハ一枚を収納したシリコンウエハ容器等が挙げられる他、容器としては、ハードディスクの基盤であるガラスやアルミ板、それらガラス板やアルミ板をメディア化したハードディスク複数枚を貯蔵、及び搬送するハードディスク容器、近年では太陽電池部品を貯蔵、及び、搬送する太陽電池容器等がある。
容器用部材としては、例えば、搬送容器内においてチップ等の電子関連部品等を収納し搬送する役割を担う樹脂製のホルダ等の部材が挙げられる。電子関連部品はこの樹脂製容器用部材と接触し、又摺動することがある。従来の容器用部材においては、電子関連部品に対する摺動特性は十分ではないことから、容器用部材上を電子関連部品が円滑に移動することができないことがあった。これにより、容器用部材から電子関連部品等を円滑に取り出せないといった不具合や電子関連部品等の表面が微細な損傷を受けるといった不具合が発生する場合があった。さらに、電子関連部品等と容器用部材との擦れにより容器用部材が削れることにより、パーティクルが発生するといった不具合が発生する場合があった。そこで、例えば、上記欠点を改良する目的でポリカーボネート樹脂にポリテトラフルオロエチレン樹脂を配合した樹脂組成物が提案(特許文献1)されている。このポリカーボネート樹脂にポリテトラフルオロエチレン樹脂を配合した樹脂組成物においては、条件によっては、フッ素系樹脂(B)の微粒子の分散粒子直径が大きくなることがあり、ポリカーボネート樹脂中にフッ素系樹脂(B)の微粒子が均一分散せず、摩擦・摩耗特性が十分発揮されないことが問題となることがあった。
他方、昨今、表面汚染を嫌うシリコンウエハなどの精密材料を搬送する際に、その表面を汚染するおそれが極めて少ない、例えば、樹脂材料からの溶出イオン等の不純物による汚染を防止し、これにより搬送容器自体を極力クリーンとすることが求められている。
ポリカーボネート樹脂は、樹脂合成の材料となるホスゲン等の由来の塩素イオンの他にも、フッ素イオン、硫酸イオン等の不純物イオンやガスによって精密材料が損傷を被るおそれがあるが、ポリテトラフルオロエチレン樹脂を配合したポリカーボネート樹脂ペレット材料においても例外ではなく、これまでの要求を超える高いレベルの微量イオン(特に、上記フッ素イオン)を極力含まないようにする新技術が、高性能な半導体供給を期待する業界において関心を引くようになっている。
これまで、優れた摩擦・摩耗特性を有し、フッ素イオンが極めて少ない成形品を与えるポリカーボネート樹脂ペレット、および当該ペレットの製造方法はほとんど知られていない。
特開平1-259059号公報
本発明は、優れた摩擦・摩耗特性を有するとともに、フッ素イオンが極めて少ない成形品を与えるポリカーボネート樹脂組成物ペレットおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記した従来の課題に鑑み、従来のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法につき鋭意検討を進めた結果、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)に対し、特定割合のフッ素系樹脂(B)を含有するポリカーボネート樹脂組成物ペレットであって、フッ素系樹脂(B)からメタノール水へ抽出したフッ素イオンの濃度が50μg/L未満であり、ペレットから温水に溶出したフッ素イオンの濃度が20μg/L未満である、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットが上記課題を解決し得ることを見出した。
他方、フッ素系樹脂(B)を含有するポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法において、ポリカーボネート樹脂(A)とフッ素系樹脂(B)とを同一のタイミングで押出機に投入し溶融混合すると、フッ素系樹脂(B)の微粒子の分散粒子直径が大きくなることがあり、ポリカーボネート樹脂(A)中にフッ素系樹脂(B)の粒子が均一分散せず、摩擦・摩耗特性が十分発揮されないことが問題となることがあった。
この原因は、フッ素系樹脂(B)の融点が通常330℃程度と高温であるために、ポリカーボネート樹脂(A)とフッ素系樹脂(B)を溶融混合する際、押出混練機にてポリカーボネート樹脂(A)と高温下で混練すると、押出混練機から与えられる熱と混練時の剪断による発熱がフッ素系樹脂(B)に加えられるため、フッ素系樹脂(B)の微粒子が溶融凝集してしまい、ポリカーボネート樹脂(A)に分散したフッ素系樹脂(B)の分散粒子径が大きくなってしまうものと考えられる。
また、フッ素系樹脂(B)を含有するポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法において、混練中の熱によりフッ素系樹脂(B)の残留不純物から溶出するフッ素イオン量が増加し、結果としてポリカーボネート樹脂ペレットから溶出するフッ素イオン濃度が高くなる。
本発明者らは、二軸押出機のホッパーからフッ素系樹脂とポリカーボネート樹脂を同時に供給するのではなく、ホッパーからはポリカーボネート樹脂を供給し、ポリカーボネート樹脂が溶融した状態のところへ中間供給口からフッ素系樹脂(B)を追加的に供給することでポリカーボネート樹脂に分散したフッ素系樹脂(B)の分散粒子径を小さくでき、優れた摩擦・摩耗特性を発揮できること、フッ素イオン量を予め特定量に制御したフッ素系樹脂(B)を使用すると共に、外部環境からの不純物付着などを防止するため溶融混練ストランドから発生するイオンを冷却するバスとして純水バスを使用することにより、フッ素イオン溶出が極めて少ない芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得ることが出来ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明(1)は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、フッ素系樹脂(B)6~25重量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物ペレットであって、フッ素系樹脂(B)からメタノール水で抽出した抽出フッ素イオン濃度が50μg/L未満であり、ペレットから温水に溶出した溶出フッ素イオン濃度が20μg/L未満である、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットに関する。
本発明(2)は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が18000~23000であり、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)中のフェノール類濃度が30mg/L未満である、本発明(1)に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットである。
本発明(3)は、フッ素系樹脂(B)の平均一次粒子径が0.05~1.0μmであり、ASTM D4894に準拠して測定したフッ素系樹脂(B)の融点が320℃以上である、本発明(1)または(2)に記載のポリカーボネート樹脂組成物ペレットである。
本発明(4)は、JIS K-7125に準拠し、得られたペレットから作製した平板試験片を用い、400g荷重をかけ、63mm×63mm×3mmのポリカーボネート樹脂板に対して測定した動摩擦係数が0.5未満である、本発明(1)~(3)のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物ペレットである。
本発明(5)は、本発明(1)~(4)のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物ペレットを成形してなる、半導体ウエハ搬送容器用摺動部材である。
本発明(6)は、ポリカーボネート樹脂(A)を二軸押出機で溶融混練する第1溶融混練工程、フッ素系樹脂(B)を中間供給口から供給し、溶融したポリカーボネート樹脂(A)と混錬する第2溶融混錬工程、および、溶融混練物をノズルから押出し、得られたストランドを純水バスで冷却する冷却工程を含むことを特徴とする、本発明(1)~(5)のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法である。
本発明(7)は、ASTM D4894に準拠して測定したフッ素系樹脂(B)の融点が320℃以上である、本発明(6)に記載のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法である。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物ペレットによれば、該ペレットから作製した成形体は優れた摺動特性を有し、かつフッ素イオンが極めて少なく、例えば、表面汚染の低減が求められる半導体ウエハ搬送用容器に使用される摺動部材として好適に使用でき、工業的利用価値は高い。
以下、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者は当業者が本発明を充分に理解するために以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物ペレットは、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、フッ素系樹脂(B)6~25重量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物ペレットであって、
フッ素系樹脂(B)からメタノール水で抽出した抽出フッ素イオン濃度が50μg/L未満であり、
ペレットから50℃の温水に溶出した溶出フッ素イオン濃度が20μg/L未満であることを特徴とする。
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-第三ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメチルジフェニルスルホンのような、ジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
これらは単独または2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′-ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプテン、2,4,6-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプタン、1,3,5-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ベンゾール、1,1,1-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-エタンおよび2,2-ビス-〔4,4-(4,4′-ジヒドロキシジフェニル)-シクロヘキシル〕-プロパンなどが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は18000~23000が好ましい。このような粘度平均分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂は、一定の機械的強度を有し、成形時の流動性も良好であり好ましい。分子量が18000未満の場合は、成形品に十分な強度を付与できない場合が有り、分子量が23000を超える場合は、流動性が劣るとの問題が生じる場合がある。そして、この場合、シリコン表面汚染の原因となるフェノール類が加工中に揮発し難くなるという問題が生じ、その解消のために温度を上げると樹脂分解が生じてフェノール類が増加することがあり好ましくない。
ポリカーボネート樹脂(A)中のフェノール類とは、末端封鎖用1価フェノール:PTBPおよび/または原料の2価フェノール化合物:ビスフェノールAなどを意味し、原料として未反応のものや分解したものを含む。フェノール類の含有量は、30mg/L未満が好ましく、10mg/L未満がより好ましい。このようなポリカーボネート樹脂では、成形流動性が良好であり、高いコンパウンド温度とした場合でも、ポリカーボネート樹脂の分解が進んでフェノール類が増えることもなく、例えばウエハ表面汚染の原因となるフェノール類がコンパウンド工程で十分揮発するため、ベントによる脱気工程などを経る等しなくても揮発分が極めて少ない材料とできる。フェノール類が30mg/Lを超えると、成形品から揮発するフェノール類も無視できなくなるため、ウエハ等の表面汚染の原因となる可能性が有る。
<分析方法>
フェノール類濃度は、1.0gのポリカーボネートペレットを20mlのジクロロメタンに溶解させた後、90mlのメタノールを滴下してポリカーボネート樹脂を析出させた後の上澄み液を高速液体クロマトグラフにより測定することにより求めることができる。
フェノール類を少なくする方法としては、ポリカーボネート樹脂の洗浄を繰り返し行う方法等が挙げられる。
本発明にて使用されるフッ素系樹脂(B)としては、摺動性の観点から、溶融混練状態における外的作用により、繊維状になりにくい「非フィブリル形成性」のものが好ましい。たとえば低分子量ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン・パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等が挙げられるが、中でも摺動性の面から低分子量ポリテトラフルオロエチレンの使用が好ましい。該低分子量ポリテトラフルオロエチレンには少量の共重合成分を含んでいるものも含まれる。低分子量ポリテトラフルオロエチレンとしては、通常乾性潤滑剤として使用されるものが使用でき、好ましくは、微粒子状である。微粒子の粒子径については、電子顕微鏡やレーザー回折による方法で平均一次粒子径が0.05~1.0μmが好ましく、0.1~0.3μmがより好ましい。
フッ素系樹脂(B)からメタノール水で抽出した抽出フッ素イオン濃度は、50μg/L未満とすることが必要であり、30μg/L未満が好ましく、20μg/L未満がより好ましい。溶融混練後に得られるポリカーボネート樹脂組成物ペレットからの溶出フッ素イオンを市場要求である20μg/L未満と極力少なくする必要がある。ここで、フッ素イオン濃度は、以下の方法で測定される。
<分析方法>
抽出フッ素イオン濃度は、メタノール/脱イオン水(混合比率2:1(容積比))30ml中に2gのフッ素樹脂を分散させ、25℃で24時間放置後、イオンクロマトグラフにより求めることができる。
フッ素系樹脂(B)中のフッ素イオンを少なくする方法としては、特に特定されないが、フッ素系樹脂の水洗洗浄、溶媒洗浄などが挙げられる。本発明においては、フッ素系樹脂(B)のフッ素イオンを予め特定量以下に少なくしておくことにより、得られたペレットから溶出した溶出フッ素イオンを低減出来ることを見出している。得られるペレットの溶出フッ素イオンへの市場要求としては、凡そ20μg/L未満である。
フッ素系樹脂(B)の融点は、ASTM D4894に準拠した方法で測定して320℃以上が好ましく、325℃以上がより好ましい。フッ素系樹脂(B)の微粒子は再凝集しやすいので再凝集し難くするために焼成処理等の処理を施したものもあり、これらも好ましく使用できる。溶出フッ素イオン濃度が低いフッ素系樹脂(B)としてはGFL社より商品名INOLUB T212F等として販売されている。
フッ素系樹脂(B)の含有量はポリカーボネート樹脂100重量部に対し、6~25重量部が好ましく、7~20重量部がより好ましい。フッ素系樹脂(B)が6重量部未満では、摺動特性が十分ではなく、25重量部を超えると射出成形時に外観不良が発生することがあり好ましくない。
ペレットから50℃の温水に溶出した溶出フッ素イオン濃度は20μg/L未満であるが、10μg/L以下が好ましい。
<分析方法>
フッ素イオンの濃度(溶出フッ素イオン量)は、得られた樹脂組成物ペレット30gを、50℃の温水30mlに入れて、3時間保持して溶出させ、放冷後にイオンクロマトグラフにより測定する。
ペレットから作製した平板試験片を用いて測定した動摩擦係数は0.5未満が好ましく、0.4以下がより好ましい。ここで、動摩擦係数は、JIS K-7125に準拠し、得られたペレットから作製した平板試験片を用い、400g荷重をかけ、63mm×63mm×3mmのポリカーボネート樹脂板に対して測定する。
本発明の半導体ウエハ搬送容器用摺動部材は、前述した本発明のポリカーボネート樹脂組成物ペレットを成形して作製したことを特徴とする。
<ポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物ペレットは、たとえば、以下に詳述する第1溶融混練工程、第2溶融混練工程、および、冷却工程を含む製造方法で製造することができる。
第1溶融混練工程では、ポリカーボネート樹脂(A)を二軸押出機で溶融混練する。必要に応じて他の公知の添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤等、又、他の樹脂を配合することができる。二軸押出機としては、噛合い型同方向回転二軸押出機等の二軸押出機、二軸以上の多軸押出機が挙げられるが、噛合い型同方向回転二軸押出機が好ましい。二軸押出機は、原料を供給する原料供給口であるホッパー、中間供給口、ベント、ジャケット付きシリンダー、ダイヘッド等を備えることが好ましい。
ベントはベント圧によりベントしながらイオンやガスなどを排出することができ、二軸押出機の適切な場所(例えば、ホッパーと中間供給口や中間供給口とダイヘッドの間)に少なくとも1以上備えられていることが好ましい。ベント圧の真空度は、10~30kPa(-0.091MPa~-0.071MPa)が好ましい。
押出機のホッパーから中間供給位置までの領域を第1混練ゾーンとして利用して第1溶融混練工程を行うことができる。第1混練ゾーンでの混練温度は、230~300℃が好ましく、240~280℃がより好ましい。
第2溶融混練工程では、フッ素系樹脂(B)を中間供給口から供給し、溶融したポリカーボネート樹脂(A)と混練する。フッ素樹脂(B)を中間供給口から供給とは、フッ素系樹脂(B)を押出機のホッパーからポリカーボネート樹脂(A)と共に供給されるのではなく、ホッパーとは別の供給位置、すなわち、押出機のサイド部分より供給する。その結果、ポリカーボネート樹脂(A)中に分散した特定フッ素系樹脂(B)の分散粒子直径を小さくすることができ、フッ素系樹脂(B)同士が凝集することなく均一に分散することを実現できる。なお、ポリカーボネート樹脂(A)とフッ素系樹脂(B)を押出機に同時に供給すると、フッ素系樹脂(B)のみが溶融凝集する。
ここで、得られたペレット中のフッ素樹脂粒子の分散状態は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)による表面形態モルホロジー観察や切片形態モルホロジー観察により評価することができる。
押出機の中間供給位置からダイヘッドまでの領域を第2混練ゾーンとして利用して第2溶融混練工程を行うことができる。押出機のホッパーから中間供給位置までの第1混練ゾーンの温度に対して、中間供給位置からダイヘッドまでの第2混練ゾーンの温度や圧力などの内部環境をコントロールすることが好ましい。第2混練ゾーンの温度は、混練初期では、230℃から300℃程度の温度が有効であるが、第2混練ゾーンの先端側の温度はフッ素系樹脂(B)の融点である330℃よりも15℃程度下回る315℃以下、好ましくは310℃以下が好ましい。
さらに、分散性を向上させる手段として、押出機に備わるスクリューの回転数が挙げられるが、スクリュー回転数を必要以上にあげると、スクリュー先端部で樹脂が滞留し、スクリューによる剪断発熱が発生して、特定フッ素系樹脂(B)からの溶出フッ素イオンが増加する可能性がある。予め所定値までフッ素イオン量を減らしたフッ素系樹脂(B)を用いることにより、フッ素系樹脂(B)から発生するフッ素イオン増加を抑制することができる。さらに、良分散状態を得る程度までスクリュー回転数を上げることが可能となることから、混練時のフッ素系樹脂(B)からのフッ素イオンの発生も極力抑えつつ、優れた摩擦・摩耗特性を得る混練りを達成・実現できる。
押出機の圧力としては、例えば、スクリュー先端部からダイヘッド部領域の圧力は、8MPa以上が好ましく、8.2MPa以上がより好ましいダイヘッド付近の圧力はダイヘッド付近に配置されたダイ圧計により確認されるが、通常、押出機等の性能から上限は15MPa程度となる。
尚、ダイヘッド付近の圧力は、スクリュー回転数、スクリュー構成、異物を除去するメッシュ、ダイ孔、吐出量などによってコントロールでき、当業者により適宜選択・調整可能である。例えば、スクリュー回転数は、300rpm未満が好ましく、250rpm以下がより好ましい。
冷却工程では、溶融混練物をノズルから押出し、得られたストランドはローラーに引き取られ、純水バス中で冷却する。ペレット中の溶出フッ素イオンが少ないペレットを得るため、使用する純水の電気伝導度は5μS/cm以下が好ましく、1μS/cm以下がより好ましい。このような電気伝導度の純水バスを使用すると、溶出フッ素イオン以外の、溶出塩素イオン、溶出硫酸イオン等の少ないペレットを得ることができる。純水バスの水温は、20~80℃程度が好ましい。また、純水バスは、例えば、クリーンな材質で作られた熱交換機やフィルターを介して循環させながら電気伝導度を一定に保つよう制御することが好ましい。得られたポリカーボネート樹脂ペレットから作成した試験片における動摩擦係数測定したところ、0.62と不良であった。一方、ペレットから温水に溶出したフッ素イオンの濃度は、9μg/Lと合格であった。
ストランドは、ペレタイザーでカットされペレットとされる。
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本発明における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」及び「%」はそれぞれ重量基準である。
使用した配合成分は、以下のとおりである。
1.ポリカーボネート樹脂(A)
ビスフェノールAとホスゲンから合成された界面法の芳香族ポリカーボネート樹脂
(住化ポリカーボネート株式会社製SDポリカSD2000H、粘度平均分子量:21000
フェノール類10mg/L以下、以下、PCと略記)
<フェノール類濃度>
1.0gのポリカーボネートペレットを20mlのジクロロメタンに溶解させた後、90mlのメタノールを滴下してポリカーボネート樹脂を析出させた後の上澄み液を高速液体クロマトグラフにより測定した。
2.フッ素系樹脂(B)
ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE1と略記)
(GFL社製INOLUB T212F)
平均一次粒径:0.2μm、融点:約328℃、メタノール水へ抽出されたフッ素イオンの濃度:14μg/L
<フッ素イオン濃度>
予め脱イオン水で内部を洗浄し、乾燥した容量100mlのポリエチレン製容器にフッ素系樹脂(B)2gを入れ、メタノール/脱イオン水(混合比率2:1(容積比))30mlを添加した。容器を振り混ぜ、25℃で24時間放置した。その後、孔径0.45μmナイロン製メンブレンフィルターで上記混合溶液からフッ素系樹脂(B)のみを取り除き、目的成分のみ保持可能な濃縮カラムとマトリックスである有機溶媒が除去可能なマトリックス除去システムを備えたイオンクロマトグラフを用いて測定した。
3.比較例で用いた添加剤
ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE2と略記)
(AGC社製名L173JE)
平均一次粒径:0.3μm、融点:約332℃、メタノール水へ抽出されたフッ素イオンの濃度:460μg/L
(実施例1)
二軸押出機(株式会社日本製鋼所製TEX-44αII)を用い、ホッパー(トップフィード)から中間供給口までの第1混練ゾーンの温度260℃、スクリュー回転数200rpmに初期設定した。二軸押出機の最上流部に設けられたホッパーより、ポリカーボネート樹脂(A)(92質量%)を供給し、二軸押出機の下流側(トップフィードより供給された樹脂が充分溶融している状態)の中間供給口(サイドフィード)よりフッ素系樹脂(B)としてPTFE1(8重量%)を供給した。サイドフィードより下手側の第2混練ゾーンの押出機先端側ダイヘッド付近の温度は305℃であった。第2混練ゾーンの下手側のベント(真空度15kPa)を介してダイヘッドより押し出されたストランド状溶融混練物(温度307℃)を純水バス(電気伝導度1.0μS/m以下)で冷却し、ペレタイズしてポリカーボネート樹脂ペレットを得た。ダイヘッド付近の圧力は、8.5MPaであった。
<動摩擦係数>
得られた樹脂ペレットを120℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(株式会社FANUC製ROBOSHOT α-S100iB)を用いて設定温度300℃、射出圧力60MPaにて試験片(150mm×90mm×3mm)の平板を作製した。得られた試験片をJIS K-7125に準じ、400g荷重をかけ相手材が63mm×63mm×3mmのポリカーボネート樹脂に対する動摩擦係数を測定したところ、当該材料の動摩擦係数は0.31であった。
当該相手材は、ポリカーボネート樹脂としてビスフェノールAとホスゲンから合成されたポリカーボネート樹脂(住化ポリカーボネート社製SDポリカSD2000H 粘度平均分子量:21000)を用い、射出成型機(株式会社FANUC製ROBOSHOT α-S100iB)を用いて設定温度300℃、射出圧力70MPaにて成形片(150×90×3mm)を作製し、走行丸のこ盤にて63mm×63mm×3mmの大きさに加工して作製した。
<ペレットからの溶出フッ素イオン濃度>
得られたペレット30gを、50℃の温水30mlに入れて、3時間保持して溶出させ、放冷後にイオンクロマトグラフによりフッ素イオン量を測定した。溶出したフッ素イオンの濃度は、4μg/Lであった。
このように、フッ素系樹脂(B)が良好に分散した実施例1のポリカーボネート樹脂組成物は、優れた耐摩耗性を有し、ペレットからの溶出フッ素イオンが少ない成形品を与える。
(比較例1)
フッ素系樹脂(B)としてPTFE2を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂組成物のペレットを作製した。ダイヘッド付近の圧力は、8.6MPaであった。
得られたポリカーボネート樹脂ペレットから作成した試験片における動摩擦係数を測定したところ、0.34と合格であった。一方、ペレットから温水へ溶出したフッ素イオンの濃度は、160μg/Lと不合格であった。
(比較例2)
PTFE2:(8重量%)をポリカーボネート樹脂(A)と同じホッパー(トップフィード口)より供給したこと以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂組成物のペレットを作製した。ダイヘッド付近の圧力は、7.8MPaであった。
得られたポリカーボネート樹脂ペレットから作成した試験片における動摩擦係数測定したところ、0.62と不良であった。一方、ペレットから温水に溶出したフッ素イオンの濃度は、145μg/Lと不合格であった。
また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物ペレットによれば、該ペレットから作製した成形体は優れた摺動特性を有し、かつ不純物イオンが極めて少ないという特徴を有する。例えば、表面汚染の低減が求められる半導体ウエハ用搬送容器に使用される摺動部材として好適に使用でき、工業的利用価値は高い。

Claims (7)

  1. ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、フッ素系樹脂(B)6~25重量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物ペレットであって、
    フッ素系樹脂(B)のメタノール水で抽出した抽出フッ素イオン濃度が50μg/L未満であり、
    ペレットから50℃の温水に溶出した溶出フッ素イオンの濃度が20μg/L未満である、ポリカーボネート樹脂組成物ペレット。
  2. ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が18000~23000であり、ポリカーボネート樹脂(A)中のメタノールで抽出したフェノール類濃度が30mg/L未満である、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物ペレット。
  3. フッ素系樹脂(B)の平均一次粒子径が0.05~1.0μmであり、ASTM D4894に準拠して測定したフッ素系樹脂(B)の融点が320℃以上である、請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物ペレット。
  4. JIS K-7125に準拠し、得られたペレットから作製した平板試験片を用い、400g荷重をかけ、63mm×63mm×3mmのポリカーボネート樹脂板に対して測定した動摩擦係数が0.5未満である、請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物ペレット。
  5. 請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物ペレットを成形してなる、半導体ウエハ搬送容器用摺動部材。
  6. ポリカーボネート樹脂(A)を二軸押出機で溶融混練する第1溶融混練工程、
    フッ素系樹脂(B)を中間供給口から供給し、溶融したポリカーボネート樹脂(A)と混錬する第2溶融混錬工程、および、
    溶融混練物をノズルから押出し、得られたストランドを純水バスで冷却する冷却工程
    を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法。
  7. ASTM D4894に準拠して測定したフッ素系樹脂(B)の融点が320℃以上である、請求項6に記載のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法。
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