JP2024076398A - 風力発電設備のブレードの補修方法 - Google Patents

風力発電設備のブレードの補修方法 Download PDF

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Masakazu Tsuji
勝功 辻
Katsunori Tsuji
伸樹 宮本
Nobuki Miyamoto
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Abstract

【課題】低気温環境下でも施工可能で、単位面積当たりの補修作業時間が従来よりも短く、飛翔物のブレードへの衝突衝撃を弾性吸収できる風力発電設備のブレードの補修方法を提供する。
【解決手段】ブレードの損傷部分に織布を配置する第1工程と、第1工程で配置した前記織布にポリウレタン樹脂原料またはポリウレア樹脂原料をスプレー塗布する第2工程とを有し、スプレー塗布した前記ポリウレタン樹脂原料またはポリウレア樹脂原料が硬化して、前記織布を強化すると共に、前記ブレードの損傷部分に前記織布を接着する。
【選択図】図1

Description

本発明は風力発電設備のブレードの補修方法に関するものである。
国際的な紛争は後を絶たず紛争による化石由来のエネルギー供給環境は不安定さが益々増大し化石由来の燃料からの脱却、また、自給率の向上が必須となっており風力発電の重要性が更に高まると共に風力発電設備の単体出力は年々大出力化が進み7MWクラスも出現している。
このクラスでのブレード長さは80mを超え、幅は5mを超える。ブレードの回転は一見ゆっくりと回転しているように見えるが、半径方向先端の回転速度は新幹線並みの250km/時間以上となる。このためブレードには、雨滴、砂、枝葉、鳥などの様々な飛翔物の衝突によってエロージョン(摩耗)やクラック、ピンホール、剥離など損傷が発生する。また被雷等による損傷も発生する。これらのブレードの損傷を放置すると,発電効率の低下を招くだけでなく,ブレードの致命的な損壊につながるおそれもある。そこで、ブレードは定期的な点検および補修が必要となる。
例えば、特許文献1には、ブレードの損傷部が比較的小さい場合に、予め作製しておいた補修部材を損傷部に接着する補修方法が提案されている。また特許文献2には、損傷部分を含む所定範囲を削り取り、当該範囲に第1の補修部材を積層して固定する又はパテ塗りして固定した後、固定部分にシート状の第2の補修部材を巻き付けて固定する修理方法が提案されている。
特開2019-73998号公報 特開2021-179188号公報
ブレード補修は損傷の程度によってロープワーク、ゴンドラ作業、地上作業のいずれかが選択される。補修期間は、ロープワークで1週間~2週間、ゴンドラ作業で2週間~3週間、地上作業で1ヶ月程度である。一般に、FRPを用いた補修が長期間になるのは、ブレードは40層~50層のFRP層から構成されているところ、補修作業においてFRP層を1層形成するごとに脱泡、硬化確認を行う必要があり、1層形成するのにおおよそ4時間~6時間がかかることによる。FRPによる補修では1日当たり3層施工するのが限界である。FRP層を50層形成するには約17日もの工期が必要となる。また、エポキシ樹脂などの硬化樹脂を用いる場合、気温5℃以下では樹脂が硬化しないため補修作業ができない。
そこで本発明の目的は、低気温環境下でも施工可能で、単位面積当たりの補修作業時間が従来よりも短く、飛翔物のブレードへの衝突衝撃を弾性吸収できる補修方法を提供することにある。
前記目的を達成する本発明の実施形態に係る風力発電設備のブレードの補修方法は、前記ブレードの損傷部分に織布を配置する第1工程と、第1工程で配置した前記織布にポリウレタン樹脂原料またはポリウレア樹脂原料をスプレー塗布する第2工程とを有し、スプレー塗布した前記ポリウレタン樹脂原料またはポリウレア樹脂原料が硬化して、前記織布を強化すると共に、前記ブレードの損傷部分に前記織布を接着することを特徴とする。
前記構成のブレード補修方法において、第1工程と第2工程とをこの順序で複数回繰り返し行う構成としてもよい。
また前記構成のブレード補修方法において、第1工程と第2工程とをこの順序で所定回繰り返し行した後、第1工程の前に、ポリウレタン樹脂原料またはポリウレア樹脂原料をスプレー塗布する第3工程をさらに有するのが好ましい。
また前記構成のブレード補修方法において、前記織布の開口率は10%以上30%以下であるのが好ましい。
なお、本明細書において織布の開口率とは、下記式から算出される値をいうものとする(図12を参照)。
開口率(%)=(a+b)/{(a+W1)×(b+W2)}×100
a:開口部の横長さ,b:開口部の縦長さ,W1:縦糸の幅,W2:横糸の幅
また前記構成のブレード補修方法において、前記織布の厚さは0.1mm以上0.5mm以下であるのが好ましい。
本発明に係るブレードの補修方法によれば、低気温環境下でも施工可能で、単位面積当たりの補修作業時間が従来よりも短く、飛翔物のブレードへの衝突衝撃を弾性吸収できる。
本発明の実施形態に係るブレードの補修方法のフローチャートである。 図1のブレード補修方法の概説図である。 図1のブレード補修方法の概説図である。 図1のブレード補修方法の概説図である。 本発明の実施形態に係る他のブレードの補修方法のフローチャートである。 図4のブレード補修方法の概説図である。 図4のブレード補修方法の概説図である。 図4のブレード補修方法の概説図である。 ブレードの損傷例を示す正面図である。 スプレー塗布装置の一例を示す図である。 スプレー塗布装置の他の例を示す図である。 織布の開口部および開口率を説明する図である。
以下、本発明に係るブレードの補修方法について説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
図9に風力発電設備のブレード1の正面図を示すと共に、ブレードの代表的な損傷の発生部位を示す。以下、本発明の実施形態に係るブレードの補修方法について説明する。
(第1実施形態)
図1に、第1実施形態に係るブレードの補修方法のフローチャートを示す。図2~図4に補修方法の概説図を示す。
(サンディング工程)
図1のステップS101において、図2(a)に示すブレード1の損傷部分8およびその周囲をサンディングする。具体的には、サンダー等の電動工具や#150以下の粗研ぎサンドペーパーを用いて損傷部分8およびその周囲の粗取りを行った後、#150から#400の中研ぎサンドペーパーを用いて平滑化を行い、図2(b)に示すような、損傷部分8を中心とした、周壁が緩やかな階段状となった凹部9を形成する。
なお、図2および図3において、ブレード1は、FRP層L1,L2,L3,L4・・・が数十層積層された構造を有している。FRP層の層厚は、一般に、0.15mm~1.5mm程度である。このような構造のブレード1において凹部9の周壁を階段状にすることによって、ブレード1のFRP層に対する補修層(PU織布層51aやPU樹脂層54など)の接合面積が大きくなり、ブレード1に生じる曲げ応力やねじり応力に対する補修部分の耐性が大きくなる。ブレード1のFRP層と補修層との重ね合わせ長さは、FRP層の引張強さ、剪断強さ、積層数などから適宜決定される。
図2および図3に示すブレード1では、トップコート層TCと第1層目のFRP層L1から第3層目のFRP層L3までがサンディングされているが、サンディングの深さ(サンディングされるFRP層の総数)は損傷部分8の深さによって適宜決定される。
(プライマー層の形成工程)
次にステップS102において、サンディングされたブレード1の凹部9の全体にプライマー剤が塗布されプライマー層2が形成される(図2(c))。プライマー剤としては、樹脂成分を溶剤に分散させたものを用いることができる。樹脂成分としては、例えば、アクリル-ウレタン系樹脂、アクリル-スチレン共重合樹脂、ウレタン-セルロース系樹脂等が挙げられる。プライマー層2の乾燥後の厚みは特に限定されないが、通常、0.1mm~0.3mmが好ましく、より好ましくは0.15mm~0.20mmの範囲である。
(織布の配置(第1工程))
ステップS103において、凹部9の最深層に織布31aが配置される。図2(d)に示すように、凹部9の最深層は、ブレードの第3層目のFRP層L3に対応しており、織布31aは凹部9の最深層にのみ配置され、最深層の全体を覆うように配置される。
本発明で使用する織布31aとしては、例えば、ガラス繊維や炭素繊維から構成されるシート状の織布、ポリオレフィン系やポリエステル系のシート状の織布などが挙げられる。これらの中でもガラス繊維や炭素繊維から構成されるシート状の織布が好ましく使用される。
シート状の織布31aにおける開口部30(図12に図示)が占める面積割合である開口率は10%~30%の範囲が好ましい。織布31aの開口率が10%未満であると、後述のポリウレタン樹脂原料またはポリウレア樹脂原料のスプレー塗布の際に、織布31aを通り抜ける樹脂原料が少なくなり、織布31aがプライマー層2に十分に接着されないおそれがある。一方、織布31aの開口率が30%を超えると、前記樹脂原料をスプレー塗布し硬化させた際に十分な強度が得られないおそれがある。開口部30の横方向長さaおよび縦方向長さbはいずれも、通常、0.4mm~1mmの範囲であるのが好ましい。
本発明で使用する織布31aの厚さは、通常、0.1mm~1.5mmの範囲が好ましい。織布31aの厚さが0.1mm未満であると、前記樹脂原料をスプレー塗布し硬化させた際に十分な強度が得られないおそれがある。一方、織布31aの厚さが1.5mmを超えると、ポリウレタン樹脂原料またはポリウレア樹脂原料のスプレー塗布の際に、織布31aを通り抜ける樹脂原料が少なくなり、織布31aがプライマー層2に十分に接着されないおそれがある。織布31aのより好ましい厚さは0.1mm~0.5mmの範囲である。
(スプレー塗布I(第2工程))
ステップS104において、凹部9の最深層に配置された織布31aにポリウレタン樹脂原料またはポリウレア樹脂原料(以下、「樹脂原料」と記すことがある。)4がスプレー塗布される。図2(e)に示すように、樹脂原料4のスプレー塗布は、織布31aが配置された凹部9の最深層のみに行われる。織布31aにスプレー塗布された樹脂原料4は、織布31aの開口部を浸透通過し、樹脂原料4が硬化することで、ブレード1の樹脂層L4の表層にプライマー層2を介して織布31aが接着される。また同時に織布31aを含有した強固なポリウレタン樹脂層またはポリウレア樹脂層(以下「PU織布層」)51aが形成される。PU織布層51aの表面は平滑面となる。
ポリウレタン樹脂およびポリウレア樹脂は、優れた耐摩耗性を有し、衝撃にも強いので、ブレード1の損傷を効果的に抑えることができる。またポリウレタン樹脂およびポリウレア樹脂はスプレー塗布が可能であるので、作業労力の軽減および作業時間の短縮化が図れる。具体的には、イソシアネートとポリオールとの2液またはイソシアネートとアミンとの2液をスプレーガンGで衝突混合させて凹部9の最深層に塗布する。
本出願人が行った実験によれば、気温-5℃の環境下であっても、吹き付けられたポリウレア樹脂層は15秒~20秒程度で硬化した。また、補修工程において、織布の配置と、スプレー塗布とに要する時間は5min/m~10min/m程度であった。
イソシアネートとアミンとの2液を用いてスプレー塗布する場合には、例えば図10に示すスプレー塗布装置SPを用いるのが好ましい。図10に示すスプレー塗布装置SPでは、ドラム缶61とドラム缶62からイソシアネートとアミンとがそれぞれ装置本体60に供給され、装置本体60において所定圧力に調整されたイソシアネートとアミンは加熱ホース63を介してスプレーガンGに供給される。そして、スプレーガンGにおいてイソシアネートとアミンとが混合されてブレードの損傷部分に噴霧されポリウレア樹脂層が形成される。例えば、噴霧する際のスプレー塗布装置SPの装置本体60からの吐出圧力は14MPa~24MPa程度で、液圧温度は60℃~85℃程度である。このようなスプレー塗布装置SPとしては、例えば、GRACO社製「H-XP3リアクター」が好適に使用される。加熱ホース63の長さは130m程度まで延長できるので、ブレードをハブから取り外して地上で作業する場合のみならず、ブレードをハブに取り付けたままでロープワークやゴンドラ作業の場合でもスプレー塗布装置SPは用いることができる。なお、原料液としてイソシアネートとポリオールとの2液を用いれば同様の作業でポリウレタン樹脂層が形成される。
ブレード1の損傷程度が軽い場合や損傷面積が小さい場合には、例えば図11に示すハンドガンスプレー塗布装置(以下、「ハンドガン」と記すことがある。)HGを用いてPU織布層51aを形成してもよい。ハンドガンHGには主剤と硬化剤の2つのカートリッジ71,72が取り付けられる。ハンドガンHGに圧力0.5MPa~0.7MPaの高圧エアーが供給されると、2つのカートリッジ71,72内の主剤と硬化剤とがミキシングチューブ73内で衝突混合しスプレーノズル74からブレードの損傷部分に噴霧されPU織布層51aが形成される。主剤と硬化剤のカートリッジ71,72の充填容量は、通常、600mL程度であり、PU織布層51aの層厚が1mmの場合1.2mの施工ができる。
硬化したPU織布層51aの厚みは、織布31aの厚さ以上であって、通常、0.1mm以上1.5mm以下の範囲である。樹脂層51の厚みの制御は、例えば、原料液の加熱温度、スプレーガンSPまたはハンドガンHGへの供給圧力、スプレーガンSPまたはハンドガンHGと被塗布面との距離、スプレーガンSPまたはハンドガンHGの移動速度などによって制御することができる。
次に、ステップS105において、PU織布層51aの層厚がブレード1のFRP層L3の層厚と略同一かどうかが判断される。PU織布層51aの層厚がブレード1のFRP層L3の層厚と略同一でない、すなわちPU織布層51aの層厚がブレード1のFRP層L3の層厚に達していなければ(ステップS105の「N」)、ステップS103に戻って再び織布31bの配置がなされ、ステップS104のスプレー塗布が再度行われ、PU織布層51aの表面にさらにPU織布層51bが積層形成される(図3(f)~図3(g))。ここで、織布31bは、織布31aと同じものが使用されるが、織布31aの繊維方向と異なる繊維方向となるように、すなわち織布31aの繊維方向と交差するように、且つ、開口部の位置が織布31aの開口部の位置と異なるように配置するのが望ましい。
そしてまた、ステップS105において、PU織布層51aとPU織布層51bの層厚の和がブレード1のFRP層L3の層厚に達しているかどうかが判断される。
形成されたPU織布層51aとPU織布層51bの層厚の総和がブレード1のFRP層L3の層厚に達すると(ステップS105の「Y」)、ステップS106に進む。一方、PU織布層51aとPU織布層51bの層厚の総和がブレード1のFRP層L3の層厚に達していなければ(ステップS105の「N」)、ステップS103の織布の配置とステップS104のスプレー塗布とが繰り返し行われ、PU織布層51a,51b,・・・の層厚の総和がブレード1のFRP層L3の層厚に達するまでPU織布層51a,51b,・・・が積層形成される(本実施形態ではPU織布層51a,51bの2層でブレード1のFRP層L1の層厚に達した)。
形成されたPU織布層51a,51b,・・・の層厚の総和がブレード1のFRP層L3の層厚に達すると(ステップS105の「Y」)、ステップS106において、凹部9が形成されたブレード1のFRP層L1~L3のすべてがPU織布層で補修されたかどうかが判断される。
ブレード1のFRP層L1~L3のすべてがPU織布層で補修されていなければ(ステップS106の「N」)、ステップS103に戻って、凹部9のFRP層L2に対応する層に織布32が配置され、ステップS104のスプレー塗布が行われ、PU織布層52形成される(図3(h)~図3(i))。そして、ステップS105において、PU織布層52の層厚がブレード1のFRP層L2の層厚と略同一かどうかが判断される。PU織布層52の層厚がブレード1のFRP層L2の層厚に達していなければ、ステップS103の織布の配置とステップS104のスプレー塗布とが繰り返し行われ、PU織布層52a,52b,・・・が積層形成されていく(本実施形態ではPU織布層52の1層でブレード1のFRP層L2の層厚に達した)。
形成されたPU織布層52の層厚がブレード1のFRP層L2の層厚に達していると(ステップS105の「Y」)、ステップS106において、凹部9が形成されたブレード1のFRP層L1~L3のすべてがPU織布層で補修されたかどうかが再び判断される。
ブレード1のFRP層L1~L3のすべてがPU織布層で補修されていなければ(ステップS106の「N」)、ステップS103に戻って、凹部9のFRP層L1に対応する層に織布33aが配置され、ステップS104のスプレー塗布が行われ、PU織布層53a形成される(図3(j)~図4(k))。そして、ステップS105において、PU織布層53aの層厚がブレード1のFRP層L1の層厚と略同一かどうかが判断される。PU織布層53aの層厚がブレード1のFRP層L1の層厚に達していなければ、ステップS103の織布33bの配置とステップS104のスプレー塗布とが繰り返し行われ(図4(l)~図4(m))、PU織布層53a,53b,・・・が積層形成されていく(本実施形態ではPU織布層53a,53bの2層でブレード1のFRP層L3の層厚に達した)。
形成されたPU織布層53a,53bの層厚がブレード1のFRP層L1の層厚に達していると(ステップS105の「Y」)、ステップS106において、凹部9が形成されたブレード1のFRP層L1~L3のすべてがPU織布層で補修されたかどうかが再び判断される。
なお、本実施形態ではブレード1の損傷部分の深さは第3層目のFRP層L3までであったが、損傷部分がより深く、第4層以上の層にまで至る場合には、織布の配置と樹脂原料のスプレー塗布とがブレード1の補修対象層に対応して繰り返し行われる(ステップS103~ステップS106)。
(トップコート層の形成工程)
ステップS106において、凹部9が形成されたブレード1のFRP層L1~L3のすべてがPU織布層で補修されていると(ステップS106の「Y」)、ステップS107においてPU織布層53bの外側にトップコート層(表面保護層)50が形成される(図4(n))。
トップコート層50はトップコート組成物を塗布し、必要により、乾燥および加熱させることにより形成される。トップコート層50によって、例えばPU織布層53bの耐候性、耐光性、耐水性、耐汚染性などの向上が図られる。トップコート組成物の種類は特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルブチラール樹脂、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂塗料であってもよく、ボイル油や乾性油、油ワニスなどを主成分とした油性塗料や、ニトロセルロース(硝化綿)を主成分としたセルロース塗料等を用いることができる。これらのトップコート組成物は、例えば、強溶剤形、弱溶剤形、及び水系形等であってもよい。
トップコート組成物には添加物として、紫外線吸収材、光安定材、遮光材、造膜助剤、耐汚染親水性付与材などが添加されていてもよい。また、補修部分の色調を揃えるために顔料がトップコート組成物に混合されていてもよい。
トップコート層50の厚みは特に限定されないが、通常、0.15mm~0.2mmの範囲が好ましい。
(第2実施形態)
図5に、第2実施形態に係るブレードの補修方法のフローチャートを示す。図6~図8に補修方法の概説図を示す。第2実施形態に係る補修方法が、第1実施形態の補修方法と異なる点は、第1工程と第2工程とを所定回繰り返し行した後、第1工程の前に、ポリウレタン樹脂原料またはポリウレア樹脂原料をスプレー塗布してPU樹脂層を形成する点にある。本実施形態でいえば、PU織布層51a,51bとPU織布層53a,53bとの間に、織布を含まないPU樹脂層54が挟み込まれることによって、PU織布層51a,51bとPU織布層53a,53bとの間の接着強度がより高くなり層間での剥離が確実に抑制されるようになる。以下、第1実施形態の補修方法と異なる工程を中心に説明する。
図5に示すフローチャートにおいて、ステップS203~ステップS206において、ブレード1のFRP層L3に対応する層に、PU織布層51a,51bが形成される(図6(d)~図7(g))。
(スプレー塗布II(第3工程))
次いで、ステップS207において、ポリウレタン樹脂原料またはポリウレア樹脂原料がスプレー塗布され、PU樹脂層54が形成される(図7(h))。ここで使用されるポリウレタン樹脂原料またはポリウレア樹脂原料は、ステップS204のスプレー塗布Iで用いられたものと同じものが使用される。
ステップS208において、PU樹脂層54の層厚がブレード1のFRP層L2の層厚と略同一かどうかが判断される。PU樹脂層54の層厚がブレード1のFRP層L2の層厚と略同一でない、すなわちPU樹脂層54の層厚がブレード1のFRP層L2の層厚に達していなければ(ステップS208の「N」)、ステップS207のスプレー塗布が繰り返し行われ、PU樹脂層54a,54b,・・・の層厚の総和がブレード1のFRP層L2の層厚に達するまでPU樹脂層54a,54b,・・・が積層形成される(本実施形態ではPU樹脂層54の1層でブレード1のFRP層L2の層厚に達した。)。
一方、ステップS208において、形成されたPU樹脂層54の層厚の総和がブレード1のFRP層L2の層厚に達すると(ステップS207の「Y」)、ステップS209において、凹部9が形成されたブレード1のFRP層L1~L3のすべてがPU織布層またはPU樹脂層で補修されたかどうかが判断される。
ブレード1のFRP層L1~L3のすべてがPU織布層またはPU樹脂層で補修されていなければ(ステップS209の「N」)、ステップS203に戻って、ブレード1のFRP層L1に対応する層について、織布33a,33bの配置工程と、ステップS204のプレー塗布工程とが繰り返し行われ、PU織布層53a,53bが形成される(図7(i)~図8(l))。
そして、ステップS206において、凹部9が形成されたブレード1のFRP層L1~L3のすべてがPU織布層またはPU樹脂層で補修されたと判断されると、ステップS210に移動して、PU織布層53bの外側にトップコート層(表面保護層)50が形成される(図8(m))。
(その他)
以上説明したブレードの補修方法では、損傷部分のサンディング、プライマー層2の形成、トップコート層50の形成といった各工程を行っていたが、ブレードの損傷状態や風力発電設備の設置環境などによってはこれらのこれら全ての工程が必ずしも必要とは限らず、これらの工程の1つまたは2つ以上を省略しても構わない。また、逆に図1または図5に示した補修工程に加えて、必要により他の工程を付け加えても勿論構わない。
本発明に係るブレードの補修方法によれば、低気温環境下でも施工可能で、単位面積当たりの補修作業時間が従来よりも短く、飛翔物のブレードへの衝突衝撃を弾性吸収できる。
1 ブレード
2 プライマー層
4 ポリウレタン樹脂原料またはポリウレア樹脂原料
8 損傷部分
9 凹部
30 開口部
31a,31b,32,33a,33b 織布
50 トップコート層
51a,51b,52,53a,53b PU織布層
54 PU樹脂層
TC トップコート層
L1~L4 FRP層

Claims (5)

  1. 風力発電設備のブレードの補修方法であって、
    前記ブレードの損傷部分に織布を配置する第1工程と、
    第1工程で配置した前記織布にポリウレタン樹脂原料またはポリウレア樹脂原料をスプレー塗布する第2工程と
    を有し、
    スプレー塗布した前記ポリウレタン樹脂原料またはポリウレア樹脂原料が硬化して、前記織布を強化すると共に、前記ブレードの損傷部分に前記織布を接着することを特徴とするブレードの補修方法。
  2. 第1工程と第2工程とをこの順序で複数回繰り返し行う請求項1記載のブレードの補修方法。
  3. 第1工程と第2工程とをこの順序で所定回繰り返し行した後、第1工程の前に、ポリウレタン樹脂原料またはポリウレア樹脂原料をスプレー塗布する第3工程をさらに有する請求項2記載のブレードの補修方法。
  4. 前記織布の開口率が10%以上30%以下である請求項1~3のいずれかに記載のブレードの補修方法。
  5. 前記織布の厚さが0.1mm以上0.5mm以下である請求項4記載のブレードの補修方法。
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