JP2024067718A - ガスバリアフィルム及びガスバリアフィルムの製造方法 - Google Patents

ガスバリアフィルム及びガスバリアフィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高いガスバリア性及び高い耐熱性を有する、ガスバリアフィルムを及びその製造方法を提供する。【解決手段】所定雰囲気下での水蒸気透過率が1g/m2/day以下である基材上に設けられたガスバリア層を有し、前記ガスバリア層は、改質処理を施したポリシラザン膜であり、[I]前記基材とは反対側の第1の表面側に位置する改質領域と、前記改質領域に接しかつ前記改質領域よりも前記基材側に位置する非改質領域とを含み、前記改質領域の厚さが前記非改質領域の厚さ以上であるか、又は、[II]前記ガスバリア領域の全てが改質領域であり、前記改質領域の屈折率が1.70~2.00であり、前記非改質領域の屈折率が1.45~1.69である、ガスバリアフィルム。【選択図】図1

Description

本発明は、ガスバリアフィルム及びガスバリアフィルムの製造方法に関する。
近年、ガスバリアフィルムは、基板材料や封止材料として広く用いられている。ガスバリアフィルムとしては、ポリシラザン系化合物を用いて形成されたガスバリア層を有するものが知られている。
ポリシラザン系化合物を用いて形成されたガスバリア層を有するガスバリアフィルムにおいて、ガスバリア層に改質処理を行ってガスバリア性を高めることが提案されている。中でも、プラズマ照射によって特定のイオンをガスバリア層に注入して改質を行うプラズマイオン注入処理は、ガスバリア性を特に高めやすく、非常に有用な改質方法である。
以下、水蒸気や酸素の透過を抑制する特性を「ガスバリア性」、ガスバリア性を有するフィルムを「ガスバリアフィルム」という。
例えば、特許文献1には、基材と改質促進層とを有する基材ユニットにガスバリア層が形成されたガスバリア性積層体が記載されている。そして、ポリシラザン系化合物を含有する層の表面にアルゴン(Ar)をプラズマイオン注入して改質処理を施すことにより、上記ガスバリア層を形成したことが記載されている。
ここで、様々な用途へのガスバリアフィルムの適用が望まれており、例えば、半導体チップを含む電子部品等をガスバリアフィルム上に貼付したり、さらに封止材で封止したりする態様が考えられる。このような場合、ガスバリアフィルムが高温下に曝される加熱工程に供されることもあるため、加熱工程を経ても高いガスバリア性を保持できる、高耐熱性のガスバリアフィルムが求められる可能性がある。
国際公開第2015/186694号
本発明者らの検討によれば、従来用いられているアルゴンガスを用いたプラズマイオン注入処理では、改質領域を十分厚くすることができないため、ガスバリア性を更に高めることが難しく、また、厚い非改質領域が残存する結果、耐熱性を十分に高めにくいガスバリアフィルムになってしまうことが判明した。
なお、特許文献1には、プラズマイオン注入処理に用いるガス種として、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、及びキセノン等の希ガスのイオンが挙げられる旨の記載がある。しかし、特許文献1の実施例で具体的に用いられているのはアルゴンイオンのみであり、また、特許文献1には、耐熱性の観点から、所定の屈折率を有する改質領域を十分な厚さで形成することについての記載がない。
本発明は、上記問題を鑑み、高いガスバリア性及び高い耐熱性を有するガスバリアフィルム及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、所定の基材上に所定の改質領域を含むガスバリア層を設けることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]を提供するものである。
[1]40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が1g/m/day以下である基材と、前記基材上に設けられたガスバリア層とを有し、
前記ガスバリア層は、改質処理を施したポリシラザン膜であり、
前記ガスバリア層は、[I]前記基材とは反対側の第1の表面側に位置する改質領域と、前記改質領域に接しかつ前記改質領域よりも前記基材側に位置する非改質領域とを含み、前記改質領域の厚さが前記非改質領域の厚さ以上であるか、又は、[II]前記ガスバリア層の全てが改質領域であり、
前記改質領域の屈折率が1.70~2.00であり、前記非改質領域の屈折率が1.45~1.69である、ガスバリアフィルム。
[2]前記ガスバリア層はケイ素、酸素、及び窒素を含み、前記ガスバリア層全体のケイ素、酸素、及び窒素の合計を100at%としたときの元素比率Siが、x:y=1:0.1~1.5、x:z=1:0.2~0.7、y:z=1:0.1~7.0である、上記[1]に記載のガスバリアフィルム。
[3]前記ガスバリア層の、前記第1の表面から15nm以上の深さ方向において、下記式(1a)で表されるxの変化率、下記式(1b)で表されるyの変化率、及び下記式(1c)で表されるzの変化率が、それぞれ20%以下である、上記[2]に記載のガスバリアフィルム。
xの変化率(%)={(x-x)/(x+x)}×100・・・式(1a)
yの変化率(%)={(y-y)/(y+y)}×100・・・式(1b)
zの変化率(%)={(z-z)/(z+z)}×100・・・式(1c)
上記式(1a)中、xはxの最大値、xはxの最小値を表す。
上記式(1b)中、yはyの最大値、yはyの最小値を表す。
上記式(1c)中、zはzの最大値、zはzの最小値を表す。
[4]前記改質領域の厚さが15~1,000nmであり、前記非改質領域の厚さが0~1,000nmである、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のガスバリアフィルム。
[5]前記ガスバリアフィルムを、窒素雰囲気下、350℃で5時間加熱した後の、40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が、1.0×10-2g/m/day未満である、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載のガスバリアフィルム。
[6]基材と、前記基材上に設けられたガスバリア層とを有するガスバリアフィルムの製造方法であって、
前記基材は、40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が1g/m/day以下であり、
前記基材上に、ポリシラザン化合物の溶液を塗布することにより、前記ガスバリア層を形成するためのガスバリア前駆層を形成し、
前記ガスバリア前駆層の表面部に対して、ヘリウムガスの存在下でプラズマ照射して、前記ガスバリア前駆層の表面部に改質領域を形成することにより、ガスバリア層を形成し、
前記ガスバリア層は、[I]前記基材とは反対側の第1の表面側に位置する改質領域と、前記改質領域に接しかつ前記改質領域よりも前記基材側に位置する非改質領域とを含み、前記改質領域の厚さが前記非改質領域の厚さ以上であるか、又は、[II]前記ガスバリア層の全てが改質領域である、ガスバリアフィルムの製造方法。
本発明によれば、高いガスバリア性及び高い耐熱性を有する、ガスバリアフィルム及びその製造方法を提供することができる。
ガスバリアフィルムの構成例を示す断面模式図である。 ガスバリア層の深さ方向における元素比率の一例を示すグラフである。 ガスバリアフィルムの製造方法の一例を示す工程図である。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称することがある)に係るガスバリアフィルムについて説明する。
1.ガスバリアフィルム
本発明の実施形態に係るガスバリアフィルムは、40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が1g/m/day以下である基材と、上記基材上に設けられたガスバリア層とを有し、上記ガスバリア層は、改質処理を施したポリシラザン膜であり、上記ガスバリア層は、[I]上記基材とは反対側の第1の表面側に位置する改質領域と、上記改質領域に接しかつ上記改質領域よりも上記基材側に位置する非改質領域とを含み、上記改質領域の厚さが上記非改質領域の厚さ以上であるか、又は、[II]上記ガスバリア層の全てが改質領域であり、上記改質領域の屈折率が1.70~2.00であり、上記非改質領域の屈折率が1.45~1.69である。
上記ガスバリアフィルムが有するガスバリア層は、改質処理を施したポリシラザン膜である。ポリシラザン膜は、改質によって、ポリシラザンのSi-H結合及びN-H結合の水素結合が切断される脱プロトン反応により新たにSi-N結合が形成され、緻密な膜構造を有し化学的に安定な状態に変化するものと考えられる。上記ガスバリアフィルムにおいては、ガスバリア層が、上記[I]又は[II]の構成を有することにより、改質領域が十分に厚く、ガスバリア性に優れたガスバリアフィルムとなる。
そして、上記改質領域の屈折率が上記範囲にあることにより、良好なガスバリア性及び耐熱性を確保できる。また、上記非改質領域の屈折率が上記範囲にあることにより、改質されることで良好なガスバリア性及び耐熱性を発現するポリシラザン膜が得られる。
なお、改質領域及び非改質領域の屈折率は、分光エリプソメーターを用いて測定することができる。
また、上記ガスバリアフィルムが有する基材は、その水蒸気透過率が所定値以下のものであるため、上記基材を介してガスバリア層に水分が進入することが抑制され、時間の経過とともに非改質領域がSiOへ転化することが防止される。一方で、本発明者らの検討によれば、非改質領域のSiOへの転化が防止される結果、ガスバリアフィルムが高熱環境下に置かれた場合には、当該非改質領域内で熱分解反応が進行し、水素とアンモニア(NH)が脱離するものと推定され、ガスバリア層にクラックが生じやすくなるという問題が生じることが判明している。
本実施形態に係るガスバリアフィルムにおいては、上記構成[I]又は[II]を備え、かつ、上記改質領域及び非改質領域がそれぞれ所定の屈折率を有することにより、ガスバリアフィルムが高熱環境下に置かれた場合でも非改質領域の反応の進行による影響を緩和し、ガスバリア層にクラックが発生することを防止し、結果的に、加熱によるガスバリアフィルムのガスバリア性能の低下を防止することができる。
1-1.ガスバリアフィルムの構成例
本発明の実施形態に係るガスバリアフィルムの具体的な構成例を図1に示す。
図1(a)の断面模式図に示されるガスバリアフィルム100Aは、基材10と、ガスバリア性を有するガスバリア層20Aとからなる。ガスバリア層20Aは、基材10とは反対側の第1の表面側に位置する改質領域22と、改質領域22に接しかつ改質領域22よりも基材10側に位置する非改質領域21とを含む。改質領域22の厚さは非改質領域21の厚さ以上である。
図1(b)の断面模式図に示されるガスバリアフィルム100Bは、基材10と、ガスバリア性を有するガスバリア層20Bとからなる。ガスバリア層20Bの全てが改質領域である。後述するように、イオン種としてヘリウムを用いるプラズマイオン注入を行うことにより、ガスバリア層の全てを改質領域とすることができる。
ガスバリアフィルム100A、100Bにおいて、基材10は支持体11及び水分侵入抑制層12を有している。水分侵入抑制層12は、支持層11の、ガスバリア層20A、20Bに面する側の表面に設けられている。
基材10とガスバリア層20A、20Bとは直接接していてもよいし、基材10とガスバリア層20A、20Bとの間に他の層が介在していてもよい。
基材10とガスバリア層20A、20Bとが直接接していれば、ガスバリアフィルム100A、100Bを薄くしやすくなる。
ガスバリアフィルムの2つの主面のうち、少なくとも一方の面に剥離シートや保護フィルムが設けられていてもよい。つまり、ガスバリアフィルム100A、100Bであれば、基材10のガスバリア層20A、20Bとは反対側の面、及び、ガスバリア層20A、20Bの基材10とは反対側の面のうち少なくとも一方に、剥離シート又は保護フィルムが設けられていてもよい。
剥離シートや保護フィルムを設けることにより、ガスバリアフィルム100A、100Bが、最終製品に用いられる前の中間製品の状態で保管されたり搬送されたりする際に、ガスバリア層20A、20B、又は基材10を保護することができる。
上記改質領域は、ガスバリア層の最表面に位置していてもよいし、ガスバリア層の内部に位置していてもよい。いずれも場合であっても、上記[I]の構成においては、ガスバリア層の、改質領域よりも基材側に非改質層が存在する。良好なガスバリア性を発揮する観点、及び製造容易性の観点からは、図1(a)、図1(b)に示す改質領域22のように、ガスバリア層の最表面に位置していることが好ましい。
上記[I]の構成を有するガスバリアフィルムにおいて、改質領域が、深さ方向に複数存在していてもよい。この場合、端部からの水蒸気透過を防止する観点から、複数の改質領域のうち一つが、ガスバリアフィルムの最表面に位置していることが好ましい。
なお、改質領域が深さ方向に複数存在するガスバリア層は、例えば、ガスバリア層を形成するためのガスバリア前駆層の形成と後述する改質処理とを繰り返すことにより得ることができる。
上記ガスバリアフィルムの厚さは、目的とする用途等によって適宜決定することができる。上記ガスバリアフィルムの実質的な厚さは、取り扱い性の観点から、好ましくは1~1,000μm、より好ましくは3~200μm、より好ましくは5~100μmである。
なお、「実質的な厚さ」とは、使用状態における厚さをいう。すなわち、上記ガスバリアフィルムが剥離シートや保護フィルムを有している場合、使用時に除去されるこれらの剥離シートや保護フィルムの厚さは「実質的な厚さ」には含まれない。
上記ガスバリアフィルムを、窒素雰囲気下、350℃で5時間加熱した後の、40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率は、高いガスバリア性をより確保しやすくする観点から、好ましくは1.0×10-2g/m/day未満であり、より好ましくは5.4×10-3g/m/day以下、更に好ましくは5.0×10-3g/m/day以下、より更に好ましくは9.0×10-4g×10-3g/m/day以下、より更に好ましくは9.0×10-5g/m/day以下である。
上記水蒸気透過率は、公知の方法によって測定される。
上記ガスバリア層における改質領域の厚さdは、上記非改質領域が存在する場合、当該非改質領域の厚さd以上である。すなわち、d≧dである。ガスバリア層の全てが改質領域であってもよい。換言すれば、上記ガスバリアフィルムにおいて、ガスバリア層の厚さdと、改質領域の厚さdが、1≧d/d≧0.50の関係を満たす。
上記の関係を満たすことで、良好なガスバリア性及び耐熱性が得られる。ガスバリア層中の上記厚さdの比率が大きくなるにつれて、ガスバリアフィルムのガスバリア性がより高くなり、耐熱性にもより有利になる。一方、上記厚さdが上記厚さdに近づくにつれて、改質に要する時間を短くすることができ、製造容易性を向上させやすくなる。
これらの観点から、好ましくは1≧d/d≧0.51、より好ましくは1≧d/d≧0.60、さらに好ましくは1≧d/d≧0.80である。
上記改質領域の厚さdは15~1,000nmであることが好ましく、また、上記非改質領域の厚さdは0~1,000nmであることが好ましい。上記厚さd、dが上記範囲にあることにより、良好なガスバリア性及び耐熱性が得られるとともに、製造容易性も確保しやすくなる。
上記厚さdは、ガスバリア性をより高める観点及びガスバリア層の強度を高める観点から、より好ましくは20nm以上、更に好ましくは30nm以上、より更に好ましくは40nm以上、特に好ましくは45nm以上、最も好ましくは60nm以上である。また、製造容易性の観点から、より好ましくは500nm以下、更に好ましくは300nm以下、より更により好ましくは150nm以下、特に好ましくは100nm以下である。換言すれば、上記厚さdは、より好ましくは20~500nmである。
上記厚さdは、ガスバリア性及び耐熱性を高める観点から、より好ましくは500nm以下、更に好ましくは300nm以下、より更に好ましくは150nm以下、より更に好ましくは100nm以下、より更に好ましくは44nm以下、より更に好ましくは30nm以下、より更に好ましくは20nm以下、より更に好ましくは10nm以下、より更に好ましくは5nm以下、特に好ましくは0nmである。換言すれば、上記厚さdは、より好ましくは0~500nmである。
なお、上述したように、ガスバリア層が複数の改質領域を有する場合、それらの合計厚さが上記範囲にあることが好ましい。また、ガスバリア層が複数の非改質領域を有する場合、それらの合計厚さが上記範囲にあることが好ましい。
上記改質領域及び非改質領域の厚さは、分光エリプソメーターを用いて測定することができる。
ガスバリア層の厚さdは、ガスバリア性の向上及び製造容易性の観点から、好ましくは20~2,000nm、より好ましくは25~1,500nm、更に好ましくは30~1,000nm、より更に好ましくは32~600nm、より更に好ましくは34~300nm、より更に好ましくは36~200nm、より更に好ましくは38~150nm、特に好ましくは40~120nmである。
ガスバリア層の厚さdがナノオーダーであっても、改質領域を設けることで、充分なガスバリア性能を有するガスバリアフィルムを得ることができる。
1-2.基材
上記基材としては、40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が1g/m/day以下であるものを用いる。
具体的なものとしては、各種の樹脂製フィルムを支持体として、この支持体上に、支持体を介してポリシラザン膜へ水分が侵入するのを抑制するための機能層である水分侵入抑制層を形成したものを用いることができる
上記支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリ乳酸(PLA)フィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィン系フィルム、セルロース系フィルム、ポリアリレート樹脂フィルム、ポリイミド(PI)フィルム等が用いられる。
これらの支持体は、市販のものを用いてもよいし、各フィルムを構成する樹脂原料を溶剤に溶解してガラス基板等に塗布し、乾燥後に剥離したものを用いてもよい。
中でも、酢酸エチルやメチルエチルケトン等の低沸点の汎用の有機溶剤に可溶であり、ガラス転移温度の高い樹脂からなるフィルムが好ましく、このようなフィルムとしては、例えば、ガラス転移温度が250℃以上のポリアリレート樹脂からなるフィルムや、ポリイミド(PI)フィルムが挙げられる。これらの樹脂は概してガラス転移温度が高く耐熱性に優れており、また、非晶性熱可塑性樹脂であるため、溶液キャスト法による塗膜形成が可能である。ポリイミド樹脂は、ガラス転移温度が300℃以上であり、耐熱性に優れており、また、良好な耐熱性を示しつつも汎用の有機溶剤に可溶なものを得やすいため、特に好ましい。
ポリイミド樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されないが、例えば、芳香族ポリイミド樹脂、芳香族(カルボン酸成分)-環式脂肪族(ジアミン成分)ポリイミド樹脂、環式脂肪族(カルボン酸成分)-芳香族(ジアミン成分)ポリイミド樹脂、環式脂肪族ポリイミド樹脂、およびフッ素化芳香族ポリイミド樹脂等を使用することができる。特に、分子内にフルオロ基を有するポリイミド樹脂が好ましい。
フルオロ基を含むポリイミド樹脂は、メチルエチルケトン等の沸点の低い汎用の有機溶剤に溶解しやすくなり、塗布法で硬化樹脂層を形成しやすくなるという観点から、特に好ましい。
フルオロ基を有するポリイミド樹脂としては、分子内にフルオロ基を有する芳香族ポリイミド樹脂が好ましく、分子内に以下の化学式で示す骨格を有するものが好ましい。
上記化学式で示される骨格を有するポリイミド樹脂は、上記骨格の剛直性が高いことにより、300℃を超える極めて高いガラス転移温度を有している。このため、基材の耐熱性を大きく向上させ得る。また、上記骨格を有するポリイミド樹脂は、フルオロ基を有することにより、メチルエチルケトン等の低沸点の汎用有機溶剤に溶解し得る。したがって、溶液キャスト法を用いて塗工を行い、塗膜として硬化樹脂層を形成することができ、また、乾燥による溶剤除去も容易である。上記化学式で示される骨格を有するポリイミド樹脂は、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルと、4,4’-(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル)ジフタル酸二無水物とを用いて、上述のポリアミド酸の重合及びイミド化反応により得ることができる。
ポリアリレート樹脂は、芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸又はそのクロライドとの反応により得られる高分子化合物からなる樹脂である。ポリアリレート樹脂も、比較的高いガラス転移温度を有しており、伸び特性も比較的良好である。ポリアリレート樹脂としては、特に限定されず、公知のものが使用できる。
水分侵入抑制層は、支持体より水蒸気透過率が低く、基材として上記水蒸気透過率が得られる程度のガスバリア性を有する。
水分侵入抑制層の主成分としては、無機化合物や金属が挙げられる。
上記無機化合物としては、無機酸化物(MOx)、無機窒化物(MNy)、無機炭化物(MCz)、無機酸化炭化物(MOxCz)、無機窒化炭化物(MNyCz)、無機酸化窒化物(MOxNy)、無機酸化窒化炭化物(MOxNyCz)等が挙げられる。ここで、Mは、ケイ素、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、インジウム、カルシウム、ジルコニウム、チタン、ホウ素、ハフニウム、バリウム、スズ等の金属元素を表す。また、無機化合物は、二種以上の金属元素を含むものであってもよい。
上記金属としては、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、スズ、及びこれらの二種以上からなる合金等が挙げられる。
ここで、「主成分」とは、90質量%以上含有することを意味する。
水分侵入抑制層中の無機化合物及び金属の含有量は、95質量%以上が好ましい。
水分侵入抑制層は、無機化合物や金属を一種含有してもよく、二種以上含有してもよい。
これらの中でも、適度なガスバリア性を有し得ることから、水分侵入抑制層の主成分は無機化合物が好ましく、無機酸化物(MOx、MOx)、無機酸化炭化物(MOxCz、MOxCz)がより好ましく、酸化亜鉛スズ(ZTO)、酸化ケイ素(SiOx)、酸化炭化ケイ素(SiOxCz)、酸窒化ケイ素(SiOxNy)がさらに好ましく、酸化亜鉛スズまたは酸化ケイ素が特に好ましい。
上記の組成式において、Mは前記と同じ意味を表し、M、Mはそれぞれ独立して、Mと同様の金属元素を表す。
水分侵入抑制層を形成する方法は、特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD(物理的蒸着)法;熱CVD(化学的蒸着)法、プラズマCVD法(プラズマ化学気相成長法)、大気圧プラズマCVD法、光CVD法等のCVD法;ALD(原子層体積)法;等が挙げられる。
これらの中でも、適度なガスバリア性を有し得ることから、プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法、反応性スパッタリング法が好ましい。
水分侵入抑制層の厚さは、特に限定されないが、好ましくは2μm以下、より好ましくは1~1,000nm、さらに好ましくは10~500nm、特に好ましくは20~300nmである。
上記基材は、接着を容易にするための層、プライマー層、オリゴマー析出防止層、易滑層、帯電防止層、ハードコート層など種々の層を有するものであってもよい。コロナ処理、火炎処理等により接着を容易にするための処理が施されたものであってもよい。
また、上記基材は、アニール処理等の耐熱化処理がされていないものであってもよいし、耐熱化処理が施されたものであってもよい。
1-3.ガスバリア層及び改質領域
上記ガスバリアフィルムが備えるガスバリア層は、改質処理を施したポリシラザン膜である。
上記ガスバリア層は、[I]上記基材とは反対側の第1の表面側に位置する改質領域と、上記改質領域に接しかつ上記改質領域よりも上記基材側に位置する非改質領域とを含み、上記改質領域の厚さが上記非改質領域の厚さ以上であるか、又は、[II]上記ガスバリア層の全てが改質領域である。
そして、上記改質領域の屈折率は上記非改質領域の屈折率より高く、具体的には、上記改質領域の屈折率が1.70~2.00であり、上記非改質領域の屈折率が1.45~1.69である。
上記ガスバリア層は、上述したように、緻密な膜構造を有し化学的に安定な状態に変化した改質領域を有し、当該改質領域の厚さが非改質領域の厚さ以上である。このため、ガスバリアフィルムに優れたガスバリア性を与えるとともに、ガスバリアフィルムが高熱環境下に置かれた場合でも、非改質領域の反応の進行による影響を緩和し、クラックの発生を防止することができる。
上記ガスバリア層は、好ましくは、ケイ素、酸素、及び窒素を含み、ガスバリア層全体のケイ素、酸素、及び窒素の合計を100at%としたときの元素比率Siが、x:y=1:0.1~1.5、x:z=1:0.2~0.7、y:z=1:0.1~7.0である。ガスバリア層中のケイ素、酸素、及び窒素が上記関係を満たすことにより、良好なガスバリア性を発現させやすくなる。なお、「at%」は原子数比を表す。
上記ガスバリア層の、上記第1の表面から15nm以上の深さ方向において、下記式(1a)で表されるxの変化率、下記式(1b)で表されるyの変化率、及び下記式(1c)で表されるzの変化率は、好ましくはそれぞれ20%以下である。
xの変化率(%)={(x-x)/(x+x)}×100・・・式(1a)
yの変化率(%)={(y-y)/(y+y)}×100・・・式(1b)
zの変化率(%)={(z-z)/(z+z)}×100・・・式(1c)
上記式(1a)中、xはxの最大値、xはxの最小値を表す。
上記式(1b)中、yはyの最大値、yはyの最小値を表す。
上記式(1c)中、zはzの最大値、zはzの最小値を表す。
上述したように、ポリシラザン膜は、改質によって、ポリシラザンのSi-H結合及びN-H結合の水素結合が切断される脱プロトン反応により新たにSi-N結合が形成されるものと考えられる。
この変化を元素の存在比率の観点から見ると、改質処理においては、乾燥を経て若干酸化された状態にあるポリシラザン膜から水素原子が脱離するだけであるため、改質領域におけるケイ素、酸素、及び窒素の元素比率は、非改質領域におけるケイ素、酸素、及び窒素の元素比率と同様である。したがって、ガスバリア層の上記第1の表面から15nm以上の深さ方向において、上記x、y、及びzの各変化率をそれぞれ小さくすることができ、上記範囲に設定することができる。
図2は、ガスバリア層の深さ方向における元素比率の一例を示すグラフである。図2に示す例では、表面からごく浅い領域では酸化によって酸素の元素比率が高くなっているが、表面からの深さが15nm以上の領域においては、ケイ素、酸素、及び窒素の元素比率が横ばいになる区間(図2の符号R)が存在することが判る。
そして、図2に符号Aで示す改質領域に相当する領域から、図2に符号Bで示す非改質領域に相当する領域へと変わっても上記ケイ素、酸素、及び窒素の元素比率に大きな変化はないことが判る。
なお、上記領域A、Bの存在は、各層の屈折率を測定することにより確認することができる。
上記xの変化率(%)は、非改質領域の反応進行の影響を緩和しやすくするとともに、高いガスバリア性と高耐熱性を発現させやすくする観点から、好ましくは18%以下、より好ましくは12%以下、更に好ましくは6%以下、特に好ましくは3%以下である。なお、下限値は特に制約されず、0%でもよく、実際の測定を勘案すると0.1%以上程度である。換言すれば、xの変化率(%)は、好ましくは0~18%である。
上記yの変化率(%)は、上記と同様の観点から、好ましくは30%以下、より好ましくは22%以下、更に好ましくは13%以下である。なお、下限値は特に制約されず、0%でもよく、実際の測定を勘案すると1%以上程度である。換言すれば、yの変化率(%)は、好ましくは0~30%である。
上記zの変化率(%)は、上記と同様の観点から、好ましくは25%以下、より好ましくは18%以下、更に好ましくは10%以下である。なお、下限値は特に制約されず、0%でもよく、実際の測定を勘案すると1%以上程度である。換言すれば、zの変化率(%)は、好ましくは0~25%である。
上記ガスバリア層は、ポリシラザン膜であるガスバリア前駆層を改質処理することにより形成され、好ましくは、ポリシラザン溶液の塗膜を乾燥・硬化して得られたポリシラザン膜を改質処理して得られる層である。そして、上記改質領域は、後述する改質処理によって形成される。また、改質処理によって改質されなかったポリシラザン膜が上記非改質領域に相当する。
ポリシラザン溶液の塗膜を乾燥・硬化して得られたポリシラザン膜に後述する改質処理を施して得られる改質領域は、ガスバリア性に優れるガスバリア層を効率よく形成することができる。特に、ヘリウムガスの存在下でプラズマ照射を行うことにより、十分な厚さの改質領域を形成させやすくなる。
ポリシラザン溶液は、後述するポリシラザン系化合物を1種単独又は2種以上と、必要に応じて使用される他の成分とを、適当な溶剤中に添加した溶液である。
ポリシラザン溶液に用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶媒;等が挙げられる。
これらの溶剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリシラザン系化合物としては、無機ポリシラザンや有機ポリシラザンが挙げられる。無機ポリシラザンとしてはペルヒドロポリシラザン等が挙げられ、有機ポリシラザンとしてはペルヒドロポリシラザンの水素の一部又は全部がアルキル基等の有機基で置換された化合物等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性、及び優れたガスバリア性を有するガスバリア層を形成できる観点から、無機ポリシラザンがより好ましい。
また、ポリシラザン系化合物は、ガラスコーティング材等として市販されている市販品をそのまま使用することもできる。
ポリシラザン系化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリシラザン溶液として、市販のものを用いてもよい。
上記ガスバリア層は、本発明の目的を阻害しない範囲でポリシラザン系化合物以外の成分を含んでいてもよい。このような他の成分としては、硬化剤、他の高分子、老化防止剤、光安定剤、難燃剤等が挙げられる。
上記ガスバリア層中の、ポリシラザン系化合物に由来する成分の含有量は、優れたガスバリア性を有するガスバリア層を形成する観点から、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
ポリシラザン膜を形成する方法としては、例えば、上記ポリシラザン系化合物の少なくとも1種、所望により他の成分、及び溶剤等を含有するポリシラザン溶液を、公知の方法によって基材上に塗布し、得られた塗膜を適度に加熱・乾燥して形成する方法が挙げられる。
改質処理の前に、ポリシラザン膜の転化反応を進行させるための処理を行ってもよい。このような処理の例としては、(a)紫外線照射処理、(b)ポリシラザン溶液の塗膜に、水蒸気を噴霧するスチーム処理、(c)30~60℃程度の環境に180時間以上の長期間保管する方法等が挙げられる。処理の簡便さや短時間で実行できること等の観点から、紫外線照射により転化反応を進行させることが好ましい。
上記紫外線照射処理には、真空紫外光とは異なる、波長200nm超の紫外線を用いる。
上記紫外線は、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、キセノンランプ等を用いて照射することができる。
紫外線の波長は、200~400nmが好ましい。すなわち、紫外線の強度の最大値が、波長200~400nmの範囲の領域にあることが好ましい。照射量は、通常、照度50~1,000mW/cm、光量50~5,000mJ/cmの範囲である。照射時間は、通常、0.1~1,000秒である。光照射工程の熱負荷を考慮して前述の光量を満たすために、複数回照射しても構わない。
上記改質処理は、上記紫外線照射とは異なる処理であり、例えば、イオン注入、真空紫外光照射(エキシマレーザー等の照射)等が改質処理として挙げられる。これらの中でも、高いガスバリア性能が得られる点から、イオン注入が好ましい。イオン注入において、高分子層に注入されるイオンの注入量は、形成するガスバリアフィルムの使用目的(必要なガスバリア性、透明性等)等に合わせて適宜決定すればよい。
注入されるイオンとしては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガスのイオン;フルオロカーボン、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、塩素、フッ素、硫黄等のイオン;
メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のアルカン系ガス類のイオン;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のアルケン系ガス類のイオン;ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン系ガス類のイオン;アセチレン、メチルアセチレン等のアルキン系ガス類のイオン;ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタレン、フェナントレン等の芳香族炭化水素系ガス類のイオン;シクロプロパン、シクロヘキサン等のシクロアルカン系ガス類のイオン;シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロアルケン系ガス類のイオン;
金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、クロム、チタン、モリブデン、ニオブ、タンタル、タングステン、アルミニウム等の導電性の金属のイオン;
シラン(SiH)又は有機ケイ素化合物のイオン;等が挙げられる。
これらのイオンは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
より簡便にイオン注入することができ、特に優れたガスバリア性を有するガスバリア層が得られることから、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンが好ましい。
本発明者らは、種々検討した結果、ヘリウムは、アルゴンに比べてガスバリア層の奥深くまで進入しやすく、アルゴンでは達成できない厚さの改質領域を形成できることを見出した。したがって、改質領域を厚く形成させやすいという観点から、ヘリウムガスのイオンが特に好ましい。
なお、本発明の効果が損なわれない範囲で、ヘリウムガスのイオンと他のイオンとを併用して注入するようにしてもよい。
イオンを注入する方法としては、特に限定されないが、電界により加速されたイオン(イオンビーム)を照射する方法、プラズマ中のイオンを注入する方法等が挙げられる。中でも、簡便にガスバリア性のフィルムが得られることから、後者のプラズマイオンを注入する方法が好ましい。
プラズマイオン注入法としては、(A)外部電界を用いて発生させたプラズマ中に存在するイオンを、ガスバリア前駆層に注入する方法、又は(B)外部電界を用いることなく、前記層に印加する負の高電圧パルスによる電界のみで発生させたプラズマ中に存在するイオンを、ガスバリア前駆層に注入する方法が好ましい。
前記(A)の方法においては、イオン注入する際の圧力(プラズマイオン注入時の圧力)を0.01~1Paとすることが好ましい。プラズマイオン注入時の圧力がこのような範囲にあるときに、簡便にかつ効率よく均一にイオンを注入することができ、目的のガスバリア層を効率よく形成することができる。
前記(B)の方法は、減圧度を高くする必要がなく、処理操作が簡便であり、処理時間も大幅に短縮することができる。また、前記層全体にわたって均一に処理することができ、負の高電圧パルス印加時にプラズマ中のイオンを高エネルギーでガスバリア前駆層に連続的に注入することができる。更に、radio frequency(高周波、以下、「RF」と略す。)や、マイクロ波等の高周波電力源等の特別の他の手段を要することなく、層に負の高電圧パルスを印加するだけで、ガスバリア前駆層に良質のイオンを均一に注入することができる。
前記(A)及び(B)のいずれの方法においても、負の高電圧パルスを印加するとき、すなわちイオン注入するときのパルス幅は、1~15μsecであるのが好ましい。パルス幅がこのような範囲にあるときに、より簡便にかつ効率よく、均一にイオンを注入することができる。
また、プラズマを発生させるときの印加電圧は、好ましくは-1~-50kV、より好ましくは-1~-30kV、特に好ましくは-5~-20kVである。印加電圧が-1kVより大きい値でイオン注入を行うと、イオン注入量(ドーズ量)が不十分となり、所望の性能が得られない。一方、-50kVより小さい値でイオン注入を行うと、イオン注入時にフィルムが帯電し、またフィルムへの着色等の不具合が生じ、好ましくない。
プラズマイオン注入するイオン種としては、前記注入されるイオンとして例示したのと同様のものが挙げられる。
ガスバリア前駆層にプラズマ中のイオンを注入する際には、プラズマイオン注入装置を用いる。
プラズマイオン注入装置としては、具体的には、(i)ガスバリア前駆層(以下、「イオン注入する層」ということがある。)に負の高電圧パルスを印加するフィードスルーに高周波電力を重畳してイオン注入する層の周囲を均等にプラズマで囲み、プラズマ中のイオンを誘引、注入、衝突、堆積させる装置(特開2001-26887号公報)、(ii)チャンバー内にアンテナを設け、高周波電力を与えてプラズマを発生させてイオン注入する層周囲にプラズマが到達後、イオン注入する層に正と負のパルスを交互に印加することで、正のパルスでプラズマ中の電子を誘引衝突させてイオン注入する層を加熱し、パルス定数を制御して温度制御を行いつつ、負のパルスを印加してプラズマ中のイオンを誘引、注入させる装置(特開2001-156013号公報)、(iii)マイクロ波等の高周波電力源等の外部電界を用いてプラズマを発生させ、高電圧パルスを印加してプラズマ中のイオンを誘引、注入させるプラズマイオン注入装置、(iv)外部電界を用いることなく高電圧パルスの印加により発生する電界のみで発生するプラズマ中のイオンを注入するプラズマイオン注入装置等が挙げられる。
これらの中でも、処理操作が簡便であり、処理時間も大幅に短縮でき、連続使用に適していることから、(iii)又は(iv)のプラズマイオン注入装置を用いるのが好ましい。
前記(iii)及び(iv)のプラズマイオン注入装置を用いる方法については、国際公開WO2010/021326号公報に記載のものが挙げられる。
前記(iii)及び(iv)のプラズマイオン注入装置では、プラズマを発生させるプラズマ発生手段を高電圧パルス電源によって兼用しているため、RFやマイクロ波等の高周波電力源等の特別の他の手段を要することなく、負の高電圧パルスを印加するだけで、プラズマを発生させ、ガスバリア前駆層に連続的にプラズマ中のイオンを注入し、少なくとも表面部にイオン注入により改質された領域を有するガスバリア前駆層、すなわちガスバリア層が形成されたガスバリアフィルムを量産することができる。
改質処理の面内均一性、及び改質効率の観点からは、上記ガスバリア前駆層を電極上に設置し、上記電極に直流電力と交流電力とを重畳して印加しながら、上記ガスバリア前駆層にプラズマ照射を行うプラズマイオン注入装置を用いることが好ましい。
イオンが注入されたことは、例えば、X線光電子分光分析(XPS)を用いてガスバリア前駆層の表面からの元素分析測定を行うことによって確認することができる。
1-4.剥離シート及び保護フィルム
剥離シートは、ガスバリアフィルムを保存、運搬等する際に、基材フィルムを保護する役割を有し、所定の工程において剥離されるものである。
剥離シートは、シート状又はフィルム状のものが好ましい。シート状又はフィルム状とは、長尺のものに限らず、短尺の平板状のものも含まれる。
剥離シートとしては、グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材;これらの紙基材にポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙;上記紙基材に、セルロース、デンプン、ポリビニルアルコール、アクリル-スチレン樹脂等で目止め処理を行ったもの;あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムやポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム等のプラスチックフィルム;ガラス等が挙げられる。
また、剥離シートとしては、取り扱い易さの点から、紙基材や、プラスチックフィルム上に剥離層を設けたものであってもよい。剥離層は、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、アルキッド系剥離剤、オレフィン系剥離剤等、従来公知の剥離剤を用いて形成することができる。
保護フィルムは、ガスバリアフィルムを保存、運搬等する際に、ガスバリア層を保護する役割を有し、所定の工程において剥離されるものである。
保護フィルムは、シート状またはフィルム状のものが好ましい。シート状またはフィルム状とは、長尺のものに限らず、短尺の平板状のものも含まれる。
保護フィルムは、通常、ガスバリア層が形成された後に、ガスバリア層の表面に貼付されるので、ガスバリア層から保護フィルムが意図せず脱落したりしないようにする観点から、基材上に粘着剤層を設けた構成であることが好ましい。この場合、保護フィルムのガスバリア層側の表面に粘着剤層を設ける。保護フィルムが粘着剤層を有するものであることによって、保護フィルムがガスバリア層に対して剥離可能に付着することになる。保護フィルムの基材としては、剥離シートと同じ材質・厚さのものを用いることができる。
粘着剤層を構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリオレフィン系重合体を含む粘着剤、ポリオレフィン系共重合体を含む粘着剤を含む粘着剤等が挙げられる。粘着剤層が、ポリオレフィン系重合体及びポリオレフィン系共重合体の少なくとも一方を含むことがより好ましい。ポリオレフィン系重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられ、ポリオレフィン系共重合体としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
また、保護フィルム(β)として利用可能な、市販のポリオレフィン系粘着剤を含む保護フィルムとしては、株式会社サンエー化研製サニテクトPAC-3-50THK、サニテクトPAC-2-70等が挙げられる。
1-5.ガスバリアフィルムの他の構成例
本発明の実施形態に係るガスバリアフィルムは、図1に示すものに限定されず、本発明の目的を損ねない範囲で、基材とガスバリア層との間、又はガスバリア層上等に、他の層が1層又は2層以上含まれるものであってもよい。
上記他の層としては、例えば、他のガスバリア層、保護層などが挙げられる。また、他の層の配置位置は上記のものに限定されない。
また、ガスバリアフィルムは長尺のものであってもよい。この場合、ガスバリアフィルムは、芯材に巻き取られたロール状のものであってもよい。
2.ガスバリアフィルムの製造方法
本発明の実施形態に係るガスバリアフィルムの製造方法は、基材と、上記基材上に設けられたガスバリア層とを有するガスバリアフィルムの製造方法であって、
上記基材は、40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が1g/m/day以下であり、
上記基材上に、ポリシラザン化合物の溶液を塗布することにより、上記ガスバリア層を形成するためのガスバリア前駆層を形成し(以下、前駆層形成工程ともいう)、
上記ガスバリア前駆層の表面部に対して、ヘリウムガスの存在下でプラズマ照射して、上記ガスバリア前駆層の表面部に改質領域を形成することにより、ガスバリア層を形成し(以下、改質工程ともいう)、
上記ガスバリア層は、[I]上記基材とは反対側の第1の表面側に位置する改質領域と、上記改質領域に接しかつ上記改質領域よりも上記基材側に位置する非改質領域とを含み、上記改質領域の厚さが上記非改質領域の厚さ以上であるか、又は、[II]上記ガスバリア層の全てが改質領域である。
上記ガスバリアフィルムの製造方法においては、上記改質処理によって改質領域を形成する際に、上記改質領域形成用の塗膜の加熱開始後、改質工程に先立って紫外線照射工程を行うようにしてもよい。これにより、ガスバリアフィルムにおけるポリシラザン系化合物の転化反応を適度に進めることができ、硬質なガスバリアフィルムを得やすくなる。
図3に、本発明の実施形態に係るガスバリアフィルムの製造工程の一例を示す。図3(a)は基材を準備する工程を示す。図3(b)及び図3(c)は上記前駆層形成工程に対応する。図3(d)及び図3(e)が上記改質工程に対応する。以下、図面を適宜参照しながら各工程について説明する。
2-1.基材の準備
基材を準備する(図3(a)の符号10)。ここで、図1に示す構成を備える基材の場合は、プラズマCVD法等によって、支持体(図3(a)の符号11)上に水分侵入抑制層(図3(a)の符号12)を設けることにより、40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が1g/m/day以下である基材とする。
水分侵入抑制層の形成方法は上述したとおりである。
2-2.ガスバリア層の形成
ガスバリア層の形成においては、以下説明する、塗布工程、加熱工程、及び改質工程を含むことが好ましい。
(塗布工程)
上記基材上に上述したポリシラザン溶液を用いて塗膜(図3(b)の符号21a)を形成する。図3に示す例では、基材の水分侵入抑制層形成面上にポリシラザン溶液を塗布して塗膜を形成する。
ポリシラザン溶液を塗布する際は、スピンコーター、ナイフコーター、グラビアコーター等の公知の装置を使用することができる。
(加熱工程)
次に、このポリシラザン溶液の塗膜を加熱することによって乾燥するとともに硬化させる。このようにして、ガスバリア前駆層であるポリシラザン膜(図3(c)の符号21b)を形成する。
加熱、乾燥方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が採用できる。加熱温度は、通常、80~110℃であり、好ましくは90~105℃である。加熱時間は、通常、数十秒から数十分であり、好ましくは60秒~5分であり、より好ましくは90秒~3分である。
(改質工程)
本実施形態では、ポリシラザン溶液の塗膜を硬化させて得られたガスバリア前駆層に対して、改質処理を施すことにより、ガスバリア前駆層の表面に、上記厚さd、dがd≧dの関係を満たすように改質領域(図3(d)の符号22)を形成する。改質領域以外の領域は、非改質領域(図3(d)の符号21)となる。本実施形態に係る製造方法においては、ヘリウムイオンを用いてプラズマイオン注入処理を行っている。このため、改質処理時間や印加電圧等の改質処理条件を調整することによって、図3(e)に示すガスバリアフィルム100Bのガスバリア層20Bのように、ガスバリア層の全てを改質領域とすることができる。
改質処理の詳細は上述したとおりである。
改質工程における上記プラズマ照射時間は、改質領域の厚さを十分確保する観点から、好ましくは350秒以上、より好ましくは400秒以上、更に好ましくは500秒以上である。上限に特に制限はないが、製造時のタクトタイムを短縮する観点から、好ましくは10,000秒以下、より好ましくは5,000秒以下、特に好ましくは1,000秒以下である。換言すれば、改質工程におけるプラズマ照射時間は、好ましくは350~10,000秒である。
ポリシラザン膜の形成後、改質工程開始までの間に上述した紫外線照射処理を行ってもよい。紫外線照射処理の詳細は上述したとおりである。
紫外線照射処理を行う場合、紫外線照射処理の終了から改質工程開始までの時間は、ポリシラザン系化合物の転化反応を適度に進める観点から、好ましくは6~144時間、より好ましくは12~120時間、更に好ましくは15~108時間とする。
2-3.他の工程
この後、必要に応じて、ガスバリア層上や基材のガスバリア層とは反対側の面に保護フィルムを設ける。この工程は、例えば、保護フィルムの粘着剤層の形成面を貼付対象面に向けて配置し、気泡を取り込まないように順次押圧することで行われる。
次に、本発明の具体的な実施例を説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
後述する実施例及び比較例で作製したガスバリアフィルムにおける、ガスバリア層の改質領域の厚さd、非改質領域の厚さd、ガスバリア層の深さ方向における元素比率、ガスバリアフィルムの水蒸気透過率とその耐熱性試験、改質領域と非改質領域の屈折率は、以下の手順で測定・算出、及び評価した。
[ガスバリア層の厚さd、及び深さ方向における元素比率]
実施例及び比較例のガスバリアフィルムについて、高分解能分析電子顕微鏡(FEI社製TITAN80-300)を用いて、加速電圧200kVの条件で断面TEM観察を行い、得られたHAADF-STEM像からガスバリア層全体の厚さdを特定した。
また、実施例及び比較例のガスバリアフィルムについて、XPS測定分析装置(アルバックファイ社製、Quantum2000)を用いて、ガスバリア層の表面から深さ方向における各含有原子の元素比率(at%)を測定した。なお、元素比率の測定に当たっては、上記断面TEMの測定結果に基づいて、XPS測定におけるスパッタリング時間を深さに換算することにより、測定の深さ位置とした。
[ガスバリア層の深さ方向における元素比率の変化率]
実施例及び比較例のガスバリアフィルムについて、ガスバリア層全体のケイ素、酸素、及び窒素の合計を100at%としたときの元素比率(SixOyNz)を、表面から深さ15nmの位置からガスバリア層の、基材側の端部位置までを対象として測定した。そして、x、y、zの最大値と最小値に基づいて、上述した式(1a)~(1c)から、xの変化率、yの変化率、zの変化率を算出した。
なお、実施例1のガスバリアフィルムについて、ガスバリア層の深さ方向における元素比率を示したグラフを図2に示す。実施例1のガスバリアフィルムを例にすると、xの変化率、yの変化率、zの変化率は、図2の符号Rで示す領域(つまり、深さ15nm~87nm)を対象として測定及び算出した。
[水蒸気透過率(WVTR)]
実施例及び比較例にて作製したガスバリアフィルムを10cm×10cmの大きさの試験片に裁断し、当該試験片の50cmを測定面積として、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、装置名:AQUATRAN2)を用い、40℃、相対湿度90%雰囲気下にてガス流量20sccmで水蒸気透過率(g/m/day)を測定した。なお、測定装置の検出下限は0.05mg/m/dayである。
[耐熱性試験]
実施例及び比較例のガスバリアフィルムを、窒素雰囲気下、850℃で5時間加熱した。そして、加熱後のガスバリア層のクラックの発生状況を、光学顕微鏡(株式会社キーエンス製、倍率500倍)で確認した。また、加熱後のガスバリアフィルムの水蒸気透過率を上述した手順で測定した。
[改質領域及び非改質領域の厚さ、並びに改質領域及び非改質領域の屈折率の測定]
実施例及び比較例のガスバリアフィルムについて、ガスバリア層中の改質領域及び非改質領域の屈折率と、ガスバリア層の改質領域の厚さd及び非改質領域の厚さdとを、分光エリプソメーター(J.A.ウーラム・ジャパン株式会社製)を用いて測定した。
[実施例1]
ガラス支持体上にポリイミド樹脂(PI)のペレット(河村産業株式会社製、製品名KPI-MX300F、ガラス転移温度(Tg)=354℃、重量平均分子量28万)をメチルエチルケトン(MEK)に溶解させた溶液を塗布・乾燥させた。その後、ガラス基板から剥離し、厚さ20μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルム上にプラズマ化学気相成長法により厚さ100nmの酸化ケイ素膜(SiOx:x=2.33)を形成し、基材を作製した。上記プラズマ化学気相成長法の製膜条件は以下の通りである。
・ヘキサメチルジシロキサンの流量:50sccm
・アルゴンガスの流量:15sccm
・酸素ガスの流量:10sccm
・チャンバー内圧:0.3Pa
・RF電源電力:1,000W
・製膜時間:52秒
次いで、上記基材の酸化ケイ素膜形成面上に、ペルヒドロポリシラザン(DNF社製、重量平均分子量10,000)を塗工し、これを100℃で2分間加熱硬化させることで、厚さ100nmのポリシラザン膜を形成した。
次いで、プラズマイオン注入装置を用いて、上記ポリシラザン膜に下記条件にてプラズマイオン注入を行うことにより、ポリシラザン膜に対してその表面側から改質処理を施した。こうして、ガスバリアフィルムを得た。
上記改質処理に用いたプラズマイオン注入装置、及び上記改質処理のプラズマイオン注入条件は以下のとおりである。
<プラズマイオン注入装置>
・RF電源:型番号「RF」56000、日本電子株式会社製
・高電圧パルス電源:「PV-3-HSHV-0835」、株式会社栗田製作所製
<プラズマイオン注入条件>
・プラズマ生成ガス:ヘリウム(He)
・ガス流量:100sccm
・Duty比:0.5%
・繰り返し周波数:1,000Hz
・印加電圧:-6kV
・RF電源:周波 13.56MHz、印加電力1,000W
・チャンバー内圧:0.2Pa
・パルス幅:5μsec
・処理時間(イオン注入時間):800秒
[実施例2]
改質処理時の印加電圧を-8kVとした以外は実施例1と同様の手順でガスバリアフィルムを得た。
[実施例3]
改質処理時の印加電圧を-10kVとした以外は実施例1と同様の手順でガスバリアフィルムを得た。
[実施例4]
改質処理時の印加電圧を-15kVとした以外は実施例1と同様の手順でガスバリアフィルムを得た。
[比較例1]
改質処理のプラズマ生成ガスをアルゴン(Ar)とした以外は実施例4と同様の手順でガスバリアフィルムを得た。
[比較例2]
改質処理のプラズマ生成ガスをアルゴン(Ar)とし、改質処理の処理時間(イオン注入時間)を300秒とした以外は、実施例1と同様の手順でガスバリアフィルムを得た。
各実施例及び比較例のガスバリアフィルムの測定及び評価の結果を、各部の材質や処理条件とともに表1に示す。
表1に示すように、実施例1~4のガスバリアフィルムは、いずれも基材の水蒸気透過率が1g/m/day以下であり、ポリシラザン膜が改質領域を有しており、当該改質領域の厚さが非改質領域の厚さ以上であるか、又は、ガスバリア層の全てが改質領域である。また、上記改質領域の屈折率が1.70~2.00であり、上記非改質領域の屈折率が1.45~1.69である。そして、ガスバリア性が良好であり、耐熱試験を経てもガスバリア性の変化が小さく、クラックの発生も見受けられないことが判る。
これに対して、比較例1のガスバリアフィルムにおいては、プラズマ照射に用いるガスをアルゴンに変更したことにより、十分な厚さを有する改質領域を形成することができず、実施例のガスバリアフィルムの改質領域に比べて、改質領域の厚さが非常に小さい。また、耐熱性試験を経た後のガスバリア層にクラックが発生し、ガスバリア性の低下の度合いが実施例のガスバリアフィルムより著しく大きくなっていることが判る。
比較例2のガスバリアフィルムにおいては、プラズマ照射に用いるガスをアルゴンに変更し、改質処理の処理時間を短くしたことにより、やはり十分な厚さを有する改質領域を形成することができていない。また、比較例2のガスバリアフィルムは、水蒸気透過率の値が実施例のものより大きく(換言すれば、ガスバリア性が実施例のものより低く)、耐熱性試験後のガスバリア層にクラックが発生し、更に耐熱性試験を経たことによるガスバリア性の低下の度合いが実施例のガスバリアフィルムより著しく大きくなっていることが判る。
10:基材
11:支持体
12:水分侵入抑制層
20A、20B:ガスバリア層
21:非改質領域
21a:ポリシラザン溶液の塗膜
21b:ポリシラザン膜(ガスバリア前駆層)
22:改質領域
100A、100B:ガスバリアフィルム
:ガスバリア層の厚さ
:改質領域の厚さ
:非改質領域の厚さ

Claims (6)

  1. 40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が1g/m/day以下である基材と、前記基材上に設けられたガスバリア層とを有し、
    前記ガスバリア層は、改質処理を施したポリシラザン膜であり、
    前記ガスバリア層は、[I]前記基材とは反対側の第1の表面側に位置する改質領域と、前記改質領域に接しかつ前記改質領域よりも前記基材側に位置する非改質領域とを含み、前記改質領域の厚さが前記非改質領域の厚さ以上であるか、又は、[II]前記ガスバリア層の全てが改質領域であり、
    前記改質領域の屈折率が1.70~2.00であり、前記非改質領域の屈折率が1.45~1.69である、ガスバリアフィルム。
  2. 前記ガスバリア層はケイ素、酸素、及び窒素を含み、前記ガスバリア層全体のケイ素、酸素、及び窒素の合計を100at%としたときの元素比率Siが、x:y=1:0.1~1.5、x:z=1:0.2~0.7、y:z=1:0.1~7.0である、請求項1に記載のガスバリアフィルム。
  3. 前記ガスバリア層の、前記第1の表面から15nm以上の深さ方向において、下記式(1a)で表されるxの変化率、下記式(1b)で表されるyの変化率、及び下記式(1c)で表されるzの変化率が、それぞれ20%以下である、請求項2に記載のガスバリアフィルム。
    xの変化率(%)={(x-x)/(x+x)}×100・・・式(1a)
    yの変化率(%)={(y-y)/(y+y)}×100・・・式(1b)
    zの変化率(%)={(z-z)/(z+z)}×100・・・式(1c)
    上記式(1a)中、xはxの最大値、xはxの最小値を表す。
    上記式(1b)中、yはyの最大値、yはyの最小値を表す。
    上記式(1c)中、zはzの最大値、zはzの最小値を表す。
  4. 前記改質領域の厚さが15~1,000nmであり、前記非改質領域の厚さが0~1,000nmである、請求項1又は2に記載のガスバリアフィルム。
  5. 前記ガスバリアフィルムを、窒素雰囲気下、350℃で5時間加熱した後の、40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が、1.0×10-2g/m/day未満である、請求項1又は2に記載のガスバリアフィルム。
  6. 基材と、前記基材上に設けられたガスバリア層とを有するガスバリアフィルムの製造方法であって、
    前記基材は、40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が1g/m/day以下であり、
    前記基材上に、ポリシラザン化合物の溶液を塗布することにより、前記ガスバリア層を形成するためのガスバリア前駆層を形成し、
    前記ガスバリア前駆層の表面部に対して、ヘリウムガスの存在下でプラズマ照射して、前記ガスバリア前駆層の表面部に改質領域を形成することにより、ガスバリア層を形成し、
    前記ガスバリア層は、[I]前記基材とは反対側の第1の表面側に位置する改質領域と、前記改質領域に接しかつ前記改質領域よりも前記基材側に位置する非改質領域とを含み、前記改質領域の厚さが前記非改質領域の厚さ以上であるか、又は、[II]前記ガスバリア層の全てが改質領域である、ガスバリアフィルムの製造方法。
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